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  • 特開-難燃防錆フィルム 図1
  • 特開-難燃防錆フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060483
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】難燃防錆フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240424BHJP
   C09K 21/08 20060101ALI20240424BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20240424BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B32B27/18 B
C09K21/08
C09K21/12
C23F11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167883
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000100849
【氏名又は名称】株式会社アイセロ
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑也
【テーマコード(参考)】
4F100
4H028
4K062
【Fターム(参考)】
4F100AA02B
4F100AA05
4F100AA05B
4F100AH03A
4F100AH05
4F100AH05B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100BA02
4F100CA08
4F100CA08B
4F100CA14A
4F100GB16
4F100JB02
4F100JD16A
4F100JJ07
4F100JN01
4H028AA10
4H028AA25
4H028AA34
4K062AA05
4K062BA11
4K062BB12
(57)【要約】
【課題】難燃防錆フィルムとして、十分な防錆性と十分な難燃性を共に備え、さらに光透過性と視認性に優れた難燃防錆フィルムを得ること。
【解決手段】下記ポリオレフィン系樹脂層1と下記ポリオレフィン系樹脂層2を有し、全体の厚さが50~150μmであり、難燃防錆フィルム全層中にハロゲン系難燃剤を2.5重量%以上含有する、難燃防錆フィルム。
(ポリオレフィン系樹脂層1)
アミン系及び/又はアンモニウム系気化性防錆剤を含有するポリオレフィン系樹脂からなる層
(ポリオレフィン系樹脂層2)
ハロゲン系難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂からなる層
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ポリオレフィン系樹脂層1と下記ポリオレフィン系樹脂層2を有し、全体の厚さが50~150μmであり、難燃防錆フィルム全層中にハロゲン系難燃剤を2.5重量%以上含有する、難燃防錆フィルム。
(ポリオレフィン系樹脂層1)
アミン系及び/又はアンモニウム系気化性防錆剤を含有するポリオレフィン系樹脂からなる層
(ポリオレフィン系樹脂層2)
ハロゲン系難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂からなる層
【請求項2】
FMVSS No.302に適合する請求項1に記載の難燃防錆フィルム。
【請求項3】
酸素指数が26以上である請求項1又は2に記載の難燃防錆フィルム。
【請求項4】
DIN4102-1B2に適合する請求項1又は2に記載の難燃防錆フィルム。
【請求項5】
全光線透過率が40%以上である請求項1又は2に記載の難燃防錆フィルム。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂層2が、亜硝酸塩を含有する請求項1又は2に記載の難燃防錆フィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の難燃防錆フィルムから形成され、ポリオレフィン系樹脂層1側の面が包装される物品側である難燃防錆用包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃防錆フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製品を包装する等の材料として使用するために、防錆剤の長期的な効果を得る方法として、加工し易い点で優れる低密度ポリエチレンに代表される無極性のポリオレフィン樹脂に、防錆剤を分散・担持させた防錆フィルムが知られている。防錆フィルムにポリオレフィン樹脂を使用すると、フィルム等に加工する際の加熱温度においても防錆剤が融解せずに粒子の状態のまま存在させることや、気化・消失させずに存在させることができる。
一般に、工場内において、高温での加工や、火の気を使用する加工を行う場所の近くに、ポリオレフィン樹脂等の組成物からなる製品を置くことは好ましくない。但し、一時的にもそのような場所の近くに樹脂組成物からなる製品を置く場合があり、このようなときに特に細心の注意を払う必要があった。
【0003】
例えば特許文献1に記載の防錆包装材は、防錆フィルム層を有する防錆包装材において、該防錆フィルム層が、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に気化性防錆剤を含有する内層と、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に被酸化性金属粉末と酸素吸収剤と水分吸収剤を含有する外層とからなるものであり、いずれかの層には限定されないが、難燃剤や、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤を配合できるに留まる。
さらに特許文献2には、水蒸気バリア樹脂層と酸素バリア樹脂層とを有する外層と、気化性防錆剤を含有する熱融着性樹脂層からなる内層からなる防錆フィルムであって、内層に難燃剤や、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤を配合できることが記載されているに留まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-254350号公報
【特許文献2】特開2012-061731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、難燃防錆フィルムとして、十分な防錆性と十分な難燃性を共に備え、さらに光透過性と視認性に優れた難燃防錆フィルム、又は、光透過性が小さい難燃防錆フィルム表面上に形成した印刷や筆記による文字や模様等を見やすくした難燃防錆フィルムを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の手段で解決することができることを見出し、本発明をなすに至った。
1.下記ポリオレフィン系樹脂層1と下記ポリオレフィン系樹脂層2を有し、全体の厚さが50~150μmであり、難燃防錆フィルム全層中にハロゲン系難燃剤を2.5重量%以上含有する、難燃防錆フィルム。
(ポリオレフィン系樹脂層1)
アミン系及び/又はアンモニウム系気化性防錆剤を含有するポリオレフィン系樹脂からなる層
(ポリオレフィン系樹脂層2)
ハロゲン系難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂からなる層
2.FMVSS No.302に適合する1に記載の難燃防錆フィルム。
3.酸素指数が26以上である1又は2に記載の難燃防錆フィルム。
4.DIN4102-1B2に適合する1~3のいずれかに記載の難燃防錆フィルム。
5.全光線透過率が40%以上である1~4のいずれかに記載の難燃防錆フィルム。
6.ポリオレフィン系樹脂層2が、亜硝酸塩を含有する1~5のいずれかに記載の難燃防錆フィルム。
7.1~6のいずれかに記載の難燃防錆フィルムから形成され、ポリオレフィン系樹脂層1側の面が包装される物品側である難燃防錆用包装袋。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な防錆性と十分な難燃性を共に備え、さらに光透過性に優れるために包装袋等の包装用途に用いたときの被包装物の視認性に優れた難燃防錆フィルム、又は、光透過性が低いときに、難燃防錆フィルム表面上に形成した印刷や筆記による文字や模様等を見やすくした難燃防錆フィルムを得ることができた。中でも難燃性については、FMVSSに適合することを前提とし、さらに、場合によっては酸素指数26以上及び/又はDIN4102-1B2(以下場合により「DIN4102」と記載することがある)にも適合する難燃防錆フィルムを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】難燃防錆フィルムの全層厚さとフィルム全層中の難燃剤濃度と酸素指数の関係を示す図。
図2】難燃防錆フィルムの全層厚さとフィルム全層中の難燃剤濃度とDIN4102-1B2の適合と非適合との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、特定の防錆剤を含有するポリオレフィン系樹脂層と、特定の難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂層を有する難燃防錆フィルムであることを基礎とする。
そして、本発明の難燃防錆フィルムを袋状に加工して、防錆を行うべき対象の物品を包装するための難燃防錆用包装袋等とする。
以下に本発明の難燃防錆フィルム及び難燃防錆用包装袋を説明する。
なお、本明細書において、難燃防錆フィルムを単に「フィルム」と記載するときがあり、難燃防錆フィルム全層は、難燃防錆フィルムの全体の層を意味し、難燃防錆フィルム全層を単に「フィルム全層」と記載するときがある。
【0010】
(ポリオレフィン系樹脂層1用及びポリオレフィン系樹脂層2用のポリオレフィン系樹脂)
本発明中のポリオレフィン系樹脂層1及びポリオレフィン系樹脂層2に使用されるポリオレフィン系樹脂は、容器や包装フィルム等に使用されるものを使用できる。
そしてポリオレフィン系樹脂層1及びポリオレフィン系樹脂層2は、下記の樹脂の中から、それぞれ独立して1種以上を採用することができる。そのため、ポリオレフィン系樹脂層1及びポリオレフィン系樹脂層2は、同じポリオレフィン系樹脂からなる組成物を使用しても良く、異なる組成物を使用しても良い。
ポリオレフィン系樹脂として、ポリオレフィン系重合体、つまり、オレフィンの単独重合体、及び/又は、オレフィンを単量体として用いた共重合体から選ばれた1種以上を選択して使用することができる。
【0011】
ポリオレフィン系重合体を構成するオレフィン(オレフィン単量体)としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。従って、ポリオレフィン系重合体としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、1-ブテン系重合体、1-ヘキセン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体等が挙げられる。これら重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。すなわち、ポリオレフィン系重合体は各種の重合体の混合物であっても良い。
上記のうち、エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体(ポリエチレン)、及び、エチレンと他の単量体との共重合体(エチレン共重合体)が挙げられる。エチレン単独重合体及びエチレン共重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
また、エチレン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のエチレンとC3-C8のα-オレフィンとの共重合体や、エチレンとシクロペンタジエンやノルボルネン等の環状オレフィンを共重合させたエチレン-環状オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル-メチルメタクリレート共重合体等のエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸誘導体とエチレンとの共重合体等、及びそれらのブレンド物が挙げられる。
なお、エチレン共重合体に含まれるエチレン単位(エチレンに由来する構成単位)は、全構成単位数のうち50%よりも大きければよいが(通常99.999%以下)、例えば、全構成単位数のうち80~99.999%とすることができ、また90~99.995%とすることができ、さらには99~99.990%とすることができる。
【0012】
また、プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、及び、プロピレンと他の単量体との共重合体(プロピレン共重合体)が挙げられる。プロピレン共重合体としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。
なお、プロピレン共重合体に含まれるプロピレン単位(プロピレンに由来する構成単位)は、全構成単位数のうち50%以上(通常99.999%以下)であればよいが、例えば、全構成単位数のうち80~99.999%とすることができ、また90~99.995%とすることができ、さらには99~99.990%とすることができる。
【0013】
また、ポリオレフィン系重合体には、本発明の目的を害しない範囲で、オレフィンを除く単量体に由来する構成単位を含んでもよい。オレフィン以外の単量体としては、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等)、不飽和カルボン酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸モノエステル等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
なお、ポリオレフィン系重合体に含まれるオレフィン以外の単量体に由来する構成単位は、含まれるとしても全構成単位数のうち40%以下(通常0.001%以上)が好ましい。例えば、全構成単位数のうち0.001~25%とすることができ、また0.005~15%とすることができ、さらには0.01~10%とすることができる。
ポリオレフィン系樹脂の密度としては加工性の観点から0.880~0.960g/cmが好ましく、0.890~0.950g/cmがより好ましい。また、機械強度や加工性の観点から、メルトフローレート値(MFR)は0.1~30.0g/10minが好ましく、1.0~10.0g/10minがより好ましく、1.5~5.0g/10minが更に好ましく、MFRがこの範囲であると溶融加工時に適度な粘度を持つことにより、粒子状の防錆剤を樹脂中に包含及び被覆することが可能となり、樹脂成形体から防錆剤が脱落することを防ぐことが可能となる。
【0014】
(ポリオレフィン系樹脂層1用のポリオレフィン系樹脂)
上記ポリオレフィン系樹脂のうち、例えば難燃防錆用包装袋の用途として用いる場合には、製品コストや、製造の簡便性からみてポリエチレンを選択することが適当であり、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等、各種のポリエチレンの特性を考慮して採用することができる。そして、これらのポリエチレンから1種を選択して使用しても良く、2種以上をブレンドしても良い。
【0015】
(ポリオレフィン系樹脂層2用のポリオレフィン系樹脂)
上記ポリオレフィン系樹脂のうち、例えば難燃防錆用包装袋の用途として用いる場合には、製品コストや、製造の簡便性からみてポリエチレンを選択することが適当であり、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等、各種のポリエチレンの特性を考慮して採用することができる。そして、これらのポリエチレンから1種を選択して使用しても良く、2種以上をブレンドしても良い。
【0016】
(ポリオレフィン系樹脂層1(内層))
ポリオレフィン系樹脂層1は上記のポリオレフィン系樹脂に対してアミン系及び/又はアンモニウム系気化性防錆剤を含有してなる層である。本発明の難燃防錆フィルムを用いて袋状に加工し、難燃防錆用包装袋としたときには、ポリオレフィン系樹脂層1は内層側になり、被包装物の物品側に向く内層となる。
このアミン系及び/又はアンモニウム系気化性防錆剤としては、公知の防錆剤でよく、脂肪族カルボン酸アンモニウム塩、脂肪族カルボン酸アミン塩、芳香族カルボン酸アンモニウム塩、芳香族カルボン酸アミン塩のいずれでも良い。
アンモニウム系気化性防錆剤としては、例えば、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、オレイン酸、オレイル酸、イソヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、2-プロピルヘプタン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、2-ブチルオクタン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二カルボン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩や、安息香酸、アミノ安息香酸、サリチル酸、p-tert-ブチル安息香酸、o-スルホ安息香酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸のアンモニウム塩、上記の酸のシクロヘキシルアミン塩や、ジシクロヘキシルアミン塩から、1種以上を採用できる。
また、アミン系気化性防錆剤としては、モノ-、ジ-、トリ-エタノールアミン、n-、ジ-、tert-ブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、モノ-、ジ-シクロヘキシルアミン、イソプロピルアミン、オレイルアミン、ナフチルアミン、ジ-フェニルアミンの燐酸、亜硝酸、炭酸、カルボン酸塩より選ばれた有機アミン塩から、1種以上を採用できる。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂層1中のアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の含有量としては、ポリオレフィン系樹脂層1中0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上が更に好ましい。また5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、2.0重量%以下が更に好ましい。本発明の場合、0.1重量%未満であると場合によっては十分な防錆性を発揮させることが困難になる可能性があり、5.0重量%を超えると成形加工が困難になる場合がある。
【0018】
アミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤は粒子状の形状で、又は樹脂層中に相溶した状態でポリオレフィン系樹脂層1に含有されている。粒子状であっても、又は相溶していても良い。
この範囲の平均粒径及び/又は最大粒径であると、ポリオレフィン系樹脂層1の表面にアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の粒子が、樹脂に覆われた状態での凸部が形成される。このような凸部の存在によって、防錆のためのガスをより多く発生させることができ、防錆性の向上に寄与できることになる。また、このようなフィルム表面の凸部により防錆対象の物品等に対する密着防止の効果があり、かつ防錆対象の物品にアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の粒子が直に接触して、防錆対象の物品の表面を汚染することを防止できる。
また、アミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤を樹脂層中に相溶した状態で含有したとき、及び/又は上記のように粒子状で樹脂層中に含有したときには、その気化性防錆剤の種類毎の揮発性等の特性により、気化性を調整できる。
【0019】
但し、ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂にアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の粒子を配合し、樹脂を溶融・混練し、例えばシート状等に成形する一連の工程を経ることによって、配合前のアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の粒子は、粉砕されて平均粒径が小さくなることがある。
このため、本発明における上記平均粒径は、ポリオレフィン系樹脂層1を形成した後に、ポリオレフィン系樹脂層1に含有されるアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の粒子に関する値である。
この特定の粒子径を持つ又は樹脂中に相溶したアミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤を含有することにより、発生する防錆ガスの量を制御することができ、防錆効果を長期にわたって安定的に維持できる。
また、詳細なメカニズムは定かではないが、アミン系及び/又はアンモニア系気化性防錆剤の粒径を特定の範囲にすることで、フィルム表面に凸部が形成され、それにより長期的な防錆効果を発現していると考えられる。
ポリオレフィン系樹脂層1には、防錆剤として、更にベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、無機酸の金属塩、カルボン酸、カルボン酸金属塩を含有しても良い。
【0020】
(ポリオレフィン系樹脂層2(外層))
ポリオレフィン系樹脂層2は上記のポリオレフィン系樹脂に対してハロゲン系難燃剤を含有してなる層である。本発明の難燃防錆フィルムを用いて包装材としたときに、このような難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂層2を外層、つまり、包装される物品側の内側ではない外側の層にすることが好ましい。それにより、その外側の層に着火等があっても、内側の層や包装される物品に影響を与えることがなく難燃効果を発揮することが期待できる。
ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン元素として例えば公知の塩素系難燃剤や臭素系難燃剤から選ばれた1種以上を使用できる。プラスチックの中でも特に燃えやすいオレフィン系樹脂への難燃効果の付与には、難燃効果が高い臭素系難燃剤を選定することがより好ましい。
塩素系難燃剤として、塩素化ポリエチレン、塩素化パラフィン等を使用でき、臭素系難燃剤として、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、テトラブロモビスフェノ-ルS、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン(BPBPE)、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂(TBBAエポキシ)、テトラブロモビスフェノールAカーボネート(TBBA-PC)、エチレン(ビステトラブロモフタル)イミド(EBTBPI)、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(TTBPTA)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA(DBP-TBBA)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールS(DBP-TBBS)、臭素化ポリフェニレンエーテル(ポリ(ジ)ブロモフェニレンエーテルなどを含む)(BrPPE)、臭素化ポリスチレン(ポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレン、架橋臭素化ポリスチレン等)(BrPS)、臭素化架橋芳香族重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化スチレン-無水マレイン酸重合体、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマー、テトラブロモビスフェノールS(TBBS)、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(TTBNPP)、ポリブロモトリメチルフェニルインダン(PBPI)、及びトリス(ジブロモプロピル)-イソシアヌレート(TDBPIC)等を使用できる。
本発明は、難燃防錆フィルムの全層中にハロゲン系難燃剤を2.5重量%以上含有する。2.5重量%未満であると難燃防錆フィルムは十分な難燃性を発揮できない可能性がある。
本発明の難燃防錆フィルム全体が視認性を有し、難燃防錆フィルムで包装した被包装物を目視により確認できることや、難燃防錆フィルムを通した先の文字や模様等を確認できることを求める場合には、その難燃防錆フィルムの全光線透過率を40%以上にすることが好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましく、70%以上が最も好ましい。
このような全光線透過率の範囲にするには、難燃防錆フィルムの全層中のハロゲン系難燃剤の含有量を2.5~30.0重量%にすることが好ましい。中でも、全光線透過率をより高くするには、25.0重量%以下がより好ましく、20.0重量%以下が更に好ましく、17.0重量%以下が最も好ましい。なお難燃防錆フィルムの全層中のハロゲン系難燃剤の含有量を2.5~30.0重量%にする場合には、難燃防錆フィルムの全層の厚さを125μm以下にすることが好ましい。
また、その全光線透過率を高くはせず、全光線透過率が低下しても、その低下に代えて、難燃防錆用包装袋に加工をして、内部に被包装物を入れたときには、外部から物品を隠蔽することができる効果や、着色料等を添加せずに白色化できる。そして、得られた全光線透過率が小さい難燃防錆フィルムには、模様形成やバーコード等印刷や筆記等をして、何らかの表示等をしたときの、その表示の識別性を向上させたり、難燃防錆フィルムの表裏を区別しやすくできる効果を得ることができる。
このような表示の識別性の向上や難燃防錆フィルムの表裏を区別しやすくできる効果を得るには、難燃防錆フィルムの全層中のハロゲン系難燃剤の含有量は、30.0重量%以上が好ましく、33.0重量%以上がより好ましく、35.0重量%以上が更に好ましく、37重量%以上が最も好ましい。なお、ハロゲン系難燃剤の含有量が30.0重量%のときには、難燃防錆フィルムの全層の厚さが130μm以上であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂層2中の難燃剤の濃度が高くなり白色化をし、難燃防錆フィルム全体としての全光線透過率が低下する。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂層2には、本発明による効果を毀損しない範囲に限り、上記のハロゲン系難燃剤ではない下記の他の難燃剤を含有しても良いが、含有しなくても良い。
他の難燃剤としては、低級リン酸塩、メラミン系リン化合物、ポリリン酸塩、赤リン、縮合リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合型リン酸エステル等のリン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属化合物、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、メタ錫酸、酸化錫、三酸化モリブデン等のモリブデン化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物等、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との塩等が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂層2には、防錆剤を含有させなくても、防錆難燃フィルム全体としては十分な防錆性を発揮できるが、ポリオレフィン系樹脂層2にも防錆剤を含有させてもよい。
このとき、ポリオレフィン系樹脂層2には、防錆剤として、亜硝酸金属塩等の亜硝酸塩や炭酸の金属塩、カルボン酸やカルボン酸の金属塩から選ばれた1種以上を含有することができる。
これらの防錆剤は気化性防錆剤ではないので、気化することにより、難燃防錆フィルムで包装された空間内に気化した防錆剤を存在させるものではない。亜硝酸金属塩を含有したポリオレフィン系樹脂層2を外層にして包装袋等としたときには、外気の湿気が包装内に取り込まれることにより、外層内の亜硝酸金属塩と内層内のアミン及び/又はアンモニア系気化性防錆剤が反応し、包装内にアミン及び/又はアンモニア系気化性防錆剤が気化することを促進し、防錆効果を発揮させることができる。さらに、包装内に亜硝酸を発生させることにより、防錆効果を向上させることができる。
亜硝酸金属塩としては、亜硝酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等から選ばれた1種以上を採用することができ、炭酸の金属塩としてはカリウム塩やその水和物が挙げられる。
【0023】
カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸及び/又は芳香族カルボン酸を使用できる。
カルボン酸としては、イソ酪酸、メタクリル酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、オレイン酸、オレイル酸、イソヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、2-プロピルヘプタン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、2-ブチルオクタン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二カルボン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸や、安息香酸、アミノ安息香酸、サリチル酸、p-tert-ブチル安息香酸、o-スルホ安息香酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸から、1種以上を採用できる。
カルボン酸金属塩としては、脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩及び/又は芳香族のカルボン酸アルカリ金属塩を使用できる。
カルボン酸アルカリ金属塩としては、フタル酸、安息香酸、ラウリン酸、デカン酸、ノナン酸、オクタン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、セバシン酸、アジピン酸等のアルカリ金属塩を採用できる。
これらのカルボン酸金属塩のなかでも、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸カリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、p-tertブチル安息香酸ナトリウム、p-ニトロ安息香酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、酒石酸ナトリウムを採用することが好ましい。又、これらの中でも炭素数12以下の飽和モノカルボン酸のナトリウム塩を採用することができる。
【0024】
また、これらカルボン酸アルカリ金属塩以外に、例えば安息香酸やニトロ安息香酸などの遊離のカルボン酸、亜硝酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等のカルボン酸以外の酸やその塩、リン酸、ホウ酸、ケイ酸、ホウケイ酸など、無機酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属等の塩を含有しても良いが、含有しなくても良い。
【0025】
防錆剤の配合量としては、防錆対象の金属製品と、要求される防錆効果により適切な量は異なるが、一般的に少なすぎると防錆成分が広範囲に分散されず十分な防錆効果が得られない。逆に多すぎると難燃防錆フィルムの物理的強度に悪影響を及ぼすことで十分な防錆効果が得られない場合がある。
そのため、防錆性として安定した効果を得るためには、これらの防錆剤をポリオレフィン系樹脂層2に対して0.05重量%以上含有させてもよく、0.10重量%以上が好ましく、0.50重量%以上がより好ましく、0.80重量%以上が更に好ましい。また、2.00重量%以下が好ましく、1.50重量%以下がより好ましく、1.30重量%以下が更に好ましい。
【0026】
(ポリオレフィン系樹脂層1とポリオレフィン系樹脂層2に共通して添加できる物質)
ポリオレフィン系樹脂層1とポリオレフィン系樹脂層2それぞれに独立して添加できる共通する物質としては、本発明による効果を毀損しない範囲において、アンチブロッキング剤(AB剤)、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸素吸収剤、酸吸収剤、核形成剤、衝撃強度増強剤、可塑剤、離型剤、着色剤、蛍光剤、相溶化剤、防曇剤、充填剤、助色剤、分散剤、安定剤、改質剤、及び抗菌・防かび剤、pH調整剤等の公知の添加剤をポリオレフィン系樹脂層1及び2に独立して添加することができる。但し、ポリオレフィン系樹脂層1やポリオレフィン系樹脂層2が含有する他の成分と反応しないこと、ブリードアウト等して、例えば被包装物を汚染等しないことが必要である。
なお、防錆剤を樹脂層中に保持させることを目的として、アイオノマー樹脂や官能基含有ポリオレフィン樹脂を樹脂層1や樹脂層2に配合しても良く、しなくても良い。本発明によれば十分に長期の防錆性を発揮できる。
【0027】
また、本発明による効果を毀損しない範囲において、粒子状物質を含有してもよい
そのような粒子状物質としては、防錆剤ではない、水不溶性の無機粒子及び樹脂粒子のいずれでも良い。ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)粒子、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の公知の樹脂からなる粒子を採用でき、粒子表面は多孔質でも良いが、多孔質でないほうがより好ましく、無孔質であることが更に好ましい。ただし、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物の粒子、被酸化性金属粉末、珪酸塩、ニトロ安息香酸のように、粒子自体が遊離の酸基を有していたり、反応性や水溶性を有していたりするものを採用しなくてもよい。
粒子が多孔質であっても、その比表面積の上限は100m/gである。粒子の比表面積は80m/g以下が好ましく、50m/g以下がより好ましく、30m/g以下が更に好ましく、20m/g以下が最も好ましい。粒子の比表面積が大きいほど、粒子表面に微細な孔を有することになり、その孔に防錆剤が侵入、吸着又は保持されやすくなる。その結果、難燃防錆フィルム表面に向けて移動する防錆剤の量が減少又は遅延し、防錆効果を低下又は遅延させることになる。
【0028】
(FMVSSへの適合性)
本発明の難燃防錆フィルムは、FMVSS No.302(米国自動車安全基準)に準じて行う燃焼性試験に適合するものである。
FMVSSに適合する難燃防錆フィルムとしては、難燃防錆フィルム全層中に難燃剤の濃度は2.5重量%以上であり、5.0重量%以上が好ましく、10.0重量%以上がより好ましい。そして、35.0重量%以下が好ましく、30.0重量%以下がより好ましく、25.0重量%以下が更に好ましい。
また、難燃防錆フィルムの全体の厚さは50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上が更に好ましい。そして150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましい。
本発明の難燃防錆フィルムは、このFMVSSに適合するものである。さらに必要に応じて、下記に示す酸素指数及び/又はDIN4102-1B2に適合する。なお、図1及び2に示すグラフにおいて、フィルム全層厚さが50~150μmであり、フィルム全層中のハロゲン系難燃剤が2.5重量%以上である範囲内の難燃防錆フィルムは、FMVSSに適合する
【0029】
(酸素指数が26以上)
さらに本発明の難燃防錆フィルムは、JIS K 7201-2:2007に準じて行なう難燃性試験により測定された酸素指数が26以上であることが好ましい。本発明の難燃防錆フィルムがこの範囲の酸素指数を有する場合には、さらに高い難燃性を備える。
本発明において、難燃防錆フィルムの酸素指数が26以上であるときには、x軸のフィルム全層中の難燃剤濃度(重量%)と、y軸のフィルム全層の厚さ(μm)との関係において、yが7x+47(ただしx≧5)で示される値以下であることが必要である。そして、yが7x+45で示される値以下であることが好ましく、yが7x+43で示される値以下であることがより好ましい。
また、酸素指数が26以上である難燃防錆フィルムとしては、難燃防錆フィルム全層中に難燃剤の濃度は5.0重量%以上が好ましく、10.0重量%以上がより好ましく、15.0重量%以上が更に好ましい。そして、35.0重量%以下が好ましく、30.0重量%以下がより好ましく、25.0重量%以下が更に好ましい。
また、難燃防錆フィルムの全体の厚さは50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上が更に好ましい。そして150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましい。
【0030】
(DIN4102-1B2への適合性)
さらに本発明の難燃防錆フィルムは、上記酸素指数26以上、及び/又は、DIN4102-1B2に準じて行なう燃焼性試験に適合するものである。本発明の難燃防錆フィルムがこの試験に適合する場合には、さらに高い難燃性を備える。
本発明において、難燃防錆フィルムがDIN4102-1B2に適合するときには、x軸のフィルム全層中の難燃剤濃度(重量%)と、y軸のフィルム全層の厚さ(μm)との関係において、yが3.4x+52(ただしx≧5)で示される値以下であることが必要である。そして、yが3.4x+50で示される値以下であることが好ましく、yが3.4x+48で示される値以下であることがより好ましい。
また、DIN4102-1B2に適合する難燃防錆フィルムとしては、難燃防錆フィルム全体のうち、難燃剤の濃度は5.0重量%以上が好ましく、10.0重量%以上がより好ましく、15.0重量%以上が更に好ましい。そして、35.0重量%以下が好ましく、30.0重量%以下がより好ましく、25.0重量%以下が更に好ましい。
また、難燃防錆フィルムの全層厚さは50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上が更に好ましい。そして150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましい。
【0031】
(難燃防錆フィルムの構造)
本発明の難燃防錆フィルムは、全層厚さと全層に占める難燃剤及び防錆剤の濃度を調整することにより、適切な難燃性と防錆性及び視認性をバランス良く発揮できる。
全層厚さが50~150μmであり、55μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましい。また120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、90μm以下が更に好ましく、80μm以下が最も好ましい。フィルム厚さが50μm未満では包装用フィルムとしての強度を保持できないおそれがある。また、フィルム全層厚さが150μmを超えると、インフレーション成形等によるフィルム製造が困難であったり、全光線透過率が低下して被包装物の視認性が低下する場合がある。ただし、このような場合には、フィルムに対して筆記等したときの筆記を目視にて確認しやすくなる。
ポリオレフィン系樹脂層1とポリオレフィン系樹脂層2のそれぞれの層の厚さの比は、ポリオレフィン系樹脂層1:ポリオレフィン系樹脂層2=30:70~70:30であることが好ましく、40:60~60:40がより好ましく、45:55~55:45が更に好ましい。この厚さの比が30:70~70:30であると、それぞれの層に適切な量の防錆剤又は難燃剤を含有させたときに、防錆性と難燃性をバランスよく発揮しやすくなる。
本発明の難燃防錆フィルムは、例えば(ポリオレフィン系樹脂層1/中間層1/ポリオレフィン系樹脂層2)の3層からなっても良い。この中間層1は上記に説明したポリオレフィン系樹脂層1又は2に包含される層であっても良い。
さらに、(ポリオレフィン系樹脂層1/中間層2/ポリオレフィン系樹脂層2)の3層からなっても良い。この中間層2は上記に説明したポリオレフィン系樹脂層1又は2に包含されない防錆剤含有層や、防錆剤及び難燃剤含有層であっても良い。
また本発明の難燃防錆フィルムは、例えば(ポリオレフィン系樹脂層1/ポリオレフィン系樹脂層2/最外層)の3層からなっても良い。この最外層は上記に説明したポリオレフィン系樹脂層2に包含されない防錆剤と難燃剤を含有した層であっても良い。
これらの3層からなる場合には、これらの層の厚さの比が10~40/20~80/10~40であることが好ましい。
本発明の難燃防錆フィルムの形状は両面が平滑であってもよく、本発明による効果を毀損しない範囲において、任意の模様を形成していても良い。またポリオレフィン系樹脂層1とポリオレフィン系樹脂層2のそれぞれの、難燃防錆フィルムの表面側に向かない面は、いずれも平滑であることが好ましい。
本発明の難燃防錆フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層1とポリオレフィン系樹脂層2のみから形成されていても良いが、ポリオレフィン系樹脂層1側の外面側、及び/又は、ポリオレフィン系樹脂層2側の外面側に、さらなる強度向上や美観等を考慮して、さらに任意の樹脂層や繊維質、さらに必要に応じて接着剤の層等を形成できる。またポリオレフィン系樹脂層1とポリオレフィン系樹脂層2の間に、さらなる強度向上や機能の付与、美観等を考慮して、他の任意の樹脂層や繊維層等を形成しても良い。
なお、この難燃防錆フィルムの構造において説明した構造のうち、ポリオレフィン系樹脂層1及びポリオレフィン系樹脂層2は、上記の説明に沿って防錆剤のみ又は難燃剤のみを含有しても良い。また上記に説明されたように、難燃剤含有ポリオレフィン系樹脂層1及び/又は防錆剤含有ポリオレフィン系樹脂層2であっても良い。
【0032】
(難燃防錆フィルムの製造方法)
本発明の難燃防錆フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の2層からなる防錆フィルムの製造方法を採用できる。また2層の樹脂層からなる積層フィルムを形成させるための、2層を同時に押し出して積層する共押出、一方のポリオレフィン系樹脂層の上に他方のポリオレフィン系樹脂層を押し出す押出ラミネート、接着等公知の手段を採用できる。
さらに本発明においては、上記により得られた難燃防錆フィルムを公知の手段により袋状に加工して、難燃防錆用包装袋にすることができる。
【実施例0033】
以下に本発明の具体的実施例及び比較例について説明する。
なお、実施例は発明の1形態を示すものであり本発明はこれに限定されるものではない。
表1は、実施例又は比較例において使用した難燃防錆フィルムの詳細及びそれらによる効果について示す。
【0034】
(FMVSS適合(FMVSS No.302(米国自動車安全基準)による燃焼性試験に基づく試験))
FMVSS No.302(乗用車やトラック及びバス等の室内に使用される内装材に発生する火災を想定した試験)に準じて、燃焼距離と燃焼速度を測定した。
<試験片>
356mm×102mmの難燃防錆フィルム
<試験方法>
・試験サンプルをU字の治具に挟んで取り付け、試験機にセットする。
・ガスバーナーを着火し、炎の高さが38mmで安定するまで待つ。
・着火したバーナーを試験サンプルの端(U字の治具のUの上端に想到する開口部に位置する試験サンプルの端)に15秒間接炎する。
・燃焼時間と燃焼距離を測定し、燃焼速度を算出する。
<判断基準>
以下のうち、いずれか1つを満たせば適合すると評価した。そして、適合するものを〇、適合しないものを×とした。
・試験片に着火しない、またはA標線(着火点から38mmの位置)手前で自消する。
・燃焼距離51mm以内かつ60秒以内に自消する。
・燃焼速度が102mm/分以下であること。
【0035】
(酸素指数(燃焼試験酸素指数))
酸素指数の測定をJIS K 7201-2:2007に準じて行なった。
酸素と窒素の混合ガス気流中で試験片が燃焼し続けるのに必要な最低酸素濃度を容積%で表したものであり、酸素指数が高ければ高いほど難燃効果が高い。
<試験片>
140mm×52mmの難燃防錆フィルム
<試験方法>
・燃焼円筒内に下から酸素/窒素ガスの混合ガスを供給し、試験サンプルを治具に挟んで燃焼円筒内に取り付ける。
・混合ガス気流の安定後、ガスバーナーを着火させ炎の高さが下向きに16±4mmになるようにセットする。
・燃焼円筒内の試験片の上端に接炎、上端から20mmの標線を超えるまで着火を繰り返す。
・燃焼継続時間と燃焼距離を計測する。
・着火した炎が標線を超えてから燃焼時間を計測する。
・試験片が3分以上継続して燃焼せず、かつ試験片が標線から縦方向に80mm以上燃焼しないときの酸素濃度を測定した。
・酸素指数26以上のものを〇、26未満のものを×とした。
【0036】
(DIN4102適合(DIN4102-1B2(ドイツ工業規格耐火試験(建築材料に対する耐火試験))))
DIN4102-1B2に準じて、材料の燃焼挙動を試験した。
<試験片>
表面接炎:230mm×90mmの難燃防錆フィルム
端部接炎:190mm×90mmの難燃防錆フィルム
<試験方法>
・MD/TD方向それぞれn=5、合計20回燃焼させて試験を行なった。
・15秒間接炎させて、その後150mm標線への到達有無を判定した。
・20回燃焼の全てで標線に到達しないときに適合すると判断した。
・適合するものを〇、適合しないものを×とした。
【0037】
(防錆試験)
縦100mm×横100mm×高さ150mmの枠組内に下記〔A〕の試験片をナイロン製の釣糸で吊し、作製したフィルムで枠組を包み、ガゼットシールし密封した。
この試験形態を下記〔B〕の試験環境下、指定期間置いた後、表面の錆の発錆状態を下記〔C〕の評価法に基づき評価した。
〔A〕試験片
鋳鉄 (JIS G 5501) サイズ:φ30mm×8mm
〔B〕試験環境
サイクル試験条件(12時間/1サイクル)
25℃70%RH維持(4時間)⇒50℃95%RHへ移行(2時間)⇒50℃95%RH維持(4時間)⇒25℃70%RHへ移行(2時間)
〔C〕評価法
期間:3日間(6サイクル)
基準: 〇 :錆、変色なし
× :点錆、変色発生
【0038】
(視認性)
QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)を印刷した紙の上に難燃防錆フィルムを重ね合わせ、難燃防錆フィルムの上からスマートフォンのアプリでQRコードが読取り可能かどうかを確認した。
基準: ○:読み取り可能
×:読み取り不可(但し、フィルム表面に筆記時は、その筆跡を明瞭に確認できた。)
【0039】
(全光線透過率)
日本電色工業株式会社製ヘーズメーター(NDH5000)を用いて、JIS K 7361-1に準じて測定を行った。
【0040】
(難燃防錆フィルム用のマスターバッチの作製)
<難燃剤マスターバッチFR1>
東京インキ株式会社製難燃剤マスターバッチPEX FR-0231(ハロゲン系、三酸化アンチモンフリーの難燃剤を45~55重量%含有、キャリアレジンはMFR=5.0g/10分の低密度ポリエチレン)を難燃剤マスターバッチFR1とした。難燃剤の濃度は平均値として50重量%含有するとした。なお、含有するハロゲン系難燃剤は走査型電子顕微鏡SEMEDX(日本電子株式会社製JSM-IT100)により臭素系難燃剤であると同定した。
【0041】
<難燃剤マスターバッチFR2の調製>
難燃剤であるキスマ5J(株式会社共和化学工業所製(水酸化マグネシウム、特殊表面処理あり))30重量部と、低密度ポリエチレン(LDPE1、密度=0.924g/cm、MFR=2.0g/10分)70重量部とを、二軸混練機にて溶融混練して難燃剤マスターバッチFR2を調製した。
【0042】
<難燃剤マスターバッチFR3の調製>
難燃剤であるFP-2500S(株式会社ADEKA製(リン酸塩と酸化亜鉛の混合物))30重量部と、低密度ポリエチレン(LDPE1)70重量部とを、二軸混練機にて溶融混練して難燃剤マスターバッチFR3を調製した。
【0043】
<防錆剤マスターバッチMB1の調製>
防錆剤である安息香酸アンモニウム20重量部と、低密度ポリエチレン(LDPE1)80重量部とを、二軸混練機にて溶融混練して防錆剤マスターバッチMB1を調製した。
【0044】
<防錆剤マスターバッチMB2の調製>
防錆剤である亜硝酸ナトリウム30重量部と、低密度ポリエチレン(LDPE1)70重量部とを、二軸混練機にて溶融混練して防錆剤マスターバッチMB2を調製した。
【0045】
<難燃防錆フィルムの作製>
表1に示すフィルム類型の内層及び外層の組成になるように、各難燃剤マスターバッチと各防錆剤マスターバッチのそれぞれと低密度ポリエチレン(LDPE1)を混合して、各フィルム類型用の内層用及び外層用の樹脂組成物を調製した。これらの樹脂組成物を用いて、各フィルム類型になるように、2層インフレーション押出成形機により140℃の成形温度で難燃防錆フィルムとなるチューブ状フィルムを製造した。表1の各フィルム類型は、フィルム全体の層の厚さを限定するものではなく、各フィルム類型は、その内層と外層の層の厚さの比及び各層の組成で分けたものである。
なお、フィルム類型毎に、フィルムの全層厚さが表2で示す厚さになるように、上記の製造方法により難燃防錆フィルムを得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
※NA:データなし
【0048】
本発明に沿った例である各実施例によれば、FMVSSに適合する。
さらに、フィルム全層中の難燃剤濃度が5.0重量%でフィルム全層厚さが50~80μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が10.0重量%でフィルム全層厚さが60~100μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が15.0重量%でフィルム全層厚さが100~150μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が22.5重量%でフィルム全層厚さが120~150μmであるとき、フィルム全層中の難燃剤濃度が30.0重量%でフィルム全層厚さが120~150μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が35.0重量%でフィルム全層厚さが120μmであるとき、酸素指数が26以上であった。
この結果を図1に示す。図1では、y=7x+47(yは難燃防錆フィルム全層厚さ、xは難燃防錆フィルム全層中の難燃剤濃度)で示される線形(境界線)上及びその右側が実施例であり、左側が対照例である。この図1によれば、上記の実施例で示されていない難燃防錆フィルムであっても、この式の線上、又は、右側に位置するフィルム全層厚さとフィルム全層中の難燃剤濃度である場合には、本発明による酸素指数上の効果を発揮できる。なお、この式は酸素指数が26であるときを示す式である。この式は、回帰曲線(線形近似)により求めた。横軸がフィルム全層中の難燃剤濃度(重量%)、縦軸はフィルム全体の厚さ(μm)である。黒丸が実施例、白丸が対照例である。
【0049】
また、フィルム全層中の難燃剤濃度が5.0重量%でフィルム全層厚さが50~65μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が10.0重量%でフィルム全層厚さが60~70μmであるとき、フィルム全層中の難燃剤濃度が15.0重量%でフィルム全層厚さが100μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が22.5重量%でフィルム全層厚さが120μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が30.0重量%でフィルム全層厚さが120~150μmであるとき、及び、フィルム全層中の難燃剤濃度が35.0重量%でフィルム全層厚さが120μmであるときには、DIN4102に適合した。
この結果を図2に示す。図2では、y=3.4x+52(yは難燃防錆フィルム全層厚さ、xは難燃防錆フィルム全層中の難燃剤濃度)で示される線形(境界線)上、及び、その右側が実施例であり、左側が対照例である。この図2によれば、上記に実施例で示されていない難燃防錆フィルムであっても、この式の線上、又は、右側に位置するフィルム全層厚さとフィルム全層中の難燃剤濃度である場合には、本発明によるDIN4102による評価の点において効果を発揮できる。なお、この式はDIN4102に適合する境界を示す式である。(yは難燃防錆フィルム全層厚さ、xは難燃防錆フィルム全体中の難燃剤濃度)この式は、回帰曲線(線形近似)により求めた。横軸がフィルム全層中の難燃剤濃度(重量%)、縦軸はフィルム全層厚さ(μm)である。黒丸が実施例、白丸が対照例である。
実施例1~19によると視認性が十分であり、全光線透過率が40%以上であった。一方、実施例20、21についてはフィルム全層中の難燃剤濃度が30.0重量%であって、フィルム全層厚さが150μm、又は、フィルム全層中の難燃剤濃度が35.0重量%であって、フィルム全層厚さが120μmである為、難燃効果はあるものの、視認性がなく、また全光線透過率は40%未満であった。
図1
図2