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特開2024-60517油性組成物及びそれを含むカプセル製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060517
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】油性組成物及びそれを含むカプセル製剤
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/007 20060101AFI20240424BHJP
   A61K 45/08 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240424BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240424BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240424BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20240424BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20240424BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A23D9/007
A61K45/08
A61K47/14
A61K31/122
A61K31/12
A61K31/353
A61K36/9068
A61K9/48
A61P43/00 111
A23L33/10
A23L33/12
A23D9/013
A23D9/00 518
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167941
(22)【出願日】2022-10-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】足立 知基
(72)【発明者】
【氏名】石井 愛奈
【テーマコード(参考)】
4B018
4B026
4C076
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE02
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD10
4B018MD18
4B018MD25
4B018ME14
4B026DC05
4B026DG20
4B026DK01
4B026DK10
4B026DL02
4B026DX10
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC29
4C076DD08E
4C076DD08F
4C076DD08N
4C076DD08Q
4C076DD46E
4C076DD46F
4C076DD46N
4C076DD46Q
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF34
4C084AA27
4C084MA05
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA02
4C084NA03
4C084NA11
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZC41
4C088AB81
4C088AC13
4C088BA08
4C088BA14
4C088MA02
4C088MA37
4C088MA52
4C088NA02
4C088NA03
4C088NA11
4C088ZC41
4C206AA01
4C206AA02
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4C206CB27
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA02
4C206NA03
4C206NA11
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、難水溶性成分の水への溶出性が向上した難水溶性成分を含有する油性組成物及びそれを含むカプセル製剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、難水溶性成分を含有する油性組成物であって、
(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを10~25質量%、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを4~9質量%、(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを3~10質量%含有することを特徴とする、油性組成物を提供する。これにより、難水溶性成分の水への溶出性が向上した難水溶性成分を含有する油性組成物及びそれを含むカプセル製剤を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難水溶性成分を含有する油性組成物であって、
(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを10~25質量%、
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを4~9質量%、
(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを3~10質量%
含有することを特徴とする、油性組成物。
【請求項2】
前記難水溶性成分の融点が200℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の油性組成物。
【請求項3】
前記難水溶性成分が、コエンザイムQ10、クルクミン類、ポリメトキシフラボン類から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の油性組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の油性組成物を含むカプセル製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性成分を含有する油性組成物及びその油性組成物を含むカプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水に難溶性である生理活性成分を食品や医薬品等に適用する場合、水に溶出しにくいことから、経口摂取したときの体内への吸収効率が著しく低くなることが知られている。その結果、これら難水溶性成分の製品開発においては、機能性食品、医薬品等への応用が制限されていた。
【0003】
特許文献1には、ポリフェノール類等のπ共役系の難溶性成分に、カロテノイドの一種であるクロセチンを共存させることで、水に可溶化又は分散化させる技術が開示されている。また、特許文献2には、ポリフェノール類と同様に脂溶性が高く体内吸収性の低い成分であるコエンザイムQ10の体内効率を高める手段として、O/W(D)製剤(OD乳化製剤)とする技術が開示されている。
【0004】
このように近年、ポリフェノール類、コエンザイムQ10等の水に対して難溶性の生理活性成分を含む食品、機能性食品、医薬品、化粧品等において、生理活性成分の体内への利用率又は吸収率の改善のため様々な技術が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/098562号
【特許文献2】特開2013-159556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら難水溶性の生理活性成分の経口摂取による体内への利用率や吸収率の問題が十分解決されたとは言えなかった。そこで、体内への高い吸収性を示す、難水溶性物質を含有する組成物又はそれを利用した製剤の開発が望まれている。本発明者らは、生体内の利用率や吸収率の向上のため、難水溶性物質の水への溶出性に着目した。
即ち、本発明の目的は、難水溶性の生理活性成分の水への溶出性が向上した油性組成物及びそれを含むカプセル製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、3種類のグリセリン脂肪酸エステルを特定の配合において添加することにより、難水溶性成分を含有する油性組成物が乳化により、その油相成分が水中に安定的に分散され、当該油性組成物における難水溶性物質の溶出性が向上し、体内への吸収性を改善し得るという知見に至り、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の油性組成物及びカプセル製剤を提供するものである。
[1]難水溶性成分を含有する油性組成物であって、
(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを10~25質量%、
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを4~9質量%、
(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを3~10質量%
含有することを特徴とする、油性組成物。
本発明の油性組成物によれば、難水溶性成分を含有する油性組成物において、特定の配合において3種類のグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、水における溶出性を向上させ、生体への吸収性を高めた油性組成物を提供することができる。
[2]0.1質量%のtween80を含有する水溶液中に、0.1質量%の濃度で前記油性組成物を分散させた場合の前記難水溶性成分の油相粒子の平均粒子径が0.3μm以下であることを特徴とする、[1]に記載の油性組成物。
この特徴によれば、難水溶性成分の油相粒子が水中において微細な粒子径を保って安定に分散することで、体内へのより高い吸収性を確保することができる。
[3]前記難水溶性成分の融点が200℃以下であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の油性組成物。
この特徴によれば、難水溶性成分の融点が上限値を満たすことにより、水中における難水溶性成分の油相粒子が微細な粒子径を保ち、より高い溶出性を確保することができる。
[4]前記難水溶性成分が、コエンザイムQ10、クルクミン類、ポリメトキシフラボン類から選択される1種以上を含有することを特徴とする、[1]~[3]に記載の油性組成物。
この特徴によれば、難水溶性成分を特定することにより、本発明の水への高い溶出性の効果をより確実に奏することができる。
[5][1]~[4]に記載の油性組成物を含むことを特徴とする、カプセル製剤。
本発明のカプセル製剤によれば、難水溶性成分を含有する油性組成物を含むカプセル製剤において、特定の配合で3種類のグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、難水溶性成分の水における溶出性を向上させ、生体への吸収性を高めたカプセル製剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、難水溶性の生理活性成分の水への溶出性が向上した油性組成物及びそれを含むカプセル製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の難水溶性成分を含有する油性組成物(以下、難水溶性成分含有油性組成物と称する、また、単に油性組成物と称することがある)、難水溶性成分含有油性組成物を含むカプセル製剤について説明する。
なお、実施形態に記載する難水溶性成分含有油性組成物、難水溶性成分含有油性組成物を含むカプセル製剤(以下、カプセル製剤と称する)については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
【0011】
[難水溶性成分含有油性組成物]
本発明の難水溶性成分含有油性組成物は、下記(A)~(C)を含有することを特徴とする。
(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル
【0012】
本発明の難水溶性成分含有油性組成物は、水に難溶性の生理活性成分を油相成分の一つとして含有し、乳化剤として前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分をさらに含有することによって、水中への溶出性が高まり、体内への吸収率が向上する。
【0013】
また、本発明の難水溶性成分含有油性組成物は、これら3種類のグリセリン脂肪酸エステルの配合量を(A)成分の含有量として、油性組成物全量に対して10~25質量%、(B)成分の含有量として、油性組成物全量に対して4~9質量%、(C)成分の含有量として、油性組成物全量に対して3~10質量%であるという特定の配合としている。これら乳化剤の特定の配合により、難水溶性物質の油相中でのよりよい分散状態が得られ、水中へのより高い溶出性を同時に担保することが可能となる。従って、本発明の難水溶性成分含有油性組成物を適用した製剤に、難水溶性成分が有する活性成分としての効果が適切に発揮され、臨床的にも非常に有用な性質を付与することができる。
【0014】
ここで、難水溶性成分とは、融点が40℃以上であり、かつ全く水に溶解しないか又は水に溶解しにくい性質を持つ生理活性成分であり、例えば、20℃において1g又は1mlの難水溶性成分を溶解するのに必要な水の量が、好ましくは1000ml以上である成分をいう。
【0015】
また、溶出性とは、本発明の難水溶性成分含有油性組成物を製剤化したのち、水系液体中への難水溶性成分が溶出する度合いのことをいう。溶出性の測定方法の詳細については後述するが、この溶出性が高ければ、生体への吸収率、さらには生体内での利用率も向上することになり、製品として期待される効果や市場価値が高い製剤であると言える。
【0016】
本発明の油性組成物の形態としては、特に限定されないが、使用の簡便性の観点から、好ましくは塊状、顆粒状、粉末状又は液状である。なかでも液状のものが、油性成分に溶解又は分散させる場合の混合が容易なこと、保存中の安定性に優れているため好ましく使用できる。
【0017】
本発明の油性組成物の用途としては特に限定されず、医薬品、化粧品、食品、飲料、飼料等に利用可能である。一般に食品分野で汎用される原料を用いて製造されうることから、食品用途に好適に利用可能である。また、本発明の油性組成物は、難水溶性成分の経口摂取のための油性組成物として、カプセル製剤に内包して経口剤として摂取することができる。
【0018】
以下に本発明に使用できる難水溶性成分及びその他の成分の具体例について詳説するが本発明の難水溶性成分及びその他の成分はこれらに限定されるものではない。
【0019】
<難水溶性成分>
本発明に使用できる難水溶性成分としては、水に溶けにくい性質を有するものであって、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、コエンザイムQ10、ポリフェノール類、トコフェロール類、カロテノイド類、ステロール類、水不溶性多糖類、不溶性金属塩又は無機塩類、有機高分子化合物等が挙げられる。このような難水溶性成分のなかでも、π共益系の構造を有するもの又はその誘導体が好ましく使用できる。このような難水溶性成分としては、例えば、コエンザイムQ10、ポリフェノール類、トコフェロール類、カロテノイド類などが挙げられる。なかでも、コエンザイムQ10、ポリフェノール類がより好ましく使用可能である。これらの入手経路としては、一般的に用いられている工業的合成品、発酵法により得られる酵母抽出品等の菌体抽出品、動植物からの抽出品等が挙げられる。これらの難水溶成分は、それぞれ単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0020】
(コエンザイムQ10)
コエンザイムQ10は、ベンゾキノン構造を有し、補酵素としての生理活性を奏するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、本発明に使用できるものとしては、例えば、酸化型コエンザイムQ10(ユビキノン)、還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)、コエンザイムQ10誘導体などが挙げられる。
コエンザイムQ10の具体例としては、例えば、商品名「コエンザイムQ10パウダー50」(三菱ケミカルフーズ製)、商品名「カネカQH」(カネカ社製)などが挙げられる。コエンザイムQ10誘導体の具体例としては、例えば、乳化処理や水溶化処理によりコエンザイムQ10の水可溶性、生体吸収性、生体安定性などを向上させたもの、コエンザイムQ10のリン酸化合物などが挙げられる。なかでも、臨床上の有用性の観点から還元型コエンザイムQ10が好ましく使用できる。また、これらのコエンザイムQ10は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0021】
(ポリフェノール類)
ポリフェノールは、同一分子内に2個以上のフェノール性水酸基を含む、ポリフェノール骨格を有する植物成分である。本発明に使用できるポリフェノール類としては特に限定されないが、例えば、クルクミン類(クルクミン、ショウガオール等)、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、ヘスペリジン、ルテオリン、ケルセチン、ルチン、ポリメトキシフラボン等)、フェニルプロパノイド類(コーヒー酸、リグナン、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸、イソクロロゲン酸、トリカフェオイルキナ酸、ロスマリン酸等)、スチルベノイド(ピアセタンノール、ピノシルビン、レスベラトロール等)、エラグ酸、タンニン、テアフラビン類(テアフラビン、テアルビジン等)、キサントフモール、ストリクチニン、フロレチン等、又はこれらの重合体が挙げられる。
【0022】
また、本発明に用いられるポリフェノール類は、それぞれの種類に分類されるアグリコンに糖がグリコシド結合した配糖体であってもよい。また、ポリフェノールのフェノール性水酸基の水素原子が他の基、例えば、アシル基、マロニル基、アルキル基、グリコシル基等で置換されたポリフェノール誘導体であってもよい。これらポリフェノール類の入手方法としては特に限定されず、例えば、工業的に合成されたもののほか、天然から単離精製されたものであってもよく、又は天然物由来の抽出物であってもよい。なお、ポリフェノール類は、1種単独で又は2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。
【0023】
これらポリフェノール類のなかでも、クルクミン類、フラボノイド類が本発明に好ましく使用できる。
クルクミン類は、ウコンの根茎などから得られる黄色のポリフェノール化合物である。クルクミン類は、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、コレステロール低下作用、体脂肪抑制作用、抗アレルギー作用、抗酸化作用、抗炎症作用、腫瘍形成阻害作用、循環器疾患改善作用、脳疾患予防作用、殺菌作用、美肌作用などを発揮することが明らかとなっている。本発明に使用できるクルクミン類としては、本発明の効果を奏する限り限定されないが、クルクミン、ジメトキシクルクミン、ビスジメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン等が挙げられる。なかでも、還元型クルクミンであるテトラヒドロクルクミン(ホワイトクルクミノイド)を好ましく使用することができる。
【0024】
フラボノイド類は、2つのフェニル基が3個の炭素原子を介して繋がったジフェニルプロパン構造を有する化合物であり、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、ルチン、ケルセチン、ミリセチン、ミリシトリン、クエルシトリン等のフラボノール類、ナリンゲニン、へスペレチン、フラバノン、フラバノノール、ナリンギン、ヘスペリジン、リクイリチ等のフラバノン類、アピゲニン、ルテオリン、フラボン、アピイン、トリンジン、ホルツネリン等のフラボン類、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン等のカテキン類、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン等のイソフラボン類、シアニジン、デルフィニジン、アントシアニン等のアントシアニジン類、カルコン類、ビフラボン、ギンケチン、ビロベチン、ポリメトキシフラボン等が挙げられる。
【0025】
これらフラボン類のなかでも、ポリメトキシフラボン類が本発明に好ましく利用可能である。ポリメトキシフラボン類には、呈味改善作用、筋肉疾患の改善作用、抗肥満作用や血流改善作用、発ガン抑制作用等の様々な作用が知られている。このようなポリメトキシフラボン類としては特に限定はされないが、例えば、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4‘-トリメトキシフラボン、3,5,7,3’,4‘-ペンタメトキシフラボン、5,6,7,4‘-テトラメトキシフラボン、3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン、5,7,3‘,4’-テトラメトキシフラボン、タンゲレチン、シネンセチン、ノビレチン、3,5,6,7,3’,4‘-ヘキサメトキシフラボン、3,5,6,7,8,3’,4‘-ヘプタメトキシフラボン等が挙げられる。
【0026】
これらポリメトキシフラボン類を得る方法は特に限定されないが、植物から抽出したものを用いても良いし、化学的に合成したものを用いても良い。植物から抽出する場合はブラックジンジャー(学名:ケンフェリア・パルビフローラ Kaempferia parviflora)から抽出精製することができる。これらの抽出精製した化合物(5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン)の混合物であるポリメトキシフラボン類として用いることが簡便である。なお、混合物として用いる場合には、前記メトキシフラボン類の混合物の含有量の合計をポリメトキシフラボン類の総量とする。なお、ポリメトキシフラボンの含有量を測定する場合は、各ポリメトキシフラボン化合物の標準品を用いて公知のHPLC法で定量することができる。
【0027】
本発明に使用するポリメトキシフラボン類をブラックジンジャーから抽出する場合は特開2016-193906号公報に開示された抽出方法を使用することができる。具体的にはブラックジンジャー抽出物の抽出原料として、ブラックジンジャー(黒ショウガ)は根茎を用いる。スライスした乾燥根茎を使用する場合には、抽出効率を高めるために、あらかじめ根茎を粉砕機等で40メッシュ程度に粉砕しておくことが好ましい。
【0028】
抽出に使用する溶媒や温度条件等については、特に限定されるものではなく、任意に選択、設定することができる。抽出溶媒としては、水、酸、塩基等といった非有機溶媒や、親水性溶媒、アセトン等といった有機溶媒を選択することができる。親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールからなる低級アルコール群から選択される1種類以上が、操作性、抽出効率の点から好ましい。ただし、有機溶媒による抽出よりもむしろ非有機溶媒による抽出が好ましく、なかでも水、温水や熱水、及びわずかに酸を添加した水、エタノールのいずれかが好ましい。
【0029】
上記の抽出物は、濾過、遠心分離及び分留といった処理を行って、不溶性物質及び溶媒を取り除くことで純度を高くすることが好ましい。続いて、常法に従って抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、ポリメトキシフラボン類として本発明に用いることのできるポリメトキシフラボン類の混合物を得ることができる。これらポリメトキシフラボン類の精製方法としては、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂、液-液向流分配、分取用液体クロマトグラフィー等の方法が挙げられる。
【0030】
本発明に使用するポリメトキシフラボン類としては、市販されているブラックジンジャー抽出物を利用することができる。このような市販品としては、黒ショウガエキス(オリザ油化株式会社)、ブラックジンジャーエキス(丸善製薬株式会社)を例示できる。なお、本発明に用いるブラックジンジャー抽出物は、ポリメトキシフラボン類を20~40質量%含有するものが好ましい。
【0031】
(カロテノイド類)
本発明に使用できるカロテノイド類としては本発明の効果を奏する限り限定されないが、例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン、クリプトキサンチン等のキサントフィル類、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコペン等のカロテン類、アポカロテナ-ル、ビキシン、クロセチン等のアポカロテノイドが挙げられる。これらは一種単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせて用いてもよい。なお、前記カロテノイドは、例えば、化学的に合成されたものであってもよく、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
【0032】
(難水溶性成分の融点)
本発明の油性組成物に使用できる難水溶性成分の融点については特に制限されないが、例えば、200℃以下である。この難水溶性成分の融点の上限値については、好ましくは160℃以下である。難水溶性成分の融点が200℃以下であることにより、本発明の油性組成物を適用した製剤における、水中における乳化粒子の粒子径が小さくなり、同時に十分な溶出性が担保される。
【0033】
本発明の油性組成物における難水溶性成分の含有量は特に制限されず、難溶性成分の種類、効果が期待される力価、その他の添加物、適用される製剤の態様によって適宜設計可能であるが、例えば、油性組成物全量に対して0.1~30質量%である。難水溶性成分の含有量の下限値としては、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。難水溶性成分の含有量の上限値としては、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。難水溶性成分の含有量が0.1質量%以上であれば、生体への期待される効果を十分奏することができる。また、難水溶性成分の含有量が30質量%以下であれば、本発明の効果をより確実に奏することができ、製剤の小型化や製剤設計の自由度を担保できる。
【0034】
<乳化剤>
本発明の油性組成物は、(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として含有する。また、本発明の油性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で(A)、(B)、(C)成分以外の乳化剤を使用することができる。
【0035】
(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル
本発明の油性組成物に使用できる、これらの(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、例えば、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリル酸ポリグリセリル-2、モノカプリン酸グリセリル又はモノカプリン酸ポリグリセリル-2等が挙げられる。これらは工業的に合成できるほか、市場で入手することもできる。また、本発明の油性組成物にあっては、これら(A)成分を単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。市場から入手可能な(A)成分としては、例えば、モノカプリル酸グリセリルとして、サンソフトNo.700P-2(太陽化学社製)やポエムM-100(理研ビタミン社製)が挙げられる。
【0036】
本発明の油性組成物における(A)成分の含有量は油性組成物全量に対して10~25質量%である。(A)成分の含有量の下限値としては好ましくは15質量%以上である。(A)成分の含有量の上限値としては好ましくは22.5%質量以下である。
【0037】
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(縮合リシノレイン酸ポリグリセリルとも称する)は、リシノレイン酸同士がエステル結合した縮合物とポリグリセリンをさらにエステル結合したものであり、食品に広く利用されている。本発明の油性組成物に使用できるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルについては特に限定されず、グリセリン単位の数(ポリグリセリン平均重合度)について特に制限はないが、好ましくは3~5である。本発明に好ましく使用できるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、例えば、グリセリン単位が5である縮合リシノレイン酸ポリグリセリル-5が挙げられる。本発明に使用できる市場で入手可能な縮合リシノレイン酸ポリグリセリル-5として、サンソフトNo.818R(太陽化学社製)が挙げられる。
【0038】
本発明の油性組成物における(B)成分の含有量としては、油性組成物全量に対して4~9質量%である。(B)成分の含有量の下限値としては好ましくは5質量%以上である。(B)成分の含有量の上限値としては好ましくは6質量%以下である。
【0039】
(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル
本発明の油性組成物に使用できる、これらの(C)成分のグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、例えば、モノオレイン酸ポリグリセリル-5、モノオレイン酸ポリグリセリル-6、モノオレイン酸ポリグリセリル-8、モノオレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-5が挙げられる。これらは工業的に合成できるほか、市場で入手することもできる。また、本発明の油性組成物にあっては、これら(C)成分を単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。市場で入手可能な(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、サンソフトA-171E(グリセリン単位5、太陽化学社製)、NIKKOL Decaglyn1-OV(グリセリン単位10、日光ケミカルズ社製)NIKKOL Decaglyn1-OVEX(グリセリン単位10、日光ケミカルズ社製)やポエムJ-0381V(グリセリン単位10、理研ビタミン社製)が挙げられる。
【0040】
本発明の油性組成物における(C)成分の含有量としては油性組成物全量に対して3~10質量%である。(C)成分の含有量の下限値としては好ましくは6質量%以上である。(C)成分の含有量の上限値としては好ましくは8%質量以下である。
【0041】
また、本発明の油性組成物における(A)成分の含有量/(C)成分の含有量の比は特に制限されないが、例えば1~6である。この(A)/(C)の比の下限値としては、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上である。この(A)/(C)の比の上限値としては、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。(A)/(C)の比が1~6であることにより、本発明の油性組成物の溶出性及び粒子径への安定した効果が担保できる。
【0042】
(その他のグリセリン脂肪酸エステル)
本発明の油性組成物は、増粘剤として前記(A)~(C)のグリセリン脂肪酸エステル以外のグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよい。このようなグリセリン脂肪酸エステルとしては本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、グリセリン単位の数が1又は2であるモノグリセリン又はポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数14~22の飽和脂肪酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。市場で入手可能な当該グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB-100(グリセリン単位1、理研ビタミン社製)が例示できる。
【0043】
その他のグリセリン脂肪酸エステルの含有量としては特に制限されないが、例えば、油性組成物全量に対して0.5~10質量%である。その他のグリセリン脂肪酸エステルの含有量の下限値としては、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量以上である。その他のグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限値としては、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0044】
<油性成分>
本発明の油性組成物は、油性成分を含有することが好ましい。本発明の油性組成物に含まれる油性成分は、難水溶性成分を溶解又は分散させるために添加することができる。このような油性成分としては、食品、医薬品又は医薬部外品として使用できるものであれば特に限定されないが、例えば、食用油由来であることが好ましい。なかでも、中鎖脂肪酸トリグリセライド又は動植物性油脂のいずれか1種を少なくとも含む油性成分であることがより好ましい。
【0045】
中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、例えば、トリグリセライドを構成する脂肪酸の炭素数が8~10である中鎖脂肪酸トリグリセライドが挙げられる。動植物性油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、やし油、小麦胚芽油、コーン胚芽油、オリーブ油、米ぬか油等の植物性油脂、肝油、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。これらの油性成分のなかでも、中鎖脂肪酸トリグリセライドが特に好ましく使用できる。
【0046】
本発明の油性組成物における油性成分の含有量は特に制限はされないが、例えば、油性組成物の全質量に対して20~80質量%である。油性成分の含有量の下限値としては、好ましくは40質量%以上である。油性成分の含有量の上限値としては、好ましくは65質量%以下である。油性成分の含有量が20質量%以上であれば、難水溶性成分の適切な溶解分散の状態が得られ、80質量%以下であれば製剤設計の自由度が担保できる。
【0047】
[その他の成分]
本発明の油性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を含有することができる。
その他の成分としては、例えば、ビタミン類、多糖類、多価アルコール、アミノ酸類、アミノ糖類、タンパク質類、各種核酸類、リン脂質類、脂肪酸類ミネラル、酵素類、食物繊維類、ハーブ、果実・植物体及びその抽出物、プロバイオティックス菌類、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、懸濁剤、分散剤、乳化剤、希釈剤、還元剤、呈味料(甘味料、酸味料及び苦味料等)、保存料、増粘安定剤、着色料、発色剤、漂白剤、抗菌剤、防菌防黴剤、ガムベース、酵素、光沢剤、強化剤、香料、及び香辛料抽出物等が挙げられる。
【0048】
[難水溶性成分含有油性組成物の製造方法]
以下に、本発明の油性組成物の製造方法を説明する。なお、前記難水溶性成分含有油性組成物で説明した技術的事項については、難水溶性成分含有油性組成物の製造方法にも適用されるものである。
【0049】
本発明の油性組成物は、難水溶性成分と、前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分とを秤量後、50~90℃、好ましくは80℃程度で加温しながら撹拌し、各成分を溶解混合することで容易に調製することができる。また、必要に応じて増粘剤を添加して増粘してもよい。増粘剤としては、例えば、前述した室温で固体のグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。溶解液が気泡を含む場合は、減圧脱気などの方法で気泡を除去することが好ましい 。
【0050】
[カプセル製剤]
本発明の油性組成物は、カプセル製剤として好ましく利用することができる。ハードカプセル製剤、ソフトカプセル製剤のいずれであっても適用可能であるが、皮膜を軽量化でき、カプセル製剤を小型化できることからハードカプセル製剤が好ましい。
【0051】
(カプセル皮膜)
本発明のカプセル製剤はカプセル皮膜を有する。カプセル皮膜の組成は、用途や組成に応じて適宜設定されるが、大きくはソフトカプセル製剤であるかハードカプセル製剤であるかによって大別される。
【0052】
ソフトカプセル製剤である場合、カプセル皮膜の成分は特に限定されないが、例えば、高分子成分、保湿剤等が挙げられる。高分子成分としては、例えば、ゼラチン、デンプン、寒天、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カラギーナン等が挙げられる。高分子成分のカプセル皮膜中の含有量としては特に制限されず、例えば、カプセル皮膜に対して1質量%以上95質量%以下である。また、保湿剤としては、例えば、グルコースなどの糖類、グリセリンなどのアルコール類、ソルビトールなどの糖アルコール類などが挙げられる。ソフトカプセル製剤のカプセル皮膜中の各成分の配合割合は、特に制限されず、適宜設定可能である。ソフトカプセル製剤のカプセル皮膜は、上記のカプセル皮膜の成分から製造されたシートにカプセル内容物を充填し、圧着成型することなどにより形成される。
【0053】
ハードカプセル製剤である場合、ハードカプセル製剤のカプセル皮膜の成分は特に限定されないが、例えば、ゼラチン、プルラン、寒天、カラギーナン、デンプン、デンプン分解物、アルギン酸やHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン誘導体、ジェランガム等の高分子成分が挙げられる。カプセル皮膜中の高分子成分の含有量としては特に制限されないが、例えば、カプセル皮膜に対して1質量%以上95質量%以下である。ハードカプセル製剤のカプセル皮膜中の各成分の配合割合は特に制限されず、適宜設定可能である。ハードカプセル製剤のカプセル皮膜は、通常、上記のカプセル皮膜の成分を成形して円筒形のボディーとキャップの形状とすることにより用いられる。なお、本発明に用いるハードカプセル製剤のカプセル皮膜は、商業的に入手可能な市販品を用いてもよい。
【0054】
(溶出性)
本発明の製剤における溶出性は、後述する測定方法により難水溶性成分の溶出量として求めることができる、水系液体中への難水溶性成分の溶出する度合いを表す指標である。この溶出性については、乳化剤、油性成分、その他添加物等の構成、適用される剤型等によって設計変更可能であり、特に制限されないが、例えば、ハードカプセル製剤(HPMC)に適用した場合において、50μg/ml以上である。溶出性の下限値としては、60μg/ml以上であることが好ましく、70μg/ml以上であることがより好ましい。本発明のカプセル製剤における溶出性が50μg/ml以上を満たすことにより、製剤とした場合に生体内での利用率の向上が期待できる。
【0055】
(粒子径)
本発明のカプセル製剤における水中の油相粒子の粒子径については特に制限はされないが、上記溶出試験30分時点でサンプリングした試験液における平均粒子径が0.3μm以下であることが好ましい。平均粒子径の上限値としては、好ましくは0.2μm以下であり、より好ましくは0.15μm以下である。前記のように、水中で均一に分散された油相粒子の平均粒子径が0.3μm以下であれば、水中の良好な分散性を有し、難水溶性成分が速やかに体内に吸収されることで生体利用率の向上が期待される。
【0056】
<ソフトカプセル製剤の製造方法>
ソフトカプセル製剤の製造方法としては、特に限定はされず公知の方法を用いて製造可能である。例えば、調製した油性組成物を加温状態で公知のソフトカプセル成型機を用いてソフトカプセル製剤とすることができる。ソフトカプセル製剤に当たっては、特段の制限はなく、ソフトカプセル封入装置の製造条件にしたがって製造可能である。
【0057】
<ハードカプセル製剤の製造方法>
ハードカプセル製剤の製造方法としては特に限定はされず、公知の方法を用いて製造可能である。例えば、調製した油性組成物を公知のハードカプセル成型機を用いてHPMCハードカプセルに充填することでハードカプセル製剤とすることができる。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【0059】
<難水溶性成分含有油性組成物の調製>
約80℃に加温した200gの中鎖脂肪酸トリグリセリド(トリカプリル酸グリセリル;商品名「ココナードRK」、花王社製)に、表2、表3に示した配合比に従い、(A)モノカプリル酸グリセリル(グリセリン単位1、脂肪酸置換数1、HLB7.2;商品名「サンソフト700P-2」、太陽化学社製)、(B)縮合リシノレイン酸ポリグリセリル-5(グリセリン単位5、脂肪酸置換数1、商品名「サンソフト818R」、太陽化学社製)、(C)モノオレイン酸ポリグリセリル-5(グリセリン単位5、脂肪酸置換数1、HLB12.7;商品名「サンソフトA-171E」、太陽化学社製)、グリセリン脂肪酸エステル(ベヘン酸グリセリル;商品名「ポエムB-100」、理研ビタミン社製)、コエンザイムQ10(商品名「カネカQH」、カネカ社製)をガラス容器に投入し、ホモミクサーMARK II(プライミクス社製)で均一になるまで55~60℃に加温しながら10分攪拌した。その後、ニコチンアミドモノヌクレオチド(商品名「NMN」、中原社製)、アスコルビン酸をさらに投入し、均一になるまで55~60℃に加温しながら10分攪拌した。室温まで冷却して実施例1~18及び比較例1~20の油性組成物を得た。なお、実施例で用いた原料を以下の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<カプセル製剤の調製>
次に、調製した実施例1~18及び比較例1~20のペースト状の油性組成物、それぞれ約100mgを、マイクロマンE(エムエス機器社製)を用いて3号HPMCカプセル(VcapsPlus L VP.B.NT.LT.CARAM、ロンザ社製)に充填し、難水溶性成分含有油性組成物を内包するハードカプセル製剤を得た。
【0062】
(溶出試験)
当該調製したハードカプセル製剤について、以下の方法により溶出試験を行った。200mLビーカーに0.1%tween80水溶液を100mL入れ、37℃に加温し、100rpmで攪拌した。この試験液にそれぞれのハードカプセル製剤1粒を投入後、30分時点で試験液を0.45umフィルターでろ過し、ろ液中の還元型CoQ10濃度をHPLCで測定し、還元型CoQ10の溶出量(μg/ml)として算出し、溶出性の指標とした。
【0063】
なお、HPLCの測定条件は、以下の通りであった。
カラム:InertSustain C18 HP (3μm 3.0×100mmI.D)(GLサイエンス社製)
溶離液:Aメタノール、Bエタノール(A/B=65/35,v/v)
カラム温度:40℃
検出:UV290mm
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
また、還元型コエンザイムQ10の定量は、標準品による検量線法を採用した。この溶出試験の結果を表2、表3に示した。
【0064】
(溶出試験の評価基準)
前記溶出試験の試験結果について、以下の評価基準で評価し、評価結果を表2、表3に示した。
〇:溶出性50μg/ml以上
×:溶出性50μg/ml未満
【0065】
(粒子径の測定)
また、溶出性の確認と同時に、カプセル製剤を試験液に投入後30分時点で試験液を分取し、レーザー回折式粒子径分布測定装置LA-960(堀場製作所社製)を使用して平均粒子径を測定し、測定結果を表2、表3に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
実施例1~18、比較例1~20のコエンザイムQ10の溶出性及び粒子径の測定の結果から、良好な溶出性を得るためには、(A)成分としてモノカプリル酸グリセリル、(B)成分として縮合リシノレイン酸ポリグリセリル-5、(C)成分としてモノオレイン酸ポリグリセリル-5の3成分を(A)成分の含有量として10~25質量%、(B)成分の含有量として4~9質量%、(C)成分の含有量として3~10質量%という特定範囲で含有する必要があることが明らかとなった。また、同時に微細な平均粒子径を有しており、良好な体内への吸収性が期待できる結果となった。
【0069】
<処方例1>
また、(A)成分をカプリン酸グリセリル(グリセリン単位1、脂肪酸置換数1、HLB6.5)、カプリン酸ポリグリセリル-2(グリセリン単位2、脂肪酸置換数1、HLB9.5)に置き換えて前記実施例と同様に、油性組成物及びカプセル製剤を作製し、同様に評価した結果、溶出性において基準を満たし、同等の効果が認められた。また、同時に微細な平均粒子径を有しており、良好な体内への吸収性が期待できる結果となった。
【0070】
さらに、(C)成分をオレイン酸ポリグリセリル-10(グリセリン単位10、脂肪酸置換数1、HLB15)、ジオレイン酸ポリグリセリル-5(グリセリン単位5、脂肪酸置換数2、HLB11.9)に置き換えて前記実施例と同様に、油性組成物及びカプセル製剤を作製し、同様に評価した結果、溶出性において基準を満たし、同等の効果が認められた。また、同時に微細な平均粒子径を有しており、良好な体内への吸収性が期待できる結果となった。
【0071】
<処方例2>
(テトラヒドロクルクミン)
さらに、前記実施例及び処方例1における難水溶成分であるコエンザイムQ10を、テトラヒドロクルクミン(ホワイトクルクミノイド)に置き換えて、テトラヒドロクルクミンの含有量を10質量%とし、中鎖脂肪酸トリグリセリドの加温条件を100℃とした以外は、前記実施例及び処方例1と同様に油性組成物及びカプセル製剤を作製し、同様に評価した。その結果、テトラヒドロクルクミンを難水溶性成分として用いたカプセル製剤においても、溶出性についてコエンザイムQ10と同等の効果が認められた。同時に、平均粒子径についても同等の効果が認められた。
【0072】
(ポリメトキシフラボン類)
さらに、前記実施例及び処方例1における難水溶成分であるコエンザイムQ10を、ポリメトキシフラボン類に置き換えて、前述したブラックジンジャー抽出物である、ポリメトキシフラボン類の混合物としての含有量を8.7質量%とし、中鎖脂肪酸トリグリセリドの加温条件を200℃とした以外は、前記実施例及び処方例1と同様に油性組成物及びカプセル製剤を作製し、同様に評価した。その結果、ポリメトキシフラボン類を難水溶性成分として用いたカプセル製剤においても、溶出性について同等の効果が認められた。また、同時に平均粒子径についても同等の効果が認められた。
【0073】
(ジオスゲニン)
なお、同様にコエンザイムQ10をジオスゲニン(融点210℃)に置き換えて、ジオスゲニンの含有量を10質量%とし、中鎖脂肪酸トリグリセリドの加温条件を200℃とした以外は、前記実施例及び処方例1と同様に実施したところ、溶出性についてはコエンザイムQ10と同等の効果が認められたが、平均粒子径においては、同等の効果を得ることができなかった。なお、前記処方例2における難水溶性成分の含有量と表2、表3におけるコエンザイムQ10の含有量の差異については、中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量によって調整した。
【0074】
以上の結果から、難水溶性成分含有油性組成物が乳化剤として(A)グリセリン単位の数が1~2であるグリセリン又はポリグリセリンに、1個のカプリル酸又はカプリン酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)グリセリン単位の数が5~10であるポリグリセリンに、1個又は2個の炭素数が14~22の一価の不飽和脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルの3つの成分を(A)成分の含有量として10~25質量%、(B)成分の含有量として4~9質量%、(C)成分の含有量として3~10質量%という特定の範囲で含有することにより、難水溶性成分の水へ良好な溶出性を有する、難水溶性成分含有油性組成物及びそれを含むカプセル製剤を得ることができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の難水溶性成分含有油性組成物は、特定の配合において3種類のグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、難水溶性成分が乳化され、水中において安定な乳化粒子として分散し水への溶出性が向上する。さらに、本発明によれば、難水溶性成分含有油性組成物を適用したカプセル製剤などを提供することができる。また、本発明の難水溶性成分含有油性組成物を構成する各成分として、食品添加物として許容された成分を使用できることから、本発明の難水溶性成分含有油性組成物を、そのままサプリメント又は食品添加物として、さらに該油性組成物を適用した製剤に使用することができる。