(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060378
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】レトルト用包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 75/58 20060101AFI20240424BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20240424BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240424BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240424BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B65D75/58
B65D81/24 L
B65D65/40 D
B32B27/00 Z
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167709
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA17
3E067EA09
3E067EB07
3E067EE02
3E067EE48
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB13
3E067FC01
3E067GD08
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB41
3E086CA01
4F100AK45B
4F100AK51B
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00C
4F100GB15
4F100HB31B
4F100JK06
4F100JL12D
4F100JN01
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】開封時、ユーザが無意識でも予定の停止位置で確実に止めることができる包装袋を提供することを目的とする。
【解決手段】サイドシール部上部に設けられた開封開始点から引き裂くことにより開封が開始され、引き裂き方向における終端となる、もう一方のサイドシール部上部に印刷部分領域を設け、前記開封開始点から幅方向へ伸びた仮想延長線が、前記印刷部分領域と交差し、交差する幅方向の位置が、開封開始点から開始した包装袋の引き裂きを停止させるべき位置として予め定められた停止予定位置であり、印刷部分領域の基材層と印刷層間の剥離強度が0.5N/15mm以下であることを特徴とするレトルト用包装袋である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、印刷層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に有する2枚の積層フィルムを、シーラント層が最内層となるように対向して重ね、積層フィルムの縁部同士を接着させて密閉袋形態に形成し、2辺のサイドシール部の、一方のサイドシール部上部に設けられた開封開始点から引き裂くことにより開封が開始され、
引き裂き方向における終端となる、もう一方のサイドシール部上部に印刷部分領域を設け、前記開封開始点から幅方向へ伸びた仮想延長線が、前記印刷部分領域と交差し、
前記交差する幅方向の位置が、前記開封開始点から開始した包装袋の引き裂きを停止させるべき位置として予め定められた停止予定位置であり、
前記印刷部分領域の印刷層のインキは、レトルト処理による加熱によって前記部分印刷領域の基材層/印刷層の層間剥離を生じさせ、その基材層/印刷層間の剥離強度が0.5N/15mm以下であることを特徴とするレトルト用包装袋。
【請求項2】
前記印刷部分領域の印刷層のインキが脂肪族ポリカーボネートポリオール由来の構成単位とする、水性ポリウレタン樹脂を含み、水分率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のレトルト用包装袋。
【請求項3】
前記開封開始点が切り欠き(ノッチ)または引き裂き方向に裂ける脆弱部を有することを特徴とする請求項1に記載のレトルト用包装袋。
【請求項4】
前記2枚の積層フィルムは、前記開封開始点と前記停止予定位置との間に開封誘導線を備えることを特徴とする請求項1に記載のレトルト用包装袋。
【請求項5】
前記2枚の積層フィルムの少なくとも一部が透明または半透明であることを特徴とする請求項1に記載のレトルト用包装袋。
【請求項6】
前記印刷部分領域が藍色単色であることを特徴とする、請求項1に記載のレトルト用包装袋。
【請求項7】
前記印刷層以外の領域、或いは前記印刷層の前記シーラント層側に、第2の印刷層(通常の印刷)を設けてなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のレトルト用包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装袋に関する。さらに詳しくは、その上部の一部を横方向に引き裂き、開口部を形成する開封動作を予定位置で止めることができるレトルト用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料や、食品、飲料、調味料、医薬品、洗剤等の被収容物を小分け包装する場合や詰め替え用に簡易包装する場合等に、パウチと称される包装袋が広く用いられている。このような包装袋は、例えば、基材層とシーラント層とを積層したシート材が重ね合わされて周縁部がシールされ、そのシールされた周縁部(シール部)で包囲されるように、各種の被収容物を収容しうる収容部を形成した構成からなる。
【0003】
このような包装袋は、その内容物の特性(液体、粘稠体、固形物やそれら混合物、或いは、酸性、アルカリ性やアルコール含有など)、使用用途(レトルトや電子レンジ加熱など)、使用状況(内容物封入、輸送、保管、展示、加熱や冷却処理、開封、廃棄など)を考慮して設計されている。
【0004】
そして、包装袋の開封においては、開封予定位置のシール部一側縁に切り欠き(ノッチ)やミシン線、ハーフカット線などの開封誘導線のが形成されたり、或いは包装袋に用いられる積層シートの主となる基材を、引き裂き方向に裂け易い素材にすることにより、収容部が開封されやすいように構成されている。
【0005】
このように、開封予定位置の引き裂きを容易とすることにより、スムーズに袋の引き裂きができる一方で、
図4に示すように、開封時に不用意に力を入れ一気に全開してしまうと、包装袋本体と引き裂き部分を切り離す際に生じる反動によって、袋本体の内容物が外部に飛散するリスクがある。
【0006】
また、ユーザが包装袋のシール部を持ったまま引き続けると、被収容物を収容した包装袋は全開封し、シール部の一部が切り離される。この切り離されたシール部(引き裂き片)は、包装袋本体と別に廃棄することになり、二度手間となってしまう。また、シート材からなる包装袋は、撓み易く、開封した状態で手を離すと被収容物が零れるおそれがあるので、片手で包装袋本体を把持したまま、もう一方の手で引き裂き片を廃棄することになり、不便であった。
【0007】
このため、開封時の引き裂きを予定の位置で止めるストッパーを有する包装袋や、引き裂きし難くさせるように、引き裂き抵抗を付与した包装袋が提案されている。また、そのほか、引き裂き片を包装袋本体に確実に残すようにして、分離による廃棄の手間や紛失の虞を解消した包装袋も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された包装袋は、開封用ノッチから開始される引き裂きを停止させる予定位置に、開封用ノッチに向けて半円状の切り込みを入れることによってストッパーが形成されている。
【0010】
特許文献1では、切り裂き予定線と交差する方向にストッパーが形成されているため、切り裂き伝播が止まると記載されているが、開封用ノッチに向けて半円状の切り込みであると、開封用ノッチからの裂け目がストッパーに達した場合にも、引き裂く力が裂け目の先端の一か所に集中するため、この力の収集する箇所からさらに引き裂かれることになり、引き裂きを充分に停止できない。
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、包装袋を切り裂いて開封する際において、予定の停止位置で確実に開封動作を止めることができ、しかも開封時に包装袋の一部を切り離すことなく、かつ切り離し部分を包装袋本体に残すことにより、廃棄物となるような断片を生じることのない包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、
少なくとも、基材層と、印刷層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に有する2枚の積層フィルムを、シーラント層が最内層となるように対向して重ね、積層フィルムの縁部同士を接着させて密閉袋形態に形成し、2辺のサイドシール部の、一方のサイドシール部上部に設けられた開封開始点から引き裂くことにより開封が開始され、
引き裂き方向における終端となる、もう一方のサイドシール部上部に印刷部分領域を設け、前記開封開始点から幅方向へ伸びた仮想延長線が、前記印刷部分領域と交差し、
前記交差する幅方向の位置が、前記開封開始点から開始した包装袋の引き裂きを停止させるべき位置として予め定められた停止予定位置であり、
前記印刷部分領域の印刷層のインキは、レトルト処理による加熱によって前記部分印刷領域の基材層/印刷層の層間剥離を生じさせ、その基材層/印刷層間の剥離強度が0.5N/15mm以下であることを特徴とするレトルト用包装袋である。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、
前記印刷部分領域の印刷層のインキが脂肪族ポリカーボネートポリオール由来の構成単位とする、水性ポリウレタン樹脂を含み、水分率が50%以上であってよい。
【0014】
本発明は、包装袋に用いられる積層フィルムの印刷層の形成に用いられる水性インキ層が、加熱によって基材層から剥離しやすい特性を利用したものであり、積層フィルムの引き裂きを停止させるべき位置として予め定められた停止予定位置に、この水性インキを用いた部分印刷領域を形成し、レトルト処理による加熱によって、当該部分印刷領域の基材層/印刷層の層間剥離を生じさせることによって、引き裂き抵抗を増加させ、開封時に包装袋の一部を切り離すことなく、かつ切り離し部分を包装袋本体に残すことにより、廃棄の手間や紛失の虞を解消することができる。また、印刷の工程の一部で形成でき、かつ後工程のレトルト処理において、基材層/印刷層の層間剥離を生じさせることができるため、切り込み線や貫通孔による包装袋の強度不足の懸念がなく、その占める領域が不要であるため、包装袋の設計に制約が少ない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、包装袋を切り裂いて開封する際において、予定の停止位置で確実に開封動作を止めることができ、しかも開封時に包装袋の一部を切り離すことなく、かつ切り離し部分を包装袋本体に残すことにより、廃棄物となるような断片を生じることのない包装袋を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明に係る積層フィルムにおける
図1のA-A矢視部分の概略断面図である。
【
図3】本発明に係る包装袋を開封用ノッチから開封し、開封動作が止められた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る包装袋について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本包装袋は実施形態の構成に限定されない。
【0018】
図1および
図2は、本発明の実施形態の一例を示し、
図1は、包装袋の平面図であり、
図2は、本発明に係る積層フィルムの
図1のA-A矢視部分の概略断面図である。なお、本実施形態では、便宜上Y方向を上下方向或いは高さ方向とし、X方向を左右方向或いは幅方向として示す。
【0019】
図1中、シール部と非シール部分との境界を破線5で示し、破線5の外側がシール部である。本実施形態のレトルト用包装袋20は、積層フィルム30の4方をシールしたレトルト用包装袋20である。レトルト用包装袋20は、この積層フィルム30をシーラント層13が最内層になるように円筒状に丸めて、対向して重ね、2辺のサイドシール部2および3とボトムシール部4をヒートシールして接着させることにより、トップシール部1と3方のシール部と積層フィルム30内面とで囲まれた収容部7を有した袋状に形成される。
【0020】
レトルト用包装袋20は、2辺のサイドシール部2および3とボトムシール部4をシールした後、開口したトップシール部1から被収容物、例えばカレー、シチューなどの食料品が収容部7に充填された後、残りのトップシール部1のシール部が封止される。
【0021】
図1に示した例では、一方のサイドシール部2上部に開封開始点である開封用ノッチ10が形成され、もう一方のサイドシール部3上部に印刷部分領域6が設けられている。開封用ノッチ10から幅方向へ伸びた仮想延長線8が、印刷部分領域6と交差し、交差する幅方向の位置が、開封用ノッチ10から開始した包装袋の引き裂きを停止させるべき位置として予め定められた停止予定位置9となっている。開封用ノッチ10は必須ではないが、引き裂きのきっかけとして設けると良い。
【0022】
開封用ノッチ10と停止予定位置9の間には、ドット状に形成された開封誘導線が設けられていてもよい。開封誘導線に沿って引き裂きが行われることにより、包装袋20の開封は、容易かつ確実に、また直線的に行なうことができる。
【0023】
図2は、積層フィルム30の概略断面図の一例を示したものである。
図2の例では、基材層11/印刷層12/接着剤層14/中間層15/接着剤層14/シーラント層13の層構成となっている。最外層である基材層11と最内層であるシーラント層13との間に、印刷層12と中間層15が存在し、印刷層12と中間層15、および中間層15とシーラント層13とが接着剤層14を介して積層されている。中間層15としては、各種の包装材料用フィルムを用いることができる。例を挙げれば、補強層として延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、延伸PETフィルム(PET)、延伸ナイロンフィルム(ONY、NY)などである。また、ガスバリア層を中間層15として用いることもできる。
【0024】
以下に、好ましく用いられる積層フィルム30の層構成例を示す。
層構成例:
・PET(基材層厚さ12μm)/印刷層/接着剤/蒸着PET(バリア層)/接着剤/CPP(シーラント層厚さ60μm)
・PET(基材層)/印刷層/接着剤/ONy(補強層厚さ15μm)/接着剤/CPP
・蒸着PET(基材層)/印刷層/接着剤/蒸着PET(バリア層)/接着剤/CPP
・蒸着PET(基材層)/印刷層/接着剤/ONy/接着剤/CPP
・PET(基材層)/印刷層/接着剤/蒸着PET(バリア層)/接着剤/ONy(補強層)/接着剤/CPP
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム、ONy:延伸ナイロンフィルム、CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム
接着剤:ウレタン系接着剤
蒸着膜:SiOやAlOなどの無機化合物の蒸着層
【0025】
次に積層フィルム30を構成する各層の材料について説明する。基材層11の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン等の合成樹脂フィルム、紙などが使用される。基材層11は、これらの材料を二軸延伸したフィルムであっても良いし、一軸延伸して引き裂き予定方向(例えば幅方向)に易開封性を持たせたフィルムであっても良い。基材層11に、延伸ナイロンフィルムを用いる場合には、積層フィルム30に突き刺しに対する強靭性や、衝撃に対する強靭性を付与することができる。また、基材層11は、これらの材料のうち、単一の材料で形成されても良いし、複数の材料を積層して形成されても良い。
【0026】
シーラント層13は積層フィルム30の最内面に配置され、2枚の積層フィルム30をシーラント層13同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、包装袋20に製袋することを可能にする。シーラント層13としては、包装材料用のシーラント層として用いられる各種材料が使用可能である。例としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0027】
また、中間層15として、内容物の保存性を向上させることなどを目的として、ガスバリア層を設けることができる。電子レンジによる加熱調理を前提とする場合には、ガスバリア層としてアルミニウム箔などの金属箔やアルミニウム蒸着層を用いることができない。しかし代わって、PETなどのプラスチックフィルムの表面に、無機化合物からなるガスバリア層を設けたガスバリアフィルムを用いることができる。
【0028】
このガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は無機化合物の蒸着層もしくはコーティング層、またはその両方で構成することができ、両方で構成する場合にはプラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設けることができる。
【0029】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を、真空蒸着法を用いてアンカーコート層を設けた基材フィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0030】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0031】
積層フィルム30を構成する各層を積層する際には、接着剤層14を介して積層することができる。接着剤層14としては、公知の熱硬化型接着剤を用いることができる。具体的には、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂な
どを用いることができる。
【0032】
次に、本発明に係る包装袋の特徴について
図1を参照してさらに具体的に説明する。
図1では、レトルト用包装袋20の一辺(左辺)を成すサイドシール部2の外縁に、対向する他辺(右辺)へ向けて鋭角に切り欠いたV字状の開封用ノッチ10が設けられている。また、レトルト用包装袋20の他の一辺(右辺)を成すサイドシール部3の外縁に、対向する他辺(左辺)へ向けて印刷部分領域6が設けられている。そして、
図1に示すように、開封用ノッチ10から幅方向へ伸びた仮想延長線8が、印刷部分領域6と交差し、交差する幅方向の位置が、開封用ノッチ10から開始した包装袋20の引き裂きを停止させるべき位置として予め定められた停止予定位置9である。なお、開封用ノッチ10は、V字状に限らず、ホームベース状の切り欠き(ベースノッチ)や他辺(右辺)へ向けて弧状に切り欠いたU字状のノッチ(Uノッチ)、I字状の切り込み(Iノッチ)であっても良く、引き裂き方向に裂ける脆弱部であってもよい。
【0033】
また、レトルト用包装袋20は、開封用ノッチ10から引き裂き方向、本例では左右方向(X方向)に引き裂かれた際の引き裂きを停止させる予定位置9に端辺部分が位置するように印刷部分領域6が設けられている。印刷部分領域6を形成するインキ層17は、水性ポリウレタン樹脂を含有するラミネート用の水性グラビアまたはフレキソインキであって、加熱によって、基材層11との層間密着性が低下し、層間剥離を起こしやすい特性を有するものである。具体的には、印刷部分領域6のインキ層17が脂肪族ポリカーボネートポリオール由来の構成単位とする、水性ポリウレタン樹脂を含み、水分率が50%以上である水性インキを使用できる。
【0034】
また、レトルト用包装袋20の上記開封用ノッチ10から幅方向へ伸びた仮想延長線8が、引き裂き予定線であり、
図1に鎖線で示す。そして、より引き裂きやすくするように、この引き裂き予定線上にドット状の開封誘導線を設けることができる。
【0035】
図3は、レトルト用包装袋20を加熱後開封する際に、停止予定位置9で開封動作が止められた状態を示す図である。印刷部分領域6は、加熱によって、
図2の積層フィルム30の基材層11と印刷層12の界面で層間剥離が起こり、印刷した層が前の層から部分的または全体的に剥がれた状態である。この状態のレトルト用包装袋20をユーザが開封用ノッチ10を指で挟み、レトルト用包装袋20を仮想の引き裂き予定線に沿って引き裂きを開始し、裂け目が引き裂き予定方向に進行する。
【0036】
そして、裂け目が印刷部分領域6と停止予定位置9で交差すると、積層フィルム30の基材層11と印刷層12の界面中に空気層が含まれるため引き裂く力に抵抗感が増し、開封動作が止まるため、引き裂き動作が停止する。ここで、加熱によって層間剥離を確実に起こすためには、基材層11と印刷層12間の剥離強度が0.5N/15mm以下であることが望ましい。
【0037】
印刷部分領域6の印刷層12は、積層フィルム30の内部に存在するため、ユーザは直接目視できないが、上述したように、裂け目が印刷部分領域6に到達したとたんに引き裂く力に抵抗感が増すことで、無意識に開封動作を止めることができるように、外観から印刷部分領域6を可視化できるように着色することが望ましい。そのために、積層フィルム30として透明または半透明である、バリア性樹脂フィルムフィルムや無機蒸着樹脂フィルムを用いることができる。また、印刷部分領域6のインキは、藍色などの単色が好ましく使用できる。上記の停止予定位置9は、メーカーが予め想定した停止位置であり、内容物に応じてメーカーが任意に設計できる。
【0038】
また、レトルト用包装袋20の印刷層12では、印刷部分領域6以外の領域、或いは印
刷層12のシーラント層13側に、通常のインキを用いて、商品の説明文や内容物の外観などがわかる絵柄などを印刷することができる。ここで印刷方法、および印刷インキには、とくに制約を設けるものではないが、既知の印刷方法や印刷材料の中から、フィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、あるいは用途が食品などの場合には食品容器としての安全性、などを考慮すれば適宜選択することができる。
【0039】
たとえばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性や絵柄の高精細度において、好ましく用いることができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、レトルト用包装袋20の加熱後の開封の際、引き裂きを予定の位置で確実に止め、しかも開封時に包装袋の一部を切り離すことなく、かつ切り離し部分を包装袋本体に残すことにより、廃棄物となるような断片を生じることがない。
【符号の説明】
【0041】
1・・・トップシール部
2・・・サイドシール部
3・・・サイドシール部
4・・・ボトムシール部
5・・・シール部と非シール部との境界線
6・・・印刷部分領域
7・・・内容物収容部
8・・・封用ノッチ10から幅方向へ伸びた仮想延長線
9・・・開封停止予定位置(交差点)
10・・・開封用ノッチ
11・・・基材層
12・・・印刷層
13・・・シーラント層
14・・・接着剤層
15・・・中間層
20・・・包装袋本体
30・・・積層フィルム