(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060340
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】射出成形システム及び射出成形機の遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167654
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
(72)【発明者】
【氏名】鼎 佑介
(72)【発明者】
【氏名】日原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】梅田 光秀
(72)【発明者】
【氏名】菊本 宗志
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM04
4F206AM08
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP27
4F206JP30
4F206JQ88
4F206JQ90
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】射出成形機の遠隔制御が可能で、成形品の品質を容易に確保することが可能な射出成形システムを提供する。
【解決手段】射出成形システム101は、射出成形機1と、射出成形機1で作成された成形品の形状データを取得し送信する形状データ取得手段L12と、データ通信回線N1を介して形状データ取得手段L12と接続され、形状データ取得手段L12からデータ通信回線N1を介して送信された形状データを表示するリモート画像表示装置R11と、制御用通信回線N2を介して射出成形機1と接続され、制御用通信回線N2を介して射出成形機1の設定を遠隔制御するリモートコントローラR3と、を有する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と、
前記射出成形機で作成された成形品の形状データを取得する形状データ取得手段と、
データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続され、前記形状データ取得手段から前記データ通信回線を介して送信された前記形状データを表示するリモート画像表示装置と、
制御用通信回線を介して前記射出成形機と接続され、前記制御用通信回線を介して前記射出成形機を遠隔制御するリモートコントローラと、
を有する射出成形システム。
【請求項2】
前記形状データ取得手段を備え人の頭部に装着可能なローカル装着具を有し、
前記ローカル装着具は、
前記成形品を撮影して前記形状データを所得する撮像装置と、
取得された前記形状データを、前記データ通信回線を介して前記リモート画像表示装置に送信する通信手段と、を有している、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記ローカル装着具の装着者が装着可能で、前記装着者の生体情報を取得する生体情報取得装置と、
前記生体情報取得装置で取得された前記生体情報を、前記データ通信回線を介して受け付ける生体情報受付部と、
を有する、請求項2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
人の頭部に装着可能で前記リモート画像表示装置を備えるリモート装着具を有し、
前記ローカル装着具はローカル画像表示装置を有し、
前記ローカル画像表示装置と前記リモート画像表示装置は、前記撮像装置で取得された前記形状データを同時に表示する、請求項2に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記形状データに情報を付加した情報付き形状データを生成する情報付加手段を有し、
前記リモート画像表示装置と前記ローカル画像表示装置は前記情報付き形状データを同時に表示する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記情報はテキスト情報を含む、請求項5に記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記情報は前記成形品の一部を特定するための図形情報を含む、請求項5に記載の射出成形システム。
【請求項8】
前記ローカル装着具と前記リモート装着具はそれぞれ音声通話装置を有している、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項9】
前記射出成形機は、
人の接近を防止する安全機構と、
前記射出成形機の運転中に前記安全機構を解除する操作を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記解除する操作が検出されたときに、前記射出成形機の運転を停止する非常停止手段と、
を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項10】
前記射出成形機は、
人の接近を防止する安全機構と、
前記射出成形機の運転中に前記安全機構の解除操作を阻止する阻止手段と、
を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項11】
前記データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続された操作制御部を有し、
前記形状データ取得手段は、
前記射出成形機から取り外された前記成形品を把持して前記成形品の姿勢を変更可能なマニピュレータと、
取り外された前記成形品を撮影して前記形状データを所得する撮像装置と、を有し、
前記撮像装置は、取得された前記形状データを、前記データ通信回線を介して前記リモート画像表示装置に送信する通信手段を備え
前記操作制御部は、前記マニピュレータと前記撮像装置と前記通信手段を、前記データ通信回線を介して制御可能である、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項12】
前記データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続された操作制御部と、
前記形状データ取得手段を備えた飛行体と、を有し、
前記形状データ取得手段は、前記成形品を撮影して前記形状データを所得する撮像装置を備え、前記撮像装置は、取得された前記形状データを、前記データ通信回線を介して前記リモート画像表示装置に送信する通信手段を備え、
前記操作制御部は、前記飛行体と前記撮像装置と前記通信手段を、前記データ通信回線を介して制御可能である、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項13】
前記形状データに基づき前記射出成形機の推奨設定を求める設定調整部と、
前記設定調整部で求めた前記推奨設定に基づき前記射出成形機の前記設定を調整するように、前記リモートコントローラを操作するリモートコントローラ操作部と、
を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項14】
前記設定調整部は、
特徴量を受け付ける受付手段と、
前記特徴量から前記推奨設定を推定する推定モデルと、
前記推奨設定を前記リモートコントローラ操作部に出力する出力手段と、
を有する、請求項13に記載の射出成形システム。
【請求項15】
前記射出成形機から発生する音を収集する音収集手段と、
前記音収集手段で取得された音を、前記データ通信回線を介して出力するスピーカと、
を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項16】
前記成形品の3次元の設計形状情報を記憶する形状情報記憶部と、
前記データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続され、前記形状データ取得手段で取得された前記形状データと前記設計形状情報との差分を抽出する差分抽出器と、
を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項17】
前記リモートコントローラは前記リモート画像表示装置の近傍に設置されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項18】
以下の工程を含む射出成形機の遠隔制御方法:
(a)射出成形機で作成された成形品の形状データを形状データ取得手段によって取得し、データ通信回線を介してリモート画像表示装置に送信する工程;
(b)前記形状データ取得手段から送信された前記形状データを、前記リモート画像表示装置で表示する工程;及び
(c)制御用通信回線を介して前記射出成形機と接続されたリモートコントローラによって、前記射出成形機を遠隔制御する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形システム及び射出成形機の遠隔制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を遠隔制御するシステムが知られている。特許文献1には、クリーンルームに設置された射出成形機をクリーンルーム外に設置されたコンピュータによって遠隔制御するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機の運転の際はオペレータが射出成形機を直接操作するのが一般的である。これによって成形品の品質をオペレータが直接確認することができ、不良品が発見された場合には、オペレータが射出成形機の設定を調整することができる。一方、今後は社会的要因により、射出成形機を遠隔制御するニーズの増加や、熟練オペレータの不足が考えられる。これらの場合、成形品の品質を適切に確認することが困難となる可能性がある。
【0005】
本開示は、射出成形機の遠隔制御が可能で、成形品の品質の確保が容易な射出成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る射出成形システムは、射出成形機で作成された成形品の形状データを取得する形状データ取得手段と、データ通信回線を介して形状データを表示するリモート画像表示装置と、制御用通信回線を介して射出成形機を遠隔制御するリモートコントローラと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、射出成形機の遠隔制御が可能で、成形品の品質の確保が容易な射出成形システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1の実施形態に係る射出成形システムの概略構成図である。
【
図2A】第1の実施形態における射出成形機の概略正面図である。
【
図3A】形状データに付加される情報の例を示す図である。
【
図3B】形状データに付加される情報の他の例を示す図である。
【
図4A】第2の実施形態に係る射出成形システムの概略構成図である。
【
図5A】第3の実施形態に係る射出成形システムの概略構成図である。
【
図6A】第4の実施形態に係る射出成形システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
<全体構成>
図1Aに第1の実施形態に係る射出成形システム101の全体構成を、
図1Bに第1の実施形態に係る射出成形システム101の機能関連図を示す。射出成形システム101の設置場所は大きく分けて、射出成形機1が設置される場所(以下、ローカルエリアLAという)と、射出成形機1を遠隔制御する場所(以下、リモートエリアRAという)と、に区分される。
【0010】
ローカルエリアLAとリモートエリアRAの距離は限定されず、例えば、ローカルエリアLAとリモートエリアRAは同一の建物内の異なるエリアであってもよい。リモートエリアRAは例えば、射出成形機1の製造者または所有者のオフィスである。ローカルエリアLAにはローカルオペレータLPがおり、リモートエリアRAにはリモートオペレータRPがいる。
【0011】
ローカルエリアLAとリモートエリアRAはデータ通信回線N1及び制御用通信回線N2で接続されている。通信回線は特に限定されず、専用回線、通信事業者が提供する回線のいずれでもよい。本実施形態では、データ通信回線N1と制御用通信回線N2は機能上の観点から別々の通信回線としているが、一つの共通回線であってもよい。
【0012】
<射出成形機1の構成>
ここで、
図2Aを参照して射出成形機1の概略構成について説明する。射出成形機1は、金型Mを型締めする型締装置2と、射出される材料を加熱溶融して射出する射出装置3と、から概略構成されている。また、射出成形機1は、成形品の自動取り出し装置4と、安全機構5(
図2B参照)と、制御部6と、を備えている。
【0013】
<型締装置2>
型締装置2は、ベッド21上に固定され固定金型M1が取り付けられる固定盤22と、ベッド21上をスライド可能な型締ハウジング23と、ベッド21上をスライド可能で可動金型M2が取り付けられる可動盤24と、を備えている。固定盤22と型締ハウジング23は複数本のタイバー25によって連結されている。可動盤24と型締ハウジング23の間には、金型Mを開閉するための型締機構26が設けられている。型締機構26はトグル機構から構成されている。図示は省略するが、型締機構26は直圧式の型締機構、つまり油圧式の型締シリンダから構成してもよい。
【0014】
<射出装置3>
射出装置3は基台31上に設けられている。射出装置3は、シリンダ32と、シリンダ32に収容されたスクリュ33と、スクリュ33を駆動する駆動機構34と、を備えている。スクリュ33は駆動機構34によって回転駆動されるとともに軸方向Xに駆動される。駆動機構34はカバー35で覆われている。シリンダ32の後端部近傍に、射出される材料を供給するホッパ36が設けられている。ホッパ36は射出される材料が供給される材料供給開口36Aを備えている。シリンダ32の先端には材料を射出する射出ノズル37が設けられている。
【0015】
射出装置3はノズルタッチ装置38を備えている。ノズルタッチ装置38は射出装置3を前進させ、それによって射出ノズル37が金型MのスプルーブッシュM3にタッチする。ノズルタッチ装置38は駆動機構34と固定盤22とを連結している。ノズルタッチ装置38は、たとえば油圧シリンダを用いた機構、あるいは、ボールねじを用いた機構によって構成される。
【0016】
<自動取り出し装置4>
固定盤22の上面には成形品の自動取り出し装置4が設けられている。自動取り出し装置4は成形品を把持して移動させるアーム41を備えている。アーム41は、金型Mが型開きした後、金型Mから成形品を取り出し、成形品を把持しながら所定の場所に搬送する。
【0017】
<安全機構5>
図2Bを参照すると、射出成形機1の金型Mの取付部の前面(ローカルオペレータLPが接近する側)に安全機構5が設けられている。安全機構5は、軸方向Xに移動可能なドア51を有している。ドア51は射出成形機1の運転時に金型Mを覆い、射出成形機1の停止時には、軸方向Xに移動して金型Mの取付部から離れることができる。安全機構5は、運転中にローカルオペレータLPが射出成形機1、特に金型Mに接近(接触を含む)することを防止し、ローカルオペレータLPを保護する。ドア51は制御部52によって制御される。制御部52は空気回路(図示せず)を有し、空気圧でドア51を作動させる。制御部52には、オペレータがドア51を開閉するための操作部53が設けられている。
【0018】
<ローカルエリアLAとリモートエリアRAの主要設備>
図1A,1Bを参照すると、ローカルエリアLAには、射出成形機1の他、射出成形機1で作成された成形品Pの形状データを取得する形状データ取得手段L12と、ローカルコンピュータL2が設けられている。リモートエリアRAには、形状データ取得手段L12で取得された形状データを表示するリモート画像表示装置R11と、リモートコンピュータR2と、射出成形機1を遠隔制御するリモートコントローラR3と、が設けられている。
【0019】
形状データ取得手段L12とリモート画像表示装置R11は、後述するローカルコンピュータL2及びリモートコンピュータR2を介し、データ通信回線N1で接続されている。リモートコントローラR3は、リモート画像表示装置R11の近傍に設置され、制御用通信回線N2を介して射出成形機1と接続されている。射出成形システム101はローカルエリアLAとリモートエリアRAに設けられたこれらの設備の他、データ通信回線N1と制御用通信回線N2を含んでいる。以下、個々の設備について説明する。
【0020】
<ローカル装着具L1>
ローカル装着具L1は人(ローカルオペレータLP)の頭部(人の首より上の部分を意味する)に装着可能である。ローカル装着具L1は以下の装置及び手段を有している。
・成形品Pを撮影して形状データを所得する撮像装置L11(形状データ取得手段L12)
・撮像装置L11で取得された形状データを、データ通信回線N1を介してリモート画像表示装置R11に送信する通信手段L13
・ローカル画像表示装置L14
・音声通話装置L15
【0021】
撮像装置L11は形状データ取得手段L12の一具体例である。撮像装置L11は小型化の観点からCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備えるものが好ましい。形状データは静止画、動画のいずれであってもよく、所定の箇所の寸法のような数値データであってもよい。形状データ取得手段L12は、成形品Pの形状データないし画像データを取得可能であればこれに限定されず、例えば自動寸法測定器、レーザ光による測距装置を用いることもできる。
【0022】
ローカル装着具L1としては、眼鏡タイプのもの(いわゆるスマートグラス)、ゴーグルタイプのものなどを利用することができ、上記の機能を有するものであれば限定されない。ローカル装着具L1を用いることで、ローカルオペレータLPが両手を他の目的に使用できるため、作業効率の向上が可能となる。ローカルオペレータLPは成形品Pを自動取り出し装置4から取り外し、所定の位置(机の上など)に載置し、撮像装置L11で成形品Pを撮影する。
【0023】
通信手段L13は、撮像装置L11で取得された形状データを、データ通信回線N1を介してリモート画像表示装置R11に送信する。通信手段L13は無線方式が好ましく、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信規格を用いたもの、WI-FI(登録商標)などの無線LANを用いたものが利用できる。
【0024】
ローカル画像表示装置L14は液晶、有機ELなどの画像表示デバイスを利用可能であるが、後述する情報付加手段22を利用するため、拡張現実(AR)機能を有するものが好ましい。AR機能を用いることで、実際に撮像した画像に他の情報を重ねて表示することができる。音声通話装置L15はいわゆるハンズフリー電話と同等の機能を有していればよく、マイクとスピーカを備えていれば構成は限定されない。
【0025】
<ローカルコンピュータL2>
ローカルコンピュータL2はPC、タブレット端末などで構成され、ローカル装着具L1に無線接続されている。ローカルコンピュータL2はリモートコンピュータR2との通信を行うための通信手段L21を備えるとともに、ローカル装着具L1の制御を行う。ローカルコンピュータL2はローカル装着具L1とデータ通信回線N1との間に介在し、ローカル装着具L1から送信されたデータ及びローカル装着具L1に送信されるデータを中継する。ローカル装着具L1を直接データ通信回線N1に接続する場合、ローカルコンピュータL2を省略することもできる。
【0026】
<リモート装着具R1>
リモート装着具R1は人の頭部に装着可能で、リモート画像表示装置R11を備える。リモート画像表示装置R11は、リモートコンピュータR2及びデータ通信回線N1を介して、形状データ取得手段L12(ローカル装着具L1の撮像装置L11)と接続されている。リモート画像表示装置R11は、撮像装置L11で取得された形状データをオンラインで表示する。リモート装着具R1として例えばVRゴーグルが挙げられるが、画像表示装置を備える限り、特に限定されない。
【0027】
リモート装着具R1は音声通話装置R12を有している。ローカル装着具L1も音声通話装置L15を有しているので、ローカルオペレータLPとリモートオペレータRPとの間で双方向の通話が可能である。例えば、リモートオペレータRPは、成形品Pの向きを変える指示や、画像の倍率を変える指示を音声で伝達できる。また、撮像装置L11で取得された形状データはローカル画像表示装置L14とリモート画像表示装置R11に同時に表示される。これによって、ローカルオペレータLPとリモートオペレータRPの間で成形品Pの外観に関する情報(同じ画像データ)を共有することができる。従って、リモートオペレータRPは音声通話装置R12でローカルオペレータLPと通話をしながら、成形品Pの形状や状態をより正確に把握することができる。
【0028】
<リモートコンピュータR2>
リモートコンピュータR2はPC、タブレット端末などで構成され、データ通信回線N1を介して形状データ取得手段L12と接続されている。リモートコンピュータR2は、リモート装着具R1と無線接続されている。リモートコンピュータR2は、形状データ取得手段L12で取得されデータ通信回線N1を介して送信された形状データを、リモート装着具R1に送信する。また、リモートコンピュータR2は、撮像装置L11で取得された形状データをリモートコンピュータR2のディスプレイで表示することもできる。
【0029】
<情報付加手段R22>
リモートコンピュータR2は、
図3A,3Bに示すような、形状データに情報を付加した情報付き形状データ61を生成する情報付加手段R22を有している。情報は例えばテキスト情報である。テキスト情報の形式は問わず、短い文章や表形式の文書も含む。情報は図面、写真などのイメージ情報でもよい。情報付加手段R22はリモートコンピュータR2のプログラムまたはアプリケーションとして備えることができるが、リモートコンピュータR2とは独立して設けることもできる。リモートコンピュータR2は、ローカルコンピュータL2及びリモート装着具R1との通信を行うための通信手段L21を備えている。
【0030】
図3Aに情報付き形状データの一例を示す。成形品Pの形状を表す形状データ62とテキスト情報63が、リモート画像表示装置R11に重ねて表示されている。図示は省略するが、ローカル画像表示装置L14にも、リモート画像表示装置R11に表示されるのと同じ画像が、リモート画像表示装置R11と同時に表示される。
【0031】
図3Aは、リモートオペレータRPが成形品Pの形状データを確認し、成形品Pに不良個所を発見した例を示している。リモートオペレータRPは不良個所の観察のために、成形品Pの下部を拡大して撮影する指示(テキストガイダンス)をリモートコンピュータR2に入力する。情報付加手段R22は、入力されたテキストを認識し、形状データ62とテキスト情報63を重ね合わせた情報付き形状データ61を生成する。リモートコンピュータR2は、情報付き形状データ61をリモート装着具R1に送信するとともに、データ通信回線N1を介してローカル装着具L1にも送信する。
【0032】
テキスト情報63はローカルオペレータLPとリモートオペレータRPの間で共有することができるので、情報を正確かつ確実に伝達できる可能性が高まる。特に、複雑な情報の場合、テキスト情報63を用いることで、音声通話装置R12,L15と比べてより確実に情報を伝達することができる。また、テキスト情報63は音声データと比べてデータ容量が小さいので、データ通信回線N1の負荷も限定的である。テキスト情報63の内容は限定されず、撮影方法の指示だけでなく射出成形機1の操作ガイダンス(例えば、シリンダ圧力を○○MPaに設定)などであってもよい。テキスト情報63は定型文のリストからリモートオペレータRPが選択するようにしてもよい。周囲の騒音によって音声通話装置R12,L15での通話が困難な場合に、音声通話装置R12,L15の代替手段として用いることもできる。ローカルコンピュータL2が同様の情報付加手段R22を備えていてもよい。
【0033】
図3Bに情報付き形状データの他の例を示す。成形品Pの形状を表す形状データ62と図形情報64が、リモート画像表示装置R11に重ねて表示されている。図形情報64は、成形品Pの一部を特定するための情報である。このような情報は例えば、リモートオペレータRPがリモートコンピュータR2の画面にマウスやスタイラスペンによって丸印や矢印を描くことで生成することができる。
【0034】
リモートオペレータRPが形状データの特定の部位で成形品Pの不良の可能性を認識した場合、当該部位に丸印や矢印を描き、視覚情報としてローカルオペレータLPに伝えることができる。この際、リモートオペレータRPは音声通話装置R12を使って、当該部位を拡大する指示や、撮影する方向を変える指示などを送ることができる。情報は、テキスト情報63と図形情報64の両者を含んでいてもよい。これによって、リモートオペレータRPは、上述のテキスト情報63を使って撮影に関する指示などを送ることができる。
【0035】
<生体情報取得装置L3>
射出成形システム101は、ローカル装着具L1を装着する装着者(ローカルオペレータLP)が装着可能な生体情報取得装置L3を有している。生体情報取得装置L3はローカルオペレータLPの身体に直接、またはローカルオペレータLPが着用する衣服に設けられるが、ローカル装着具L1に設けてもよい。生体情報取得装置L3はローカルオペレータLPの生体情報(目の挙動、血圧、脈拍等)を取得する。リモートコンピュータR2は、生体情報取得装置L3で取得された生体情報を、データ通信回線N1を介して受け付ける生体情報受付部R23を有している。生体情報管理システムを用いることで、リモートオペレータRPはローカルオペレータLPの体調をモニターすることができる。
【0036】
<射出成形機1の安全機構5>
ローカルオペレータLPは成形品Pの撮影を行うが、射出成形機1の運転や設定調整を行わないこともある。このため、ローカルオペレータLPが停止中の射出成形機1に接近したときに、リモートコントローラR3からの指令によって射出成形機1が運転を始め不慮の事故が生じる可能性がある。例えば、ローカルオペレータLPが操作部53を操作し安全機構5を解除して(例えば、ドア51を開き)射出成形機1に接近したときに、射出成形機1が運転を始める可能性がある。
【0037】
図1B,2Bに示すように、射出成形システム101は、射出成形機1の運転中に安全機構5を解除する操作を検出する検出手段54を有している。検出手段54の例として超音波センサが挙げられる。超音波センサは超音波の送波器と受波器を備え、送波器から発出される超音波が閉止中のドア51に当たるように、安全機構5の近傍に配置される。
【0038】
射出成形機1はさらに、解除する操作が検出手段54によって検出されたときに、射出成形機1の運転を停止する非常停止手段55を有している。非常停止手段55は例えば制御部6に設けられている。検出手段54は、安全機構5が解除されたこと(例えば、ドア51が開いたこと)を検出すると、射出成形機1の制御部6に信号を送信する。制御部6はこの信号を受信し、射出成形機1が運転中である場合、非常停止手段55を作動させて射出成形機1を停止させる。
【0039】
射出成形機1が不意に再起動することを防止するため、非常停止手段55の解除及び/または射出成形機1の再起動は制御部6のみで行えるようにする(リモートコントローラR3では行えないようにする)ことが好ましい。ローカルオペレータLPのみが射出成形機1を運転する場合は、制御部6をリモートコントローラR3からの遠隔指令を受け付けない設定にするとともに、非常停止手段55を作動させないようにしてもよい。
【0040】
代替例では、射出成形機1は、人の接近を防止する安全機構5と、射出成形機1の運転中に安全機構5の解除操作を阻止する阻止手段56と、を有している。阻止手段56は、安全機構5の操作部53に接続されている。操作部53が阻止手段56によってロックされているとき、操作部53の手動解除操作は不能となり、操作部53がアンロック状態のときは、操作部53の手動解除操作が許可される。阻止手段56による操作部53のロック/アンロックは電気的手段で行ってもよいし、機械的手段で行ってもよい。阻止手段56は射出成形機1の制御部6、安全機構5の制御盤(図示せず)、リモートコントローラR3などで制御可能である。
【0041】
<音収集手段L4>
射出成形システム101は、射出成形機1から発生する音を収集する音収集手段L4と、音収集手段L4で取得された音を出力するスピーカR13と、を有する。音収集手段L4は例えばマイクであり、ローカルエリアLA、好ましくは射出成形機1の近傍に設けられる。スピーカR13はリモート装着具R1に設けられているが、リモートコンピュータR2に内蔵されているスピーカでもよく、リモートコンピュータR2に接続された外部スピーカでもよい。
【0042】
音収集手段L4で取得された音はデータ通信回線N1を介してリモートコンピュータR2に送信され、リモートコンピュータR2は受信した音をスピーカR13に送信する。リモートオペレータRPは射出成形機1の運転音に基づき、射出成形機1の異常や異常の兆候を検知し、必要に応じて、リモートコントローラR3を介し射出成形機1の設定を変更することができる。
【0043】
<形状比較システム>
射出成形システム101は、成形品Pの3次元の設計形状情報を記憶する形状情報記憶部R24と、形状データと3次元の設計形状情報との差分を抽出する差分抽出器R25と、を有する。形状情報記憶部R24と差分抽出器R25はリモートコンピュータR2に設けられるが、リモートコンピュータR2に接続されたサーバに設けられてもよい。差分抽出器R25は、データ通信回線N1を介して形状データ取得手段L12と接続されている。差分抽出器R25は、形状データ取得手段L12で取得された形状データと3次元の設計形状情報とを比較し、両者の差分を抽出する。これによって、成形品Pの不良個所の特定が容易となり、不良の程度もより正確に把握することができる。
【0044】
3次元の設計形状情報は、例えば成形品Pの3DCADデータである。形状データは2次元であるので、3次元の設計形状情報と直接比較することができない。そこで、リモートコンピュータR2は3次元の設計形状情報の向きを調整することによって、形状データを撮影した方向から見たのと同様のビューを生成する。このビューと形状データの縮尺を合わせ画面上で重ねることで、形状データにあってビューに無い部分や、ビューにあって形状データに無い部分を差分として抽出することができる。例えば、成形品Pに発生したバリは前者の差分として抽出され、成形品Pに発生したヒケは後者の差分として抽出される。
【0045】
<リモートコントローラR3>
リモートコントローラR3は制御用通信回線N2を介して射出成形機1を遠隔制御し、特には射出成形機1の設定を遠隔調整する。リモートオペレータRPはリモート画像表示装置R11や形状比較システムで把握した成形品Pの形状や状態、音収集手段L4で収集した射出成形機1の運転音などを元に、リモートコントローラR3で適切な設定を決定し、射出成形機1に送信する。射出成形機1の設定としてはシリンダ内圧力、射出時のスクリュ33の軸方向X位置などが挙げられる。
【0046】
(第2の実施形態)
図4Aに第2の実施形態に係る射出成形システム201の全体構成を、
図4Bに第2の実施形態に係る射出成形システム201の機能関連図を示す。第1の実施形態と同じ構成や効果は説明を省略する。本実施形態では、ローカルオペレータLPが不要である。リモートオペレータRPは、成形品Pの撮影、観察、射出成形機1の設定調整を一人で行うことができるため、ローカルオペレータLPが不在のときでも、射出成形機1の運転を続けることができる。
【0047】
また、
図1A,
図1Bに示す、ローカルオペレータLPに関連するローカル装着具L1、
図2Bに示す、安全機構5の検出手段54、非常停止手段55、阻止手段56、
図1A,
図1Bに示す、生体情報取得装置L3、生体情報受付部R23、音声通話装置R12,L15、情報付加手段R22も省略可能である。従って、射出成形システム201の構成は射出成形システム101と比べて単純化される。
【0048】
射出成形システム201は、データ通信回線N1を介して形状データ取得手段L12と接続された操作制御部R26を有している。操作制御部R26は例えばリモートコンピュータR2のプログラムまたはアプリケーションとして備えることができるが、リモートコンピュータR2とは独立して設けることもできる。
【0049】
形状データ取得手段L12は、マニピュレータL16と、撮像装置L17と、を備えている。これらの装置はローカルエリアLAに設けられている。形状データ取得手段L12は自動寸法計測機17Aを有していてもよい。マニピュレータL16は無線または有線によってローカルコンピュータL2に接続されている。マニピュレータL16は、自動取り出し装置4を動かして自動取り出し装置4から成形品Pを取り外し、成形品Pを把持して姿勢を変更する機能を有している。マニピュレータL16はローカルコンピュータL2、データ通信回線N1を介してリモートコンピュータR2によって遠隔制御される。
【0050】
マニピュレータL16は把持部L16Aを先端に備えた関節式のアームL16Bを有している。
図4Aに矢印A1で示すように、アームL16Bが旋回することで、マニピュレータL16は取り外した成形品Pを撮像装置L17の正面に搬送する。さらに矢印A2~A4で示すように、マニピュレータL16は関節運動、旋回運動、首振り運動を行い、成形品Pの位置や姿勢を修正することができる。
【0051】
撮像装置L17は、自動取り出し装置4から取り外されマニピュレータL16で把持された成形品Pを撮影して、形状データを所得する。撮像装置L17はCCD、CMOSなどの撮像素子を備えるものが好ましい。撮像装置L17は固定式であるが、移動式であってもよい。特に光軸周りの角度が調整可能であること(首振り機能)が好ましい。撮像装置L17は無線または有線の通信手段L18を有し、撮像装置L17は通信手段L18によってローカルコンピュータL2に接続されている。通信手段L18は、取得された形状データ(画像データ)を、ローカルコンピュータL2とデータ通信回線N1を介してリモート画像表示装置R11に送信する。
【0052】
自動寸法計測機17Aを設けた場合は、自動寸法計測機17AをローカルコンピュータL2に接続し、寸法計測値がローカルコンピュータL2に送信されるようにすることが好ましい。取得された形状データ(寸法データ)は、ローカルコンピュータL2からデータ通信回線N1を介してリモート画像表示装置R11に送信される。
【0053】
操作制御部R26は、自動取り出し装置4とマニピュレータL16と撮像装置L17と通信手段L18を、データ通信回線N1を介して制御可能である。操作制御部R26は、まず自動取り出し装置4に成形品Pを金型から取り外す指令を送る。次に、操作制御部R26は、マニピュレータL16に、自動取り出し装置4から成形品Pを取り外し、成形品Pを把持して、撮像装置L17の正面に搬送する指令を送る。操作制御部R26は、撮像装置L17に、マニピュレータL16で把持された成形品Pで撮影する指令を送る。操作制御部R26は、通信手段L18に、取得された形状データをリモートコンピュータR2を介してリモート画像表示装置R11に送信する指令を送る。
【0054】
リモートオペレータRPはリモート画像表示装置R11に表示された成形品Pの形状や寸法を観察し、必要に応じ、操作制御部R26からマニピュレータL16に、成形品Pの位置や姿勢を調整する指令を送る。成形品Pの不良が確認された場合、リモートオペレータRPは第1の実施形態と同様にして、リモートコントローラR3を操作して射出成形機1の設定を調整する。
【0055】
(第3の実施形態)
図5Aに第3の実施形態に係る射出成形システム301の全体構成を、
図5Bに第3の実施形態に係る射出成形システム301の機能関連図を示す。第1の実施形態と同じ構成や効果は説明を省略する。本実施形態では、第2の実施形態と同様、ローカルオペレータLPが不要である。また、本実施形態は形状データ取得手段L12を飛行体L19によって実現している点を除き、第2の実施形態と同様であるので、第2の実施形態と同じ構成や効果についても説明を省略する。
【0056】
形状データ取得手段L12はドローンなどの飛行体L19である。飛行体L19ローカルエリアLAに設けられている。飛行体L19は無線または有線によってローカルコンピュータL2に接続されている。飛行体L19は、成形品Pを撮影して形状データを所得する撮像装置L110を備えている。撮像装置L110は無線の通信手段L111を有し、撮像装置L110は通信手段L111によってローカルコンピュータL2に接続されている。従って、通信手段L111は、取得された形状データを、ローカルコンピュータL2とデータ通信回線N1を介してリモート画像表示装置R11に送信する。撮像装置L111はCCD、CMOSなどの撮像素子を備えるものが好ましい。
【0057】
操作制御部R26は、飛行体L19と撮像装置L110と通信手段111を、データ通信回線N1を介して制御可能である。自動取り出し装置4が成形品Pを射出成形機1から取り外し把持した状態で、操作制御部R26は、撮像装置L110に周囲の動画を撮影する指令を送る。操作制御部R26は、通信手段L111に、撮影した動画をリモートコンピュータR2を介してリモート画像表示装置R11に送信する指令を送る。操作制御部R26は、飛行体L19の飛行を制御する。リモートオペレータRPはリモート画像表示装置R11に表示された動画を見ながら、飛行体L19を成形品Pの近傍に移動させる。
【0058】
リモートオペレータRPが、飛行体L19が好ましい撮影位置に到達したと判断すると、操作制御部R26は、撮像装置L110に、成形品Pを撮影する指令を送る。操作制御部R26は、通信手段L111に、取得された形状データをリモートコンピュータR2を介してリモート画像表示装置R11に送信する指令を送る。リモートオペレータRPはその後、第2の実施形態と同様にして射出成形機1の設定を調整する。
【0059】
飛行体L19は使用時を除き射出成形機1の近傍に設置する必要がないため、射出成形機1の周囲が煩雑になることが避けられる。また、ローカルエリアLAに複数の射出成形機1を設ける場合、飛行体L19はこれらの射出成形機1で共用することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
図6Aに第4の実施形態に係る射出成形システム401の全体構成を、
図6Bに第4の実施形態に係る射出成形システム401の機能関連図を示す。本実施形態では、第2及び第3の実施形態と同様、ローカルオペレータLPが不要である。ここでは本実施形態を第3の実施形態の変形例として説明する。第3の実施形態と同じ構成や効果は説明を省略する。射出成形システム401は、成形品Pの特徴量(例えば、バリやヒケの寸法)に基づき射出成形機1の推奨設定を求める設定調整部R27を有する。
【0061】
また、射出成形システム401は、設定調整部R27で求めた推奨設定に基づき射出成形機1の設定を調整するように、リモートコントローラR3を操作するリモートコントローラ操作部R28を有する。リモートコントローラ操作部R28はリモートコンピュータR2のプログラムまたはアプリケーションとして備えることができるが、リモートコンピュータR2とは独立して設けることもできる。
【0062】
設定調整部R27は、成形品Pの特徴量を受け付ける受付手段R271と、推奨設定を推定する推定モデルR272と、推奨設定をリモートコントローラ操作部R28に出力する出力手段R273と、を有している。これらはリモートコンピュータR2に設けられているが、推定モデルR272はリモートコンピュータR2に接続されたサーバに格納されていてもよい。
【0063】
推定モデルR272(学習済モデル)は設定調整部R27に記憶され、成形品Pの特徴量に基づき推奨設定を出力する。すなわち、推定モデルR272は成形品Pの特徴量を入力として受け付け、推奨設定を出力する。特徴量は飛行体L19の撮像装置L110が撮像した画像データから抽出される。第2の実施形態の自動寸法計測機17Aと同様の寸法計測機を設け、寸法計測機が取得した寸法データを特徴量として用いてもよい。あるいは、自動取り出し装置4のアーム41に撮像装置を設け、撮像装置が取得した寸法データを特徴量として用いてもよい。
【0064】
推奨設定はリモートコントローラ操作部R28に送信され、リモートコントローラ操作部R28はこの推奨設定に基づき、リモートコントローラR3を自動で遠隔操作する。なお、リモートコントローラ操作部R28を省略し、第1~第3の実施形態と同様、リモートオペレータRPがリモートコントローラR3を操作してもよい。
【0065】
本実施形態によれば、リモートオペレータRPが射出成形機1の設定を決定することが不要であるため、熟練度の低いリモートオペレータRPでも射出成形機1の遠隔制御が可能となる。リモートオペレータRPは推奨設定を参考に自身で設定を決定することもできる。リモートオペレータRPを省略することもできる。本実施形態はオペレータの訓練のために用いることもできる。推定モデルR272は適切な機械学習を経ることで、熟練オペレータのノウハウを反映した確度の高い推奨モデルを生成することができる。
【0066】
本実施形態は第1または第2の実施形態と組み合わせることもできる。第1の実施形態と組み合わせる場合、特徴量は例えば、ローカル装着具L1の撮像装置L11が取得する数値データや画像データから抽出することができる。第2の実施形態と組み合わせる場合、特徴量は例えば、自動寸法計測機17Aの寸法測定値から抽出することができる。また、第2の実施形態と組み合わせる場合は、ローカルオペレータLPは不要であり、しかも熟練度の低いリモートオペレータRPのみで射出成形機1の設定及び運転が可能である。
【0067】
以上いくつかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、リモート装着具R1とリモートコンピュータR2とリモートコントローラR3はリモートエリアRAに互いに近接して(例えば同一の部屋に)設けられているが、本発明はこのような態様に限定されない。
【0068】
例えば、リモート装着具R1とリモートコンピュータR2をリモートコントローラR3とは別のエリアに設け、リモートコンピュータR2とリモートコントローラR3を通信回線で接続してもよい。リモートコントローラR3は通信回線を介し、リモートコンピュータR2によって遠隔制御可能である。例えば、オフィスにリモートコントローラR3を設置し、リモートコントローラR3を操作するリモートオペレータRPの自宅にリモート装着具R1とリモートコンピュータR2を設置することができる。この構成によれば、リモートオペレータRPはオフィスに出勤しなくても射出成形機1の設定を遠隔制御することができる。
【0069】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
射出成形機と、
前記射出成形機で作成された成形品の形状データを取得する形状データ取得手段と、
データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続され、前記形状データ取得手段から前記データ通信回線を介して送信された前記形状データを表示するリモート画像表示装置と、
制御用通信回線を介して前記射出成形機と接続され、前記制御用通信回線を介して前記射出成形機を遠隔制御するリモートコントローラと、
を有する射出成形システム。
[構成2]
前記形状データ取得手段を備え人の頭部に装着可能なローカル装着具を有し、
前記ローカル装着具は、
前記成形品を撮影して前記形状データを所得する撮像装置と、
取得された前記形状データを、前記データ通信回線を介して前記リモート画像表示装置に送信する通信手段と、を有している、構成1に記載の射出成形システム。
[構成3]
前記ローカル装着具の装着者が装着可能で、前記装着者の生体情報を取得する生体情報取得装置と、
前記生体情報取得装置で取得された前記生体情報を、前記データ通信回線を介して受け付ける生体情報受付部と、
を有する、構成2に記載の射出成形システム。
[構成4]
人の頭部に装着可能で前記リモート画像表示装置を備えるリモート装着具を有し、
前記ローカル装着具はローカル画像表示装置を有し、
前記ローカル画像表示装置と前記リモート画像表示装置は、前記撮像装置で取得された前記形状データを同時に表示する、構成2または3に記載の射出成形システム。
[構成5]
前記形状データに情報を付加した情報付き形状データを生成する情報付加手段を有し、
前記リモート画像表示装置と前記ローカル画像表示装置は前記情報付き形状データを同時に表示する、構成4に記載の射出成形システム。
[構成6]
前記情報はテキスト情報を含む、構成5に記載の射出成形システム。
[構成7]
前記情報は前記成形品の一部を特定するための図形情報を含む、構成5または6に記載の射出成形システム。
[構成8]
前記ローカル装着具と前記リモート装着具はそれぞれ音声通話装置を有している、構成4から7のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[構成9]
前記射出成形機は、
人の接近を防止する安全機構と、
前記射出成形機の運転中に前記安全機構を解除する操作を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記解除する操作が検出されたときに、前記射出成形機の運転を停止する非常停止手段と、
を有する、構成1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[構成10]
前記射出成形機は、
人の接近を防止する安全機構と、
前記射出成形機の運転中に前記安全機構の解除操作を阻止する阻止手段と、
を有する、構成1から8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[構成11]
前記データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続された操作制御部を有し、
前記形状データ取得手段は、
前記射出成形機から取り外された前記成形品を把持して前記成形品の姿勢を変更可能なマニピュレータと、
取り外された前記成形品を撮影して前記形状データを所得する撮像装置と、を有し、
前記撮像装置は、取得された前記形状データを、前記データ通信回線を介して前記リモート画像表示装置に送信する通信手段を備え
前記操作制御部は、前記マニピュレータと前記撮像装置と前記通信手段を、前記データ通信回線を介して制御可能である、構成1に記載の射出成形システム。
[構成12]
前記データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続された操作制御部と、
前記形状データ取得手段を備えた飛行体と、を有し、
前記形状データ取得手段は、前記成形品を撮影して前記形状データを所得する撮像装置を備え、前記撮像装置は、取得された前記形状データを、前記データ通信回線を介して前記リモート画像表示装置に送信する通信手段を備え、
前記操作制御部は、前記飛行体と前記撮像装置と前記通信手段を、前記データ通信回線を介して制御可能である、構成1に記載の射出成形システム。
[構成13]
前記形状データに基づき前記射出成形機の推奨設定を求める設定調整部と、
前記設定調整部で求めた前記推奨設定に基づき前記射出成形機の前記設定を調整するように、前記リモートコントローラを操作するリモートコントローラ操作部と、
を有する、構成1から12のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[構成14]
前記設定調整部は、
特徴量を受け付ける受付手段と、
前記特徴量から前記推奨設定を推定する推定モデルと、
前記推奨設定を前記リモートコントローラ操作部に出力する出力手段と、
を有する、構成13に記載の射出成形システム。
[構成15]
前記射出成形機から発生する音を収集する音収集手段と、
前記音収集手段で取得された音を、前記データ通信回線を介して出力するスピーカと、
を有する、構成1から14のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[構成16]
前記成形品の3次元の設計形状情報を記憶する形状情報記憶部と、
前記データ通信回線を介して前記形状データ取得手段と接続され、前記形状データ取得手段で取得された前記形状データと前記設計形状情報との差分を抽出する差分抽出器と、
を有する、構成1から15のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[構成17]
前記リモートコントローラは前記リモート画像表示装置の近傍に設置されている、構成1から16のいずれか1項に記載の射出成形システム。
[方法1]
以下の工程を含む射出成形機の遠隔制御方法:
(a)射出成形機で作成された成形品の形状データを形状データ取得手段によって取得し、データ通信回線を介してリモート画像表示装置に送信する工程;
(b)前記形状データ取得手段から送信された前記形状データを、前記リモート画像表示装置で表示する工程;及び
(c)制御用通信回線を介して前記射出成形機と接続されたリモートコントローラによって、前記射出成形機を遠隔制御する工程。
【符号の説明】
【0070】
1 射出成形機
5 安全機構
54 検出手段
55 非常停止手段
56 阻止手段
101,201,301,401 射出成形システム
L1 ローカル装着具
L3 生体情報取得装置
L4 音収集手段
L11,L17,L110 撮像装置
L12 形状データ取得手段
L13,L18,L111 通信手段
L14 ローカル画像表示装置
L15 音声通話装置
L16 マニピュレータ
L19 飛行体
N1 データ通信回線
N2 制御用通信回線
R1 リモート装着具
R3 リモートコントローラ
R11 リモート画像表示装置
R13 スピーカ
R22 情報付加手段
R23 生体情報受付部
R24 形状情報記憶部
R25 差分抽出器
R26 操作制御部
R27 設定調整部
R271 受付手段
R272 推定モデル
R273 出力手段
R28 リモートコントローラ操作部