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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060394
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240424BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240424BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K8/891
A61Q5/00
A61K8/34
A61K8/40
A61K8/73
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167734
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 瑞季
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC532
4C083AC691
4C083AC692
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD281
4C083AD282
4C083CC33
4C083DD23
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】塗布性、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が良く、毛髪のべたつきがない毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)25℃における動粘度が10~3,000mm/sのメチルポリシロキサン、(B)炭素数14~22のアルキル鎖を有する高級アルコール、(C)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる一種以上、(D)多価アルコールを一種以上、(E)ヒドロキシエチルセルロースを含有し、(A)成分の含有量が0.4~24質量%、(B)成分の含有量が0.8~8質量%である毛髪化粧料組成物を提供することにより、塗布性、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が良く、毛髪のべたつきがない毛髪化粧料組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における動粘度が10~3,000mm/sのメチルポリシロキサン
(B)炭素数14~22のアルキル鎖を有する高級アルコール
(C)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種以上
(D)多価アルコール
(E)ヒドロキシエチルセルロース
を含有し、(A)成分の含有量が0.4~24質量%、(B)成分の含有量が0.8~8質量%である毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、ミリスチルアルコールである請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記(C)成分は塩化ステアリルトリメチルアンモニウムおよび塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムの2種を含有する請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が0.2~2.5質量%である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項5】
前記(D)成分は濃グリセリン、1,3-ブチレングリコールおよびプロピレングリコールの3種を含有する請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項6】
前記(D)成分のうち、プロピレングリコールの含有量が50%以上である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項7】
前記(D)成分の含有量が1.1~27.5質量%である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項8】
前記(E)成分の含有量が0.1~2質量%である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項9】
酸化染毛剤または脱色剤による染毛処理または脱色処理後の毛髪に、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物を塗布し、洗い流さずに乾燥させる工程を含む毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化染毛剤又は脱色剤による、脱色処理又は染毛処理後の毛髪に適用する毛髪化粧料であり、特に塗布性、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が良く、毛髪のべたつきがない毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化染毛剤や脱色剤等による化学処理や、ブロー等による物理処理の影響で、毛髪がパサつく、毛髪がまとまらないといった傾向がある。このような毛髪に対して、まとまり効果や滑らかな感触を得るため、これまでに、さまざまな毛髪化粧料が開発されている。一般的にはヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアマスク等の洗い流す毛髪化粧料や、ヘアオイル、ヘアミルク、ヘアクリーム、ヘアミスト等の洗い流さない毛髪化粧料がある。また、洗い流さない毛髪化粧料は、脱色剤又は酸化染毛剤による処理後の毛髪に適用することで、脱色剤又は酸化染毛剤によるダメージを軽減することができる。
【0003】
このような洗い流さない毛髪化粧料は、コンディショニング効果を与えるために、カチオン界面活性剤、高級アルコールおよび油性成分を加えて調整されることが知られている。しかし、このような洗い流さない毛髪化粧料は、毛髪に塗布してから乾燥仕上げするまでの過程で、しっとり感より、むしろ重さやべたつきを感じる等の課題があった。
【0004】
上記課題を解決する目的で、カチオン性界面活性剤、炭素数14~22の高級アルコール、分岐脂肪酸の炭素数2~6のアルキルエステル、α-オレフィンオリゴマーを含有することを特徴とする毛髪化粧料(特許文献1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-98928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、毛髪の柔らかさおよび毛髪のべたつきのなさの検討はなされているが、脱色剤又は酸化染毛剤による処理後の毛髪に適用する際に、使用時の塗布性や毛髪のまとまりについては検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)25℃における動粘度が10~3,000mm/sのメチルポリシロキサン、(B)炭素数14~22のアルキル鎖を有する高級アルコール、(C)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる一種以上、(D)多価アルコール、(E)ヒドロキシエチルセルロースを含有し、(A)成分の含有量が0.4~24質量%、(B)成分の含有量が0.8~8質量%である毛髪化粧料組成物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、塗布性、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が良く、毛髪のべたつきがない毛髪化粧料組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0010】
本発明は、毛髪の柔らかさ、毛髪のまとまり感および毛髪のべたつきのなさの観点から、(A)25℃における動粘度が10~3,000mm/sのメチルポリシロキサンを含有する。
【0011】
本発明で用いられる前記(A)成分としては、25℃における動粘度が10mm/s、350mm/sおよび3,000mm/sの3種を併用することで、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が向上する。
【0012】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、0.4~24%、好ましくは1~16%、より好ましくは2~10%がよい。前記(A)成分が0.4%未満の場合、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が不十分である恐れがある。前記(A)成分が24%を超える場合、毛髪のべたつきが生じる恐れがある。
【0013】
本発明は、塗布性の観点から、(B)炭素数14~22のアルキル鎖を有する高級アルコールを1種以上含有する。
【0014】
本発明で用いられる前記(B)成分のうち、塗布性を向上させる観点から、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる前記(B)成分のうち、塗布性を向上させる観点から、ミリスチルアルコールがより好ましい。
【0016】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、0.8~8%、好ましくは1~6%、より好ましくは1.5~5%がよい。前記(B)成分が0.8%未満の場合、塗布性が不十分である恐れがある。前記(B)成分が8%を超える場合、毛髪のべたつきが生じる恐れがある。
【0017】
本発明は、塗布性、毛髪の柔らかさ、毛髪のまとまり感および毛髪のべたつきのなさの観点から、(C)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種以上を含有する。
【0018】
本発明は、塗布性、毛髪の柔らかさ、毛髪のまとまり感および毛髪のべたつきのなさを向上させる観点から、(C)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムおよび塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムの2種を併用することが好ましい。
【0019】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.2~2.5%、より好ましくは0.25~2%、さらに好ましくは0.5~1.5%がよい。前記(C)成分の含有量が0.2%未満の場合、塗布性、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が不十分である恐れがある。前記(C)成分が2.5%を超える場合、塗布性が不十分である恐れがあり、毛髪のべたつきが生じる恐れがある。
【0020】
本発明は、毛髪の柔らかさ、毛髪のまとまり感の観点から、(D)多価アルコールを含有する。
【0021】
本発明で用いられる前記(D)成分は、毛髪の柔らかさ、毛髪のまとまり感を向上させる観点から、濃グリセリン、1,3-ブチレングリコールおよびプロピレングリコールの3種を併用することが好ましい。
【0022】
本発明で用いられる前記(D)成分は、毛髪の柔らかさを向上させる観点から、プロピレングリコールの含有量が(D)成分の含有量の50%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる前記(D)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1.1~27.5%、より好ましくは2.75~22%、さらに好ましくは5.5~16.5%がよい。前記(D)成分の含有量が1.1%未満の場合、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が不十分である恐れがある。前記(D)成分の含有量が27.5%を超える場合、毛髪のべたつきが生じる恐れがある。
【0024】
本発明は、塗布性の観点から、(E)ヒドロキシエチルセルロースを含有する。
【0025】
本発明で用いられる前記(E)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~2%、より好ましくは0.15~1%、さらに好ましくは0.2~0.5%がよい。前記(E)成分の含有量が0.1%未満および0.5%を超える場合、塗布性が不十分である恐れがある。
【0026】
本発明の毛髪化粧料組成物は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、前記(A)成分以外の油性成分、前記(E)成分以外の高分子、保湿剤、前記(C)成分以外の界面活性剤、キレート剤、蛋白誘導体、加水分解蛋白、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を効果を損なわない範囲で含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0027】
本発明における毛髪化粧料組成物の20℃の条件下における粘度は、3,000~40,000mPa・sであることが好ましく、5,000~30,000mPa・sがより好ましい。
【0028】
本発明における毛髪化粧料組成物の20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた毛髪化粧料組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間静置し調温した後に、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、回転速度12rpmの条件下で測定したものである。
【0029】
本発明における毛髪化粧料組成物の20℃の条件下におけるpHは、特に限定されないが、3~7であることが好ましい。
【0030】
本発明における毛髪化粧料組成物の20℃の条件下におけるpHは、常法にて調製して得られた毛髪化粧料組成物を20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0031】
本発明における毛髪化粧料組成物の剤型は、クリーム状、乳液状またはジェル状である。
【0032】
本発明における毛髪化粧料組成物の毛髪処理方法としては、酸化染毛剤または脱色剤による染毛処理または脱色処理後の毛髪に、毛髪化粧料組成物を塗布し、洗い流さずに乾燥させる工程を含む毛髪処理方法である。
【0033】
本発明における酸化染毛剤または脱色剤による染毛処理または脱色処理後の毛髪とは、酸化染毛剤または脱色剤を塗布した後、シャンプーで洗い流し、必要に応じてリンス、コンディショナー等を用いた毛髪を意味する。
【0034】
本発明における前記毛髪処理方法の乾燥とは、ドライヤーや自然乾燥等で毛髪を乾燥させることである。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0036】
本明細書に示す評価試験において、毛髪化粧料組成物に含まれる成分およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0037】
本明細書に示す評価試験方法において、「塗布性」、「毛髪の柔らかさ」、「毛髪のまとまり感」および「毛髪のべたつきのなさ」について下記の方法で評価した。
【0038】
表1に記載の染毛剤組成物を1剤:2剤=1:2の割合で混合し、ウィッグ(人毛黒髪100%、クィーン・カットNo775N、株式会社ビューラックス製)に対し200g均一に塗布した。20分間放置した後、水で十分洗い流し、シャンプー(GREEN BOTTLE ボタニカルリッチシャンプー ラグジュアリーベルガモットの香り、株式会社ダリヤ製)で洗浄し、タオルドライをした。実施例および比較例で得られた毛髪化粧料組成物5gを均一に塗布し、「塗布性」について下記の評価基準で官能にて評価した。その後ドライヤーで乾燥させ、「毛髪の柔らかさ」、「毛髪のまとまり感」、「毛髪のべたつきのなさ」について、専門のパネラーで行い、それぞれを比較評価した。
【0039】
【表1】
【0040】
「塗布性」
<評価基準>
5:15人中13人以上が、塗布性が良いと感じた。
4:15人中10人以上12人以下が、塗布性が良いと感じた。
3:15人中7人以上9人以下が、塗布性が良いと感じた。
2:15人中4人以上6人以下が、塗布性が良いと感じた。
1:15人中3人以下が、塗布性が良いと感じた。
【0041】
「毛髪の柔らかさ」
<評価基準>
5:15人中13人以上が、毛髪が柔らかいと感じた。
4:15人中10人以上12人以下が、毛髪が柔らかいと感じた。
3:15人中7人以上9人以下が、毛髪が柔らかいと感じた。
2:15人中4人以上6人以下が、毛髪が柔らかいと感じた。
1:15人中3人以下が、毛髪が柔らかいと感じた。
【0042】
「毛髪のまとまり感」
<評価基準>
5:15人中13人以上が、毛髪のまとまり感があると感じた。
4:15人中10人以上12人以下が、毛髪のまとまり感があると感じた。
3:15人中7人以上9人以下が、毛髪のまとまり感があると感じた。
2:15人中4人以上6人以下が、毛髪のまとまり感があると感じた。
1:15人中3人以下が、毛髪のまとまり感があると感じた。
【0043】
「毛髪のべたつきのなさ」
<評価基準>
5:15人中13人以上が、毛髪のべたつきがないと感じた。
4:15人中10人以上12人以下が、毛髪のべたつきがないと感じた。
3:15人中7人以上9人以下が、毛髪のべたつきがないと感じた。
2:15人中4人以上6人以下が、毛髪のべたつきがないと感じた。
1:15人中3人以下が、毛髪のべたつきがないと感じた。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
表2~6に示す実施例1~36より、「塗布性」、「毛髪の柔らかさ」、「毛髪のまとまり感」および「毛髪のべたつきのなさ」に関して良好な結果が得られた。
【0050】
以下に毛髪化粧料組成物の実施例37を記載する。
【0051】
実施例37により得られた毛髪化粧料組成物は、「塗布性」、「毛髪の柔らかさ」、「毛髪のまとまり感」および「毛髪のべたつきのなさ」に関して良好な結果が得られた。
【0052】
<実施例37>
成 分 含有量(質量%)
メチルポリシロキサン(10mm/s) 2.00
メチルポリシロキサン(350mm/s) 1.00
メチルポリシロキサン(3,000mm/s) 1.00
ミリスチルアルコール 2.50
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.80
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 0.20
濃グリセリン 1.00
フェノキシエタノール 0.30
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.10
ツバキ油 0.01
ユチャ油 0.01
1, 3-ブチレングリコール 4.00
エデト酸二ナトリウム 0.02
プロピレングリコール 6.00
ヒドロキシエチルセルロース ※1 0.30
香料 0.08
精製水 80.68
合計 100.00
pH(20℃):5.04
粘度(20℃):11,620mPa・s
※1:HEC ダイセル SE 400(ダイセル化学工業株式会社製)
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、塗布性、毛髪の柔らかさおよび毛髪のまとまり感が良く、毛髪のべたつきがない毛髪化粧料組成物を得ることができる。