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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060477
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】パンチング加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/24 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B21D28/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167874
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
(57)【要約】
【課題】ジョイント痕の処理工程が不要になるパンチング加工方法を提供する。
【解決手段】パンチング加工方法(PM)は、パンチング加工で抜き出す製品(P1)を割り付けた板金のワーク(WP)に対し、製品(P1)の外形線(LN2)の一部を外形線として共有するよう打ち抜き体(WS)を抜き戻し加工で圧入して保持部(1)を形成し、製品(P1)の外形線(LN2)における一部を除いた残部に沿って打ち抜き加工して製品(P1)をワーク(WP)から分離し、ワーク(WP)から分離した製品(P1)を、ワーク(WP)に対し保持部(1)を介して保持させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチング加工で抜き出す製品を割り付けた板金のワークに対し、前記製品の外形線の一部を外形線として共有するよう打ち抜き体を抜き戻し加工で圧入して保持部を形成し、
前記製品の外形線における前記一部を除いた残部に沿って打ち抜き加工して前記製品を前記ワークから分離し、
前記ワークから分離した前記製品を、前記ワークに対し前記保持部を介して保持させるパンチング加工方法。
【請求項2】
前記抜き戻し加工の前に、前記ワークに対し、前記打ち抜き体を貫通する孔を下孔として形成しておく請求項1記載のパンチング加工方法。
【請求項3】
一つの前記打ち抜き体の外形線が複数の前記製品の外形線の一部を共有するよう前記保持部を形成する請求項1又は請求項2記載のパンチング加工方法。
【請求項4】
前記保持部を、前記製品の角部に対応して形成する請求項1又は請求項2記載のパンチング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状のワークに対し、パンチング加工によって製品の外形を切断してその製品をワークから分離して得るパンチング加工方法において、製品が加工の途中でワークから分離しないように、製品とワークとを連結する微小なジョイントを残して外形切断する技術が知られている。
製品は、外形切断が終了した後に、ワークへの振動付与或いは別工程によってジョイントから分離し、回収する。
特許文献1には、微小なジョイントとして、いわゆるミクロジョイントを残す技術が記載されている。
【0003】
また、パンチング加工において、ワークから打ち抜いた加工体を打ち抜き孔に戻してワークに保持させる抜き戻し加工が知られている。特許文献2には、抜き戻し加工及び抜き戻し加工を行う金型が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-122169号公報
【特許文献2】特開2003-126924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される従来の技術では、製品に、分離したジョイントの痕(ジョイント痕)が残り、製品仕様によっては、ジョイント痕を除去する処理工程がさらに必要になる。そのため、ジョイント痕の処理工程が不要になるパンチング加工方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は次の手順を有する。
すなわち、パンチング加工で抜き出す製品を割り付けた板金のワークに対し、前記製品の外形線の一部を外形線として共有する抜き戻し体を抜き戻し加工で圧入して保持部を形成し、
前記製品の外形線における前記一部を除いた残部に沿って打ち抜き加工して前記製品を前記ワークから分離し、
前記ワークから分離した前記製品を、前記ワークに対し前記保持部を介して保持させるパンチング加工方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ジョイント痕の処理工程が不要になる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態に係るパンチング加工方法の実施例で用いる抜き戻し加工用の金型装置KDSの動作を説明するための第1断面図である。
図1B図1Bは、金型装置KDSの動作を説明するための第2断面図である。
図1C図1Cは、金型装置KDSの動作を説明するための第3断面図である。
図2図2は、パンチング加工における打ち抜き孔Wb及び打ち抜き体WSを説明するための加工過程を示す図であり、(a)~(d)はそれぞれ第1~第4の断面図である。
図3A図3Aは、実施例のパンチング加工方法PMにおける打ち抜き体WSの抜き戻し方法を説明する第1の図であり、(a)はワークWの平面図、(b)は断面図である。
図3B図3Bは、図3Aに次ぐ第2の図であり、(a)はワークWの平面図であり、(b)は打ち抜き孔Wbの断面図であり、(c)は打ち抜き体WSの平面図であり、(d)は打ち抜き体WSの断面図である。
図3C図3Cは、図3Bに次ぐ第3の図であり、(a)は抜き戻し加工後のワークWの平面図であり、(b)はその断面図である。
図4図4は、ワークWから打ち抜く製品P1~P12のレイアウトを示す平面図である。
図5図5は、図4のワークWPにおけるA1~A4部に対し、打ち抜き体WSによって形成する保持部1を説明するための部分拡大平面図である。
図6図6は、図5のワークWPに打ち抜き部5を形成した状態を示す部分拡大平面図である。
図7図7は、ワークWPにおいて、L字状部位を有する製品PA1を保持部1で保持した状態を示す部分平面図である。
図8A図8Aは、ワークWPにおいて、長尺の製品PB1を保持部1及び保持部2で保持した状態を示す部分平面図である。
図8B図8Bは、ワークWPにおいて、近接配置した二つの長尺の製品PB1を保持部1~3で保持した状態を示す部分平面図である。
図8C図8Cは、図8AのA5部における保持部2での追い抜き位置を説明するための部分拡大平面図である。
図9図9は、打ち抜き体WSの形状例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例)
本発明の実施の形態に係るパンチング加工方法の実施例であるパンチング加工方法(PM)を、抜き戻し加工を行う金型装置KDSを用い、板状のワークWから複数の製品P1~P12を得る工程によって説明する。
【0010】
まず、金型装置KDS及びその動作について、図1A図1Cを参照して説明する。図1Aは、本発明の実施の形態に係るパンチング加工方法の実施例で用いる抜き戻し加工用の金型装置KDSの動作を説明するための第1断面図である。図1Bは、金型装置KDSの動作を説明するための第2断面図である。図1Cは、金型装置KDSの動作を説明するための第3断面図である。
金型装置KDSは従来知られている抜き戻し加工用の金型装置であり、実施例のパンチング加工では、板金のワークWに対し抜き戻しをする加工体(後述の打ち抜き体WS)に含まれる部位に、予め下孔Waを形成しておく。
【0011】
図1Aに示されるように、金型装置KDSは、パンチKPとダイKDとの組として構成されている。
パンチKPは、パンチガイドKP1と、パンチガイドKP1にガイドされて内部空間を昇降するパンチボディKP2とを有する。
ダイKDは、ダイ本体KD1と、ダイ本体KD1の内部空間に昇降可能に配置されたエジェクタKD2と、エジェクタKD2を上方に付勢する戻しばねKD3とを有する。
【0012】
パンチング加工に供される板金のワークWには、予め下孔Waを円形などの形状で形成しておく。金型装置KDSで行う抜き戻し加工では、下孔Waを包含する抜き形状のパンチボディKP2を用い、下孔Waと同芯で矢印DR1に示されるように打ち抜きを行う(図1B参照)。
図1Bに示されるように、パンチボディKP2の形状に応じた外形形状で打ち抜き体WSを打ち抜いた後、図1Cに示されるようにパンチボディKP2を上昇させると(矢印DR2)、戻しばねKD3の弾性反発力によってエジェクタKD2が上昇し(矢印DR3)、打ち抜かれた打ち抜き体WSを打ち抜き孔Wbに戻し入れる。この戻し入れは強嵌合で圧入となる。
【0013】
打ち抜かれた打ち抜き体WSの外径と、ワークWに形成された打ち抜き孔Wbの内径との関係について、図2(a)~(d)を参照して説明する。図2は、実施例のパンチング加工における打ち抜き孔Wb及び打ち抜き体WSを説明するための加工過程を示す図であり、(a)~(d)はそれぞれ第1~第4の断面図である。
【0014】
図2(a)に示されるように、ワークWは、パンチボディKP2の下降に伴う下向きの荷重を受け、パンチボディKP2の下端面に対応した被加工部WS1が、パンチボディKP2の外径よりもわずかに大きく設定されたダイ本体KD1の孔KD1aに押し込まれるように塑性変形する。
パンチボディKP2の下降が継続すると、図2(b)に示されるように、被加工部WS1と母材となるワークWとの間パンチ側部分はせん断破壊してせん断面Maが生じ、ダイ本体KD1側の部分はパンチボディKP2の縁部とダイ本体KD1の縁部それぞれを起点とする破断Cが生じて進行する。
【0015】
さらにパンチボディKP2が下降すると、図2(c)に示されるように破断Cが連結し、次いで図2(d)に示されるように、被加工部WS1は、ワークWから完全に分離して打ち抜き体WSとなる。
打ち抜き体WSの外径φaは、塑性変形してダイ本体KD1の内径に依存する。一方、ワークWに形成された打ち抜き孔Wbの内径φbは、パンチボディKP2の先端径に依存する。そのため、打ち抜き体WSの外径φaは、打ち抜き孔Wbの内径φbよりも大きくなる。
打ち抜き体WSの周面の下側はせん断面Maとなり、上側は破断面Mbとなる。
【0016】
次に、図3A図3Cを参照して、実施例のパンチング加工方法PMで形成する打ち抜き体WSについて説明する。図3Aは、実施例のパンチング加工方法PMにおける打ち抜き体WSの抜き戻し方法を説明する第1の図であり、(a)はワークWの平面図、(b)は断面図である。図3Bは、図3Aに次ぐ第2の図であり、(a)はワークWの平面図であり、(b)は打ち抜き孔Wbの断面図であり、(c)は打ち抜き体WSの平面図であり、(d)は打ち抜き体WSの断面図である。図3Cは、図3Bに次ぐ第3の図であり、(a)は抜き戻し加工後のワークWの平面図であり、(b)はその断面図である。
【0017】
図3A(a)に示されるように、ワークWには下孔Waを例えば丸孔で予め形成しておく。パンチボディ(不図示)は、打ち抜き形状が打ち抜き線LN1(一点鎖線)に示された形状のものを用いる。この打ち抜き形状は、具体的には、直交する4方向に突出する略十字形状であって、その内隅となる隅部Wcの奥の部位が円弧状に形成された4回回転対称形状である。また、この打ち抜き形状の大きさは、下孔Waと同芯で打ち抜いたときに、下孔Waを包含する大きさとする。
【0018】
ワークWに対し、不図示のパンチボディによって打ち抜き線LN1の形状を打ち抜く。これにより、図3B(a),(b)に示される打ち抜き孔Wbが形成され、図3B(c),(d)に示される、略十字形状であって貫通する下孔Waを有する打ち抜き体WSが得られる。図3Bでは、打ち抜き体WSをワークWから完全に分離した状態で示しているが、実際は既述の金型装置KDSによって連続的に抜き戻し加工が実行される。すなわち、打ち抜き体WSは、図3(C)に示されるように、打ち抜き孔Wbに圧入される。
【0019】
打ち抜き体WSの下孔Waは、打ち抜き孔Wbへの圧入によって内径が小さくなるように変形する一方、打ち抜き孔Wbには打ち抜き体WSから外側へ広がるように向かう力Faが掛かる。
そのため、打ち抜き孔Wbと打ち抜き体WSとの間には、力Faに起因して、打ち抜き体WSの離脱を阻止する摩擦力が生じる。また、互いの接触面の微小食い込みが生じる。この摩擦力とくい込みによって打ち抜き体WSは打ち抜き孔Wbに保持される。
【0020】
以下、打ち抜き孔Wbに圧入によって打ち抜き体WSが抜き戻しされた部位を保持部1と称する。特に、隅部WcにRが付けられた略十字状の打ち抜き体WSによる保持部1を、第1保持部1とも称する。
【0021】
力Faの大きさは、打ち抜き体WSの外形形状と、その外形形状に対する下孔Waの大きさ及び形状に依存する。すなわち、打ち抜き体WSの外形形状、並びに、下孔Waの大きさ及び形状に応じて、力Faの大きさを所望の大きさに設定することができる。
例えば、打ち抜き体WSの外形形状が同じ場合に、下孔Waは、小さいほど外形形状と下孔Waとの間の肉が厚くなって力Faが大きい。
【0022】
上述の第1保持部1を用い、板金のワークWPに割り付けた複数の製品P1~P12をパンチング加工で抜き出して得るパンチング加工方法PMについて、図4図6を参照して説明する。
図4は、ワークWPから打ち抜く製品P1~P12のレイアウトを示す平面図である。図5は、図4のワークWPにおけるA1~A4部に対し、打ち抜き体WSによって形成する第1保持部1を説明するための部分拡大平面図である。図6は、図5のワークWPに打ち抜き部5を形成した状態を示す部分拡大平面図である。
【0023】
図4に示されるワークWPは、金属の板材である。例えば、板厚2.0mmで定尺のSUSである。
製品P1~P12は、長方形であり、縦四列、横三列の合計12枚が割りつけられている。図4では、製品P1~P12の外形となる線を、外形線LN2として一点鎖線で示してある。また、説明の便宜上、図4図6において、前後左右の各方向を矢印で規定する。
【0024】
実施例のパンチング加工方法PMでは、製品の外形に対応した外形線LN2の4つの角部に第1保持部1を設ける。
製品P1における4つの角部に対応したA1部~A4部を代表として、図5を参照して説明する。
【0025】
図5において、A1部は製品P1の左後の角部に対応した部分である。
第1保持部1に用いる打ち抜き体WSは、隅部Wcが、製品P1の左上の角部の形状に対応した形状を有している。この例では円弧状である。
すなわち、第1保持部1を、第1保持部1となる打ち抜き体WSの隅部Wcの形状及び位置が、製品P1の左上の角部の形状及び位置と合致するように形成する。換言するならば、打ち抜き体WSは、製品P1の外形線LN2の一部を外形線の一部として共有する。第1保持部1の形成は、図1A図1Cで説明した抜き戻し用の金型装置KDS或いは同様機能を有する金型装置を用いる。
【0026】
A2部及びA4部においては、一つの打ち抜き体WSの二つの隅部Wcが、それぞれ製品P1及び製品P2の角部に対応するように、第1保持部1を形成する。
一方、A3部及びA4部に示されるように、隣接する製品の外形線LN2の間に相応の距離L1で間隙SPを設けてもよい。
この場合、A3部においては、製品P1の右後の角部に対し一つの第1保持部1を形成し、製品P5の左後の角部に対し一つの第1保持部1を形成する。
【0027】
このように、各製品の4つの角部に対し、一対一で対応する、又は複数の角部に多対一で対応する第1保持部1を形成したら、図6に示されるように、製品の外形のうちの残り(残部)の外形に対応する外形線LN2に沿って打ち抜き用の金型で打ち抜いて打ち抜き部5を形成する。打ち抜き部5は、パンチング加工による単発抜き又は追い抜きで形成する。
図5及び図6では、理解容易のため、開口部位である下孔Wa及び打ち抜き部5にハッチングを付与してある。
打ち抜き部5の長手方向の端部は、図6に示されるように打ち抜き体WSに掛からないように設定してもよいし、打ち抜き体WSに被るように設定してもよい(図8C参照)。
【0028】
図6に示されるように、打ち抜き部5を形成することで、製品P1~P12の外形は、第1保持部1及び打ち抜き部5によってワークWPから分離した状態となる。
製品P1~P12の四つの角部に形成された第1保持部1において、圧入された打ち抜き体WSは、隅部Wcにおいて力Faで製品を内向きに押している。
【0029】
これにより、製品P1~P12は、第1保持部1を介してそれぞれワークWPに対し挟まれるように保持される。すなわち、パンチング加工において、レイアウトされた製品P1~P12に対し順番に打ち抜き部5を形成している間、ワークWPから打ち抜き部5の加工を先に終えた製品もワークWPに保持された状態で維持される。これにより、複数の製品の打ち抜き加工途中で打ち抜き済みの製品が脱落し、加工が停止することはなく加工効率が低下しない。
【0030】
製品P1~P12が第1保持部1によって保持されたワークWPに対し、振動を付与する、或いは製品P1~P12に対し抜き方向の所定の力を付与することで、製品P1~P12をワークWPから分離できる。
換言するならば、第1保持部1による製品P1~P12の保持力を、通常の使用状態においてワークWPに保持され、所望の振動又は所定の力を付与することでワークWPの保持を解除できるように、打ち抜き体WSの仕様である外形形状、並びに、下孔の形状及びサイズを設定しておく。
【0031】
上述のパンチング加工方法PMによれば、打ち抜き部5を形成する抜き加工によって、製品は完全にワークWPに対し切断された状態で保持される。そのため、ミクロジョイントのようなジョイント及びジョイントの分離加工は不要となる。従って、製品P1~P12にジョイント痕は生じない。
【0032】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0033】
第1保持部1は、長方形形状以外の製品に対しても形成することができる。図7は、ワークWPにおいて、L字状部位を有する製品PA1を第1保持部1で保持した状態を示す部分平面図である。すなわち、製品PA1は長方形形状ではなく、L字状部分を有する変形形状である。その場合の第1保持部1の形成態様例が示されている。
【0034】
図7に示されるように 製品PA1は、外形形状として、入隅形状の2箇所の入隅部PA1a、PA1bを有する。
製品PA1をワークWPに保持させるために、入隅部PA1a,PA1bには保持部1を配置せず、他の出隅となる角部PA1cに第1保持部1を形成しておく。そして、製品PA1の外形のうち、第1保持部1が担う部分以外を打ち抜き部5によってワークWPから分離し、角部PA1cに対応して形成した第1保持部1によって製品PA1をワークWPに保持させる。
【0035】
製品が長尺の場合は、外形形状のうち、角部に加え、角部ではない部位に対応した第2保持部2を設けて保持に供するようにしてもよい。これについて、図8A及び図8Cを参照して説明する。図8Aは、ワークWPにおいて、長尺の製品PB1を第1保持部1及び第2保持部2で保持した状態を示す部分平面図であり、図8Cは、図8AにおけるA5部の拡大図である。
【0036】
製品PB1は、図8Aの左右方向に長い短冊状を呈する。
ワークWPに対し、4箇所の角部PB1cを第1保持部1で保持することに加え、左右方向の中間の適宜部位を、第2保持部2(保持部2)で保持する。
第1保持部1は、打ち抜き体WSの隅部Wcの形状及び位置を製品の外形に対応するのに対し、図8Cに示されるように、第2保持部2は、打ち抜き体WSの腕部WSdの先端縁の形状(直線状)及び位置を、製品PB1の外形形状及び位置に対応させている。
【0037】
また、図8Cに示されるように、製品の外形を打ち抜く打ち抜き部5を形成する際に、打ち抜き部5の端部位置は、打ち抜き体WSに重なってその一部を打ち抜くように設定してもよい。ラップ寸法Daは例えば0.5mmである。
【0038】
このように、製品形状が長尺などで角部以外での保持が望まれる場合は、角部PB1c以外の外形における保持に適切な部位を、第2保持部2で挟むように保持させてもよい。これにより、製品は、長尺であってもワークWPから分離せずに保持され、ワークWPから分離した製品にジョイント痕は存在しない。
【0039】
ワークWPにおいて、長尺の製品PB1をその長手方向に直交する方向に近接して割り付ける場合は、図8Bに示されるように、隣接する製品PB1の間に(保持部3(第3保持部3)を形成してもよい。
第3保持部3は、その打ち抜き体WSが下孔Waを有する矩形形状であり、打ち抜き体WSの対向する一対の縁部WSeがそれぞれ隣接する製品PB1の外形形状及び位置に対応するように形成される。
製品PB1の角部は、既述の十字状の打ち抜き体WSを有する第1保持部1で挟むように保持する。
【0040】
保持部の例として、保持部1~3を説明したが、保持部に用いる打ち抜き体WSの形状は十字状に限定されず、挟んで保持する製品の形状に応じて適宜変更してよい。
図9は、打ち抜き体WSの形状例を示す平面図である。いずれも縦横比は自由に設定できる。
【0041】
図9(a)に示される打ち抜き体WS11は十字状であって、隅部Wcは直角に形成されている。図9(b)に示される打ち抜き体WS12は、既述の打ち抜き体WSに類似の十字状であって、隅部Wc全体が円弧状に形成されている。図9(c)に示される打ち抜き体WS13は、隅部Wcの奥が弧状ではなく傾斜平面として形成されている。図9(d)に示される打ち抜き体WS14は、十字状ではなく矩形形状に形成されている。
下孔Waの形状は、図9に示された円形に限定されず、長丸、楕円、三角形、5角以上の多角形、異形、であってもよい。
【0042】
ワークWPの材質は限定されず、SUSを含む鉄系の板材、アルミニウム板などが適用できる。ワークWPの板厚は限定されない。例えば6.0mmまでのワークWPに対し良好に適用できる。
【0043】
下孔Waは閉じた貫通孔であるが、閉じた下孔Waの替わりに外形から切り込まれたスリットで連通させて外形に接続した開口部を設けてもよい。この場合の開口部は、スリットの形成位置によって力Faの方向及び大きさに方向性が生じるので、製品P1の挟持に力Faの方向性を利用しない場合は、下孔Waは閉じた貫通孔として形成するとよい。
【0044】
上述のように、本発明のパンチング加工方法の一態様は、パンチング加工で抜き出す製品P1を割り付けた板金のワークWPに対し、製品P1の外形線LN2の一部を外形線として共有するよう打ち抜き体WSを抜き戻し加工で圧入して保持部1を形成し、製品P1の外形線LN2における一部を除いた残部に沿って打ち抜き加工して製品P1をワークWPから分離し、ワークWPから分離した製品P1を、ワークWPに対し保持部1を介して保持させる。
【0045】
この一態様は、製品P1は、パンチング加工中、ワークWPにより分離した状態で保持部1を介して保持される。そのため、製品P1にジョイント痕は存在っせずジョイント痕の処理工程が不要になる。
【0046】
上記一態様において、抜き戻し加工の前に、ワークWPに対し、打ち抜き体WSを貫通する孔を下孔Waとして形成しておいてもよい。
【0047】
これにより、保持部1による製品P1の保持力が下孔Waの形状及び大きさによって制御できるので、ワークWPに対する製品P1の保持力を所望の大きさにできる。
【0048】
さらに、上記一態様において、一つの打ち抜き体WSの外形線LN2が複数の製品P1,P2の外形線LN2の一部を共有するよう保持部1を形成してもよい。
【0049】
これにより、製品の割付数に対し保持部1の数を少なくすることができ、製品の製造効率が向上する。
【0050】
また、上記一態様において、保持部1を、製品P1の角部PA1cに対応して形成する。
【0051】
これにより、保持部1を介して製品P1をより安定してワークWPに保持させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 第1保持部(保持部)
2 第2保持部(保持部)
3 第3保持部(保持部)
5 打ち抜き部
C 破断
Da ラップ寸法
Fa 力
KDS 金型装置
KD ダイ
KD1 ダイ本体
KD1a 孔
KD2 エジェクタ
KD3 戻しばね
KP パンチ
KP1 パンチガイド
KP2 パンチボディ
LN1 打ち抜き線
LN2 外形線
L1 距離
Ma せん断面
Mb 破断面
P1~P12,PA1,PB1 製品
PA1a,PA1b 入隅部
PA1c,PB1c 角部
PM パンチング加工方法
SP 間隙
W,WP ワーク
Wa 下孔
Wb 打ち抜き孔
Wc 隅部
WS1 被加工部
WSd 腕部
WSe 縁部
WS,WS11~WS14 打ち抜き体
φa 外径
φb 内径
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9