(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060367
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】絵柄入りクリアファイル、絵柄入りクリアファイルの製造方法、および、これに用いる転写紙
(51)【国際特許分類】
B42F 7/00 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B42F7/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167695
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】503308298
【氏名又は名称】有山 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有山 賢三
(72)【発明者】
【氏名】有山 賢太朗
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017QA03
2C017QB01
2C017QE06
2C017QH01
(57)【要約】
【課題】絵柄を形成したクリアファイルの内側対向面の相互に生じがちな貼り付きを解消するとともに、絵柄の歪みや欠損の発生を抑えて、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止する絵柄入りクリアファイル、絵柄入りクリアファイルの製造方法、および、これに用いる転写紙を提供すること。
【解決手段】
絵柄入りクリアファイル100が、絵柄の非反転画像331a,331bを転写紙300の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、転写紙300の非反転画像331a,331bを外側に向けた状態でクリアファイル400の内側に転写紙300を差し入れる挿入工程と、転写紙300を差し入れた状態でクリアファイル400を高温加圧して非反転画像331a,331bをクリアファイル400の内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されている。
【選択図】
図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルであって、
前記絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、
前記転写紙の非反転画像を外側に向けた状態で前記クリアファイルの内側に前記転写紙を差し入れる挿入工程と、
前記転写紙を差し入れた状態で前記クリアファイルを高温加圧して前記非反転画像を前記クリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されていることを特徴とする絵柄入りクリアファイル。
【請求項2】
矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルの製造方法であって、
前記絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、
前記画像形成工程を経た後に前記転写紙の非反転画像を外側に向けた状態で前記クリアファイルの内側に前記転写紙を差し入れる挿入工程と、
前記挿入工程を経た後に前記転写紙を差し入れた状態で前記クリアファイルを高温加圧して前記非反転画像を前記クリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されることを特徴とする絵柄入りクリアファイルの製造方法。
【請求項3】
矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルの製造に用いる転写紙であって、
前記クリアファイルの内側に差し入れる基材シート上に設けたバリヤー兼プライマー層と該バリヤー兼プライマー層上に設けた昇華インクのインク受理層とを備え、
前記バリヤー兼プライマー層および前記インク受理層が、前記基材シートの片面または両面に設けられていることを特徴とする転写紙。
【請求項4】
矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの片側一面に透過性のある白色印刷を施して前記PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して前記白色印刷を施した片側一面を内側にして二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの外側両面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルであって、
前記絵柄の反転画像を転写紙の一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、
前記転写紙の反転画像を内側に向けた状態で前記クリアファイルの外側両面から前記転写紙を重ねて仮止めする重畳工程と、
前記転写紙を仮止めした状態で前記クリアファイルを高温加圧して前記反転画像を前記クリアファイルの外側両面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されていることを特徴とする絵柄入りクリアファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵柄入りクリアファイル、絵柄入りクリアファイルの製造方法、および、これに用いる転写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書類を挟んで整理、保管し、持ち運ぶための事務用品として、例えば、
図10に示すクリアファイル400(クリアホルダーともいう。)が知られている。
そして、このようなクリアファイル400には、
図10および
図11に示すように、矩形状の透明または半透明の合成樹脂フィルムFを、この合成樹脂フィルムFの中央に位置する折れ線410を介して二つ折りし、折れ線410以外の少なくとも一辺(特に折れ線410に隣接する一辺)を熱や超音波で溶着した接合辺420を設けたものがある。
【0003】
そして、このようなクリアファイルに絵柄画像を付加した絵柄入りクリアファイルとして、例えば、合成樹脂フィルムを上述の如く二つ折りし、一辺を溶着した接合辺を設けたクリアファイルを、レーザプリンタなどの転写経路を通過させて、トナー画像である絵柄画像をクリアファイルの外側面に転写定着させたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような絵柄入りクリアファイルは、絵柄をクリアファイルの外側面に設けた場合に、絵柄が外気に露出し、絵柄の色落ちやヒビ割れによる経年劣化が生じ易く、また、絵柄をクリアファイルの内側面に設けた場合に、絵柄画像を形成するためのトナーにより二つ折りしたクリアファイルの内側対向面が互いに貼り付きやすくなるばかりでなく、その製造も合成樹脂フィルムを二つ折りする前に、絵柄を転写しなければならず、オンデマンド印刷ができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、絵柄を形成したクリアファイルの内側対向面の相互に生じがちな貼り付きを解消するとともに、絵柄の歪みや欠損の発生を抑えて、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止する絵柄入りクリアファイル、絵柄入りクリアファイルの製造方法、および、これに用いる転写紙を提供することである。
また、本発明の目的は、絵柄を形成したクリアファイルの外側両面において絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止するとともに、透過による絵柄の美観毀損を低減し、絵柄の色再現性と鮮明性を向上する絵柄入りクリアファイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルであって、前記絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、前記転写紙の非反転画像を外側に向けた状態で前記クリアファイルの内側に前記転写紙を差し入れる挿入工程と、前記転写紙を差し入れた状態で前記クリアファイルを高温加圧して前記非反転画像を前記クリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルの製造方法であって、前記絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、前記画像形成工程を経た後に前記転写紙の非反転画像を外側に向けた状態で前記クリアファイルの内側に前記転写紙を差し入れる挿入工程と、前記挿入工程を経た後に前記転写紙を差し入れた状態で前記クリアファイルを高温加圧して前記非反転画像を前記クリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルの製造に用いる転写紙であって、前記クリアファイルの内側に差し入れる基材シート上に設けたバリヤー兼プライマー層と該バリヤー兼プライマー層上に設けた昇華インクのインク受理層とを備え、前記バリヤー兼プライマー層および前記インク受理層が、前記基材シートの片面または両面に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを該PET樹脂製フィルムの片側一面に透過性のある白色印刷を施して前記PET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して前記白色印刷を施した片側一面を内側にして二つ折りし、前記折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの外側両面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルであって、前記絵柄の反転画像を転写紙の一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、前記転写紙の反転画像を内側に向けた状態で前記クリアファイルの外側両面から前記転写紙を重ねて仮止めする重畳工程と、前記転写紙を仮止めした状態で前記クリアファイルを高温加圧して前記反転画像を前記クリアファイルの外側両面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の絵柄入りクリアファイルは、絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、転写紙の非反転画像を外側に向けた状態でクリアファイルの内側に転写紙を差し入れる挿入工程と、転写紙を差し入れた状態でクリアファイルを高温加圧して非反転画像をクリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されていることにより、絵柄画像がクリアファイルの内側対向面に形成されているため、絵柄の歪みや欠損の発生を抑えることができる。
また、PET樹脂製フィルムと馴じみ易い昇華インクを用いていることにより、クリアファイル自体を構成するPET樹脂製フィルムの内側対向面に対する絵柄の親和性が増大するため、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の絵柄入りクリアファイルの製造方法によれば、請求項1に係る発明が奏する効果と同様の効果に加えて、絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、この画像形成工程を経た後に転写紙の非反転画像を外側に向けた状態でクリアファイルの内側に転写紙を差し入れる挿入工程と、この挿入工程を経た後に転写紙を差し入れた状態でクリアファイルを高温加圧して非反転画像をクリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されることにより、種々の絵柄を画像形成した転写紙のみを任意に選択、交換することが可能となるため、クリアファイル毎に多種多様な絵柄を印刷する多品種小ロット生産を達成することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の絵柄入りクリアファイルの製造に用いる転写紙によれば、請求項1および請求項2に係る発明が奏する効果と同様の効果に加えて、クリアファイルの内側に差し入れる基材シート上に設けたバリヤー兼プライマー層とこのバリヤー兼プライマー層上に設けた昇華インクのインク受理層とを備え、バリヤー兼プライマー層およびインク受理層が、基材シートの片面または両面に設けられていることにより、バリヤー兼プライマー層が昇華インクの基材シートへの浸透を阻止して、インク受理層が昇華インクを確実に保持するため、クリアファイルに転写する昇華インクの転写効率を著しく向上させるとともに、十分な濃度を有する均一で高品位な絵柄画像を形成することができる。
【0014】
請求項4に係る発明の絵柄入りクリアファイルは、絵柄の反転画像を転写紙の一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、転写紙の反転画像を内側に向けた状態でクリアファイルの外側両面から転写紙を重ねて仮止めする重畳工程と、転写紙を仮止めした状態でクリアファイルを高温加圧して反転画像をクリアファイルの外側両面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造されて、PET樹脂製フィルムと馴じみ易い昇華インクを用いていることにより、クリアファイル自体を構成するPET樹脂製フィルムの外側両面に対する絵柄の親和性が増大するため、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止することができる。
また、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムをこのPET樹脂製フィルムの片側一面に透過性のある白色印刷を施してPET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して白色印刷を施した片側一面を内側にして二つ折りし、折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの外側両面に画像形成することにより、クリアファイルの内側対向面に施した白色印刷がクリアファイルの外側両面に形成した絵柄画像の裏打ちとなって透過を一定程度に抑えるため、クリアファイルの外側両面に形成した絵柄画像が反対側の面から相互に透けて見えたり、クリアファイルの内側に挟んだ書類が透けて見えたりすることによる絵柄の美観毀損を低減するとともに、絵柄の色再現性と鮮明性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの製造に用いる絵柄入りクリアファイル製造設備の概要を示す構成図。
【
図3】
図2に示す熱転写プレス機の操作方法を説明するための立体図。
【
図4】
図3に続く熱転写プレス機の操作方法を説明するための立体図。
【
図5】本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの製造に用いる転写紙の断面図。
【
図6】本発明の第1の具体例である転写紙が重ね合わせられたクリアファイルの状態を示す断面図。
【
図7】本発明の第2の具体例である転写紙が重ね合わせられたクリアファイルの状態を示す断面図。
【
図8】本発明の第3の具体例である転写紙が重ね合わせられたクリアファイルの状態を示す断面図。
【
図9A】本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの平面図。
【
図9B】本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの下面図。
【
図10】書類が差し入れられるクリアファイルの平面図。
【
図11】
図10に示すクリアファイルを内側から見開いたクリアファイルの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムをこのPET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して二つ折りし、折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの内側対向面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルであって、絵柄の非反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、転写紙の非反転画像を外側に向けた状態でクリアファイルの内側に転写紙を差し入れる挿入工程と、転写紙を差し入れた状態でクリアファイルを高温加圧して非反転画像をクリアファイルの内側対向面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造され、絵柄を形成したクリアファイルの内側対向面の相互に生じがちな貼り付きを解消するとともに、絵柄の歪みや欠損の発生を抑えて、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0017】
また、本発明は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムをこのPET樹脂製フィルムの片側一面に透過性のある白色印刷を施してPET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線を介して白色印刷を施した片側一面を内側にして二つ折りし、折れ線に隣接する一辺を溶着してなるクリアファイルの外側両面にそれぞれ絵柄が印刷されている絵柄入りクリアファイルであって、絵柄の反転画像を転写紙の少なくとも一面に昇華インクによって形成する画像形成工程と、転写紙の反転画像を内側に向けた状態で前記クリアファイルの外側両面から転写紙を重ねて仮止めする重畳工程と、転写紙を仮止めした状態でクリアファイルを高温加圧して反転画像をクリアファイルの外側両面にそれぞれ転写する画像転写工程とにより製造され、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止するとともに、透過による絵柄の美観毀損を低減し、絵柄の色再現性と鮮明性を向上するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0018】
例えば、本発明の絵柄入りクリアファイル、絵柄入りクリアファイルの製造方法、および、これに用いる転写紙において、画像転写工程の際に、クリアファイルを高温加圧して、転写紙の少なくとも一面に形成された非反転画像または反転画像をクリアファイルの内側対向面または外側両面にそれぞれ転写する装置として、熱転写プレス機が使用されるが、これに限られるものではなく、同様の加熱および加圧が可能な装置であってもよい。
【実施例0019】
以下、
図1乃至
図9Bに基づいて、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイル100およびその製造方法を説明する。
【0020】
<1.絵柄入りクリアファイル製造設備の概要>
まず、
図1に基づいて、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイル100の製造に用いる絵柄入りクリアファイル製造設備200の概要について説明する。
ここで、
図1は、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの製造に用いる絵柄入りクリアファイル製造設備の概要を示す構成図である。
【0021】
図1に示すように、絵柄入りクリアファイル製造設備200は、PC210と、昇華型プリンタ220と、熱転写プレス機230とから構成される。
【0022】
PC210は、中央演算処理装置(CPU)、記憶装置等を備えたPC本体211と、画像を表示するモニタ212と、キーボード213、マウス214等の入力装置とからなる。
PC210は、PC本体211に画像編集ソフトがインストールされ、所要の絵柄を、モニタ212で確認しながら、キーボード213およびマウス214を操作して、作成、保存、加工、編集するために使用される。
なお、絵柄の作成等が可能な機器であれば、PC210と共に、または、PC210に代えて、スマートフォン、タブレット等を使用することもできる。
【0023】
昇華型プリンタ220は、昇華インクによって非反転絵柄画像331aまたは反転絵柄画像331a’(
図1においては省略)を転写紙300に形成するプリンタである。
昇華型プリンタ220は、
図1に示すように、PC210と有線または無線で接続され、PC210で作成された所要の絵柄に対応する非反転絵柄画像331aまたは反転絵柄画像331a’を、例えばA3サイズ、A4サイズ等の転写紙300に出力する。
本発明の一実施例において使用される昇華型プリンタ220としては、ピエゾ素子(圧電素子)が電圧を加えると収縮する性質を利用して昇華インクを噴射する、ピエゾヘッドを採用しているピエゾ方式のインクジェットプリンタが適している。
【0024】
熱転写プレス機230は、転写紙300とクリアファイル400とを挟んだ状態で高温加圧するプレス機である。
熱転写プレス機230は、昇華型プリンタ220によって転写紙300に形成された非反転絵柄画像331aまたは反転絵柄画像331a’を、昇華インクを熱で気化させることで、クリアファイル400に染み込ませて転写する昇華転写に用いられる。
【0025】
昇華転写の転写対象は、ポリエステル100%製の布帛、ポリエステルコーティングが施された陶器、金属、ガラスなどに限られ、ポリエステルフィルム(PET)素材からなるクリアファイル400を含む。
昇華転写による印刷方式は、カラー画像の発色が良く、鮮明である他、製版工程が不要であるため、印刷版の作成費用がかからないのみならず、昇華インクが素材に浸透するため、PET素材の風合いを損ないにくい、激しい色落ちや印刷のヒビ割れがない、歩留まりが良い、などの優れた特徴がある。
【0026】
本発明の一実施例において使用される熱転写プレス機230としては、転写紙300とクリアファイル400とを重ね合わせて載置する平坦なプレス台(下こて)232を有する、「平型」のプレス機が適している。
以下に詳述する熱転写プレス機230は、このような「平型」のプレス機を指している。
【0027】
<1.1.熱転写プレス機の概要>
次に、
図2に基づいて、熱転写プレス機230の概要を説明する。
ここで、
図2は、
図1に示す熱転写プレス機の斜視図である。
【0028】
熱転写プレス機230は、
図2に示すように、電源スイッチ231aが設けられた本体部231と、本体部231の前端上面に設けられたプレス台232と、プレス台232上に載置されるクリアファイル400とクリアファイル400に重ね合わせられる転写紙300とを挟んで高温加圧する熱板233aを備えたヒーター部233とからなる。
【0029】
本体部231は、熱転写プレス機230全体の基台であり、熱転写プレス機230は、本体部231が水平となる場所を選んで設置される。
【0030】
プレス台232は、耐熱性のある材質からなり、クリアファイル400とクリアファイル400に重ね合わせられた転写紙300を載置する矩形状の平台である。
また、プレス台232は、下面に設けられた図示しない高さ調整機構によって、本体部231に対して高さ調整自在に設けられている。
プレス台232上に載置された転写紙300とクリアファイル400に対するプレス圧は、プレス台232が上昇することで強くなり、プレス台232が下降することで弱くなる。
しばしば、プレス台232上には、転写紙300とクリアファイル400に熱を均一に与えるため、耐熱性のあるゴム製マット232a(
図2においては省略)が敷かれる。
【0031】
ヒーター部233は、本体部231の上面に設けられ、図示しないヒーターを内蔵した矩形状の熱板233aを正面視で正面側の下面に有し、熱板233aがプレス台232に対して垂直方向に対向する位置と対向しない位置との間で移動するように、本体部231に対して少なくとも左右いずれか一方に旋回自在に背面側で軸支されている。
また、ヒーター部233は、上方に延伸し一端に把手233b1を備えたハンドルレバー233bを有し、ハンドルレバー233bを手前に押し下げると下降し、ハンドルレバー233bを元の上向きの位置に押し上げると上昇するように、垂直方向に移動自在に構成されている。
さらに、ヒーター部233は、操作パネル233cを備え、操作者は、操作パネル233cを通じて、ヒーター温度およびプレス時間を設定することができる。
設定したプレス時間の経過は、例えばブザー音等により操作者に通知される。
【0032】
<1.2.熱転写プレス機の操作方法>
次に、
図2、
図3および
図4に基づいて、熱転写プレス機230の操作方法を説明する。
ここで、
図3は、
図2に示す熱転写プレス機の操作方法を説明するための立体図であり、
図4は、
図3に続く熱転写プレス機の操作方法を説明するための立体図である。
【0033】
まず、
図2に示すように、熱転写プレス機230の操作開始時において、ヒーター部233は、正面視で熱板233aが正面側に位置するように配置され、ヒーター部233の熱板233aは、プレス台232に対して垂直方向に一定の距離を空けて対向している。
このとき、ヒーター部233のハンドルレバー233bは、上方に向いている。
【0034】
次に、
図3に示すように、操作者は、ハンドルレバー233bを持って、ヒーター部233を右側に(すなわち反時計回りに)旋回させた後、昇華型プリンタ220によって非反転絵柄画像331a(331b)が一面または両面に形成された転写紙300が重ね合わせられたクリアファイル400をプレス台232上に載置する。
【0035】
さらに、
図4に示すように、操作者は、ハンドルレバー233bを持って、ヒーター部233を時計回りに旋回させて、元の正面側の位置に戻す。
そして、ヒーター部233の熱板233aがプレス台232に対して垂直方向に対向する位置まで戻ったとき、操作者がハンドルレバー233bを手前に押し下げることで、ヒーター部233が下降して熱板233aをプレス台232に向かって押し付け、転写紙300からクリアファイル400へのプレスによる昇華転写が開始する。
【0036】
所定のプレス時間の経過後、操作者がハンドルレバー233bを押し上げて元の上向きの位置に戻すことで、ヒーター部233が上昇して熱板233aがプレス台232から離れ、プレスによる昇華転写が終了する。
その後、図示は省略するが、操作者は、ハンドルレバー233bを持って、ヒーター部233を右側に(すなわち反時計回りに)旋回させた後、非反転絵柄画像331a(331b)が転写紙300から転写したクリアファイル400をプレス台232から取り除く。
【0037】
<2.転写紙の概要>
次に、
図5に基づいて、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイル100の製造に用いる転写紙300の概要について説明する。
ここで、
図5は、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの製造に用いる転写紙の断面図である。
【0038】
絵柄入りクリアファイル100の製造に用いる転写紙300は、
図5に示すように、基材シート310を備えている。
基材シート310は、パルプ線維からなるコーティング処理されていない紙、または、インクのにじみを防ぎ、耐水性を付与する、ポリマー系、アルキルケテンダイマー(AKD)系などの表面サイズ剤を塗布した紙であり、本実施例においては、A3サイズ、A4サイズ等のものを使用する。
そして、
図4に示すように、基材シート310上には、バリヤー兼プライマー層320が設けられ、バリヤー兼プライマー層320上には、インク受理層330が設けられている。
また、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330は、基材シート310の両面にそれぞれ設けられている。
【0039】
バリヤー兼プライマー層320は、基材シート310とインク受理層330との間に設けられてガスバリア性能、接着性能、クッション性などの機能を付与する中間層であり、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等からなる。
【0040】
インク受理層330は、転写紙300の最表面に設けられた非多孔性または多孔性の層であり、シリカ等の無機顔料およびポリビニルアルコール等の結合剤を含有する。
【0041】
インク受理層330が非多孔性の層として設けられた場合、昇華インクはインク受理層330の表面に吸収され、インク受理層330は湿って膨張する。
【0042】
一方、インク受理層330が多孔性の層として設けられた場合、昇華インクは、空気で充填された空洞(細孔)に毛管力が作用して迅速に吸収され、インク受理層330の内部にまで瞬時に吸い込まれる。
したがって、昇華インクによって転写紙300に非反転絵柄画像331a(331b)または反転絵柄画像331a’(331b’)が出力された後、転写紙300の乾燥時間が短くなり、熱転写プレス機230による昇華転写までの待ち時間が短縮されることから、不十分な乾燥による転写ムラの発生を抑制しつつ、生産性を上げることができる。
【0043】
このように基材シート310上にバリヤー兼プライマー層320を設け、バリヤー兼プライマー層320上にインク受理層330を設けることは、転写紙300に出力された昇華インクを最も高い割合でクリアファイル400に転写することを最大の目的として行われる。
すなわち、バリヤー兼プライマー層320とともに、インク受理層330が、非多孔性の層として設けられた場合、または、多孔性の層として設けられた場合のいずれにおいても、バリヤー兼プライマー層320が昇華インクの基材シート310への浸透を阻止して、インク受理層330が昇華インクを確実に保持するため、クリアファイル400に転写する昇華インクの転写効率を著しく向上させるとともに、十分な濃度を有する均一で高品位な非反転絵柄画像331a,331bまたは反転絵柄画像331a’,331b’を形成することができる。
【0044】
また、本実施例においては、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が、基材シート310の両面にそれぞれ設けられていることで、クリアファイル400の内側に、昇華インクによって非反転絵柄画像331a,331bが両面にそれぞれ形成された転写紙300を差し入れて、昇華転写によって、上述した高品位な非反転絵柄画像331a,331bをクリアファイル400の内側対向面に同時に形成することができる。
なお、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330は、基材シート310の片面のみに設けることもでき、この場合、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が設けられている転写紙300の面に非反転絵柄画像331a,331bまたは反転絵柄画像331a’,331b’を形成するのが望ましい。
【0045】
<3.絵柄入りクリアファイルおよび絵柄入りクリアファイルの製造方法に係る具体例について>
以下に、
図1、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9Aおよび
図9Bに基づいて、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイル100および絵柄入りクリアファイル100の製造方法について、3つの具体例で説明する。
ここで、
図6は、本発明の第1の具体例である転写紙が重ね合わせられたクリアファイルの状態を示す断面図であり、
図7は、本発明の第2の具体例である転写紙が重ね合わせられたクリアファイルの状態を示す断面図であり、
図8は、本発明の第3の具体例である転写紙が重ね合わせられたクリアファイルの状態を示す断面図であり、
図9Aは、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの平面図であり、
図9Bは、本発明の一実施例である絵柄入りクリアファイルの下面図である。
【0046】
<3.1.第1の具体例>
以下に、第1の具体例として、
図1、
図3、
図4、
図5、
図6、
図9Aおよび
図9Bに基づいて、本発明に係る絵柄入りクリアファイル100および絵柄入りクリアファイル100の製造方法について説明する。
【0047】
まず、
図1に示すように、画像形成工程として、PC210で作成された所要の絵柄に対応する非反転絵柄画像331a(331b)を、昇華型プリンタ220から出力して、昇華インクによって転写紙300の一面に形成する。
ここで、本具体例においては、この画像形成工程を2回以上行い、非反転絵柄画像331a(331b)が形成された転写紙300を少なくとも2枚作成する。
【0048】
なお、
図5に示すように、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が基材シート310の両面に設けられている場合には、非反転絵柄画像331a(331b)は、転写紙300のいずれの面に形成してもよい。
一方、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が基材シート310の片面に設けられている場合には、非反転絵柄画像331a(331b)は、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が設けられている転写紙300の面に形成するのが望ましい。
【0049】
次に、
図1、
図3、
図4および
図6に示すように、挿入工程として、クリアファイル400の内側に、非反転絵柄画像331a,331bが形成された面を外側に向けて2枚重ね合わせた転写紙300を差し入れ、2枚の転写紙300を差し入れたクリアファイル400を、熱転写プレス機230のプレス台232またはプレス台232に敷かれたゴム製マット232a上に載置する。
【0050】
さらに、
図4および
図6に示すように、画像転写工程として、非反転絵柄画像331a,331bが形成された2枚の転写紙300を差し入れた状態で、熱転写プレス機230のプレス台232またはゴム製マット232a上に載置されたクリアファイル400に対して、熱転写プレス機230の熱板233aを上方から押し付けて高温加圧し、2枚の転写紙300の一面にそれぞれ形成された非反転絵柄画像331a,331bをクリアファイル400の内側対向面に転写する。
すなわち、転写紙300からクリアファイル400への非反転絵柄画像331a,331bのプレスによる昇華転写プロセスが進行する。
【0051】
こうして製造された絵柄入りクリアファイル100は、非反転絵柄画像331a,331bがクリアファイル400の内側対向面にそれぞれ転写し、書類Dを差し入れた状態で、
図9Aに示すように、外側(表側)から非反転絵柄画像331aを、
図9Bに示すように、外側(裏側)から非反転絵柄画像331bを視認することができる。
また、絵柄入りクリアファイル100は、非反転絵柄画像331a,331bがクリアファイル400の内側対向面に形成されているため、絵柄の歪みや欠損の発生を抑えることができるばかりではなく、PET樹脂製フィルムと馴じみ易い昇華インクを用いていることにより、クリアファイル400自体を構成するPET樹脂製フィルムの内側対向面に対する絵柄の親和性が増大するため、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止することができる。
そして、このような絵柄入りクリアファイル100の製造方法によると、種々の絵柄を画像形成した転写紙300のみを任意に選択、交換することが可能となるため、クリアファイル毎に多種多様な絵柄を印刷する多品種小ロット生産を達成することができる。
【0052】
ここで、上記1.1で述べたように、操作者は、熱転写プレス機230の操作パネル233cを通じて、ヒーター温度(転写温度)およびプレス時間(転写時間)を設定することができ、本具体例において、出願人は、転写温度を180℃、転写時間を30秒前後に設定し、プレス時に約2~3.5kNの圧力を転写紙300とクリアファイル400に加えることで、良好な転写結果を得た。
【0053】
なお、熱板233aの傷付きを防止するために、プレス時には、熱板233aとクリアファイル400との間に普通紙を挟んでもよい。
また、
図6においては、各構成間の位置関係を理解し易いように、クリアファイル400に差し入れた2枚の転写紙300の間、および、転写紙300に形成された非反転絵柄画像331a,331bとクリアファイル400の内側対向面との間に、僅かな間隔を空けて示しているが、実際には、このような間隔が意図的に空けられている訳ではない。
【0054】
<3.2.第2の具体例>
以下に、第2の具体例として、
図1、
図3、
図4、
図5、
図7、
図9Aおよび
図9Bに基づいて、本発明に係る絵柄入りクリアファイル100および絵柄入りクリアファイル100の製造方法について説明する。
【0055】
まず、
図1に示すように、画像形成工程として、PC210で作成された所要の絵柄に対応する非反転絵柄画像331a(331b)を、昇華型プリンタ220から出力して、昇華インクによって転写紙300の両面に形成する。
すなわち、非反転絵柄画像331a(331b)を転写紙300の一面に形成するプロセスを転写紙300の表裏に亘って1回ずつ行ってもよく、両面印刷に対応した昇華型プリンタ220を用いて、非反転絵柄画像331a(331b)を転写紙300の両面に形成するプロセスを1回行ってもよい。
ここで、本具体例においては、
図5に示す、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が基材シート310の両面に設けられている転写紙300を使用するのが望ましい。
【0056】
次に、
図1、
図3、
図4および
図7に示すように、挿入工程として、クリアファイル400の内側に、非反転絵柄画像331a,331bが両面に形成された転写紙300を1枚差し入れ、1枚の転写紙300を差し入れたクリアファイル400を、熱転写プレス機230のプレス台232またはプレス台232に敷かれたゴム製マット232a上に載置する。
【0057】
さらに、
図4および
図7に示すように、画像転写工程として、非反転絵柄画像331a,331bが形成された1枚の転写紙300を差し入れた状態で、熱転写プレス機230のプレス台232またはゴム製マット232a上に載置されたクリアファイル400に対して、熱転写プレス機230の熱板233aを上方から押し付けて高温加圧し、1枚の転写紙300の両面に形成された非反転絵柄画像331a,331bをクリアファイル400の内側対向面に転写する。
すなわち、転写紙300からクリアファイル400への非反転絵柄画像331a,331bのプレスによる昇華転写プロセスが進行する。
【0058】
こうして製造された絵柄入りクリアファイル100は、第1の具体例と同様に、非反転絵柄画像331a,331bがクリアファイル400の内側対向面にそれぞれ転写し、書類Dを差し入れた状態で、
図9Aに示すように、外側(表側)から非反転絵柄画像331aを、
図9Bに示すように、外側(裏側)から非反転絵柄画像331bを視認することができる。
また、本具体例に係る絵柄入りクリアファイル100は、第1の具体例と同様に、非反転絵柄画像331a,331bがクリアファイル400の内側対向面に形成されているため、絵柄の歪みや欠損の発生を抑えることができるばかりではなく、PET樹脂製フィルムと馴じみ易い昇華インクを用いていることにより、クリアファイル400自体を構成するPET樹脂製フィルムの内側対向面に対する絵柄の親和性が増大するため、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止することができる。
そして、このような絵柄入りクリアファイル100の製造方法によると、種々の絵柄を画像形成した転写紙300のみを任意に選択、交換することが可能となるため、クリアファイル毎に多種多様な絵柄を印刷する多品種小ロット生産を達成することができる。
【0059】
本具体例においても、第1の具体例と同様に、出願人は、転写温度を180℃、転写時間を30秒前後に設定し、プレス時に約2~3.5kNの圧力を転写紙300とクリアファイル400に加えることで、良好な転写結果を得た。
【0060】
なお、本具体例においても、熱板233aの傷付きを防止するために、プレス時には、熱板233aとクリアファイル400との間に普通紙を挟んでもよい。
また、
図7においては、各構成間の位置関係を理解し易いように、クリアファイル400に差し入れた1枚の転写紙300の両面に形成された非反転絵柄画像331a,331bとクリアファイル400の内側対向面との間に、僅かな間隔を空けて示しているが、実際には、このような間隔が意図的に空けられている訳ではない。
【0061】
<3.3.第3の具体例>
以下に、第3の具体例として、
図1、
図4、
図5、
図8、
図9Aおよび
図9Bに基づいて、本発明に係る絵柄入りクリアファイル100および絵柄入りクリアファイル100の製造方法について説明する。
【0062】
まず、
図1に示すように、画像形成工程として、PC210で作成された所要の絵柄に対応する反転絵柄画像331a’(331b’)を、昇華型プリンタ220から出力して、昇華インクによって転写紙300の一面に形成する。
ここで、本具体例においては、この画像形成工程を2回以上行い、反転絵柄画像331a’(331b’)が形成された転写紙300を少なくとも2枚作成する。
【0063】
なお、
図1は、非反転絵柄画像331a(331b)が昇華型プリンタ220から転写紙300に出力される様子を示しているが、本具体例においては、反転絵柄画像331a’(331b’)が転写紙300に出力される。
【0064】
また、本具体例においては、第1の具体例と同様に、
図5に示すように、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が基材シート310の両面に設けられている場合には、反転絵柄画像331a’(331b’)は、転写紙300のいずれの面に形成してもよい。
一方、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が基材シート310の片面に設けられている場合には、反転絵柄画像331a’(331b’)は、バリヤー兼プライマー層320およびインク受理層330が設けられている転写紙300の面に形成するのが望ましい。
【0065】
次に、
図4および
図8に示すように、重畳工程として、反転絵柄画像331a’,331b’が形成された面を内側に向けて、クリアファイル400の外側両面から転写紙300を1枚ずつ重ねて仮止めし、2枚の転写紙300を仮止めしたクリアファイル400を、熱転写プレス機230のプレス台232またはプレス台232に敷かれたゴム製マット232a上に載置する。
なお、転写紙300をクリアファイル400の外側両面に仮止めするために、図示しない既知の耐熱テープを用いてもよい。
【0066】
ここで、本具体例において用いるクリアファイル400は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムを、このPET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線410を介して二つ折りし、折れ線410に隣接する一辺を溶着してなるものである点で、第1の具体例および第2の具体例において用いるクリアファイル400と共通する。
一方、本具体例において用いるクリアファイル400は、PET樹脂製フィルムの片側一面に透過性のある白色印刷を施して、この白色印刷を施した片側一面を内側にして二つ折りしたものである点で、第1の具体例および第2の具体例において用いるクリアファイル400と異なる。
【0067】
さらに、
図4および
図8に示すように、画像転写工程として、反転絵柄画像331a’,331b’が形成された転写紙300を外側両面から1枚ずつ重ねて仮止めし、2枚の転写紙300を仮止めした状態で、熱転写プレス機230のプレス台232またはゴム製マット232a上に載置されたクリアファイル400に対して、熱転写プレス機230の熱板233aを上方から押し付けて高温加圧し、2枚の転写紙300の一面にそれぞれ形成された反転絵柄画像331a’,331b’をクリアファイル400の外側両面に転写する。
すなわち、転写紙300からクリアファイル400への反転絵柄画像331a’,331b’のプレスによる昇華転写プロセスが進行する。
【0068】
こうして製造された絵柄入りクリアファイル100は、反転絵柄画像331a’,331b’がクリアファイル400の外側両面にそれぞれ転写し、書類Dを差し入れた状態で、
図9Aに示すように、外側(表側)から反転絵柄画像331a’を非反転画像として、
図9Bに示すように、外側(裏側)から反転絵柄画像331b’を非反転画像として視認することができる
また、本具体例に係る絵柄入りクリアファイル100は、PET樹脂製フィルムと馴じみ易い昇華インクを用いていることにより、クリアファイル400自体を構成するPET樹脂製フィルムの外側面に対する絵柄の親和性が増大するため、絵柄が鮮明で絵柄の色落ちやヒビ割れを防止することができる。
【0069】
さらに、本具体例に係る絵柄入りクリアファイル100は、矩形状の透明または半透明のPET樹脂製フィルムをこのPET樹脂製フィルムの片側一面に透過性のある白色印刷を施してPET樹脂製フィルムの中央に位置する折れ線410を介して白色印刷を施した片側一面を内側にして二つ折りしてなるクリアファイル400の外側両面に画像形成することにより、クリアファイル400の内側対向面に施した白色印刷がクリアファイル400の外側両面に形成した反転絵柄画像331a’, 331b’の裏打ちとなって透過を一定程度に抑えるため、クリアファイル400の外側両面に形成した絵柄画像が反対側の面から相互に透けて見えたり、クリアファイル400の内側に挟んだ書類Dが透けて見えたりすることによる絵柄の美観毀損を低減するとともに、絵柄の色再現性と鮮明性を向上することができる。
そして、このような絵柄入りクリアファイル100の製造方法によると、種々の絵柄を画像形成した転写紙300のみを任意に選択、交換することが可能となるため、クリアファイル毎に多種多様な絵柄を印刷する多品種小ロット生産を達成することができる。
【0070】
本具体例においても、第1の具体例、第2の具体例と同様に、出願人は、転写温度を180℃、転写時間を30秒前後に設定し、プレス時に約2~3.5kNの圧力を転写紙300とクリアファイル400に加えることで、良好な転写結果を得た。
【0071】
なお、本具体例においても、熱板233aの傷付きを防止するために、プレス時には、熱板233aと熱板233aに接する転写紙300との間に普通紙を挟んでもよい。
また、
図8においては、各構成間の位置関係を理解し易いように、クリアファイル400の外側両面から1枚ずつ重ねて仮止めした2枚の転写紙300の一面に形成された反転絵柄画像331a’,331b’とクリアファイル400の外側両面との間に、僅かな間隔を空けて示しているが、実際には、このような間隔が意図的に空けられている訳ではない。