(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060380
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびそれを用いた包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240424BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167711
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AC11
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB51
3E086BB55
3E086BB57
3E086BB62
3E086BB71
4F100AK05A
4F100AK06C
4F100AK25B
4F100AK25D
4F100AK63C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100EH20A
4F100EH20C
4F100GB15
4F100HB31B
4F100JA04A
4F100JA04C
4F100JL16
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基材層/シーラント層を共押出ポリエチレンで形成した積層フィルムを用いたモノマテリアル包材であり、優れた耐衝撃性、冷凍耐性、印刷適性を備え、かつリサイクル性にも優れる積層フィルムおよびそれを用いた包装袋を提供する。
【解決手段】少なくとも、基材層11と、シーラント層12とを備える積層フィルムであって、前記基材層と前記シーラント層とが共押出によって積層され、前記基材層および前記シーラント層がポリエチレンから構成され、前記基材層が高密度ポリエチレンを含み、前記シーラント層が低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、或いはその混合物を含み、前記高密度ポリエチレンの融点は、前記低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、或いはその混合物の融点より30℃以上高く、前記基材層の表面に水性インキからなる印刷層13を有することを特徴とする積層フィルムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、シーラント層とを備える積層フィルムであって、
前記基材層と前記シーラント層とが共押出によって積層され、
前記基材層および前記シーラント層がポリエチレンから構成され、
前記基材層が高密度ポリエチレンを含み、前記シーラント層が低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、或いはその混合物を含み、
前記高密度ポリエチレンの融点は、前記低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、或いはその混合物の融点より30℃以上高く、
前記基材層の表面に水性インキからなる印刷層を有することを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記基材層と前記シーラント層の厚みは、60μm~100μmであり、
その層厚比が1:1~1:2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記印刷層を含む基材層の表面にニス層を、乾燥後の塗布量が3g/m2~10g/m2となるように形成することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記印刷層および前記ニス層は、アクリル系樹脂を含む水性フレキソインキからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルムを用いてなる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層/シーラント層を共押出ポリエチレンにより形成したモノマテリアル積層フィルムであって、基材層表面に水性フレキソインキからなる印刷層を有する積層フィルムおよびそれを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料や、食品、飲料、調味料、医薬品、洗剤等の被収容物を小分け包装する場合や詰め替え用に簡易包装する場合等に、パウチと称される包装袋が広く用いられている。このような包装袋は、例えば、基材層とシーラント層とを積層したシート材が重ね合わされて周縁部がシールされ、そのシールされた周縁部(シール部)で包囲されるように、各種の被収容物を収容しうる収容部を形成した構成からなる。
【0003】
このような包装袋は、包装する内容物の性質、内容物の量、内容物の変質を保護するための後処理、包装体を運搬する形態、包装体を開封する方法、廃棄する方法などによって、さまざまな素材が組み合わせて用いられている。
【0004】
自立性包装袋を構成する積層体には剛性が求められる。また、内容物が液体であれば、落下した際に破袋しないような強度が求められる。これらの機能に対応するため、ポリエステルフィルムやナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルムなどを組み合わせた積層体が用いられてきた。基材フィルムとして耐熱性及び強靭性に優れた二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムと、シーラント層としてポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとを備える積層体(軟包材)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
ところが、近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、製品の省資源、再利用などの要求は、包装袋に用いられる積層体にも当てはまり、プラスチック材料の分別回収と再資源化のさらなる高効率化が求められつつある。これまでは、様々な異種材料を組み合わせることで高性能化を図ってきた包装用の積層体においても例外でなく、単一素材を用いたモノマテリアル化が求められるようになってきた。
【0006】
積層体においてモノマテリアル化を実現するためには、90%質量以上の同一樹脂素材を用いた包装材料を使用する必要がある。例えばポリオレフィンの一種であるポリプロピレンやポリエチレンは、融点が低いことから加工性がよく、共重合体化など多様な特性を有する素材が多く開発されており、選択の幅が広く用いやすいため、ポリプロピレンやポリエチレンを使用した積層体のモノマテリアル化が期待されている。
【0007】
モノマテリアル化を実現するために、積層体の簡単な層構成としては、(基材層)延伸ポリプロピレン/(シーラント層)無延伸ポリプロピレンが挙げられるが、ポリプロピレンは、耐衝撃性、冷凍耐性が低いことから冷凍食品など適用できない製品がある。これを解決する手段として(基材層)高密度ポリエチレン(HDPE)/(シーラント層)低密度ポリエチレン(LDPE)または、(基材層)高密度ポリエチレン(HDPE)/(シーラント層)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)といったポリエチレンのマテリアル包材が考えられるが、ポリエチレンは印刷適性が悪く、また製袋が難しいといった欠点がある。
【0008】
さらにモノマテリアル包材の市場のリサイクルはまだ明確に確立されていないが、インキ、接着剤はリサイクル時に脱離させることが好ましいとされている。特許文献2では、
基材、ヒートシール層の少なくとも一方の面に蒸着層を備えるポリエチレン系フィルムを用いた積層体が提案されており、印刷適性、製袋適性の観点から延伸ポリエチレンが基材として開示されている。しかし、特許文献2の積層体は、基材のシーラント層側に印刷層を設けており(裏刷り印刷)、基材層とシーラント層を接着剤でラミネートするといった製造方法であるため、印刷層、接着剤層がフィルムに挟まれておりインキ、接着剤の脱離が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-178357号公報
【特許文献2】特開2020-055157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、基材層/シーラント層を共押出ポリエチレンで形成した積層フィルムを用いたモノマテリアル包材であり、優れた耐衝撃性、冷凍耐性、印刷適性を備え、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層フィルムおよびそれを用いた包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、
少なくとも、基材層と、シーラント層とを備える積層フィルムであって、
前記基材層と前記シーラント層とが共押出によって積層され、
前記基材層および前記シーラント層がポリエチレンから構成され、
前記基材層が高密度ポリエチレンを含み、前記シーラント層が低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、或いはその混合物を含み、
前記高密度ポリエチレンの融点は、前記低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、或いはその混合物の融点より30℃以上高く、
前記基材層の表面に水性インキからなる印刷層を有することを特徴とする積層フィルムである。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、
前記基材層と前記シーラント層の厚みは、60μm~100μmであり、
その層厚比が1:1~1:2の範囲にあってよい。
【0013】
また、本発明の第3の態様は、
前記印刷層を含む基材層の表面にニス層を、乾燥後の塗布量が3g/m2~10g/m2となるように形成してもよい。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、
前記印刷層および前記ニス層は、アクリル系樹脂を含む水性インキからなってもよい。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、
上記構成を有する積層フィルムを用いてなる包装袋である。
【発明の効果】
【0016】
基材層/シーラント層を共押出ポリエチレンで形成した積層フィルムを用いたモノマテリアル包材であり、優れた耐衝撃性、冷凍耐性、印刷適性を備え、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る積層フィルムの層構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る積層フィルムを用いた包装袋の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る積層フィルムおよびそれを用いた包装袋について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本実施形態の構成に限定されない。
【0019】
<積層フィルム>
本発明の一実施形態において、
図1に示すように、積層フィルム10は、基材層11と、シーラント層12とを備え、基材層11の表面には印刷層13が設けられ、さらに印刷層13を含む基材層11の表面にニス層14備える。シーラント層12は、内容物側の最内層に配置される。
【0020】
本発明の積層フィルム10は、基材層11およびシーラント層12がポリエチレンにより構成され、基材層11/シーラント層12を共押出ポリエチレンで形成した積層フィルムである。共押出ポリエチレンで形成した積層フィルム10は、接着剤層を伴わないため、リサイクル時に脱離する工程を削減できる。
【0021】
本発明の積層フィルム10において、ポリエチレンの含有量は、90質量%以上であることが好ましい。積層フィルム全体におけるポリエチレンの含有量を90質量%以上とすることにより、本発明の積層フィルム10は、モノマテリアル化され、リサイクル性を向上することができる。なお、積層フィルムにおけるポリエチレンの含有量とは、積層フィルムを構成する各層における樹脂材料の含有量の和に対する、ポリエチレンの含有量の割合を意味する。
【0022】
また、基材層11の表面に印刷層13を設けてもよい。パッケージ形態としては印刷層13がパッケージ最外層となる形態(表刷り印刷という)および印刷層13が基材同士の中間層として存在する形態(裏刷り印刷という)がある。従来は、裏刷り印刷が一般的であるが、本発明の積層フィルム10の印刷層13は、基材層11とシーラント層12を共押出したフィルムを用い、基材層11の表面にアクリル系樹脂を含む水性フレキソインキを用いた表刷り印刷で形成される。
【0023】
また、印刷層11の形成方法としては、従来のグラビアインキによる印刷では、ポリエチレンフィルムに対し印刷適性が悪いため、アクリル系樹脂を含む水性フレキソインキによる印刷層13を基材層11表面に形成するのがよい。アクリル系樹脂を含む水性フレキソインキによる印刷は、伸縮性の高いポリエチレンフィルムに対し、高精細な印刷が可能であり、また、環境負荷の観点からも、フレキソ印刷が好ましい。特に、フレキソ印刷のセントラルインプレッション方式が使用できる。
【0024】
また、表刷り印刷とは、印刷層13上に他のフィルムがラミネートされず、印刷層13がむき出しの状態であるため、その上面にさらにニス層14を形成することが好ましい。ニス層14を形成することで、外気との接触を防止することができ、ニス層14は、乾燥後の塗布量が3g/m2~10g/m2となるように形成する(塗布する)ことで耐摩擦性、耐水性、耐ブロッキング性を向上させる。ニス層14は、印刷層13と同系統のアクリル系樹脂を含む水性フレキソインキで形成することが好ましく、表刷り印刷によって、リサイクル時にインキおよびニスの脱離が容易となる。
【0025】
本発明の積層フィルム10は、モノマテリアル包材であり、前述したように接着剤を用
いず、インキの脱離が容易であり、リサイクル適正が高いことなどの観点から、従来と比較し環境に配慮された包材となる。
【0026】
以下、本発明の積層フィルムを構成する各層について説明する。
【0027】
<共押出ポリエチレンフィルム>
一実施形態において、基材層11に含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用することができる。高密度ポリエチレン層を備えることにより、耐衝撃性、冷凍耐性に優れる。
【0028】
シーラント層12に含まれるポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、或いはその混合物を含む層からなる構成とすることができる。
【0029】
本発明の共押出ポリエチレンフィルム20は、基材層11のHDPEと、シーラント層12のLDPE、またはLLDPE、或いはその混合物をTダイ法やインフレーション法により1枚の複合フィルムにしたものである。これによって、必要とする機能の樹脂を必要最小限の厚みでフィルム化でき、一工程で多層複合フィルム化が可能になる。また、押出し条件の工夫、樹脂の選定により、ヒートシール性の良い複合フィルムをつくることができる。
【0030】
本発明の共押出条件としては、基材層11のHDPEの融点が、シーラント層12のLDPEまたはLLDPE、或いはその混合物の融点より30℃以上高く、基材層11とシーラント層12の厚みは、内容物の保護と製袋性確保のため、60μm~100μmであり、その層厚比が1:1~1:2の範囲にあることが望ましい。基材層11のHDPEの融点が、シーラント層12のLDPEまたはLLDPE、或いはその混合物の融点より30℃以上高くないと、すべての層が融解してシールバーにくっついてしまい、加工が難しくなる。このような共押出条件と樹脂の選定により、ヒートシール性を維持しつつ、本発明の積層フィルム10の耐衝撃性、冷凍耐性をより向上することができる。
【0031】
<包装袋>
本発明の積層フィルム10を用いてなる包装袋1の包装形態は、特に限定されず、例えば、
図2に示すように、積層フィルム10が筒状に加工され、筒状の積層フィルム10の開口端部がシールされたピロー包装袋等を採用することができる。シーラント層12が内面になるように重ねて熱融着することで、背シール部2、底シール部3、上シール部4が形成され、袋状の収納部6に内容物が充填される。なお、本実施形態においてピロー包装袋に蒸気抜き機構を設けてもよい。例えば背シール部2の一部に脆弱部5を設けて剥離し易くすることができる。
【0032】
このように、本発明の積層フィルム10は、基材層11/シーラント層12を共押出ポリエチレンフィルム20で形成したモノマテリアル包材であり、接着剤を用いない構成、さらに、印刷層13を基材層11表面に形成することで、インキの脱離処理も容易であることから、リサイクル時における接着剤、インキの脱離の負荷を削減することができる。また、印刷層13がアクリル系樹脂を含む水性フレキソインキで形成されることによりポリエチレンへの印刷適性が向上し、高精細な印刷が可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・包装袋
2・・・背シール部
3・・・底シール部
4・・・上シール部
5・・・脆弱部
6・・・収納部
10・・・積層フィルム
11・・・基材層
12・・・シーラント層
13・・・印刷層
14・・・ニス層
20・・・共押出ポリエチレンフィルム