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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060362
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】自動車用内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20240424BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
F02M59/44 Z
F02B67/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167687
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】明賀 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】月坂 昇平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木路 祥太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 誠
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AD05
3G066BA30
(57)【要約】
【課題】高圧燃料ポンプを備えた自動車用内燃機関において、配管類・ハーネス類を安全性が優れた状態にレイアウトする。
【解決手段】ヘッドカバー3の左側面(一側面)に、補機の例としてのブレーキブースター用真空ポンプ12が固定されて、ヘッドカバー3の上面のうち左寄り部位に高圧燃料ポンプ21が固定されている。ヘッドカバー3の上方部のうち左側部でかつ高圧燃料ポンプ21よりも後ろの部位は、配管類やハーネス類が錯綜した配管配線必須エリア46になっている。加圧燃料が供給される高圧燃料パイプ25は、配管配線必須エリア46は通らずに、機関本体4の前方に向かってからブレーキブースター用真空ポンプ12を下から巻くように配置されている。高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bは、金属板製のプロテクタ34で保護されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体前部に設けたエンジンルームに搭載される内燃機関であって、
ヘッドカバーを含む機関本体を有して、前記ヘッドカバーの上面に、高圧燃料パイプを接続した高圧燃料ポンプが固定されて、前記高圧燃料パイプの一部は前記機関本体の一側面に沿って延びるように配置されており、
かつ、前記機関本体の一側面に補機が配置されている構成において、
前記高圧燃料パイプは、前記高圧燃料ポンプを出て下方に向かってから前記補機を下から巻くような姿勢に配置されている、
自動車用内燃機関。
【請求項2】
前記補機は、前記機関本体の一側面に突設されたボス部に固定されて、前記補機は、前記ボス部の下方にはみ出た下向き張り出し部を有しており、
前記高圧燃料パイプの一部が、前記機関本体と前記補機の下向き張り出し部との間の空間を通っている、
請求項1に記載した自動車用内燃機関。
【請求項3】
前記機関本体は、前記一側面が車幅方向を向くようにして前記エンジンルームに配置されている一方、
前記高圧燃料パイプは、前記高圧燃料ポンプから前記機関本体の前方に位置した前向きはみ出し部を有して、前記前向きはみ出し部の下端から前記機関本体の一側面に沿って後ろ向きに延びており、
前記機関本体又はヘッドカバーに、前記高圧燃料パイプの前向きはみ出し部を手前から覆うプロテクタが固定されている、
請求項1又は2に記載した自動車用内燃機関。
【請求項4】
前記プロテクタは、前記高圧燃料パイプの前向きはみ出し部を手前から囲う樋状部を有しており、前記樋状部が前から押されて前記機関本体又はヘッドカバーに当たった状態で、前記高圧燃料パイプの前向きはみ出し部が前記樋状部で囲われた状態が保持されるようになっている、
請求項3に記載した自動車用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高圧燃料ポンプを備えた自動車用内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直噴式の内燃機関では、燃料を高圧燃料ポンプで加圧して気筒に噴出するようになっており、このため、高圧燃料ポンプには、加圧された燃料を送る高圧燃料パイプが接続されている。高圧燃料パイプは鋼管等の金属製であって終端は高圧燃料デリバリパイプに接続されており、高圧燃料デリバリパイプから分岐した枝管に高圧インジェクタが接続されている。
【0003】
自動車用内燃機関において重要な要素は、衝突等の事故時の火災防止である。事故に際して高圧燃料パイプが破損して高圧燃料が噴出すると、重大な火災に至るおそれがある。そこで、高圧燃料パイプは、事故が発生しても破損しないような配慮が必要である。その例として特許文献1には、高圧燃料ポンプと配管とをスーパーチャージャー等の補機で手前から覆うことが開示されている。特許文献1では、高圧燃料ポンプは、シリンダブロックにおける吸気側面の端部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-45810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1では、前吸気方式の内燃機関において、高圧燃料ポンプをシリンダブロックの吸気側面に固定しており、高圧燃料ポンプをスーパーチャージャーで保護しているが、スーパーチャージャーを備えていない場合は、衝突事故に際して高圧燃料ポンプを保護し難い。従って、高圧燃料ポンプは、例えばヘッドカバーの上面のように衝突事故があっても衝撃が作用しにくい場所に配置するのが好ましい。
【0006】
気筒に高圧燃料を噴射する高圧インジェクタがシリンダヘッドの下端部に配置されている場合は、高圧燃料用デリバリパイプはシリンダヘッドの下端部の側方に配置されるため、ヘッドカバーの上面に高圧燃料ポンプを固定すると、高圧燃料パイプは下向きに延ばすことになるが、ヘッドカバーの上方部には、高圧燃料ポンプに燃料を供給する低圧燃料チューブやハーネス類が配置されていることが多いため、配管・配線が錯綜することにより、高圧燃料パイプとの接触によるハーネスの断線や低圧燃料チューブの破断などが懸念される。
【0007】
本願発明はこのような実情を背景に成されたものであり、高圧燃料ポンプをヘッドカバーの上面に固定しつつ高圧燃料パイプの適切なレイアウトを実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、自動車の車体前部に設けたエンジンルームに搭載される内燃機関を対象にしており、この内燃機関は、
「ヘッドカバーを含む機関本体を有して、前記ヘッドカバーの上面に、高圧燃料パイプを接続した高圧燃料ポンプが固定されて、前記高圧燃料パイプの一部は前記機関本体の一側面に沿って延びるように配置されており、
かつ、前記機関本体の一側面に補機が配置されている、
という基本構成において、
「前記高圧燃料パイプは、前記高圧燃料ポンプを出て下方に向かってから前記補機を下から巻くような姿勢に配置されている」
という特徴を備えている。
【0009】
本願発明は様々に展開できる。その例として請求項2では、請求項1において、
「前記補機は、前記機関本体の一側面に突設されたボス部に固定されて、前記補機は、前記ボス部の下方にはみ出た下向き張り出し部を有しており、
前記高圧燃料パイプの一部が、前記機関本体と前記補機の下向き張り出し部との間の空間を通っている」
という構成になっている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記機関本体は、前記一側面が車幅方向を向くようにして前記エンジンルームに配置されている一方、
前記高圧燃料パイプは、前記高圧燃料ポンプから前記機関本体の前方に位置した前向きはみ出し部を有して、前記前向きはみ出し部の下端から前記機関本体の一側面に沿って後ろ向きに延びており、
前記機関本体又はヘッドカバーに、前記高圧燃料パイプの前向きはみ出し部を手前から覆うプロテクタが固定されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明の展開例として請求項4では、
「前記プロテクタは、前記高圧燃料パイプの前向きはみ出し部を手前から囲う樋状部を有しており、前記樋状部が前から押されて前記機関本体又はヘッドカバーに当たった状態で、前記高圧燃料パイプの前向きはみ出し部が前記樋状部で囲われた状態が保持されるようになっている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、高圧燃料パイプは、高圧燃料ポンプから下方に延びて補機を下から巻くように配置されている。このため、ヘッドカバーの上方に高圧燃料パイプが配置されていない広い空間を確保して、この空間に低圧燃料チューブや各種のハーネス類を配置できる。従って、長期にわたって使用し続けても、高圧燃料パイプが低圧燃料チューブや各種のハーネス類と干渉することを防止して、低圧燃料チューブの破損やハーネス類の断線などを防止できる。従って、安全性を向上できる。
【0013】
また、高圧燃料パイプは補機を下方から巻くような姿勢になっているため、事故に際しては補機によって高圧燃料パイプを保護できる。すなわち、補機を高圧燃料パイプのプロテクタに兼用できる。この面でも安全性を向上できる。
【0014】
請求項2の構成では、事故に際して機関本体の一側面に向けて他の部材が移動してきた場合、当該他の部材は補機に衝突して高圧燃料パイプには当たらないため、高圧燃料パイプの保護機能を向上させて安全性を更に向上できる。
【0015】
内燃機関が横置き・後ろ吸気の姿勢でエンジンルームに配置されていると、高圧燃料パイプは、吸気マニホールドとの干渉防止や低圧燃料チューブ・ハーネス類との干渉防止のために、請求項3のように、機関本体の手前からいったん下方に引き出してのち、後ろに向けて延ばすことが合理的である。
【0016】
そして、このように高圧燃料パイプの一部が機関本体の前方にはみ出ると、衝突事故に際して、ラジエータサポートのような車体前部に配置された部材が高圧燃料パイプのはみ出し部に当たると高圧燃料パイプが損傷するおそれがあるが、請求項3のようにプロテクタを設けることにより、高圧燃料パイプの破損を防止できる。従って、事故時の安全性を向上できる。
【0017】
更に、請求項3の具体例として、請求項4のようにプロテクタに高圧燃料パイプを囲う樋状部を設けると、高圧燃料パイプのはみ出し部を覆った状態でプロテクタが機関本体又はヘッドカバーに当たることにより、高圧燃料パイプのはみ出し部が潰れ変形したり破断したりすることを防止できる。従って、事故時の安全性を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態を後ろ側方から見た部分斜視図である。
図2】実施形態を点線で表示した部分正面図である。
図3】実施形態を実線で表示した部分正面図である。
図4】実施形態を点線で表示した部分側面図である。
図5】実施形態を実線で表示した部分側面図である。
図6】実施形態を点線で表示した部分平面図である。
図7】実施形態を実線で表示した部分平面図である。
図8】プロテクタの形態を表す図である。
図9】衝突事故時の作用を示すための部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1).実施形態の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これらの方向は運転者から見た方向として定義している。正面視は、運転者と対向した方向である。上下方向はシンリダボアの軸心方向であるが、ほぼ鉛直方向と一致している。
【0020】
図2,3に示すように、内燃機関は、シリンダブロック1と、その上面に固定されたシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上面に固定されたヘッドカバー3とを備えており、これらは機関本体4を構成している。シリンダヘッド2は、下部ヘッド2aと上部ヘッド(カムキャリア)2bとの2層構造になっており、上部ヘッド2bにカム軸(図示せず)が回転自在に保持されている。
【0021】
本実施形態の内燃機関は、クランク軸線を車幅方向(左右方向)に長い姿勢とした横置きで、かつ、吸気側面を進行方向後ろ向きにした後ろ吸気(前排気)のタイプである。機関本体は、図示しないタイミングチェーンカバーとオイルパンとを有しており、タイミングチェーンカバーはシリンダヘッド2及びシリンダブロック1の右側面に固定されている。ミッションケースは、シリンダブロック1及びオイルパンの左側面に固定されている。
【0022】
シリンダヘッド2の左側部は冷却水の排出を行う配水部になっており、ホース類が接続される冷却水ポート5を設けている。また、図2,3に示すように、下部ヘッド2aの前面の左端部には、冷却水をウォータポンプ等に送る冷却水通路6が開口している。
【0023】
図1の符号7は、吸気マニホールドを構成するサージタンクである。図1の符号8は吸気ダクトの一部であり、吸気ダクト8にはエアクリーナ(図示せず)から空気が供給される。吸気ダクト8はスロットルボデー9に固定されている。図1の符号10は、PCVガス還流ホースである。本実施形態では、請求項との関係では、機関本体4の左側面が一側面に該当している。
【0024】
図1図7に示すように、上部ヘッド2bの左側面には、補機の一例としてのブレーキブースター用真空ポンプ12がボルト13で固定されている。真空ポンプ12は、上部ヘッド2bから左側に突設されたボス部2cに固定されている。また、図2,3に示すように、真空ポンプ12はボス部2cの下方に突出した下向き張り出し部12aを有しており、このため、下部ヘッド2aと下向き張り出し部12aとの間は空間32になっている。
【0025】
真空ポンプ12は排気用カム軸で駆動される。真空ポンプ12のロータと排気用カム軸とは同心になっている。このため、真空ポンプ12は、上部ヘッド2bの左側面のうち前側に寄せて配置されている。図1~3,6,7に示すように、真空ポンプ12には、ブレーキブースターの空気を吸引する真空管路14が接続されている。真空管路14は、真空ポンプ12の上方から後ろ向きに引き出されており、エンジンルームのうち運転席の前方部に配置されたブレーキブースターに接続されている。図1,3,4に示すように、真空管路14の中途部は、ブラケット15,16を介してヘッドカバー3及び上部ヘッド2bに支持されている。
【0026】
ヘッドカバー3はアルミ製又は合成樹脂製であり、下向きに開口した浅いトレー状に形成されていて、フランジ3aが多数本のボルト17で上部ヘッド2bに固定されている。図1のとおり、既述したPCVガス還流ホース10の一端(始端)は、ヘッドカバー3に接続されている。
【0027】
例えば図5,6に示すように、ヘッドカバー3のうち手前側の左端部には、カム角度センサー18が固定されている。カム角度センサー18の検知部は、ヘッドカバー3の内部に入り込んでいて排気用カム軸の左端部に設けたギア状ドグに対向している。また、カム角度センサー18にはハーネス18aが接続されている。
【0028】
(2).高圧燃料ポンプ
図1,6,7に示すように、ヘッドカバー3の上面のうち左端寄り部位でかつ前寄り部位に、高圧燃料ポンプ21がボルトで固定されている。高圧燃料ポンプ21は基本的には円柱形で下端に前後長手のフランジ22を設けており、フランジ22がスペーサ23を介してヘッドカバー3の上面にボルトで固定されている。
【0029】
高圧燃料ポンプ21の外周面には、燃料タンクから燃料を供給するための低圧燃料チューブ24と、加圧された燃料を排出する高圧燃料パイプ25と、制御のためのハーネス26とが接続されている。低圧燃料チューブ24及び高圧燃料パイプ25は継手27,28を介して高圧燃料ポンプ21に接続されており、ハーネス26は着脱式のコネクタ29を介して高圧燃料ポンプ21に接続されている。低圧燃料チューブ24の中途部は、支持具30を介してヘッドカバー3に支持されている。
【0030】
この場合、図6,7に示すように、低圧燃料チューブ24の継手27は、高圧燃料ポンプ21のうち後ろ寄りでかつ左寄り部位に取り付けられており、高圧燃料パイプ25は、前寄りでかつ左外側に寄せて配置されている。更に、ハーネス26が接続されるコネクタ29は、高圧燃料ポンプ21の外周面のうち後ろ寄り部位でかつ右寄り部位に配置されている。
【0031】
そして、低圧燃料チューブ24は、ヘッドカバー3の上方を概ね後ろに向けて延びている一方、高圧燃料パイプ25は、ヘッドカバー3の左前コーナー部に向かうように平面視で傾斜した姿勢の上横向き部25aと、上横向き部25aの前端から下向きに延びてヘッドカバー3及び上部ヘッド2bよりも手前側に位置した上下長手の前向きはみ出し部25bと、前向きはみ出し部25bの下端からシリンダヘッド2の左側面に沿って後ろ向きに延びる前後長手の下横向き部25cとを有している。
【0032】
図2に明示するように、高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bは、その上下両端は正面視及び平面視でヘッドカバー3の左外側にはみ出して、上端と下端との間の部位はその相当部分が正面視でヘッドカバー3及び上部ヘッド2bと重なるように、正面視で右側に膨れた形態(右側に凸の形態)になっている。
【0033】
図1に示すように、高圧燃料パイプ25を構成する下横向き部25cの後端は、高圧燃料デリバリパイプ31の一端(左端)に接続されている。図示は省略するが、高圧燃料デリバリパイプ31は下部ヘッド2aの後面に沿って左右方向に長い姿勢になっており、高圧燃料デリバリパイプ31には、各気筒に対応した高圧燃料インジェクタが接続されている。本実施形態では、高圧燃料インジェクタの先端は下部ヘッド2aの下端部から燃焼室に臨んでいる。従って、横向き噴射方式である。
【0034】
例えば図2,3に示すように、高圧燃料パイプ25の下横向き部25cは、真空ポンプ12の下向き張り出し部12aとシリンダヘッド2の左側面との間の空間32を通って後ろに延びている。このため、高圧燃料パイプ25は、側面視において、真空ポンプ12を下方から巻いたような姿勢になっている。図2,3から理解できるように、下横向き部25cは、上部ヘッド2bに固定されたブラケット33で支持されている。
【0035】
(3).プロテクタ
例えば図3に示すように、高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bは、プロテクタ34によって前から保護されている。プロテクタ34は、鋼板やステンレス板等の金属板製であり、図8に示すように、高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bを手前から囲う樋状部35と、樋状部35の下端に一体に設けた取り付け部36とを有しており、取り付け部36の後面に円筒状のカラー37が溶接されている。そして、取り付け部36は、カラー37を介してボルト38で下部ヘッド2aの前面に固定されている。
【0036】
図8に明示するように、プロテクタ34の樋状部35は、基板から後ろ向きに突出した左右の側板39,40を有しているが、本実施形態では、右側板40の突出寸法が左側板39の突出寸法よりも大きくなっている(同じ突出寸法でもよいし、突出関係を逆にしてもよい。)。樋状部35の基板には、上下長手の補強リブ41を後ろ向きに膨出している。樋状部35は、平面視で後ろ向きに開口した樋状であることと補強リブ41との相乗効果により、前後方向に曲がり変形しにくくなっている。
【0037】
例えば図3のとおり、樋状部35は、上端が左に寄って下端が右に寄るように正面視で傾斜している。これは、ボルト38による固定位置と前向きはみ出し部25bの位置とのずれ関係に起因したものである。
【0038】
図8に明示するように、プロテクタ34の取り付け部36は、プロテクタ34の基板から後ろ側にずらした状態に曲げられている。これは、樋状部35で前向きはみ出し部25bを囲うスペースを確保しつつ、取り付け部36を下部ヘッド2aに近づけるためである。
【0039】
樋状部35に前から衝撃が作用すると、負荷は樋状部35と取り付け部36との連接部に集中して作用するが、本実施形態では、取り付け部36が右側板40にも一体に繋がっているため、高いリブ効果が発揮されて、前方からの衝撃に対する抵抗が高くなっている(樋状部35が後ろ向きに倒れにくくなっている。)。
【0040】
図9に示すように、プロテクタ34のカラー37は、下部ヘッド2aの前面に形成された段落ち部41に固定されている(カラー37を使用せずに、取り付け部36を下部ヘッド2a(或いは上部ヘッド2b)の前面に直接固定することも可能である。)。図2のとおり、段落ち部41にはタップ穴41aが空いている。
【0041】
例えば図3図8(A)に示すように、取り付け部36には右側に開口した位置決め溝42を形成し、位置決め溝42を挟んだ下方部の部位に、後ろ向きの位置決め片43を曲げ形成している。他方、図2,3(図9も参照)に示すように、下部ヘッド2aの前面のうち段落ち部41の右側に、位置決め溝42が嵌まる位置決めボス部44を形成している。位置決め片43は、位置決めボス部44の下面に下方から当たるようになっている。
【0042】
1本のボルト38による締結であるため、ボルト38を締め込むとプロテクタ34は正面視で右回転しようとするが、位置決め溝42が位置決めボス部44に嵌まっていることと、位置決め片43が位置決めボス部44に下方から当たることにより、プロテクタ34の姿勢が保持された状態でボルト38の締め込みが行われる。従って、1本のみのボルト38でプロテクタ34を所定の姿勢に的確に固定できる。
【0043】
例えば図3に明示するように、プロテクタ34のうち右寄り部位の下部は、高圧燃料パイプ25の下横向き部25cとの干渉を回避するために切欠かれている(切欠き部を符号45で示している。)。図8(C)(D)に明示するように、プロテクタ34における樋状部35の右側板40は、下から順に低くなった第1~第3の段部40a,40b,40cと、第3段部40cの上端に連続した傾斜部40dとを有しており、段部40a,40b,40cが上部ヘッド2bの前面に当接又は近接するように設定している。傾斜部40dは、正面視でヘッドカバー3の上方にはみ出ている。
【0044】
(4).まとめ
本実施形態は以上の構成であり、高圧燃料パイプ25は高圧燃料ポンプ21から斜め前方に向いているため、ヘッドカバー3の左側部上方のうち高圧燃料ポンプ21の前端よりも後ろには、図7に点線で示すように、低圧燃料チューブ24やハーネス類を配置せざるを得ない配管配線必須エリア46が存在しており、配管配線必須エリア46に高圧燃料ポンプ21が存在していると、高圧燃料ポンプ21は硬い金属製であるため、低圧燃料チューブ24やハーネス類が高圧燃料ポンプ21に接触すると、振動によって磨耗が促進して破断や断線が発生するおそれがある。
【0045】
これに対して本実施形態では、高圧燃料パイプ25は高圧燃料ポンプ21から前側方に延びていて配管配線必須エリア46には存在していないため、低圧燃料チューブ24やハーネス類が高圧燃料パイプ25に接触して損傷することはない。このため、安全性を向上できる。
【0046】
他方、内燃機関の前方にはラジエータやこれを支持するラジエータサポートなどの部材が配置されているため、高圧燃料パイプ25がヘッドカバー3の前方のエリアにはみ出ていると、衝突事故に際して、例えばラジエータサポートが後退して高圧燃料パイプ25に衝突して、高圧燃料パイプ25が破損したり変形したりする事態が発生するおそれがあるが、本実施形態では、高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bはプロテクタ34で覆われているため、事故に際して高圧燃料パイプ25が損傷することを防止又は著しく抑制できる。
【0047】
さて、プロテクタ34はその下端部がボルト38で下部ヘッド2aに固定されているため、衝突事故に際してプロテクタ34がラジエータサポート等の部材によって後ろに押されると、プロテクタ34は後ろ向きに倒れ回動する傾向を呈する。従って、プロテクタ34が例えば単なる平板であると、高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bがプロテクタ34によってヘッドカバー3やシリンダヘッド2に強圧されて、破損・変形するおそれがある。
【0048】
これに対して本実施形態では、高圧燃料パイプ25の前向きはみ出し部25bはプロテクタ34の樋状部35で囲われているため、樋状部35が後ろ向きに倒れ回動してヘッドカバー3の前面やシリンダヘッド2の前面に当たっても、樋状部35によって前向きはみ出し部25bを囲った状態が保持されるため、前向きはみ出し部25bが破損・変形することはない。従って、高い安全性を維持できる。
【0049】
本実施形態について更に述べると、樋状部35の右側板40はシリンダヘッド2の前面に当接又は近接しているため、衝突事故に際しては左側板39が後退するように変形して、左側板39は上部ヘッド2bに当たって変形が停止するが、図9に示すように、左側板39の後退量Lよりも前向きはみ出し部25bと高圧燃料ポンプ21との間のクリアランス(E1+E2)が大きいため、前向きはみ出し部25bが高圧燃料ポンプ21によって押し潰される現象は皆無であり、従って、高い安全性を確保できる。なお、前向きはみ出し部25bがプロテクタ34で押されて弾性変形しても、安全性について影響はない。
【0050】
更に、本実施形態では、高圧燃料ポンプ21の下横向き部25cは、シリンダヘッド2の左側面と真空ポンプ12の下向き張り出し部12aとの間の空間32を通って後ろに向かっているが、真空ポンプ12はその機能からして頑丈な構造になっているため、事故に際して左側からの外力が作用しても、高圧燃料ポンプ21の下横向き部25cを真空ポンプ12によって保護できる。このため、安全性を更に向上できる。
【0051】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、プロテクタは複数本のボルトで締結してもよい。高圧燃料パイプの一部を保護する補機として、例えば電動式ウォータポンプを使用することも可能である。また、本願発明は、横置き前吸気方式の内燃機関や、クランク軸線が車体の前後方向に長い縦置きの内燃機関にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明は、高圧燃料ポンプを備えた自動車用内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0053】
2 シリンダヘッド
2a 下部ヘッド
2b 上部ヘッド
2c ボス部
3 ヘッドカバー
4 機関本体
12 補機の一例としてのブレーキブースター用真空ポンプ
12a 下向き張り出し部
21 高圧燃料ポンプ
24 低圧燃料チューブ
25 高圧燃料パイプ
25a 上横向き部
25b 前向きはみ出し部
25c 下横向き部
32 空間
34 プロテクタ
35 樋状部
36 取り付け部
37 カラー(スペーサ)
38 ボルト
39,40 側板
46 配管配線必須エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9