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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060409
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/08 20090101AFI20240424BHJP
   H04W 48/20 20090101ALI20240424BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240424BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H04W36/08
H04W48/20
G05D1/02 P
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167768
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋貴
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
5K067
【Fターム(参考)】
3F022JJ07
3F022JJ11
3F022MM08
5H301AA02
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301EE02
5H301EE12
5H301KK02
5H301KK12
5H301KK13
5K067BB03
5K067BB05
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバに要する時間を短く抑えて、当該ハンドオーバに伴う物品の搬送効率の低下を抑制することが可能な技術を実現する。
【解決手段】上位制御部14は、第1アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車1が接続している状態から第2アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車1が接続する状態への切り替え、又は、第2アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車1が接続している状態から第1アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車1が接続する状態への切り替えを行う場合に、物理層デバイス11の起動状態を維持したままで、通信制御部12及びプロトコルスタック13を再起動するネットワークセグメント切替処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車の制御を行う制御装置と、前記搬送車と前記制御装置との間を通信可能に接続する通信設備と、を備えた物品搬送設備であって、
前記通信設備は、前記搬送車と通信可能に設置された複数の無線通信用のアクセスポイントと、複数の前記アクセスポイント間を接続する通信ネットワークと、を備え、
複数の前記アクセスポイントの一部により構成されるアクセスポイント群を第1アクセスポイント群とし、前記第1アクセスポイント群とは異なる複数の前記アクセスポイントにより構成されるアクセスポイント群を第2アクセスポイント群として、
前記通信ネットワークは、前記第1アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイント間を接続する第1ネットワークセグメントと、前記第2アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイント間を接続する第2ネットワークセグメントと、を備え、
前記搬送車は、無線通信装置と、前記無線通信装置を介して複数の前記アクセスポイントの中から選択した前記アクセスポイントと通信する通信ユニットと、を備え、
前記通信ユニットは、前記無線通信装置との接続を制御する物理層デバイスと、前記物理層デバイスを介して送受信するデータの処理及び通信の制御を行う通信制御部と、前記通信ネットワークを介した通信のための通信プロトコルを備えたプロトコルスタックと、前記物理層デバイス、前記通信制御部、及び、前記プロトコルスタックを制御する上位制御部と、を備え、
前記上位制御部は、前記第1アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続している状態から前記第2アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続する状態への切り替え、又は、前記第2アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続している状態から前記第1アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続する状態への切り替えを行う場合に、前記物理層デバイスの起動状態を維持したままで、前記通信制御部及び前記プロトコルスタックを再起動するネットワークセグメント切替処理を実行する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記制御装置は、第1通信サーバと第2通信サーバとを備え、
前記第1ネットワークセグメントは、前記第1通信サーバと、前記第1アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイントと、を接続するように構成され、
前記第2ネットワークセグメントは、前記第2通信サーバと、前記第2アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイントと、を接続するように構成されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、搬送車の制御を行う制御装置と、搬送車と制御装置との間を通信可能に接続する通信設備と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備の一例が、特開2018-36867号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1の物品搬送設備は、軌道(1,4)を走行して物品(8)を搬送する無人走行車(2)と、無人走行車(2)の制御を行う制御装置(30)と、無人走行車(2)と制御装置(30)との間を通信可能に接続する通信設備と、を備えている。この通信設備は、無人走行車(2)と通信可能に設置された基地局(A1,A2)と、複数の基地局(A1,A2)間を接続するLAN(10)と、を備えており、基地局(A1,A2)は、無人走行車(2)との通信リンク(L1,L2)及びLAN(10)を介して、制御装置(30)と無人走行車(2)との通信を中継するように構成されている。無人走行車(2)の走行に伴い、通信リンク(L1,L2)を確立する相手となる基地局(A1,A2)の切り替えであるローミングが行われるが、特許文献1には、ローミングに要する時間を削減するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-36867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通信ネットワークが複数のネットワークセグメントを備える場合、通信リンクを確立する相手となるアクセスポイント(特許文献1では、基地局)の切り替えであるハンドオーバ(ハンドオフ)は、特許文献1のローミングのように同一のネットワークセグメントに属するアクセスポイント間だけでなく、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でも行われる。搬送車(特許文献1では、無人走行車)による物品の搬送効率の観点から、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバに要する時間も短く抑えられることが望ましいが、特許文献1にはこの点についての記載はない。
【0005】
そこで、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバに要する時間を短く抑えて、当該ハンドオーバに伴う物品の搬送効率の低下を抑制することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る物品搬送設備は、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車の制御を行う制御装置と、前記搬送車と前記制御装置との間を通信可能に接続する通信設備と、を備えた物品搬送設備であって、前記通信設備は、前記搬送車と通信可能に設置された複数の無線通信用のアクセスポイントと、複数の前記アクセスポイント間を接続する通信ネットワークと、を備え、複数の前記アクセスポイントの一部により構成されるアクセスポイント群を第1アクセスポイント群とし、前記第1アクセスポイント群とは異なる複数の前記アクセスポイントにより構成されるアクセスポイント群を第2アクセスポイント群として、前記通信ネットワークは、前記第1アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイント間を接続する第1ネットワークセグメントと、前記第2アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイント間を接続する第2ネットワークセグメントと、を備え、前記搬送車は、無線通信装置と、前記無線通信装置を介して複数の前記アクセスポイントの中から選択した前記アクセスポイントと通信する通信ユニットと、を備え、前記通信ユニットは、前記無線通信装置との接続を制御する物理層デバイスと、前記物理層デバイスを介して送受信するデータの処理及び通信の制御を行う通信制御部と、前記通信ネットワークを介した通信のための通信プロトコルを備えたプロトコルスタックと、前記物理層デバイス、前記通信制御部、及び、前記プロトコルスタックを制御する上位制御部と、を備え、前記上位制御部は、前記第1アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続している状態から前記第2アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続する状態への切り替え、又は、前記第2アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続している状態から前記第1アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続する状態への切り替えを行う場合に、前記物理層デバイスの起動状態を維持したままで、前記通信制御部及び前記プロトコルスタックを再起動するネットワークセグメント切替処理を実行する。
【0007】
本構成では、第1アクセスポイント群を構成するアクセスポイント(言い換えれば、第1ネットワークセグメントに属するアクセスポイント)に搬送車が接続している状態から第2アクセスポイント群を構成するアクセスポイント(言い換えれば、第2ネットワークセグメントに属するアクセスポイント)に搬送車が接続する状態への切り替え、又は、第2アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車が接続している状態から第1アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車が接続する状態への切り替えを行う場合に、ネットワークセグメント切替処理が実行される。すなわち、本構成では、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバを行う場合に、ネットワークセグメント切替処理が実行される。ここで、ハンドオーバの実行前に搬送車が接続されていたアクセスポイントを切替前アクセスポイントといい、ハンドオーバの実行後に搬送車が接続されるアクセスポイントを切替後アクセスポイントという。
【0008】
そして、本構成では、ネットワークセグメント切替処理において、物理層デバイスの起動状態が維持されたままで、通信制御部及びプロトコルスタックが再起動される。このように、ネットワークセグメント切替処理では通信制御部及びプロトコルスタックが再起動されるため、ハンドオーバを適切に行うことができる。具体的には、通信制御部を再起動することで、切替前アクセスポイントとの通信データを適切に削除して通信制御部を初期化することができ、プロトコルスタックを再起動することで、切替後アクセスポイントと通信可能な識別情報(例えば、IPアドレス)に搬送車の識別情報を適切に切り替えることができる。一方、ネットワークセグメント切替処理では物理層デバイスの起動状態が維持されるため、物理層デバイスを再起動した場合に必要となる物理層デバイスと無線通信装置(具体的には、無線通信装置の物理層デバイス)との間の通信リンクの再確立処理を不要として、ハンドオーバに要する時間の短縮を図ることができる。
【0009】
以上のように、本構成によれば、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバに要する時間を短く抑えることができる。そして、この時間を短く抑えることができるため、搬送車の移動が、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバを伴う場合であっても、制御装置と搬送車とが通信不能な状態が長く継続しないようにして、当該ハンドオーバに伴う物品の搬送効率の低下を抑制することが可能となっている。
【0010】
物品搬送設備の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る物品搬送設備を簡略化して示す斜視図
図2】実施形態に係る物品搬送設備の概念図
図3】実施形態に係る制御ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
物品搬送設備の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、物品搬送設備100は、規定の走行経路60に沿って走行して物品2を搬送する搬送車1と、搬送車1の制御を行う制御装置50と、搬送車1と制御装置50との間を通信可能に接続する通信設備3と、を備えている。本実施形態では、物品搬送設備100は複数の搬送車1を備えており、制御装置50は、通信設備3を介して、複数の搬送車1の制御を行う。物品2は、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)とされる。
【0013】
走行経路60は、物理的に形成されても仮想的に設定されてもよい。例えば、走行経路60は、レールによって物理的に形成される。天井から吊り下げ支持されたレールによって走行経路60を形成する場合、搬送車1は、天井に沿って形成された走行経路60に沿って走行する天井搬送車とされる。搬送車1は、天井搬送車以外の物品搬送車であってもよい。天井搬送車以外の物品搬送車として、床に沿って形成された走行経路60に沿って走行する物品搬送車を例示することができる。この場合の走行経路60は、レールによって物理的に形成されるものであっても、仮想的に設定されるものであってもよい。
【0014】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御装置50の機能が実現される。制御装置50は、搬送車1に対して物品2の搬送指令を出力する。制御装置50は、例えば、搬送スケジュールに基づき、或いは、搬送要求の発生に応じて、搬送指令を搬送車1に出力する。搬送指令には、物品2の搬送元や搬送先の情報が含まれる。物品2の搬送元や搬送先は、例えば、物品2(或いは物品2に収容された収容物)を処理対象とする処理装置のロードポート、物品2を保管する保管棚、物品2を保管する保管装置における物品2の入出庫部(載置台やコンベヤ等)とされる。
【0015】
搬送車1は、制御装置50からの搬送指令に応じて、当該搬送指令で指定された搬送元から搬送先に物品2を搬送する。この際、搬送元や搬送先での搬送車1による物品2の移載動作(具体的には、搬送元での物品2の受取動作、及び、搬送先での物品2の引渡動作)や、搬送元から搬送先までの搬送車1の走行動作は、搬送車1に設けられた不図示の制御部によって制御される。搬送車1に設けられた制御部は、例えば電動モータ等の駆動部の駆動を制御することで、移載動作や走行動作を搬送車1に行わせる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の物品搬送設備100は、異なる建物の間での物品2の搬送である棟間搬送を行うように構成されている。そのため、走行経路60には、第1建物71に配置された第1経路61と、第2建物72(第1建物71とは異なる建物)に配置された第2経路62と、第1経路61と第2経路62とを接続する接続経路63とが含まれている。物品2の搬送元が第1建物71及び第2建物72の一方であり、物品2の搬送先が第1建物71及び第2建物72の他方である場合に、第1建物71と第2建物72との間での棟間搬送が行われる。
【0017】
図2に模式的に示すように、通信設備3は、搬送車1と通信可能に(具体的には、無線通信可能に)設置された複数の無線通信用のアクセスポイント30と、複数のアクセスポイント30間を接続する通信ネットワーク40と、を備えている。搬送車1は、アクセスポイント30との通信リンクを確立することで、当該アクセスポイント30と通信可能に接続される。制御装置50も通信ネットワーク40に接続されており、アクセスポイント30は、搬送車1との通信リンク及び通信ネットワーク40を介して、制御装置50と当該搬送車1との通信を中継する。通信ネットワーク40は、有線、無線、或いはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0018】
図2に示すように、通信ネットワーク40は、第1ネットワークセグメント41と第2ネットワークセグメント42とを備えている。ここで、複数のアクセスポイント30の一部により構成されるアクセスポイント群を第1アクセスポイント群31とし、第1アクセスポイント群31とは異なる複数のアクセスポイント30により構成されるアクセスポイント群(言い換えれば、第1アクセスポイント群31を構成しない複数のアクセスポイント30により構成されるアクセスポイント群)を第2アクセスポイント群32とする。第1ネットワークセグメント41は、第1アクセスポイント群31を構成する複数のアクセスポイント30間を接続し、第2ネットワークセグメント42は、第2アクセスポイント群32を構成する複数のアクセスポイント30間を接続している。
【0019】
図1ではアクセスポイント30や通信ネットワーク40の図示を省略しているが、本実施形態では、第1建物71に配置された複数のアクセスポイント30により第1アクセスポイント群31が構成され、第2建物72に配置された複数のアクセスポイント30により第2アクセスポイント群32が構成されている。よって、第1経路61を走行する搬送車1は、第1アクセスポイント群31を構成するいずれかのアクセスポイント30に接続され、第2経路62を走行する搬送車1は、第2アクセスポイント群32を構成するいずれかのアクセスポイント30に接続される。
【0020】
なお、通信ネットワーク40が、第1ネットワークセグメント41及び第2ネットワークセグメント42とは別のネットワークセグメントを1つ以上備えていてもよい。例えば、通信ネットワーク40が第1ネットワークセグメント41及び第2ネットワークセグメント42とは別の第3ネットワークセグメントを備える場合、第3ネットワークセグメントは、第3アクセスポイント群を構成する複数のアクセスポイント30間を接続する。ここで、第3アクセスポイント群は、第1アクセスポイント群31及び第2アクセスポイント群32のいずれとも異なる複数のアクセスポイント30により構成されるアクセスポイント群(言い換えれば、第1アクセスポイント群31及び第2アクセスポイント群32のいずれをも構成しない複数のアクセスポイント30により構成されるアクセスポイント群)である。
【0021】
本実施形態では、制御装置50は、第1通信サーバ51と第2通信サーバ52とを備えている。図2に示す例では、第1通信サーバ51と第2通信サーバ52とが、通信ネットワーク40を介して通信可能に接続されている。
【0022】
第1ネットワークセグメント41は、第1通信サーバ51と、第1アクセスポイント群31を構成する複数のアクセスポイント30と、を接続するように構成されている。搬送車1は、第1アクセスポイント群31を構成するアクセスポイント30(言い換えれば、第1ネットワークセグメント41に属するアクセスポイント30)に接続されている状態では、第1通信サーバ51と通信可能に接続されることで、制御装置50と通信可能となる。
【0023】
第2ネットワークセグメント42は、第2通信サーバ52と、第2アクセスポイント群32を構成する複数のアクセスポイント30と、を接続するように構成されている。搬送車1は、第2アクセスポイント群32を構成するアクセスポイント30(言い換えれば、第2ネットワークセグメント42に属するアクセスポイント30)に接続されている状態では、第2通信サーバ52と通信可能に接続されることで、制御装置50と通信可能となる。
【0024】
図3に示すように、搬送車1は、無線通信装置20と、無線通信装置20を介して複数のアクセスポイント30の中から選択したアクセスポイント30と通信する通信ユニット10と、を備えている。無線通信装置20は、アクセスポイント30と無線通信を行う無線ステーションとして機能する。無線通信装置20は、選択されたアクセスポイント30(例えば、信号強度が最も高いアクセスポイント30)との通信リンクを確立することで、当該アクセスポイント30と通信可能に接続される。無線通信装置20は、アクセスポイント30と無線通信を行うことが可能な通信モジュールを備えている。この通信モジュールは、例えば、無線LAN(Local Area Network)の通信規格に沿った無線通信を行うモジュールとされる。
【0025】
通信ユニット10は、第1物理層デバイス11と、通信制御部12と、プロトコルスタック13と、上位制御部14と、を備えている。通信ユニット10が備えるこれらの要素は、例えば、1枚の基板上に実装される。上位制御部14は、第1物理層デバイス11、通信制御部12、及び、プロトコルスタック13を制御する。上位制御部14が備えるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、ソフトウェアであるプロトコルスタック13を実行する。なお、通信ユニット10が備える各要素は、少なくとも機能的或いは論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。例えば、第1物理層デバイス11と通信制御部12とが、それぞれ独立したデバイスではなく、共通のデバイスに統合されていてもよい。また、例えば、通信制御部12と上位制御部14(具体的には、CPU等のプロセッサ)とが、それぞれ独立したデバイスではなく、共通のデバイスに統合されていてもよい。
【0026】
第1物理層デバイス11は、通信ユニット10と無線通信装置20との接続を制御する。第1物理層デバイス11は、無線通信装置20が備える第2物理層デバイス21と通信可能に接続される。第1物理層デバイス11及び第2物理層デバイス21は、物理層の処理を実行するデバイス(チップ)であり、論理信号と電気信号との変換を行う。ここでは、第1物理層デバイス11と第2物理層デバイス21とは、有線で(例えば、有線LANケーブルにより)接続される。第1物理層デバイス11は、起動時に、第2物理層デバイス21との通信リンクを確立するための処理(リンクアップ処理)を行う。リンクアップ処理は、例えば、通信速度及び通信モード(半二重、全二重)を自動的に設定するオートネゴシエーション処理とされる。本実施形態では、第1物理層デバイス11が「物理層デバイス」に相当する。
【0027】
通信制御部12は、第1物理層デバイス11を介して送受信するデータの処理及び通信の制御を行う。通信制御部12は、データリンク層の処理を実行するデバイス(チップ)であり、不図示のデータバスを介して第1物理層デバイス11に接続されている。通信制御部12は、パケットの処理及び送受信を行うことで、第1物理層デバイス11を介して送受信するデータの処理及び通信の制御を行う。通信制御部12は、例えば、LANコントローラ(具体的には、有線LANのコントローラ)で実現される。
【0028】
プロトコルスタック13は、通信ネットワーク40を介した通信のための通信プロトコルを備えている。プロトコルスタック13が備える通信プロトコルは、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)とされる。プロトコルスタック13は、通信プロトコルに応じたデータの送信指令を通信制御部12に出す。また、プロトコルスタック13は、通信制御部12が第1物理層デバイス11を介して受信したデータを変換してアプリケーションに渡す。
【0029】
搬送車1と制御装置50との間での通信には、搬送車1の識別情報が用いられる。本実施形態では、識別情報は、IP(Internet Protocol)アドレスである。搬送車1の識別情報(ここでは、IPアドレス)は、当該搬送車1に設けられた通信ユニット10のプロトコルスタック13に保持される。上述したように、通信ネットワーク40は、第1ネットワークセグメント41と第2ネットワークセグメント42とを備えている。ネットワークセグメントは、ネットワークアドレスにより区切られるネットワークの単位である。そのため、第1ネットワークセグメント41に属するアクセスポイント30と通信可能なIPアドレスと、第2ネットワークセグメント42に属するアクセスポイント30と通信可能なIPアドレスとは互いに異なり、第1ネットワークセグメント41と第2ネットワークセグメント42とでは、搬送車1には互いに異なるIPアドレスが割り当てられる。
【0030】
搬送車1の走行に伴い、当該搬送車1に設けられた無線通信装置20が通信リンクを確立する相手となるアクセスポイント30の切り替えであるハンドオーバ(ハンドオフ)が行われる。同一のネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でハンドオーバが行われる場合(図2では、このようなハンドオーバを伴う搬送車1の走行を、第1矢印M1で示している)、搬送車1のIPアドレスは変更されない。そのため、上位制御部14は、第1物理層デバイス11、通信制御部12、及びプロトコルスタック13のそれぞれの起動状態を維持したままで、同一のネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でのハンドオーバを行う。
【0031】
一方、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でハンドオーバが行われる場合(図2では、このようなハンドオーバを伴う搬送車1の走行を、第2矢印M2で示している)、搬送車1のIPアドレスが変更される。本実施形態では、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でのハンドオーバには、第1の切り替えと第2の切り替えとが含まれる。ここで、第1の切り替えは、第1アクセスポイント群31を構成するアクセスポイント30に搬送車1が接続している状態から第2アクセスポイント群32を構成するアクセスポイント30に搬送車1が接続する状態への切り替えである。また、第2の切り替えは、第2アクセスポイント群32を構成するアクセスポイント30に搬送車1が接続している状態から第1アクセスポイント群31を構成するアクセスポイント30に搬送車1が接続する状態への切り替えである。本実施形態では、第1の切り替えや第2の切り替えは、搬送車1が接続経路63を走行して第1建物71及び第2建物72の一方から他方に移動する場合に行われる(図1参照)。
【0032】
このように互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でハンドオーバが行われる場合に、仮に第1物理層デバイス11を再起動(リセット)すると、第1物理層デバイス11と第2物理層デバイス21との通信リンクが切断される。そのため、第1物理層デバイス11と第2物理層デバイス21との通信リンクを再度確立するための処理(リンクアップ処理)が必要となるが、このリンクアップ処理には、通常、ある程度の時間を要する。その結果、ハンドオーバに要する時間が長くなり、例えば接続経路63において搬送車1の渋滞が発生するおそれがある。
【0033】
この点に鑑みて、本開示の物品搬送設備100では、上位制御部14は、第1の切り替え又は第2の切り替えを行う場合(本実施形態では、第1の切り替えを行う場合と第2の切り替えを行う場合との双方)に、第1物理層デバイス11の起動状態を維持したままで、通信制御部12及びプロトコルスタック13を再起動するネットワークセグメント切替処理を実行する。すなわち、上位制御部14は、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でのハンドオーバを行う場合に、ネットワークセグメント切替処理を実行する。ここで、ハンドオーバの実行前に搬送車1(具体的には、無線通信装置20)が接続されていたアクセスポイント30を「切替前アクセスポイント」といい、ハンドオーバの実行後に搬送車1(具体的には、無線通信装置20)が接続されるアクセスポイント30を「切替後アクセスポイント」という。
【0034】
ネットワークセグメント切替処理では、通信制御部12を再起動することで、切替前アクセスポイントとの通信データを適切に削除して通信制御部12を初期化することができ、プロトコルスタック13を再起動することで、切替後アクセスポイントと通信可能なIPアドレスに搬送車1のIPアドレスを適切に切り替えることができる。通信制御部12の再起動やプロトコルスタック13の再起動には、上記のリンクアップ処理のような比較的長い時間を要する処理は伴わない。一方、ネットワークセグメント切替処理では第1物理層デバイス11の起動状態が維持されるため(すなわち、第1物理層デバイス11と第2物理層デバイス21との通信リンクが維持されるため)、第1物理層デバイス11を再起動した場合に必要となるリンクアップ処理を不要として、ハンドオーバに要する時間の短縮を図ることができる。これにより、搬送車1の移動が、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント30間でのハンドオーバを伴う場合であっても、制御装置50と搬送車1とが通信不能な状態が長く継続しないようにして、当該ハンドオーバに伴う物品2の搬送効率の低下を抑制することが可能となっている。
【0035】
なお、ここでは、第1建物71に配置された複数のアクセスポイント30により第1アクセスポイント群31が構成され、第2建物72に配置された複数のアクセスポイント30により第2アクセスポイント群32が構成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、物品搬送設備100が、同じ建物における異なる階の間での物品2の搬送である階間搬送を行うように構成される場合に、第1階に配置された複数のアクセスポイント30により第1アクセスポイント群31が構成され、第2階(第1階とは異なる階)に配置された複数のアクセスポイント30により第2アクセスポイント群32が構成されてもよい。この場合、搬送車1は、例えば、昇降装置によって昇降されることで、第1階に配置された走行経路60と第2階に配置された走行経路60との間を移動する。
【0036】
本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0037】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0038】
規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車の制御を行う制御装置と、前記搬送車と前記制御装置との間を通信可能に接続する通信設備と、を備えた物品搬送設備であって、前記通信設備は、前記搬送車と通信可能に設置された複数の無線通信用のアクセスポイントと、複数の前記アクセスポイント間を接続する通信ネットワークと、を備え、複数の前記アクセスポイントの一部により構成されるアクセスポイント群を第1アクセスポイント群とし、前記第1アクセスポイント群とは異なる複数の前記アクセスポイントにより構成されるアクセスポイント群を第2アクセスポイント群として、前記通信ネットワークは、前記第1アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイント間を接続する第1ネットワークセグメントと、前記第2アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイント間を接続する第2ネットワークセグメントと、を備え、前記搬送車は、無線通信装置と、前記無線通信装置を介して複数の前記アクセスポイントの中から選択した前記アクセスポイントと通信する通信ユニットと、を備え、前記通信ユニットは、前記無線通信装置との接続を制御する物理層デバイスと、前記物理層デバイスを介して送受信するデータの処理及び通信の制御を行う通信制御部と、前記通信ネットワークを介した通信のための通信プロトコルを備えたプロトコルスタックと、前記物理層デバイス、前記通信制御部、及び、前記プロトコルスタックを制御する上位制御部と、を備え、前記上位制御部は、前記第1アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続している状態から前記第2アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続する状態への切り替え、又は、前記第2アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続している状態から前記第1アクセスポイント群を構成する前記アクセスポイントに前記搬送車が接続する状態への切り替えを行う場合に、前記物理層デバイスの起動状態を維持したままで、前記通信制御部及び前記プロトコルスタックを再起動するネットワークセグメント切替処理を実行する。
【0039】
本構成では、第1アクセスポイント群を構成するアクセスポイント(言い換えれば、第1ネットワークセグメントに属するアクセスポイント)に搬送車が接続している状態から第2アクセスポイント群を構成するアクセスポイント(言い換えれば、第2ネットワークセグメントに属するアクセスポイント)に搬送車が接続する状態への切り替え、又は、第2アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車が接続している状態から第1アクセスポイント群を構成するアクセスポイントに搬送車が接続する状態への切り替えを行う場合に、ネットワークセグメント切替処理が実行される。すなわち、本構成では、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバを行う場合に、ネットワークセグメント切替処理が実行される。ここで、ハンドオーバの実行前に搬送車が接続されていたアクセスポイントを切替前アクセスポイントといい、ハンドオーバの実行後に搬送車が接続されるアクセスポイントを切替後アクセスポイントという。
【0040】
そして、本構成では、ネットワークセグメント切替処理において、物理層デバイスの起動状態が維持されたままで、通信制御部及びプロトコルスタックが再起動される。このように、ネットワークセグメント切替処理では通信制御部及びプロトコルスタックが再起動されるため、ハンドオーバを適切に行うことができる。具体的には、通信制御部を再起動することで、切替前アクセスポイントとの通信データを適切に削除して通信制御部を初期化することができ、プロトコルスタックを再起動することで、切替後アクセスポイントと通信可能な識別情報(例えば、IPアドレス)に搬送車の識別情報を適切に切り替えることができる。一方、ネットワークセグメント切替処理では物理層デバイスの起動状態が維持されるため、物理層デバイスを再起動した場合に必要となる物理層デバイスと無線通信装置(具体的には、無線通信装置の物理層デバイス)との間の通信リンクの再確立処理を不要として、ハンドオーバに要する時間の短縮を図ることができる。
【0041】
以上のように、本構成によれば、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバに要する時間を短く抑えることができる。そして、この時間を短く抑えることができるため、搬送車の移動が、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバを伴う場合であっても、制御装置と搬送車とが通信不能な状態が長く継続しないようにして、当該ハンドオーバに伴う物品の搬送効率の低下を抑制することが可能となっている。
【0042】
ここで、前記制御装置は、第1通信サーバと第2通信サーバとを備え、前記第1ネットワークセグメントは、前記第1通信サーバと、前記第1アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイントと、を接続するように構成され、前記第2ネットワークセグメントは、前記第2通信サーバと、前記第2アクセスポイント群を構成する複数の前記アクセスポイントと、を接続するように構成されていると好適である。
【0043】
本構成によれば、第1ネットワークセグメントに属するアクセスポイントに搬送車が接続されている状態では、搬送車と第1通信サーバとを通信可能に接続することができ、第2ネットワークセグメントに属するアクセスポイントに搬送車が接続されている状態では、搬送車と第2通信サーバとを通信可能に接続することができる。そして、本開示の物品搬送設備では、上述したように、互いに異なるネットワークセグメントに属するアクセスポイント間でのハンドオーバに要する時間を短く抑えることができるため、搬送車が第1通信サーバ及び第2通信サーバのいずれとも通信不能な状態が長く継続しないようにすることができる。
【0044】
本開示に係る物品搬送設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0045】
1:搬送車
2:物品
3:通信設備
10:通信ユニット
11:第1物理層デバイス(物理層デバイス)
12:通信制御部
13:プロトコルスタック
14:上位制御部
20:無線通信装置
30:アクセスポイント
31:第1アクセスポイント群
32:第2アクセスポイント群
40:通信ネットワーク
41:第1ネットワークセグメント
42:第2ネットワークセグメント
50:制御装置
51:第1通信サーバ
52:第2通信サーバ
60:走行経路
100:物品搬送設備
図1
図2
図3