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特開2024-60520クリアランス測定装置、および、クリアランス測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060520
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】クリアランス測定装置、および、クリアランス測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20240424BHJP
   G01T 1/203 20060101ALI20240424BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20240424BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20240424BHJP
   G01T 1/169 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/203
G01T1/20 L
G01T1/20 B
G01T1/16 A
G01T1/169 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167945
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】名雲 靖
(72)【発明者】
【氏名】上田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】角田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA07
2G188AA15
2G188AA19
2G188AA23
2G188BB04
2G188BB18
2G188CC10
2G188CC21
2G188EE01
2G188EE25
(57)【要約】
【課題】解体物の放射能を高感度かつ高精度に測定および評価し、クリアランス物の処理処分全体を効率的に実施する。
【解決手段】クリアランス測定装置1は、少なくとも1本以上を束ねたプラスチックシンチレーションファイバを、可撓管に挿入した放射線検出器2と、解体物11の形状を測定する形状測定部7と、形状測定部7による測定結果に基づき、放射線検出器2を解体物11に押し付ける押し付け機構5と、放射線検出器2によって測定した放射線測定値を収録する放射線測定値収録部3と、放射線測定値から解体物11の放射能を評価する放射能評価部9と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本以上を束ねたプラスチックシンチレーションファイバを、可撓管に挿入した放射線検出器と、
解体物の形状を測定する形状測定部と、
前記形状測定部による測定結果に基づき、前記放射線検出器を前記解体物に押し付ける押し付け機構と、
前記放射線検出器によって測定した放射線測定値を収録する放射線測定値収録部と、
前記放射線測定値から前記解体物の放射能を評価する放射能評価部と、
を有することを特徴とするクリアランス測定装置。
【請求項2】
前記可撓管の半径を、測定において設定する前記プラスチックシンチレーションファイバと前記解体物との距離、および、少なくとも1本以上に束ねた前記プラスチックシンチレーションファイバの半径の合計値とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のクリアランス測定装置。
【請求項3】
前記放射線検出器を前記解体物に押し付ける前に前記解体物の表面に薄膜を設置する、薄膜設置部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のクリアランス測定装置。
【請求項4】
前記解体物の表面に設置する前記薄膜の寸法を、前記形状測定部の測定結果に基づき決定する薄膜寸法決定部を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のクリアランス測定装置。
【請求項5】
前記薄膜の解体物の側の何れかに粘着性を有している、
ことを特徴とする請求項3に記載のクリアランス測定装置。
【請求項6】
前記薄膜を設置すると共に、前記薄膜を固定する治具を設置する、
ことを特徴とする請求項3に記載のクリアランス測定装置。
【請求項7】
前記放射線検出器による放射線測定の前または後に、前記薄膜を除染する薄膜除染部を有する、
ことを特徴とする請求項3または4に記載のクリアランス測定装置。
【請求項8】
前記放射線検出器による放射線測定の前または後に、前記放射線検出器を除染する放射線検出器除染部を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクリアランス測定装置。
【請求項9】
前記解体物をクリアランス測定装置の中に搬送する搬送部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクリアランス測定装置。
【請求項10】
解体物の形状を測定するステップと、
前記解体物の形状測定結果から放射線検出器を前記解体物に対して押し付ける方向を算出するステップと、
算出された押し付け方向に前記放射線検出器を押し付けるステップと、
押し付けられた前記放射線検出器により放射線を測定するステップと、
測定された放射線測定値から前記解体物の放射能を評価するステップと、
を有することを特徴とするクリアランス測定方法。
【請求項11】
前記解体物の形状測定結果から、前記解体物の表面における法線方向を算出し、前記法線方向に前記放射線検出器を押し付ける
ことを特徴とする請求項10に記載のクリアランス測定方法。
【請求項12】
前記解体物の形状測定結果に基づき、薄膜を前記解体物の表面に設置し、前記薄膜の上から前記放射線検出器を前記解体物に対して押し付ける、
ことを特徴とする請求項11に記載のクリアランス測定方法。
【請求項13】
前記放射線検出器による前記解体物の放射線測定が終了した後、前記薄膜を除染する、
ことを特徴とする請求項12に記載のクリアランス測定方法。
【請求項14】
前記放射線検出器により一つの測定位置における放射線測定を実施した後、前記放射線検出器を除染し、次の測定位置に移動して放射線測定を実施する、
ことを特徴とする請求項10または11に記載のクリアランス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電施設の運用中あるいは廃止措置において発生する解体物の放射能を精度良くかつ効率的に評価するクリアランス測定装置、および、クリアランス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電施設等の運用中あるいは廃止措置では、機器の交換や施設の解体に伴い、放射化された廃棄物、あるいは放射能により汚染された廃棄物など、大量の廃棄物が発生する。これらの廃棄物は、放射化あるいは放射能汚染の程度等、放射能濃度のレベルに応じて分類される。このうち、低レベル放射性廃棄物と総称される放射能濃度が比較的高いものは、中深度処分といった地中埋設処分が実施される。低レベル放射性廃棄物のうち放射能濃度が比較的低いものは、浅地中ピット処分といった地中埋設処分が実施される。低レベル放射性廃棄物のうち放射能濃度が極めて低いものについては、トレンチ処分といった地中埋設処分が実施される。また、低レベル放射性廃棄物よりも放射能濃度が高い高レベル放射性廃棄物については、地層処分が実施される。
【0003】
一方、解体物の中には、その放射線の汚染程度が、自然界の放射線レベルと比較して十分に小さく、人の健康に対するリスクが無視できる程度であることから、放射線防護に係る規制から除外してもよいものがある。これらは、クリアランス物と呼ばれる。
【0004】
クリアランス物は、放射性物質として取り扱う必要がない。そのため、放射能濃度がクリアランスレベル以下と判定されたクリアランス物は、原子力発電所外に搬出でき、再利用できるものについては資源として再利用される。クリアランス物の再利用が合理的でない場合には、通常の産業廃棄物と同様に処分することが可能となる。クリアランスレベル以下であるかどうかの判定は、測定対象となる解体物を放射線測定し、その測定結果から放射能を評価することにより実施される。
【0005】
解体物の放射能を測定・評価する方法として、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1に記載の方法は、あらかじめ解体物を形状計測しておき、その形状計測結果に基づき長尺のプラスチックシンチレーションファイバ(PSF:Plastic Scintillation Fiber)を解体物の表面にある一定の距離まで近接させ、更にはその表面を近接距離を維持したまま倣い走査させて測定するものである。これにより、大型の解体物全体の放射能を高精度に、かつホットスポットを見逃すことなく測定可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-70049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クリアランス物の発生量は、標準的な発電用軽水炉1基あたり数万トンと試算されている。実際にはクリアランス物であるにもかかわらず、放射線測定に基づく放射能評価によりクリアランスレベルよりも高い放射能濃度と評価される場合、放射性廃棄物として扱われることになる。
【0008】
特許文献1に記載の方法では、形状柔軟性を有し、且つ長尺のプラスチックシンチレーションファイバを使用することで大型の解体物を測定可能とした。これにより、上記したクリアランス物を解体する際の細断工程を削減することが可能であり、クリアランス物の処理処分全体の効率的化を図っている。
【0009】
ただし、特許文献1に記載の方法では、プラスチックシンチレーションファイバは、形状柔軟性を有しかつ長尺であることから、撓みが発生しやすい。そのために、プラスチックシンチレーションファイバと解体物表面の距離を一定に維持できず、局所的な測定感度が変化してしまうという課題がある。また同じ理由により、当初計画していた測定位置と実際に測定している位置にずれが生じ、高精度な測定が難しくなる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、解体物の放射能を高感度かつ高精度に測定および評価し、クリアランス物の処理処分全体を効率的に実施することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するため、本発明のクリアランス測定装置は、少なくとも1本以上を束ねたプラスチックシンチレーションファイバを、可撓管に挿入した放射線検出器と、解体物の形状を測定する形状測定部と、前記形状測定部による測定結果に基づき、前記放射線検出器を前記解体物に押し付ける押し付け機構と、前記放射線検出器によって測定した放射線測定値を収録する放射線測定値収録部と、前記放射線測定値から前記解体物の放射能を評価する放射能評価部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のクリアランス測定方法は、解体物の形状を測定するステップと、前記解体物の形状測定結果から放射線検出器を前記解体物に対して押し付ける方向を算出するステップと、算出された押し付け方向に前記放射線検出器を押し付けるステップと、押し付けられた前記放射線検出器により放射線を測定するステップと、測定された放射線測定値から前記解体物の放射能を評価するステップと、を有することを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクリアランス測定装置および方法によれば、解体物の放射能を高感度かつ高精度に測定および評価し、クリアランス物の処理処分全体を効率的に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態であるクリアランス測定装置の一例を表した図である。
図2】クリアランス測定装置において使用する放射線検出器の長手方向と直交する垂直断面を示す図である。
図3】クリアランス測定装置による測定処理のフローチャートである。
図4】クリアランス測定装置において、放射線検出器を解体物に対して押し付ける押し付け機構の一例を示した図である。
図5】本発明の第2の実施形態であるクリアランス測定装置の一例を表した図である。
図6】クリアランス測定装置において、放射線検出器を解体物に対して押し付ける押し付け機構の一例を示した図である。
図7】クリアランス測定装置による測定処理のフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施形態であるクリアランス測定装置の一例を表した図である。
図9】クリアランス測定装置による測定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、各図面を用いて説明する。
第1の実施形態におけるクリアランス測定装置1を図1に示す。この図では、解体物11として内面が汚染した曲率を有する大口径の配管(曲管)を半割して汚染面を表面に出したものとし、その表面を倣い測定する場合を例として説明するが、測定対象物となる解体物11は、この図に示すような曲管やサイズに限定されない。
【0016】
クリアランス測定装置1は、形状測定部7と搬送部8とを有している。形状測定部7は、解体物11の表面形状を測定する。搬送部8は、解体物11をクリアランス測定装置1の内部に搬送する。なお、搬送部8は必須ではなく、ガントリ31に解体物11が設置された状態で、形状測定部7が解体物11の表面形状を測定してもよく、限定されない。
【0017】
更にクリアランス測定装置1は、ガントリ31と、放射線検出器2と、放射線測定値収録部3と、放射能評価部9と、押し付け機構5と、駆動部6とを有している。ガントリ31は、四辺の支柱が梁を支持している構造物であり、押し付け機構5を前後左右方向に移動させることが可能である。
【0018】
放射線検出器2は、放射線検出器保持部4を介してガントリ31に取り付けられている。放射線検出器2は、プラスチックシンチレーションファイバを7本を束ねて挿入した可撓管と、この可撓管の両端に設けられた光電倍増管20a,20bとで構成される。光電倍増管20a,20bが検知した信号を処理することで、可撓管内のプラスチックシンチレーションファイバの各位置における放射線量を検出可能である。
【0019】
放射線測定値収録部3は、放射線検出器2により測定した放射線の測定値を収録する。放射能評価部9は、放射線測定値収録部3により収集した放射線測定値から放射能を評価する。押し付け機構5は、形状測定部7による測定結果に基づき、放射線検出器2を解体物11の略法線方向に押し付ける。駆動部6は、ガントリ31に取り付けられ、押し付け機構5を鉛直方向に移動可能であり、かつガントリ31内の水平方向に自由に移動可能である。
【0020】
図2は、放射線検出器2の長手方向と直交する垂直断面図である。
放射線検出器2は、プラスチックシンチレーションファイバ101による放射線検出器を、可撓性を有するインターロックチューブ103等の可撓管内に挿入することで構成される。
【0021】
プラスチックシンチレーションファイバ101とは、ガンマ線との相互作用によりシンチレーション光を発生するシンチレータ材を、光ファイバ状に成型したものである。放射線検出器2は、プラスチックシンチレーションファイバ101の両端の光電倍増管20a,20bに入射するシンチレーション光の到達時間差から、ガンマ線の入射位置とその強度を測定する。プラスチックシンチレーションファイバ101は、10~20m程度の長さのものがあり、例えば10cmの間隔でガンマ線の強度を出力可能である。また、光ファイバと同様に曲げることができる等、形状の柔軟性を有する。プラスチックシンチレーションファイバ101を用いた長尺な放射線検出器2を適用することで、解体物11が数m程度の長さのものであっても、一括して測定することが可能である。このため、解体物11を数十cm~1m程度のサイズまで切断する必要がなく、切断加工工程を削減できるため、クリアランスの処理処分を効率化することが可能となる。
【0022】
プラスチックシンチレーションファイバ101は1本だけでなく、複数本を束ねて(バンドルして)使用することができる。図2では7本のプラスチックシンチレーションファイバ101をバンドルして使用した場合を例示ししているが、測定対象物の放射線強度に応じて7本以上、あるいは7本以下にバンドルして使用することも可能である。
【0023】
インターロックチューブ103等の可撓管は、SUS等の材質で構成された中空の管で、新たな外力を与えない限りその形状を維持することが可能な管である。例えば、インターロックチューブ103に外力を与えて曲げた場合には、その曲げた状態を保持可能である。インターロックチューブ103は、光ファイバや各種センサ、ケーブル等の保護や内視鏡等に使用されている。
【0024】
プラスチックシンチレーションファイバ101は形状柔軟性を有するが故に、長さ方向にわたって適切な拘束力を付与しない限り、重力等の影響により撓む可能性がある。一般的に放射線検出器2による放射線測定では、測定対象物と放射線検出器2の距離が変わることに伴い、測定感度が変化する。そのため、プラスチックシンチレーションファイバ101が撓むことにより、プラスチックシンチレーションファイバ101の長さ方向の位置によって、測定感度が変化してしまう。それに対して、インターロックチューブ103を使用することにより、プラスチックシンチレーションファイバ101は長さ方向のいずれの場所でも撓むことなく、当初計画した測定位置における放射線測定が可能となる。
【0025】
更には、ウレタン102等の柔軟な素材でプラスチックシンチレーションファイバ101を覆っている。これにより、インターロックチューブ103の断面内におけるバンドルしたプラスチックシンチレーションファイバ101の位置が変化しないようにする。この時、解体物11とバンドルしたプラスチックシンチレーションファイバ101との距離をdに維持したい場合を考える。このとき、図2中に点線の円で示したバンドルしたプラスチックシンチレーションファイバ101が内接する仮想的な円の半径をrとすると、外半径がr=(r+d)の半径を有するインターロックチューブ103を使用する。つまり、可撓管の半径を、測定において設定するプラスチックシンチレーションファイバ101と解体物11との距離、および、少なくとも1本以上に束ねたプラスチックシンチレーションファイバ101の半径の合計値とするとよい。
【0026】
更にインターロックチューブ103の管の板厚をtとすると、(d-t)の厚さのウレタン102でバンドルしたプラスチックシンチレーションファイバ101を覆い、インターロックチューブ103の内部に挿入する。
【0027】
以上、図1に示したクリアランス測定装置1、図2に示した放射線検出器2を使用した場合における測定処理のフローチャートを図3に示す。本測定処理は、測定前準備処理であるステップS10~S12とクリアランス測定装置1による測定処理であるステップS13~S18を含んで構成される。
【0028】
測定前準備処理では、まず初めに形状測定部7が、解体物11の形状を測定する(ステップS10)。クリアランス測定装置1は、この形状測定の結果に基づき、放射線検出器2による解体物11の測定位置や、放射線検出器2の解体物11に対する走査手順等の計画データを算出する(ステップS11)。クリアランス測定装置1は、この形状測定の結果から、放射線検出器2を解体物11に対して押し付ける方向を算出する(ステップS12)。
【0029】
放射線検出器2を解体物11に対して押し付ける押し付け機構5の一例を図4に示す。図4に示す押し付け機構5は、図1の押し付け機構5を具体的に図示したものである。クリアランス測定装置1は、放射線検出器2を解体物11に対して押し付ける際、ステップS12において算出した押し付け方向に従う。クリアランス測定装置1は、レーザースキャンによる距離計や赤外線による深度方向距離測定器、ステレオカメラ等を用いた形状測定部7により測定した、座標情報を有する点群データ等から、解体物11の表面における法線方向を算出し、その法線方向に放射線検出器2を押し付けていく。なお、押し付け機構5の押し付け方向は、解体物11の表面における法線方向から、例えば±30度ずれていてもよく、限定されない。
【0030】
図3に戻り説明を続ける。クリアランス測定装置1による測定処理にて、搬送部8は、クリアランス測定装置1内に解体物11を搬入する(ステップS13)。そして、ステップS12にて算出した放射線検出器2による解体物11の測定位置や、放射線検出器2の解体物11に対する走査手順等の計画データに従い、駆動部6は、放射線検出器2を初期測定位置に移動させる(ステップS14)。
【0031】
次に、図4に示した押し付け機構5は、放射線検出器2を解体物11に押し付ける(ステップS15)。ステップS15にて、押し付け機構5は、図1の放射線検出器2に沿った点線の矢印に示した方向に、放射線検出器2を解体物11に順次押し付けていく。この放射線検出器2は、解体物11の形状に合わせて自身の形状を変えることで、プラスチックシンチレーションファイバ101の長さ方向にわたって測定感度を維持した状態での解体物11の放射線測定を行う。次に放射線検出器2は、測定を実施する(ステップS16)。その位置で測定が終了したら、この位置がステップS11にて算出した測定位置の最終位置か否かを判定する(ステップS17)。その位置が最終位置であれば(Yes)、図3の処理を終了する。
【0032】
ステップS17にて、放射線検出器2の位置が最終位置でなければ、クリアランス測定装置1は、解体物11の内面に沿って示した図1の実線の矢印に示す方向に放射線検出器2を移動させ(ステップS18)、ステップS15に戻る。これを、放射線検出器2が最終位置に達するまで繰り返し実施する。
ステップS17にて、その位置が最終位置でなければ(No)、クリアランス測定装置1は図3の処理を終了する。
【0033】
以上記載した本発明の第1の実施形態により、大型の解体物を高感度かつ高精度に評価でき、更にはクリアランス物の処理処分全体を効率的に実施できる効果がある。
【0034】
《第2の実施形態》
本発明の第2の実施形態について、図5から図7を用いて説明する。本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態に記載したクリアランス測定装置1および方法において、解体物11が汚染されている場合に、その汚染物による放射線検出器2の汚染を回避する方法の一例に関するものである。
【0035】
図5に本発明の第2の実施形態におけるクリアランス測定装置1を示す。図5に示すクリアランス測定装置1は、本発明の第1の実施形態のクリアランス測定装置1の図1に示した構成に、薄膜寸法決定部22と、薄膜設置部23と、薄膜除染部24とを含んで構成される。
【0036】
薄膜寸法決定部22は、解体物11を覆う薄膜状シート21の寸法を、形状測定部7による解体物11の測定結果に基づいて決定する。薄膜設置部23は、放射線検出器2を解体物11に押し付ける前に、この解体物11の表面を薄膜状シート21で覆う。この解体物11を搬送部8によりクリアランス測定装置1に搬送した後、薄膜状シート21の上から、押し付け機構5により放射線検出器2を解体物11に押し付ける。薄膜状シート21の上から、押し付け機構5により放射線検出器2を解体物11に押し付ける様子の一例を図6に示す。
【0037】
図6に示す押し付け機構5は、図1の押し付け機構5を具体的に図示したものである。クリアランス測定装置1は、放射線検出器2を薄膜状シート21の上から解体物11に対して押し付ける際、予め算出した押し付け方向に従う。クリアランス測定装置1は、レーザースキャンによる距離計や赤外線による深度方向距離測定器、ステレオカメラ等を用いた形状測定部7により測定した、座標情報を有する点群データ等から、解体物11の表面における法線方向を算出し、その法線方向に放射線検出器2を押し付けていく。なお、押し付け機構5の押し付け方向は、解体物11の表面における法線方向から、例えば±30度ずれていてもよく、限定されない。
【0038】
解体物11の表面に放射性物質が付着していることが考えられる場合、本発明の第1の実施形態に示した方法では、付着物である放射性物質が放射線検出器2に付着して汚染する可能性がある。いったん放射性物質が放射線検出器2を汚染してしまうと、放射線検出器2の測定値は、付着した放射性物質からの放射線による測定値を常時測定してしまうことになり、解体物11からの放射線を正確に測定することが困難になる。そのため、あらかじめ放射線検出器2が放射性物質により汚染しないようにするか、または、放射性物質により汚染した場合には除染するといった対策を講じる必要がある。本発明の第2の実施形態にある薄膜状シート21は、放射線検出器2の汚染をあらかじめ防ぐことを目的としたものである。
【0039】
薄膜状シート21は、押し付け機構5による放射線検出器2の押し付け、および、放射線検出器2による測定時に、解体物11に対してずれることがないようにする必要がある。図5中の解体物11の表面に示した実線の矢印の方向への測定である。
【0040】
これは、解体物11を薄膜状シート21で覆うことにより、解体物11に放射性物質が付着する可能性があるためである。放射性物質が付着した状態で、薄膜状シート21がずれてしまうと、放射性物質の位置が移動し、同じ付着物を違う場所で少なくとも2回以上測定することになり、正確な測定ができなくなるおそれがある。
【0041】
薄膜状シート21としては、解体物11の側に粘着性のあるラップフィルムの使用が効果的である。粘着性があることにより、上記のような放射線検出器2の押し付けや測定時において、ズレが発生する可能性が低減できる。また、ズレを抑制する別の方法としては、図示しないが、薄膜状シート21の端部に錘を設置する、あるいは同端部をアンカーするなどのような固定する治具を用いる方法もある。
薄膜除染部24は、放射線検出器2による放射線測定の前または後に、この薄膜状シート21を除染する機能部である。これにより、薄膜状シート21を再利用することが可能である。
【0042】
以上のクリアランス測定装置1による測定処理のフローチャートを図7に示す。本測定処理は、測定前準備処理であるステップS20~S24とクリアランス測定装置1による測定処理であるステップS25~S30と、薄膜除染処理であるステップS31を含んで構成される。
【0043】
測定前準備処理では、まず初めに形状測定部7が、解体物11の形状を測定する(ステップS20)。クリアランス測定装置1は、この形状測定の結果に基づき、放射線検出器2による解体物11の測定位置や、放射線検出器2の解体物11に対する走査手順等の計画データを算出し(ステップS21)、薄膜状シート21のサイズを算出する(ステップS22)。解体物11の形状測定結果、例えば点群データの座標値(X,Y,Z)のX,Y,Z軸それぞれにおける最大値と最小値に基づき、薄膜状シート21の必要サイズを算出している。
【0044】
そして薄膜設置部23は、薄膜状シート21を解体物11に敷設する(ステップS23)。クリアランス測定装置1は、この形状測定の結果から、放射線検出器2を解体物11に対して押し付ける方向を算出する(ステップS24)。
【0045】
クリアランス測定装置1による測定処理にて、搬送部8は、クリアランス測定装置1内に解体物11を搬入する(ステップS25)。そして、ステップS11にて算出した放射線検出器2による解体物11の測定位置や、放射線検出器2の解体物11に対する走査手順等の計画データに従い、駆動部6は、放射線検出器2を初期測定位置に移動させる(ステップS26)。
【0046】
次に、クリアランス測定装置1は、図6に示した押し付け機構5により、放射線検出器2を解体物11に押し付ける(ステップS27)。ステップS27にて、押し付け機構5は、図5の放射線検出器2に沿った点線の矢印に示した方向に、放射線検出器2を解体物11に順次押し付けていく。放射線検出器2は、解体物11の形状に合わせて自身の形状を変えることで、プラスチックシンチレーションファイバ101の長さ方向にわたって測定感度を維持した状態での解体物11の放射線測定を行う。次に放射線検出器2は、測定を実施する(ステップS28)。その位置で測定が終了したら、この位置がステップS21にて算出した測定位置の最終位置か否かを判定する(ステップS29)。
【0047】
ステップS29にて、放射線検出器2の位置が最終位置でなければ(No)、クリアランス測定装置1は、解体物11の内面に沿って示した図5の実線の矢印に示す方向に放射線検出器2を移動させ(ステップS30)、ステップS27に戻る。これを、放射線検出器2が最終位置に達するまで繰り返し実施する。
ステップS29にて、放射線検出器2の位置が最終位置ならば(Yes)、クリアランス測定装置1は、シートの除染処理を行い(ステップS31)、ステップS20に戻る。
【0048】
図7の測定処理では、本発明の第1の実施形態において示した図3の測定処理に対して、ステップS22にてシートサイズを算出し、ステップS23にて薄膜状シート21を敷設している。
【0049】
また、本測定処理では、ある一つ、あるいは一式の解体物11の測定を終了した後、別の解体物11を測定する際に、薄膜状シート21を除染している(ステップS31)これにより、薄膜状シート21を再利用することができる。
【0050】
薄膜状シート21が解体物11に接触することで放射性物質により汚染する懸念があり、薄膜状シート21が新たな汚染廃棄物となる可能性がある。第2の実施形態では、汚染廃棄物の増加を抑制するために、薄膜状シート21を除染している。この際、薄膜状シート21を少なくとも2枚以上用意しておき、一方の薄膜状シート21の除染と、クリアランス測定装置1による解体物11の測定とを並行して実施するとよい。これにより、シート除染処理のステップS31がボトルネックとなることを回避できる。
【0051】
以上に記載した本発明の第2の実施形態により、放射線検出器2が放射性物質で汚染されることを回避しつつ、大型の解体物を高感度かつ高精度に評価できる。更にはクリアランス物の処理処分全体を効率的に実施できる。
【0052】
《第3の実施形態》
本発明の第3の実施形態について、図8を用いて説明する。本発明の第3の実施形態は、第2の実施形態において説明した、放射線検出器2の放射性物質による汚染の対策の一つとして、放射線検出器2を除染するシステムの一例である。図8に示すクリアランス測定装置1は、本発明の第1の実施形態のクリアランス測定装置1の図1に示した構成に、放射線検出器除染部25を追加して構成される。
放射線検出器除染部25は、放射線検出器2を除染する。
【0053】
図9に本発明の第3の実施形態における測定処理のフローチャートを示す。図9の測定処理は、測定前準備処理であるステップS40~S42とクリアランス測定装置1による測定処理であるステップS43~S50を含んで構成される。
【0054】
測定前準備処理では、まず初めに形状測定部7が、解体物11の形状を測定する(ステップS40)。クリアランス測定装置1は、この形状測定の結果に基づき、放射線検出器2による解体物11の測定位置や、放射線検出器2の解体物11に対する走査手順等の計画データを算出する(ステップS41)。クリアランス測定装置1は、この形状測定の結果から、放射線検出器2を解体物11に対して押し付ける方向を算出する(ステップS42)。
【0055】
クリアランス測定装置1による測定処理にて、搬送部8は、クリアランス測定装置1内に解体物11を搬入する(ステップS43)。そして、ステップS42にて算出した放射線検出器2による解体物11の測定位置や、放射線検出器2の解体物11に対する走査手順等の計画データに従い、駆動部6は、放射線検出器2を初期測定位置に移動させる(ステップS44)。
【0056】
次に、図4に示した押し付け機構5は、放射線検出器2を解体物11に押し付ける(ステップS45)。ステップS45にて、押し付け機構5は、図1の放射線検出器2に沿った点線の矢印に示した方向に、放射線検出器2を解体物11に順次押し付けていく。この放射線検出器2は、解体物11の形状に合わせて自身の形状を変えることで、プラスチックシンチレーションファイバ101の長さ方向にわたって測定感度を維持した状態での解体物11の放射線測定を行う。次に放射線検出器2は、測定を実施する(ステップS46)。その位置で測定が終了したら、この位置がステップS41にて算出した測定位置の最終位置か否かを判定する(ステップS47)。その位置が最終位置であれば(Yes)、図9の処理を終了する。
【0057】
ステップS47にて、放射線検出器2の位置が最終位置でなければ、クリアランス測定装置1は、放射線検出器2を除染し(ステップS48)、放射線検出器2の除染後に確認測定を実施する(ステップS49)。クリアランス測定装置1は、解体物11の内面に沿って示した図1の実線の矢印に示す方向に放射線検出器2を移動させ(ステップS50)、ステップS45に戻る。これを、放射線検出器2が最終位置に達するまで繰り返し実施する。
【0058】
ステップS48にて、放射線検出器2をいったん解体物11の表面近くから、放射線検出器2の除染装置へと移動させ、その除染装置により除染する。ステップS49にて、放射線検出器2の除染作業実施後、除染が確実に実施されたかを、放射性物質の影響を受けない環境において放射線検出器2の測定を実施し、測定開始前と同様の測定値が得られることを確認する。そして、次の測定位置に移動して放射線測定を実施する。
【0059】
以上記載した本発明の第3の実施形態により、放射線検出器2の放射性物質による汚染を取り除きつつ、大型の解体物を高感度かつ高精度に評価でき、更にはクリアランス物の処理処分全体を効率的に実施できる効果がある。
【0060】
《変形例》
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0061】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0062】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のクリアランス測定装置および方法を用いることで、解体物の放射能を高感度かつ高精度に測定および評価を可能とし、クリアランス物の処理処分全体を効率的に実施することが可能となる。また、本発明はクリアランス物だけでなく、低レベル放射性廃棄物の放射能を評価する装置としても使用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 クリアランス測定装置
2 放射線検出器
3 放射線測定値収録部
4 放射線検出器保持部
5 押し付け機構
6 駆動部
7 形状測定部
8 搬送部
9 放射能評価部
11 解体物
21 薄膜状シート
22 薄膜寸法決定部
23 薄膜設置部
24 薄膜除染部
31 ガントリ
101 プラスチックシンチレーションファイバ
102 ウレタン
103 インターロックチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9