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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060504
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20240424BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240424BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240424BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240424BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240424BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J7/35
C09J133/04
C09J133/14
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167914
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB05
4J004CA01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD08
4J004CE01
4J004DA01
4J004DB02
4J004EA01
4J004FA01
4J004FA08
4J040EF002
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA20
4J040GA29
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA23
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA16
4J040PA20
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示し、被着体から発生する気泡の混入を良好に抑制でき、粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物の提供。
【解決手段】水酸基含有単量体単位を含み、Tgが0℃未満の重合体Aと、オルガノシロキサン骨格含有単量体単位を0.1~10質量%、単独重合体のTgが40℃以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を50超85質量%以下、及び(メタ)アクリル酸単位を0.01~0.5質量%含み、Mwが1万~40万、Tgが0℃以上の重合体Bと、HMDI系化合物及び/又はXDI系化合物とを含み、重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格含有単量体のMnが4000以上20000未満であり、重合体Bの含有量が重合体A100質量部に対して20超100質量部以下の粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて85質量%以下の範囲、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を全構成単位に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲で含み、重量平均分子量が1万以上40万以下の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以上である(メタ)アクリル系重合体(B)と、
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
を含み、
前記(メタ)アクリル系重合体(B)における前記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲であり、
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部を超えて100質量部以下の範囲である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記オルガノシロキサン骨格を有する単量体が、下記式(1)で表される化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】


式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、1価の有機基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表すが、m及びnが同時に0を表すことはない。
【請求項3】
基材と、
前記基材の一方の面上に設けられ、かつ、請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面と、前記基材の他方の面とが当接して積層されてなるロール体である請求項3に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤組成物及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に物品を固定するために粘着剤が用いられている。被着体への物品の位置固定が難しく、貼り直す可能性がある場合に用いられる粘着剤に対しては、貼り合わせの初期には軽剥離性を示し、かつ、貼り直す可能性がなくなった時点で高い粘着力を示すように制御可能な粘着剤層を形成できることが求められる。このような求めに対し、種々の感温性の粘着剤が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材と、上記基材の少なくとも片側に積層されている粘着剤層と、を有する粘着シートであって、上記粘着剤層をステンレス(430BA板)に対して貼り合わせ後23℃で10秒間放置した後の粘着力N1が1.0[N/20mm]以下であり、貼り合わせ後80℃で5分エージングした後の粘着力N2が3.0[N/20mm]以上であり、かつ、N2/N1が5.0以上となるように構成されている粘着シートが開示されている。特許文献1に記載の粘着シートによれば、貼り合わせ直後の粘着剤層の粘着力が低いため貼り直しが容易であり、かつ、時間の経過に伴い粘着剤層の粘着力が上昇することでしっかりと固定できるとされている。
また、特許文献2には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、官能基当量が1000g/mol以上4600g/mol以下であるポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)及びホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)をモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満である重合体(B)0.1質量部~20質量部と、を含み、上記重合体(B)が、上記モノマー(B1)を10質量%~20質量%含み、上記モノマー(B2)を30質量%~50質量%含む重合体である粘着剤組成物が開示されている。特許文献2に記載の粘着剤組成物によれば、貼り付け初期はリワーク可能な程度に粘着力が低く、経時後は被着体に強固に接着できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/163115号
【特許文献2】特開2017-203164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境問題に対応した製品の開発が進んでおり、粘着剤の分野においても環境への配慮が求められている。例えば、片面粘着テープには、一般に、実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護するために剥離フィルムが設けられているが、剥離フィルムを有しない形態の粘着テープ(以下、「セパレータレス型の粘着テープ」ともいう。)、例えば、基材の一方の面上に形成した粘着剤層の露出した面を、基材の他方の面に当接させてロール状に巻回した形態の粘着テープとすることで、廃棄物を減らすことが可能となる。しかし、感温性の粘着剤により形成された粘着剤層は、経時で粘着力が上昇する傾向があるため、セパレータレス型の粘着テープにすると、保管中に粘着剤層の粘着力が上昇し、粘着剤層を粘着テープの自背面から剥離することが困難となる場合がある。
【0006】
ところで、感温性の粘着剤により形成された粘着剤層では、加熱により粘着力を上げるため、被着体と貼り合わせた後に加熱を行うと、被着体の材質によっては、被着体からアウトガス(所謂、揮発ガス)が発生し、粘着剤層に気泡が混入する場合がある。粘着剤層への気泡の混入は、外観を損なうだけでなく、粘着剤層が被着体から剥がれる要因にもなり得る。
【0007】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の実施形態が解決しようとする課題は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制でき、加えて、セパレータレス型の粘着テープとした場合に粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、及び、粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて85質量%以下の範囲、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を全構成単位に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲で含み、重量平均分子量が1万以上40万以下の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以上である(メタ)アクリル系重合体(B)と、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含み、上記(メタ)アクリル系重合体(B)における上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲であり、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部を超えて100質量部以下の範囲である粘着剤組成物。
【0009】
<2> 上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体が、下記式(1)で表される化合物である<1>に記載の粘着剤組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、1価の有機基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表すが、m及びnが同時に0を表すことはない。
【0012】
<3> 基材と、上記基材の一方の面上に設けられ、かつ、<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える粘着テープ。
<4> 上記粘着剤層の上記基材とは反対側の面と、上記基材の他方の面とが当接して積層されてなるロール体である<3>に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0013】
本開示の実施形態によれば、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制でき、加えて、セパレータレス型の粘着テープとした場合に粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、及び、粘着テープが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の粘着剤組成物及び粘着テープについて、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0015】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0016】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0017】
本開示において、粘着剤組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0018】
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の占める割合が50質量%以上である重合体を意味する。
【0019】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の両方を包含する用語である。
【0020】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0021】
本開示において、「基材の背面」とは、基材の粘着剤層が塗布形成されていない側の面を指す。
【0022】
[粘着剤組成物]
本開示の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて85質量%以下の範囲、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を全構成単位に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲で含み、重量平均分子量が1万以上40万以下の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以上である(メタ)アクリル系重合体(B)と、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含み、上記(メタ)アクリル系重合体(B)における上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲であり、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部を超えて100質量部以下の範囲である。
本開示の粘着剤組成物は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制でき、加えて、セパレータレス型の粘着テープとした場合に粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者は以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0023】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体は、その構造に由来する極性の低さから、(メタ)アクリル系重合体(B)を、粘着剤層の接着面に偏在させる傾向がある。ここで、「粘着剤層の接着面」としては、例えば、粘着剤層と被着体との界面が挙げられる。また、セパレータレス型の粘着テープにおける「粘着剤層の接着面」としては、例えば、粘着剤層と粘着テープの自背面(例えば、基材の背面)との界面が挙げられる。
本開示の粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率、及び、(メタ)アクリル系重合体(A)に対する(メタ)アクリル系重合体(B)の含有割合の調整により、(メタ)アクリル系重合体(B)を粘着剤層の接着面に適度に偏在させることを可能とした。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、(メタ)アクリル系重合体(B)が接着面に適度に偏在するため、SUS等の被着体に対して、貼り合わせ初期に軽剥離性を示すと推測される。また、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、(メタ)アクリル系重合体(B)が接着面に適度に偏在し、かつ、ガラス転移温度が比較的低い(メタ)アクリル系重合体(A)を適度に含むことで凝集力が過度に高くならないため、粘着テープの自背面(例えば、基材の背面)に対して、貼り合わせ初期に軽剥離性を示すと推測される。
【0024】
また、本開示の粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系重合体(A)及び(メタ)アクリル系重合体(B)の単量体組成、(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度等の調整により、粘着剤層の接着面における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の適度な偏在を維持させるとともに、粘着剤層の接着面の硬さを調整した。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、(メタ)アクリル系重合体(B)の接着面への適度な偏在が維持され、かつ、接着面が過度に硬くならないため、粘着テープの自背面(例えば、基材の背面)に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難いと推測される。
【0025】
また、本開示の粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率、及び、(メタ)アクリル系重合体(A)に対する(メタ)アクリル系重合体(B)の含有割合の調整により、(メタ)アクリル系重合体(B)を粘着剤層の接着面に適度に偏在させ、かつ、(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量の調整により、加熱した際の粘着剤層の被着体への濡れ広がりを調整した。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、(メタ)アクリル系重合体(B)が接着面に過度に偏在せず、また、加熱されることで被着体に対して濡れ広がるため、加熱後は高い粘着力を示すと推測される。
【0026】
また、本開示の粘着剤組成物では、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系重合体(B)が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含み、(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、架橋剤として機能する特定の化合物、すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を選択することで、架橋反応を制御した。本開示の粘着剤組成物では、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)の架橋反応が水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)の架橋反応よりも先に進行すると考えられる。粘着剤層の接着面に適度に偏在した(メタ)アクリル系重合体(B)が(メタ)アクリル系重合体(A)よりも先に架橋することで、被着体から発生したアウトガスがブロックされるため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層によれば、気泡の混入を良好に抑制できると推測される。
【0027】
一方、特許文献1(国際公開第2015/163115号)及び特許文献2(特開2017-203164号公報)における粘着剤組成物の設計は、常温(即ち、5℃~35℃の温度)環境下においても、一定の期間が経過すると粘着剤層の粘着力の上昇が起こり得る設計であり、特許文献1及び特許文献2には、粘着テープをセパレータレス型にするという着目はないと考えられる。また、特許文献1及び特許文献2には、架橋反応の制御により、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を抑制することへの着目もない。
【0028】
本開示では、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)」を「特定(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。
また、本開示では、「オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて85質量%以下の範囲、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を全構成単位に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲で含み、重量平均分子量が1万以上40万以下の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以上である(メタ)アクリル系重合体(B)であって、上記(メタ)アクリル系重合体(B)における上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲である(メタ)アクリル系重合体(B)」を「特定(メタ)アクリル系重合体(B)」ともいう。
本開示では、「特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)」を「特定(メタ)アクリル系重合体」と総称する場合がある。
【0029】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕
本開示の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0030】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、共重合体であることが好ましい。
【0031】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
本開示において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0032】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの水酸基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0033】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好である点において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0035】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、形成される粘着剤層の加熱後の粘着力が高くなりやすいとの観点から、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、5質量%以上25質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以上25質量%以下の範囲であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0036】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。なお、本開示における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、水酸基を有する単量体に該当する単量体、及び、カルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は包含されないものとする。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、無置換であってもよく、置換基(但し、カルボキシ基及び水酸基を除く。)を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体を製造しやすいとの観点から、n-ブチルアクリレート(n-BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、及びメチルアクリレート(MA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0039】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上95質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下の範囲であることがより好ましく、70質量%以上85質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0041】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
本開示において「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0042】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、及びコハク酸誘導体(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)が挙げられる。
【0043】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、或いは、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて1質量%以下の範囲であることが好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、或いは、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて0.5質量%以下の範囲であることがより好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが更に好ましい。
【0044】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が含み得るその他の構成単位としては、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
【0045】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0047】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、0℃未満であり、-70℃以上0℃未満の範囲であることが好ましく、-70℃以上-10℃以下の範囲であることがより好ましく、-70℃以上-20℃以下の範囲であることが更に好ましく、-70℃以上-30℃以下の範囲であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が0℃未満であると、形成される粘着剤層は、粘着テープの自背面に対して貼り合わせ初期に軽剥離性を示し、かつ、その軽剥離性が経時で損なわれ難い傾向を示す。
【0048】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K)をセルシウス温度(単位:℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0049】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0050】
本開示における「単独重合体としたときのガラス転移温度」には、公知資料に記載された値、又は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定された値を採用するものとする。いずれの値を採用するかは、具体的には、以下のとおりとする。
【0051】
以下に示す単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、それぞれ記載した値を採用する。
2-エチルヘキシルアクリレート:-70℃、2-エチルヘキシルメタクリレート:-10℃、n-ブチルアクリレート:-54℃、n-ブチルメタクリレート:20℃、t-ブチルアクリレート:43℃、t-ブチルメタクリレート:118℃、i-ブチルメタクリレート:53℃、メチルアクリレート:10℃、メチルメタクリレート:105℃、エチルアクリレート:-22℃、エチルメタクリレート:65℃、メタクリル酸:228℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート:-80℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート:-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:85℃、アクリル酸:106℃、n-オクチルアクリレート:-65℃、ステアリルアクリレート:30℃、ステアリルメタクリレート:38℃、ラウリルアクリレート:-3℃、ラウリルメタクリレート:-65℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート:18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート:-30℃、フェノキシエチルアクリレート:-22℃。
【0052】
上記した単量体以外の単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、ポリマーハンドブック(第4版、Wiley-Interscience;以下、同じ。)に記載された値を採用し、ポリマーハンドブックに記載がない場合には、以下の測定方法により得られる単独重合体のガラス転移温度の値を採用する。
【0053】
-単独重合体のガラス転移温度の測定-
示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、窒素気流中、測定試料(即ち、単独重合体)10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度とする。
示差走査熱量測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(商品名:Discovery DSC 2500)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量測定装置は、これに限定されない。
【0054】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0055】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、40万を超えて250万以下の範囲であることが好ましく、45万以上250万以下の範囲であることがより好ましく、50万以上250万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が40万を超えると、形成される粘着剤層は、被着体及び粘着テープの自背面に対して貼り合わせ初期に、より良好な軽剥離性を示す傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が粘着剤層の接着面により偏在しやすくなるためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が250万以下であると、粘着剤組成物の粘度が過度に上昇せず、粘着剤組成物の塗工性がより良好となる傾向を示す。
【0056】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量を求める。
【0057】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0058】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0059】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、40.0質量%以上82.9質量%以下の範囲であることが好ましく、45.0質量%以上82.7質量%以下の範囲であることがより好ましく、49.5質量%以上82.5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0060】
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0061】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕
本開示の粘着剤組成物は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて85質量%以下の範囲、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を全構成単位に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲で含み、重量平均分子量が1万以上40万以下の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以上である(メタ)アクリル系重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕を含み、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が4000以上20000未満の範囲である。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0062】
<オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位(以下、「構成単位b1」ともいう。)を全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲で含む。また、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、4000以上20000未満の範囲である。
本開示において、「オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位(即ち、構成単位b1)」とは、オルガノシロキサン骨格を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0063】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の種類は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が4000以上20000未満の範囲に調整できるものであれば、特に限定されない。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の具体例としては、下記の式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化2】

【0065】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
【0066】
式(1)中、Rは、1価の有機基を表す。
で表される1価の有機基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよい。
1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
がアルキル基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
がアルケニル基を表す場合のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及び2-プロペニル基が挙げられ、ビニル基が好ましい。
がアルキニル基を表す場合のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基が挙げられ、エチニル基が好ましい。
がアリール基を表す場合のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、及びピリジル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0067】
式(1)中、m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表すが、m及びnが同時に0を表すことはない。
mは、1~10の整数であることが好ましく、1~6の整数であることがより好ましい。nは、1~250の整数であることが好ましく、5~200の整数であることがより好ましく、10~200の整数であることが更に好ましい。
【0068】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体としては、市販品を使用できる。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の市販品の例としては、X-22-174ASX〔商品名、数平均分子量:1100、信越化学工業(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0711〔商品名、数平均分子量:1200、JNC(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0721〔商品名、数平均分子量:6500、JNC(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0725〔商品名、数平均分子量:15000、JNC(株)製〕、KF-2012〔商品名、数平均分子量:5400、信越化学工業(株)製〕、及び、X-22-2426〔商品名、数平均分子量:13800、信越化学工業(株)製〕が挙げられる。
以上の市販品は、いずれも式(1)で表される化合物に該当する。
【0069】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量(「Mn」ともいう。)は、4000以上20000未満の範囲であり、4200以上20000未満の範囲であることが好ましく、4500以上20000未満の範囲であることがより好ましく、5000以上20000未満の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、例えば、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の入手容易性の観点から、20000未満である。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が4000以上であると、形成される粘着剤層は、粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い傾向を示す。理由としては、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の極性が十分に低くなり、粘着剤層の接着面への(メタ)アクリル系重合体(B)の偏在が十分に維持されるためと考えられる。
【0070】
本開示において、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)及び(2)に従って測定する。
(1)オルガノシロキサン骨格を有する単量体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占めるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の質量割合を意味する。
(2)下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量を求める。
【0071】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0072】
なお、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が数平均分子量の異なる2種以上のオルガノシロキサン骨格を有する単量体を含む場合、「特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量」は、算術平均した値を意味し、具体的には、下記の式により計算される値をいう。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量 = 〔単量体1の数平均分子量×単量体1の配合量+単量体2の数平均分子量×単量体2の配合量+・・・+単量体nの数平均分子量×単量体nの配合量〕/〔単量体1の配合量+単量体2の配合量+・・・+単量体nの配合量〕
【0073】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、構成単位b1を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0074】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b1の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲である。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b1の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上であると、形成される粘着剤層は、粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b1の含有率は、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b1の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して10質量%以下であると、形成される粘着剤層は、被着体に対して加熱後に高い粘着力を示す傾向がある。理由としては、粘着剤層の接着面への(メタ)アクリル系重合体(B)の偏在が過度にならず、加熱による粘着剤層の粘着力の上昇が抑制されないためと考えられる。
このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b1の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、10質量%以下であり、9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましい。
【0075】
<単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(以下、「構成単位b2」ともいう。)を全構成単位に対して50質量%を超えて85質量%以下の範囲で含む。
本開示において、「単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(即ち、構成単位b2)」とは、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0076】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しないことが好ましい。
【0077】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、無置換であることが好ましい。
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。
【0078】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上120℃以下の範囲である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、単独重合体としたときのガラス転移温度が50℃以上110℃以下の範囲である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましい。
【0079】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、t-ブチルアクリレート(t-BA、単独重合体としたときのガラス転移温度:43℃)、t-ブチルメタクリレート(t-BMA、単独重合体としたときのガラス転移温度:118℃)、i-ブチルメタクリレート(i-BMA、単独重合体としたときのガラス転移温度:53℃)、メチルメタクリレート(MMA、単独重合体としたときのガラス転移温度:105℃)、及びエチルメタクリレート(EMA、単独重合体としたときのガラス転移温度:65℃)が挙げられる。
【0080】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、構成単位b2を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0081】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b2の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%を超えて85質量%以下の範囲であり、55質量%以上80質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上75質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上70質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b2の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して50質量%を超えると、形成される粘着剤層は、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時で損なわれ難い傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b2の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して85質量%以下であると、加熱後に被着体から剥離したとき、及び、経時後に粘着テープの自背面である基材から剥離したときに起こり得るジッピング現象を抑制できる傾向がある。理由としては、粘着剤層の接着面に偏在する特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が過度に高くならず、粘着剤層の濡れ広がりが部分的に阻害されることが抑制され、粘着剤層の粘着力にムラが生じ難いためと推測される。
【0082】
<(メタ)アクリル酸に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位(以下、「構成単位b3」ともいう。)を全構成単位に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲で含む。
本開示において、「(メタ)アクリル酸に由来する構成単位(即ち、構成単位b3)」とは、(メタ)アクリル酸が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0083】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、メタクリル酸又はアクリル酸のいずれか一方のみを含んでいてもよく、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を含んでいてもよい。
【0084】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b3の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、0.01質量%以上0.5質量%以下の範囲であり、0.01質量%以上0.4質量%以下の範囲であることが好ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.01質量%以上0.25質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b3の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.01質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b3を積極的に含むことを意味する。特定(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b3を含むと、形成される粘着剤層が被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できる傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b3の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.5質量%以下であると、形成される粘着剤層は、被着体に対して加熱後に高い粘着力を示す傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が過度に架橋せず、粘着剤層が被着体に濡れ広がりやすくなるためと考えられる。
【0085】
<単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(以下、「構成単位b4」ともいう。)を含んでいてもよい。
本開示において、「単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(即ち、構成単位b4)」とは、単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0086】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しないことが好ましい。
【0087】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、無置換であることが好ましい。
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。
【0088】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、単独重合体としたときのガラス転移温度が-40℃以上40℃未満の範囲である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、単独重合体としたときのガラス転移温度が-40℃以上30℃以下の範囲である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましい。
【0089】
単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA、単独重合体としたときのガラス転移温度:-70℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA、単独重合体としたときのガラス転移温度:-10℃)、n-ブチルアクリレート(n-BA、単独重合体としたときのガラス転移温度:-54℃)、n-ブチルメタクリレート(n-BMA、単独重合体としたときのガラス転移温度:20℃)、メチルアクリレート(MA、単独重合体としたときのガラス転移温度:10℃)、及びエチルアクリレート(EA、単独重合体としたときのガラス転移温度:-22℃)が挙げられる。
【0090】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、構成単位b4を含む場合、構成単位b4を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0091】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b4を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b4の含有率は、特に限定されず、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度を調整する等、目的に応じて、適宜設定できる。
【0092】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)が含み得るその他の構成単位としては、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
【0093】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0094】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるその他の構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0095】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、1万以上40万以下の範囲である。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が1万以上であると、粘着テープの自背面に対する粘着力が経時で上昇し難い粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、粘着剤層の界面への特定(メタ)アクリル系重合体の局在化が維持されやすいためと考えられる。また、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が1万以上であると、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できる粘着剤層を形成できる傾向がある。
このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、1万以上であり、3万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、7万以上であることが更に好ましく、9万以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が40万以下であると、形成される粘着剤層は、被着体に対して加熱後に高い粘着力を示す傾向がある。理由としては、粘着剤層の被着体への濡れ広がりを妨げ難いためと考えられる。
このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、40万以下であり、35万以下であることが好ましく、30万以下であることがより好ましく、25万以下であることが更に好ましく、20万以下であることが特に好ましい。
【0096】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定される。
【0097】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0098】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上である。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が0℃以上であることは、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)とは異なる重合体であることを意味する。
【0099】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、窒素気流中、測定試料を8mgとし、測定開始温度-70℃、測定終了温度150℃、及び昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度としたものである。
示差走査熱量測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製のDSC2500(型番)を好適に用いることができる。但し、示差走査熱量測定装置は、これに限定されない。
【0100】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0101】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部を超えて100質量部以下の範囲である。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部を超えると、形成される粘着剤層は、粘着テープの自背面に対して貼り合わせ初期に軽剥離性を示す傾向がある。理由としては、粘着剤層の接着面に特定(メタ)アクリル系重合体(B)が適度に偏在することに加えて、粘着剤層が適度な凝集力を有するためと考えられる。また、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部を超えると、形成される粘着剤層は、粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い傾向を示す。理由としては、粘着剤層が粘着テープの自背面に対して経時で濡れ広がることを、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の適度な偏在が抑制するためと考えられる。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、20質量部を超え、25質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることが更に好ましく、40質量部以上であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して100質量部以下であると、形成される粘着剤層は、被着体に対して加熱後に高い粘着力を示す傾向がある。理由としては、粘着剤層の接着面に、特定(メタ)アクリル系重合体(B)が過度に偏在せず、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が適度に存在することで、粘着剤層が加熱により被着体に対して十分に濡れ広がるためと考えられる。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、100質量部以下であり、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることが更に好ましく、80質量部以下であることが特に好ましい。
【0102】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、特定(メタ)アクリル系重合体の製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0103】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0104】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0105】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0106】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0107】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0108】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0109】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0110】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0111】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0112】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0113】
〔ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物〕
本開示の粘着剤組成物は、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
本開示の粘着剤組成物において、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物は、いずれも架橋剤として機能する。
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物は、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できる粘着剤層の形成に寄与し得る。
【0114】
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、HMDIの多量体、HMDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びHMDIのビウレット体が包含される。ポリオール系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)が挙げられる。
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物としては、特に限定されないが、HMDIのビウレット体が好ましい。
【0115】
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物としては、市販品を使用できる。
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物の市販品の例としては、住化コベストロウレタン(株)製の「スミジュール(登録商標) N75」、「スミジュール(登録商標) N3300」、及び「スミジュール(登録商標) N3400」、東ソー(株)製の「コロネート(登録商標) HX」、並びに、旭化成ケミカルズ(株)製の「デュラネート(登録商標) D-201」が挙げられる。
【0116】
キシリレンジイソシアネート系化合物には、キシリレンジイソシアネート(XDI)、XDIの多量体、XDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びXDIのビウレット体が包含される。
キシリレンジイソシアネート系化合物としては、特に限定されないが、XDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
キシリレンジイソシアネート系化合物としては、市販品を使用できる。
キシリレンジイソシアネート系化合物の市販品の例としては、三井化学(株)製の「タケネート(登録商標) D-110N」及び「タケネート(登録商標) D-120N」が挙げられる。
【0117】
本開示の粘着剤組成物は、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物のうち、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物のみを1種以上含んでいてもよく、キシリレンジイソシアネート系化合物のみを1種以上含んでいてもよく、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物の1種以上とキシリレンジイソシアネート系化合物の1種以上とを含んでいてもよい。
【0118】
本開示の粘着剤組成物におけるヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物の合計含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部~1質量部であることが好ましく、0.01質量部~0.8質量部であることがより好ましく、0.01質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0119】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性及びポットライフが向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0120】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0121】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0122】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0123】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0124】
<用途>
本開示の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制でき、加えて、セパレータレス型の粘着テープとした場合に粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できるため、例えば、車、バイク、自転車等にステッカー等の加飾フィルムを貼り付ける、ミラーに装飾フィルムを貼り付けるなどの用途に好適である。
【0125】
[粘着テープ]
本開示の粘着テープは、基材と、上記基材の一方の面上に設けられ、かつ、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。
本開示の粘着テープは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示す。また、本開示の粘着テープは、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できる。さらに、本開示の粘着テープは、セパレータレス型の粘着テープとした場合に自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い。
本開示の粘着テープが備える粘着剤層は、本開示の粘着剤組成物の硬化物を含む。硬化物には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及び/又はキシリレンジイソシアネート系化合物によって架橋硬化してなる特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)の架橋物が含まれる。
【0126】
本開示の粘着テープの被着体は、特に限定されず、例えば、金属、樹脂、及びガラスが挙げられる。
本開示の粘着テープは、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できるため、加熱されるとアウトガスを発生しやすい樹脂、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂に対しても、好適に使用できる。本開示の粘着テープによれば、上記樹脂を被着体とした場合でも、発泡による外観不良、剥がれ等の問題が生じ難い。
【0127】
本開示の粘着テープが備える基材は、特に限定されない。
本開示のテープが備える基材は、例えば、一方の面上に粘着剤層を形成でき、かつ、巻回できるものであることが好ましい。
基材としては、例えば、ポリオレフィン〔例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)〕、ポリエステル〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート樹脂(例えば、トリアセチルセルロース)、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、フッ素樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0128】
基材の粘着剤層が設けられた側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0129】
基材は、本開示の粘着テープの効果を損なわない範囲において、その背面側に機能層を有していてもよい。
本開示において、「機能層」とは、基材に目的の機能を付与する層を意味し、機能層は、基材の一部をなす。
機能層としては、例えば、ハードコート層、易剥離層、及び低摩擦層が挙げられる。
【0130】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0131】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には、10μm~500μmであり、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~200μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましい。
【0132】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
基材の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を基材の平均厚さとする。
【0133】
本開示の粘着テープが備える粘着剤層の厚さは、特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、例えば、1μm~100μmであることが好ましく、5μm~75μmであることがより好ましく、5μm~50μmであることが更に好ましい。
【0134】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
粘着剤層の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。
【0135】
本開示の粘着テープは、粘着剤層の基材とは反対側の面と、基材の他方の面とが当接して積層されてなるロール体であること、すなわち、セパレータレス型の粘着テープであることが好ましい。
本開示の粘着テープは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、セパレータレス型の粘着テープとした場合でも自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い。
【0136】
[粘着テープの製造方法]
本開示の粘着テープの製造方法は、特に限定されない。
本開示の粘着テープは、公知の方法を参照することにより製造できる。
本開示の粘着テープを製造する方法としては、例えば、以下の方法(1)及び方法(2)が挙げられる。
【0137】
方法(1):本開示における粘着剤組成物を基材の一方の面(好ましくは、易接着処理面)に塗布することにより、基材の片面に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材の片面に粘着膜を形成する。次いで、基材/粘着膜の層構成を有する積層体を、基材と粘着膜とが交互になる形でロール状に巻き取り、ロール体とした後、静置し、架橋反応を完結させる。
方法(2):本開示の粘着剤組成物を基材の一方の面(好ましくは、易接着処理面)に塗布することにより、基材の片面に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材の片面に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途準備した剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせ、基材/粘着膜/剥離フィルムの層構成を有する積層体とした上でロール状に巻き取る。次いで、巻き取られた積層体を巻き出し、剥離フィルムを剥離しながら、基材/粘着膜の層構成を有する積層体を、基材と粘着膜とが交互になる形でロール状に巻き直した後、静置し、架橋反応を完結させる。
上記の方法(1)及び方法(2)によれば、基材と、上記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層とを有し、かつ、上記粘着剤層の上記基材とは反対側の面と、上記基材の他方の面とが当接して積層されてなるロール体である態様を有する、本開示の粘着テープを良好に製造できる。
【0138】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0139】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風循環式乾燥機を用いて、60℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0140】
静置の条件は、特に限定されないが、例えば、雰囲気温度20℃~35℃及び相対湿度45%~55%(即ち、45%RH~55%RH)の環境下で2日間~7日間静置することが好ましい。静置により架橋反応が完結する。
【実施例0141】
以下、本開示の粘着剤組成物及び粘着テープを実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
[(メタ)アクリル系重合体(A)の製造]
〔製造例A-3〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応容器内に、酢酸エチル〔重合用有機溶剤〕116.0質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、n-ブチルアクリレート〔n-BA〕71.0質量部、メチルアクリレート〔MA〕9.0質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA〕20.0質量部を入れて混合し、単量体混合物を調製した。調製した単量体混合物のうち、20質量%を上記反応容器内に入れた。次いで、反応容器内の単量体混合物を撹拌しながら加熱し、還流温度で10分間還流を行った。次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残りの80質量%と、酢酸エチル〔重合用有機溶剤〕45.0質量部と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて逐次滴下した。滴下終了後に30分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が32質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系重合体A-3の溶液を得た。
【0143】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-3の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体A-3の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系重合体A-1、A-2、及びA-4~A-6の各溶液についても同様である。
【0144】
〔製造例A-1、A-2、及びA-4~A-6〕
製造例A-1、A-2、及びA-4~A-6では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更し、かつ、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-3と同様の操作を行い、固形分濃度が32質量%である(メタ)アクリル系重合体A-1、A-2、及びA-4~A-6の各溶液を得た。
【0145】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の単量体組成〔単位:質量%〕、ガラス転移温度(「Tg」と表記)〔単位:℃〕、及び重量平均分子量(「Mw」と表記)を表1に示す。
【0146】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0147】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のうち、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-3及びA-5は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体(A)に該当する。
【0148】
【表1】
【0149】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」:n-ブチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:-54℃〕
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-70℃〕
「MA」:メチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:10℃〕
「MMA」:メチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:105℃〕
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-15℃〕
【0150】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0151】
[(メタ)アクリル系重合体(B)の製造]
〔製造例B-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応容器内に、酢酸エチル〔重合用有機溶剤〕67.5質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、オルガノシロキサン骨格を有する単量体〔商品名:サイラプレーン(登録商標) FM-0721、数平均分子量:6500、JNC(株)製〕0.1質量部、メチルメタクリレート〔MMA〕54.9質量部、メタクリル酸〔MAA〕0.10質量部、n-ブチルメタクリレート〔n-BMA〕34.9質量部、エチルアクリレート〔EA〕10.0質量部、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル〔重合開始剤〕1.58質量部、及び酢酸エチル〔重合用有機溶剤〕150質量部を入れて混合し、単量体混合物を含む溶液を準備した。この準備した溶液を、還流温度条件下で、上記反応容器内に180分間かけて逐次滴下した。滴下終了後に180分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が35質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液を得た。
【0152】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体B-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系重合体B-2~B-30の各溶液についても同様である。
【0153】
〔製造例B-2~B-6、B-10~B-18、B-20~B-28及びB-30〕
製造例B-2~B-6、B-10~B-18、B-20~B-28及びB-30では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表2又は表3に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が35質量%である(メタ)アクリル系重合体B-2~B-6、B-10~B-18、B-20~B-28及びB-30の各溶液を得た。
【0154】
〔製造例B-7~B-9、B-19及びB-29〕
製造例B-7~B-9、B-19及びB-29では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表2又は表3に示す単量体組成に変更し、かつ、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を表2又は表3に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が35質量%である(メタ)アクリル系重合体B-7~B-9、B-19及びB-29の各溶液を得た。
【0155】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-30の単量体組成〔単位:質量%〕及び重量平均分子量(「Mw」と表記)を表2及び表3に示す。なお、(メタ)アクリル系重合体B-1~B-30のガラス転移温度は、いずれも0℃以上である。
【0156】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-30の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0157】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-30のうち、(メタ)アクリル系重合体B-1~B-14、B-23、B-24、B-26及びB-30は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体(B)に該当する。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
表2及び表3に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<オルガノシロキサン骨格を有する単量体>
「FM-0721」〔商品名:サイラプレーン(登録商標) FM-0721、数平均分子量:6500、式(1)で表される化合物、JNC(株)製〕
「FM-0725」〔商品名:サイラプレーン(登録商標) FM-0725、数平均分子量:15000、式(1)で表される化合物、JNC(株)製〕
「X-22-174ASX」〔商品名、数平均分子量:1100、式(1)で表される化合物、信越化学工業(株)製〕
【0161】
<単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「MMA」:メチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:105℃〕
「i-BMA」:n-ブチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:53℃〕
<(メタ)アクリル酸>
「MAA」:メタクリル酸〔単独重合体としたときのTg:228℃〕
「AA」:アクリル酸〔単独重合体としたときのTg:106℃〕
<単独重合体としたときのガラス転移温度が40℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:20℃〕
「EA」:エチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:-22℃〕
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-15℃〕
【0162】
表2及び表3中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0163】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系重合体A-3の溶液25.0質量部(固形分として100質量部)と、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液10.53質量部(固形分として50質量部)と、架橋剤〔商品名:タケネート(登録商標) D-110N、キシリレンジイソシアネート(XDI)、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕0.04質量部(固形分として0.4質量部)と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0164】
〔実施例2~24〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~24の各粘着剤組成物を得た。
【0165】
〔比較例1~17〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表5に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~17の各粘着剤組成物を得た。
【0166】
[評価用粘着テープの作製]
上記にて調製した粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(P1)〔商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、型番:G2P2、厚さ:50μm、帝人フィルムソリューション(株)製〕の易接着処理面に、アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、PETフィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜が露出した面を、別途準備したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(P2)〔商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、型番:G2P2、厚さ:50μm、帝人フィルムソリューション(株)製〕の易接着未処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置して養生を行い、評価用粘着テープを得た。得られた評価用粘着テープは、PETフィルム(P1)/粘着剤層/PETフィルム(P2)の積層構造を有する。
【0167】
[測定及び評価]
1.被着体に対する粘着力
(1)初期の粘着力
上記にて作製した評価用粘着テープを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着テープ片を準備した。準備した評価用粘着テープ片〔構成:PETフィルム(P1)/粘着剤層/PETフィルム(P2)〕からPETフィルム(P2)を剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面をステンレス(所謂、SUS)板に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-1を得た。得られた試験片X-1を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に30分間静置した。静置後の試験片X-1について、SUS板から評価用粘着テープ片〔構成:粘着剤層/PETフィルム(P1)〕を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って評価を行った。
粘着力の測定値及び評価の結果を表4及び表5に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、被着体に対して貼り合わせ初期に軽剥離性を示す粘着剤層であると評価した。評価結果は、「A」であることが最も好ましい。
【0168】
-評価基準-
A:粘着力が0.01N/25mm以上0.40N/25mm未満である。
B:粘着力が0.40N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
C:粘着力が1.00N/25mm以上である。
【0169】
(2)加熱後の粘着力
上記にて作製した評価用粘着テープを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着テープ片を準備した。準備した評価用粘着テープ片〔構成:PETフィルム(P1)/粘着剤層/PETフィルム(P2)〕からPETフィルム(P2)を剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面をステンレス(所謂、SUS)板に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-2を得た。得られた試験片X-2を、110℃の温度に設定した乾燥機内に5分間静置した後、乾燥機内から取り出した。次いで、取り出した試験片X-2を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に30分間静置した。静置後の試験片X-2について、SUS板から評価用粘着テープ片〔構成:粘着剤層/PETフィルム(P1)〕を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って評価を行った。
粘着力の測定値及び評価の結果を表4及び表5に示す。なお、ジッピング現象が起きた場合には、測定された粘着力の最低値及び最高値を数値範囲で示し、かつ、「ジッピング」と記載した。ジッピング現象とは、剥離の際に、滑らかに剥離せずにバリバリと音を立てて剥離する現象をいう。
評価結果が「A」又は「B」であれば、被着体に対して加熱後に高い粘着力を示す粘着剤層であると評価した。評価結果は、「A」であることが最も好ましい。
【0170】
-評価基準-
A:粘着力が7.0N/25mm以上である。
B:粘着力が5.0N/25mm以上7.0N/25mm未満である。
C:粘着力が5.0N/25mm未満である、及び/又は、ジッピング現象が起こる。
【0171】
2.自背面に対する粘着力
(1)初期の粘着力
上記にて作製した評価用粘着テープを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着テープ片を準備した。準備した評価用粘着テープ片〔構成:PETフィルム(P1)/粘着剤層/PETフィルム(P2)〕からPETフィルム(P2)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って評価を行った。
粘着力の測定値及び評価の結果を表4及び表5に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、粘着テープの自背面(即ち、基材の背面)に対して貼り合わせ初期に軽剥離性を示す粘着剤層であると評価した。評価結果は、「A」であることが最も好ましい。
【0172】
-評価基準-
A:粘着力が0.01N/25mm以上0.20N/25mm未満である。
B:粘着力が0.20N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
C:粘着力が1.00N/25mm以上である。
【0173】
(2)経時後の粘着力
上記にて作製した評価用粘着テープを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着テープ片を準備した。準備した評価用粘着テープ片を、雰囲気温度40℃の環境下に7日間静置した。静置後の評価用粘着テープ片〔構成:PETフィルム(P1)/粘着剤層/PETフィルム(P2)〕からPETフィルム(P2)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って評価を行った。
粘着力の測定値及び評価の結果を表4及び表5に示す。なお、ジッピング現象が起きた場合には、測定された粘着力の最低値及び最高値を数値範囲で示し、かつ、「ジッピング」と記載した。
評価結果が「A」又は「B」であれば、粘着テープの自背面(即ち、基材の背面)に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層であると評価した。評価結果は、「A」であることが最も好ましい。
【0174】
-評価基準-
A:粘着力が0.01N/25mm以上0.20N/25mm未満である。
B:粘着力が0.20N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
C:粘着力が1.00N/25mm以上である、及び/又は、ジッピング現象が起こる。
【0175】
3.発泡抑制
上記にて作製した評価用粘着テープを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着テープ片を準備した。準備した評価用粘着テープ片〔構成:PETフィルム(P1)/粘着剤層/PETフィルム(P2)〕からPETフィルム(P2)を剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面をポリカーボネート(PC)板に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-3を得た。得られた試験片X-3のPC板側の面を、表面温度が110℃となるようにドライヤーを用いて5分間加熱した。加熱後、粘着剤層とPC板との界面を目視にて観察した。そして、下記の評価基準に従って評価を行った。
評価の結果を表4及び表5に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、被着体から発生するアウトガスに起因する気泡の混入を良好に抑制できる粘着剤層であると評価した。評価結果は、「A」であることが最も好ましい。
【0176】
-評価基準-
A:粘着剤層とPC板との界面に気泡が確認されない。
B:粘着剤層とPC板との界面に若干気泡が確認されるが、PC板からの粘着剤層の剥がれは確認されない。
C:粘着剤層とPC板との界面に気泡が確認され、気泡によるPC板からの粘着剤層の剥がれも確認される。
【0177】
【表4】
【0178】
【表5】
【0179】
表4及び/又は表5に記載の架橋剤の詳細は、以下に示すとおりである。
「XDI」〔商品名:タケネート(登録商標) D-110N、キシリレンジイソシアネート系化合物(キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体)、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕
「HMDI」〔商品名:スミジュール(登録商標) N75、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のビウレット体)、固形分濃度:75質量%、住化コベストロウレタン(株)製〕
「TDI」〔商品名:コロネート(登録商標) L-45E、トリレンジイソシアネート系化合物(トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体)、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)製〕
上記「タケネート」、「スミジュール」、及び「コロネート」は、いずれも登録商標である。
【0180】
表4及び表5中、「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値である。
【0181】
表4に示すように、実施例1~24の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示すことが確認された。また、実施例1~24の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できることが確認された。さらに、実施例1~24の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、セパレータレス型の粘着テープとした場合に粘着テープの自背面に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難いことが確認された。
【0182】
一方、表5に示すように、(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b1を含まない比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b1の含有率が(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して10質量%を超える比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体に対する加熱後の粘着力が高くなり難いことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b2の含有率が(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して50質量%以下である比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれやすいことが確認された。
【0183】
(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b2の含有率が(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して85質量%を超える比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、加熱後に被着体から剥離したとき、及び、経時後に粘着テープの自背面である基材から剥離したときに、ジッピング現象が起こることが確認された。理由としては、構成単位b2の含有率が高くなることで(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が過度に高くなり、粘着剤層の濡れ広がりが部分的に阻害され、粘着剤層の粘着力にムラが生じたためと推測される。
(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が40万を超える比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体に対する加熱後の粘着力が高くなり難いことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が4000未満である比較例6及び比較例16の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれも実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれやすいことが確認された。
【0184】
(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して20質量部以下である比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する初期の粘着力が高く、軽剥離性を示さないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して100質量部を超える比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体に対する加熱後の粘着力が高くなり難いことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が0℃を超える比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する初期の粘着力が高く、軽剥離性を示さないことが確認された。
【0185】
(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b3を含まない比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できないことが確認された。(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b3の代わりに水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む比較例13の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と同様に、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)における構成単位b3の含有率が(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して0.5質量%を超える比較例11の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体に対する加熱後の粘着力が高くなり難いことが確認された。
ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含まない比較例12の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できないことが確認された。
【0186】
(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例14の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、被着体に対する加熱後の粘着力が高くなり難いことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)が構成単位b1を含まない比較例15の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が1万未満である比較例17の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して、粘着テープの自背面である基材に対する貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれやすいことが確認された。また、被着体から発生するアウトガスに由来する気泡の混入を良好に抑制できないことが確認された。