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特開2024-60437乗客コンベア点検装置および乗客コンベア点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060437
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】乗客コンベア点検装置および乗客コンベア点検方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240424BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240424BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240424BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167806
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】三之宮 光太郎
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】乗客コンベアの枠体内の清掃の要否をより正確に判定し得る乗客コンベア点検装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベアの枠体内に設置されたカメラにより撮像された撮像画像と、乗客コンベアの枠体内を示す基準画像との差分を示す差分画像を生成する生成部と、乗客コンベアの可動部を示す可動部画像をもとに、生成部により生成された差分画像における乗客コンベアの可動部を特定する特定部と、特定部により特定された可動部を差分画像から除いた堆積物を示す堆積物画像をもとに乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であるか否かを判定する判定部と、判定部により判定された結果を出力する出力部と、を設けるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアを点検するための乗客コンベア点検装置であって、
前記乗客コンベアの枠体内に設置されたカメラにより撮像された撮像画像と、前記乗客コンベアの枠体内を示す基準画像との差分を示す差分画像を生成する生成部と、
前記乗客コンベアの可動部を示す可動部画像をもとに、前記生成部により生成された差分画像における前記乗客コンベアの可動部を特定する特定部と、
前記特定部により特定された可動部を前記差分画像から除いた堆積物を示す堆積物画像をもとに前記乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により判定された結果を出力する出力部と、
を備える乗客コンベア点検装置。
【請求項2】
前記カメラにより撮像された撮像画像に前記カメラの撮像位置を示す位置情報を付与し、前記乗客コンベアの可動部の3次元設計情報に対して前記位置情報を基準として視点変換を行い、前記撮像画像と前記3次元設計情報との画角を一致させた可動部画像を生成する処理部を備える、
請求項1に記載の乗客コンベア点検装置。
【請求項3】
前記カメラは、TOF(Time of Flight)カメラであり、
前記判定部は、前記堆積物画像の堆積物の面積と前記堆積物画像の堆積物までの距離とに基づいて前記堆積物の体積を算出し、算出した体積が閾値を超えるか否かを判定し、
前記出力部は、前記判定部により閾値を超えると判定された場合、前記乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であることを示す情報を出力する、
請求項1に記載の乗客コンベア点検装置。
【請求項4】
前記カメラは、前記乗客コンベアの枠体の床と前記乗客コンベアのステップとの間を移動可能な移動体に載置され、前記乗客コンベアの枠体の傾斜部の画像を撮像する、
請求項1に記載の乗客コンベア点検装置。
【請求項5】
乗客コンベアを点検するための乗客コンベア点検方法であって、
生成部が、前記乗客コンベアの枠体内に設置されたカメラにより撮像された撮像画像と、前記乗客コンベアの枠体内を示す基準画像との差分を示す差分画像を生成することと、
特定部が、前記乗客コンベアの可動部を示す可動部画像をもとに、前記生成部により生成された差分画像における前記乗客コンベアの可動部を特定することと、
判定部が、前記特定部により特定された可動部を前記差分画像から除いた堆積物を示す堆積物画像をもとに前記乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であるか否かを判定することと、
出力部が、前記判定部により判定された結果を出力することと、
を含む乗客コンベア点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、乗客コンベアを点検する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレーターに代表される乗客コンベアは、建築構造物に設置される枠体と、この枠体内に設けられて循環移動する無端状に連結された複数のステップと、を備えている。複数のステップには、無端状のチェーンが連結されており、このチェーンが回転駆動することで、複数のステップが枠体に設置されたレールに沿って循環移動する。この循環移動によって、乗客コンベアは、ステップ上の乗客を、一方の乗降口から他方の乗降口へと輸送する。
【0003】
このような構成の乗客コンベアにおいて、枠体内の塵埃、ゴミ等の落下物(これらの区別を要しないときは、以下、「塵埃」と記す)の検査は、作業員が目視により行っている。この目視による塵埃の検査では、検査の度に枠体内の行き側(往路側)、帰り側(復路側)のステップが数枚取り外されて行われている。
【0004】
この手間を解決する方法として、特許文献1には、乗客コンベアに設けられる保全対象機器の付近を移動可能な可動部にカメラを設置してトラス内の塵埃の堆積前後の画像の差分を取ることで、塵埃量を算出する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-224560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、カメラにより撮像される画像には、乗客コンベアのステップ、チェーン、ギアといった可動部等、塵埃以外の物体の画像も含まれ得るので、塵埃の検出精度が十分でない問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、乗客コンベアの枠体内の清掃の要否をより正確に判定し得る乗客コンベア点検装置等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、乗客コンベアを点検するための乗客コンベア点検装置であって、前記乗客コンベアの枠体内に設置されたカメラにより撮像された撮像画像と、前記乗客コンベアの枠体内を示す基準画像との差分を示す差分画像を生成する生成部と、前記乗客コンベアの可動部を示す可動部画像をもとに、前記生成部により生成された差分画像における前記乗客コンベアの可動部を特定する特定部と、前記特定部により特定された可動部を前記差分画像から除いた堆積物を示す堆積物画像をもとに前記乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であるか否かを判定する判定部と、前記判定部により判定された結果を出力する出力部と、を設けるようにした。
【0009】
上記構成では、差分画像のノイズとなる可動部が特定され、差分画像から可動部が除かれた堆積物を示す堆積物画像が生成されるので、乗客コンベアの枠体内の清掃の要否をより正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗客コンベアの枠体内の清掃の要否をより正確に判定し得る乗客コンベア点検装置を実現することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態によるエスカレーターに係る構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施の形態による点検装置の設置を説明するための図である。
図3】第1の実施の形態による点検装置に係る構成の一例を示す図である。
図4】第1の実施の形態による堆積物画像の生成に係る処理の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態による点検装置に係る処理フローの一例を示す図である。
図6】第1の実施の形態による堆積物画像の生成に係る処理の一例を示す図である。
図7】第1の実施の形態による点検装置に係る処理フローの一例を示す図である。
図8】第2の実施の形態によるエスカレーター点検システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施の形態は、乗客コンベアの枠体内を点検する技術に関する。本実施の形態に係る乗客コンベア点検装置は、エスカレーター、動く歩道等の乗客コンベアの枠体内における塵埃を点検する。より具体的には、乗客コンベア点検装置は、乗客コンベアの枠体内の画像(静止画像または動画像)を撮像して塵埃の堆積前の画像と塵埃の堆積後の画像との差分画像内に含まれる乗客コンベアの可動部を特定して差分画像から排除することでノイズを除去し、より高精度に塵埃量を算出する。以下では、乗客コンベアとして、エスカレーターを例に挙げて説明する。
【0014】
ここで、エスカレーターの点検方法の一例について説明する。
<1>エスカレーターの点検者(作業員)は、機械室の予め決められた位置にカメラ付きのエスカレーター点検装置を設置し、エスカレーターの枠体内をカメラにより撮影する。
<2>エスカレーター点検装置は、カメラにより撮像された画像と、施工時または清掃直後に同一画角で撮像された画像と比較し、差分画像を抽出する。
<3>エスカレーター点検装置は、ステップ、チェーン、ギアといったエスカレーターの可動部を、画像中の相対位置、距離情報および設計図から特定して差分画像から除外する。
<4>エスカレーター点検装置は、残った差分画像を堆積物(塵埃)の画像と推定し、堆積物の面積と堆積物の距離とから堆積物の体積(塵埃量)を算出する。
<5>エスカレーター点検装置は、塵埃量が閾値以上である場合、清掃が必要であると判定し、閾値未満である場合、清掃が不要であると判定する。
<6>エスカレーター点検装置は、判定結果を画面に表示する。
<7>エスカレーター点検装置は、判定結果をDB(database)に保存すると共に、レポートを自動作成する。
【0015】
例えば、エスカレーター点検装置は、撮像部と記憶部と生成部と特定部と判定部と出力部とDBとを備える。撮像部は、エスカレーターの枠体内の画像を撮像する。記憶部は、過去に撮像された画像および3D設計図を記憶している。生成部は、過去に撮像された画像と点検時に撮像された画像とを比較して差分画像を生成する。特定部は、撮像された位置を示す位置情報と3D設計図との照合から可動部の位置を特定し、上記差分画像から可動部以外の堆積物を抽出した堆積物画像を生成する。判定部は、上記堆積物画像における堆積物の面積と距離情報とから算出されるエスカレーターの枠体内の塵埃量に基づいて清掃を要するか否かを判定する。出力部は、上記判定結果を表示する。DBは、上記画像と判定結果とを蓄積する。
【0016】
上記構成によれば、エスカレーターの枠体内における塵埃の点検を正確かつ簡易に行うことができる。例えば、上記構成によれば、エスカレーターの枠体内の塵埃を点検(検査)の度に枠体内のステップを数枚取り外すことなく、枠体内部の清掃不良によるタバコの不始末等の火災を引き起こしやすい状況を、定量的に簡易かつ早期に検出することができる。
【0017】
また、ステップにカメラを設置する必要がなく、新設のエスカレーターにおいては専用のステップを設計する必要がなく、既設のエスカレーターにおいては置換する必要がない。また、エスカレーターの枠体内は、多数の金属部品で囲まれているため、電波が届きにくい環境にあるが、エスカレーター点検装置は、機械室の予め定められた位置に設置されるので、通信ができない状況を回避することができる。また、照度が十分でないエスカレーターの枠体内を撮像する場合、TOFカメラを用いることで、塵埃量の検出精度を向上することができる。
【0018】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。なお、以下の説明では、図面において同一要素については、同じ番号を付し、説明を適宜省略する。
【0020】
図1において、100は、全体として第1の実施の形態によるエスカレーターを示す。まず、点検対象となるエスカレーター100について説明する。
【0021】
図1は、エスカレーター100の概略構成を示す図である。図1に示すように、エスカレーター100は、移動手すり101、ステップ102、移動手すり101およびステップ102を駆動するためのスプロケット103、スプロケット103等を設置収納するための枠体110等を含んで構成されている。
【0022】
エスカレーター100を使用すると、任意の方向に移動するステップ102の付着物が、枠体110の床111(上部機械室112の床111、下部機械室113の床111等)に堆積することになる。エスカレーター100の構造上、付着物は、上部機械室112の水平部114、下部機械室113の水平部114、および傾斜部115に堆積することになる。付着物は、床111の折れ点116附近に大量に集積され、スプロケット103等の潤滑剤と混ざり、塵埃120となり、広範囲に堆積することになる。これを放置すると、塵埃120がステップ102と接触して故障に至るだけでなく、煙草等の火種が枠体110内に侵入すると火災に繋がるため、清掃が必要となる。
【0023】
しかしながら、従来の点検方法では、折れ点116附近の塵埃120の有無を作業員130が確認している。このため、目視131することができない場合、ステップ102を複数、外さなければならない問題がある。
【0024】
この点、枠体110内の画像を撮像可能な点検装置を用いることで、ステップ102を取り外すことなく、塵埃120の有無を点検することができる。
【0025】
図2は、点検装置の一例(点検装置200)を示す図である。以下では、エスカレーター100の上部に点検装置200を設置する形態の例を示す。下部に設置する形態もあるが、上部と同様であるため、図示およびその説明は省略する。
【0026】
エスカレーター100の上部機械室112において、作業員130は、水平部114および折れ点116附近の塵埃120が見える水平部114の所定の位置(設置位置)に点検装置200を設置する。例えば、点検装置200は、TOF(Time of Flight)カメラ付き携帯端末である。設置位置(撮像位置)は、図中のy軸方向の中心部で、かつ作業員130がシャッターボタンを押す操作等に支障が出ない範囲で折れ点116附近が見えるように、折れ点116附近のx軸方向が望ましい。なお、点検装置200は、縦向きに設置されてもよいし、横向きに設置されてもよいし、その他の向きに設置されてもよい。本手法では従来の点検方法のようにステップ102を複数、取り外す手順が不要となり、点検時間を短縮することができる。
【0027】
図3は、点検装置200に係る構成の一例を示す図である。
【0028】
点検装置200は、例えば、スマートフォンであり、TOFカメラ310と処理部320と記憶部330と生成部340と特定部350と判定部360と出力部370とを備える。
【0029】
点検装置200の機能(処理部320、記憶部330、生成部340、特定部350、判定部360、出力部370等)は、例えば、プロセッサが補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、点検装置200の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、点検装置200の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、点検装置200の機能の一部は、点検装置200と通信可能な他のコンピュータにより実現されてもよい。
【0030】
TOFカメラ310は、枠体110内のTOF画像(距離画像)を撮像する。処理部320は、TOF画像に撮像位置(位置情報)を付与する。記憶部330は、TOFカメラ310により過去に撮像されたTOF画像(過去TOF画像)とエスカレーター100の3D設計図とを記憶装置に記憶(保存)する。過去TOF画像は、最新の過去TOF画像が保持されていてもよい。
【0031】
生成部340は、過去TOF画像とTOFカメラ310で撮像されたTOF画像とを比較して差分画像を生成する。より具体的には、生成部340は、2つの画像の各画素の輝度値の差を算出し、差が予め決められた閾値未満である場合は同一と見なし、閾値以上である場合には差分があると判定する。なお、生成部340は、新設等のエスカレーター100において、過去TOF画像がない場合、3D設計図から抽出した画像を代用してもよい。
【0032】
特定部350は、TOFカメラ310により撮像されたTOF画像の位置情報と記憶部330に保存された3D設計図とを照合して可動部の位置を特定し、差分画像から可動部以外の堆積物を抽出した堆積物画像を生成する。判定部360は、堆積物画像と撮像位置から堆積物までの距離を示す距離情報とに基づいて清掃の要否を判定する。出力部370は、判定部360による判定結果を出力する。
【0033】
また、点検装置200は、ネットワーク380を介してDB390と通信可能に接続されている。DB390は、TOF画像と判定結果とを点検装置200から受け取って蓄積する。なお、点検装置200は、DB390を備える構成であってもよいし、通信機能を備えるTOFカメラと通信機能を備える携帯端末とからなる構成であってもよい。
【0034】
続いて、堆積物画像を生成する処理について説明する。
【0035】
図4は、堆積物画像400の生成に係る処理の一例を示す図である。
【0036】
処理部320は、撮像位置を示す位置情報401が入力されると、記憶部330により記憶されている3D設計図402と位置情報401とを用いて視点変換処理(ステップS401)を行って、3D設計図402とTOF画像との画角を一致させる。この際に、処理部320は、3D設計図402の情報を使って、位置情報401から画像中のオブジェクト(例えば、可動部)までの距離(オブジェクト距離)とオブジェクトの名前である可動部名とをペアとしてタグ情報とし、タグ付けしたタグ付き距離画像403を生成する。なお、可動部名は、ステップ等の部品の名称であってもよいし、ステップ、チェーン、ギア等を含む装置の名称であってもよい。
【0037】
特定部350は、生成部340により生成された差分画像411と、処理部320により生成されたタグ付き距離画像403とを用いて、差分画像411からエスカレーター100の可動部を除外した堆積物画像400を生成する。
【0038】
ステップS411では、特定部350は、差分画像411中の差分領域を複数のオブジェクトにグループ化(グルーピング)する。差分画像411は、差分がある白い画素と差分がない黒い画素との2値で構成されているとする。例えば、画像処理のモルフォロジー変換を用いて細い線およびノイズを削除して白い画素の塊であるオブジェクトを抽出する。これを全画素に行うことで、差分画像411から複数のオブジェクトが抽出される。ここでのオブジェクトとしては、ステップ102といったエスカレーター100の可動部、塵埃120、およびノイズが該当する。特定部350は、ノイズを除去するために、予め決められた画素数以下のオブジェクトをノイズと見なして除外する。
【0039】
ステップS412では、特定部350は、処理部320により生成されたタグ付き距離画像403を用いて、各オブジェクトがエスカレーター100の可動部であるか否かを判定する。タグ付き距離画像403と差分画像411との画角は同一であるので、特定部350は、オブジェクトの画素位置に対応するタグ付き距離画像403を参照することで、オブジェクトがエスカレーター100の可動部であるか否かを判定する。特定部350は、可動部でなかった場合は、塵埃120であるので、ステップS413に処理を移し、可動部であった場合は、ステップS414に処理を移す。
【0040】
ステップS413では、特定部350は、可動部でないオブジェクトを堆積物画像400に追加する。
【0041】
ステップS414では、特定部350は、全領域(全オブジェクト)を参照したか否かを判定する。全オブジェクトを参照したと判定した場合は、堆積物画像400を判定部360に出力し、全オブジェクトを参照していないと判定した場合は、ステップS412に処理を戻す。
【0042】
図5は、点検装置200に係る処理フローの一例を示す図である。本実施の形態では、上部機械室112および/または下部機械室113において点検装置200の処理が開始される。
【0043】
ステップS501では、作業員130は、上部機械室112または下部機械室113において折れ点116附近の塵埃120が見える水平部114の所定の位置に点検装置200を設置する。所定の位置には、設置位置を示すマーカ等が設けられていてもよい。また、点検装置200を固定するための台座が用いられてもよい。
【0044】
ステップS502では、点検装置200は、TOF画像を取得する。例えば、TOFカメラ310は、枠体110内(例えば、エスカレーター100の土台となる構造部分であるトラス)のTOF画像を撮像し、処理部320は、位置情報401を自動的に保存する。この際に、1枚以上のTOF画像が確実に取得されればよい。
【0045】
ステップS503では、処理部320は、記憶部330により記憶されている3D設計図402に対して、位置情報401を基準点として視点変換を行う。この処理により、撮像されたTOF画像と3D設計図402との画角が同一となる。
【0046】
ステップS504では、処理部320は、位置情報401を基準としたオブジェクト距離と可動部名とを視点変換した3D設計図402にタグ付けしたタグ付き距離画像403を生成する。
【0047】
付言するならば、3D設計図402とTOF画像との画角が一致するように点検装置200が設置される場合には、ステップS503の処理は行われなくてもよい。この場合、タグ付き距離画像403が事前に準備されていてもよい。
【0048】
ステップS505では、生成部340は、記憶部330により記憶された過去TOF画像と撮像されたTOF画像とを画像処理することで差分画像411を生成する。
【0049】
ステップS506では、特定部350は、差分画像411の差分領域を複数のオブジェクトにグループ化(グルーピング)する。これにより、複数のオブジェクトが抽出される。また、この処理によりノイズが除去される。
【0050】
ステップS507では、特定部350は、処理部320により生成されたタグ付き距離画像403を用いて、処理対象のオブジェクトとエスカレーター100の可動部とを照合する。
【0051】
ステップS508では、特定部350は、差分画像411の処理対象のオブジェクトがエスカレーター100の可動部であるか否かを判定する。特定部350は、可動部であると判定した場合、ステップS509に処理を移し、可動部でないと判定した場合、当該オブジェクトを除外し、未処理のオブジェクトを処理対象としてステップS507に処理を移す。
【0052】
ステップS509では、特定部350は、処理対象のオブジェクトを差分面積として加算(堆積物画像400に追加)する。
【0053】
ステップS510では、特定部350は、全てのオブジェクトについてステップS508の判定(可動部判定)を行ったか否かを判定する。特定部350は、全てのオブジェクトについて可動部判定した場合は、堆積物画像400を判定部360に出力し、全てのオブジェクトについて可動部判定していない場合は、ステップS507に処理を移す。
【0054】
ステップS511では、判定部360は、堆積物画像400中の塵埃120(塵埃量)が予め定められた基準値以上であるか否かを判定する。判定部360は、塵埃量が基準値以上であると判定した場合、ステップS512に処理を移し、塵埃量が基準値未満であると判定した場合、ステップS513に処理を移す。
【0055】
例えば、ステップS511では、判定部360は、塵埃120の計測地点以降も塵埃120が堆積していると仮定し、塵埃120の計測地点から折れ点116附近までの距離から奥行を算出する。判定部360は、算出した奥行と、堆積物画像400中のオブジェクト(堆積物)の面積と、オブジェクトまでの距離とから、塵埃量(体積)を推定する。判定部360は、推定した塵埃量とエスカレーター100に対応して設定されている基準値とを比較して清掃の要否を判定する。また、判定部360は、ステップS511に加えてまたは代えて、堆積物画像400中のオブジェクトにおいて最も高い地点(塵埃高さ)が基準値以上であるか否かを判定してもよいし、堆積物画像400中のオブジェクトの面積が基準値以上であるか否かを判定してもよい。
【0056】
ステップS512では、判定部360は、エスカレーター100の枠体110内の清掃が必要であることを示す情報を生成する。
【0057】
ステップS513では、判定部360は、エスカレーター100の枠体110内の清掃が不要であることを示す情報を生成する。
【0058】
ステップS514では、出力部370は、堆積物画像400(静止画)、塵埃量(塵埃120の推定塵埃量)、清掃の要否をディスプレイに表示する。
【0059】
ステップS515では、出力部370は、ネットワーク380を介して、堆積物画像400、塵埃量、清掃の要否をDB390に格納し、処理を終了する。
【0060】
図6は、新設等のエスカレーター100で過去TOF画像がない場合、または過去TOF画像を使わない構成である場合における、堆積物画像400の生成に係る処理の一例を示す図である。過去TOF画像がない場合、または過去TOF画像を使わない場合は、3D設計図402から抽出した画像(例えば、タグ付き距離画像403)が代用される。なお、図4と重複する部分については、同じ符号を用いて、その説明を省略する。
【0061】
ステップS601では、生成部340は、TOFカメラ310により撮像された撮像画像601とタグ付き距離画像403とを用いて差分画像411を生成する。以降は、図4と同様である。
【0062】
図7は、新設等のエスカレーター100において過去TOF画像がない場合、または過去TOF画像を使わない構成である場合における、点検装置200に係る処理フローの一例を示す図である。過去TOF画像がない、または過去TOF画像を使わない場合は、点検装置200は、3D設計図401から抽出した画像を代用する。
【0063】
図5と重複する部分については説明を省略する。生成部340は、ステップS502においてTOFカメラ310により撮像されたTOF画像(撮像画像601)と、ステップS503において視点変換された3D設計図402にステップS504において位置情報401を基準としたオブジェクト距離および可動部名がタグ付けされたタグ付き距離画像403とを用いて、ステップS505において画像処理することで、差分画像411を生成する。以降は図5の構成と同様である。
【0064】
本実施の形態によれば、エスカレーターのステップを取り外すことなく、エスカレーターの枠体内の清掃の要否を判定することができる。
【0065】
(II)第2の実施の形態
図8は、第2の実施形態におけるエスカレーター点検システムの一例(エスカレーター点検システム800)を示す図である。
【0066】
第1の実施の形態では、点検装置200(TOFカメラ310)が水平部114に設置されるため、折れ点116の先(例えば、傾斜部115)に堆積している塵埃120を確認することが困難である。この点、エスカレーター点検システム800は、映像取得装置810と携帯端末820とを含んで構成され、映像取得装置810は、折れ点116まで移動して傾斜部115の画像を撮像し、撮像した画像をもとにエスカレーター100の枠体110内の清掃の要否を判定し、携帯端末820は、判定結果を出力する。
【0067】
より具体的には、映像取得装置810は、点検装置200と、点検装置200を載置するための車両811と、車両811を操作するためのチェーン状操作部812と、を備える。点検装置200は、車両811の先端(チェーン状操作部812の先端であってもよい)に設けられている。車両811は、直進走行性の向上と走行抵抗とを軽減する複数の車輪813を備える。チェーン状操作部812は、例えば、水平方向にスライド可能なプラスチック製のチェーン(プラチェーン)である。
【0068】
TOFカメラ310の撮像位置については、第1の実施の形態と同様に、予め決められたTOFカメラ310の所定の位置(初期設置)から、チェーン状操作部812(プラチェーン)を動かした距離をロータリーエンコーダー、加速度センサ等により移動距離を計測し、位置補正することで推定される。
【0069】
携帯端末820は、点検装置200と無線通信が可能であり、TOFカメラ310で取得した画像(映像)、判定結果等を受信して表示する。
【0070】
本実施の形態によれば、エスカレーターのステップを取り外すことなく、エスカレーターの枠体内の傾斜部の清掃の要否を判定することができる。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施の形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明しているものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0072】
また、上述の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上述の各構成や機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0073】
また、制御線および情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線および情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0074】
(III)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
【0075】
上述の実施の形態においては、本発明を乗客コンベア点検装置に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0076】
また、上述の実施の形態において、プログラムの一部またはすべては、プログラムソースから、点検装置を実現するコンピュータのような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、ネットワークで接続されたプログラム配布サーバまたはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。また、上述の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0077】
また、上述の実施の形態において、情報の出力は、ディスプレイへの表示に限るものではない。情報の出力は、スピーカによる音声出力であってもよいし、ファイルへの出力であってもよいし、印刷装置による紙媒体等への印刷であってもよいし、プロジェクタによるスクリーン等への投影であってもよいし、その他の態様であってもよい。
【0078】
上述した実施の形態は、例えば、以下の特徴的な構成を有する。
【0079】
(1)
乗客コンベア(例えば、エスカレーター100)を点検するための乗客コンベア点検装置(例えば、点検装置200)であって、上記乗客コンベアの枠体内に設置されたカメラ(例えば、TOFカメラ310)により撮像された撮像画像と、上記乗客コンベアの枠体内を示す基準画像(例えば、過去TOF画像、3D設計図402から抽出された画像、タグ付き距離画像403)との差分を示す差分画像(例えば、差分画像411)を生成する生成部(例えば、生成部340、回路等)と、上記乗客コンベアの可動部を示す可動部画像(例えば、タグ付き距離画像403)をもとに、上記生成部により生成された差分画像における上記乗客コンベアの可動部を特定する特定部(例えば、特定部350、回路等)と、上記特定部により特定された可動部を上記差分画像から除いた堆積物を示す堆積物画像(例えば、堆積物画像400)をもとに上記乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であるか否かを判定する判定部(例えば、判定部360、回路等)と、上記判定部により判定された結果を出力する出力部(例えば、出力部370、回路等)と、を備える。
【0080】
上記構成では、差分画像のノイズとなる可動部が特定され、差分画像から可動部が除かれた堆積物を示す堆積物画像が生成されるので、乗客コンベアの枠体内の清掃の要否をより正確に判定することができる。
【0081】
(2)
上記乗客コンベア点検装置は、上記カメラにより撮像された撮像画像に上記カメラの撮像位置を示す位置情報を付与し、上記乗客コンベアの可動部の3次元設計情報に対して上記位置情報を基準として視点変換を行い、上記撮像画像と上記3次元設計情報との画角を一致させた可動部画像を生成する処理部(例えば、処理部320、回路等)を備える。
【0082】
上記構成では、カメラの画角と3次元設計情報の画角とが一致するので、より高精度に可動部を特定することができる。
【0083】
(3)
上記カメラは、TOFカメラ(例えば、TOFカメラ310)であり、上記判定部は、上記堆積物画像の堆積物の面積と上記堆積物画像の堆積物までの距離とに基づいて上記堆積物の体積を算出し、算出した体積が閾値を超えるか否かを判定し(例えば、ステップS511参照)、上記出力部は、上記判定部により閾値を超えると判定された場合、上記乗客コンベアの枠体内の清掃が必要であることを示す情報を出力する(例えば、ステップS512、ステップS514、およびステップS515参照)。
【0084】
上記構成では、堆積物の体積が算出されるので、乗客コンベアの枠体内の清掃の要否をより正確に判定することができる。
【0085】
(4)
上記カメラは、上記乗客コンベアの枠体の床と上記乗客コンベアのステップとの間を移動可能な移動体(例えば、車両811)に載置され、上記乗客コンベアの枠体の傾斜部(例えば、傾斜部115)の画像を撮像する。
【0086】
上記構成では、乗客コンベアのステップを取り外すことなく、乗客コンベアの枠体内の傾斜部の清掃の要否を判定することができる。
【0087】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100……エスカレーター、110……枠体、200……点検装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8