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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060339
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】積層鉄心及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240424BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K15/02 K
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167652
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】安藤 修司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601CC01
5H601CC02
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA40
5H601GC12
5H601KK08
5H601KK22
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP07
5H615SS05
5H615SS16
(57)【要約】
【課題】溶接機を識別するための設備代が削減でき、加工部の変形等も抑制することを可能とする積層鉄心を提供する。
【解決手段】複数の環状の鉄心片5を軸方向に積層した積層鉄心片3と、積層鉄心片3を軸方向に沿って溶接する溶接部Wとを備え、溶接部Wで形成される溶接パターンPが溶接部Wを形成した溶接機に対応する。積層鉄心片3を溶接するための溶接部Wによる溶接パターンPで溶接機の識別を行うため、設備代が削減でき、加工部の変形等も抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の鉄心片を軸方向に積層した積層鉄心片と、
前記積層鉄心片を前記軸方向に沿って溶接する溶接部と、
を備えた積層鉄心であって、
前記溶接部で形成される溶接パターンが前記溶接部を形成した溶接機に対応する、
積層鉄心。
【請求項2】
請求項1に記載の積層鉄心であって、
前記溶接部は、前記軸方向で部分的な部分溶接部を含み、
前記溶接パターンは、前記部分溶接部の長さ又は配置が前記溶接機毎に異なる、
積層鉄心。
【請求項3】
請求項2に記載の積層鉄心であって、
前記積層鉄心片は、内周部に前記軸方向に整列した少なくとも凸部又は凹部の一方を含み、
前記部分溶接部の配置は、前記少なくとも凸部又は凹部の一方に対する配置である、
積層鉄心。
【請求項4】
請求項2に記載の積層鉄心であって、
前記積層鉄心片は、外周部に軸方向に整列した少なくとも凸部又は凹部の一方を含み、
前記部分溶接部の配置は、前記少なくとも凸部又は凹部の一方に対する配置である、
積層鉄心。
【請求項5】
請求項2~4の何れか一項に記載の積層鉄心であって、
前記部分溶接部は、異なる長さのものを含み、
前記部分溶接部の配置は、前記異なる長さの前記部分溶接部の相互の配置関係である、
積層鉄心。
【請求項6】
請求項2~4の何れか一項に記載の積層鉄心であって、
前記部分溶接部は、複数の同一長さのものを含み、
前記部分溶接部の配置は、前記部分溶接部相互の配置間隔である、
積層鉄心。
【請求項7】
環状の鉄心片を軸方向に積層して積層鉄心片を形成し、
前記積層鉄心片を前記軸方向に沿って溶接する溶接部を形成し、
前記溶接部で形成される溶接パターンを、前記溶接部を形成した溶接機毎に異ならせる、
積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の積層鉄心の製造方法であって、
前記溶接部は、前記軸方向で部分的な部分溶接部を含み、
前記溶接パターンは、前記部分溶接部の長さ又は配置が前記溶接機毎に異なる、
積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の積層鉄心の製造方法であって、
前記積層鉄心片は、内周部に前記軸方向に整列したキー凸部を含み、
前記部分溶接部の配置は、前記キー凸部に対する配置である、
積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の積層鉄心の製造方法であって、
前記積層鉄心片は、外周部に軸方向に整列した耳部を含み、
前記部分溶接部の配置は、前記耳部に対する配置である、
積層鉄心の製造方法。
【請求項11】
請求項8~10の何れか一項に記載の積層鉄心の製造方法であって、
前記部分溶接部は、異なる長さのものを含み、
前記部分溶接部の配置は、前記異なる長さの前記部分溶接部の相互の配置関係である、
積層鉄心の製造方法。
【請求項12】
請求項8~10の何れか一項に記載の積層鉄心の製造方法であって、
前記部分溶接部は、複数の同一長さのものを含み、
前記部分溶接部の配置は、前記部分溶接部相互の配置間隔である、
積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モーター等に供される積層鉄心及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の積層鉄心としては、特許文献1及び2のように、複数の環状の鉄心片を軸方向に積層して溶接したものがある。
【0003】
溶接を伴う積層鉄心の製造においては、生産数量が増加等のために溶接機の数を増加することが行われる。このように、溶接機の数が増加する場合、トレーサビリティの向上等のために、製品の製造に用いた溶接機を識別するのが好ましい。
【0004】
こうした識別には、特許文献3のように、レーザーマーカーでの刻印を用いる方法がある。
【0005】
しかし、この場合は、レーザーマーカー機の設備代がかかり、且つ鉄心片にレーザー加工部の浮き上がりによる変形等が生じる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6891973号公報
【特許文献2】特許6965465号公報
【特許文献3】特開2020-188557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、溶接機の認識のための設備代がかかり、また識別のための積層鉄心の加工部の変形等が懸念される点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環状の鉄心片を軸方向に積層した積層鉄心片と、前記積層鉄心片を前記軸方向に沿って溶接する溶接部と、を備えた積層鉄心であって、前記溶接部で形成される溶接パターンが前記溶接部を形成した溶接機に対応する、積層鉄心を提供する。
【0009】
また、本発明は、環状の鉄心片を軸方向に積層して積層鉄心片を形成し、前記積層鉄心片を前記軸方向に沿って溶接する溶接部を形成し、前記溶接部で形成される溶接パターンを、前記溶接部を形成した溶接機毎に異ならせる、積層鉄心の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、積層鉄心片を溶接するための溶接部による溶接パターンで溶接機の識別を行うため、設備代が削減でき、加工部の変形等も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は、本発明の実施例1に係る積層鉄心を示す斜視図、図1(B)は、図1(A)の一部を拡大して示す斜視図である。
図2図2は、図1の積層鉄心の平面概念図である。
図3図3は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。
図4図4は、変形例に係る図2と同様のローターコアの平面概念図である。
図5図5は、図1のローターコアの積層組立に用いる積層組立装置の主要部を示す斜視図である。
図6図6は、整列治具上に積層された積層鉄心片を示す斜視図である。
図7図7は、積層鉄心片の溶接状況を示す斜視図である。
図8図8は、実施例2に係るローターコアの平面概念図である。
図9図9は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。
図10図10は、実施例3に係るローターコアの平面概念図である。
図11図11は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。
図12図12は、実施例4に係るローターコアの平面概念図である。
図13図13は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。
図14図14は、実施例5に係るローターコアの平面概念図である。
図15図15は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。
図16図16は、実施例6に係るステーターコアの一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、溶接機の識別のための設備代を削減でき、加工部の変形等を抑制することを可能にするという目的を、積層鉄心片を溶接するための溶接部による溶接パターンを溶接機毎に異ならせることで実現した。
【0013】
積層鉄心1は、環状の鉄心片5を軸方向に積層した積層鉄心片3と、積層鉄心片3を軸方向に沿って溶接する溶接部Wとを備える。溶接部Wで形成される溶接パターンPは、溶接部Wを形成した溶接機に対応する。
【0014】
この積層鉄心1の製造方法は、環状の鉄心片5を軸方向に積層して積層鉄心片3を形成し、積層鉄心片3を軸方向に沿って溶接する溶接部Wを形成し、溶接部Wで形成される溶接パターンPを、溶接部Wを形成した溶接機毎に異ならせればよい。
【0015】
溶接部Wは、軸方向で部分的な部分溶接部19、21を含み、溶接パターンPは、部分溶接部19、21の長さ又は配置が溶接機毎に異なってもよい。
【0016】
積層鉄心片3は、内周部に軸方向に整列した少なくとも凸部又は凹部の一方15を含み、部分溶接部19、21の配置は、少なくとも凸部又は凹部の一方15に対する配置であってもよい。
【0017】
積層鉄心片3は、外周部に軸方向に整列した少なくとも凸部又は凹部の一方43を含み、部分溶接部21の配置は、少なくとも凸部又は凹部の一方43に対する配置であってもよい。
【0018】
なお、少なくとも凸部又は凹部の一方15及び43は、溶接パターンPの基準位置を特定できる形状を有すればよく、例えば、キー凸部、キー凹部、その他の凹部または凸部とすることができる。また、積層鉄心片3は、凸部及び凹部の双方を含んでもよい。
【0019】
部分溶接部19、21は、異なる長さのものを含み、部分溶接部19、21の配置は、異なる長さの部分溶接部19、21の相互の配置関係であってもよい。
【0020】
部分溶接部21は、複数の同一長さのものを含み、部分溶接部21の配置は、相互の配置間隔であってもよい。
【実施例0021】
[積層鉄心]
図1(A)は、本発明の実施例1に係る積層鉄心の斜視図、図1(B)は、図1(A)の一部を拡大して示す斜視図である。図2は、図1の積層鉄心の平面概念図である。図3は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。なお、以下の説明において、XYは、XY平面におけるXY軸を意味し、Zは、XY平面に対する直交軸を意味する。
【0022】
積層鉄心1は、電動モーターや発電機の回転子側に用いられるローターコアである。この積層鉄心1は、積層鉄心片3を周方向複数の溶接部Wによって一体化したものである。積層鉄心片3は、複数の環状の鉄心片5を軸方向に積層したものである。
【0023】
なお、軸方向とは、積層鉄心1の軸心に沿った方向をいう。また、以下において周方向は、積層鉄心1の軸心周りの延設方向をいい、径方向は、積層鉄心1の径に沿った方向をいう。
【0024】
環状の鉄心片5は、単一の環状部材からなる非分割コア用又は鉄心用の円弧状部材を環状に並べた分割コア用の何れであってもよい。本実施例の鉄心片5は、分割コア用であり、周方向に位相をずらして積層される。具体的には、鉄心片5は、例えば周方向90°で4つに分割された円弧状鉄心片(分割鉄心片)7を環状に並べたものである。
【0025】
積層鉄心片3の外周部には、周方向に並ぶ磁石装着部9(磁極片部)が形成されている。各磁石装着部9は、磁石を装着するための磁石装着孔11を備えている。
【0026】
積層鉄心片3の径方向で幅内の中間部(外周と内周との間の中間部)には、周方向に並ぶ複数のガイド孔13が形成されている。これらのガイド孔13は、複数の鉄心片5の積層時や積層鉄心片3の溶接時に位置決め用として用いられる。
【0027】
積層鉄心片3は、内周部に軸方向に整列した凸部としてのキー凸部15を含んでいる。キー凸部15は、一対が径方向に対向して配置されている。一対のキー凸部15は、積層鉄心1を回転子に組み付ける際の連結部等となる。
【0028】
溶接部Wは、積層鉄心片3を軸方向に沿って溶接したものであり、全体として溶接機に対応した溶接パターンPを形成する。本実施例では、溶接機毎に溶接パターンPが異なっている。
【0029】
なお、一つの溶接パターンPによって、複数の溶接機を特定することも可能である。一つの積層鉄心1に対し複数の溶接機を使用する場合は、一つの溶接パターンPが複数の溶接機を識別する複数の溶接パターンからなっていてもよい。例えば、二つの溶接機を使用する場合は、上層部に一方の溶接機の溶接パターンを形成し、中層部に他方の溶接機の溶接パターンを形成してもよい。
【0030】
また、使用する複数の溶接機の組合せ情報を一つの溶接機が認識し、一つの溶接機が組み合わせを示す溶接パターンを形成してもよい。例えば、二つの溶接機を使用する場合、一方と他方の溶接機の組合せを一方の溶接機が認識し、それらの組み合わせを示す一つの溶接パターンPを一方の溶接機が形成してもよい。
【0031】
従って、溶接機に対応した溶接パターンPは、積層鉄心1の溶接に用いられた一又は複数の溶接機を特定するものとなっている。
【0032】
本実施例の各溶接部Wは、全域溶接部17に加えて短溶接部19及び長溶接部21を含んでいる。
【0033】
全域溶接部17は、環状の鉄心片5の円弧状鉄心片7それぞれを積層鉄心片3の軸方向で全域に渡って溶接している。
【0034】
短溶接部19及び長溶接部21は、異なる長さを有する部分溶接部であり、配置が溶接機毎に異なる。なお、長溶接部21の配置は、異ならせずに、溶接機ごとに長さを変えることもできる。すなわち、本実施例において、短溶接部19及び長溶接部21の長さ又は配置は、溶接機を識別可能とする溶接パターンPを担っている。
【0035】
部分溶接部の長さ又は配置は、該当する溶接機が識別できればよく、その設定は自由である。部分溶接部の長さ又は配置に限らず、部分溶接部の横断面積、軸方向や周方向での数によって溶接パターンPを構成してもよい。また、溶接パターンPは、部分溶接部によらず、全域溶接部17のみの軸方向や周方向での数、配置、横断面積等や、他の追加の溶接の軸方向や周方向での数、配置、横断面積等によって構成することも可能である。
【0036】
本実施例の短溶接部19及び長溶接部21の配置は、キー凸部15に対する配置であり、且つ短溶接部19及び長溶接部21の相互の配置関係である。この配置関係については後述する。
【0037】
短溶接部19及び長溶接部21は、積層鉄心片3の一側及び他側の表層部、図1では積層鉄心片3をXY平面に置いた状態とし、Z方向の上層部及び下層部に配置されている。これら短溶接部19及び長溶接部21は、積層鉄心片3の表層部の剥離等を抑制する。
【0038】
なお、短溶接部19及び長溶接部21は、積層鉄心片3の表層部での剥離抑制を目的とせずに中層部に形成してもよい。短溶接部19及び長溶接部21は、全域溶接部17の横断面積とほぼ同一の横断面積に設定されているが、全域溶接部17の横断面積よりも大きく又は小さく設定することもできる。
【0039】
図1の上層部の短溶接部19は、キー凸部15の右隣り1か所の全域溶接部17を除き、図1の上層部において各全域溶接部17の左側に隣接して配置されている。
【0040】
図1の下層部の短溶接部19は、各全域溶接部17の右隣に隣接して配置されている。
【0041】
なお、上層部の短溶接部19は、全域溶接部17の右側に隣接し、これに応じて下層部の短溶接部19は、各全域溶接部17の左隣に隣接して配置されてもよい。
【0042】
長溶接部21は、図1で積層鉄心片3をXY平面に置いた状態とし、キー凸部15の右隣り1か所の全域溶接部17に対し左側に隣接して配置されている。長溶接部21は、短溶接部19よりも多くの層を溶接したものであり、短溶接部19と同一の機能を有し、且つ短溶接部19に対し長さで識別できるものである。長溶接部21は、全域溶接部17の横断面積とほぼ同一の横断面積に設定されているが、全域溶接部17の横断面積よりも大きく又は小さく設定することもできる。
【0043】
長溶接部21は、その配置を異ならせて溶接機を識別可能とする。図1及び図2の長溶接部21の配置は、例えば図3の2号機に対応させた配置となっている。この位置の長溶接部21の配置を図3では、「1番目の溶接部」とする。
【0044】
1号機の場合は、長溶接部21を設定せず、全てを短溶接部19とする。この配置を図3では、「溶接部長さ同じ」とする。
【0045】
3号機の場合は、図2の時計回りでキー凸部15から2番目の部分溶接部である短溶接部19を長溶接部21に変更し、図2のキー凸部15の右隣りの長溶接部21を短溶接部19に変更する。この位置の長溶接部21の配置を図3では、「2番目の溶接部」とした。
【0046】
以下同様に、図1の積層鉄心片3において、4号機から8号機まで図2の時計回りで3番目から7番目までの部分溶接部である短溶接部19を長溶接部21に順次変更し、図2のキー凸部15の右隣りの長溶接部21を短溶接部19に変更する。この位置の長溶接部21の配置を図3では、「3番目の溶接部」、「4番目の溶接部」、「5番目の溶接部」、「6番目の溶接部」、「7番目の溶接部」とした。
【0047】
従って、長溶接部21の有無及び図2におけるキー凸部15から時計回りに何番目の全域溶接部17に長溶接部21が隣接配置されているかにより、図3のように1号機から8号機までの溶接機の識別が実現できる。
【0048】
なお、キー凸部15の数は2つ以外、例えば1つや3つ以上でもよい。また、短溶接部19を1つ、その他の部分溶接を長溶接部21としてもよい。また、下層部の部分溶接部は積層鉄心3の上下を反転させた状態で上層部と同一になるように配置してもよい。また、長溶接部21は、キー凸部15の数に応じて複数設定することもできる。図4は、変形例に係る図2と同様の積層鉄心1の平面概念図である。
【0049】
図4のように積層鉄心片3の2カ所のキー凸部15に対し、2か所の長溶接部21を設定する。図4では、図中上部の長溶接部21に対し、同下部の長溶接部21が積層鉄心1の中心に対する点対称の配置となっている。この長溶接部21の配置は、図3において2号機の「1番目の溶接部」に対応している。
【0050】
以下、図3に対して長溶接部21が単一か複数かの違いは有るが、2か所の長溶接部21の点対称の配置が、一体として1号機から8号機の溶接機に応じて設定される。
【0051】
[積層鉄心の製造方法]
図5は、図1のローターコアの積層組立に用いる積層組立装置の主要部を示す斜視図である。図6は、整列治具上に積層された積層鉄心片を示す斜視図である。図7は、積層鉄心片の溶接状況を示す斜視図である。
【0052】
積層鉄心1は、プレス工程と、積層工程と、溶接工程と、検査工程とを経て製造される。溶接工程において、全域溶接部17、短溶接部19、及び長溶接部21の形成が行われる。
【0053】
(プレス工程)
プレス工程においては、図5のように、帯状の磁性鋼板を、金型装置によりプレス加工することにより、複数の円弧状鉄心片7を一対の連結部23で連結したキャリア付き単板25を製造する。そして、製造したキャリア付き単板25を、次工程の積層工程へと移行する。
【0054】
(積層工程)
積層工程では、環状の鉄心片5を軸方向に積層して積層鉄心片3を形成する。すなわち、まず積層組立装置内に挿入されたキャリア付き単板25を保持して電気式インデックス機27側へ搬送する。
【0055】
そして、 搬送されるキャリア付き単板25の連結部23から円弧状鉄心片7が順次切り離される。切り離された円弧状鉄心片7は、電気式インデックス機27の回転台29上の整列治具31に、パンチによって押し込まれる。
【0056】
なお、整列治具31は、図7に示されるリング形の下板32及び上板33を含んで構成されているが、積層工程では上板33が取り外された状態で使用される。
【0057】
整列治具31上に押し込まれた円弧状鉄心片7は、それぞれガイド孔13にガイドピン35が挿入された状態で整列治具31上に保持される。この整列治具31は、電気式インデックス機27の回転台29によって、周方向に回転されると共に、所定のタイミングで下降される。
【0058】
所定の処理が順次繰り返されることにより、複数の環状の鉄心片5が周方向に位相をずらされて積層(回転積層)され、積層鉄心片3が製造される。製造された積層鉄心片3を整列治具31ごと回転台29から取り外し、次工程の溶接工程へと移行する。
【0059】
(溶接工程)
溶接工程では、積層鉄心片3を軸方向に沿って溶接する溶接部Wを形成し、溶接部Wで形成される溶接パターンPを溶接部Wを形成した溶接機毎に異ならせる。本実施例では、積層鉄心片3の内周部における周方向における複数の部位、例えば16箇所において、各層の円弧状鉄心片7を軸方向に沿って溶接する。
【0060】
具体的には、先ず、図7に示すように、整列治具31に上板33が取り付けられる。この上板33は、例えばボルトの締結によって8本の支柱37の上端に固定され、積層鉄心片3を所定の厚さに保持する。なお、上板33をボルトによって締結する代わりに、押圧装置等で積層鉄心片3に直接または上板33を介して荷重を付加してもよい。
【0061】
次いで、ファイバーレーザー溶接機の回転台上に、整列治具31に挟まれた積層鉄心片3が取り付けられる。そして、ファイバーレーザー溶接機のトーチ39により溶接が行われる。
【0062】
この溶接は、例えば全域溶接部17、短溶接部19、長溶接部21の順等により行われ、溶接パターンPが形成される。本実施例1の溶接機は、1号機から8号機まであり、2号機から8号機までの各溶接機での溶接パターンPは、長溶接部21の配置が図3で説明したとおり異なる。
【0063】
完成した積層鉄心1は、次工程の検査工程において所定の検査を受ける。
【0064】
[作用効果]
本実施例の積層鉄心1及びその製造方法では、積層鉄心片3を溶接するための溶接部Wの溶接パターンPを確認することで、溶接機の識別を可能とする。このため、溶接機を識別するための設備代が削減でき、加工部の変形等も抑制することができる。
【0065】
本実施例では、長溶接部21の長さを短溶接部19よりも長くし、2号機から8号機までは長溶接部21の配置を異ならせ、1号機では長溶接部21を無くしたため、長溶接部21の配置を確認するだけで1号機から8号機の識別を行うことができる。
【0066】
従って、積層鉄心1の製造において複数の溶接機を有する場合でも、トレーサビリティを向上し、溶接を行った溶接機を容易に認識することができる。
【0067】
短溶接部19及び長溶接部21は、積層鉄心1の表層側の剥離も抑制できる。
【0068】
長溶接部21の配置は、溶接機毎にキー凸部15を基準にして行われるため、既存の構造部を利用した簡単な構造にすることができる。
【0069】
部分溶接部は、異なる長さの短溶接部19及び長溶接部21を含み、キー凸部15に対する配置は、異なる長さの短溶接部19及び長溶接部21相互の配置関係である。本実施例では、溶接機が異なれば全域溶接部17及び短溶接部19に対し長溶接部21の位置を変更し、配置関係を形成することができる。
【0070】
このため、配置の認識を容易に行わせることができ、溶接品質を向上できる追加の溶接を利用するから簡単な構造で実現できる。
【実施例0071】
図8は、実施例2に係る積層鉄心の平面概念図である。図9は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。なお、実施例2の積層鉄心は、基本的な構成が実施例1と共通し、同一又は対応する構成部分に同符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0072】
本実施例の積層鉄心1は、部分溶接部が異なる長さのものとして短溶接部19及び長溶接部21の他に中溶接部41を含む。
【0073】
本実施例の積層鉄心1では、実施例1の図2に表示されているキー凸部15が図8のように存在しない。図8の積層鉄心1では、図2のキー凸部15の位置に中溶接部41を配置している。中溶接部41の長さは、短溶接部19及び長溶接部21の中間のサイズである。
【0074】
溶接パターンPは、中溶接部41に対する短溶接部19及び長溶接部21の配置によって形成される。つまり、溶接パターンPは、長さの異なる部分溶接部である短溶接部19、長溶接部21、及び中溶接部41の相互の配置関係に基づく。
【0075】
なお、中溶接部41は、短溶接部19及び長溶接部21に対して区別できればよく、短溶接部19よりも短く、或いは長溶接部21よりも長く設定することもできる。
【0076】
従って、本実施例においても、図8における中溶接部41から時計回りに何番目の全域溶接部17に長溶接部21が隣接配置されているか、長溶接部21が存在しないかにより、図3と同様の図9の組み合わせが実現できる。
【0077】
このため、本実施例では、キー凸部15の有無に拘わらず実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
なお、本実施例においても、実施例1の図2の二つのキー凸部15に代えて二つの中溶接部41を設定し、図4の変形例と同様に実施することができる。
【実施例0079】
図10は、実施例3に係る積層鉄心の平面概念図である。図11は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。なお、実施例3の積層鉄心は、基本的な構成が実施例1と共通し、同一又は対応する構成部分に同符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0080】
本実施例の積層鉄心1は、実施例1と同様に、部分溶接部が異なる長さのものとして短溶接部19及び長溶接部21を含む。ただし、本実施例は、二つの長溶接部21が設定されている。
【0081】
溶接パターンPは、二つの長溶接部21の配置によって形成される。つまり、溶接パターンPは、長さの異なる部分溶接部である短溶接部19及び二つの長溶接部21の相互の配置関係に基づく。
【0082】
具体的には、図10における時計回りで最初の第1の長溶接部21から時計回りに次の第2の長溶接部21が隣接する全域溶接部17間に位置する他の全域溶接部17の本数によって、図3と同様の図11の組み合わせが実現できる。なお、図11では、第1及び第2の長溶接部21が隣接する全域溶接部17間に位置する他の全域溶接部17の本数を「間隔」として示している。
【0083】
従って、実施例3では、キー凸部15の有無に拘わらず実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例0084】
図12は、実施例4に係るローターコアの平面概念図である。図13は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。なお、実施例4の積層鉄心は、基本的な構成が実施例1と共通し、同一又は対応する構成部分に同符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0085】
本実施例の積層鉄心1は、部分溶接部が異なる長さのものとして短溶接部19及び長溶接部21を含む。ただし、本実施例は、第1、第2、及び第3の長溶接部21を含む構成とした。
【0086】
溶接パターンPは、三つの長溶接部21の配置によって形成される。つまり、溶接パターンPは、長さの異なる部分溶接部である短溶接部19及び三つの長溶接部21の相互の配置関係に基づく。
【0087】
従って、本実施例では、図12における時計回りで最初の第1の長溶接部21から時計回りに次の第2の長溶接部21とさらに次の第3の長溶接部21とが隣接する全域溶接部17間に位置する他の全域溶接部17の本数をカウントする。
【0088】
例えば、図12の配置では、第1、第2、及び第3の長溶接部21が隣接する全域溶接部17の各間に他の全域溶接部17が存在しない。第1及び第2の長溶接部21が隣接する全域溶接部17間の間隔A、第2及び第3の長溶接部21が隣接する全域溶接部17間の間隔Bとすると、間隔A=0、間隔B=0となり、1号機に対応する。
【0089】
間隔A=0、間隔B=1とすると、2号機に対応する。
【0090】
同様にして、間隔Aを基準に間隔Bを変更することで、図3と同様の図13の組み合わせが実現できる。
【0091】
従って、実施例4では、キー凸部15の有無に拘わらず実施例1と同様の作用効果を奏することができ、且つ識別数を増加させることができる。
【実施例0092】
図14は、実施例5に係る積層鉄心の平面概念図である。図15は、溶接機と溶接部の配置との関係を示す図表である。なお、実施例5の積層鉄心は、基本的な構成は実施例1と共通し、同一又は対応する構成部分に同符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0093】
本実施例の積層鉄心1は、部分溶接部が複数の同一長さのものとして例えば二つの長溶接部21を含み、短溶接部19を省略している。なお、二つの長溶接部21に代えて、二つの短溶接部19や二つの中溶接部41を設けてもよい。
【0094】
溶接パターンPは、二つの長溶接部21の配置によって形成される。つまり、溶接パターンPは、同一長さの部分溶接部である二つの長溶接部21の相互の配置間隔に基づく。
【0095】
従って、本実施例では、実施例3と同様にキー凸部15の有無に拘わらず、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。しかも、本実施例では、部分溶接部の形成箇所を少なくすることができ、構造を簡単にすることができる。なお、短溶接部19を省略する構成を実施例1および実施例2に適用してもよい。
【実施例0096】
図16は、実施例6に係る積層鉄心の要部斜視図である。なお、実施例6の積層鉄心は、基本的な思想が実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分に同符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0097】
本実施例の積層鉄心1は、電動モーターや発電機の回転子側に用いられるステーターコアに適用したものである。この積層鉄心1の積層鉄心片3は、内周部に周方向に間隔を空けて設けられたティース部42を備えている。積層鉄心3の外周部は、軸方向に整列した凹部であるキー凹部43を含んでいる。なお、キー凹部43は、溶接パターンPの基準位置を特定できる形状を有する部分に代えることができ、例えば、キー凸部、耳部、その他の凹部または凸部としてもよい。
【0098】
また、積層鉄心3の外周部には、キー凹部43に対する短溶接部19及び長溶接部21の配置からなる溶接パターンPが形成されている。つまり、溶接パターンPは、長さの異なる部分溶接部である短溶接部19、及び長溶接部21の相互の配置関係に基づく。
【0099】
このため、本実施例においても、図16におけるキー凹部43から時計回りに何番目の全域溶接部17に長溶接部21が隣接配置されているか、長溶接部21が存在しないかにより、図3と同様に溶接機を識別できる。
【0100】
従って、実施例6では、積層鉄心1がステーターコアであっても、実施例1等と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 積層鉄心
3 積層鉄心片
5 環状鉄心片
7 円弧状鉄心片
15 キー凸部(凸部)
17 全域溶接部
19 短溶接部(部分溶接部)
21 長溶接部(部分溶接部)
41 中溶接部(部分溶接部)
43 キー凹部(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16