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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060493
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/036 20060101AFI20240424BHJP
   B65H 51/22 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B65H63/036 Z
B65H51/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167897
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】陣山 達夫
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115AA09
3F115CA20
3F115CA23
3F115CB01
3F115CC08
3F115CC24
3F115CF35
3F115CG12
(57)【要約】
【課題】貯留ローラを用いた糸巻取機において、貯留ローラにおいて、重ね巻き部が発生すること。
【解決手段】糸巻取機(2)は、糸を供給する供給部(6)と、供給部(6)から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部(8)と、供給部(6)と巻取部(8)との間で糸が走行する糸走行経路の途中に配置されている貯留ローラ(41)を有し、貯留ローラ(41)を回転させることによって供給部(6)から送出される糸を貯留ローラ(41)の外周面の貯留領域(A)に巻き付けて糸を一時的に貯留する糸貯留装置(40)と、貯留ローラ(41)の外周面に巻き付けられた糸を検出する検出装置(50)と、貯留ローラ(41)の回転を制御し、かつ、検出装置(50)から検出データを取得し、貯留領域(A)において重ね巻き部(F)が発生しているか否かを判定する制御部(25)と、を備えている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給する供給部と、
前記供給部から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記供給部と前記巻取部との間で糸が走行する糸走行経路の途中に配置されている貯留ローラを有し、前記貯留ローラを回転させることによって前記供給部から送出される糸を前記貯留ローラの外周面の貯留領域に巻き付けて糸を一時的に貯留する糸貯留装置と、
前記貯留ローラの外周面に巻き付けられた糸を検出する検出装置と、
前記貯留ローラの回転を制御し、かつ、前記検出装置から検出データを取得し、前記貯留領域において重ね巻き部が発生しているか否かを判定する制御部と、
を備えた糸巻取機。
【請求項2】
前記糸走行経路において、前記供給部側を上流とし、前記巻取部側を下流としたとき、
前記検出装置は、前記貯留領域に巻き付けられた糸の貯留上流端位置を検出し、
前記制御部による、重ね巻き部が発生しているか否かの判定は、貯留上流端位置によって判定される、請求項1に記載の糸巻取機。
【請求項3】
前記糸走行経路において、前記供給部側を上流とし、前記巻取部側を下流としたとき、
前記検出装置は、前記貯留領域に巻き付けられた糸の貯留上流端位置を検出し、
前記制御部による、重ね巻き部が発生しているか否かの判定は、貯留上流端位置が上流側に移動し、及び、貯留上流端位置が基準位置よりの上流側への移動量によって判定される、請求項1に記載の糸巻取機。
【請求項4】
さらに、前記糸走行経路の前記供給部と前記貯留ローラとの間に糸継装置を備え、
前記制御部が重ね巻き部が発生しているとの判定前に、前記糸継装置による糸継ぎより前の、糸巻取機が安定して糸巻きしている時期に、前記検出装置が検出した、糸の前記貯留上流端位置を前記基準位置とする、請求項3に記載の糸巻取機。
【請求項5】
前記制御部は、前記貯留領域において重ね巻き部が発生していると判定したとき、
前記貯留ローラの回転速度を、通常の巻取運転時と変更し、前記重ね巻き部を取り除く、重ね巻き部除去運転を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項6】
さらに、前記貯留領域に巻き付けられた糸を、貯留上流端位置から吸引する吸引機構をさらに備え、
前記制御部は、前記貯留領域において重ね巻き部が発生していると判定したとき、所定時間、前記貯留ローラを逆転させ、前記貯留領域に巻き付けられた糸を、貯留上流端位置から吸引して除去する、第1重ね巻き部除去運転を行う、請求項5に記載の糸巻取機。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1重ね巻き部除去運転の後で、通常の糸巻取り運転を行い、再度、前記貯留領域において重ね巻き部が発生していると判定したときは、さらに、所定時間、前記貯留ローラを逆転させ、前記貯留領域に巻き付けられた糸を、前記貯留上流端位置から吸引して除去する、第2重ね巻き部除去運転を行う、請求項6に記載の糸巻取機。
【請求項8】
前記供給部と前記糸貯留装置の間の糸に所定のテンションを付与するテンション付与部を更に備え、
前記供給部は、糸を供給するための給糸ボビンを交換して糸を供給するように構成されており、
前記制御部は、給糸ボビンを交換直後に、通常の巻取運転を開始したときは、前記貯留領域への糸の入側において、テンションが通常の運転時よりも高くなるように、前記テンション付与部を制御する、請求項1~7のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項9】
糸のテンションを検出するテンションセンサを更に備え、
前記制御部は、給糸ボビンの交換前後において、前記貯留領域への糸の入側において前記テンションセンサによりテンションを計測し、給糸ボビンを交換直後のテンションが、給糸ボビンを交換直前のテンションと略同一になるように、前記テンション付与部を制御する、請求項8に記載の糸巻取機。
【請求項10】
前記検出装置は、前記貯留領域において前記貯留ローラの回転軸と平行な方向に前記糸を検出する、ラインセンサを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項11】
前記検出装置は、前記貯留領域において前記糸を撮像する、カメラを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項12】
前記検出装置は、前記貯留領域において前記糸を検出する、複数の投受光センサを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項13】
前記糸貯留装置は、貯留領域において、下流側の糸が上流側の糸に押されて、下流側に進むように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項14】
糸巻取機は、空気紡績機である、請求項1~6のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【請求項15】
糸巻取機は、オープンエンド紡績機である、請求項1~6のいずれか1項に記載の糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻取機は、給糸ボビンから解舒された糸を、糸走行経路を経て、巻取部に巻き取ってパッケージを形成する。特許文献1は、糸巻取機の、給糸ボビンから巻取部の糸走行経路において、貯留ローラを配置し、貯留ローラの外周面に糸を巻き付けて、糸を一時的に貯留する糸貯留装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-050053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯留ローラに巻き付けられる糸の量、糸にかかるテンションは、常に一定ではなく、給糸ボビンの交換、糸の不均一性、パッケージの形成の状態等、様々な要因によって変動する。貯留ローラに巻き付けられる糸の量、糸にかかるテンションが変動すると、貯留ローラに巻き付けられる糸に、重ね巻き部が発生することがある。重ね巻き部が発生すると、糸に係るテンションに不均一が生じ、貯留ローラからの糸の解舒が定常的に進まなくなる、又は、糸にストレスがかかり、糸の太さの不均一や糸が切れるといった不具合が発生する恐れがある。
【0005】
本開示の課題は、第1に、貯留ローラに発生する、糸の重ね巻き部を自動的に検出することである。そして、本開示の課題の第2は、検出された重ね巻き部を除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の糸巻取機は、
糸を供給する供給部と、
前記供給部から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記供給部と前記巻取部との間で糸が走行する糸走行経路の途中に配置されている貯留ローラを有し、前記貯留ローラを回転させることによって前記供給部から送出される糸を前記貯留ローラの外周面の貯留領域に巻き付けて糸を一時的に貯留する糸貯留装置と、
前記貯留ローラの外周面に巻き付けられた糸を検出する検出装置と、
前記貯留ローラの回転を制御し、かつ、前記検出装置から検出データを取得し、前記貯留領域において重ね巻き部が発生しているか否かを判定する制御部と、
を備えている。
【0007】
第1態様の糸巻取機は、自動的に糸の重ね巻き部を検出することができるため、糸の重ね巻き部を除去する等の対策をとることができる。したがって、糸に掛かるテンションが異常に大きくなる前に対策することが可能になり、糸巻取機の生産性を向上させ、糸の不良部分の発生を抑制できる。
【0008】
本開示の第2態様の糸巻取機は、第1態様の糸巻取機であって、
前記糸走行経路において、前記供給部側を上流とし、前記巻取部側を下流としたとき、
前記検出装置は、前記貯留領域に巻き付けられた糸の貯留上流端位置を検出し、
前記制御部による、重ね巻き部が発生しているか否かの判定は、前記貯留上流端位置によって判定される。
【0009】
第2態様の糸巻取機は、簡便な方法で、重ね巻き部が発生していることを検出できるので、容易に、糸に掛かるテンションが異常に大きくなる前に対策することが可能になり、糸巻取機の生産性を向上させ、糸の不良部分の発生を抑制できる。
【0010】
本開示の第3態様の糸巻取機は、第1態様の糸巻取機であって、
前記糸走行経路において、前記供給部側を上流とし、前記巻取部側を下流としたとき、
前記検出装置は、前記貯留領域に巻き付けられた糸の貯留上流端位置を検出し、
前記制御部による、重ね巻き部が発生しているか否かの判定は、前記貯留上流端位置が低下し、及び、前記貯留上流端位置が基準位置よりの低下量によって判定される。
【0011】
第3態様の糸巻取機は、簡便な方法で、重ね巻き部が発生していることを検出できる。
【0012】
本開示の第4態様の糸巻取機は、第3態様の糸巻取機であって、
さらに、前記糸走行経路の前記供給部と前記貯留ローラとの間に糸継装置を備え、
前記制御部が重ね巻き部が発生しているとの判定前に、前記糸継装置による糸継より前の、糸巻取機が安定して糸巻している時期に、前記検出装置が検出した、糸の前記貯留上流端位置を前記基準位置とする。
【0013】
第4態様の糸巻取機は、糸の貯留上流端位置の基準位置を、糸継装置による糸継より前の、糸巻取機が安定して糸巻している時期にしているため、重ね巻き部の誤検出の頻度を低下させることができる。
【0014】
本開示の第5態様の糸巻取機は、第1態様~第4態様のいずれかの糸巻取機であって、
前記制御部は、前記貯留領域において重ね巻き部が発生していると判定したとき、
前記貯留ローラの回転速度を、通常の巻取運転時と変更し、前記重ね巻き部を取り除く、重ね巻き部除去運転を行う。
【0015】
第5態様の糸巻取機は、重ね巻き部除去運転を行うため、重ね巻き部を除去することができる。したがって、糸に掛かるテンションが異常に大きくなる前に対策することが可能になり、糸巻取機の生産性を向上させ、糸の不良部分の発生を抑制できる。
【0016】
本開示の第6態様の糸巻取機は、第5態様の糸巻取機であって、
さらに、前記貯留領域に巻き付けられた糸を、前記貯留上流端位置から吸引する吸引機構をさらに備え、
前記制御部は、前記貯留領域において重ね巻き部が発生していると判定したとき、所定時間、前記貯留ローラを逆転させ、前記貯留領域に巻き付けられた糸を、前記貯留上流端位置から吸引して除去する、第1重ね巻き部除去運転を行う。
【0017】
第6態様の糸巻取機は、貯留領域に巻き付けられた糸を、貯留上流端位置から吸引して除去するので、比較的高い確率で重ね巻き部を除去することができる。したがって、糸に掛かるテンションが異常に大きくなる前に対策することが可能になり、糸巻取機の生産性を向上させ、糸の不良部分の発生を抑制できる。
【0018】
本開示の第7態様の糸巻取機は、第6態様の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記第1重ね巻き部除去運転の後で、通常の糸巻取り運転を行い、再度、前記貯留領域において重ね巻き部が発生していると判定したときは、さらに、所定時間、前記貯留ローラを逆転させ、前記貯留領域に巻き付けられた糸を、前記貯留上流端位置から吸引して除去する、第2重ね巻き部除去運転を行う。
【0019】
第7態様の糸巻取機は、第1重ね巻き部除去運転のあとで、さらに、重ね巻き部が発生した場合、第2重ね巻き部除去運転を行うので、より高い確率で、重ね巻き部を除去することができる。
【0020】
本開示の第8態様の糸巻取機は、第1態様~第7態様のいずれかの糸巻取機であって、
前記供給部と前記糸貯留装置の間の糸に所定のテンションを付与するテンション付与部を更に備え、
前記供給部は、糸を供給するための給糸ボビンを交換して糸を供給するように構成されており、
前記制御部は、給糸ボビンを交換直後に、通常の巻取運転を開始したときは、前記貯留領域への糸の入側において、テンションが通常の運転時よりも高くなるように、前記テンション付与部を制御する。
【0021】
第8態様の糸巻取機は、給糸ボビンを交換前後のテンションの急変を防ぎ、重ね巻き部の発生を抑制する。
【0022】
本開示の第9態様の糸巻取機は、第8態様の糸巻取機であって、
糸のテンションを検出するテンションセンサを更に備え、
前記制御部は、給糸ボビンの交換前後において、前記貯留領域への糸の入側において前記テンションセンサによりテンションを計測し、給糸ボビンを交換直後のテンションが、給糸ボビンを交換直前のテンションと略同一になるように、前記テンション付与部を制御する。
【0023】
第9態様の糸巻取機は、給糸ボビンを交換前後のテンションの急変を防ぎ、重ね巻き部の発生を抑制する。
【0024】
本開示の第10態様の糸巻取機は、第1態様~第8態様のいずれかの糸巻取機であって、
前記検出装置は、前記貯留領域において前記貯留ローラの回転軸と平行な方向に前記糸を検出する、ラインセンサを含む。
【0025】
第10態様の糸巻取機は、ラインセンサを用い、簡便な方法で、重ね巻き部が発生していることを検出できる。
【0026】
本開示の第11態様の糸巻取機は、第1態様~第9態様のいずれかの糸巻取機であって、
前記検出装置は、前記貯留領域において前記糸を撮像する、カメラを含む。
【0027】
第11態様の糸巻取機は、カメラを用い、簡便な方法で、重ね巻き部が発生していることを検出できる。
【0028】
本開示の第12態様の糸巻取機は、第1態様~第9態様のいずれかの糸巻取機であって、
前記検出装置は、前記貯留領域において前記糸を検出する、複数の投受光センサを含む。
【0029】
第12態様の糸巻取機は、投受光センサを用い、簡便な方法で、重ね巻き部が発生していることを検出できる。
【0030】
本開示の第13態様の糸巻取機は、第1態様~第11態様のいずれかの糸巻取機であって、
前記糸貯留装置は、貯留領域において、下流側の糸が上流側の糸に押されて、下流側に進むように構成されている。
【0031】
第13態様の糸巻取機は、貯留領域において、下流側の糸が上流側の糸に押されて、下流側に進むように構成されているので、重ね巻き部が発生することにより、糸送りに障害が発生する可能性が高い。
【0032】
本開示の第14態様の糸巻取機は、第1態様~第6態様のいずれかの糸巻取機であって、さらに、空気紡績装置を含む。
【0033】
本開示の第15態様の糸巻取機は、第1態様~第6態様のいずれかの糸巻取機であって、糸巻取機は、オープンエンド紡績機である。
【発明の効果】
【0034】
本開示の糸巻取機は、自動的に糸の重ね巻き部を検出することができるため、糸の重ね巻き部を除去する等の対策をとることができる。したがって、糸に掛かるテンションが異常に大きくなる前に対策することが可能になり、糸巻取機の生産性を向上させ、糸の不良部分の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、第1実施形態に係る自動ワインダ1の全体的な構成を示す概略正面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るワインダユニット(糸巻取機)2の構成を示す概略側面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る糸貯留装置40の斜視図である。
図4図4(A)は、糸貯留装置40と検出部53との配置関係を示した図である。図4(B)は、糸貯留装置40と発光部55との配置関係を示した図である。図4(C)は、糸貯留装置40と検出装置50との配置関係を示した図である。
図5図5(A)は、貯留ローラ41の外周面を回転方向に一部が重複するように平面的に展開した図である。図5(B)は、貯留ローラ41の外周面に糸が存在するときの貯留ローラ41の外周面を回転方向に一部が重複するように平面的に展開した図である。図5(C)は、貯留ローラ41の外周面に糸及び凹部が存在するときの貯留ローラ41の外周面を回転方向に一部が重複するように平面的に展開した図である。
図6図6は、ラインセンサ53Aによる取得結果の一例を示した図である。
図7図7(A)は、変形例A1に係るワインダユニット2の貯留ローラ41と検出装置50との配置関係を示した図である。図7(B)は、変形例A2に係るワインダユニット2の糸貯留ローラ41と検出装置50との配置関係を示した図である。
図8図8は、変形例に係るラインセンサ53Aによる取得結果の一例を示した図である。
図9図9(A)は、変形例A3に係るワインダユニット2の糸貯留ローラ41と検出装置50との配置関係を示した図である。図9(B)は、変形例A4に係るワインダユニット2の糸貯留ローラ41と検出装置50との配置関係を示した図である。
図10図10(A)は、変形例A5に係るワインダユニット2の糸貯留ローラ41と検出装置50との配置関係を示した図である。図10(B)は、変形例A5に係る別のワインダユニット2の糸貯留ローラ41と検出装置50との配置関係を示した図である。
図11図11は、貯留ローラ41に糸Yが正常に巻かれ貯留されている様子を模式的に示している側面図である。
図12図12は、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて重ね巻き部Fが発生している様子を模式的に示している側面図である。
図13図13は、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて重ね巻き部Fが発生した後で、上流側から、重ね巻き部Fを除去した後の貯留ローラ41の様子を模式的に示している側面図である。
図14図14は、ワインダユニット2の巻取運転時に、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて、貯留上流端E1の位置の時間変化の測定例である。
図15図15は、ワインダユニット2の巻取運転時に、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて、貯留上流端E1の位置の時間変化の別の測定例である。
図16図16は、ワインダユニット2の巻取運転時に、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて、貯留上流端E1の位置の時間変化の別の測定例である。
図17図17は、ワインダユニット2の巻取運転時に、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて、貯留上流端E1の位置の時間変化の別の測定例である。
図18図18は、ワインダユニット2の巻取運転時に、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて、貯留上流端E1の位置の時間変化の別の測定例である。
図19図19は、ワインダユニット2の巻取運転時に、貯留ローラ41の貯留領域Aにおいて、貯留上流端E1の位置の時間変化の別の測定例である。
図20図20は、ワインダユニット2において、給糸ボビン変更時の目標テンション値、テンション計測値、ローラ速度を示す図である。
図21図21は、第1実施形態の糸の巻取運転方法を示すフローチャートである。
図22図22(A)は、変形例B1において、糸貯留装置40と検出部53との配置関係を示した図である。図22(B)は、変形例B1において、糸貯留装置40と発光部55との配置関係を示した図である。図22(C)は、変形例B1において、糸貯留装置40と検出装置50との配置関係を示した図である。
図23図23は、変形例B2の検出装置50の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.第1実施形態
(1)自動ワインダ1の構成
本実施形態の自動ワインダ1は、図1に示されるように、並べて配置された複数のワインダユニット(糸巻取機)2と、機台制御装置3と、給糸ボビン供給装置4と、玉揚装置5と、図略のブロアボックスと、を備えている。
【0037】
機台制御装置3は、各ワインダユニット2と通信可能に構成されている。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置3を適宜操作することにより、複数のワインダユニット2を集中的に管理することができる。機台制御装置3は、給糸ボビン供給装置4及び玉揚装置5の動作を制御する。
【0038】
給糸ボビン供給装置4は、給糸ボビン21を一本ずつ搬送トレイ26上にセットする。給糸ボビン供給装置4は、搬送トレイ26上にセットした給糸ボビン21を、複数のワインダユニット2のそれぞれに供給する。
【0039】
玉揚装置5は、ワインダユニット2においてパッケージ30が満巻(規定量の糸Yが巻き取られた状態)となった場合に、当該ワインダユニット2の位置まで走行し、満巻のパッケージ30を取り外す。玉揚装置5は、パッケージ30を取り外した当該ワインダユニット2に対して糸Yが巻かれていない巻取ボビン22をセットする。
【0040】
(2)ワインダユニット(糸巻取機)2の構成
次に、ワインダユニット2の構成について説明する。図2に示されるように、ワインダユニット2は、給糸部(供給部)6と、糸貯留装置40と、検出装置50と、カバー47と、パッケージ形成部(巻取部)8と、ワックス付与装置70と、制御部25と、を備えている。ワインダユニット2では、給糸部6の給糸ボビン21の糸Yを解舒し、解舒した糸Yを糸貯留装置40で一旦貯留した後、パッケージ形成部8が糸貯留装置40に貯留された糸Yを引き出して巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成する。
【0041】
給糸部6は、搬送トレイ26にセットされた給糸ボビン21を所定の位置で支持し、この給糸ボビン21から糸Yを解舒できるように構成されている。給糸部6は、給糸ボビン21から全ての糸Yが解舒されると、糸Yが巻かれていない給糸ボビン21の芯管を排出して、給糸ボビン供給装置4から新しい給糸ボビン21の供給を受ける。
【0042】
糸貯留装置40は、給糸部6とパッケージ形成部8との間に形成される糸走行経路の途中に配置されている。糸貯留装置40は、ワックス付与装置70に対し糸Yの走行方向における上流側の位置に設けられている。糸貯留装置40は、給糸部6で解舒した糸Yを巻き取って一時的に貯留する。糸貯留装置40は、貯留している糸Yをパッケージ形成部8へ供給する。
【0043】
糸貯留装置40は、糸Yを巻き付けることが可能な貯留ローラ41と、貯留ローラ41を回転駆動する駆動モータ45と、カバー47と、を備えている。貯留ローラ41は、糸Yを貯留ローラ41における外周面41dの貯留領域Aに巻き付けて糸Yを一時的に貯留する。貯留ローラ41は、自動ワインダ1の機台(フレーム)に、水平方向に対してやや傾いた回転軸C1を中心として回転可能に支持されている。図2及び図3に示されるように、貯留ローラ41の軸方向の両端部側には、それぞれ、端に近づくほど径が拡大するテーパ部41a,41bが形成されている。二つのテーパ部41a,41bの間の部分は径が一定の円筒部41cとなっており、その外周面41dは、糸Yが巻き付けられる貯留領域Aである。円筒部41cの外周面41dは、鏡面加工されている。両端側の二つのテーパ部41a,41bによって、円筒部41cに巻き付けられた糸Yが抜け落ちることが防止される。
【0044】
貯留ローラ41の円筒部41cの外周面41dには、リング部材42が巻き付けられている。リング部材42は、例えばゴムにより円環状に形成されている。リング部材42は、円筒部41cと先端側のテーパ部41bとの境界部分に取り付けられている。リング部材42は、パッケージ形成部8によって貯留ローラ41から引き出される糸Yを囲み、当該糸Yに接触して抵抗を付与するテンションリングである。リング部材42は、その径方向内側に締め付ける弾性力により円筒部41cに取り付けられている。リング部材42は、貯留ローラ41から引き出される糸Yに対して当該弾性力によって抵抗を付与する。リング部材42により、貯留ローラ41から引き出される糸Yに適度な張力が与えられ、貯留ローラ41からの糸Yの解舒が安定化される。
【0045】
貯留ローラ41の外周面41dにおいて、リング部材42の取付位置を回転軸C1に沿う方向に跨ぐ領域には、第一凹部(凹部)43aが設けられている。つまり、貯留ローラ41の径方向外側から見て、第一凹部43aは、リング部材42の取付位置を通るように設けられて当該取付位置と交差しており、第一凹部43aの一部は当該取付位置と重なっている。ここでの第一凹部43aは、貯留ローラ41の一端から他端まで回転軸C1に沿う方向に延びる溝部を構成している。第一凹部43aは、例えば、その長手方向において同一の断面形状を有し、断面略矩形状に形成されている。貯留ローラ41の外周面41dには、更に、第二凹部(凹部)43bが設けられている。第二凹部(凹部)43bは、円筒部41cの内周面41gにセンサ用マグネットを埋め込むボス又は補強用リブを成形するときに、凹み(いわゆるヒケ)(sink mark)が形成されないように設けられる凹部(いわゆる肉ヌスミ)(downgage)である。
【0046】
駆動モータ45は、給糸部6からの糸Yを巻き取る方向に貯留ローラ41を回転させる。また、駆動モータ45は、当該巻き取る方向とは反対の方向に貯留ローラ41を回転させることもできる。駆動モータ45は、DCブラシレスモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等の位置制御可能なモータである。
【0047】
貯留ローラ41の一端側(貯留ローラ41における上流側)のテーパ部41aの近傍には、下流糸吹送り部80が配置されている。下流糸吹送り部80は貯留ローラ41の外周面41dに近接して配置されている。通常の糸巻取時においては、給糸部6側の糸は、下流糸吹送り部80を通って、貯留ローラ41の一端側のテーパ部41aに導かれる。駆動モータ45を駆動して貯留ローラ41を一方向に回転させたときに、下流糸吹送り部80によって貯留ローラ41の一端側のテーパ部41aに案内された糸Yは、円筒部41cの一端側(上流側)から前の糸層を押し上げながら順次巻き付いていく。その結果、貯留ローラ41の外周面41d上に既に巻き付けられている糸Yは、新しく巻き付けられた糸Yによって押され、他端側(下流側)へ順次送られる。これにより、貯留ローラ41の円筒部41cの外周面において、糸Yが螺旋状に整列して一端側から他端側に向かって規則正しく巻き付いていく。
【0048】
貯留ローラ41の他端側(貯留ローラ41における上流側)のテーパ部41bからは、貯留ローラ41に巻き付けられていた糸Yが引き出されて、下流側(パッケージ形成部8側)に送られる。テーパ部41bにおいて、貯留ローラ41上の糸Yは、貯留ローラ41の回転軸C1の延長線上に位置する引出ガイド37を介して下流側へ引き出される。貯留ローラ41に巻き付けられている糸Yは、上記リング部材42との間を通して解舒され、これにより、解舒される糸Yに適度の張力が付与されるようになっている。
【0049】
図1及び図2に示されるように、パッケージ形成部8は、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸Yを綾振りさせながら巻取ボビン22を駆動する綾振ドラム24と、を備えている。パッケージ形成部8は、巻取部を構成する。クレードル23は、巻取ボビン22(又はパッケージ30)を回転可能に支持する。クレードル23は、支持しているパッケージ30の外周面を綾振ドラム24の外周面に対して接触可能に構成されている。
【0050】
綾振ドラム24は、図略の駆動源(電動モータ等)によって回転駆動され、巻取ボビン22又はパッケージ30の外周面に接触した状態で回転することで、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、糸貯留装置40に貯留された糸Yを解舒して引き出し、巻取ボビン22に巻き取ることができる。綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸Yを所定の幅で綾振り(トラバース)することが可能になっている。以上の構成で、糸Yを綾振りさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定形状のパッケージ30を形成することができる。
【0051】
ワックス付与装置70は、糸貯留装置40とパッケージ形成部8との間に配置されている。ワックス付与装置70は、糸貯留装置40からパッケージ形成部8に向けて走行する糸Yにワックスを付与する。
【0052】
ワインダユニット2は、給糸部6から糸貯留装置40を経由してパッケージ形成部8に至る糸走行経路中に、各種の装置を備えている。具体的には、糸Yの糸道(糸走行経路)には、上流の給糸部6側から下流の糸貯留装置40側へ向かって順に、解舒補助装置10と、下糸フィーラー11と、テンション付与部12と、捕捉装置13と、糸継装置14と、糸監視装置16と、下流糸吹送り部80と、が配置されている。
【0053】
解舒補助装置10は、給糸ボビン21から解舒される糸Yが振り回されて給糸ボビン21の上部に形成されるバルーンに対し、可動部材27を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸Yの解舒を補助する。
【0054】
下糸フィーラー11は、解舒補助装置10の下流側における解舒補助装置10に近接する位置に配置されている。下糸フィーラー11は、解舒補助装置10から供給された糸Yの有無を規定する。
【0055】
テンション付与部12は、走行する糸Yに所定のテンションを付与する。テンション付与部12は、テンションセンサ12Sによって検出された糸Yのテンションに基づいて、糸Yに所定のテンションを付与する。テンション付与部12は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置してなるゲート式に構成されており、櫛歯の間に糸Yを走行させることで所定の抵抗を付与する。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、例えばソレノイドにより移動可能に構成されている。これにより、テンション付与部12は、糸Yに付与するテンションを調整することができる。なお、テンション付与部12の構成は特に限定されず、例えばディスク式のテンション付与部であってもよい。
【0056】
捕捉装置13は、テンション付与部12の下流側に配置されている。捕捉装置13は、第一捕捉部13Aと、第二捕捉部13Bと、を有している。本実施形態では、第一捕捉部13A及び第二捕捉部13Bは、一体化されており、一つの部品として構成されている。第一捕捉部13A及び第二捕捉部13Bのそれぞれは、図略の負圧源に接続されている。
【0057】
第一捕捉部13Aは、先端部に開口が形成された筒状の部材として構成されている。第一捕捉部13Aは、糸継時に吸引空気流を発生させて、糸貯留装置40側の糸Yを吸引して捕捉する。
【0058】
第二捕捉部13Bは、先端部に開口が形成された筒状の部材として構成されている。第二捕捉部13Bは、揺動可能に設けられている。第二捕捉部13Bは、解舒補助装置10から供給された糸Yを捕捉する捕捉位置(第一位置)(図2において実線で示す位置)と、糸Yを糸継装置14に案内する案内位置(第二位置)(図2において破線で示す位置)と、の間において揺動する。捕捉位置は、第二捕捉部13Bの待機位置でもあってもよい。
【0059】
第二捕捉部13Bは、捕捉位置において、下糸フィーラー11の下流側において糸道に接近している状態で、その先端側に吸引空気流を発生させることにより、給糸ボビン21からの糸端を吸引して捕捉する。第二捕捉部13Bは、カッタ15で糸Yを切断した際に、切断した糸Yの給糸ボビン21側の糸端を吸引して捕捉する。また、第二捕捉部13Bは、その先端側に吸引空気流を発生させることにより、走行する糸Yに付着している風綿等を吸引して除去するように構成してもよい。
【0060】
第二捕捉部13Bによって糸Yを捕捉する際、給糸部6に新しい給糸ボビン21が供給された直後の場合には、下糸フィーラー11の下流側の位置(第二捕捉部13Bの先端)まで糸端を吹き送る補助吹送り部28が設けられている。
【0061】
補助吹送り部28は、中空状に形成された搬送トレイ26及び給糸ボビン21の内部に圧縮空気を噴出することにより、給糸ボビン21の先端部に、当該給糸ボビン21の糸Yを下糸フィーラー11側へ吹き送る空気流を形成する。新しく供給された給糸ボビン21が給糸部6に支持された場合、補助吹送り部28が動作することにより、当該給糸ボビン21側の糸端を下糸フィーラー11側に向かって確実に送ることができる。
【0062】
糸継装置14は、分断された糸Yの糸継ぎを行う。糸継装置14は、糸監視装置16が糸欠陥を検出してカッタ15で糸Yを切断する糸切断時、給糸ボビン21から解舒中の糸Yが切れる糸切れ時、又は、給糸ボビン21の交換時等のように、給糸ボビン21と糸貯留装置40との間の糸Yが分断された状態となったときに、給糸ボビン21側の糸Yと、糸貯留装置40側の糸Yと、を糸継ぎする。糸継装置14は、糸道から若干退避した位置に配置されている。糸継装置14は、導入された糸端同士を繋いで、糸Yを連続状態とすることができる。糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いる装置や、機械式の装置を使用できる。
【0063】
糸監視装置16は、糸Yの太さ等を適宜のセンサで監視することにより、スラブや異物混入等の糸欠陥を検出する。糸監視装置16の上流側における当該糸監視装置16に近接する位置には、カッタ15が配置されている。カッタ15は、糸監視装置16が糸欠陥を検出した場合直ちに、糸Yを切断する。カッタ15及び糸監視装置16は、共通のハウジング19に収容されている。糸監視装置16を収容するハウジング19は、糸継装置14の下流側に配置されている。
【0064】
下流糸吹送り部80は、糸貯留装置40の上流側における糸貯留装置40に近接する位置に配置されたエアサッカー装置である。下流糸吹送り部80は、圧縮空気を噴出することにより、貯留ローラ41の貯留領域A上に存在する糸貯留装置40側の糸端を吸引した後に吹き飛ばして第一捕捉部13Aまで送る空気流を形成する。具体的には、下流糸吹送り部80は、内部に糸Yを通過させることが可能な細い筒状のガイド部材(図示省略)と、湾曲した筒状の部材である糸案内部材60と、を備えている。ガイド部材の一端には、糸Yの吹出口が形成されている。糸案内部材60は、下流糸吹送り部80の吹出口に近接するように設けられている。糸案内部材60の長手方向両端には、それぞれ開口が形成されている。
【0065】
糸案内部材60は、その一端側の開口を下流糸吹送り部80の吹出口に対向させ、且つ、その他端側の開口を第一捕捉部13Aに対向させた状態で配置されている。糸案内部材60の内部には、案内経路が形成されている。案内経路は、糸監視装置16及び糸継装置14等を迂回するように、糸案内部材60の両端の開口同士を繋ぐ。下流糸吹送り部80と糸案内部材60と第一捕捉部13Aとにより、貯留側糸端捕捉装置75が構成されている。
【0066】
下流糸吹送り部80は、給糸ボビン21と糸貯留装置40との間で糸Yが分断状態となった場合、糸貯留装置40側の糸Yを捕捉して糸案内部材60の案内経路へ吹き飛ばし、糸Yを当該案内経路に沿って引き出して、第一捕捉部13Aに捕捉させる。なお、糸案内部材60には図略の貫通状のスリットが全長にわたって形成されているため、糸Yを第一捕捉部13Aに捕捉させた状態で、当該糸Yを糸案内部材60の内部から引っ張り出すことができる。以上により、下流糸吹送り部80によって糸貯留装置40側の糸Yを吹き送って、糸継装置14側に向かって案内することができる。
【0067】
各ワインダユニット2は、制御部25を備えている。制御部25は、図略のCPU、ROM、RAM等のハードウェアを備えている。RAMには、制御プログラム等のソフトウェアが記憶されている。制御部25は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、ワインダユニット2の各構成を制御する。制御部25は、機台制御装置3と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダ1が備えた複数のワインダユニット2の動作を、機台制御装置3において集中的に管理することができる。
【0068】
(3)検出装置50の構成と、貯留ローラ41の外周面41dに巻き付けられた糸Yの検出方法
検出装置50は、図4A図4Cに示されるように、検出部53と、発光部55と、を含んで構成されている。検出部53と発光部55とは、筐体51に収容されており、自動ワインダ1の機台に固定されている。検出部53は、貯留ローラ41の外周面41dに巻き付けられた糸Yを検出する。
【0069】
検出部53は、貯留ローラ41の円筒部41cの外周面41d近傍に配置されている。例えば、検出部53は、貯留ローラ41の糸Yが所定の上限量以上になったことと、所定の下限量未満となったことと、を検出できる。検出部53は、上記の上限量から上記の下限量までを検出範囲としてもよい。なお、検出範囲は上記の上限量を超える部分から上記の下限量を下回る部分までを含む、より広範囲な範囲としてもよい。これにより、例えば上記の上限値に対する超過量を検出することができる。本実施形態では、その検出範囲の中から、貯留ローラ41の糸Yが所定の上限量以上になったことと、所定の下限量未満となったことと、を検出している。なお、上記における以上と未満とは、適宜超過と以下とすることができる。検出部53による検出結果は、制御部25によって取得される。制御部25は、検出部53の検出結果に基づいて、貯留ローラ41の貯留量(巻付量)が上記上限量と上記下限量の間に収まるように、駆動モータ45を制御する。
【0070】
検出部53は、円筒部41cの外周面41dに形成される貯留領域Aにおいて糸Yの走行方向における上流側の端部41fと糸Yの走行方向における下流側の端部41eとの間を結ぶ直線区間S1の糸Yの有無を検出するラインセンサ53Aと、入射光を縮小するレンズ53Bと、を有している。ラインセンサ53Aの例には、一列に配列されたフォトダイオードによって光量を取得する、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサである。ラインセンサ53Aは、入射光を縮小するレンズ53Bを介して光を受光する。本実施形態では、直線区間S1の延在方向が回転軸C1の延在方向に平行となるようにラインセンサ53Aが設けられているが、直線区間S1の延在方向が回転軸C1の延在方向に交差するようにラインセンサ53Aが設けられてもよい。
【0071】
発光部55は、二つの光源55B,55Bと、二つの光源55B,55Bから出射される光を面発光に変換すると共に貯留ローラ41に向けて出射する光導波路55Cと、を有している。光導波路55Cの構成要素の一部には、光を導光するアクリル板等の拡散板が含まれる。二つの光源55B,55Bの例は、LED(Light Emitting Diode)であり、LED基板55Aに設けられている。なお、光源の数は、二つに限定されない。
【0072】
ラインセンサ53Aは、貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射しないように、かつ、貯留ローラ41に貯留された糸Yを反射する発光部55からの光が入射するような位置に設けられている。例えば、ラインセンサ53Aは、図4(C)に示されるように、0°~30°の範囲の照射角度θで光を出射する。「貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射しないようにラインセンサ53Aが配置されている」とは、発光部55からこのような角度で出射される光が貯留ローラ41の外周面41dに全反射し、その反射した光が入射しないような位置にラインセンサ53Aが配置されていることを意味する。
【0073】
ここで、回転軸C1に直交する直線の一つを第一直線L1と仮想的に設定し、第一直線L1に平行かつ貯留ローラ41の外周面41dに接する直線の一つを第二直線L2と仮想的に設定する。本実施形態では、貯留ローラ41の回転軸C1が延在する方向から見た平面視において、発光部55は、第一直線L1上、又は、第一直線L1及び第二直線L2の配列方向においてラインセンサ53Aと第一直線L1との間に配置されている。これにより、発光部55は、第一直線L1及び第二直線L2の間に位置する貯留ローラ41の一部分に対して光を出射することができる。ラインセンサ53Aは、第二直線L2と第一直線L1との間に配置されている。ラインセンサ53Aの受光方向は、第一直線L1と略平行である。言い換えれば、ラインセンサ53Aには、第一直線L1と略平行方向から光が入射する。カバー47は、第一直線L1及び前記第二直線の配列方向において、第二直線L2に対して第一直線L1が配置された側とは反対側の領域に配置されている。
【0074】
カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dの一部に対向するように設けられている。カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dを反射した発光部55からの光の進行方向の少なくとも一部に設けられている。カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dを反射しない発光部55からの光の進行方向の少なくとも一部にも設けられていてもよい。カバー47において発光部55からの光が入射する箇所である対向面47aの少なくとも一部は、光の反射率を低くする色(例えば黒色)となるように形成されている。このように反射率を低くすることで、カバー47からの反射光が貯留ローラ41に入射されることを防ぐことができる。これにより、カバー47によって反射された光がラインセンサ53Aに検出されることによって糸Yから反射される光を適切に検出できなくなることを防止できる。
【0075】
なお、カバー47を設けなくても、発光部55からの光の進行方向に光を反射する構造部を配置しないように糸貯留装置40の周辺を構成してもよい。仮に、発光部55からの光の進行方向に光を反射する構造部を配置する場合でも、反射した光がラインセンサ53Aに到達するときには十分減衰するような位置に配置された構造物であれば、糸Yから反射される光を適切に検出できなくなることを防止できる。
【0076】
本実施形態の制御部25は、貯留ローラ41の外周面41d(貯留領域A)における糸Yの有無を判定する。制御部25は、ラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて外周面41dにおける糸Yの有無を判定する。図5(A)は、貯留ローラ41の外周面41dを回転方向に一部が重複するように平面的に展開した図である。ラインセンサ53Aは、図5(A)に示される範囲Rにおける糸Yの有無を検出する。より詳細には、制御部25は、貯留ローラ41を低速(200rpm未満)で一周回転させると共に、貯留ローラ41を一周回転させたときのラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて外周面41dにおける糸Yの有無を判定する。
【0077】
なお、貯留ローラ41を高速(200rpm以上)で一周回転させると共に、貯留ローラ41を一周回転させたときのラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて外周面41dにおける糸Yの有無を判定してもよい。本実施形態のラインセンサ53Aでは、高速で回転する貯留ローラ41では、第一凹部43a及び第二凹部43bによる反射光の影響が小さくなる。このため、第一凹部43a及び第二凹部43bによる反射光は無視する事で貯留量の検出を行うことができる。この場合、図5(C)に示されるように、糸Yが密集する部分YCでは、反射光が多くなるのでラインセンサ53Aによって検出され易い。一方、糸Yが密集する部分YCから引き出される一本の糸部分Y1では、反射光が少なくなるのでラインセンサ53Aによって検出され難い。
【0078】
例えば、制御部25は、図4(C)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dに糸Yが存在するとき、発光部55から出射された光は、上述したように外周面41dによって反射したとしてもラインセンサ53A側に反射せず、カバー47側に向かって反射する。代わりに、外周面41dに糸Yが存在する場合、糸Yによって反射される光は、ラインセンサ53A側に反射し、ラインセンサ53Aによってその光が検出される。
【0079】
このときのラインセンサ53Aによる検出結果は、例えば図6に示されるようなデータとして制御部25によって取得される。図6に示されるデータにおいて、相対的に光が多く検出される領域、すなわちBMP画像に変換すると白っぽい画像が取得される領域は、糸(白糸)Yが検出された領域を示し、相対的に光が少なく検出される領域、すなわちBMP画像に変換すると黒っぽい画像が取得される領域は、糸(白糸)Yが検出されない領域を示している。ラインセンサ53Aの検出結果における画素位置(ピクセル)は、直線区間S1における位置を示している。すなわち、制御部25は、ラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて、直線区間S1のどこに糸Yがあって、どこに糸Yがないかを判定することができる。このように、制御部25は、ラインセンサ53Aが検出する光の検出量に基づいて、図5(B)に示される範囲Rにおける糸Yの有無を正確に検出することができる。
【0080】
上述したとおり、本実施形態の貯留ローラ41の外周面41dには、第一凹部43a及び第二凹部43bが形成されている。制御部25は、基準となる第一凹部43aが一周回転したことを検出することによって、貯留ローラ41が一周回転したと判定する。制御部25は、モータの回転量や、凹部の箇所に目印(例えば磁気等)を設けることによって、第一凹部43a及び第二凹部43bの位置を把握することができる。しかしながら、第一凹部43a及び第二凹部43bよって反射した光は、ラインセンサ53A側に反射することがある。この場合、制御部25は、ラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて糸Yの有無を検出したとしても、正確に検出することができない。
【0081】
そこで、本実施形態の制御部25は、第一凹部43a及び第二凹部43bとは異なる位置におけるラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて外周面41dにおける糸Yの有無を判定する。詳細には、制御部25は、第一凹部43a及び第二凹部43bが形成されていない全ての領域におけるラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて外周面41dにおける糸Yの有無を判定する。より詳細には、図5(C)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dには、貯留ローラ41の回転方向に沿って複数の凹部(第一凹部43a及び第二凹部43b)が形成されると共に、回転方向において隣り合う凹部と凹部との間の領域である接続部41hが複数形成されている。制御部25は、複数の接続部41hのそれぞれの少なくとも一部の領域におけるラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて、貯留領域Aにおける糸Yの有無を判定する。
【0082】
制御部25は、第一凹部43a及び第二凹部43bがない領域で、貯留ローラ41の回転を止めた状態でラインセンサ53Aによるデータの取得をしてもよい。制御部25は、モータの回転量や、凹部の箇所に目印(例えば磁気等)を設けることによって、第一凹部43a及び第二凹部43bがない位置を把握することができる。言い換えれば、制御部25は、間欠的に貯留ローラ41を回転させながら、ラインセンサ53Aによるデータの取得をしてもよい。なお、制御部25は、貯留ローラ41を低速で回転させることにより、必要箇所だけ検出をしてもよい。また、制御部25は、貯留ローラ41を回転させることにより、常にラインセンサ53Aに検出をさせて、第一凹部43a及び第二凹部43bの箇所だけ、外周面41dにおける糸Yの有無を判定する処理をしなくてもよい。
【0083】
上記実施形態のワインダユニット2における作用効果について説明する。上記実施形態のワインダユニット2では、図4(A)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dに巻き付けられた糸Yを検出するラインセンサ53Aが、外周面41d(貯留領域A)において糸走行方向における上流側の端部と糸走行方向における下流側の端部との間を結ぶ直線区間S1の糸の有無を検出するラインセンサ53Aによって構成されている。これにより、貯留領域Aの各所において糸Yの有無を検出するセンサを設けることなく、貯留領域Aにおける上記直線区間S1における糸Yの有無を検出できるようになる。この結果、簡易な構成かつ安価に、糸貯留装置40に巻き付けられた糸Yの貯留量Vを検出することができる。
【0084】
上記実施形態のワインダユニット2では、図4(B)に示されるように、貯留ローラ41に向けて光を発光する発光部55を有しているので、ラインセンサ53Aによって受光する光に強弱(コントラスト)を付けることができ、制御部25による糸Yの検出精度を高めることができる。
【0085】
上記実施形態のワインダユニット2の発光部55は、図4(B)に示されるように、二つの光源55B,55Bと、二つの光源55B,55Bから出射される光を面発光に変換すると共に貯留ローラ41に向けて出射する光導波路55Cと、を有するので、発光部55より出射される光を均一化できる。これにより、糸Yを検出する際の精度を高めることができる。また、上記実施形態のワインダユニットのラインセンサ53Aは、図4(A)に示されるように、入射光を縮小するレンズ53Bを介して光を受光するように構成されているので、検出部53をコンパクトに設けることができる。
【0086】
上記実施形態のワインダユニット2のラインセンサ53Aは、図4(C)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射しないように、かつ、貯留ローラ41に貯留された糸Yを反射する発光部55からの光が入射するような位置に設けられている。これにより、貯留ローラ41に巻き付けられる糸Yが光を反射し易い白色系の糸Yの検出精度を高めることができる。詳細には、上記実施形態のワインダユニット2の構成では、貯留ローラ41に貯留された糸Yのみからの反射光に基づいて糸Yの有無が検出されるようになり、糸Y以外の部分から反射する光がラインセンサ53Aに入射することが低減されるので、糸Yの検出精度を高めることができる。
【0087】
上記実施形態のワインダユニット2の糸貯留装置40では、図4(C)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dの一部に対向するカバー47を備えており、当該カバー47は、貯留ローラ41の外周面41dを反射した発光部55からの光の進行方向の一部に設けられている。これにより、貯留ローラ41において発生する風綿が各所に飛散したり、貯留ローラ41の回転によって発生する気流をコントロールして、糸端が周辺構成に接触したりすることを抑制できる。更に、カバー47は、発光部55からの光が入射する対向面47aが黒色に形成されているので、貯留ローラ41の外周面41dを反射した発光部55からの光を吸収することができる。これにより、糸Y以外の部分から反射する光(外乱光)がラインセンサ53Aに入射することが低減されるので、制御部25による糸Yの検出精度を高めることができる。
【0088】
上記実施形態のワインダユニット2の制御部25は、少なくとも貯留ローラ41を一周回転させると共に、貯留ローラ41を一周回転させたときのラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて貯留領域Aにおける糸Yの有無を判定している。これにより、貯留ローラ41を構成する外周面41dの全ての領域における糸Yの有無を検出することができるので、制御部25による糸Yの検出精度を高めることができる。
【0089】
ワインダユニット2では、糸Y等に不具合が発見され、貯留ローラ41に貯留された糸Yを解舒したり、除去したりするときに、貯留ローラ41に糸Yが残留することがある。そして、このように糸Yが残った状態で糸継を開始して、貯留ローラ41に新たな糸Yを貯留されると、糸Yがからまったり、糸切れが発生したりする。上記実施形態のワインダユニット2では、制御部25によって糸Yがあることが確認されたとき、貯留ローラ41に糸Yを貯留する動作を禁止させてもよい。この場合、貯留ローラ41に糸Yが残った状態で、貯留ローラ41に糸Yを貯留する動作を実行することを未然に停止できるので、ワインダユニット2において、糸Yがからまったり、糸切れが発生したりすることを抑制できる。また、制御部25によって糸Yがあることが確認されたときは、その旨を作業者に報知するように構成されてもよい。
【0090】
上記実施形態のワインダユニット2の制御部25は、基準となる第一凹部43aが一周回転したことを検出することによって、貯留ローラ41が一周回転したと判定している。これにより、制御部25は、簡易な方法で貯留ローラ41が一周回転したことを判定することができる。
【0091】
上記実施形態のワインダユニット2の制御部25は、第一凹部43a及び第二凹部43bとは異なる位置におけるラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて貯留領域Aにおける糸Yの有無を判定している。これにより、第一凹部43a及び第二凹部43bがラインセンサ53Aによって検出されたり、されなかったりすることによって、制御部25が糸Yの有無を誤判定すること低減できる。
【0092】
上記実施形態のワインダユニット2の制御部25は、第一凹部43a及び第二凹部43bが形成されていない全ての位置におけるラインセンサ53Aによる検出結果に基づいて貯留領域Aにおける糸Yの有無を判定している。これにより、外周面41dに第一凹部43a及び第二凹部43bが形成された貯留ローラ41において、糸Yの検出精度を高めることができる。
【0093】
(変形例A1)
上記実施形態のワインダユニット2では、ラインセンサ53Aは、図4(C)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射しないように、かつ、貯留ローラ41に貯留された糸Yを反射する発光部55からの光が入射するような位置に設けられている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、ラインセンサ53Aは、図7(A)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光が入射するような位置に設けられてもよい。このような変形例A1に係る構成では、貯留ローラ41に巻き付けられる糸Yが光を反射しづらい、特に黒色(有色)系の糸Yの検出精度を高めることができる。
【0094】
詳細には、例えば、制御部25は、貯留ローラ41の外周面41dに糸Yが存在するとき、発光部55から出射された光は、糸Yによって吸収され、ラインセンサ53A側に反射しない。一方、貯留ローラ41の外周面41dに糸Yが存在しないとき、外周面41dによって反射した光はラインセンサ53A側に反射し、ラインセンサ53Aによってその光が検出される。
【0095】
このときのラインセンサ53Aによる検出結果は、例えば図8に示されるようなデータとして制御部25によって取得される。図8に示されるデータにおいて、相対的に光が多く検出される領域、すなわちBMP画像に変換すると白っぽい画像が取得される領域は、糸(黒糸)が検出されない領域を示し、相対的に光が少なく検出される領域、すなわちBMP画像に変換すると黒っぽい画像が取得される領域は、糸(黒糸)が検出された領域を示している。
【0096】
(変形例A2)
変形例A1では、発光部55を貯留ローラ41とカバー47との間に配置した例を挙げて説明したが、風綿対策、貯留ローラ41の回転により生じる気流のコントロール(任意の方向に一様な流れとしたい)及び周辺構成に対する糸端の衝突等を考慮すると、可能な限り貯留ローラ41とカバー47との間には余計な物は配置したくないという事情がある。そこで、図7(B)に示されるように、カバー47にスリット47bを設け、スリット47bを介して発光部55からの光を貯留ローラ41に入射させ、貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光をラインセンサ53Aに入射させてもよい。
【0097】
(変形例A3)
上記実施形態は、反射率が相対的に高い白色系の糸Yを使用する場合に適した構成であり、上記変形例A1及び変形例A2は、反射率が相対的に低い黒色(有色)系の糸Yを使用する場合に適した構成である。変形例A3では、白色系の糸Yと黒色(有色)系の糸Yとを交換しながら使用したい場合に適した構成の一例について説明する。例えば、変形例A3に係るワインダユニット2は、白色系の糸Y検出用の発光部55である白色糸用発光部552(55)を含む上記実施形態の構成に、変形例A2に係る黒色(有色)系の糸Y検出用の発光部55である有色糸用発光部551(55)と、カバー47と、を加え、一つのラインセンサ53Aによって、白色系の糸Yと、黒色(有色)系の糸Yとの両方を検出できる構成としてもよい。しかしながら、このような構成とした場合、白糸系の糸Yを検出する場合には、上記実施形態の有色糸用発光部551から出射される光がスリット47bに入射し、ラインセンサ53Aによる検出結果に悪影響(誤検出の原因)を与えることがある。そこで、変形例A3では、図9(A)に示されるように、スリット47bに扉48を設けると共に、アクチュエータ(シリンダ又はソレノイド等)で扉48を開閉する構成としている。そして、制御部25は、黒色(有色)系の糸Yを検出するときには扉48を開き、白糸系の糸Yを検出するときには扉48を閉めるように、アクチュエータを制御している。
【0098】
また、上述した通り、白糸系の糸Yを検出する場合と、黒色(有色)系の糸Yを検出する場合とでは、扉48の開閉の有無と、糸検出方法(すなわち、光を検出した場合に糸Yが有ると判断することと、光を検出しない場合に糸Yがあると判断する)とを変更する必要がある。変形例A3に係るワインダユニット2では、白色糸用の検出モードである白色糸検出モードと、有色糸用の検出モードである有色糸検出モードと、を選択的に切り替え可能なモード切替部としての制御部を備える。制御部は、白色糸検出モードが選択されたときには、白色糸用発光部552に光を発光させると共に、ラインセンサ53Aによって受光された部分に糸Yが有ると判定し、有色糸検出モードが選択されたときには、有色糸用発光部551に光を発光させると共に、ラインセンサ53Aによって光が受光されない部分に糸Yが有ると判定する。変形例A3に係るワインダユニット2では、例えば、機台制御装置3(又は機台制御装置3に類する装置)を介して上記検出モードを設定することができるように構成されており、当該モードを設定することによって、白糸系の糸Yを検出する場合に適した扉の状態及び検出方法と、黒色(有色)系の糸Yを検出する場合に適した扉の状態及び検出方法と、を切り替えることができる。
【0099】
なお、スリット47bと扉48とを備える変形例A3の構成に代えて、カバー47の端部を伸縮可能な構成として、黒色(有色)系の糸Yを検出するときにはカバー47の端部を縮め、白糸系の糸Yを検出するときにはカバー47の端部を伸ばすように制御してもよい。なお、扉48又は伸縮可能なカバー47の代わりに、使用する糸種(黒色系又は白色系)に応じて作業者がつい立等を設置してもよい。
【0100】
(変形例A4)
変形例A4に係るワインダユニット2は、変形例A3に係るワインダユニット2と同様に、白色系の糸Yと黒色(有色)系の糸Yとを交換しながら使用したい場合に適した構成の一例である。変形例A4に係るワインダユニット2の構成が、変形例A3に係るワインダユニット2の構成と異なるのは、図9(B)に示されるように、白色糸用発光部552(55)が発光する光を検出する白色糸検出用ラインセンサ532と、有色糸用発光部551(55)が発光する光を検出する有色糸検出用ラインセンサ531と、が設けられている点である。
【0101】
有色糸用発光部551は、スリット47bを介して貯留ローラ41の外周面41dに光を照射し、有色糸検出用ラインセンサ531は、貯留ローラ41の外周面41dを反射する有色糸用発光部551からの光が入射するような位置に設けられている。また、白色糸用発光部552は、貯留ローラ41の外周面41dに光を照射し、白色糸検出用ラインセンサ532は、貯留ローラ41の外周面41dを反射する白色糸用発光部552からの光が入射しないように、かつ、貯留ローラ41に貯留された糸Yを反射する白色糸用発光部552からの光が入射するような位置に設けられている。
【0102】
黒色(有色)系の糸Yを使用する場合、かつ貯留ローラ41に糸Yが貯留されているか否かを判定するときに、制御部25は、扉48を開放する。白色系の糸Yを使用する場合、又は貯留ローラ41に黒色(有色)系の糸Yが貯留されているか否かを判定しない場合、制御部25は、扉48を閉める。これにより、一のワインダユニット2において、白色系の糸Yと黒色(有色)系の糸Yとを交換しながら使用することができる。
【0103】
スリット47bには、透明窓が設けられてもよく、この場合の透明窓の透過率は、例えば、0.4~0.6とすることができる。なお、透明窓は、変形例A2及びA3においても用いることができる。
【0104】
(変形例A5)
変形例A3及び変形例A4では、糸貯留装置40としてカバー47が設けられる構成を例に挙げて、白色系の糸Yと黒色(有色)系の糸Yとを交換しながら使用したい場合に適した構成の一例を説明したが、カバー47を設けない構成とすることもできる。例えば、図10(A)及び図10(B)に示されるように、検出部53と、発光部55と、を含んで構成されている検出装置50を、貯留ローラ41に対して相対的に移動可能に設けてもよい。ここでいう検出装置50の移動には、水平移動及び回転移動の少なくとも一方が含まれる。検出装置50は、手動で移動可能な構成とされてもよいし、アクチュエータ等によって移動可能な構成とされてもよい。
【0105】
変形例A5に係るワインダユニット2では、黒色(有色)系の糸Yを使用する場合、図10(A)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dに発光部55が光を出射するような位置、かつ貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光がラインセンサ53Aに入射するような位置に、検出装置50が移動させる。白色系の糸Yを使用する場合、図10(B)に示されるように、貯留ローラ41の外周面41dに発光部55が光を照射するような位置、かつ貯留ローラ41の外周面41dを反射する発光部55からの光がラインセンサ53Aに入射しないような位置、かつ、貯留ローラ41に貯留された糸Yを反射する発光部55からの光が入射するような位置に、検出装置50が移動される。変形例4に係るワインダユニット2では、一のワインダユニット2において、白色系の糸Yと黒色(有色)系の糸Yとを交換しながら使用することができる。
【0106】
(その他の変形例A)
上記実施形態及び上記変形例A1~A5では、貯留ローラ41の外周面41dに第一凹部43a及び第二凹部43bが形成された例を挙げて説明したが、第一凹部43a及び第二凹部43bが形成されていなくてもよいし、第一凹部43a及び第二凹部43bの一方のみが形成されていてもよい。
【0107】
また、貯留ローラ41の外周面41dに設けられる第一凹部43a及び第二凹部43bにおける鏡面加工(メッキ)の有無によって、糸Yの検出方法を変えてもよい。
【0108】
例えば、第一凹部43a及び第二凹部43bにおける鏡面加工(メッキ)が有る場合、図10(A)に示されるような検出装置50の配置において黒色(有色)系の糸Yを検出するようにしてもよい。黒色(有色)系の糸Yを検出する場合、第一凹部43a及び第二凹部43bが無い部分でのラインセンサ53Aの検出結果を用いることが好ましいが、これに限定されない。また、図10(B)に示されるような検出装置50の配置において白糸系の糸Yを検出するようにしてもよい。白糸系の糸Yを検出する場合、第一凹部43a及び第二凹部43bが無い部分でのラインセンサ53Aの検出結果を用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0109】
例えば、第一凹部43a及び第二凹部43bにおける鏡面加工(メッキ)が無い場合、図10(A)に示されるような検出装置50の配置において白糸系の糸Yを検出するようにしてもよい。白糸系の糸Yを検出する場合、第一凹部43a及び第二凹部43bを検出することによって白糸系の糸Yを検出する。また、図10(B)に示されるような検出装置50の配置において黒色(有色)系の糸Yを検出するようにしてもよい。なお、図10(B)に示されるような配置において、第一凹部43a及び第二凹部43bが無い部分での白糸系の糸Yを検出してもよい。
【0110】
(4)貯留ローラ41における重ね巻き部Fの発生と検出
(4-1)
本実施形態のワインダユニット2においては、通常の糸巻取運転時、給糸部6側の下流糸吹送り部80から貯留ローラ41の一端側のテーパ部41aに案内された糸Yは、貯留ローラ41の回転に伴い、貯留ローラ41の外周面41dの貯留領域Aの一端側(上流側)から前の糸層を押し上げながら順次貯留ローラ41に巻き付いていく。貯留ローラ41の貯留領域A上に既に巻き付けられている糸Yは、新しく巻き付けられた糸Yによって押され、他端側(下流側)へ順次送られる。これにより、正常な糸巻取運転時には、図11に示すよう、貯留ローラ41の外周面41dにおいて、糸Yが螺旋状に整列して上流端側から下流端側に向かって規則正しく巻き付いていく。
【0111】
ところが、テンション変動等の要因によって、このような糸送りが乱れた場合には、図12に示すように、糸Yが一重にではなく、二重以上に重なって巻き付けられる、糸の重ね巻き部Fが生じる場合がある。このような重ね巻き部Fの発生は好ましくない。重ね巻き部Fが発生すると、糸Yに掛かるテンションに不均一が生じ、貯留ローラからの糸の解舒が定常的に進まなくなる、又は、糸にストレスがかかり、糸の太さの不均一や糸が切れるといった不具合が発生する恐れがある。
【0112】
そこで、本開示の発明者は、このような重ね巻き部Fを検出するために鋭意検討を行った。その結果、貯留ローラ41の外周面41d上に重ね巻き部Fが発生するときには、糸の貯留上流端E1の位置が上流端側に移動することを見出した。
【0113】
図14は、ワインダユニット2の巻取運転時に、糸の貯留ローラ41上において、検出装置50によって測定した、糸の貯留上流端E1の位置(図11に示すように、貯留領域Aの上流側の端部から、糸の貯留上流端E1の位置までの距離DE1に相当する。)の時間変化を示す。なお、図14~19において、時間の起点は、便宜上記載されているもので、時間0が特定の時間(たとえば、貯留ローラが回転を開始した時間など)を指しているわけではない。また、縦軸の貯留上流端E1の位置についても、相対的な位置の変動を示しているのみであって、距離DE1そのものの値ではない。また、グラフの縦軸において上方が、貯留領域Aにおいて下流側に相当し、グラフの縦軸において下方が、貯留領域Aにおいて上流側に相当する。
【0114】
図14においては、時間t1の期間は、糸の巻取が正常に行われ、糸の貯留上流端E1の位置に大きな変動はない。しかし、時間t2の期間は、重ね巻き部Fが発生し、矢印x1に示すように、糸の貯留上流端E1の位置が大きく上流側に移動していた。
【0115】
そこで、本実施形態においては、このような糸の貯留上流端E1の位置の変動を利用して、糸の重ね巻き部Fの発生を検出する。つまり、糸の貯留上流端E1の位置が所定時間内に所定量以上の上流側への移動(距離DE1の低下)したときに、重ね巻き部Fが発生したと認定する。
【0116】
(4-2)
以上は本実施形態の糸の重ね巻き部Fの発生検出方法について、基本的な内容を説明したが、さらに精度よく重ね巻き部Fを検出するためには、更なる工夫が必要である。
【0117】
図15は、糸継ぎの前後で貯留上流端E1の位置の変化を示す一例である。なお、この場合は、糸継ぎのために、貯留ローラ41を逆回転させている。図15では、糸継ぎの過程で貯留上流端E1の位置は一旦下流側に大きく移動し、次に矢印x2に示すように、上流側に大きく移動するという変化を示し、また、糸継ぎ後の貯留上流端E1の位置は、糸継ぎ前の貯留上流端E1の位置と概略同じである。つまり、図15の場合には、図14の場合と同様に、貯留上流端E1の位置は大きく上流側に移動している部分がある(図の矢印x2の部分)が、図15の場合には、糸の重ね巻き部Fは生じていない。
【0118】
また、単に貯留上流端E1の位置が下がることにより、糸の重ね巻き部Fの発生とする検知が、誤検知に繋がる事例を図16~18を用いて説明する。
【0119】
図16は、糸Yに長い欠点があった場合に、貯留上流端E1側から長い吸引を行って貯留上流端E1側の糸を除去した場合である。この場合は、長い吸引の間(図16の時間t3の期間)、貯留上流端E1の位置は次第に下流側に移動していき、糸継ぎ後に通常巻取運転に復帰するのに伴い、矢印x3に示すように、貯留上流端E1の位置は、急激に上流側に移動する。この時は、糸の重ね巻き部Fは生じていない。そこで、貯留上流端E1の位置の急激な上流側への移動を糸の重ね巻き部Fの発生と認定すると、誤検知となる。
【0120】
図17は、糸の重ね巻き部Fなどの貯留ローラの糸の巻きの乱れがあり、貯留上流端E1側を作業者が手動で除去し(図17の時間t4で示した期間)、復帰し、糸継ぎ後、巻取運転を再開したときに、貯留上流端E1の位置は、図17の矢印x4で示すように、急激に下がっている。この場合も、糸の重ね巻き部Fは生じておらず、貯留上流端E1の急激な上流側への移動を糸の重ね巻き部Fの発生と認定すると、誤検知となる。
【0121】
一方、図18は、一旦、貯留上流端E1の位置が上流側へ移動し(図18の矢印x5で示す)、糸の重ね巻き部Fの発生と認定し、巻取運転を停止した後で、運転を再開した場合である。この場合は、貯留上流端E1の位置は、巻取運転を再開しても大きな変化はない(図18の矢印x6で示す)が、糸の重ね巻き部Fは、より多くの糸が重ねて巻かれていっている。
【0122】
(4-3)
以上を考慮して、貯留上流端E1の位置が上流側に移動したか否かのみならず、貯留上流端E1の位置が基準位置に比べて所定量以上、上流側に移動したか否かを、糸の重ね巻き部Fの発生と認定する判断基準に加える。図19の具体例を用いて説明する。図19では、糸継ぎ後、貯留ローラ41を駆動する駆動モータ45をオンにし、巻取運転に入る。図19で、貯留上流端E1の位置は、比較的安定しているが、時間がt5の所で、貯留上流端E1の位置は、急激に低下する。この時、貯留上流端E1の基準位置として、糸継前の巻取運転の安定した運転状態での貯留上流端E1の位置を基準位置とする。基準位置は、糸継ぎと糸継ぎの間の安定した巻取運転毎に更新が行われ、最新の基準位置が、糸の重ね巻き部Fの発生の認定に用いられる。ここで安定した巻取運転の期間には、貯留ローラ41を駆動する駆動モータ45がオンになり、糸が切れて駆動モータ45がオフになるまでの時間の内、駆動モータ45がオン直後の時間と、オフになる直前の時間を含まない。また、駆動モータ45がオンになった直後の時間は、糸の重ね巻き部Fが発生するか否かの判定を行わない。
【0123】
貯留上流端E1の位置が、所定時間で所定量以上、上流側に移動することに加えて、貯留上流端E1の位置が基準位置に比べて所定量以上、上流側に移動した場合に、糸の重ね巻き部Fの発生と認定することによって、より正確な糸の重ね巻き部Fの発生を認定することができる。
【0124】
つまり、本開示の方法は、糸の重ね巻き部Fの発生を直接観測するのではなく、より簡便な方法で、糸の重ね巻き部Fの発生を検出することができ、ワインダユニット2の制御に応用できる。
【0125】
(5)給糸ボビン交換後のテンション制御
給糸ボビンの糸が少なり、無くなる寸前には、貯留ローラ41の入側のテンション(貯留テンション)が高くなる。その後、給糸ボビンを交換し、新しい給糸ボビンをセッティングし、巻取運転を再開したとき、テンションの急変のために貯留ローラにおいて糸の重ね巻き部Fが発生する可能性が高くなる。
【0126】
そこで、本実施形態においては、給糸ボビンを交換して、所定の時間は、テンションを通常運転時よりも高くする。この制御によって、貯留ローラにおいて糸の重ね巻き部Fが発生する確率を低下させることができる。
【0127】
より、詳細には、図20を用いて説明する。給糸ボビン交換前後における、目標テンション、計測した貯留テンション、貯留ローラの回転速度の時間推移を示す。前の給糸ボビンの交換直前のテンションを計測し、そのテンションと略同一になるように、新しい給糸ボビン使用開始直後のテンションを制御する。テンションの制御値としては、交換直前のテンションと同一値となるよう制御する。しかしながら、巻き始めのテンションは変動しやすいので、実際のテンション値のズレが±15~20%の範囲に収まれば、略同一値で制御できたとして許容する。よって、給糸ボビンを交換直後のテンションが、給糸ボビンを交換直前のテンションと略同一とは、テンションの制御値としては、交換直前のテンションと同一値となるよう制御するが、実際のテンション値が、±15~20%の範囲内で制御されているのであれば、給糸ボビンを交換直後のテンションが、給糸ボビンを交換直前のテンションと同一であるとして扱うことを言う。
【0128】
この制御によって、貯留ローラにおいて糸の重ね巻き部Fが発生する確率を低下させることができる。
【0129】
(6)重ね巻き部Fを除去する運転方法
(6-1)
本実施形態のワインダユニット2において、糸の重ね巻き部Fを検知する方法についてはすでに説明した。ここでは、糸の重ね巻き部Fを検知したときに行われる、重ね巻き部除去運転について説明する。
【0130】
本実施形態のワインダユニット2の巻取運転の方法を、フローチャートに記載すると、図21のようになる。
【0131】
図21においては、最初に、ステップS101において、通常の巻取運転が行われる。
【0132】
次に、ステップS102において、制御部は、巻取が終了したか否かを判定する。巻取が終了した場合は、巻取運転のフローを終了する。巻取が終了していない場合には、ステップS103に進む。
【0133】
ステップS103では、制御部は、検出装置50の検知結果に基づいて、重ね巻き部Fが発生したか否かを判定する。重ね巻き部Fが発生しない場合には、ステップS101に戻り、巻取運転を継続する。重ね巻き部Fが発生しない場合には、ステップS101~ステップS103のループを繰り返し、ステップS102で巻取終了と判断したときに、巻取を終了する。
【0134】
ステップS103で重ね巻き部Fが発生した場合には、ステップS104へ進む。
【0135】
ステップS104は所定時間、重ね巻き部除去運転を行う。具体的な重ね巻き部除去運転の内容には、後で詳細に説明する。ここで、所定時間は、多くの重ね巻き部Fが除去できる時間に設定されている。所定時間は、固定しておいてもよいし、ロッドごとに規定、あるいは、実際の運転状況をフィードバックして適宜設定されてもよい。
【0136】
重ね巻き部Fが発生する位置は様々であり、又、重ね巻き部における重なる糸の量は様々である。重ね巻き部Fを完全に除去するのに要する時間は、重ね巻き部Fの重ね巻きの程度に合わせて様々である。所定時間は、あらゆる重ね巻き部が除去できるほどの長い時間には設定しないのが好ましい。通常は最もよく発生する形状の重ね巻き部が除去できる最低の時間に設定する。
【0137】
ステップS104で、所定時間、重ね巻き部除去運転を行った後で、ステップS101に戻り、巻取運転を再開する。再度、ステップS101、ステップS102、ステップS103と進む。再び、ステップS103で、重ね巻き部が発生しているか否かを判定する。重ね巻き部Fが発生していない場合には、ステップS101に戻り、巻取運転を継続する。
【0138】
ここで、ステップS103で重ね巻き部が発生しているという判定が再びなされた場合には、再び、ステップS104に進み、所定時間、重ね巻き部除去運転を行う。このようにすれば、1回目の重ね巻き部除去運転で、重ね巻き部Fの除去ができずに、再び重ね巻き部が直ぐに検知された場合でも、2回目の重ね巻き部除去運転で、重ね巻き部Fの除去ができる可能性がある。2回目で重ね巻き部Fが除去できなかった場合でも、3回目あるいは4回目以上のステップS101~S104のループを繰り返すことで、重ね巻き部Fの除去ができる可能性がある。
【0139】
このように、制御部が、ステップS101~S103のループ、又は、ステップS101~S104のループを組み合わせて実行することにより、重ね巻き部を適宜除去しながら、効率的な巻取運転を実施できる。
【0140】
(6-2)
次に、重ね巻き部除去運転について、詳細に説明する。
【0141】
本実施形態のワインダユニット2においては、巻取運転時に検出装置50が貯留ローラ41に重ね巻き部Fが発生しているのを検出すると、制御部25は、貯留ローラ41の回転を停止させ、カッタ15に糸Yを切断させる。制御部25は、貯留ローラ41を回転方向を逆転させ、比較的低速で回転させる。制御部は、吸引機構を制御して、貯留ローラ41に巻き付いている糸を貯留上流端E1側から吸引して除去する。吸引機構は、下流糸吹送り部80を含む。下流糸吹送り部80は、圧縮空気を噴出することにより、貯留ローラ41の貯留領域A上に存在する糸を貯留上流端側から吸引する。この時、綾振ドラム24は、停止させるかまたは低速で回転させる。以上のようにして、所定時間、貯留ローラ41を逆回転させて、貯留ローラ41に巻き付いている糸を上流端側から吸引除去することによって、図13に示すように、貯留上流端E1側の糸Yを除去する。これによって、重ね巻き部Fを除去することができる。貯留上流端E1側の糸Yを除去した後、制御部25は、糸継装置14によって、貯留ローラ41側の糸Yと、給糸ボビン21側の糸Yの糸継を行う。そして、貯留ローラ41を再び正転させ、綾振ドラム24を回転させて、通常の巻取運転を行う。
【0142】
既に、(6-1)で説明したように、貯留ローラ41を逆回転させて、貯留ローラ41に巻き付いている糸を上流端側から吸引除去する運転は、所定時間行えばよいのであって、常に完全に重ね巻き部Fが除去できなくてもよい。また、完全に重ね巻き部Fが除去できた場合でも、通常の巻取運転の再開後、直ぐに、重ね巻き部Fが生じる場合もある。そこで、(6-1)で説明したように、重ね巻き部Fが再び検出された場合には、重ね巻き部除去運転を再度実行する。
【0143】
このような貯留ローラ41に形成された重ね巻き部Fを除去する方法として、貯留領域の上流端側から糸を除去する方法は、以下の特徴を有する。まず、この方法は、重ね巻き部F等の異常テンションによる不具合部分をほぼ完全に除去することができ有効性が高い。また、重ね巻き部F等の異常部分又は異常はないが下流側に残留している糸と、再度の運転で上流側に巻かれた糸とが衝突しても再び重ね巻き部分が形成されにくい、というメリットがある。一方、吸引除去のため、屑糸が多く発生してしまう点、また、貯留ローラを低速で逆回転させるため、時間を長時間要する点もデメリットである。
【0144】
一方、重ね巻き部除去方法としては、下流端側から重ね巻き部Fを除去する方法も考えられる。綾振ドラム24を回転させ、パッケージに糸を巻き取りながら、貯留ローラ41は停止又は低速で回転させることによって上流側から貯留領域の糸を巻き取っていく。この場合は、屑糸が発生しない、比較的高速で重ね巻き部Fの除去ができる等のメリットを有する。しかしながら、重ね巻き部Fが大きい又は長いときに除去が不十分となる可能性が高い。また、重ね巻き部除去運転の後、貯留領域の上流側に糸が残るため、次に貯留ローラ41に巻き取られる糸と干渉して再び重ね巻き部Fが発生する可能性が高くなる。したがって、一般には、重ね巻き部除去方法としては、先に述べた上流端側から吸引除去する方法の方が好ましい。
【0145】
(変形例B1)
第1実施形態においては、検出装置50は、検出部53と発光部55とを含み、検出部53はラインセンサ53Aを含んでいた。変形例B1においては、図22(A)~(C)に示すように、検出装置50は、検出部53と発光部55とを含む。検出部53は、複数の受光センサ533を含む。複数の受光センサ533は、貯留ローラ41の外周面41dの外側に、貯留ローラ41の回転軸C1の延在方向に沿って、一列に配列されている。発光部55は、複数の光源55Bで構成されている。複数の光源55Bは、貯留ローラ41の外周面41dの外側に、貯留ローラ41の回転軸C1の延在方向に沿って、一列に配列されている。光源55Bの例は、LED(Light Emitting Diode)である。LEDは、LED基板55Aに設けられている。変形例B1の検出装置50において、検出部53と発光部55は、第1実施形態の検出部53と発光部55と同様の機能を果たす。
【0146】
(変形例B2)
変形例B2においては、図23に示すように、検出装置50は、ビデオカメラ540である。ビデオカメラ540は、貯留ローラ41の外周面41dの外側に配置されている。ビデオカメラ540は、貯留ローラ41の貯留領域Aを撮影し、糸の貯留上流端E1を検出する。そして、第1実施形態と同様に、検出装置50は、糸の貯留上流端E1の位置の変動を検出する。
【0147】
(変形例C1)
第1実施形態の糸巻取機は、糸貯留装置付きの自動ワインダを用いたものであった。変形例C1の糸巻取機は、糸貯留装置付きの空気紡績機であってもよい。空気紡績機は、空気の力で糸を紡績する。空気紡績機は、たとえば、特開2017-65896号公報に説明されている。特開2017-65896号公報の記載は、本明細書に、そっくりそのまま引用する。
【0148】
(変形例C2)
変形例C2の糸巻取機は、糸貯留装置付きのオープンエンド紡績機であってもよい。オープンエンド紡績機はロータの回転力で糸を紡績する。オープンエンド紡績機は、たとえば、特開昭60-36268号公報に説明されている。特開昭60-36268号公報の記載は、本明細書に、そっくりそのまま引用する。
【0149】
(7)実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
【0150】
ワインダユニット2(糸巻取機の一例)は、給糸部6(供給部の一例)と、パッケージ形成部8(巻取部の一例)と糸貯留装置40と、検出装置50と、制御部25とを備える。給糸部6は、糸を供給する。パッケージ形成部8は、給糸部6から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する。給糸部6とパッケージ形成部8との間では、糸Yが走行する糸走行経路が形成される。糸貯留装置40は、糸走行経路の途中に配置されている貯留ローラ41を有し、貯留ローラ41を回転させることによって給糸部6から送出される糸を貯留ローラ41の外周面41dの貯留領域aに巻き付けて糸を一時的に貯留する。検出装置50は、貯留ローラ41の外周面41dに巻き付けられた糸を検出する。制御部25は、貯留ローラ41の回転を制御し、かつ、検出装置50から検出データを取得し、貯留領域aにおいて重ね巻き部fが発生しているか否かを判定する。
【0151】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の糸巻取機は、品質の良いパッケージの効率の良い生産に適用できる。
【符号の説明】
【0153】
1…自動ワインダ、2…ワインダユニット、3…機台制御装置、6…給糸部(供給部)、8…パッケージ形成部(巻取部)、21…給糸ボビン、22…巻取ボビン、25…制御部、40…糸貯留装置、41…貯留ローラ、41d…外周面、43a…第一凹部、43b…第二凹部、45…駆動モータ、47…カバー、50…検出装置、53…検出部、53A…ラインセンサ、533…受光センサ、540…ビデオカメラ、53B…レンズ、55…発光部、55B…光源、55C…光導波路、A…貯留領域、E1…貯留上流端、Y…糸。
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