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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060405
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】キャタピラ推進式高速船
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/34 20060101AFI20240424BHJP
   B63H 25/38 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B63H1/34
B63H25/38 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167757
(22)【出願日】2022-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】522410064
【氏名又は名称】加藤 裕次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕次郎
(57)【要約】
【課題】安全に乗り降りができ、キャタピラが波の影響を受けにくくして破損しにくく、高速航行が可能なキャタピラ推進式高速船を提供することを課題とする。
【解決手段】平面視で単胴船の中央後部に設けたキャタピラトンネルに、又は、三胴船の主船体と副船体の間の後部に、エンジン又はモータの駆動源に連結し回転する駆動スプロケットに係合させて、所定の間隔で所定の数の水かきを突設したキャタピラを設け、キャタピラは、長手方向を単胴船又は三胴船の船首と船尾を結ぶ方向に平行に設け、上下方向は前記キャタピラ下側に突設させた水かきが喫水の喫水線近傍を掻くように、単胴船又は三胴船の船底と略同じ高さに位置するようにしたキャタピラ推進式高速船により課題解決できた。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で単胴船の右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネルに、又は、三胴船の主船体と左右の副船体それぞれとの間の後部に、
エンジン又はモータの駆動源の駆動力が伝達されて回転する、所定の間隔で所定の数の水かきを突設したキャタピラを備え、
前記キャタピラが、長手方向を前記単胴船又は前記三胴船の船首と船尾を結ぶ方向に平行になる
ように、かつ、前記キャタピラの環状体の下側が前記単胴船又は前記三胴船の船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されていることを特徴とするキャタピラ推進式高速船。
【請求項2】
水平断面形状が丸い前端部と尖った後端部との間を流線形状とした左右対称の形状を有し、所定の前後方向の長さと所定の上下方向の長さを有して垂設されたラダーと、
前記ラダーの上下方向の略中間部から前記ラダーの前端から後端にかけて前記ラダーに対して左右方向に対称的に突設させた、所定の左右方向の長さと所定の上下方向の厚みの翼形状を有する衝撃吸収滑走翼と、
前記ラダーの前端部と前記衝撃吸収滑走翼の前端部を固定した、垂直方向の回転軸であるラダーシャフトと、を有する衝撃吸収型滑走式ラダーを備え、
前記衝撃吸収型滑走式ラダーを、前記衝撃吸収滑走翼が高速航行時の喫水の喫水線近傍の高さとなる高さに、前記単胴船の場合は右舷と左舷の2か所、又は、船底中央の1か所、あるいは、前記三胴船の場合は主船体の右舷と左舷の2か所に配設したことを特徴とする請求項1に記載のキャタピラ推進式高速船。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン又は電動の駆動源により作動するキャタピラで海上を高速航行するキャタピラ推進式高速船に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の船の推進部であるスクリューの代わりに船の左右両側に櫂を付けたキャタピラにより、船を航行させる水上キャタピラ船が開示されている。
【0003】
特許文献2には、内側が平行直線の双胴船の間にある水を、後方に送り出す複数の水かきを、水平移動させて推進力とする構造の高速船で、大型の場合は、双胴の中心先端に突出し・伸縮可能な低造波抵抗装置を設け、高速のため受ける風力を揚力、浮力、及びジェットに使用し、更に船体の下部には制御できる翼をもった没水体をもつ船が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-105293号公報
【特許文献2】特開平6-207891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、左右の全長にわたり右舷や左舷にキャタピラを取り付けているので、船への乗り降りが不便で危険であるという問題があった。また、右舷や左舷に取り付けたキャタピラが波の影響を直接に受けることから、キャタピラの水掻きが回転する方向と異なる方向からの波の力等により水掻きを含むキャタピラが破損する危険があるという問題もあった。
【0006】
特許文献2の発明は、後尾翼が船尾に突設され造波抵抗減少装置が船首に突設されていることから、前記後尾翼と前記造波抵抗減少装置とを同時に機能発揮させるために両者を海中に浸漬させるには、船首と船尾との喫水差のコントロールとしてイーブントリムを意図していることが明らかであるので、高速航行が困難な船舶であるという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、安全に乗り降りができ、キャタピラが波の影響を受けにくくして破損しにくく、高速航行が可能なキャタピラ推進式高速船を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のキャタピラ推進式高速船は、平面視で単胴船の右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネルに、又は、三胴船の主船体と左右の副船体それぞれとの間の後部に、エンジン又はモータの駆動源の駆動力が伝達されて回転する、所定の間隔で所定の数の水かきを突設したキャタピラを備え、前記キャタピラが、長手方向を前記単胴船又は前記三胴船の船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラの環状体の下側が前記単胴船又は前記三胴船の船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のキャタピラ推進式高速船は、請求項1において、水平断面形状が丸い前端部と尖った後端部との間を流線形状とした左右対称の形状を有し、所定の前後方向の長さと所定の上下方向の長さを有して垂設されたラダーと、前記ラダーの上下方向の略中間部から前記ラダーの前端から後端にかけて前記ラダーに対して左右方向に対称的に突設させた、所定の左右方向の長さと所定の上下方向の厚みの翼形状を有する衝撃吸収滑走翼と、前記ラダーの前端部と前記衝撃吸収滑走翼の前端部を固定した、垂直方向の回転軸であるラダーシャフトと、を有する衝撃吸収型滑走式ラダーを備え、前記衝撃吸収型滑走式ラダーを、前記衝撃吸収滑走翼が高速航行時の喫水の喫水線近傍の高さとなる高さに、前記単胴船の場合は右舷と左舷の2か所、又は、船底中央の1か所、あるいは、前記三胴船の場合は主船体の右舷と左舷の2か所に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキャタピラ推進式高速船は、キャタピラを船体の内部側に設け、波を船体でキャタピラの直接には当たらないように設けたので波の影響を受けにくく、船体中央部の船底と同じ深さのところで、すなわち高速航行時の喫水の喫水線近傍の深さで、水かきで水を掻くようにしたのでしっかりと船を前進させることができ、駆動源の回転数を上げることにより高速で航行させることができる。
【0011】
また、キャタピラを右舷又は左舷には設けていないので、安全に乗り降りができ、横波の影響を受けにくいのでキャタピラが破損しにくいという効果を奏する。
【0012】
また、水平翼である衝撃吸収滑走翼と垂直翼であるラダーを取り付けた、垂直方向のラダーシャフトで回転する衝撃吸収型滑走式ラダーを設けたので、高速航行時に船首が船尾より高くなるスターントリム状態において、波がきたら前記衝撃吸収滑走翼がクッションになって波の衝撃を緩和し、安定した高速航行ができ、前記ラダーで左右のかじ取りをすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のキャタピラ推進式高速船の単胴船の場合の高速航行時の海面と船体との側面視における関係説明図である。
図2図1における単胴船で側面視における隠れて見えない部分も図示した、高速航行時のキャタピラの位置の説明図である。
図3】本発明のキャタピラ推進式高速船の単胴船の場合の低速航行又は停船時の海面と船体との側面視における関係説明図である。
図4図3における単胴船で側面視における隠れて見えない部分も図示した、低速航行又は停船時のキャタピラの位置の説明図である。
図5】本発明のキャタピラ推進式高速船の単胴船の場合の低速航行又は停船時で正面視における衝撃吸収型滑走式ラダーの位置関係説明図で、(a)は左舷と右舷の2か所に衝撃吸収型滑走式ラダーを取り付けた説明図で、(b)は船底の中央の下方に1か所に衝撃吸収型滑走式ラダーを取り付けた説明図である。
図6】三胴船の場合の操舵室を除いた状態における平面視の概要説明図である。
図7】三胴船の場合の操舵室及び甲板を除いた状態で平面視におけるキャタピラの位置の概要説明図である。
図8】単胴船の場合の操舵室を除いた状態における、2か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図9】単胴船の場合の操舵室と甲板を除いた状態における、2か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図10】単胴船の場合の操舵室を除いた状態における、1か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図11】単胴船の場合の操舵室と甲板を除いた状態における、1か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図12】衝撃吸収型滑走式ラダーの説明図で、(a)は左側面視の概要説明図で、(b)は平面視の概要説明図である。
図13】キャタピラの左側面視の概要説明図である。
図14】トリムタブの斜視概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のキャタピラ推進式高速船1は、単胴船1b又は三胴船1aの高速船であり、エンジン又はモータの駆動源11からの駆動力による、水掻き3付きのキャタピラ2の回転により前進し、衝撃吸収型滑走式ラダー7で航行時の波の影響を吸収し航行する進行方向を定め、トリムタブ22で航行時の左右の傾きを調整し、低速時にはサイドスラスター20で船舶を横方向に動かす。
【0015】
本発明のキャタピラ推進式高速船1は、図1図11に示すように、平面視で単胴船1bの右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネル21に、又は、三胴船1aの主船体31と左右の副船体32それぞれとの間の後部に、エンジン又はモータの駆動源11の駆動力が伝達されて回転する、所定の間隔で所定の数の水かき3を突設したキャタピラ2を備え、前記キャタピラ2が、長手方向を前記単胴船1b又は前記三胴船1aの船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラ2の環状体の下側が前記単胴船1b又は前記三胴船1aの船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されている。
【0016】
なお、本発明のキャタピラ推進式高速船1の構成を説明するために、図6図11については操舵室30を取り除いて図示しており、さらに、図7図9又は図11については操舵室30と甲板33を取り除いて図示している。
【0017】
前記キャタピラ推進式高速船1bの前記駆動源11から前記キャタピラ2への回転力の伝達経路は、図7図9又は図13に示すように、エンジン又はモータの駆動源11の回転を伝達軸12からデファレンシャルギア13に伝達し、前記デファレンシャルギア13からスプロケット回転軸14に回転が伝達されます。そして、前記スプロケット回転軸14に固定状態で連結された駆動スプロケット5aが回転すると、前記駆動スプロケット5aの歯が前記キャタピラ2に形成した孔に係合し、前記キャタピラ2が回転され、前記キャタピラ2の下側が船尾方向に向けて移動し、前記キャタピラ2に突設した水掻き3が後方に向けて水を掻くことにより単胴船1b又は三胴船1aが前進する。
【0018】
あるいは、前記キャタピラ推進式高速船1cの前記駆動源11から前記キャタピラ2への回転力の伝達経路は、図11又は図13に示すように、エンジン又はモータの駆動源11の回転を伝達軸12から差動歯車15に回転を伝達し、前記差動歯車15からスプロケット回転軸14に回転が伝達されます。そして、前記スプロケット回転軸14に固定状態で連結された駆動スプロケット5aが回転すると、前記駆動スプロケット5aの歯が前記キャタピラ2に形成した孔に係合し、前記キャタピラ2が回転され、前記キャタピラ2の下側が船尾方向に向けて移動し、前記キャタピラ2に突設した水掻き3が後方に向けて水を掻くことにより単胴船1bが前進する。
【0019】
前記駆動スプロケット5aから前記キャタピラ2への回転力の伝達は、前記駆動スプロケット5aの歯形の突起部が円周縁に所定の円ピッチの間隔で突設しており、一方、キャタピラ2には前記円ピッチと同じ間隔で前記突起部が嵌入可能な開口部を有する孔が設けられている。前記突起部が前記孔に係合しながら回転することによって前記キャタピラ2は回転する。
【0020】
前記キャタピラ2は、無端環状に接続したものであり、前記キャタピラ2には前記駆動スプロケット5aの歯が係合する孔(図示なし)が設けられ、且つ、所定の間隔で所定の数の水かき3を突設している。前記水掻き3は、おわん型、凹部形状型、円弧形状型、扁平型など、高速回転で水を掻くことができる形状であればいずれの形状でもよい。
【0021】
前記キャタピラ2の材質は表面を塩水に対する防錆加工した金属製、テフロン(登録商標)等の樹脂製、又は、ゴム製などがある。
【0022】
前記キャタピラ2は、図13に示すように、前記スプロケット回転軸14と固設され一体的に回転する前記駆動スプロケット5aの歯が前記キャタピラ2に形成した孔に係合して回転方向Rに向けて回転する。前記キャタピラ2は、無端環状であり、前記キャタピラ2の起動輪に該当する前記駆動スプロケット5a、前記キャタピラ2をスムースに回転させるために、前記起動輪である前記駆動スプロケット5aの反対側の誘導輪である従動スプロケット5b、中転輪である緊張用スプロケット5c、
及び、方向変換コーナーに設けた緊張用ガイド板5dを囲繞している。前記キャタピラ2は前記駆動スプロケット5aと係合して回転方向Rの方向に回転し、下側が船尾方向に移動し、上側が船首方向に移動する。
【0023】
次に、キャタピラ2の船体に対する取り付け位置は、三胴船1aの場合は、図7に示すように、平面視で三胴船1aの主船体31と副船体32との間の後部に、長手方向を船首と船尾を結ぶ方向に平行に設け、かつ上下方向は図2又は図4に示すように、前記キャタピラ2の船尾方向に移動する下側が前記三胴船1aの船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されている。これにより、前記キャタピラ2に突設させた水かき3が高速航行時のときの喫水の喫水線近傍の深さで海水を掻くことができる。
【0024】
また、単胴船1bの場合は、前記キャタピラ2を、図8図11に示すように、平面視で単胴船1bの右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネル21に配設し、前記キャタピラ2が、長手方向を前記単胴船1bの船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラ2の船尾方向に移動する下側が前記単胴船1bの船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されている。これにより、前記キャタピラ2に突設させた水かき3が高速航行時のときの喫水の喫水線近傍を掻くことができる。
【0025】
前記単胴船1bの場合の前記キャタピラトンネル21は、図8に示すように左右に設けた2か所型と、図10に示すように中央部に設けた1か所型がある。そして、前記キャタピラ2を前記キャタピラトンネル21の蓋体24の下方の前記キャタピラトンネル21内にそれぞれ配設する。
【0026】
前記キャタピラ推進式高速船1は、図1又は図3に示すように、前記キャタピラ2は船体の右舷又は左舷には配設されていないので前記キャタピラ推進式高速船1への乗り降りは安全が確保されており、横波の影響を受けにくいので前記キャタピラ2が破損しにくい。
【0027】
また、三胴船1aの前記キャタピラ推進式高速船1は、図6に示すように、前記キャタピラ2を配設した部位には甲板33にメンテナンンス用の開口部を設けているが、前記開口部を覆う蓋体24を備えているので乗員が回転する前記キャタピラ2に巻き込まれる危険がない。また、単胴船1bの前記キャタピラ推進式高速船1は、図8又は図10に示すように、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネル21には蓋体24を設けているので乗員が回転する前記キャタピラ2に巻き込まれる危険がない。
【0028】
次に、前記衝撃吸収型滑走式ラダー7について説明する。前記衝撃吸収型滑走式ラダー7は、図12(a)又は(b)に示すように、水平断面形状が丸い前端部と尖った後端部との間を流線形状とした左右対称の形状を有し、所定の前後方向の長さと所定の上下方向の長さを有して垂設されたラダー7cと、前記ラダー7cの上下方向の略中間部から前記ラダー7cの前端から後端にかけて前記ラダー7cに対して左右方向に対称的に突設させた、所定の左右方向の長さと所定の上下方向の厚みの翼形状を有する衝撃吸収滑走翼7bと、前記ラダー7cの前端部と前記衝撃吸収滑走翼7bの前端部を固定した、垂直方向の回転軸であるラダーシャフト7aと、を有する衝撃吸収型滑走式ラダー7を備え、前記衝撃吸収型滑走式ラダー7を、前記衝撃吸収滑走翼7bが高速航行時の喫水の喫水線近傍の高さとなる高さに、前記単胴船1b、1cの場合は図5(a)に示すように右舷と左舷の2か所、又は、図5(b)に示すように船底中央の1か所、あるいは、前記三胴船1aの場合は主船体31の右舷と左舷の2か所に配設した。
【0029】
前記衝撃吸収型滑走式ラダー7は、略水平状態の翼型の衝撃吸収滑走翼7bを略垂直状態の回転軸である前記ラダーシャフト7aで左右方向に回転可能であり、かつ高速航行時に前記水平状態の衝撃吸収滑走翼7bが喫水のうちの略喫水線近傍の深さで波の高低差の影響を抑制することができる。そして、垂直状態のラダー7cが航行の進行方向を変えることができる。そして、高速航行するときに、前記撃吸収滑走翼7bが海面K近くの海中、すなわち喫水のうちの略喫水線近傍の深さになるときは、図12(a)に示すように、少なくとも前記衝撃吸収滑走翼7bより下方に延出した前記ラダー7cの板状の部位Aによって航行の進行方向を変えることができる。
【0030】
次に、前記トリムタブ22について説明する。前記トリムタブ22は、図1図4図6図11に示すように、船尾に取り付けられ、三胴船1aの場合には左右の副船体32の各船尾に計2か所取り付け、単胴船1bの場合には船尾の左右に各1か所の計2か所取り付けられる。
【0031】
そして、前記トリムタブ22は、一般的に使用されているものでよく、例えば、図14に示すように、薄板状のトリムプレーン22aと、前記トリムプレーン22aを前端側となる船尾側を基点として後端側を上下方向に回転させる、例えば油圧式又は電動式などのアクチュエーター22bとを備えている。前記トリムプレーン22aと前記アクチュエーター22bの下端部とは水平軸を介して回転自在に、前記トリムプレーン22aの前端縁部と前記船尾とは例えば蝶番を介して回転自在に、前記アクチュエーター22bの上端部と前記船尾とは水平軸を介して回転自在に取り付けられている。前記トリムタブ22の傾きを変えることにより、航行時の左右の傾きを制御でき、左右の舵の重みを均一にできる。前記トリムタブ22の取り付け高さは、前記トリムプレーン22aが喫水の喫水線近傍の高さになる高さである。
【0032】
次に、前記サイドスラスター20について説明する。前記サイドスラスター20は、一般的に使用されている取付形態でよく、例えば図3又は図4に示すように、船首側に設けられ、船体を左右に貫くトンネルとそのトンネル中で回転する電動スクリューを備え、イーブンキールとなる低速航行時のときに海面Kより下方の海中において前記電動スクリューを作動させて、短胴船1b又は三胴船1aを横方向に動かして港での接岸や離岸が容易にできる。
【符号の説明】
【0033】
1 キャタピラ推進式高速船
1a 三胴船
1b 単胴船
1c 単胴船
2 キャタピラ
3 水掻き
5a 駆動スプロケット
5b 従動スプロケット
5c 緊張用スプロケット
5d 緊張用ガイド板
7 衝撃吸収型滑走式ラダー
7a ラダーシャフト
7b 衝撃吸収滑走翼
7c ラダー
11 駆動源
12 伝達軸
13 デファレンシャルギア
14 スプロケット回転軸
15 差動歯車
20 サイドスラスター
21 キャタピラトンネル
22 トリムタブ
22a トリムプレーン
22b アクチュエーター
24 蓋体
30 操舵室
31 主船体
32 副船体
33 甲板
A 部位
K 海面
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン又は電動の駆動源により作動するキャタピラで海上を高速航行するキャタピラ推進式高速船に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の船の推進部であるスクリューの代わりに船の左右両側に櫂を付けたキャタピラにより、船を航行させる水上キャタピラ船が開示されている。
【0003】
特許文献2には、内側が平行直線の双胴船の間にある水を、後方に送り出す複数の水かきを、水平移動させて推進力とする構造の高速船で、大型の場合は、双胴の中心先端に突出し・伸縮可能な低造波抵抗装置を設け、高速のため受ける風力を揚力、浮力、及びジェットに使用し、更に船体の下部には制御できる翼をもった没水体をもつ船が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-105293号公報
【特許文献2】特開平6-207891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、左右の全長にわたり右舷や左舷にキャタピラを取り付けているので、船への乗り降りが不便で危険であるという問題があった。また、右舷や左舷に取り付けたキャタピラが波の影響を直接に受けることから、キャタピラの水掻きが回転する方向と異なる方向からの波の力等により水掻きを含むキャタピラが破損する危険があるという問題もあった。
【0006】
特許文献2の発明は、後尾翼が船尾に突設され造波抵抗減少装置が船首に突設されていることから、前記後尾翼と前記造波抵抗減少装置とを同時に機能発揮させるために両者を海中に浸漬させるには、船首と船尾との喫水差のコントロールとしてイーブントリムを意図していることが明らかであるので、高速航行が困難な船舶であるという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、安全に乗り降りができ、キャタピラが波の影響を受けにくくして破損しにくく、高速航行が可能なキャタピラ推進式高速船を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のキャタピラ推進式高速船は、平面視で単胴船の右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネルに、又は、三胴船の主船体と左右の副船体それぞれとの間の後部に、エンジン又はモータの駆動源の駆動力が伝達されて回転する、所定の間隔で所定の数の水かきを突設したキャタピラを備え、前記キャタピラが、長手方向を前記単胴船又は前記三胴船の船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラの環状体の下側が前記単胴船又は前記三胴船の船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設され、水平断面形状が丸い前端部と尖った後端部との間を流線形状とした左右対称の形状を有し、所定の前後方向の長さと所定の上下方向の長さを有して垂設されたラダーと、前記ラダーの上下方向の略中間部から前記ラダーの前端から後端にかけて前記ラダーに対して左右方向に対称的に突設させた、所定の左右方向の長さと所定の上下方向の厚みの翼形状を有する衝撃吸収滑走翼と、前記ラダーの前端部と前記衝撃吸収滑走翼の前端部を固定した、垂直方向の回転軸であるラダーシャフトと、を有する衝撃吸収型滑走式ラダーを備え、前記衝撃吸収型滑走式ラダーを、前記衝撃吸収滑走翼が高速航行時の喫水の高さとなる高さに、前記単胴船の場合は右舷と左舷の2か所、又は、前記三胴船の場合は主船体の右舷と左舷の2か所に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のキャタピラ推進式高速船は、キャタピラを船体の内部側に設け、波を船体でキャタピラの直接には当たらないように設けたので波の影響を受けにくく、船体中央部の船底と同じ深さのところで、すなわち高速航行時の喫水の喫水線近傍の深さで、水かきで水を掻くようにしたのでしっかりと船を前進させることができ、駆動源の回転数を上げることにより高速で航行させることができる。
【0010】
また、キャタピラを右舷又は左舷には設けていないので、安全に乗り降りができ、横波の影響を受けにくいのでキャタピラが破損しにくいという効果を奏する。
【0011】
また、水平翼である衝撃吸収滑走翼と垂直翼であるラダーを取り付けた、垂直方向のラダーシャフトで回転する衝撃吸収型滑走式ラダーを設けたので、高速航行時に船首が船尾より高くなるスターントリム状態において、波がきたら前記衝撃吸収滑走翼がクッションになって波の衝撃を緩和し、安定した高速航行ができ、前記ラダーで左右のかじ取りをすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のキャタピラ推進式高速船の単胴船の場合の高速航行時の海面と船体との側面視における関係説明図である。
図2図1における単胴船で側面視における隠れて見えない部分も図示した、高速航行時のキャタピラの位置の説明図である。
図3】本発明のキャタピラ推進式高速船の単胴船の場合の低速航行又は停船時の海面と船体との側面視における関係説明図である。
図4図3における単胴船で側面視における隠れて見えない部分も図示した、低速航行又は停船時のキャタピラの位置の説明図である。
図5】本発明のキャタピラ推進式高速船の単胴船の場合の低速航行又は停船時で正面視における衝撃吸収型滑走式ラダーの位置関係説明図で、(a)は左舷と右舷の2か所に衝撃吸収型滑走式ラダーを取り付けた説明図で、(b)は船底の中央の下方に1か所に衝撃吸収型滑走式ラダーを取り付けた説明図である。
図6】三胴船の場合の操舵室を除いた状態における平面視の概要説明図である。
図7】三胴船の場合の操舵室及び甲板を除いた状態で平面視におけるキャタピラの位置の概要説明図である。
図8】単胴船の場合の操舵室を除いた状態における、2か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図9】単胴船の場合の操舵室と甲板を除いた状態における、2か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図10】単胴船の場合の操舵室を除いた状態における、1か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図11】単胴船の場合の操舵室と甲板を除いた状態における、1か所にキャタピラを設けた場合の平面視の概要説明図である。
図12】衝撃吸収型滑走式ラダーの説明図で、(a)は左側面視の概要説明図で、(b)は平面視の概要説明図である。
図13】キャタピラの左側面視の概要説明図である。
図14】トリムタブの斜視概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のキャタピラ推進式高速船1は、単胴船1b又は三胴船1aの高速船であり、エンジン又はモータの駆動源11からの駆動力による、水掻き3付きのキャタピラ2の回転により前進し、衝撃吸収型滑走式ラダー7で航行時の波の影響を吸収し航行する進行方向を定め、トリムタブ22で航行時の左右の傾きを調整し、低速時にはサイドスラスター20で船舶を横方向に動かす。
【0014】
本発明のキャタピラ推進式高速船1は、図1図11に示すように、平面視で単胴船1bの右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネル21に、又は、三胴船1aの主船体31と左右の副船体32それぞれとの間の後部に、エンジン又はモータの駆動源11の駆動力が伝達されて回転する、所定の間隔で所定の数の水かき3を突設したキャタピラ2を備え、前記キャタピラ2が、長手方向を前記単胴船1b又は前記三胴船1aの船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラ2の環状体の下側が前記単胴船1b又は前記三胴船1aの船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されている。
【0015】
なお、本発明のキャタピラ推進式高速船1の構成を説明するために、図6図11については操舵室30を取り除いて図示しており、さらに、図7図9又は図11については操舵室30と甲板33を取り除いて図示している。
【0016】
前記キャタピラ推進式高速船1bの前記駆動源11から前記キャタピラ2への回転力の伝達経路は、図7図9又は図13に示すように、エンジン又はモータの駆動源11の回転を伝達軸12からデファレンシャルギア13に伝達し、前記デファレンシャルギア13からスプロケット回転軸14に回転が伝達されます。そして、前記スプロケット回転軸14に固定状態で連結された駆動スプロケット5aが回転すると、前記駆動スプロケット5aの歯が前記キャタピラ2に形成した孔に係合し、前記キャタピラ2が回転され、前記キャタピラ2の下側が船尾方向に向けて移動し、前記キャタピラ2に突設した水掻き3が後方に向けて水を掻くことにより単胴船1b又は三胴船1aが前進する。
【0017】
あるいは、前記キャタピラ推進式高速船1cの前記駆動源11から前記キャタピラ2への回転力の伝達経路は、図11又は図13に示すように、エンジン又はモータの駆動源11の回転を伝達軸12から差動歯車15に回転を伝達し、前記差動歯車15からスプロケット回転軸14に回転が伝達されます。そして、前記スプロケット回転軸14に固定状態で連結された駆動スプロケット5aが回転すると、前記駆動スプロケット5aの歯が前記キャタピラ2に形成した孔に係合し、前記キャタピラ2が回転され、前記キャタピラ2の下側が船尾方向に向けて移動し、前記キャタピラ2に突設した水掻き3が後方に向けて水を掻くことにより単胴船1bが前進する。
【0018】
前記駆動スプロケット5aから前記キャタピラ2への回転力の伝達は、前記駆動スプロケット5aの歯形の突起部が円周縁に所定の円ピッチの間隔で突設しており、一方、キャタピラ2には前記円ピッチと同じ間隔で前記突起部が嵌入可能な開口部を有する孔が設けられている。前記突起部が前記孔に係合しながら回転することによって前記キャタピラ2は回転する。
【0019】
前記キャタピラ2は、無端環状に接続したものであり、前記キャタピラ2には前記駆動スプロケット5aの歯が係合する孔(図示なし)が設けられ、且つ、所定の間隔で所定の数の水かき3を突設している。前記水掻き3は、おわん型、凹部形状型、円弧形状型、扁平型など、高速回転で水を掻くことができる形状であればいずれの形状でもよい。
【0020】
前記キャタピラ2の材質は表面を塩水に対する防錆加工した金属製、テフロン(登録商標)等の樹脂製、又は、ゴム製などがある。
【0021】
前記キャタピラ2は、図13に示すように、前記スプロケット回転軸14と固設され一体的に回転する前記駆動スプロケット5aの歯が前記キャタピラ2に形成した孔に係合して回転方向Rに向けて回転する。前記キャタピラ2は、無端環状であり、前記キャタピラ2の起動輪に該当する前記駆動スプロケット5a、前記キャタピラ2をスムースに回転させるために、前記起動輪である前記駆動スプロケット5aの反対側の誘導輪である従動スプロケット5b、中転輪である緊張用スプロケット5c、
及び、方向変換コーナーに設けた緊張用ガイド板5dを囲繞している。前記キャタピラ2は前記駆動スプロケット5aと係合して回転方向Rの方向に回転し、下側が船尾方向に移動し、上側が船首方向に移動する。
【0022】
次に、キャタピラ2の船体に対する取り付け位置は、三胴船1aの場合は、図7に示すように、平面視で三胴船1aの主船体31と副船体32との間の後部に、長手方向を船首と船尾を結ぶ方向に平行に設け、かつ上下方向は図2又は図4に示すように、前記キャタピラ2の船尾方向に移動する下側が前記三胴船1aの船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されている。これにより、前記キャタピラ2に突設させた水かき3が高速航行時のときの喫水の喫水線近傍の深さで海水を掻くことができる。
【0023】
また、単胴船1bの場合は、前記キャタピラ2を、図8図11に示すように、平面視で単胴船1bの右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネル21に配設し、前記キャタピラ2が、長手方向を前記単胴船1bの船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラ2の船尾方向に移動する下側が前記単胴船1bの船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設されている。これにより、前記キャタピラ2に突設させた水かき3が高速航行時のときの喫水の喫水線近傍を掻くことができる。
【0024】
前記単胴船1bの場合の前記キャタピラトンネル21は、図8に示すように左右に設けた2か所型と、図10に示すように中央部に設けた1か所型がある。そして、前記キャタピラ2を前記キャタピラトンネル21の蓋体24の下方の前記キャタピラトンネル21内にそれぞれ配設する。
【0025】
前記キャタピラ推進式高速船1は、図1又は図3に示すように、前記キャタピラ2は船体の右舷又は左舷には配設されていないので前記キャタピラ推進式高速船1への乗り降りは安全が確保されており、横波の影響を受けにくいので前記キャタピラ2が破損しにくい。
【0026】
また、三胴船1aの前記キャタピラ推進式高速船1は、図6に示すように、前記キャタピラ2を配設した部位には甲板33にメンテナンンス用の開口部を設けているが、前記開口部を覆う蓋体24を備えているので乗員が回転する前記キャタピラ2に巻き込まれる危険がない。また、単胴船1bの前記キャタピラ推進式高速船1は、図8又は図10に示すように、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネル21には蓋体24を設けているので乗員が回転する前記キャタピラ2に巻き込まれる危険がない。
【0027】
次に、前記衝撃吸収型滑走式ラダー7について説明する。前記衝撃吸収型滑走式ラダー7は、図12(a)又は(b)に示すように、水平断面形状が丸い前端部と尖った後端部との間を流線形状とした左右対称の形状を有し、所定の前後方向の長さと所定の上下方向の長さを有して垂設されたラダー7cと、前記ラダー7cの上下方向の略中間部から前記ラダー7cの前端から後端にかけて前記ラダー7cに対して左右方向に対称的に突設させた、所定の左右方向の長さと所定の上下方向の厚みの翼形状を有する衝撃吸収滑走翼7bと、前記ラダー7cの前端部と前記衝撃吸収滑走翼7bの前端部を固定した、垂直方向の回転軸であるラダーシャフト7aと、を有する衝撃吸収型滑走式ラダー7を備え、前記衝撃吸収型滑走式ラダー7を、前記衝撃吸収滑走翼7bが高速航行時の喫水の喫水線近傍の高さとなる高さに、前記単胴船1b、1cの場合は図5(a)に示すように右舷と左舷の2か所、又は、図5(b)に示すように船底中央の1か所、あるいは、前記三胴船1aの場合は主船体31の右舷と左舷の2か所に配設した。
【0028】
前記衝撃吸収型滑走式ラダー7は、略水平状態の翼型の衝撃吸収滑走翼7bを略垂直状態の回転軸である前記ラダーシャフト7aで左右方向に回転可能であり、かつ高速航行時に前記水平状態の衝撃吸収滑走翼7bが喫水のうちの略喫水線近傍の深さで波の高低差の影響を抑制することができる。そして、垂直状態のラダー7cが航行の進行方向を変えることができる。そして、高速航行するときに、前記撃吸収滑走翼7bが海面K近くの海中、すなわち喫水のうちの略喫水線近傍の深さになるときは、図12(a)に示すように、少なくとも前記衝撃吸収滑走翼7bより下方に延出した前記ラダー7cの板状の部位Aによって航行の進行方向を変えることができる。
【0029】
次に、前記トリムタブ22について説明する。前記トリムタブ22は、図1図4図6図11に示すように、船尾に取り付けられ、三胴船1aの場合には左右の副船体32の各船尾に計2か所取り付け、単胴船1bの場合には船尾の左右に各1か所の計2か所取り付けられる。
【0030】
そして、前記トリムタブ22は、一般的に使用されているものでよく、例えば、図14に示すように、薄板状のトリムプレーン22aと、前記トリムプレーン22aを前端側となる船尾側を基点として後端側を上下方向に回転させる、例えば油圧式又は電動式などのアクチュエーター22bとを備えている。前記トリムプレーン22aと前記アクチュエーター22bの下端部とは水平軸を介して回転自在に、前記トリムプレーン22aの前端縁部と前記船尾とは例えば蝶番を介して回転自在に、前記アクチュエーター22bの上端部と前記船尾とは水平軸を介して回転自在に取り付けられている。前記トリムタブ22の傾きを変えることにより、航行時の左右の傾きを制御でき、左右の舵の重みを均一にできる。前記トリムタブ22の取り付け高さは、前記トリムプレーン22aが喫水の喫水線近傍の高さになる高さである。
【0031】
次に、前記サイドスラスター20について説明する。前記サイドスラスター20は、一般的に使用されている取付形態でよく、例えば図3又は図4に示すように、船首側に設けられ、船体を左右に貫くトンネルとそのトンネル中で回転する電動スクリューを備え、イーブンキールとなる低速航行時のときに海面Kより下方の海中において前記電動スクリューを作動させて、短胴船1b又は三胴船1aを横方向に動かして港での接岸や離岸が容易にできる。
【符号の説明】
【0032】
1 キャタピラ推進式高速船
1a 三胴船
1b 単胴船
1c 単胴船
2 キャタピラ
3 水掻き
5a 駆動スプロケット
5b 従動スプロケット
5c 緊張用スプロケット
5d 緊張用ガイド板
7 衝撃吸収型滑走式ラダー
7a ラダーシャフト
7b 衝撃吸収滑走翼
7c ラダー
11 駆動源
12 伝達軸
13 デファレンシャルギア
14 スプロケット回転軸
15 差動歯車
20 サイドスラスター
21 キャタピラトンネル
22 トリムタブ
22a トリムプレーン
22b アクチュエーター
24 蓋体
30 操舵室
31 主船体
32 副船体
33 甲板
A 部位
K 海面
R 回転方向
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で単胴船の右舷と左舷との間でかつ後端部に設けた、甲板から船底まで貫通した単数又は複数の切欠き部であるキャタピラトンネルに、又は、三胴船の主船体と左右の副船体それぞれとの間の後部に、
エンジン又はモータの駆動源の駆動力が伝達されて回転する、所定の間隔で所定の数の水かきを突設したキャタピラを備え、
前記キャタピラが、長手方向を前記単胴船又は前記三胴船の船首と船尾を結ぶ方向に平行になるように、かつ、前記キャタピラの環状体の下側が前記単胴船又は前記三胴船の船体中央部の船底と略同じ高さになるように配設され、
水平断面形状が丸い前端部と尖った後端部との間を流線形状とした左右対称の形状を有し、所定の前後方向の長さと所定の上下方向の長さを有して垂設されたラダーと、
前記ラダーの上下方向の略中間部から前記ラダーの前端から後端にかけて前記ラダーに対して左右方向に対称的に突設させた、所定の左右方向の長さと所定の上下方向の厚みの翼形状を有する衝撃吸収滑走翼と、
前記ラダーの前端部と前記衝撃吸収滑走翼の前端部を固定した、垂直方向の回転軸であるラダーシャフトと、を有する衝撃吸収型滑走式ラダーを備え、
前記衝撃吸収型滑走式ラダーを、前記衝撃吸収滑走翼が高速航行時の喫水の高さとなる高さに、前記単胴船の場合は右舷と左舷の2か所、又は、前記三胴船の場合は主船体の右舷と左舷の2か所に配設したことを特徴とするキャタピラ推進式高速船。