(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060433
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240424BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20240424BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G02B26/10 104
G02B6/125 301
G02B6/12 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167801
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】300081763
【氏名又は名称】セーレンKST株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 勇多
(72)【発明者】
【氏名】姫野 明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修
(72)【発明者】
【氏名】岩端 一樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲文
(72)【発明者】
【氏名】堀井 浩一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 洋次郎
(72)【発明者】
【氏名】勝山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥治
(72)【発明者】
【氏名】中尾 慧
【テーマコード(参考)】
2H045
2H147
【Fターム(参考)】
2H045BA12
2H045BA24
2H147AA04
2H147AB17
2H147BD02
2H147BD20
2H147BE15
2H147CA13
2H147CD02
(57)【要約】
【課題】スペックルノイズを低減した、高品質の画像をスクリーン上に表示することが可能な小型の画像表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2つ以上の多重光を走査する走査ミラーを備える画像表示装置であって、前記2つ以上の多重光がそれぞれ光合波器を用いて合波された多重光である画像表示装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つ以上の多重光を走査する走査ミラーを備える画像表示装置であって、前記2つ以上の多重光がそれぞれ光合波器を用いて合波された多重光であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記光合波器は、波長の異なる複数の光を、それぞれの波長ごとの導波路から入力し、合波後に1つの導波路から多重光を出力するものであって、1つの光合波器における前記複数の光はすべて波長が異なり、かつ、異なる光合波器が少なくとも1つの同じ波長の光を入力する請求項1に記載された画像表示装置。
【請求項3】
前記波長の異なる複数の光が、少なくとも青色光、緑色光、及び赤色光を含む請求項2に記載された画像表示装置。
【請求項4】
前記波長の異なる複数の光が、それぞれレーザダイオードを光源とする請求項2または3に記載された画像表示装置。
【請求項5】
前記走査ミラーがMEMSミラーである請求項1または2に記載された画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つ以上の多重光を走査する走査ミラーを備える画像表示装置であって、前記2つ以上の多重光がそれぞれ光合波器を用いて合波された多重光であることを特徴とする画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡型端末や携帯型プロジェクタ等の小型の画像投影装置の光源回路として、複数のレーザダイオードを光源として用い、導波路からなる方向性結合器により光結合を行う光合波器を備えた画像表示装置が知られている(特許文献1を参照)。前記光合波器における導波路は、シリコン基板上に公知の化学気相成長法(CVD)やスパッタリング法等を用いて低屈折率及び高屈折率のシリコン酸化膜を積層形成した後、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、さらに低屈折率シリコン酸化膜を積層形成するという工程を経て製造される。
【0003】
また、複数のレーザダイオードから出力されるそれぞれの光ビームの出力時間を変更してタイムシフトすることにより光強度を制御すると共に、水平方向および垂直方向に反射して画像を投影する走査ミラーを備えた画像表示装置も知られている(特許文献2を参照)。
【0004】
しかし、前記光合波器を備えた画像表示装置は複数のレーザー光を単に合波して出力しているだけであることから、出力光をスクリーンに投影した場合、スクリーン上に表示される画像には光強度分布がばらつくスペックルノイズが生じて画質が低下するため、高品質の画像を得ることが困難であるという問題があった。
また、前記走査ミラーを備えた画像表示装置においては、スペックルノイズを低減する効果を有するが、レーザー光源ごとにレンズまたはミラーを有していることから部品点数が多く、装置が複雑であることから、画像表示装置を小型化するには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-195603号公報
【特許文献2】特開2009-258207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スペックルノイズを低減した、高品質の画像をスクリーン上に表示することが可能な小型の画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも2つ以上の多重光を走査する走査ミラーを備える画像表示装置であって、前記2つ以上の多重光がそれぞれ光合波器を用いて合波された多重光であることを特徴とする画像表示装置を提供する。
【0008】
前記光合波器は、波長の異なる複数の光を、それぞれの波長ごとの導波路から入力し、合波後に1つの導波路から多重光を出力するものであって、1つの光合波器における前記複数の光はすべて波長が異なり、かつ、異なる光合波器が少なくとも1つの同じ波長の光を入力することが好ましい。
【0009】
前記波長の異なる複数の光が、少なくとも青色光、緑色光、及び赤色光を含むことが好ましい。
【0010】
前記波長の異なる複数の光が、それぞれレーザダイオードを光源とすることが好ましい。
【0011】
前記走査ミラーがMEMSミラーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、眼鏡型端末や携帯型プロジェクタ等の画像投影装置用途に使用することが可能な小型の画像表示装置を提供することができる。本発明の小型の画像表示装置は、少なくとも2つ以上の多重光を走査する走査ミラーを備える画像表示装置であって、前記2つ以上の多重光がそれぞれ光合波器を用いて合波された多重光であることから、スペックルノイズを低減した、高品質の画像をスクリーン上に表示することを可能とする。また、少なくとも2つ以上の多重光を用いることから、光源となるレーザダイオードの数が多くなるため、高輝度の画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明における実施例1の画像表示装置における光合波器の上面図である。
【
図2】本発明における実施例1の画像表示装置の概略図である。
【
図3】本発明における実施例1の画像表示装置における光合波器から出力される多重光の正面図である。
【
図4】本発明における実施例2の画像表示装置における光合波器の上面図である。
【
図5】本発明における実施例3の画像表示装置における光合波器の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0015】
図1は、実施例1の画像表示装置における光合波器セグメント1の上面図を示す。光合波器セグメント1は、導波路によって構成される第1光合波器2及び第2光合波器3を含んでいる。第1光合波器2の左側端面において、光源であるそれぞれのレーザダイオード(図示せず)から出力される、第1青色光4、第1赤色光5及び第1緑色光6が導波路に入力され、最初の方向性結合器(導波路が近接した部分)で第1青色光4が第1赤色光5に合波され、次の方向性結合器で、合波された前記第1青色光4及び第1赤色光5が第1緑色光6に合波され、最終的に第1青色光4、第1赤色光5及び第1緑色光6を含む第1多重光10が第1光合波器2の右側端面の導波路から出力される。
【0016】
また、第2光合波器3の左側端面において、光源であるそれぞれのレーザダイオードから出力される、第2赤色光7及び第2緑色光8が導波路に入力され、方向性結合器で第2緑色光8が第2赤色光7に合波され、第2赤色光7及び第2緑色光8を含む第2多重光11が第2光合波器3の右側端面の導波路から出力される。
【0017】
光合波器セグメント1は、特許文献1等に記載されている公知の手段、方法を用いることによって製造することができる。
【0018】
図2は、実施例1の画像表示装置の概略図を示す。光合波器セグメント1から出力された第1多重光10及び第2多重光11は、スクリーン13上の点14で重なるように走査ミラー12で反射される。走査ミラー12は可動式であり、第1多重光10及び第2多重光11の出力時間を変更するタイムシフトに対応して、第1多重光10を反射する角度と第2多重光11を反射する角度を変更することにより、点14で重なるように制御する。さらに、点14を水平及び垂直方向に走査し、スクリーン13上に画像を表示する。
【0019】
走査ミラー12は特許文献2等に記載されている公知の手段、方法を用いることによって制御することができる。また、その他の電源や駆動回路等、
図2で省略した画像表示装置に必要な構成要素についても特許文献2等に記載されている公知の構成要素を用いることができる。
【0020】
走査ミラー12はモーターを用いた機械的回転式ミラー、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラー等の公知の走査ミラーを用いることができる。低消費電力であり、光学的振れ角が広く、ミラー反射率が高いことからMEMSミラーを用いることが好ましい。
【0021】
前記青色光は430~495nm、緑色光は495~570nm及び赤色光は610~770nmの波長を有している。本発明の画像表示装置に用いられる波長の異なる複数の光は、少なくとも前記青色光、緑色光及び赤色光を含むことが好ましいが、他の波長の異なる光を含んでもよく、前記他の波長の異なる光として、黄色光(570~595nm)、橙色光(595~610nm)、紫色光(400~430nm)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0022】
本発明における「波長の異なる複数の光」は、青色光、緑色光及び赤色光等のいわゆる色相の異なる複数の光を意味している。例えば、445nmと455nmの光はどちらも青色光であり、本発明における波長の異なる複数の光ではない。ここで、「色相」はCMY表色系で多用される用語であることから、本発明がRGB表色系であることを明確にするため、「波長の異なる複数の光」を用語として用いた。また、少なくとも1つの「同じ波長の光」も同様に、同じ色相の光を意味しており、例えば、445nmと455nmの光はどちらも青色光であり、「同じ波長の光」と解する。
【0023】
図3は、実施例1の画像表示装置における光合波器セグメント1から出力される多重光を出力方向から見た正面図を示す。第1多重光10の光軸中心15と第2多重光11の光軸中心16の間の距離17は2~12μmであり、好ましくは3~10μmであり、さらに好ましくは4~5μmである。距離17が2μm未満であると、導波路間の距離が小さくなりすぎ、例えば導波路幅を1μmとした場合、導波路間距離が1μm未満となるため、光合波器セグメント1を高精度で製造することが困難となる可能性がある。また、距離17が12μmを超えると、走査ミラー12を用いる、第1多重光10及び第2多重光11のタイムシフトに対応した制御が困難となる可能性がある。
【0024】
スペックルノイズは、レーザダイオードから出力されるレーザー光が干渉性を有するコヒーレント光であることに起因しており、
図2のスクリーン13のような粗面に投影した場合、散乱光が生じ、レーザー光の干渉作用によってランダムな明暗の斑状模様として視認される。太陽光のような自然光は非干渉性のインコヒーレント光であるため、粗面に投影したとしてもスペックルノイズは生じない。実施例1の画像表示装置では、第1多重光10及び第2多重光11を点14へ重なるように投影することにより、散乱光がより多く生じるため、スペックルノイズを低減することができる。また、2つの多重光の光源として合計5個のレーザダイオードを用いていることから、高輝度の画像を得ることが可能である。
【0025】
図4は、実施例2の画像表示装置における光合波器セグメント1’の上面図を示す。光合波器セグメント1’以外は実施例1の画像表示装置と同じである。光合波器セグメント1’は、導波路によって構成される第1光合波器2’及び第2光合波器3’を含んでいる。第1光合波器2’の左側端面において、光源であるそれぞれのレーザダイオード(図示せず)から出力される、第1青色光4、第1赤色光5及び第1緑色光6が導波路に入力され、最初の方向性結合器で第1青色光4が第1緑色光6に合波され、次の方向性結合器で、合波された前記第1青色光4及び第1緑色光6に第1赤色光5が合波され、最終的に第1青色光4、第1赤色光5及び第1緑色光6を含む第1多重光10’が第1光合波器2’の右側端面の導波路から出力される。
【0026】
また、第2光合波器3’の左側端面において、光源であるそれぞれのレーザダイオードから出力される、第2赤色光7、第2緑色光8及び第2青色光9が導波路に入力され、最初の方向性結合器で第2青色光9が第2緑色光8に合波され、次の方向性結合器で、合波された前記第2緑色光8及び第2青色光9に第2赤色光7が合波され、最終的に第2赤色光7、第2緑色光8及び第2青色光9を含む第2多重光11’が第2光合波器3’の右側端面の導波路から出力される。
【0027】
ここで、右側端面付近において、第1多重光10’及び第2多重光11’の導波路間に存在する、多重光の出力にとって不要の導波路について、出力光が右側端面に到達しないように途中で曲げ導波路を設けて当該導波路からの出力光を分散して出力させると共に、第1多重光10’及び第2多重光11’の光軸中心間の距離17’(図示せず)を2~10μmとする構造を用いる。
【0028】
図5は、実施例3の画像表示装置における光合波器セグメント1’’の上面図を示す。光合波器セグメント1’’以外は実施例1の画像表示装置と同じである。光合波器セグメント1’’は、導波路によって構成される第1光合波器2’’及び第2光合波器3’’を含んでいる。第1光合波器2’’は
図1の第1光合波器2と同じ構造であり、光源であるそれぞれのレーザダイオード(図示せず)から出力される、第1青色光4、第1赤色光5及び第1緑色光6が導波路に入力され、最初の方向性結合器で第1青色光4が第1赤色光5に合波され、次の方向性結合器で、合波された前記第1青色光4及び第1赤色光5が第1緑色光6に合波され、最終的に第1青色光4、第1赤色光5及び第1緑色光6を含む第1多重光10’’が第1光合波器2’’の右側端面の導波路から出力される。
【0029】
また、第2光合波器3’’は第1光合波器2’’の上下を反転させた構造であり、第2光合波器3’’の左側端面において、光源であるそれぞれのレーザダイオードから出力される、第2緑色光8、第2赤色光7及び第2青色光9が導波路に入力され、最初の方向性結合器で第2青色光9が第2赤色光7に合波され、次の方向性結合器で、合波された前記第2青色光9及び第2赤色光7が第2緑色光8に合波され、最終的に第2青色光9、第2赤色光7及び第2緑色光8を含む第2多重光11’’が第2光合波器3’’の右側端面の導波路から出力される。
【0030】
実施例2の画像表示装置は、第1多重光10’及び第2多重光11’を用いることにより、実施例3の画像表示装置は、第1多重光10'’及び第2多重光11'’を用いることにより、それぞれ実施例1の画像表示装置と同様にスペックルノイズを低減することができる。また、それぞれ2つの多重光の光源として合計6個のレーザダイオードを用いていることから、実施例1の画像表示装置より高輝度の画像を得ることが可能である。
【0031】
本発明は、少なくとも2つ以上の多重光を走査する走査ミラーを備える画像表示装置であって、前記2つ以上の多重光がそれぞれ光合波器を用いて合波された多重光である画像表示装置だが、装置の小型化を考慮すると多重光の数は2つが好ましいことから、光合波器の数も2つが好ましい。
【0032】
本発明の画像表示装置においては、集光レンズ、コリメータレンズ、ハーフミラー等の公知技術は特に制限されることなく採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の画像表示装置は、眼鏡型端末や携帯型プロジェクタ等の画像投影装置用途に使用することができ、スペックルノイズを低減した、高品質の画像をスクリーン上に表示することを可能とすると共に、高輝度の画像を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1、1’、1’’ 光合波器セグメント
2、2’、2’’ 第1光合波器
3、3’、3’’ 第2光合波器
4 第1青色光
5 第1赤色光
6 第1緑色光
7 第2赤色光
8 第2緑色光
9 第2青色光
10、10’、10'’ 第1多重光
11、11’、11'’ 第2多重光
12 走査ミラー
13 スクリーン
14 スクリーン13上の点
15 第1多重光10の光軸中心
16 第2多重光11の光軸中心
17 第1多重光10及び第2多重光11の光軸中心間の距離