(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060508
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】カップ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/42 20060101AFI20240424BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B65D1/42
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167923
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅川 紀幸
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA13
3E033BA16
3E033CA05
3E033DA08
3E033DB02
3E033DD05
3E033DE20
3E033FA02
(57)【要約】
【課題】外周壁に段差壁部を起点とする座屈による塑性変形を生じにくいカップ容器を提供する。
【解決手段】底壁2と開口端3aを有する外周壁3とを有し、外周壁3は底壁2の側の第1壁部3bから開口端3aの側の第2壁部3dまで段差壁部3cを介して段差状に拡径し、第2壁部3dは周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した厚肉部を有する、カップ容器1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と開口端を有する外周壁とを有し、
前記外周壁は前記底壁の側の第1壁部から前記開口端の側の第2壁部まで段差壁部を介して段差状に拡径し、
前記第2壁部は周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した厚肉部を有する、カップ容器。
【請求項2】
前記厚肉部の内面は各々の前記箇所において平面状をなす、請求項1に記載のカップ容器。
【請求項3】
前記段差壁部と前記第2壁部とがなす角部は、前記段差壁部から前記第2壁部に亘って厚みが一定である場合から内側に厚みを増した厚肉部を有し、当該厚肉部は、前記外周壁の中心軸線を含む縦断面において、前記段差壁部から前記第2壁部に亘って厚みが一定である場合に内面の角となる基準点に対して前記段差壁部の側に0.7~2mm手前に位置する第1起点と、前記基準点に対して前記第2壁部の側に0.7~2mm手前に位置する第2起点とのそれぞれから、前記基準点の側に向けて徐々に厚みを増した形状をなす、請求項1に記載のカップ容器。
【請求項4】
前記段差壁部は周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した厚肉部を有する、請求項1に記載のカップ容器。
【請求項5】
前記段差壁部は前記開口端の側に寄せた位置に設けられる、請求項1~4の何れか1項に記載のカップ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカップ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
底壁と開口端を有する外周壁とを有し、外周壁が、底壁の側の第1壁部から開口端の側の第2壁部まで段差壁部を介して段差状に拡径するカップ容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように外周壁に段差を有するカップ容器は、製造時や流通時の荷重により、外周壁に段差壁部を起点とする座屈が生じ易い傾向がある。環境配慮の観点などから薄肉化(軽量化)をすると、この傾向は一層強くなる。座屈による塑性変形が生じると、全高が設計値からずれる等の問題が生じる虞がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、外周壁に段差壁部を起点とする座屈による塑性変形を生じにくいカップ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
底壁と開口端を有する外周壁とを有し、
前記外周壁は前記底壁の側の第1壁部から前記開口端の側の第2壁部まで段差壁部を介して段差状に拡径し、
前記第2壁部は周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した厚肉部を有する、カップ容器。
【0008】
[2]
前記厚肉部の内面は各々の前記箇所において平面状をなす、[1]に記載のカップ容器。
【0009】
[3]
前記段差壁部と前記第2壁部とがなす角部は、前記段差壁部から前記第2壁部に亘って厚みが一定である場合から内側に厚みを増した厚肉部を有し、当該厚肉部は、前記外周壁の中心軸線を含む縦断面において、前記段差壁部から前記第2壁部に亘って厚みが一定である場合に内面の角となる基準点に対して前記段差壁部の側に0.7~2mm手前に位置する第1起点と、前記基準点に対して前記第2壁部の側に0.7~2mm手前に位置する第2起点とのそれぞれから、前記角の側に向けて徐々に厚みを増した形状をなす、[1]又は[2]に記載のカップ容器。
【0010】
[4]
前記段差壁部は周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した厚肉部を有する、[1]~[3]の何れか1つに記載のカップ容器。
【0011】
[5]
前記段差壁部は前記開口端の側に寄せた位置に設けられる、[1]~[4]の何れか1つに記載のカップ容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外周壁に段差壁部を起点とする座屈による塑性変形を生じにくいカップ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態のカップ容器を示す一部断面側面図である。
【
図5】比較例としてのカップ容器の離型時の様子を示す断面図である。
【
図6】
図1に示すカップ容器の変形例を説明するための断面図である。
【
図7】
図1に示すカップ容器の他の変形例を説明するための一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0015】
図1~
図4に示すように、本発明の一実施形態においてカップ容器1は、底壁2と、底壁2の外周部から上方に延び、上端としての開口端3aを有する外周壁3と、外周壁3の開口端3aから径方向外側に延びるフランジ部4と、底壁2の外周部から下方に延びる脚部5と、を有する。外周壁3は、底壁2の側の第1壁部3bから開口端3aの側の第2壁部3dまで段差壁部3cを介して段差状に拡径する。脚部5は外周壁3と同心の筒状をなし、下端が接地部となる。なお脚部5の形状は筒状に限らない。カップ容器1は合成樹脂製である。カップ容器1は例えば、内部に食品などの内容物が充填され、フランジ部4にシート状の蓋が剥離操作可能に接着された状態で流通する。
【0016】
なお、説明の便宜上、外周壁3の中心軸線Oに沿う方向を上下方向ともいい、中心軸線Oに沿って底壁2から開口端3aに向かう方向を上方ともいい、その反対方向を下方ともいい、中心軸線Oに直交する方向を単に径方向ともいい、中心軸線Oを周回する方向を単に周方向ともいう。
【0017】
底壁2は上面視円形状をなし、外周壁3は上方に向けて拡径する断面円形状の筒状をなす。なお、底壁2が上面視楕円形状をなし、外周壁3は上方に向けて拡径する断面楕円形状の筒状をなす構成としてもよい。外周壁3の中心軸線O上に位置する底壁2の中央部の外面は、カップ容器1を射出成形する際のゲートに対応するゲート痕2aを有する。なお底壁2の中央部の内面にゲート痕2aを有する構成としてもよい。成形性の観点からゲートは底壁2の中央部に設けることが好ましいが、ゲートの配置はこれに限らない。
【0018】
第1壁部3bは、それぞれ下端部から上端部までに亘って一定の勾配で拡径する内周面と外周面を有する。
【0019】
段差壁部3cは、それぞれ内周縁部から外周縁部までに亘って平面状をなす内面(上面)と外面(下面)を有する。なお段差壁部3cは、それぞれ下端部としての内周縁部から上端部としての外周縁部までに亘って一定の勾配で拡径する内面と外面を有する構成としてもよいし、それぞれ上端部としての内周縁部から下端部としての外周縁部までに亘って一定の勾配で拡径する内面と外面を有する構成としてもよい。
【0020】
段差壁部3cは開口端3aの側に寄せた位置(つまり、上下方向中央よりも上側)に設けられる。
【0021】
第2壁部3dは、それぞれ下端部から上端部までに亘って一定の勾配で拡径する内周面と外周面を有する。また第2壁部3dは、周方向に均等な12箇所において内側に厚みを増した第1厚肉部6を有する。なお、第1厚肉部6はこれに限らず、周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した構成としてもよい。
【0022】
第1厚肉部6によれば、段差壁部3cによって形成される段差を効率的に補強することができるので、製造時(射出成形の離型時や内容物の充填時など)や流通時の荷重により、外周壁3に段差壁部3cを起点とする座屈による塑性変形が生じることを抑制することができる。例えば、
図5に示すように、フランジ部4を保持する第1金型7に対して、カップ容器1の内面を形成する第2金型8を相対的に移動させて離型する場合には、離型時に第2金型8から第1壁部3bに、第2壁部3dに対して相対的に上方へ変位させて外周壁3に上記座屈を生じさせる方向の荷重が作用する。このため、段差壁部3cによって形成される段差の強度が足りないと、上記座屈による塑性変形が生じてしまう。
【0023】
そこで、第1厚肉部6を上記のように8~16箇所に設けることで、重量の増加を抑えた効率的な補強を実現できる。また、段差壁部3cが開口端3aの側に寄せた位置に設けられる場合、第1壁部3bはゲートからの距離が大きいため、第1壁部3bを例えば全周に亘って厚肉に形成しようとすると、成形不良を生じ易い。第1厚肉部6を上記のように8~16箇所に設けることで、上記のような成形不良を生じにくくすることもできる。
【0024】
効率的な補強の観点から、第1厚肉部6が設けられていない部分に対する第1厚肉部6の(第2壁部3dに垂直な方向の)厚みの増加分ΔT1は、各々の箇所において、周方向の中央部に向けて徐々に増加することが好ましい。なお第1厚肉部6の構成はこれに限らない。
【0025】
また効率的な補強の観点から、第1厚肉部6の内面は
図3~
図4に示するように、各々の箇所において平面状をなすことが好ましい。なお第1厚肉部6の構成はこれに限らない。
【0026】
また効率的な補強の観点から、第1厚肉部6が設けられていない部分に対する第1厚肉部6の厚みの増加分ΔT1は、各々の箇所において、最大位置(周方向の中央部)で0.1~0.2mmであることが好ましい。なお第1厚肉部6の構成はこれに限らない。
【0027】
また効率的な補強の観点から、第1厚肉部6は、各々の箇所において、
図3に示するように第2壁部3dの下端部から上端部までに亘って一定の厚みの増加分ΔT1で設けることが好ましい。なお第1厚肉部6の構成はこれに限らない。
【0028】
また効率的な補強の観点から、段差壁部3cと第2壁部3dとがなす角部9は、
図6に示すように、段差壁部3cから第2壁部3dに亘って厚みが一定である場合から内側に厚みを増した第2厚肉部10を有することが好ましい。なお段差壁部3cと第2壁部3dとがなす角部9の構成はこれに限らない。
【0029】
第2厚肉部10は、外周壁3の中心軸線Oを含む縦断面において、段差壁部3cから第2壁部3dに亘って厚みが一定である場合に内面の角となる基準点11に対して段差壁部3cの側に0.7~2mm手前に位置する第1起点12と、基準点11に対して第2壁部3dの側に0.7~2mm手前に位置する第2起点13とのそれぞれから、基準点11の側に向けて徐々に厚みを増した形状をなす。
【0030】
効率的な補強の観点から、段差壁部3cから第2壁部3dに亘って厚みが一定である場合に対する第2厚肉部10の厚みの増加分ΔT2は、最大位置(角部9の中央部)で0.2~0.3mmであることが好ましい。なお第2厚肉部10の構成はこれに限らない。
【0031】
また効率的な補強の観点から、段差壁部3cは、
図7~
図10に示すように周方向に均等な8~16箇所(図示の例では12箇所)において内側に厚みを増した第3厚肉部14を有することが好ましい。なお段差壁部3cの構成はこれに限らない。
【0032】
また効率的な補強の観点から、第3厚肉部14が設けられていない部分に対する第3厚肉部14の(段差壁部3cに垂直な方向の)厚みの増加分ΔT3は、各々の箇所において、周方向の中央部に向けて徐々に増加することが好ましい。なお第3厚肉部14の構成はこれに限らない。
【0033】
また効率的な補強の観点から、第3厚肉部14が設けられていない部分に対する第3厚肉部14の厚みの増加分ΔT3は、各々の箇所において、最大位置(周方向の中央部)で0.1~0.2mmであることが好ましい。なお第3厚肉部14の構成はこれに限らない。
【0034】
また効率的な補強の観点から、第3厚肉部14は、各々の箇所において、
図8、
図10に示すように段差壁部3cの内周縁部から外周縁部までに亘って一定の厚みの増加分ΔT3で設けることが好ましい。なお第3厚肉部14の構成はこれに限らない。
【0035】
また効率的な補強の観点から、第3厚肉部14を設ける箇所の数は、第1厚肉部6を設ける箇所の数と同じであることが好ましい。なお第3厚肉部14の構成はこれに限らない。
【0036】
また効率的な補強の観点から、第3厚肉部14を設ける箇所は、第1厚肉部6を設ける箇所に対して径方向に並ぶ位置に設定することが好ましく、径方向に整列する位置に設定することがより好ましい。なお第3厚肉部14の構成はこれに限らない。
【0037】
カップ容器1の材質と寸法は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂製で、フランジ部4の外径をφ87mm、開口端3aの内径をφ79mm、カップ容器1の全高を50mm、外周壁3の肉厚を0.45mm、底壁2の肉厚を0.6mmとすることができる。
【0038】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0039】
したがって、前述した実施形態のカップ容器1は、底壁2と開口端3aを有する外周壁3とを有し、外周壁3は底壁2の側の第1壁部3bから開口端3aの側の第2壁部3dまで段差壁部3cを介して段差状に拡径し、第2壁部3dは周方向に均等な8~16箇所において内側に厚みを増した厚肉部を有する、カップ容器1である限り変更可能である。
【0040】
例えば、カップ容器1は脚部5を有する構成に限らない。また、カップ容器1はフランジ部4を有する構成に限らない。段差壁部3cは、開口端3aの側に寄せた位置に設ける構成に限らない。
【符号の説明】
【0041】
1 カップ容器
2 底壁
2a ゲート痕
3 外周壁
3a 開口端
3b 第1壁部
3c 段差壁部
3d 第2壁部
4 フランジ部
5 脚部
6 第1厚肉部
7 第1金型
8 第2金型
9 角部
10 第2厚肉部
11 基準点
12 第1起点
13 第2起点
14 第3厚肉部
O 中心軸線
ΔT1 第1厚肉部の厚みの増加分
ΔT2 第2厚肉部の厚みの増加分
ΔT3 第3厚肉部の厚みの増加分