(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006035
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】有機物質の製造システム、有機物質の製造装置及び有機物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240110BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20240110BHJP
C12P 7/00 20060101ALI20240110BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20240110BHJP
C01B 32/40 20170101ALI20240110BHJP
C12P 7/06 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/42
C12P7/00
C01B3/38
C01B32/40
C12P7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106576
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】川合 宏
(72)【発明者】
【氏名】東 栄次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 周知
(72)【発明者】
【氏名】三木 七海
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB02
4B029DG08
4B029DG10
4B029GB04
4B064AC01
4B064AC03
4B064CA02
4B064CC04
4B064CC09
4B064DA16
4B064DA20
4G140EA03
4G140EA06
4G146JA01
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC01
(57)【要約】
【課題】熱を無駄に廃棄することなく、効率よく有機物質を製造し得る有機物質の製造システム等を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、有機物質の製造システムが提供される。この製造システムは、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを生成する、ガス生成部と、原料ガスを供給し、原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成部と、ガス生成部と有機物質生成部との間に設けられ、二酸化炭素及び水素を利用して、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する還元体を有する、還元部と、を備える。有機物質生成部において有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、還元部において一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質の製造システムであって、
一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを生成する、ガス生成部と、
前記原料ガスを供給し、前記原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成部と、
前記ガス生成部と前記有機物質生成部との間に設けられ、前記二酸化炭素及び水素を利用して、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する還元体を有する、還元部と、を備え、
前記有機物質生成部において前記有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、前記還元部において前記一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する、有機物質の製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の有機物質の製造システムにおいて、
3X≦Yなる関係を満足する、有機物質の製造システム。
【請求項3】
請求項1に記載の有機物質の製造システムにおいて、
前記還元部は、さらに、前記還元体にマイクロ波を照射する照射装置を有する、有機物質の製造システム。
【請求項4】
請求項1に記載の有機物質の製造システムにおいて、
さらに、前記還元部に供給する前記二酸化炭素を前記原料ガスから分離する、分離部を備え、
前記分離部で分離した前記二酸化炭素を前記還元部に供給し、前記還元部で生成された前記一酸化炭素を前記原料ガスに合流させて、前記有機物質生成部に供給するように構成されている、有機物質の製造システム。
【請求項5】
請求項1に記載の有機物質の製造システムにおいて、
前記有機物質生成部は、ガス資化性細菌の作用により前記原料ガスから前記有機物質含有液を生成する培養槽である、有機物質の製造システム。
【請求項6】
請求項1に記載の有機物質の製造システムにおいて、
前記還元部は、前記還元体による前記二酸化炭素の還元反応により、前記二酸化炭素から離脱した酸素元素の少なくとも一部を前記還元反応の系内で分離可能な少なくとも1つの反応器を有する、有機物質の製造システム。
【請求項7】
請求項6に記載の有機物質の製造システムにおいて、
前記還元体は、前記二酸化炭素を還元して前記一酸化炭素に変換する際に酸化状態とされ、酸化状態の前記還元体は前記水素との接触により還元される、有機物質の製造システム。
【請求項8】
請求項7に記載の有機物質の製造システムにおいて、
前記還元部は、複数の前記反応器を有し、
各前記反応器には、前記二酸化炭素と前記水素とが切り換えて供給される、有機物質の製造システム。
【請求項9】
一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを生成するガス生成部に接続して使用される有機物質の製造装置であって、
前記原料ガスを供給し、前記原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成部と、
前記ガス生成部と前記有機物質生成部との間に設けられ、前記二酸化炭素及び水素を利用して、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する還元体を有する、還元部と、を備え、
前記有機物質生成部において前記有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、前記還元部において前記一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する、有機物質の製造装置。
【請求項10】
有機物質の製造方法であって、
一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを供給し、前記原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成工程と、
前記有機物質生成工程に先立って、前記二酸化炭素及び水素を利用して、還元体により前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する、還元工程と、を備え、
前記有機物質生成工程において前記有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、前記還元工程において前記一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する、有機物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質の製造システム、有機物質の製造装置及び有機物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油を原料として製造された油類やアルコール類等の大量消費による化石燃料資源枯渇への危惧や大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境問題が生じている。これらの問題に対処すべく、石油以外の原料を用いて有機物質を製造する手法、例えばトウモロコシ等の可食原料から糖発酵法によってバイオエタノールを製造する方法が注目されている。
【0003】
このような可食原料を用いた糖発酵法は、限られた農地面積を食料以外の生産に用いることから、食料価格の高騰を招くおそれがある。そのため、従来、廃棄されていたような非可食原料を用いて、石油から製造されていた有機物質を製造する方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含む原料ガスを、ガス資化性細菌によりエタノールに変換する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ガス生成部で生成された原料ガスや前処理が施された原料ガスは高温であり、有機物質の生成に適した温度への冷却が必要となる場合が多い。この場合、廃棄される熱が無駄になる。
本発明では上記事情に鑑み、熱を無駄に廃棄することなく、効率よく有機物質を製造し得る有機物質の製造システム等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、有機物質の製造システムが提供される。この製造システムは、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを生成する、ガス生成部と、原料ガスを供給し、原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成部と、ガス生成部と有機物質生成部との間に設けられ、二酸化炭素及び水素を利用して、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する還元体を有する、還元部と、を備える。有機物質生成部において有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、還元部において一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する。
【0007】
かかる態様によれば、熱を無駄に廃棄することなく、高い製造効率で有機物質を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の有機物質の製造システムの第1実施形態の構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態の有機物質の製造システムにおける還元部の構成を示す模式図である。
【
図3】第2実施形態の有機物質の製造システムにおける還元部及びその付近の構成を示す概略図である。
【
図4】マイクロ波を照射する照射装置を有する還元部の構成を示す模式図である。
【
図5】第3実施形態の有機物質の製造システムにおける還元部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、有機物質の製造システム、有機物質の製造装置及び有機物質の製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の有機物質の製造システムの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の有機物質の製造システムの第1実施形態の構成を示す概略図である。
図2は、第1実施形態の有機物質の製造システムにおける還元部の構成を示す模式図である。
【0010】
図1に示す有機物質の製造システム100(以下、単に「製造システム100」とも言う。)は、ガス化炉(ガス生成部)10と、ガス化炉10に接続された有機物質の製造装置1(以下、単に「製造装置1」とも言う。)とを備えている。
なお、本明細書中では、ガス及び液体の流れ方向に対して上流側を単に「上流側」、下流側を単に「下流側」とも記載する。
本実施形態では、ガス化炉10としては、例えば、燃焼炉、高炉、転炉、電気炉、シャフト炉等が挙げられる。なお、ガス生成部は、ガス化炉10の他、製紙工場、セメント工場、火力発電所、精油所、エチレンクラッカー、製油所、化学工場から選ばれる少なくとも1つの事業所のCO
x排出源であってもよい。
【0011】
各炉では、内容物の燃焼、溶融、精錬等の際に、二酸化炭素及び一酸化炭素を含む排ガス(原料ガス)が生成(発生)する。
ゴミ焼却場における燃焼炉(焼却炉)の場合、内容物(廃棄物)としては、例えば、プラスチック廃棄物、生ゴミ、都市廃棄物(MSW)、産業廃棄物、廃棄タイヤ、バイオマス廃棄物、家庭ゴミ(布団、紙類)、建築部材等が挙げられる。なお、これらの廃棄物は、1種を単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0012】
排ガスは、通常、二酸化炭素及び一酸化炭素に加えて、水素、窒素、酸素、水蒸気、メタン等の他のガス成分を含んでもよい。排ガスは、その他の成分として、スス、タール、窒素化合物、硫黄化合物、リン系化合物、芳香族系化合物等をさらに含んでもよい。
排ガスは、内容物(炭素源)を不完全燃焼させる熱処理(通称:ガス化)を行うこと(すなわち、炭素源を部分酸化させること)により、一酸化炭素を10体積%以上含むガスとして生成してもよい。
排ガスを使用すれば、従来、大気中に排出していた二酸化炭素を有効利用することができ、環境への負荷を低減することができる。これらの中でも、炭素循環という観点からは、燃焼炉又は製錬所で発生した排ガスが好ましい。
【0013】
かかるガス化炉10に製造装置1が接続されている。この製造装置1は、培養槽(有機物質生成部)2と、精製装置6と、ガス化炉10と培養槽2とを接続するガスラインGL1と、培養槽2と精製装置6とを接続する液体ラインLLとを有している。
培養槽2では、供給された排ガス(原料ガス)から、ガス資化性細菌の作用(微生物発酵)により有機物質を含有する有機物質含有液を生成する。
ガス資化性細菌は、真性細菌及び古細菌の双方を含む。
【0014】
真性細菌としては、例えば、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、ムーレラ(Moorella)属細菌、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属細菌、カルボキシドセラ(Carboxydocella)属細菌、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属細菌、ユーバクテリウム(Eubacterium)属細菌、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)属細菌、オリゴトロファ(Oligotropha)属細菌、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌、好気性水素酸化細菌であるラルソトニア(Ralsotonia)属細菌等が挙げられる。
【0015】
一方、古細菌としては、例えば、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属細菌、メタノブレウィバクタ(Methanobrevibacter)属細菌、メタノカルキュラス(Methanocalculus)属細菌、メタノコッカス(Methanococcus)属細菌、メタノサルシナ(Methanosarcina)属細菌、メタノスファエラ(Methanosphaera)属細菌、メタサーモバクタ(Methanothermobacter)属細菌、メタノトリックス(Methanothrix)属細菌、メタノキュルス(Methanoculleus)属細菌、メタノフォリス(Methanofollis)属細菌、メタノゲニウム(Methanogenium)属細菌、メタノスピリリウム(Methanospirillium)属細菌、メタノゼータ(Methanosaeta)属細菌、サーモコックス(Thermococcus)属細菌、サーモフィラム(Thermofilum)属細菌、アルカヘオグロブス(Arcaheoglobus)属細菌等が挙げられる。
【0016】
以上のようなガス資化性細菌の中から、目的とする有機物質の生成能の高い細菌が選択されて用いられる。例えば、エタノール生成能の高いガス資化性細菌としては、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ユングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、アセトバクテリウム・ウッディイ(Acetobacterium woodii)等が挙げられる。
【0017】
ガス資化性細菌を培養する際に用いる培地(培養液)は、その種類に応じた適切な組成であれば、特に限定されない。例えば、ガス資化性細菌としてクロストリジウム属細菌を用いる場合、培地としては、例えば、国際公開第2017/117309号の段落0091や、米国特許出願公開第2017/260552号の段落0097~0098等を参考にすることができる。
培養槽2には、例えば、撹拌板で培養液を撹拌するタイプの培養リアクタ、培養液自体を循環させることにより培養液を撹拌するタイプの培養リアクタ、供給される排ガスの通気で生じる気泡流に伴う水流により培養液を撹拌するタイプの培養リアクタ等を用いることができる。
【0018】
ガスラインGL1の途中(すなわち、ガス化炉10と培養槽2との間)には、ガス化炉10側(上流側)から順に、改質炉3と、還元部4(還元反応器4a)と、前処理部5とが設けられている。
改質炉3では、例えば、触媒の存在下に、排ガスに含まれるメタンに水蒸気を高温で作用させて、一酸化炭素及び水素に変換する。このとき、一酸化炭素の一部は、さらに水蒸気と反応することにより、二酸化炭素及び水素に変換されてもよい。
反応温度は、500℃以上1100℃以下であることが好ましい。また、触媒としては、例えば、ニッケル触媒、酸化ニッケル触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒、パラジウム触媒、白金触媒等が挙げられる。
【0019】
改質炉3は、高温下で滞留させることで排ガスに含まれるメタンやエタン等のガス、及びタールやダイオキシン等の炭化水素を一酸化炭素及び水素に変換する方法を採用してもよい。このとき、酸素や空気のような支燃性ガスを供給して温度を上げてもよい。
さらに、一酸化炭素の一部は、酸素と反応することにより、二酸化炭素に変換されてもよい。温度は、1000℃以上であることが好ましく、1100℃以上1300℃以下であることがより好ましい。
【0020】
改質炉3を通過した排ガスは、後述する脱水素装置で分離された水素が混合されて、還元反応器4a(還元部4)に供給される。第1実施形態の還元反応器4aでは、触媒の作用による逆水性ガスシフト反応により、上記水素を利用して、二酸化炭素から一酸化炭素を生成可能(二酸化炭素を一酸化炭素に変換可能)である。
還元反応器4aは、
図2に示すように、触媒4Rをそれぞれ充填(収容)した複数の管体41と、複数の管体41を内部空間43に収納したハウジング42とを備える多管式の反応装置(固定層式の反応装置)で構成されている。かかる多管式の反応装置によれば、触媒4Rとガスとの接触の機会を十分に確保することができる。その結果、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率を高めることができる。
【0021】
なお、還元反応器4aは、管体41を省略して、ハウジング42の内部空間43に触媒4Rを充填した反応器(すなわち、単純反応器)で構成することもできる。
本実施形態の触媒4Rは、例えば、粒子状(顆粒状)、鱗片状、ペレット状等であることが好ましい。かかる形状の還元剤4Rであれば、管体41への充填効率を高めることができ、管体41内に供給される排ガスとの接触面積をより増大させることができる。
【0022】
触媒4Rが粒子状である場合、その体積平均粒径は、特に限定されないが、1mm以上50mm以下であることが好ましく、1mm以上30mm以下であることがより好ましい。この場合、触媒4Rとガス(二酸化炭素及び水素)との接触面積をさらに高め、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率をより向上させることができる。
粒子状の触媒4Rは、より球形度が高まることから、転動造粒により製造された成形体であることが好ましい。
【0023】
また、触媒4Rは、担体に担持させるようにしてもよい。
担体の構成材料としては、排ガスとの接触や反応条件等により変性し難ければよく、例えば、炭素材料(グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭等)、Mo2Cのような炭化物、ゼオライト、モンモリロナイト、ZrO2、TiO2、V2O5、MgO、CeO2、Al2O3、SiO2のような酸化物及びこれらを含む複合酸化物等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、担体の構成材料としては、ゼオライト、モンモリロナイト、ZrO2、TiO2、V2O5、MgO、Al2O3、SiO2及びこれらを含む複合酸化物が好ましい。かかる材料で構成される担体は、触媒4Rの反応に悪影響を及ぼさず、触媒4Rの担持能に優れる点で好ましい。ここで、担体は、触媒4Rの反応には関与せず、触媒4Rを単に支持(保持)する。
かかる形態の一例としては、担体の表面の少なくとも一部を触媒4Rで被覆する構成が挙げられる。
【0025】
触媒4Rは、遷移金属を含む。遷移金属は、二酸化炭素を還元することができれば、特に限定されないが、Fe、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni,Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg等が挙げられる。
触媒4Rは、Feに、Al、Ga、In、Cu、Ag、Au、Pd及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を添加してなる合金であることが好ましく、Fe-Pd合金であることがより好ましい。これらの触媒4Rは、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率が特に良好なため有用である。
【0026】
また、還元反応器4aにおいて、触媒4R自体で管体(円筒状の成形体)41を作製してもよい。さらに、触媒4Rで、ブロック状、格子状(例えば、網状、ハニカム状)等の成形体を作製し、ハウジング42内に配置するようにしてもよい。これらの場合、充填剤としての触媒4Rは省略するようにしてもよいし、併用してもよい。
これらの中では、触媒4Rで網状体を作製し、ハウジング42内に配置する構成が好ましい。かかる構成の場合、還元反応器4a内で排ガスの通過抵抗が高まるのを防止しつつ、触媒4Rと排ガスとの接触の機会を十分に確保することもできる。
【0027】
前処理部5は、脱水素装置とPSA装置とを有している。
脱水素装置は、還元反応器4a(還元部4)より下流側に位置し、原料ガスから水素を除去(分離)するために用いられる。この脱水素装置は、水素を選択的に透過して分離する筒状の分離膜を収容した分離器で構成することができる。
かかる分離膜の構成材料としては、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられる。
金属材料としては、例えば、Pd-Cu合金、Pd-Ag合金、バナジウム合金、La-Ni-Mg系等のアモルファス合金等が挙げられる。
セラミックス材料としては、例えば、窒化チタン、ゼオライト、シリカ(ガラス)、アルミナ及びこれらの1種以上を含む複合材料(例えば、アルミナカーボン系材料)等が挙げられる。
樹脂材料としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン等が挙げられる。
【0028】
分離膜は、隣接する空孔同士が連通する連続空孔(筒壁を貫通する細孔)を備える多孔質体で構成されていることが好ましい。かかる構成の分離膜であれば、水素の分離をより円滑かつ確実に行うことができる。
分離膜の空孔率は、特に限定されないが、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましい。これにより、分離膜の機械的強度が極端に低下するのを防止しつつ、水素の透過率を十分に高く維持することができる。
【0029】
なお、分離膜の形状は、特に限定されず、円筒状、四角形、六角形のような角筒状等が挙げられる。
分離膜の平均空孔径は、500pm以下であることが好ましく、300pm以上400pm以下であることがより好ましい。これにより、水素の分離効率をより向上させることができる。
脱水素装置は、ガスラインGL2を介して、ガスラインGL1の還元反応器4aの上流側に接続されている。かかる構成により、改質後の排ガスと水素とが混合されて、還元反応器4aに供給される。
【0030】
ガスラインGL2の途中には、除去部7が設けられている。この除去部7は、脱水素装置から変換される水素を主とするガス(還元反応器4aに供給する前のガス)に含まれ、触媒(還元体)4Rの反応性を低下させる不純物を除去する。
かかる不純物としては、特に限定されないが、硫黄又は硫黄化合物、塩素又は塩素化合物、シアン化合物等が挙げられる。これらの中でも、不純物として、硫黄化合物、特に、硫化水素を除去することが好ましい。硫化水素を除去すれば、触媒4Rの反応性が極端に低下したり、失活するのを好適に防止することができる。
【0031】
かかる除去部7は、例えば、脱硫剤を充填した反応器で構成することができる。脱硫剤としては、例えば、酸化鉄系脱硫剤、活性炭系脱硫剤、銅-亜鉛系脱硫剤、銅-亜鉛-アルミニウム系脱硫剤、石灰系脱硫剤等が挙げられる。
なお、酸化鉄系脱硫剤を使用すれば、硫化水素との反応により生じる硫化鉄が酸素と反応することができるため、ガスラインGL2を通過するガスから酸素を除去することもできる。
【0032】
PSA装置は、圧力スイング吸着方式の分離器であり、例えば、BTEX、二酸化炭素、窒素等を除去するために用いられる。
PSA装置には、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラーシーブズ等の多孔質材料や、アミン溶液等の水溶液を、吸着剤として用いることができる。PSA装置には、活性炭又はゼオライトが好ましく用いられる。多孔質材料の種類や細孔のサイズを設定することにより、分離可能な化合物を選択することができる。
PSA装置において2種以上の化合物を分離する場合、種類や細孔のサイズが異なる多孔質材料をそれぞれ充填した複数の分離器を用いてもよく、種類や細孔のサイズが異なる多孔質材料を充填した単一の分離器を用いてもよい。
【0033】
PSA装置で分離した二酸化炭素は、排ガスに混合して、還元反応器4aに供給してもよい。
また、PSA装置で分離した窒素は、ガス資化性細菌を培養する際に培養槽2に充填してもよく、還元反応器4aの洗浄用に充填してもよく、PSA装置及び/又はTSA装置(使用する場合)の洗浄用に充填してもよい。なお、窒素は上記装置の1つのみに充填しても、2つ以上に充填してもよい。
このように、排ガスから窒素を除去することにより、下流側で処理する排ガスの体積を減少させることができるので、下流側に配置される前処理部5の小型化を図ることができる。
【0034】
前処理部5は、脱水素装置及びPSA装置に加えて、洗浄減湿塔、フィルタ、脱酸素装置、脱アセチレン装置、TSA装置、PTSA装置等を有していてもよい。なお、これらは、単独で使用することができる他、任意の組み合わせで使用することができ、その配置順序も任意である。
洗浄減湿塔は、いわゆるスクラバーであり、排ガスに含まれる汚染物質(例えば、スス)、水溶性物質等を除去するために用いられる。洗浄減湿塔では、除去対象物に洗浄液を接触させること(湿式洗浄法)により行われる。湿式洗浄法の一例としては、ウォーターカーテンを用いた洗浄法が挙げられる。また、洗浄液としては、例えば、水、酸性溶液、アルカリ性溶液等が挙げられる。これらの中でも、洗浄液としては、水であることが好ましい。また、洗浄液の温度は、通常40℃以下であり、30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、15℃以下であることがさらに好ましい。
【0035】
フィルタは、ススのサイズより小さいサイズの微粒子を除去するために用いられる。このフィルタは、例えば、バグフィルタ等で構成することができる。
脱酸素装置は、酸素を除去するために用いられ、酸素除去触媒として、例えば、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)等の金属の粒子が充填された反応器で構成することができる。酸素除去触媒は、例えば、150℃以上400℃以下に加熱することが好ましい。
脱アセチレン装置は、アセチレンを除去するために用いられ、アセチレン除去触媒として、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の貴金属の粒子が充填された反応器で構成することができる。
なお、脱酸素に先立ってアセチレンを除去しておくことにより、アセチレンの酸素除去触媒に対する悪影響を好適に防止又は低減することができるという利点がある。
【0036】
TSA装置は、温度スイング吸着方式の分離器であり、例えば、BTEX以外の芳香族化合物等を除去するために用いられる。
PTSA装置は、圧力及び温度スイング吸着方式の分離器であり、例えば、上記PSA装置及びTSA装置で除去する成分を一括して除去するために用いられる。
なお、TSA装置及びPTSA装置に用いる吸着剤の種類、構成材料等は、PSA装置で説明したのと同様とすることができる。
【0037】
前処理部5で処理された排ガスは、培養槽2に供給される。
培養槽2に供給される排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は、0.1体積%以上30体積%以下であることが好ましく、0.3体積%以上25体積%以下であることがより好ましく、0.5体積%以上20体積%以下であることがさらに好ましく、0.8体積%以上15体積%以下であることが特に好ましく、1体積%以上10体積%以下であることが最も好ましい。
【0038】
培養槽2に供給される排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度は、10体積%以上80体積%以下であることが好ましく、15体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上45体積%以下であることがさらに好ましい。
また、培養槽2に供給される排ガスに含まれる水素の濃度は、1体積%以上45体積%以下であることが好ましく、5体積%以上35体積%以下であることがより好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
さらに、培養槽2に供給される排ガスに含まれる窒素の濃度は、30体積%以下であることが好ましくり、1体積%以上25体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上20体積%以下であることがさらに好ましい。
上記構成によれば、水素の濃度が低い排ガスが培養槽2に供給されるため、水素がガス資化性細菌の活性を低下させ難い。また、排ガスは、還元反応器4aを通過することにより、一酸化炭素の濃度が高まっているため、培養槽2において有機物質を効率よく製造することができる。
【0040】
培養槽2では、ガス資化性細菌の作用により、排ガスから有機物質を含有する有機物質含有液が生成される。
培養槽2には、液体ラインLLを介して精製装置6が接続されている。この精製装置6は、有機物質含有液から有機物質を精製する装置である。
かかる精製装置6としては、例えば、蒸留装置、浸透気化膜を含む処理装置、ゼオライト脱水膜、有機膜を含む処理装置、有機物質より沸点の低い低沸点物質を除去する処理装置、有機物質より沸点の高い高沸点物質を除去する処理装置、イオン交換膜を含む処理装置等が挙げられる。これらの装置は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
蒸留装置を使用する場合、有機物質(特に、エタノール)の蒸留時における蒸留装置内の温度は、特に限定されないが、100℃以下であることが好ましく、70℃以上95℃以下であることがより好ましい。かかる温度に設定することにより、必要な有機物質とその他の成分との分離、すなわち、有機物質の蒸留(精製)をより確実に行うことができる。
有機物質の蒸留時における蒸留装置内の圧力は、常圧であってもよいが、大気圧未満(減圧蒸留)であることが好ましく、60~95kPaAであることがより好ましい。かかる圧力に設定することにより、有機物質の分離効率を向上させること、ひいては有機物質の収率を向上させることができる。
有機物質の収率(精製物に含まれる有機物質の濃度)は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは99重量%以上、さらに好ましくは99.5重量%以上である。
【0042】
このようにして得られる有機物質は、例えば、メタノール、エタノールのようなモノオール類、2,3-ブタンジオールのようなジオール類、酢酸、乳酸、イソプレン、ブタジエン等が挙げられ、炭素数1~4のモノオール類又はジオール類であることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。
かかる有機物質は、例えば、樹脂材料、ゴム材料等の原料として用いることもでき、各種溶媒、殺菌剤又は燃料として用いることもできる。なお、高濃度のエタノールは、ガソリン等に混合する燃料エタノールとして用いることができる他、例えば、化粧品、飲料、化学物質、燃料(ジェット燃料)等の原材料、食品等の添加物として用いることができ、汎用性が極めて高い。
【0043】
次に、第1実施形態の製造システム100の使用方法(有機物質の製造方法)について説明する。
[1A]まず、ガス化炉10から排出される排ガス(一酸化炭素、二酸化炭素およびその他のガス成分を含む原料ガス)は、改質炉3に供給される。このとき、排ガスに含まれるメタンが一酸化炭素及び水素に変換される。
[2A]次に、改質炉3を通過した排ガスは、脱水素装置で分離された水素と混合される。
[3A]その後、水素が混合された排ガスは、還元反応器4aに供給される。還元反応器4aでは、二酸化炭素及び水素を利用して、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する(還元工程)。具体的には、還元反応器4aでは、触媒4Rの作用により、二酸化炭素と水素とを反応させ、一酸化炭素と水とに変換する。これにより、排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度及び水蒸気の濃度が高まる。
【0044】
[4A]次に、還元反応器4aを通過した排ガスは、前処理部5に供給される。前処理部5では、脱水素装置により排ガスから水素が除去(分離)される。
また、PSA装置により、排ガスからBTEX、二酸化炭素、窒素等が除去(分離)される。分離された二酸化炭素は、例えば、ガスラインGL2に合流させることができる。
さらに、前処理部5では、排ガスから、例えば、水溶性物質、スス、ススのサイズより小さいサイズの微粒子、酸素、アセチレン、BTEX以外の芳香族化合物等が除去されてもよい。
【0045】
[5A]次に、前処理部5で分離された水素は、ガスラインGL2を介して、ガスラインGL1の還元反応器4aの上流側に合流する。
このとき、ガスラインGL2を流通する水素を主とするガスは、除去部7を通過することにより、硫黄化合物(特に、硫化水素)が除去されるため、還元反応器4aの触媒4Rの活性の低下を防止又は抑制することができる。
【0046】
[6A]次に、前処理部5を通過した排ガスは、培養槽2に供給される。培養槽2では、ガス資化性細菌の作用により、排ガスから有機物質を含有する有機物質含有液が生成される(培養工程:有機物質生成工程)。
ここで、培養槽(有機物質生成部)2において有機物質含有液を生成する際の温度をX[℃]とし、還元反応器4a(還元部4)において一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足することが好ましく、Y≦12.5Xなる関係を満足することがより好ましく、Y≦10Xなる関係を満足することがさらに好ましい。XとYとが上記関係を満足すれば、還元反応器4aにおいて一酸化炭素を生成する際の温度を比較的低く設定することができるため、前処理部5での処理に先立って、排ガスを高度に冷却する必要がない。したがって、廃棄する熱を少なくすることができ無駄になり難い。
【0047】
また、3X≦Yなる関係を満足することが好ましく、4X≦Yなる関係を満足することがより好ましく、5X≦Yなる関係を満足することがさらに好ましい。XとYとが上記関係を満足すれば、還元反応器4aにおいて一酸化炭素を生成する際の温度が極端に低くなることを防止して、二酸化炭素から一酸化炭素への十分な変換効率を維持することができる。
Xの具体的な値は、25℃以上50℃以下であることが好ましく、30℃以上45℃以下であることがより好ましく、35℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。Yの具体的な値は、125℃以上500℃以下であることが好ましく、150℃以上450℃以下であることがより好ましく、175℃以上400℃以下であることがさらに好ましい。
【0048】
培養槽2において有機物質含有液を生成する際には、PSA装置で除去(分離)された窒素を培養槽2に充填するようにしてもよい。この場合、培養槽2内の空間に含まれる酸素の濃度を相対的に低減することができ、酸素がガス資化性細菌に対して悪影響を与えることを防止又は低減することができる。
[7A]最後に、培養槽2で生成された有機物質含有液は、液体ラインLLを介して精製装置6に供給される。精製装置6では、有機物質含有液に含まれる有機物質が精製され、有機物質を高い濃度で含有する精製物が得られる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明の有機物質の製造システムの第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態の有機物質の製造システムについて説明するが、第1実施形態の有機物質の製造システムとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図3は、第2実施形態の有機物質の製造システムにおける還元部及びその付近の構成を示す概略図である。
【0050】
第2実施形態の製造システム100では、還元部4及びその付近の構成が異なり、それ以外は、第1実施形態の製造システム100と同様である。
図3に示す製造システム100は、ガスラインGL1の改質炉3と前処理部5との間に、排ガスから二酸化炭素を分離する脱二酸化炭素装置(分離部)8を備えている。この脱二酸化炭素装置8は、上述したPSA装置又はTSA装置の他、例えば、PTSA装置(圧力及び温度スイング吸着方式の分離器)、低温分離方式(深冷方式)の分離器、膜分離方式の分離器、アミン吸収式の分離器、アミン吸着式の分離器等で構成することができる。
【0051】
第2実施形態の還元部4は、ガス切換部44と、2つの還元反応器4b1、4b2とを備えている。
脱二酸化炭素装置8は、ガスラインGL11を介して、ガス切換部44に接続され、脱水素装置は、ガスラインGL2を介して、ガス切換部44に接続されている。
ガス切換部44は、2つのガスラインGL31、GL32を介して、それぞれ還元反応器4b1、4b2の入口ポートに接続されている。
かかるガス切換部44は、例えば、分岐ガスラインと、この分岐ガスラインの途中に設けられたバルブのような流路開閉機構とを含んで構成することができる。
【0052】
かかる構成により、排ガスはガスラインGL1を通過する際に、脱二酸化炭素装置8で二酸化炭素が分離される。分離された二酸化炭素を主とするガス(以下、「酸化ガス」とも言う。)は、ガスラインGL11、ガス切換部44及びガスラインGL31、GL32を通過して、各還元反応器4b1、4b2に供給される。
一方、脱水素装置からの、水素を主とするガス(以下、「還元ガス」とも言う。)は、ガスラインGL2、ガス切換部44及びガスラインGL31、GL32を通過して、各還元反応器4b1、4b2に供給される。
【0053】
還元反応器4b1、4b2は、
図2に示す還元反応器4aと同様の構成とされ、触媒4Rに代えて還元剤4Rが管体41に収納(充填)される。還元剤4Rは、活性を示す部分の材料が異なること以外は、触媒4Rと同様の形状、サイズ、構成等とすることができる。
還元剤4Rは、金属及びその酸化物の少なくとも一方(酸素イオン伝導性を備える酸素キャリア)を含む。金属及びその酸化物の少なくとも一方は、二酸化炭素を還元することができれば、特に限定されない。
【0054】
金属及びその酸化物の少なくとも一方は、第3族~第13族に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、第3族~第12属に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、ランタン、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、クロム及びセリウム等のうちの少なくとも1種を含有することがさらに好ましく、鉄及び/又はセリウムを含有する金属酸化物又は複合金属酸化物が特に好ましい。これらの金属酸化物は、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率が特に良好なため有用である。
【0055】
なお、2つの還元反応器4b1、4b2の容積は、互いにほぼ等しく設定され、供給されるガスの量に応じて、適宜設定される。また、2つの還元反応器4b1、4b2の容積は、ガスの組成、還元剤4Rの性能等に応じて異ならせてもよい。
以上のような構成によれば、ガス切換部44においてガスライン(流路)を切り換えることにより、例えば、酸化前の還元剤4Rが収容された還元反応器4b1に、ガスラインGL31を介して酸化ガスを供給し、酸化後の還元剤4Rが収容された還元反応器4b2に、ガスラインGL32を介して還元ガスを供給することができる。
【0056】
このとき、還元反応器4b1では下記式1の反応が進行し、還元反応器4b2では下記式2の反応が進行する。なお、下記式1及び式2では、還元剤4Rに酸化鉄(FeOx-1)が含まれる場合を一例として示している。
式1: CO2 + FeOx-1 → CO + FeOx
式2: H2 + FeOx → H2O + FeOx-1
その後、ガス切換部44においてガスラインを上記と反対に切り換えることにより、還元反応器4b1では上記式2の反応を進行させ、還元反応器4b2では上記式1の反応を進行させることができる。
すなわち、還元反応器4b1と還元反応器4b2とに、酸化ガスと還元ガスとが切り換えて供給される。
【0057】
なお、上記式1及び式2に示す反応は、いずれも吸熱反応である。このため、製造システム100は、還元剤4Rに酸化ガス及び還元ガスを接触させる際(すなわち、酸化ガス及び還元ガスと還元剤4Rとの反応の際)に、還元剤4Rを加熱する還元剤加熱部(
図3中、図示せず。)をさらに有することが好ましい。
かかる還元剤加熱部を設けることにより、酸化ガス及び還元ガスと還元剤4Rとの反応における温度を所定の温度に維持し易く、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率の低下を好適に防止又は抑制するとともに、還元ガスによる還元剤4Rの再生をさらに促進することができる。
【0058】
ただし、還元剤4Rの種類によっては、上記式1及び式2に示す反応が発熱反応となる場合がある。この場合、製造システム100は、還元剤加熱部に代えて、還元剤4Rを冷却する還元剤冷却部を有することが好ましい。かかる還元剤冷却部を設けることにより、酸化ガス及び還元ガスと還元剤4Rとの反応の際に、還元剤4Rが劣化するのを好適に阻止して、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率の低下を好適に防止又は抑制するとともに、還元ガスによる還元剤4Rの再生をさらに促進することができる。
つまり、製造システム100には、還元剤4Rの種類(発熱反応又は吸熱反応)の違いによって、還元剤4Rの温度を調整する還元剤温調部を設けることが好ましい。
【0059】
ここで、還元反応器4b1、4b2における二酸化炭素の一酸化炭素への転化率は、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。二酸化炭素の前記一酸化炭素への転化率の上限は、通常、98%程度である。
このような転化率は、使用する還元剤4Rの種類、酸化ガスに含まれる二酸化炭素の濃度、還元ガスに含まれる水素の濃度、還元反応器4b1、4b2の温度、酸化ガス及び還元ガスの還元反応器4b1、4b2への流量(流速)、還元反応器4b1、4b2に対する酸化ガス及び還元ガスの切り換えのタイミング等を調整することにより設定可能である。
【0060】
還元反応器4b1、4b2の出口ポートには、それぞれガスラインGL41、GL42が接続され、これらがガス合流部Jにおいて合流して、ガスラインGL4を構成している。また、ガスラインGL41、GL42の途中には、必要に応じて、それぞれバルブ(図示せず。)が設けられる。
例えば、バルブの開度を調整することにより、還元反応器4b1、4b2を通過する酸化ガス及び還元ガスの通過速度(すなわち、還元剤4Rによる酸化ガスの処理速度及び還元ガスによる還元剤4Rの処理速度)を設定することができる。
【0061】
ガスラインGL4は、脱二酸化炭素装置8と前処理部5との間において、ガスラインGL1に合流している。これにより、還元反応器4b1、4b2で生成された一酸化炭素を排ガスに合流させて、培養槽2に供給することができる。
したがって、前処理部5を介して培養槽2に供給される排ガスでは、一酸化炭素の濃度を十分に高めることができる。その結果、培養槽2における有機物質の生成効率をより向上させることができる。
【0062】
次に、第2実施形態の製造システム100の使用方法(有機物質の製造方法)について説明する。
[0B]まず、ガス切換部44においてガスライン(流路)を切り換えることにより、ガスラインGL11と還元反応器4b1とを連通し、ガスラインGL2と還元反応器4b2とを連通する。
[1B]次に、ガス化炉10から排出される排ガスは、改質炉3に供給される。
[2B]その後、改質炉3を通過した排ガスは、脱二酸化炭素装置8を通過する際に、二酸化炭素が除去(分離)される。
【0063】
[3B-1]次に、脱二酸化炭素装置8で分離された二酸化炭素を主とするガス(酸化ガス)は、ガスラインGL11を介して、還元反応器4b1に供給される。還元反応器4b1では、還元剤4Rは、二酸化炭素との接触により二酸化炭素を還元して一酸化炭素に変換する。このとき、還元剤4Rは、二酸化炭素との接触により酸化状態とされる。
ここで、還元反応器4b1(排ガス、還元剤4R)の温度は、125℃以上500℃以下であることが好ましく、150℃以上450℃以下であることがより好ましく、175℃以上400℃以下であることがさらに好ましい。
なお、ここでの熱源は、プロセス(例えば、還元ガスボイラ等)から排熱の再利用で獲得してもよい。
【0064】
また、還元反応器4b1(排ガス、還元剤4R)の圧力は、1MPaG未満であることが好ましく、0.9MPaG以下であることがより好ましく、0.2MPaG以上0.8MPaG以下であることがさらに好ましい。
反応条件を上記範囲に設定すれば、例えば、還元反応器4b1における二酸化炭素の還元反応をより円滑に進行させることができる。
【0065】
[3B-2]一方、脱水素装置からガスラインGL2を介して、水素を主とするガス(還元ガス)を還元反応器4b2に供給する。還元反応器4b2では、水素との接触により酸化状態の還元剤4Rが還元(再生)される。このとき、水が生成される。
ここで、還元反応器4b2(還元ガス、還元剤4R)の温度は、125℃以上500℃以下であることが好ましく、150℃以上450℃以下であることがより好ましく、175℃以上400℃以下であることがさらに好ましい。
上記と同様に、ここでの熱源も、プロセス(例えば、還元ガスボイラ等)から排熱の再利用で獲得してもよい。
【0066】
また、還元反応器4b2(還元ガス、還元剤4R)の圧力は、1MPaG未満であることが好ましく、0.9MPaG以下であることがより好ましく、0.2MPaG以上0.8MPaG以下であることがさらに好ましい。
反応条件を上記範囲に設定すれば、例えば、還元反応器4b2における還元剤4Rの還元反応をより円滑に進行させることができる。
【0067】
還元反応器4b1、4b2に対して、上記工程[3B-1]と上記工程[3B-2]とを入れ換えて行うことにより、還元剤4Rによる二酸化炭素の一酸化炭素への変換と、酸化状態の還元剤4Rの水素による還元(再生)を交互に行うことができる。
工程[3B-1]と工程[3B-2]とを入れ換える間に、PSA装置で分離した窒素を還元反応器4b1、4b2に供給(充填)するようにしてもよい。すなわち、還元反応器4b1、4b2に窒素パージしてもよい。
【0068】
[4B]次に、還元反応器4b1、4b2を通過したガスは、GL41、GL42及びGL4を介して、ガスラインGL1を通過する排ガスと混合された後、前処理部5に供給される。
[5B]次に、前処理部5を通過した排ガスは、培養槽2に供給される。
[6B]最後に、培養槽2で生成された有機物質含有液は、精製装置6に供給される。
【0069】
かかる第2実施形態の製造システム100によれば、第1実施形態の製造システム100と同様の作用及び効果が得られる。
特に、第2実施形態では、2つの還元反応器4b1、4b2では、還元剤(還元体)4Rによる二酸化炭素の還元反応により、二酸化炭素から離脱した酸素元素の少なくとも一部は、還元剤4Rに取り込まれるため、還元反応の系内で分離可能である。そして、2つの還元反応器4b1、4b2に、酸化ガスと還元ガスとを切り替えて供給する。このため、反応生成物である一酸化炭素と水とが1つの還元反応器4b1、4b2(還元反応の系)内に共存し難くなる。よって、化学平衡の制約による二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率の低下を防止又は抑制することができる。
【0070】
なお、第2実施形態において、還元反応器の設置数は1つであっても、3つ以上であってもよい。
1つの還元反応器を設置する場合、例えば、酸化ガスと還元ガスとを切り替えて交互に、還元反応器に供給することができる。
また、3つ以上の還元反応器を設置する場合、例えば、1つの還元反応器に酸化ガスを供給する際に、残りの還元反応器に連続又は並行して還元ガスを供給することができる。
【0071】
また、酸化状態の還元剤4Rを還元(再生)するのに水素を主とするガスを代表に説明したが、水素に代えてまたは水素に加えて、炭化水素(例えば、メタン、エタン、アセチレン等)およびアンモニアから選択される少なくとも1種を含むガスを使用することもできる。
例えば、脱アセチレン装置を使用する場合、脱アセチレン装置で分離されるアセチレンをガスラインGL2に混合して、還元反応器4b1、4b2に供給するようにしてもよい。
【0072】
また、還元部4は、マイクロ波を照射する照射装置49を有していてもよい。
図4は、マイクロ波を照射する照射装置を有する還元部の構成を示す模式図である。
図4に示す還元部4は、還元反応器4a、4b1、4b2と、照射装置49とを有している。
かかる照射装置49を設けることにより、マイクロ波により還元体(触媒又は還元剤4R)の表面付近のみを局所的(優先的)に活性化させることができる。このため、比較的低温でも、二酸化炭素を一酸化炭素に変換し易くなる。
【0073】
マイクロ波は、周波数300MHz~300GHzの電磁波を意味し、周波数300~3000MHzの極超短波(UHF)、周波数3~30GHzのセンチメートル波(SHF)、周波数30~300GHzのミリ波(EHF)、周波数300~3000GHzのサブミリ波(SHF)に分類される。これらの中でも、マイクロ波としては、極超短波(UHF)が好ましい。極超短波(UHF)を使用することにより、還元体をより短時間で、目的の温度まで加熱することができる。
なお、マイクロ波の照射を行う場合、電波法に準拠した電波の漏洩対策が適切に講じられる。
【0074】
マイクロ波の照射は、連続的に行ってもよく、間欠的(パルス的)に行ってもよい。
なお、照射装置49は、
図4に示すように、還元反応器4a、4b1、4b2の外部に配置してもよく、内部に配置してもよい。
また、排ガスのガス組成を爆発範囲から乖離させておけば、マイクロ波の照射条件によらず、排ガスに対する着火源となることを好適に防止することができる。
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明の有機物質の製造システムの第3実施形態について説明する。
以下、第3実施形態の有機物質の製造システムについて説明するが、第1及び第2実施形態の有機物質の製造システムとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5は、第3実施形態の有機物質の製造システムにおける還元部の構成を示す概略図である。
【0076】
第3実施形態の製造システム100では、還元部4の構成が異なり、それ以外は、第1実施形態の製造システム100と同様である。
第3実施形態の還元部4は、水素を利用して、二酸化炭素の電気化学的な還元反応により、一酸化炭素に変換する還元反応器4c(反応セル、電解槽又は電気化学セルとも呼ばれる。)で構成されている。
図5に示す還元反応器4cは、ハウジング42と、ハウジング42内の空間を左右に区画するバイポーラ膜47とを有している。
【0077】
バイポーラ膜47は、カチオン交換層471とアニオン交換層472とを接合した接合体で構成されている。
このバイポーラ膜47で区画されたハウジング42内の右側の空間421及び左側の空間422には、それぞれ液体(例えば、電解液)421w、422wが貯留されている。
そして、液体421wには、カソード45が浸漬され、液体422wには、アノード46が浸漬されている。カソード45及びアノード46は、それぞれ、例えば酸化銅のナノワイヤの表面を二酸化スズで被覆した触媒で構成することができる。
【0078】
また、カソード45及びアノード46には、電源48が電気的に接続されている。電源48には、再生可能エネルギーとしての電力を発生する電源を使用することが好ましい。これにより、有機物質の製造におけるエネルギー効率をより向上させることができる。
かかる還元反応器4cでは、液体491に排ガス(二酸化炭素)が供給されると、電源48から供給される電子と触媒との作用により、二酸化炭素の還元反応により一酸化炭素が生成される。
一方、液体422w中では、水酸化物イオンは、アノード46で電子を奪い取られることにより、酸素に変換される。
【0079】
また、液体421wのpHは、中性付近に設定し、液体422wのpHは、アルカリ性(13程度)に設定することが好ましい。
本実施形態では、カソード45が、電子を供与して、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する還元体を構成している。なお、カソード45は、上記触媒を集電体に担持させて構成することもでき、この場合、触媒自体が還元体を構成する。
また、触媒として金属錯体を用いる場合には、液体421wに金属錯体を溶解してもよい。
【0080】
以上説明したような有機物質の製造システム、有機物質の製造装置及び有機物質の製造方法によれば、還元反応器(還元部)における反応温度と培養槽(有機物質生成部)における反応温度とを乖離し過ぎないように設定するので、廃棄される熱を無駄にすることなく、効率よく有機物質を製造することができる。
また、本発明において、原料ガスからの有機物質の生成は、触媒を収納した反応器(有機物質生成部)により行うようにしてもよい。
かかる触媒としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、マンガン、ゲルマニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ランタン、セリウム、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、ケイ素またはそれらの酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
この場合も、有機物質生成部における反応温度と還元部における反応温度とは、上述のような関係を満足するように設定される。これにより、廃棄される熱を無駄にするのを好適に防止又は抑制することができる。
触媒を用いて原料ガスからの有機物質の生成する際の具体的な温度は、30℃以上40℃以下であることが好ましく、35℃以上38℃以下であることがより好ましい。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0082】
(1)有機物質の製造システムであって、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを生成する、ガス生成部と、前記原料ガスを供給し、前記原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成部と、前記ガス生成部と前記有機物質生成部との間に設けられ、前記二酸化炭素及び水素を利用して、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する還元体を有する、還元部と、を備え、前記有機物質生成部において前記有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、前記還元部において前記一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する、有機物質の製造システム。
【0083】
(2)上記(1)に記載の有機物質の製造システムにおいて、3X≦Yなる関係を満足する、有機物質の製造システム。
【0084】
(3)上記(1)又は(2)に記載の有機物質の製造システムにおいて、前記還元部は、さらに、前記還元体にマイクロ波を照射する照射装置を有する、有機物質の製造システム。
【0085】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の有機物質の製造システムにおいて、さらに、前記還元部に供給する前記二酸化炭素を前記原料ガスから分離する、分離部を備え、前記分離部で分離した前記二酸化炭素を前記還元部に供給し、前記還元部で生成された前記一酸化炭素を前記原料ガスに合流させて、前記有機物質生成部に供給するように構成されている、有機物質の製造システム。
【0086】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の有機物質の製造システムにおいて、前記有機物質生成部は、ガス資化性細菌の作用により前記原料ガスから前記有機物質含有液を生成する培養槽である、有機物質の製造システム。
【0087】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の有機物質の製造システムにおいて、前記還元部は、前記還元体による前記二酸化炭素の還元反応により、前記二酸化炭素から離脱した酸素元素の少なくとも一部を前記還元反応の系内で分離可能な少なくとも1つの反応器を有する、有機物質の製造システム。
【0088】
(7)上記(6)に記載の有機物質の製造システムにおいて、前記還元体は、前記二酸化炭素を還元して前記一酸化炭素に変換する際に酸化状態とされ、酸化状態の前記還元体は前記水素との接触により還元される、有機物質の製造システム。
【0089】
(8)上記(7)に記載の有機物質の製造システムにおいて、前記還元部は、複数の前記反応器を有し、各前記反応器には、前記二酸化炭素と前記水素とが切り換えて供給される、有機物質の製造システム。
【0090】
(9)一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを生成するガス生成部に接続して使用される有機物質の製造装置であって、前記原料ガスを供給し、前記原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成部と、前記ガス生成部と前記有機物質生成部との間に設けられ、前記二酸化炭素及び水素を利用して、前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する還元体を有する、還元部と、を備え、前記有機物質生成部において前記有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、前記還元部において前記一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する、有機物質の製造装置。
【0091】
(10)有機物質の製造方法であって、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む原料ガスを供給し、前記原料ガスから有機物質を生成する、有機物質生成工程と、前記有機物質生成工程に先立って、前記二酸化炭素及び水素を利用して、還元体により前記二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する、還元工程と、を備え、前記有機物質生成工程において前記有機物質を生成する際の温度をX[℃]とし、前記還元工程において前記一酸化炭素を生成する際の温度をY[℃]としたとき、Y≦15Xなる関係を満足する、有機物質の製造方法。
もちろん、この限りではない。
【0092】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0093】
例えば、本発明の有機物質の製造システム及び有機物質の製造装置は、それぞれ上記実施形態に対して、他の任意の追加の構成を有していてもよく、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよく、一部の構成が省略されていてもよい。
また、本発明の有機物質の製造方法は、上記実施形態に対して、他の任意の追加の工程を有していてもよく、同様の機能を発揮する任意の工程と置換されていてよく、一部の工程が省略されていてもよい。
【0094】
さらに、本発明では、排ガス(原料ガス)から水素を分離する脱水素装置(水素分離部)は、省略してもよい。
この場合、例えば、水の電気分解を利用した水素発生装置によって生成される水素、塩化ナトリウム水溶液を電気分解する装置、石油を水蒸気改質する装置、アンモニアを製造する装置のような副生水素を発生する装置によって生成される水素、コークス炉から排出されるコークス炉ガスに含まれる水素を用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
100 :有機物質の製造システム
10 :ガス化炉
1 :有機物質の製造装置
2 :培養槽
3 :改質炉
4 :還元部
4a :還元反応器
4b1 :還元反応器
4b2 :還元反応器
4c :還元反応器
41 :管体
42 :ハウジング
421 :空間
421w :液体
422 :空間
422w :液体
43 :内部空間
44 :ガス切換部
45 :カソード
46 :アノード
47 :バイポーラ膜
471 :カチオン交換層
472 :アニオン交換層
48 :電源
49 :照射装置
4R :触媒、還元剤
5 :前処理部
6 :精製装置
7 :除去部
8 :脱二酸化炭素装置
GL1 :ガスライン
GL11 :ガスライン
GL2 :ガスライン
GL31 :ガスライン
GL32 :ガスライン
GL4 :ガスライン
GL41 :ガスライン
GL42 :ガスライン
LL :液体ライン
J :ガス合流部