(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060478
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】賃貸物件の賃料を査定するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20240424BHJP
【FI】
G06Q50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167875
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】522410293
【氏名又は名称】スマサテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 延好
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L050CC27
(57)【要約】
【課題】賃貸物件の賃料査定の利用をより容易にする。
【解決手段】装置100は、対象物件を表す対象物件データを取得する(S201)。次に、装置100は、複数の比較物件から、対象物件との第1の類似性が所定の順位までのものを第1の組の比較物件として抽出する(S202)。装置100は、抽出された第1の組の比較物件に含まれる各比較物件について、当該対象物件の複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の当該第1の特徴の値との間の差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を算出して、第1の組の補正後比較物件を生成する(S203)。その後、生成された第1の組の補正後比較物件から、当該対象物件との第2の類似性が所定の順位までのものを第2の組の比較物件として抽出する(S204)。最後に、第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を査定賃料として算出する(S205)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
賃貸物件の賃料を査定するための方法であって、
サーバが、前記サーバとIPネットワークを介して通信する機器から、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データ又は前記対象物件データを識別するための入力を受信するステップと、
前記サーバが、前記サーバからアクセス可能に記憶された複数の比較物件から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第1の類似性が第1の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出するステップと、
前記サーバが、前記第1の組の比較物件の少なくとも一部に含まれる各比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の前記第1の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成するステップと、
前記サーバが、前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第2の類似性が第2の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出するステップと、
前記サーバが、前記第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を前記対象物件の査定賃料として算出して、前記機器に前記査定賃料を送信するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の組の比較物件は、500件以上1000件以下の比較物件を含む。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の組の比較物件は、50件以上150件以下の比較物件を含む。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部は、前記第1の組の補正後比較物件から、補正後の賃料と補正前の賃料との差が平均値又はその近似値から所定の閾値以上又は超である比較物件を少なくとも除外した一部である。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記第1の類似性は、前記対象物件との専有面積の差、築年数の差及び対象物件との物件間の距離のうちの少なくともいずれかを用いる所定の第1の式に基づいて算出される。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記第2の類似性は、前記対象物件との物件間の距離及び徒歩分数の差の少なくとも一方を用いる所定の第2の式に基づいて算出される。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記第1の特徴は、平米数、築年数、駅からの徒歩距離、バストイレ別か否か、及び宅配ボックスの有無のうちのいずれかである。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記第1の組の補正後比較物件に含まれる各補正後比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの前記第1の特徴と異なる第2の特徴の値と当該補正後比較物件の前記第2の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該補正後比較物件の賃料をさらに補正して当該補正後比較物件に関連づけて記憶するステップをさらに含む。
【請求項9】
サーバに、賃貸物件の賃料を査定するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記サーバとIPネットワークを介して通信する機器から、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データ又は前記対象物件データを識別するための入力を受信するステップと、
前記サーバからアクセス可能に記憶された複数の比較物件から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第1の類似性が第1の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出するステップと、
前記第1の組の比較物件の少なくとも一部に含まれる各比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の前記第1の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成するステップと、
前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第2の類似性が第2の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出するステップと、
前記第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を前記対象物件の査定賃料として算出して、前記機器に前記査定賃料を送信するステップと
を含む。
【請求項10】
賃貸物件の賃料を査定するためのサーバであって、
前記サーバとIPネットワークを介して通信する機器から、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データ又は前記対象物件データを識別するための入力を受信し、
前記サーバからアクセス可能に記憶された複数の比較物件から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第1の類似性が第1の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出し、
前記第1の組の比較物件の少なくとも一部に含まれる各比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の前記第1の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成して、前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第2の類似性が第2の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出し、
前記第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を前記対象物件の査定賃料として算出して、前記機器に前記査定賃料を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賃貸物件の賃料を査定するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
賃貸物件を管理する不動産管理会社では、各物件の賃料の査定業務が発生する。従来、客観的な根拠のある手法として、取引事例比較法が知られているものの、不動産管理会社が自社で取引事例比較法に基づく賃料査定を採用するためには、大量の計算を伴うことから、それらの計算を自動化する賃料査定システムを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
不動産管理会社向けに提供される賃料査定システムは存在するものの、十分に普及しておらず、その改善が求められている。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その課題は、賃貸物件の賃料を査定するための装置、方法又はそのためのプログラムにおいて、その利用がより容易となるよう、改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明の第1の態様は、賃貸物件の賃料を査定するための方法であって、サーバが、前記サーバとIPネットワークを介して通信する機器から、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データ又は前記対象物件データを識別するための入力を受信するステップと、前記サーバが、前記サーバからアクセス可能に記憶された複数の比較物件から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第1の類似性が第1の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出するステップと、前記サーバが、前記第1の組の比較物件の少なくとも一部に含まれる各比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の前記第1の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成するステップと、前記サーバが、前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第2の類似性が第2の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出するステップと、前記サーバが、前記第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を前記対象物件の査定賃料として算出して、前記機器に前記査定賃料を送信するステップとを含む。
【0006】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記第1の組の比較物件は、500件以上1000件以下の比較物件を含む。
【0007】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様の方法であって、前記第2の組の比較物件は、50件以上150件以下の比較物件を含む。
【0008】
また、本発明の第4の態様は、第1の態様の方法であって、前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部は、前記第1の組の補正後比較物件から、補正後の賃料と補正前の賃料との差が平均値又はその近似値から所定の閾値以上又は超である比較物件を少なくとも除外した一部である。
【0009】
また、本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様の方法であって、前記第1の類似性は、前記対象物件との専有面積の差、築年数の差及び対象物件との物件間の距離のうちの少なくともいずれかを用いる所定の第1の式に基づいて算出される。
【0010】
また、本発明の第6の態様は、第1から第4のいずれかの態様の方法であって、前記第2の類似性は、前記対象物件との物件間の距離及び徒歩分数の差の少なくとも一方を用いる所定の第2の式に基づいて算出される。
【0011】
また、本発明の第7の態様は、第1のから第4のいずれかの態様の方法であって、前記第1の特徴は、平米数、築年数、駅からの徒歩距離、バストイレ別か否か、及び宅配ボックスの有無のうちのいずれかである。
【0012】
また、本発明の第8の態様は、第7の態様の方法であって、前記第1の組の補正後比較物件に含まれる各補正後比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの前記第1の特徴と異なる第2の特徴の値と当該補正後比較物件の前記第2の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該補正後比較物件の賃料をさらに補正して当該補正後比較物件に関連づけて記憶するステップをさらに含む。
【0013】
また、本発明の第9の態様は、サーバに、賃貸物件の賃料を査定するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記サーバとIPネットワークを介して通信する機器から、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データ又は前記対象物件データを識別するための入力を受信するステップと、前記サーバからアクセス可能に記憶された複数の比較物件から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第1の類似性が第1の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出するステップと、前記第1の組の比較物件の少なくとも一部に含まれる各比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の前記第1の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成するステップと、前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第2の類似性が第2の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出するステップと、前記第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を前記対象物件の査定賃料として算出して、前記機器に前記査定賃料を送信するステップとを含む。
【0014】
また、本発明の第10の態様は、賃貸物件の賃料を査定するためのサーバであって、前記サーバとIPネットワークを介して通信する機器から、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データ又は前記対象物件データを識別するための入力を受信し、前記サーバからアクセス可能に記憶された複数の比較物件から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第1の類似性が第1の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出し、前記第1の組の比較物件の少なくとも一部に含まれる各比較物件について、前記対象物件の前記複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の前記第1の特徴の値との間に差異がある場合、前記差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成して、前記第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、前記対象物件データに基づいて、前記対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部又は前記第2の類似性が第2の所定の値以上又は超である比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出し、前記第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を前記対象物件の査定賃料として算出して、前記機器に前記査定賃料を送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、抽出した複数の比較物件のそれぞれについて、対象物件との差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正し、さらに一部の比較物件を抽出して、各比較物件の補正後賃料を用いて対象物件の賃料査定することによって、賃貸物件の賃料を査定するための装置等の利用がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる賃料を算出する方法の流れを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる物件データ入力画面の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる比較物件の補正前賃料及び補正後賃料の分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の一実施形態にかかる装置を示す。装置100は、賃貸物件の賃料を査定するための装置であり、不動産管理会社が用いる会社端末110とインターネット等のIPネットワークを介して通信する。
【0019】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理又は各動作を行うためのプログラムを処理部102において実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース104等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102の少なくとも1つのプロセッサにおいて当該プログラムに含まれる命令を実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース104に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0020】
まず、装置100は、査定の対象である対象物件の複数の特徴を表す対象物件データを取得する(S201)。対象物件データは、たとえば、会社端末110を用いて不動産管理会社の担当者が入力し、当該入力を装置100が受信することによって取得することができる。
【0021】
会社端末110による入力は、物件データ入力画面表示情報を、たとえばHTML形式のファイルとして送信して、会社端末110の表示画面にウェブブラウザ上で表示される入力画面(
図3参照)から行ったり、会社端末110にインストールされたアプリケーション(以下「アプリ」とも呼ぶ。)を動作させ、当該アプリ上で表示される入力画面から行ったりすることができる。なお、「入力画面」とは、ウェブブラウザ上で表示される場合にはウェブページ、モーダルウィンドウ、ポップアップウィンドウ等のさまざまな形式を採用することができ、アプリ上で表示される場合にはアプリの一画面とすることができる。いずれにおいても、対象物件データを入力するための入力欄を有する領域を含む画面であれば、物件データ入力画面に該当する。
【0022】
対象物件データは、会社端末110に表示される検索画面から検索を行い、検索結果の中から対象物件を選択する入力を装置100が受信し、当該入力によって識別されるデータとして間接的に取得されてもよい。この場合、装置100は、当該入力に基づいて、記憶部103に記憶された対象物件データを識別して取得すればよい。
【0023】
また、対象物件データは、不動産管理会社の会社端末110からではなく、さまざまな機器より取得可能である。一例として、対象物件データは、不動産管理会社が管理する賃貸物件の複数の特徴を表す賃貸物件データが記憶されたシステムから、装置100が受信してもよい。たとえば、当該システムにおいて、賃貸物件の賃貸状況が空室又は空室予定となったことに応じて、当該賃貸物件を対象物件として、対象物件データが自動的に装置100に送信され、装置100から、当該賃貸物件に関する査定賃料を当該システムに送信されるようにしてもよい。このようにすることで、最新の査定賃料を当該システムにおいて記憶することができる。また、装置100が賃料査定のためのAPIを提供している場合に当該APIを呼び出すためのパラメータとして所要の対象物件データが装置100によって取得されてもよい。
【0024】
対象物件データは、対象物件の住所又は最寄駅をその特徴として含む。最寄駅を含む場合には、さらに沿線、当該最寄駅から当該対象物件までの徒歩による分数(以下「徒歩分数」とも呼ぶ。)を含んでもよい。また、対象物件データは、マンション、アパート、戸建て等という物件種別、分譲のみか分譲を除くか分譲を含むかの分譲指定、RC造、軽量鉄骨造等の構造、1R、1LDK等の間取り、専有面積の値又は範囲、築年数の値又は範囲などをさらにその特徴として含んでもよい。
【0025】
次に、装置100は、複数の比較物件から、対象物件データに基づいて、対象物件との第1の類似性が第1の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出する(S202)。複数の比較物件を表す比較物件データは、記憶部103に記憶しておけばよい。第1の類似性は、一例として、対象物件データに含まれる最寄駅又は対象物件データに含まれる住所から推測される最寄駅が同一である比較物件について、所定の第1の式に基づいて算出される。所定の第1の式は、より具体的には、比較物件の複数の特徴のそれぞれについて、対象物件との間の差に応じた値を計算し、算出された複数の値に基づいて、第1のスコアを算出するものとすることができる。装置100が提供する賃料査定サービスを用いるユーザーが端末110から第1の組の比較物件を抽出するための条件を指定するのではなく、第1の類似性に基づいて自動的に抽出が行われるようにすることが好ましい。
【0026】
対象物件データが、住所、専有面積、徒歩分数及び築年数を含む場合、一例として以下の式によって第1のスコアを算出することができる。この式を用いる場合、第1のスコアが小さいほど類似すると評価できるため、第1の類似性を第1のスコアの逆数とすることができる。
第1のスコア=|専有面積の差|×3/1+|徒歩分数の差|×3/1
+|築年数の差|×2/1+|物件間の距離|×1/100
専有面積の差及び徒歩分数の差は、類似性に同程度の影響を与えるものとして評価し、築年数の差はこれらよりも小さい影響を与えるものとして評価している。また、物件間の距離は、メートル単位で100m、200mのように値が大きくなることから100で割ることによって調整している。徒歩分数は、対象物件データに特徴として含まれない場合、当該対象物件データに含まれる最寄駅又は当該対象物件データに含まれる住所から推測される最寄駅と、当該対象物件データに含まれる住所とを用いて算出してもよい。ここでは、専有面積の差、徒歩分数の差、築年数の差及び物件間の距離のすべてを用いる式を例示したが、これらのうちのいずれかを用いる式としてもよい。
【0027】
別の例として、対象物件データが、住所、専有面積、及び築年数を含む場合、以下の式によって第1のスコアを算出することができる。
第1のスコア=|専有面積の差|×3/1+|築年数の差|×2/1
+|物件間の距離|×1/100
【0028】
たとえば、第1の類似性が上位700位までの比較物件又はその少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出してもよい。代替的に、順位ではなく、第1の類似性が0.01等の所定の値(以下「第1の所定の値」とも呼ぶ。)以上又は超の比較物件又はその少なくとも一部を第1の組の比較物件として抽出してもよい。第1の組の比較物件は、500件以上1000件以下の比較物件を含むことが好ましい。
【0029】
そして、装置100は、抽出された第1の組の比較物件に含まれる各比較物件について、当該対象物件の複数の特徴のうちの第1の特徴の値と当該比較物件の当該第1の特徴の値との間に差異がある場合、当該差異に応じた金額で当該比較物件の賃料を補正した補正後賃料を当該比較物件に関連づけて記憶して、第1の組の補正後比較物件を生成する(S203)。
【0030】
賃料の補正は、第1の特徴が階数又は方角である場合、予め定めた特徴と補正係数との対応づけを参照して、取得した補正係数を用いて行うことができる。たとえば、比較物件の階数が1階少ない場合、階数が高い方が賃料が一般に高くなることから、賃料の0.7%を加算して補正してもよい。
【0031】
賃料の補正は、上述の対応づけを参照するほかに、又はそれに加えて、抽出された第1の組の比較物件について、賃料を目的変数、複数の特徴を説明変数とする重回帰分析を行って各特徴の係数を取得し、各比較物件について、各特徴の値が対象物件の値である場合の推定賃料又はその近似値を算出することによって行うことができる。複数の特徴にバストイレが別か否か、宅配ボックスの有無等の質的変数が含まれる場合、ダミー変数に変換する。重回帰分析の結果として取得された係数のうちいずれかが所定の範囲の範囲外である場合、当該所定の範囲の上限又は下限の値又はその近似値を係数として用いてもよい。
【0032】
次いで、必要に応じて、補正後の賃料と補正前の賃料との差が平均値又はその近似値よりも比較的離れた1又は複数の比較物件を除外してもよい。具体的には、当該差が平均値又はその近似値から標準偏差の1倍等の所定の閾値(以下「第1の所定の閾値」とも呼ぶことがある。)以上離れている1又は複数の比較物件を少なくとも除外してもよい。そして、第1の組の比較物件から当該1又は複数の比較物件を除外し、再度重回帰分析を用いて第1の組の補正後比較物件を再度生成してもよい。あるいは、再度重回帰分析は行わずに、第1の組の補正後比較物件から補正前後の賃料の差が平均値又はその近似値よりも大きく離れた1又は複数の比較物件を除外して次の工程に進んでもよい。
【0033】
その後、生成された第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部から、当該対象物件データに基づいて、当該対象物件との第2の類似性が第2の所定の順位までの比較物件のうちの少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出する(S204)。第2の類似性は、たとえば、第1の組の補正後比較物件の少なくとも一部のそれぞれについて、所定の第2の式に基づいて算出される。所定の第2の式は、具体的には、比較物件の複数の特徴のそれぞれについて、対象物件との間の差に応じた値を計算し、算出された複数の値に基づいて、第2のスコアを算出するものとすることができる。装置100が提供する賃料査定サービスを用いるユーザーが端末110から第2の組の比較物件を抽出するための条件を指定するのではなく、第2の類似性に基づいて自動的に抽出が行われるようにすることが好ましい。
【0034】
一例として、第2のスコアを物件間の距離及び徒歩分数の差の少なくとも一方に応じて算出することができる。物件間の距離又は徒歩分数の差が大きければ第2のスコアも大きくなるものとすれば、第2のスコアが小さいほど類似すると評価できるため、第2の類似性を第2のスコアの逆数とすることができる。
【0035】
必要に応じて、第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値から補正後賃料が大きく離れた1又は複数の比較物件を第2の組の比較物件に含めなくてもよい。具体的には、補正後賃料が平均値又はその近似値から標準偏差の4倍等の所定の閾値(以下「第2の所定の閾値」とも呼ぶことがある。)以上離されている1又は複数の比較物件を第2の組の比較物件に含めなくてもよい。第2の組の比較物件は、当該第2の組の比較物件の抽出までに対象物件と類似する物件が複数回の処理を経て抽出されているため、第1の組の補正後比較物件から第1の所定の閾値を用いた除外を行う場合には、第2の組の比較物件からの除外に用いる第2の所定の閾値を当該第1の所定の閾値よりも大きく定めることが好ましい。
【0036】
たとえば、第2の類似性が上位100位までの比較物件又はその少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出してもよい。代替的に、順位ではなく、第2の類似性が所定の値(以下「第2の所定の値」とも呼ぶことがある。)以上又は超の比較物件又はその少なくとも一部を第2の組の比較物件として抽出してもよい。第2の組の比較物件は、50件以上150件以下の比較物件を含むことが好ましい。
【0037】
最後に、当該第2の組の比較物件の補正後賃料の平均値又はその近似値を当該対象物件の査定賃料として算出して、会社端末110に当該査定賃料を送信する(S205)。
【0038】
図4は、本発明の実施形態にかかる比較物件の補正前賃料及び補正後賃料の分布図を模式的に示す。これは、東京都内の2LDKの物件を対象物件とした例であり、第1の組の比較物件の補正前賃料、第1の組の比較物件の補正後賃料及び第2の組の比較物件の補正後賃料の分布をそれぞれ点線、一点鎖線及び実線で示している。重回帰分析を用いた補正によって分布が移動し、対象物件との類似性が高いものを抽出することによって、分布の標準偏差が小さくなる様子を示している。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において、多数の比較物件を記憶部103に記憶しておき、それらの中から第1の組の比較物件が抽出されるが、記憶部103に記憶される複数の比較物件は、装置100が、複数の賃貸物件に関する情報が掲載された1又は複数のウェブサイトからスクレイピングによって取得されることが好ましい。用いる比較物件が古くなってしまうと査定精度が下がるためである。
【0040】
なお、上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0041】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0042】
また、
図2において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法が図示された手順で必ず開始され、図示された手順で必ず終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0043】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
110 端末
300 物件データ入力画面