IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-鋼管柱接合構造 図1
  • 特開-鋼管柱接合構造 図2
  • 特開-鋼管柱接合構造 図3
  • 特開-鋼管柱接合構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060474
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】鋼管柱接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240424BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
E04B1/24 P
E04B1/58 503H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167866
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 春之
(72)【発明者】
【氏名】木原 智美
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AB16
2E125AB17
2E125AG50
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達を良好にすることを目的とする。
【解決手段】鋼管柱接合構造は、丸形鋼管20と、丸形鋼管20の端部に設けられる上側ダイアフラム22と、平面視にて、丸形鋼管20の内周面20Aの内側に端部が配置され、端部が上側ダイアフラム22を介して丸形鋼管20に接合される角形鋼管40と、丸形鋼管20の内部に配置され、端部が角形鋼管40の端部と連続するように、上側ダイアフラム22に接合される補強用角形鋼管50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸形鋼管と、
前記丸形鋼管の端部に設けられるダイアフラムと、
平面視にて、前記丸形鋼管の内周面の内側に端部が配置され、該端部が前記ダイアフラムを介して前記丸形鋼管に接合される角形鋼管と、
前記丸形鋼管の内部に配置され、端部が前記角形鋼管の端部と連続するように、前記ダイアフラムに接合される補強用角形鋼管と、
を備える鋼管柱接合構造。
【請求項2】
前記補強用角形鋼管の断面形状及び大きさは、前記角形鋼管の断面形状及び大きさと同様とされる、
請求項1に記載の鋼管柱接合構造。
【請求項3】
平面視にて、前記角形鋼管の各角部は、前記丸形鋼管の内周面に近接する、
請求項1又は請求項2に記載の鋼管柱接合構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
丸形鋼管や角形鋼管のように、断面形状が異なる鋼管同士を接合する接合構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、直径が異なる丸形鋼管同士の接合構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-259181号公報
【特許文献2】特開2016-020594号公報
【特許文献3】特開2009-057745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、断面形状が円形から四角形に徐々に変化する接合金物を介して、丸形鋼管と角形鋼管とを接合する。これにより、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達を良好にしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、接合金物の構造が複雑化するため、接合金物の製作に手間がかかる。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、簡単な構造で、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の鋼管柱接合構造は、丸形鋼管と、前記丸形鋼管の端部に設けられるダイアフラムと、平面視にて、前記丸形鋼管の内周面の内側に端部が配置され、該端部が前記ダイアフラムを介して前記丸形鋼管に接合される角形鋼管と、前記丸形鋼管の内部に配置され、端部が前記角形鋼管の端部と連続するように、前記ダイアフラムに接合される補強用角形鋼管と、を備える。
【0009】
請求項1に係る鋼管柱接合構造によれば、丸形鋼管の端部には、ダイアフラムが設けられる。また、角形鋼管の端部は、平面視にて、丸形鋼管の内周面の内側に配置される。この角形鋼管の端部は、ダイアフラムを介して丸形鋼管に接合される。
【0010】
ここで、ダイアフラムにおける角形鋼管との接合部には、大きな応力が作用する。特に、ダイアフラムにおける角形鋼管の角部との接合部には、応力が集中し易く、変形する可能性がある。
【0011】
これに対して本発明では、丸形鋼管の内部には、補強用角形鋼管が配置される。補強用角形鋼管は、端部が角形鋼管の端部と連続するように、ダイアフラムに接合される。この補強用角形鋼管によってダイアフラムにおける角形鋼管との接合部を補強することにより、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達が良好となる。
【0012】
このように本発明では、ダイアフラムに角形鋼管を接合するという簡単な構造で、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達を良好にすることができる。
【0013】
請求項2に記載の鋼管柱接合構造は、請求項1に記載の鋼管柱接合構造において、前記補強用角形鋼管の断面形状及び大きさは、前記角形鋼管の断面形状及び大きさと同様とされる。
【0014】
請求項2に係る鋼管柱接合構造によれば、補強用角形鋼管の断面形状及び大きさは、角形鋼管の断面形状及び大きさと同様とされる。これにより、補強用角形鋼管によって、ダイアフラムにおける角形鋼管との接合部を効率的に補強することができる。
【0015】
請求項3に記載の鋼管柱接合構造は、請求項1又は請求項2に記載の鋼管柱接合構造において、平面視にて、前記角形鋼管の各角部は、前記丸形鋼管の内周面に近接する。
【0016】
請求項3に係る鋼管柱接合構造によれば、平面視にて、角形鋼管の各角部は、丸形鋼管の内周面に近接する。これにより、本発明では、角形鋼管の各角部が丸形鋼管の内周面から遠く離れた場合と比較して、角形鋼管からダイアフラムを介して丸形鋼管に伝達される応力の伝達経路が短くなる。したがって、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達がさらに良好となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構造で、丸形鋼管と角形鋼管との間の応力伝達を良好することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る鋼管柱接合構造が適用された鉄骨柱を示す立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4】一実施形態に係る鋼管柱接合構造の変形例が適用された丸形鋼管及び角形鋼管を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る鋼管柱接合構造について説明する。
【0020】
(鋼管柱接合構造)
図1には、本実施形態に係る鋼管柱接合構造が適用された鉄骨柱10が示されている。鉄骨柱10は、当該鉄骨柱10の下側(下側柱部)を構成する丸形鋼管20と、当該鉄骨柱10の上側(上側柱部)を構成する角形鋼管40とを備えている。
【0021】
(丸形鋼管)
丸形鋼管(丸形鋼管柱)20は、角形鋼管40の下側に配置されている。また、丸形鋼管20の断面形状は、円形状(真円形状)とされている。この丸形鋼管20の上端側(一端側)は、後述する梁30が接合される柱梁仕口部20Jとされている。この柱梁仕口部20Jには、一対の上側ダイアフラム22及び下側ダイアフラム24が設けられている。
【0022】
一対の上側ダイアフラム22及び下側ダイアフラム24は、通しダイアフラムとされており、丸形鋼管20の材軸方向(上下方向)に互いに対向して配置されている。
【0023】
上側ダイアフラム22は、鋼板等によって平面視にて矩形状に形成されている。また、上側ダイアフラム22は、丸形鋼管20の上端部に設けられている。この上側ダイアフラム22の下面には、丸形鋼管20の上端部が突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。
【0024】
上側ダイアフラム22の外周部は、丸形鋼管20の上端部から外側へ張り出している。この上側ダイアフラム22の下方に、下側ダイアフラム24が配置されている。なお、上側ダイアフラム22には、後述する補強用角形鋼管50が接合されている。
【0025】
下側ダイアフラム24は、鋼板等によって平面視にて矩形状に形成されている。この下側ダイアフラム24は、上側ダイアフラム22から下方へ離れた位置に配置されている。また、下側ダイアフラム24は、後述する補強用角形鋼管50の下側に配置されている。この下側ダイアフラム24の外周部は、丸形鋼管20から外側へ張り出している。
【0026】
なお、本実施形態では、上側ダイアフラム22の板厚が、下側ダイアフラム24の板厚と同じとされている。しかし、上側ダイアフラム22の板厚は、下側ダイアフラム24の板厚よりも厚くても良い。また、上側ダイアフラム22は、ダイアフラムの一例である。
【0027】
梁30は、H形鋼によって形成された鉄骨梁とされており、丸形鋼管20の柱梁仕口部20Jの両側に配置されている。各梁30は、上下方向に互いに対向する一対の上側フランジ部32及び下側フランジ部34と、一対の上側フランジ部32及び下側フランジ部34とを接続するウェブ部36とを有している。
【0028】
一対の上側フランジ部32及び下側フランジ部34は、一対の上側ダイアフラム22及び下側ダイアフラム24と連続するように配置されている。この一対の上側フランジ部32及び下側フランジ部34の端部は、一対の上側ダイアフラム22及び下側ダイアフラム24の外周部に、溶接等によってそれぞれ接合されている。また、ウェブ部36の端部は、丸形鋼管20の外周面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。
【0029】
(角形鋼管)
図1に示されるように、角形鋼管(角形鋼管柱)40は、丸形鋼管20の上側に配置されている。この角形鋼管40の下端部は、上側ダイアフラム22の上面に突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。これにより、角形鋼管40の下端部が、上側ダイアフラム22を介して丸形鋼管20の上端部と接合されている。
【0030】
図2に示されるように、角形鋼管40の断面形状は、矩形状(正方形状)とされている。この角形鋼管40は、4つの側壁部40Sを有している。また、角形鋼管40の下端部の断面は、丸形鋼管20に挿入可能な大きさとされている。換言すると、角形鋼管40の下端部の断面は、平面視にて、角形鋼管40の下端部が丸形鋼管20の内周面20Aの内側に配置可能な大きさとされている。
【0031】
角形鋼管40の各角部40Cは、平面視にて、丸形鋼管20の内周面20Aに近接している。ここでいう近接とは、角形鋼管40の角部40Cと丸形鋼管20の内周面20Aとの間隔が、例えば、75mm以下を意味する。
【0032】
なお、角形鋼管40の断面形状は、正方形状に限らず、長方形状でも良い。
【0033】
(補強用角形鋼管)
図1に示されるように、補強用角形鋼管50は、丸形鋼管20の柱梁仕口部20Jの内部に配置されている。また、補強用角形鋼管50の断面の形状及び大きさは、角形鋼管40の断面の形状及び大きさと同様とされている。つまり、補強用角形鋼管50の断面形状は、矩形状(正方形状)とされている。この補強用角形鋼管50は、4つの側壁部50Sを有している。
【0034】
図3に示されるように、補強用角形鋼管50の断面は、丸形鋼管20に挿入可能な大きさとされている。この補強用角形鋼管50は、丸形鋼管20の柱梁仕口部20Jの内部に配置されている。つまり、補強用角形鋼管50は、上側ダイアフラム22と下側ダイアフラム24との間に配置されている。
【0035】
補強用角形鋼管50の上端部は、角形鋼管40の下端部と連続するように、上側ダイアフラム22の下面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。より具体的には、補強用角形鋼管50の上端部は、平面視にて、当該上端部の端面が角形鋼管40の下端部の端面と全周に亘ってラップするように、上側ダイアフラム22の下面に突き当てられた状態で、溶接合によって接合されている。この補強用角形鋼管50によって、上側ダイアフラム22が補強されている。
【0036】
ここで、角形鋼管40の下端部、及び補強用角形鋼管50の上端部の断面の形状及び大きさが同様とは、これらの断面の形状及び大きさが、同一の場合に限らず、平面視にて、角形鋼管40の下端部の端面と補強用角形鋼管50の上端部の端面とが全周に亘ってラップ可能な範囲内で異なる場合も含む概念である。
【0037】
また、角形鋼管40及び補強用角形鋼管50の板厚は、同じでも良いし、異なっても良い。なお、上側ダイアフラム22を補強する観点から、補強用角形鋼管50の板厚は、角形鋼管40の板厚以上であることが好ましい。
【0038】
補強用角形鋼管50の各角部50Cは、平面視にて、丸形鋼管20の内周面20Aに近接している。ここでいう近接とは、角形鋼管40と同様に、補強用角形鋼管50の角部50Cと丸形鋼管20の内周面20Aとの隙間が、例えば、75mm以下を意味する。
【0039】
なお、補強用角形鋼管50の材軸方向の長さは、適宜変更可能であるが、上側ダイアフラム22の変形等を抑制する観点から、例えば、補強用角形鋼管50の側壁部50Sの幅の1/4以上が好ましく、1/3以上がより好ましい。
【0040】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0041】
図1及び図2に示されるように、本実施形態によれば、丸形鋼管20の上端部には、上側ダイアフラム22が設けられている。また、角形鋼管40の下端部は、平面視にて、丸形鋼管20の内周面20Aの内側に配置されている。この角形鋼管40の端部は、上側ダイアフラム22を介して丸形鋼管20に接合されている。
【0042】
ここで、上側ダイアフラム22における角形鋼管40との接合部には、大きな応力が作用する。特に、上側ダイアフラム22における角形鋼管40の角部40Cとの接合部には、応力が集中し易く、変形する可能性がある。
【0043】
これに対して本実施形態では、丸形鋼管20の内部に、補強用角形鋼管50が配置されている。補強用角形鋼管50は、上端部が角形鋼管40の下端部と連続するように、上側ダイアフラム22に接合されている。この補強用角形鋼管50によって、上側ダイアフラム22における角形鋼管40との接合部を補強することにより、丸形鋼管20と角形鋼管40との間の応力伝達が良好となる。
【0044】
このように本実施形態は、上側ダイアフラム22に角形鋼管40を接合するという簡単な構造で、丸形鋼管20と角形鋼管40との間の応力伝達を良好にすることができる。
【0045】
また、補強用角形鋼管50の断面形状及び大きさは、角形鋼管40の断面形状及び大きさと同様とされている。これにより、補強用角形鋼管50によって、上側ダイアフラム22における角形鋼管40との接合部を効率的に補強することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、平面視にて、角形鋼管40の各角部40Cが、丸形鋼管20の内周面20Aに近接している。これにより、本実施形態では、角形鋼管40の各角部40Cが、丸形鋼管20の内周面20Aから遠く離れた場合と比較して、角形鋼管40から上側ダイアフラム22を介して丸形鋼管20に伝達される応力の伝達経路が短くなる。したがって、丸形鋼管20と角形鋼管40との間の応力伝達がさらに良好となる。
【0047】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0048】
上記実施形態では、平面視にて、角形鋼管40の各角部40Cが、丸形鋼管20の内周面20Aに近接している。しかし、平面視にて、角形鋼管40の各角部40Cは、丸形鋼管20の内周面20Aから遠く離れても良い。この場合、上側ダイアフラム22が破損等しないように、例えば、上側ダイアフラム22の板厚を厚くすれば良い。
【0049】
また、上記実施形態では、ダイアフラムとしての上側ダイアフラム22が、丸形鋼管20の柱梁仕口部20Jの上端部に設けられている。しかし、例えば、図4に示される変形例のように、例えば、階高の途中において、丸形鋼管20と角形鋼管40とをダイアフラム60を介して接合しても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、丸形鋼管20の上端部に上側ダイアフラム22を介して角形鋼管40の下端部が接合されている。しかし、図1に示される鉄骨柱10を上下反転した構成としても良い。つまり、角形鋼管の上端部にダイアフラムを介して、丸形鋼管の下端部を接合しても良い。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
20 丸形鋼管
20A 内周面
22 上側ダイアフラム(ダイアフラム)
40 角形鋼管
40C 角部
50 補強用角形鋼管
60 ダイアフラム
図1
図2
図3
図4