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特開2024-60526冷却システム、磁場発生装置、及び、運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060526
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】冷却システム、磁場発生装置、及び、運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20240424BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20240424BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H01F6/04
H01F6/06 110
H01F6/06 140
F25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167959
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133939
【氏名又は名称】テラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】河島 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊東 徹也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極低温冷凍機の駆動エネルギーを低減できる、冷却システム、磁場発生装置及び運転方法を提供する。
【解決手段】冷却システムは、真空断熱容器4と、真空断熱容器内に配置された冷却対象物である超電導コイル3と、寒冷を発生させる寒冷ステージ部CRSを有する極低温冷凍機CRと、寒冷ステージ部と冷却対象物とを熱伝導可能に接続する熱伝導接続部TCと、温度センサTSと、真空断熱容器内に配置された電流リードD1、D2と、を有する冷却ユニットRU及び制御部を備える。温度センサは、冷却対象物、寒冷ステージ部、熱伝導接続部及び電流リードのうち、いずれか1つの温度を検知する。制御部は、極低温冷凍機の運転中において、温度センサによって検知される温度によって、極低温冷凍機の運転を停止する運転停止処理と、極低温冷凍機の運転を開始する運転開始処理と、を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱容器と、
前記真空断熱容器内に配置された、冷却対象物と、
寒冷が発生するように構成された寒冷ステージ部を有する、極低温冷凍機と、
前記寒冷ステージ部と前記冷却対象物とを熱伝導可能に接続する、熱伝導接続部と、
1つ又は複数の温度センサと、
前記真空断熱容器内に配置された、電流リードと、
制御部と、
を備えた、冷却システムであって、
前記1つ又は複数の温度センサは、それぞれ、前記冷却対象物、前記寒冷ステージ部、前記熱伝導接続部、及び、前記電流リードのうち、いずれか1つの温度を検知するように構成されており、
前記制御部は、
前記極低温冷凍機の運転中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が所定目標冷却温度にまで下がった場合に、前記極低温冷凍機の運転を停止する、運転停止処理と、
前記極低温冷凍機の運転停止中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が、前記所定目標冷却温度よりも高い所定運転開始温度にまで上がった場合に、前記極低温冷凍機の運転を開始する、運転開始処理と、
を行うように構成されている、冷却システム。
【請求項2】
前記所定目標冷却温度は、前記寒冷ステージ部の冷却負荷が5Wとなるときの前記寒冷ステージ部の温度以上である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記冷却対象物は、高温超電導線材を含んで構成されており、
前記所定運転開始温度は、前記高温超電導線材を超電導にすることができる最高温度以下である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記熱伝導接続部は、蓄冷体を有している、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記蓄冷体は、前記冷却対象物よりも、熱容量が大きい、請求項4に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記熱伝導接続部は、1つ又は複数の均熱部材を有しており、
前記1つ又は複数の均熱部材は、前記蓄冷体の外周面に全周にわたって接触している、請求項4に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記熱伝導接続部は、1つ又は複数の冷却導体部材を有しており、
前記1つ又は複数の冷却導体部材は、前記均熱部材及び前記冷却対象物に接触している、請求項6に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記蓄冷体は、鉄心部材であり、
前記冷却対象物は、超電導コイルであり、
前記超電導コイルは、前記鉄心部材に巻かれている、請求項4に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記冷却システムは、磁場発生装置に用いられるように構成されており、
前記磁場発生装置は、
前記冷却システムと、
略C字状又は略U字状のヨークと、
を備え、
前記冷却システムは、1つ又は一対の前記真空断熱容器を備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記冷却対象物である一対の超電導コイルを備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記蓄冷体である一対の分割鉄心部を備えており、
前記一対の分割鉄心部は、前記ヨークとは別体に構成され、前記ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置されており、
各前記分割鉄心部には、各前記超電導コイルが、前記一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、
前記分割鉄心部と前記分割鉄心部に巻かれた前記超電導コイルとを有する分割鉄心コイル組立体は、前記1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、
前記ヨークは、前記1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている、請求項4~8のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項10】
請求項4~8のいずれか一項に記載の冷却システムと、
略C字状又は略U字状のヨークと、
を備えた、磁場発生装置であって、
前記冷却システムは、1つ又は一対の前記真空断熱容器を備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記冷却対象物である一対の超電導コイルを備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記蓄冷体である一対の分割鉄心部を備えており、
前記一対の分割鉄心部は、前記ヨークとは別体に構成され、前記ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置されており、
各前記分割鉄心部には、各前記超電導コイルが、前記一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、
前記分割鉄心部と前記分割鉄心部に巻かれた前記超電導コイルとを有する分割鉄心コイル組立体は、前記1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、
前記ヨークは、前記1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている、磁場発生装置。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却システムのための運転方法であって、
前記極低温冷凍機の運転中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が所定目標冷却温度にまで下がった場合に、前記制御部が、前記極低温冷凍機の運転を停止する、運転停止ステップと、
前記極低温冷凍機の運転停止中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が、前記所定目標冷却温度よりも高い所定運転開始温度にまで上がった場合に、前記制御部が、前記極低温冷凍機の運転を開始する、運転開始ステップと、
を含む、運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却システム、磁場発生装置、及び、運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷却対象物を冷却するために用いられる極低温冷凍機がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-312425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の極低温冷凍機においては、常に略一定の出力にて運転されるため、冷却対象物の温度が十分に下がった後でも同等の出力にて冷却対象物を冷却し続けることから、駆動エネルギーの無駄が生じるおそれがあった。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためのものであり、極低温冷凍機の駆動エネルギーを低減できる、冷却システム、磁場発生装置、及び、運転方法を、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕真空断熱容器と、
前記真空断熱容器内に配置された、冷却対象物と、
寒冷が発生するように構成された寒冷ステージ部を有する、極低温冷凍機と、
前記寒冷ステージ部と前記冷却対象物とを熱伝導可能に接続する、熱伝導接続部と、
1つ又は複数の温度センサと、
前記真空断熱容器内に配置された、電流リードと、
制御部と、
を備えた、冷却システムであって、
前記1つ又は複数の温度センサは、それぞれ、前記冷却対象物、前記寒冷ステージ部、前記熱伝導接続部、及び、前記電流リードのうち、いずれか1つの温度を検知するように構成されており、
前記制御部は、
前記極低温冷凍機の運転中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が所定目標冷却温度にまで下がった場合に、前記極低温冷凍機の運転を停止する、運転停止処理と、
前記極低温冷凍機の運転停止中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が、前記所定目標冷却温度よりも高い所定運転開始温度にまで上がった場合に、前記極低温冷凍機の運転を開始する、運転開始処理と、
を行うように構成されている、冷却システム。
【0007】
〔2〕前記所定目標冷却温度は、前記寒冷ステージ部の冷却負荷が5Wとなるときの前記寒冷ステージ部の温度以上である、〔1〕に記載の冷却システム。
【0008】
〔3〕前記冷却対象物は、高温超電導線材を含んで構成されており、
前記所定運転開始温度は、前記高温超電導線材を超電導にすることができる最高温度以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の冷却システム。
【0009】
〔4〕前記熱伝導接続部は、蓄冷体を有している、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の冷却システム。
【0010】
〔5〕前記蓄冷体は、前記冷却対象物よりも、熱容量が大きい、〔4〕に記載の冷却システム。
【0011】
〔6〕前記熱伝導接続部は、1つ又は複数の均熱部材を有しており、
前記1つ又は複数の均熱部材は、前記蓄冷体の外周面に全周にわたって接触している、〔4〕又は〔5〕に記載の冷却システム。
【0012】
〔7〕前記熱伝導接続部は、1つ又は複数の冷却導体部材を有しており、
前記1つ又は複数の冷却導体部材は、前記均熱部材及び前記冷却対象物に接触している、〔6〕に記載の冷却システム。
【0013】
〔8〕前記蓄冷体は、鉄心部材であり、
前記冷却対象物は、超電導コイルであり、
前記超電導コイルは、前記鉄心部材に巻かれている、〔4〕~〔7〕のいずれか1つに記載の冷却システム。
【0014】
〔9〕前記冷却システムは、磁場発生装置に用いられるように構成されており、
前記磁場発生装置は、
前記冷却システムと、
略C字状又は略U字状のヨークと、
を備え、
前記冷却システムは、1つ又は一対の前記真空断熱容器を備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記冷却対象物である一対の超電導コイルを備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記蓄冷体である一対の分割鉄心部を備えており、
前記一対の分割鉄心部は、前記ヨークとは別体に構成され、前記ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置されており、
各前記分割鉄心部には、各前記超電導コイルが、前記一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、
前記分割鉄心部と前記分割鉄心部に巻かれた前記超電導コイルとを有する分割鉄心コイル組立体は、前記1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、
前記ヨークは、前記1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている、〔4〕~〔8〕のいずれか1つに記載の冷却システム。
【0015】
〔10〕〔4〕~〔8〕のいずれか1つに記載の冷却システムと、
略C字状又は略U字状のヨークと、
を備えた、磁場発生装置であって、
前記冷却システムは、1つ又は一対の前記真空断熱容器を備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記冷却対象物である一対の超電導コイルを備えており、
前記冷却システムは、それぞれ前記蓄冷体である一対の分割鉄心部を備えており、
前記一対の分割鉄心部は、前記ヨークとは別体に構成され、前記ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置されており、
各前記分割鉄心部には、各前記超電導コイルが、前記一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、
前記分割鉄心部と前記分割鉄心部に巻かれた前記超電導コイルとを有する分割鉄心コイル組立体は、前記1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、
前記ヨークは、前記1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている、磁場発生装置。
【0016】
〔11〕〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の冷却システムのための運転方法であって、
前記極低温冷凍機の運転中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が所定目標冷却温度にまで下がった場合に、前記制御部が、前記極低温冷凍機の運転を停止する、運転停止ステップと、
前記極低温冷凍機の運転停止中において、いずれか1つの前記温度センサによって検知される温度が、前記所定目標冷却温度よりも高い所定運転開始温度にまで上がった場合に、前記制御部が、前記極低温冷凍機の運転を開始する、運転開始ステップと、
を含む、運転方法。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、極低温冷凍機の駆動エネルギーを低減できる、冷却システム、磁場発生装置、及び、運転方法を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る冷却システムを備えた、本発明の一実施形態に係る磁場発生装置を、概略的に示す、断面図である。
図2図1の冷却ユニットを拡大して示す、断面図である。
図3図2の冷却ユニットを概略的に示す、斜視図である。
図4図3の冷却ユニットのうち真空断熱容器及び輻射シールドを除いた部分を概略的に示す、斜視図である。
図5図3の分割鉄心コイル組立体を分解した状態で示す、分解斜視図である。
図6図1の磁場発生装置の一部を拡大して示す、断面図である。
図7】2段式極低温冷凍機の能力曲線の一例を示す図である。
図8】高温超電導線材の一種であるREBCO線材の臨界電流特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る冷却システム、及び、本発明に係る運転方法は、任意の冷却対象物を冷却するために利用できるものであり、例えば、超電導コイルを冷却するために好適に利用できるものである。また、本発明に係る冷却システム、及び、本発明に係る運転方法は、任意の装置に用いられることができ、例えば、磁場発生装置に用いられることができる。
本発明に係る磁場発生装置は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る冷却システム、磁場発生装置、及び、運転方法の実施形態を例示説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却システムRSを備えた、本発明の一実施形態に係る磁場発生装置1を示している。本実施形態の冷却システムRSは、磁場発生装置1に用いられるように構成されている。
図1に示すように、本実施形態の磁場発生装置1は、本発明の一実施形態に係る冷却システムRSと、ヨーク21と、を備えている。本実施形態の冷却システムRSは、一対の冷却ユニットRUと、制御部PSと、を備えている。各冷却ユニットRUは、それぞれ、真空断熱容器4と、冷却対象物3と、極低温冷凍機CRと、熱伝導接続部TCと、温度センサTSと、輻射シールドSHと、を備えている。本実施形態の冷却システムRS(ひいては磁場発生装置1)は、真空断熱容器4と、冷却対象物3と、極低温冷凍機CRと、熱伝導接続部TCと、温度センサTSと、輻射シールドSHとを、それぞれ一対ずつ、備えている。本実施形態において、熱伝導接続部TCは、1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の伝熱導体部材TPと、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKと、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMと、蓄冷体22と、を有している。本実施形態の冷却システムRS(ひいては磁場発生装置1)は、蓄冷体22を、一対、備えている。
各冷却ユニットRUは、それぞれの冷却対象物3を冷却するように構成されている。
なお、本実施形態において、各冷却ユニットRUどうしの構成は、互いに同様であるので、以下において冷却ユニットRU又はその構成要素について説明する際には、特に断りが無い限り、各冷却ユニットRUのそれぞれについて説明しているものとする。
【0021】
本実施形態において、冷却対象物3は、超電導コイル3である。以下では、冷却対象物3を、「超電導コイル3」と称する場合がある。
また、本実施形態において、蓄冷体22は、鉄心部材22であり、分割鉄心部22である。以下では、蓄冷体22を、「鉄心部材22」又は「分割鉄心部22」と称する場合がある。
【0022】
真空断熱容器4は、内部が真空に維持されるように構成されている。それにより、真空断熱容器4は、極低温冷凍機CRによって冷却された真空断熱容器4内部の構成要素の温度を保冷するように構成されている。
【0023】
真空断熱容器4内には、冷却対象物3と、極低温冷凍機CRの一部と、熱伝導接続部TCと、温度センサTSと、輻射シールドSHとが、配置されている。
【0024】
ヨーク21と、一対の分割鉄心部22(すなわち、蓄冷体22又は鉄心部材22)とから、鉄心2が構成されている。
【0025】
ヨーク21は、鉄を含んで構成されており、磁束を通すように構成されている。ヨーク21は、略C字状又は略U字状(図1の例では、略C字状)をなしている。ヨーク21は、一対の端部21aを有している。図1の例において、ヨーク21は、一対の端部21aが作業空間6側を向くように指向されている。ただし、ヨーク21は、分割鉄心部22の軸線方向外側ADOの面と狭い隙間で対向する面が設けられていれば、ヨーク21の端部21aは任意の向きに指向されてよい。
ヨーク21は、一対の真空断熱容器4の外に配置されている。
【0026】
一対の分割鉄心部22は、鉄を含んで構成されており、磁束を通すように構成されている。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21とは別体に構成されている。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21の内側に位置しており、互いに作業空間6を介して対向配置されている。作業空間6は、エアギャップである。
このようにして、鉄心2は、略C字状をなしている。
【0027】
本明細書では、一対の分割鉄心部22を通るとともに一対の分割鉄心部22どうしが対向する方向に延在する軸線Oに平行な方向を、「軸線方向AD」という。また、軸線方向ADにおいて作業空間6に近い側を「軸線方向内側ADI」といい、軸線方向ADにおいて作業空間6から遠い側を「軸線方向外側ADO」という。また、軸線方向ADに対し垂直な方向を「軸直方向OD」という。軸直方向ODにおいて軸線Oに近い側を「軸直方向内側」といい、軸直方向ODにおいて軸線Oから遠い側を「軸直方向外側」という。また、本明細書では、軸線Oを中心とする周方向を、単に「周方向」ということがある。また、「外周側」、「内周側」とは、特に断りがない限り、軸線Oを中心としたときの外周側、内周側をそれぞれ指す。
また、本明細書では、軸線方向ADに垂直な一方向を「縦方向VD」といい、軸線方向AD及び縦方向VDのそれぞれに垂直な方向を「奥行方向DD」という。また、縦方向VDにおける一方側を「縦方向第1側VD1」といい、縦方向VDにおける他方側を「縦方向第2側VD2」という。
本実施形態においては、縦方向VDが鉛直方向に指向され、縦方向第1側VD1が上側に指向されているが、縦方向VDは、任意の方向に指向されてよい。
【0028】
一対の分割鉄心部22とヨーク21の一対の端部21aとは、軸線方向ADに対向している。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21の一対の端部21aに対し軸線方向内側ADIに位置している。一対の分割鉄心部22の軸線方向外側ADOの面は、一対のヨーク21の軸線方向内側ADIの面に対して狭い隙間で対向している。
【0029】
図1図6に示すように、分割鉄心部22には、超電導コイル3が巻かれている。より具体的に、分割鉄心部22には、超電導コイル3が、軸線Oを中心とする周方向に沿って(言い換えれば、軸線Oの周りを周回するように)、それぞれ巻かれている。超電導コイル3は、分割鉄心部22の外周面221(具体的に、外周面221のうち、後述の段差部2211の軸線方向面2211b、図5図6)の外周側に位置して、外周面221(具体的には、軸線方向面2211b)と径方向に離間対向している。ただし、超電導コイル3は、分割鉄心部22の外周面221(例えば、軸線方向面2211b)と接触していてもよい。
超電導コイル3は、超電導体を含んで構成されており、言い換えれば、超電導体を含むコイル本体(超電導線材)を含んで構成されている。超電導コイル3のコイル本体(超電導線材)は、高温超電導線材であると、好適である。超電導コイル3のコイル本体は、例えば帯状に構成される。超電導コイル3は、コイル本体に加え、コイル本体を内部に収容するコイルケースをさらに含んでもよい。コイルケースは、例えば樹脂等から構成される。
図5に示すように、本例において、超電導コイル3は、軸直方向ODの断面において、軸線Oの周りを周回する略四角環形状をなしているが、超電導コイル3は、軸直方向ODの断面において、軸線Oの周りを周回する環形状である限り、例えば略円環形状、略楕円環形状等、任意の環形状をなしていてよい。
図示は省略するが、磁場発生装置1は、超電導コイル3に電流(例えば直流電流)を流すための電流供給部を備えている。
超電導コイル3は、極低温冷凍機CRによって、超電導コイル3を構成する超電導線材ひいては超電導体が超電導となるまで(ひいては、電気抵抗が実質的にゼロになるまで)、冷却される。
【0030】
図1図2に示すように、分割鉄心部22と、当該分割鉄心部22に巻かれた超電導コイル3とは、分割鉄心コイル組立体5を構成している。すなわち、分割鉄心コイル組立体5は、分割鉄心部22と、当該分割鉄心部22に巻かれた超電導コイル3と、を有している。本実施形態において、冷却システムRS(ひいては磁場発生装置1)は、一対の分割鉄心コイル組立体5を有している。
本実施形態において、分割鉄心コイル組立体5は、分割鉄心部22及び超電導コイル3に加えて、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKと、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMと、を有している。
【0031】
各分割鉄心コイル組立体5は、各真空断熱容器4にそれぞれ収容されている。ヨーク21は、一対の真空断熱容器4の外に配置されている。一対の真空断熱容器4どうしは、作業空間6を介して互いに軸線方向ADに対向している。
図6に示すように、真空断熱容器4における軸線方向内側ADIの壁42は、分割鉄心コイル組立体5と作業空間6との間に位置している。また、真空断熱容器4における軸線方向外側ADOの壁43は、分割鉄心コイル組立体5とヨーク21の端部21aとの間に位置している。
【0032】
このように構成された磁場発生装置1においては、図示しない電流供給部によって超電導コイル3に電流が流されると、鉄心2(ヨーク21及び一対の分割鉄心部22)に磁束が通り、作業空間6に強磁場が発生する。
作業空間6に発生する強磁場は、任意の用途に用いられてよい。
【0033】
例えば、磁場発生装置1は、アルミビレットの加熱装置に用いられてもよい。この場合、当該加熱装置は、磁場発生装置1に加えて、アルミビレットを回転させるモータを備える。超電導コイル3には、直流電流が流され、ひいては、作業空間6には直流強磁場が発生するようにされる。アルミビレットは、アルミビレットの中心軸線が奥行方向DDに延在するように、作業空間6に配置され、モータによって、アルミビレットの中心軸線の周りに回転される。そうすると、アルミビレットには交流磁場が印加されたことと等価となり、アルミビレット内に誘導電流が流れ、アルミビレットが加熱される。
【0034】
極低温冷凍機CRは、任意の従来公知の構成を有してよい。極低温冷凍機CRは、蓄冷式極低温冷凍機であると好適であり、より具体的に、例えば、ギフォード・マクマホン(GM)冷凍機であると好適である。
図2に示すように、極低温冷凍機CRは、寒冷が発生するように構成された寒冷ステージ部CRSを、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)、有している。
より具体的に、本実施形態において、極低温冷凍機CRは、2段式のGM冷凍機として構成されている。図2に示すように、本実施形態において、極低温冷凍機CRは、コールドヘッドCRHと、モータCRMと、を有している。本実施形態において、コールドヘッドCRHは、それぞれ寒冷を発生させるように構成された2つの寒冷ユニットCRU(第1段寒冷ユニットCRU1及び第2段寒冷ユニットCRU2)を有している。各寒冷ユニットCRUは、シリンダーCRCと、シリンダーCRCの内部でシリンダーCRCの延在方向に沿って往復移動可能に構成されたディスプレーサCRDと、ディスプレーサCRDの内部に配置された蓄冷材CRLと、シリンダーCRCとディスプレーサCRDとの間に設けられた封止部材CRFと、スリーブCRVと、を備えている。ここで、「シリンダーCRCの延在方向」とは、シリンダーCRCの中心軸線に平行な方向を指す。シリンダーCRCとディスプレーサCRDの先端面との間には、膨張室CRRが区画されている。スリーブCRVは、金属からなり、シリンダーCRCのうち膨張室CRRを区画する部分を外側から覆っている。ただし、スリーブCRVは、設けられなくてもよい。寒冷ユニットCRUは、膨張室CRRの近傍において、寒冷ステージ部CRSを有している。寒冷ステージ部CRSは、寒冷が発生するように構成されており、より具体的には、膨張室CRRで発生する寒冷の温度と同等の温度となるように構成されている。寒冷ステージ部CRSは、例えば、シリンダーCRCのうち膨張室CRRを区画する部分と、スリーブCRVと、から構成される。2つの寒冷ユニットCRUは、直列に連結されており、具体的には、各寒冷ユニットCRUのシリンダーCRCどうし、及び、各寒冷ユニットCRUのディスプレーサCRDどうしが、直列に連結されている。第2段寒冷ユニットCRU2は、第1段寒冷ユニットCRU1に対して、コールドヘッドCRHの先端側に位置している。
モータCRMは、例えば、コールドヘッドCRH内に収容されたディスプレーサCRDを駆動する(往復移動させる)ように構成されている。
極低温冷凍機CRには、コンプレッサ(図示せず)が接続されている。コンプレッサは、コールドヘッドCRHに接続され、冷媒ガスを圧縮するように構成される。冷媒ガスとしては、例えば、ヘリウムガスが挙げられる。
極低温冷凍機CRには、インバータ(図示せず)が接続されていてもよい。この場合、インバータは、例えば、極低温冷凍機CRの電源とコンプレッサとの間に接続され、極低温冷凍機CRの電源周波数を所定電源周波数にするように構成される。
【0035】
上記のように構成された極低温冷凍機CRの運転中においては、コンプレッサ(図示せず)によって圧縮された高圧の冷媒ガスが、各寒冷ユニットCRUにおいて、蓄冷材CRLを通って蓄冷材CRLに蓄冷された寒冷よって冷却された後に、膨張室CRRに導かれて断熱膨張されることでさらに冷却され、その後、この冷却された冷媒ガスが、蓄冷材CRLを通って戻され、その際に、冷媒ガスの寒冷を蓄冷材CRLに残していく、という動作が繰り返されることにより、膨張室CRRひいては寒冷ステージ部CRSの温度が徐々に下がっていく。この間、より後段(先端側)の寒冷ユニットCRUほど、寒冷ステージ部CRSで発生する寒冷の温度が低くなるようにされている。すなわち、本実施形態においては、第2段寒冷ユニットCRU2の寒冷ステージ部CRS(以下、「第2段寒冷ステージ部CRS2」ともいう。)で発生する寒冷の温度は、第1段寒冷ユニットCRU1の寒冷ステージ部CRS(以下、「第1段寒冷ステージ部CRS1」ともいう。)で発生する寒冷の温度よりも、低くなるようにされている。
なお、極低温冷凍機CRは、寒冷ユニットCRUを1つのみ有する単段式極低温冷凍機として構成されてもよいし、あるいは、寒冷ステージ部CRSを任意の複数有する多段式極低温冷凍機として構成されてもよい。
【0036】
本実施形態において、極低温冷凍機CRのコールドヘッドCRHは、真空断熱容器4内に配置されており、極低温冷凍機CRのうちコールドヘッドCRH以外の部分(モータCRM、電源等)や、コンプレッサ(図示せず)、インバータ等は、真空断熱容器4の外部に配置されている。これにより、真空断熱容器4内に、極低温冷凍機CRのうちコールドヘッドCRH以外の部分からの余計な熱が侵入するのを抑制できる。
【0037】
図1図5に示すように、熱伝導接続部TCは、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と冷却対象物3とを熱伝導可能に接続している。これにより、冷却対象物3の熱が、熱伝導接続部TCを介して、極低温冷凍機CRにおける最も後段の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)によって、吸熱(ひいては冷却)される。
熱伝導接続部TCは、それぞれ金属等の熱伝導体からなる任意の1つ又は複数の部材から構成されてよい。
本実施形態において、熱伝導接続部TCは、それぞれ金属等の熱伝導体からなる、1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の伝熱導体部材TPと、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKと、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMと、蓄冷体22(すなわち、分割鉄心部22又は鉄心部材22)と、を有している。
【0038】
図2において破線で示すように、本実施形態において、真空断熱容器4内には、それぞれ電流リードである第1電流リードD1と第2電流リードD2とが配置されている。
第1電流リードD1の一方側の端は、第1ブスバーBB1に接続されている。第1ブスバーBB1は、第1段寒冷ステージ部CRS1に接触している。第1電流リードD1の他方側の端は、ハーメチック貫通端子Eに接続されている。ハーメチック貫通端子Eは、真空断熱容器4の壁に取り付けられている。
第2電流リードD2は、一方側の端が高温端D2aであり、他方側の端が低温端D2bである。第2電流リードD2の高温端D2aは、第1ブスバーBB1に接続されている。第2電流リードD2の低温端D2bは、第2ブスバーBB2に接続されている。第2ブスバーBB2は、超電導コイル3に接続されている。第2電流リードD2の低温端D2bは、第2段寒冷ステージ部CRS2によって冷却される超電導コイル3の端子部によって冷却される。第2電流リードD2の高温端D2aは、第1段寒冷ステージ部CRS1によって冷却される。
【0039】
温度センサTSは、冷却対象物3、極低温冷凍機CRの寒冷ステージ部CRS(好適には、最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2))、熱伝導接続部TC、及び、電流リードD1、D2(好適には、第2電流リードD2)のうち、いずれか1つの温度を検知するように構成されている。なお、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)の温度は、熱伝導接続部TCを介して、素早く冷却対象物3に伝わるため、冷却対象物3、当該寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)、及び、熱伝導接続部TCのそれぞれの温度は、互いにほぼ同等となる傾向がある。温度センサTSは、上記の温度の検知を、定期的(所定時間間隔毎)に、あるいは、連続的に、行う。温度センサTSによる温度の検知結果は、有線通信及び/又は無線通信により、制御部PSに出力される。
温度センサTSは、真空断熱容器4内に配置されると好適であり、温度の検知対象の構成要素(冷却対象物3、寒冷ステージ部CRS、熱伝導接続部TC、又は、電流リードD1、D2)に接触していると、より好適である。
本実施形態においては、図1に示すように、温度センサTSは、熱伝導接続部TC(より具体的には、伝熱導体部材TP)に接触しており、熱伝導接続部TC(より具体的には、伝熱導体部材TP)の温度を検知するように構成されている。
【0040】
制御部PSは、例えばCPU等の処理装置を含んで構成され、記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することにより、後述の運転方法を行うように構成されている。具体的に、制御部PSは、当該プログラムを実行することにより、以下に説明する種々の処理を行い、それにより、温度センサTSによる検知結果に基づいて、極低温冷凍機CRを制御するように、構成されている。制御部PSは、さらに、極低温冷凍機CRに接続されたコンプレッサ及び/又はインバータを制御するように構成されていてもよい。
記憶部(図示せず)は、例えばROM及び/又はRAMから構成され、制御部PSが実行するためのプログラム等、様々な情報を記憶する。記憶部は、制御部PSの外部にあってもよいし、制御部PSの内部にあってもよい。
本実施形態において、制御部PSは、図1に示すように、一対の冷却ユニットRUに対して1つのみ設けられており、すなわち、1つの制御部PSによって、各冷却ユニットRUにおいて、後述の運転方法を行うようにされている。
ただし、制御部PSは、冷却ユニットRU毎に1つずつ設けられてもよく、すなわち、それぞれの制御部PSが、対応する冷却ユニットRUにおいて、後述の運転方法を行うようにされていてもよい。
【0041】
ここで、本発明の一実施形態に係る運転方法について説明する。この運転方法は、冷却システムRSのための運転方法であって、本明細書で説明する任意の実施形態の冷却システムRSに用いることができる。
まず、極低温冷凍機CRの電源がONにされる。温度センサTSは、定期的(所定時間間隔毎)に、あるいは、連続的に、冷却対象物3、極低温冷凍機CRの寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)、熱伝導接続部TC、及び、電流リードD1、D2のうち、いずれか1つの温度を検知し、その検知結果を、制御部PSに出力する。
極低温冷凍機CRの運転中において、温度センサTSによって検知される温度が所定目標冷却温度THLにまで下がった場合、制御部PSは、極低温冷凍機CRの運転を停止する、運転停止処理を行う(運転停止ステップ)。
極低温冷凍機CRの運転停止中において、温度センサTSによって検知される温度が、所定目標冷却温度THLよりも高い所定運転開始温度THHにまで上がった場合、制御部PSは、極低温冷凍機CRの運転を開始する、運転開始処理を行う(運転開始ステップ)。
このように、この運転方法においては、極低温冷凍機CRの電源がONにされた後に、運転停止処理(運転停止ステップ)と運転開始処理(運転開始ステップ)とが、交互に繰り返される。
なお、制御部PSは、例えば、コンプレッサ及び極低温冷凍機CRの電源をOFF/ONにすることによって、極低温冷凍機CRの運転を停止/開始するようにしてもよい。より具体的に、制御部PSは、コンプレッサの電源をOFF/ONし、それに応じて、コンプレッサから極低温冷凍機CRの運転の停止/開始の制御が自動で実施され、それにより、極低温冷凍機CRの運転を停止/開始するようにしてもよい。あるいは、コンプレッサ及び極低温冷凍機CRのそれぞれが信号によって制御されるように構成されている場合、制御部PSは、コンプレッサ及び極低温冷凍機CRに対して運転の停止/開始の制御信号を出力し、それにより、極低温冷凍機CRの運転を停止/開始するようにしてもよい。
極低温冷凍機CRの運転中において、極低温冷凍機CRの駆動能力(電源周波数やコンプレッサへの入力電力等)は、一定に維持される。極低温冷凍機CRの駆動効率向上の観点から、運転中における極低温冷凍機CRの電源周波数は、50Hz又は60Hzにされると好適であり、60Hzにされるとより好適である。一般的に、市販の極低温冷凍機CRにおいては、極低温冷凍機CRに接続されたコンプレッサとモータCRMとが共通の電源周波数50Hまたは60Hzで運転される。一般的に、冷凍効率は、電源周波数を60Hzとした場合のほうが良い。コンプレッサ及びモータCRMへの電源入力をインバータで50Hz又は60Hzにすることも考えられる。
【0042】
なお、真空断熱容器4内の構成要素には、真空断熱容器4の壁面からの輻射、伝熱の他、真空断熱容器4の外部から真空断熱容器4の内部に延在する部材(電流リードD1、D2等)を介して、侵入熱が加わり得る。冷却対象物3は、このような外部からの侵入熱に起因して、極低温冷凍機CRの運転停止中において温度が上昇し得る。
【0043】
本実施形態の運転方法によれば、極低温冷凍機CRを連続的に運転し続けるのではなく、運転中において冷却対象物3の温度が十分に下がった後は、いったん運転を停止し、冷却対象物3の温度が再び高くなると、運転を再開する、というのを繰り返すので、冷却対象物3を必要以上に継続して冷却するのを抑制でき、ひいては、トータルで見たときの極低温冷凍機CRの駆動エネルギーを効果的に低減することができる。
なお、極低温冷凍機CRを一時的に運転停止する代わりに、例えば、インバータの制御によって極低温冷凍機CRの電源周波数(ひいては、コンプレッサの駆動モータ回転数)を一時的に下げたり、コンプレッサへの入力電力を一時的に下げたりすることにより、極低温冷凍機CRの能力を一時的に下げることも考えられる。しかし、一般的に、極低温冷凍機CRは、電源周波数やコンプレッサへの入力電力等が低い(ひいては、極低温冷凍機CRの能力が低い)ほど、駆動効率(冷却効率)が下がる傾向がある。そのため、上記のように極低温冷凍機CRの能力を一時的に下げる手法では、トータルで見たときに、極低温冷凍機CRの駆動エネルギーをさほど低減できない。
一方、本実施形態の運転方法においては、運転中における極低温冷凍機CRの能力ひいては運転効率は下げずに、運転と運転停止とを交互に行うことにより、トータルで見たときに、極低温冷凍機CRの駆動エネルギー(冷却エネルギー)を効果的に低減することができる。
【0044】
なお、冷却システムRSは、常に上述の運転方法によって極低温冷凍機CRの運転の停止/開始を繰り返す場合に限られず、必要に応じて、上述の運転方法によって極低温冷凍機CRの運転の停止/開始を繰り返す場合と、従来のように継続的に極低温冷凍機CRの運転を行う場合とを、切り替えられるようにされていてもよい。
【0045】
所定目標冷却温度THLは、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)の冷却負荷が5Wとなるときの当該寒冷ステージ部CRSの温度(例えば、図7の例では、10K)以上であると好適であり、最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)の冷却負荷が8Wとなるときの当該寒冷ステージ部CRSの温度(例えば、図7の例では、12K)以上であるとより好適である。
図7に例示される極低温冷凍機CRの能力曲線の一例からも分かるように、一般的に、極低温冷凍機CRは、寒冷ステージ部CRSの温度(ひいては冷却温度)が低くなるほど、極低温冷凍機CRの寒冷ステージ部CRSの冷却負荷(W)(ひいては冷却効率)が低くなる傾向がある。寒冷ステージ部CRSの冷却負荷が0Wの場合、それ以上はいかなる条件でも冷えないことを意味している。なお、図7は、電源周波数を50Hzとした場合の2段式極低温冷凍機CRの能力曲線の一例を示しており、横軸は第1段寒冷ステージ部CRS1の温度(K)であり、縦軸は第2段寒冷ステージ部CRS2の温度(K)であり、略縦方向に沿って延在する各曲線は、それぞれ第1段寒冷ステージ部CRS1の冷却負荷(W)を示しており、略横方向に沿って延在する各曲線は、それぞれ第2段寒冷ステージ部CRS2の冷却負荷(W)を示している。
したがって、所定目標冷却温度THLを上述のように設定することにより、運転中における極低温冷凍機CRの駆動効率(冷却効率)を比較的高く維持することができ、トータルで見たときに、極低温冷凍機CRの駆動エネルギー(冷却エネルギー)をさらに効果的に低減することができる。
同様の観点から、所定目標冷却温度THLは、10K以上であると好適であり、12K以上であるとより好適である。
なお、所定目標冷却温度THLは、所定運転開始温度THHよりも低い。所定運転開始温度THHから所定目標冷却温度THLを差し引いた温度(温度差)は、20K以上であると好適であり、25K以上であるとより好適である。
【0046】
本実施形態のように冷却対象物3が超伝導線材を含んで構成されている場合(すなわち、例えば、冷却対象物3が超電導コイル3である場合)、冷却対象物3を構成する超伝導線材を超電導に維持する観点から、所定運転開始温度THHは、冷却対象物3を構成する超伝導線材を超電導にすることができる最高温度以下であると好適であり、当該最高温度未満であるとより好適である。また、所定運転開始温度THHは、冷却対象物3を構成する超電導線材の垂直磁場において通電電流の略2倍の臨界電流となる温度以下であると好適であり、当該温度未満であるとより好適である。
なお、上述のように、冷却対象物3を構成する超伝導線材は、高温超伝導線材であると、好適である。この場合、所定運転開始温度THHは、冷却対象物3を構成する高温超伝導線材を超電導にすることができる最高温度以下であると好適であり、当該最高温度未満であるとより好適である。一般的に、高温超伝導線材を超電導にすることができる最高温度は、高温超伝導線材を構成する材料に依って異なり得るが、例えば、約77Kである。一方、一般的な超電導線材(低温超電導線材)を超電導にすることができる最高温度は、低温超伝導線材を構成する材料に依って異なり得るが、例えば、約4Kである。冷却対象物3を構成する超伝導線材が高温超伝導線材であることにより、仮に冷却対象物3を構成する超伝導線材が低温超伝導線材である場合に比べて、冷却対象物3を構成する超伝導線材を超電導に維持しながらも運転中における極低温冷凍機CRの冷却温度をより高い温度に維持することが可能になり、ひいては、運転中における極低温冷凍機CRの駆動効率(冷却効率)をより高く維持することができ、運転時間の短縮も可能になり、極低温冷凍機CRの駆動エネルギー(冷却エネルギー)をさらに効果的に低減することができる。
【0047】
上述のように、本実施形態において、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と冷却対象物3とを熱伝導可能に接続している熱伝導接続部TCは、蓄冷体22を有している(図2)。すなわち、蓄冷体22は、当該寒冷ステージ部CRSと冷却対象物3とに熱伝導可能に接続されている。
蓄冷体22は、金属等の熱伝導体から構成されており、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)で発生する寒冷(顕熱)の一部を蓄えることができるように構成されている。上述のように、本実施形態において、蓄冷体22は、分割鉄心部22又は鉄心部材22であり、鉄を含んで構成されている。
蓄冷体22があることにより、蓄冷体22は、極低温冷凍機CRの運転中において最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)から発生する寒冷の一部を蓄え、極低温冷凍機CRの運転停止中においては、自身がそれまで蓄えた寒冷を使って冷却対象物3を冷却し続けることができる。これにより、極低温冷凍機CRの運転停止中における冷却対象物3の温度上昇を抑制でき、ひいては、極低温冷凍機CRの運転停止時間を増大でき、極低温冷凍機CRの運転及び運転停止(発停)の回数を低減できる。これにより、極低温冷凍機CRの運転及び運転停止(発停)の繰り返しにより冷却システムRSの電気部品等に掛かり得る負担を抑制でき、冷却システムRSの寿命を向上できる。
ただし、蓄冷体22は、設けられていなくてもよい。
【0048】
蓄冷体22は、冷却対象物3よりも、熱容量(顕熱容量)が大きいと、好適である。一般的に、熱容量が大きいほど、寒冷を蓄える性能(蓄冷性能)が高くなる傾向がある。よって、蓄冷体22が冷却対象物3よりも大きな熱容量(顕熱容量)を有することにより、蓄冷体22の蓄冷性能を向上でき、ひいては、極低温冷凍機CRの運転停止中における冷却対象物3の温度上昇をさらに抑制でき、ひいては、極低温冷凍機CRの運転停止時間を増大でき、極低温冷凍機CRの運転及び運転停止(発停)の回数をさらに低減できる。
同様の観点から、蓄冷体22は、冷却対象物3よりも、体積が大きいと、好適である。
【0049】
上述のように、本実施形態において、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と冷却対象物3とを熱伝導可能に接続している熱伝導接続部TCは、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKを有している(図2図4図5)。すなわち、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKは、当該寒冷ステージ部CRSと冷却対象物3とに熱伝導可能に接続されている。
均熱部材SKは、寒冷を蓄冷体22にすばやく均等に伝える機能を有している。均熱部材SKは、金属等の熱伝導体から構成されており、熱伝導率、入手性、加工性、価格等の観点から、銅(例えば、純銅(無酸素銅))から構成されていると好適である。均熱部材SKは、本実施形態のように、板状に構成されていると、寒冷を均等に伝えやすくなるので、好適である。
図4図5に示すように、本実施形態において、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKは、蓄冷体22を環状に囲っており、具体的には、蓄冷体22の外周面に全周にわたって接触している。
さらに具体的に、本実施形態において、蓄冷体22は、図5に示すように、軸線Oを中心軸線とする略直方体形状をなしており、蓄冷体22の4つの側面224が、軸線Oの外周側に位置している。蓄冷体22の4つの側面224のうちの第1側面224a及び第4側面224dは、軸線方向AD及び奥行方向DDに平行である。第1側面224aは、第4側面224dよりも縦方向第2側VD2に位置している。第1側面224aは縦方向第2側VD2(本実施形態では下側)を向いており、第4側面224dは縦方向第1側VD1(本実施形態では上側)を向いている。蓄冷体22の4つの側面224のうちの第2側面224b及び第3側面224cは、軸線方向AD及び縦方向VDに平行であり、互いから奥行方向DDに離間している。第2側面224b及び第3側面224cは、それぞれ、奥行方向DDにおいて軸線Oとは反対側を向いている。
本実施形態において、4つの均熱部材SKは、それぞれ板状をなしており、それぞれ蓄冷体22の4つの側面224に外周側から接触している。4つの均熱部材SKのうちの第1均熱部材SKa及び第4均熱部材SKdは、それぞれ、蓄冷体22の第1側面224a及び第4側面224dと平行に指向されており、蓄冷体22の第1側面224a及び第4側面224dに接触(面接触)している。4つの均熱部材SKのうちの第2均熱部材SKb及び第3均熱部材SKcは、それぞれ、蓄冷体22の第2側面224b及び第3側面224cと平行に指向されており、蓄冷体22の第2側面224b及び第3側面224cに接触(面接触)している。これら4つの均熱部材SKどうしは、互いにそれぞれの端部どうしで接触しており、それにより、これら4つの均熱部材SKは、環状をなしている。
本実施形態では、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKが、蓄冷体22の外周面に全周にわたって接触しているので、これらの均熱部材SKによって、極低温冷凍機CR側から伝わる寒冷を、蓄冷体22に全周にわたってすばやく均等に伝えることができる(言い換えれば、蓄冷体22の均熱化がしやすくなる)とともに、急激な温度変化を抑制することができ、安定して蓄冷体22による蓄冷をすることができる。これにより、極低温冷凍機CRの運転中において、より効果的かつ安定的に、蓄冷体22による蓄冷を行うことができる。
【0050】
ただし、蓄冷体22及び均熱部材SKは、任意の形状をなしていてよい。
また、1つ又は複数の均熱部材SKは、蓄冷体22の任意の部分に接触していてよい。
【0051】
図1図2に示すように、本実施形態において、極低温冷凍機CRのコールドヘッドCRHは、軸線方向ADに延在している。コールドヘッドCRHの先端は、軸線方向内側ADIを向いている。
ただし、極低温冷凍機CRのコールドヘッドCRHは、任意の向きに指向されてよい。
【0052】
図1図2に示すように、本実施形態において、分割鉄心コイル組立体5は、コールドヘッドCRHよりも、縦方向第1側VD1に位置している。また、本実施形態において、分割鉄心コイル組立体5は、コールドヘッドCRHよりも、軸線方向内側ADIに位置している。
ただし、極低温冷凍機CRのコールドヘッドCRHと分割鉄心コイル組立体5との位置関係は、任意でよい。
【0053】
上述のように、本実施形態において、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と冷却対象物3とを熱伝導可能に接続している熱伝導接続部TCは、1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の伝熱導体部材TPを有している。すなわち、1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の伝熱導体部材TPは、当該寒冷ステージ部CRSと冷却対象物3とに熱伝導可能に接続されている。
伝熱導体部材TPは、金属等の熱伝導体から構成されており、熱伝導率、入手性、加工性、価格等の観点から、銅(例えば、純銅(無酸素銅))から構成されていると好適である。伝熱導体部材TPは、本実施形態のように、板状に構成されていると、寒冷を均等に伝えやすくなるので、好適である。
より具体的に、伝熱導体部材TPは、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKのうちの少なくとも1つ(本実施形態では、第1均熱部材SKa)とに、接触しており(図2)、ひいては、これらを熱伝導可能に接続している。これにより、当該寒冷ステージ部CRSから発生した寒冷は、伝熱導体部材TPを介して、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKのうちの少なくとも1つ(本実施形態では、第1均熱部材SKa)に伝わるようにされている。
本実施形態において、伝熱導体部材TPは、略縦方向VDに沿って延在しており、伝熱導体部材TPの下端部が極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)の先端面に接触(面接触)しており、伝熱導体部材TPの上端部が1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKのうちの少なくとも1つ(本実施形態では、第1均熱部材SKa)に接触(面接触)している(図2)。
ただし、伝熱導体部材TPの形状や延在方向は、任意でよい。
また、伝熱導体部材TPは設けられていなくてもよく、例えば、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKのうちの少なくとも1つとが、直接接触していてもよい。
【0054】
上述のように、本実施形態において、極低温冷凍機CRにおける最も後段(最も先端側)の寒冷ステージ部CRS(本実施形態では、第2段寒冷ステージ部CRS2)と冷却対象物3とを熱伝導可能に接続している熱伝導接続部TCは、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMを有している(図2)。すなわち、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMは、当該寒冷ステージ部CRSと冷却対象物3とに熱伝導可能に接続されている。より具体的に、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMは、それぞれ、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKのうちの少なくとも1つと冷却対象物3とに接触している。
冷却導体部材PMは、金属等の熱伝導体から構成されており、熱伝導率、入手性、加工性、価格等の観点から、銅(例えば、純銅(無酸素銅))から構成されていると好適である。冷却導体部材PMは、本実施形態のように、板状に構成されていると、寒冷を均等に伝えやすくなるので、好適である。
より具体的に、熱伝導接続部TCは、それぞれ冷却導体部材PMとして、第1冷却導体部材PMaと第2冷却導体部材PMbとを有している。
【0055】
第1冷却導体部材PMaは、軸線方向ADにおいて蓄冷体22と冷却対象物3との間に配置されており、蓄冷体22と冷却対象物3とに接触(面接触)している。
より具体的に、本実施形態においては、図1図2図5に示すように、蓄冷体22の外周面221は、環状の段差部2211を有している。段差部2211は、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在している。段差部2211は、軸線方向内側ADIに面している。段差部2211は、軸直方向内側に凹んでいる。具体的に、段差部2211は、軸直方向ODに略平行であるとともに軸線方向内側ADIを向く軸直方向面2211aと、軸直方向面2211aから蓄冷体22の軸線方向内側ADIの端面223まで軸線方向ADに略平行に延在する軸線方向面2211bと、からなる。冷却対象物3は、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在してなる環状に構成されており、段差部2211内に配置されている。具体的に、冷却対象物3は、軸線Oを中心とする周方向に沿って、段差部2211に巻かれている。
一方、第1冷却導体部材PMaは、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在してなる環状に構成されている。第1冷却導体部材PMaの軸線方向外側ADOの面は、蓄冷体22の段差部2211の軸直方向面2211aに接触しており、第1冷却導体部材PMaの軸線方向内側ADIの面は、冷却対象物3の軸線方向外側ADOの面に接触している。段差部2211の軸線方向面2211bは、第1冷却導体部材PMa及び冷却対象物3の内周側に位置している。また、各均熱部材SKのうちの少なくとも1つ(本実施形態では、第2均熱部材SKb、第3均熱部材SKc、第4均熱部材SKd)は、蓄冷体22の段差部2211の軸直方向面2211aを超えて軸線方向内側ADIへ延在している。各均熱部材SKのうちの少なくとも1つ(本実施形態では、第1均熱部材SKa、第2均熱部材SKb、第3均熱部材SKc)は、第1冷却導体部材PMaに接触している。
図6に示すように、第1冷却導体部材PMaと第1冷却導体部材PMaに接触している均熱部材SKのうちの少なくとも1つ(本実施形態では、第1均熱部材SKa)とは、互いにねじ等の固定部材Fによって固定されていてもよい。本実施形態において、第1均熱部材SKaは、その軸線方向内側ADIの端面が、軸線方向ADにおいて、蓄冷体22の段差部2211の軸直方向面2211aと略同じ位置に位置している。第1冷却導体部材PMaは、冷却対象物3よりも縦方向第2側VD2において、第1均熱部材SKaの軸線方向内側ADIの端面に、軸線方向内側ADIから接触しており、そこで、固定部材Fによって第1均熱部材SKaに固定されている。
【0056】
第2冷却導体部材PMbは、冷却対象物3の軸線方向内側ADIに配置されており、冷却対象物3に接触(面接触)している。
より具体的に、本実施形態においては、図1図2図5に示すように、第2冷却導体部材PMbは、軸直方向ODに略平行である軸直方向板状部PMbaと、軸直方向板状部PMbaの縦方向第2側VD2の端部から軸線方向外側ADOへ延在する軸線方向板状部PMbbと、からなる。
冷却対象物3の軸線方向内側ADIの面と蓄冷体22の軸線方向内側ADIの端面223とは、面一である。第2冷却導体部材PMbの軸直方向板状部PMbaの軸線方向外側ADOの面は、冷却対象物3の軸線方向内側ADIの面と蓄冷体22の軸線方向内側ADIの端面223とに接触している。
第2冷却導体部材PMbの軸線方向板状部PMbbは、第1均熱部材SKaの縦方向第2側VD2に位置しており、第2冷却導体部材PMbの軸線方向板状部PMbbの縦方向第1側VD1の面が、第1均熱部材SKaの縦方向第2側VD2の面に接触している。第2冷却導体部材PMbの軸線方向板状部PMbbは、伝熱導体部材TPよりも軸線方向内側ADIに位置している。本実施形態において、第2冷却導体部材PMbの軸線方向板状部PMbbは、伝熱導体部材TPから離間しているが、第2冷却導体部材PMbの軸線方向板状部PMbbは、伝熱導体部材TPと接触していてもよい。
また、第2冷却導体部材PMbは、軸線方向板状部PMbbを有していなくてもよい。
【0057】
このように、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の冷却導体部材PMは、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の均熱部材SKのうちの少なくとも1つと冷却対象物3とに接触しているので、極低温冷凍機CRの運転中においては、極低温冷凍機CR側から均熱部材SKを介して伝わった寒冷が、各冷却導体部材PMを介して冷却対象物3に伝わることができる。これにより、より均等かつ効率的に、冷却対象物3を冷却することができる。
また、極低温冷凍機CRの運転停止中においては、蓄冷体22で蓄えられた寒冷が、第1冷却導体部材PMaを介して冷却対象物3に伝わる。
【0058】
ただし、各冷却導体部材PMは、均熱部材SK及び冷却対象物3に接触している限り、その形状や位置等は任意でよい。
寒冷が均熱部材SKから冷却導体部材PMを介して冷却対象物3に効率的に伝わるようにする観点から、各冷却導体部材PMは、本実施形態のように、少なくとも1つの均熱部材SKに接触しているとともに、冷却対象物3の軸線方向ADのいずれか一方側の端面と接触(面接触)していると、好適である。これにより、冷却導体部材PMと冷却対象物3との接触面積を増やすことができ、ひいては、寒冷が均熱部材SKから冷却導体部材PMを介して冷却対象物3にさらに効率的に伝わるようにすることができる。
【0059】
輻射シールドSHは、内部に輻射シールド空間SHRを区画している。輻射シールド空間SHR内には、冷却対象物3と、極低温冷凍機CRの一部と、熱伝導接続部TCと、温度センサTSとが、配置されている。本実施形態において、輻射シールドSHは、極低温冷凍機CRの第1段寒冷ステージ部CRS1に接続(接触)されており、それにより、第1段寒冷ステージ部CRS1で発生する寒冷が輻射シールドSHに伝わることができるようにされている。輻射シールドSHは、輻射シールドSHの外部からの輻射熱が輻射シールド空間SHR内に侵入するのを抑制するように、構成されている。極低温冷凍機CRのコールドヘッドCRHのうち、第1段寒冷ステージ部CRS1よりも後段側(先端側)の部分(本実施形態では、第2段寒冷ユニットCRU)は、輻射シールド空間SHR内に配置されている。
輻射シールドSHは、その壁(例えば、その外面)の一部又は全部に積層断熱材を有していると、好適である。積層断熱材は、例えば、金属蒸着樹脂フィルムと樹脂網を複数枚積層することにより構成させる。真空断熱容器4の本体を構成する材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、複合材のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等が挙げられる。
ただし、輻射シールドSHは、設けられなくてもよい。
【0060】
本実施形態の冷却システムRS及び磁場発生装置1においては、磁場発生装置1が超電導コイル3を備えているので、仮に磁場発生装置1が超電導コイル3の代わりに通常の銅コイルを備えた場合と比べて、作業空間6において、より強い磁場を発生させることができる。
また、本実施形態の磁場発生装置1によれば、磁場発生装置1が鉄心2を備えているので、仮に磁場発生装置1が鉄心2を備えない場合に比べて、超電導コイル3の製作に使用される超電導体の使用量を低減しつつ、強磁場を発生させることが可能であるため、超電導体を低減でき、ひいては、コストを低減できる。超電導体は、一般的に高価であるため、超電導体低減によるコスト低減の効果は大きいといえる。
また、本実施形態によれば、磁場発生装置1の鉄心2が、ヨーク21を有しているので、仮に鉄心2がヨーク21を有しない場合に比べて、磁気回路抵抗を低減でき、磁束を増加できる。
また、本実施形態によれば、上述のように、鉄心2がヨーク21と一対の分割鉄心部22とに分割され、各分割鉄心コイル組立体5が各真空断熱容器4にそれぞれ収容されており、ヨーク21は、一対の真空断熱容器4の外に配置されている。よって、仮に、分割されていない略C字状の鉄心と当該鉄心の一対の端部に巻かれた一対の超電導コイルとの全体を真空断熱容器に収容するようにした場合に比べて、真空断熱容器4を小型化することができる。それにより、外部からの熱侵入を低減でき、ひいては、省エネが可能となる。
なお、仮に、分割されていない略C字状の鉄心を用いる場合において、真空断熱容器を小型化するためには、真空断熱容器が当該鉄心の一対の端部の周りを周回する一対の超電導コイルのみを収容するように、真空断熱容器をドーナツ式に構成することも考えられる。しかし、その場合は、鉄心と超電導コイルとの間に真空断熱容器の壁が介在することになり、すなわち鉄心と超電導コイルとが離間するため、その分、超電導コイルの周長が長くなるため、超電導コイルの使用量が多くなり、コスト増につながる。また、鉄心と超電導コイルとが離間する分、漏れ磁束が増えるため、必要な超電導体の使用量が多くなり、コスト増につながる。その点、本実施形態によれば、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)に、真空断熱容器の壁を介さずに、直接、超電導コイル3を巻いており、ひいては鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)と超電導コイル3とを接触させて両者間の距離を無くしているので、上述のように真空断熱容器をドーナツ式にした場合に比べて、超電導コイル3の周長を短くすることができ、ひいては、超電導体を低減でき、コストを低減できる。また、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)と超電導コイル3とを接触させて両者間の距離を無くしているので、上述のように真空断熱容器をドーナツ式にした場合に比べて、漏れ磁束を低減でき、ひいては、超電導体を低減でき、コストを低減できる。また、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)と超電導コイル3とを(冷却導体部材PMを介して)接触させているので、上述のように真空断熱容器をドーナツ式にした場合に比べて、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)の蓄冷効果を利用して、超電導コイル3の温度上昇を抑制できるので、極低温冷凍機CRの冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。
また、本実施形態によれば、図6に示すように、各分割鉄心コイル組立体5において、通電時に、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力(図6の黒矢印)と、分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力(図6の白抜き矢印)とが、相殺するため、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力が小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造を簡易化することが可能になる。ひいては、外部から支持構造を介した超電導コイル3への熱侵入を低減することが可能になり、ひいては、極低温冷凍機CRの冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。
【0061】
本実施形態においては、図1図2図6に示すように、冷却システムRS及び磁場発生装置1が、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造として、支持部材7を有している。支持部材7は、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4から吊り下げるように構成されている。より具体的に、本例では、支持部材7は、例えば熱伝導率が小さい棒状に構成され、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4における上側(縦方向第1側VD1)の壁41から断熱を行い吊り下げるように構成されている。このように、支持部材7は、分割鉄心コイル組立体5の自重を支えるように構成されており、分割鉄心コイル組立体5の水平方向の動きを規制するようには構成されていない。このようにして、本実施形態では、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造(支持部材7)が、簡易に構成されている。
なお、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造は、これに限らず、任意でよい。
【0062】
本実施形態においては、図1図2図6に示すように、冷却システムRS及び磁場発生装置1が、分割鉄心コイル組立体5と真空断熱容器4における軸線方向AD両側の壁42、43(図6)との間に、スペーサ部材8を有している。これにより、通電時等に、分割鉄心コイル組立体5が軸線方向AD方向に過度に動くのを、より効果的に抑制できる。また、スペーサ部材8により、非通電時は、分割鉄心コイル組立体5と真空断熱容器4との間の隙間を保つ事により、通電停止時の熱侵入量を低減することが可能となる。
スペーサ部材8は、例えば、分割鉄心コイル組立体5の分割鉄心部22に固定され又は分割鉄心部22と一体に構成され、かつ、真空断熱容器4における軸線方向AD両側の壁42、43とは別体かつ非固定状態にされてもよい。あるいは、スペーサ部材8は、分割鉄心コイル組立体5とは別体かつ非固定状態にされ、かつ、真空断熱容器4における軸線方向AD両側の壁42、43に固定され又は壁42、43と一体に構成されてもよい。
なお、スペーサ部材8は、設けられなくてもよい。
【0063】
上述のように、本実施形態においては、図1図2図5図6に示すように、一対の分割鉄心コイル組立体5のそれぞれにおいて、分割鉄心部22の外周面221は、環状の段差部2211を有している。段差部2211は、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在している。段差部2211は、(真空断熱容器4の壁42を介して)作業空間6に面している。段差部2211は、軸直方向内側に凹んでいる。具体的に、段差部2211は、軸直方向ODに略平行であるとともに軸線方向内側ADIを向く軸直方向面2211aと、軸直方向面2211aから分割鉄心部22の軸線方向内側ADIの端面223まで軸線方向ADに略平行に延在する軸線方向面2211bと、からなる。超電導コイル3は、軸線Oを中心とする周方向に沿って、段差部2211に巻かれている。
これにより、超電導コイル3と分割鉄心部22とが軸線方向ADに向き合うようにされているので、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力(図6の黒矢印)と分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力(図6の白抜き矢印)とが、より効果的に相殺し、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力がより小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造をより簡易化することが可能になる。また、超電導コイル3には、軸線方向外側ADOに向かうローレンツ力(図6の黒矢印)が作用するものの、超電導コイル3は、段差部2211(特に軸直方向面2211a)によって、軸線方向外側ADOへの移動が規制される。すなわち、段差部2211が、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制する機能を有している。そのため、別途、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制するための規制構造を設ける必要がない。ひいては、外部から規制構造を介した超電導コイル3への熱侵入を低減することが可能になり、ひいては、超電導コイル3の温度上昇を抑制できるので、極低温冷凍機CRの冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。また、超電導コイル3は、その軸線方向内側ADIが、分割鉄心部22によって覆われず、(真空断熱容器4の壁42を介して)作業空間6に面しているので、その分、作業空間6に、より強い磁場を発生させることができる。また、超電導コイル3は、段差部2211の軸線方向面2211bだけでなく段差部2211の軸直方向面2211aにも接触しているので、その分、分割鉄心部22との接触面積が増え、ひいては、分割鉄心部22を介した超電導コイル3の冷却効果が向上する。
なお、上述の段差部2211は、一対の分割鉄心コイル組立体5の両方に設けられると好適であるが、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち一方のみにおいて設けられてもよい。
【0064】
本明細書で説明する各例においては、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、超電導コイル3の外周面31は、図6の例のように、分割鉄心部22の外周面221と同じ軸直方向OD位置にあってもよいし、あるいは、図示は省略するが、分割鉄心部22の外周面221よりも内周側にあってもよいし、あるいは、分割鉄心部22の外周面221よりも外周側にあってもよい。
【0065】
本明細書で説明する各例においては、図示は省略するが、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、分割鉄心部22の外周面221は、外周側へ突出した突起部を有し、この突起部に、段差部2211を有していてもよい。この場合、超電導コイル3の外周面31は、突起部の外周面と同じ軸直方向OD位置にあってもよいし、あるいは、突起部の外周よりも内周側にあってもよいし、あるいは、突起部の外周面よりも外周側にあってもよい。
【0066】
図示は省略するが、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、分割鉄心部22の外周面221は、環状の溝を有してもよい。溝は、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在している。溝は、外周側が開放している。溝は、互いに対向するとともにそれぞれ軸直方向ODに略平行な一対の溝壁面と、外周側を向くとともに軸線方向ADに略平行な溝底面と、を有している。この場合、超電導コイル3は、周方向に沿って、溝に巻かれ、ひいては、溝に収容される。
【0067】
ただし、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、超電導コイル3は、分割鉄心部22において段差部2211や溝等の凹凸の無い外周面221に巻かれていてもよい。その場合も、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力と、分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力とが、相殺するため、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力が小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造を簡易化することが可能になる。ただし、上述した各例のように、超電導コイル3が分割鉄心部22の外周面221の段差部2211又は溝に巻かれている場合のほうが、この効果は大きい。なお、超電導コイル3が分割鉄心部22において段差部2211や溝等の凹凸の無い外周面221に巻かれている場合、別途、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制するための規制構造を設けると、好適である。
【0068】
本明細書で説明する各例においては、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、超電導コイル3は、図1図6の例のように、軸線方向ADに沿って1層のみからなる1段構造からなってもよいし、あるいは、図示は省略するが、軸線方向ADに沿って複数層の超電導コイル層が配列された多段構造からなってもよい。
【0069】
本明細書で説明する各例においては、ヨーク21の端部21aと、真空断熱容器4の軸線方向外側ADOの壁43とは、図6に示すように、互いから離間していると好適であるが、互いに接触していてもよい。
【0070】
本明細書で説明する各例においては、真空断熱容器4や分割鉄心コイル組立体5の構成は、冷却システムRSや磁場発生装置1の軸線方向ADの中心に対して対称であると、好適であるが、冷却システムRS及び磁場発生装置1の軸線方向ADの中心に対して非対称であってもよい。
【0071】
本明細書で説明する各例においては、冷却システムRS及び磁場発生装置1は、真空断熱容器4を1つのみ備えてもよい。この場合、一対の分割鉄心コイル組立体5は、当該真空断熱容器4に収容され、また、ヨーク21は、当該真空断熱容器4の外に配置される。この場合も、仮に、分割されていない略C字状の鉄心と当該鉄心の一対の端部に巻かれた一対の超電導コイルとの全体を真空断熱容器に収容するようにした場合に比べて、真空断熱容器4を小型化することができる。
なお、この場合の真空断熱容器4は、例えば、図1の例の一対の真空断熱容器4どうしを連結管等で連結して一体化した構成を有してもよい。
【0072】
上述した実施形態においては、各冷却ユニットRUが、それぞれ、温度センサTSを1つのみ備えていた。ただし、冷却ユニットRUは、温度センサTSを複数備えていてもよい。その場合も、冷却ユニットRUの各温度センサTSは、それぞれ、冷却対象物3、極低温冷凍機CRのいずれか1つの寒冷ステージ部CRS、熱伝導接続部TC、及び、電流リードD1、D2のうち、いずれか1つの温度を検知するように構成される。この場合、各温度センサTSは、互いに異なる部分の温度を検知するように構成されていると、好適である。そして、極低温冷凍機CRの運転中において、いずれか1つの所定の温度センサTSによって検知される温度が所定目標冷却温度THLにまで下がった場合、制御部PSは、極低温冷凍機CRの運転を停止する、運転停止処理を行う(運転停止ステップ)。また、極低温冷凍機CRの運転停止中において、いずれか1つの所定の温度センサTSによって検知される温度が、所定目標冷却温度THLよりも高い所定運転開始温度THHにまで上がった場合、制御部PSは、極低温冷凍機CRの運転を開始する、運転開始処理を行う(運転開始ステップ)。運転停止ステップ及び運転開始ステップにおいてそれぞれ用いられる上記所定温度センサTSは、運転停止ステップと運転開始ステップとで、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
ここで、所定運転開始温度THHについて、補足説明をする。
高温超電導線材は、総称として液体窒素温度レベルで超電導状態が得られるものを示すが、二ホウ化マグネシウム(MgB)の様な液体ヘリウムと液体窒素温度の中間温度レベルで超電導を示す材料も存在し、高温超電導線材の範疇に分類される。
高温超電導線材の最低冷却温度(Tc臨界温度)は、次の条件により変わる。
(1)材料の製法及びそのばらつき
(2)使用環境の磁場強さ
(3)通電電流
一般には、上記の(1)が決まった条件で、互いに連係する(2)、(3)を決め、その3者の結果により必要な冷却温度を決めている。
しかしながら、冷却温度を意図的に決める事は困難であり、従来においては、冷却温度の設定が必要な場合は、設定温度以下に極低温冷凍機CRで冷却の上、コールドヘッドCRHに巻いたヒータに通電し昇温により所定温度を得ている(サーモスタットで制御)場合があった。
所定運転開始温度THHは、上記(1)、(2)、(3)から決まる臨界温度に対し、冷凍機の立上り時間や、温度誤差を考慮した低い温度に設定されるのが好ましい。
図8は、高温超電導線材の一種であるREBCO線材の臨界電流特性の一例を示している。図8の例では、例えば、超電導コイル3の電流300A、臨界温度50Kに対し、所定運転開始温度THHを45K程度に設定するのが好ましい。
この他に、極低温冷凍機CRが図1の実施形態のように2段式である場合は、第1段寒冷ステージ部CRS1で、第2電流リードD2の高温端D2aの冷却を実施しており、第1段寒冷ステージ部CRS1への侵入熱による温度上昇の限界点への到達が、超電導コイル3側の温度上昇による到達よりも遅い事が好ましい。もしそれよりも早い場合は、第1段寒冷ステージ部CRS1の温度条件での極低温冷凍機CRの運転開始をするのが好ましい。したがって、例えば、1つの温度センサTSを、第1段寒冷ステージ部CRS1の温度を検知するように構成し、当該温度センサTSによって検知される温度が所定運転開始温度THHにまで上がった場合に、極低温冷凍機CRの運転を開始するようにしてもよい。
【0074】
つぎに、所定目標冷却温度THLについて、補足説明をする。
極低温冷凍機CRの運転を開始した後の超電導コイル3の温度は常に超電導条件を満足する温度になる事より、所定目標冷却温度THLは、超電導条件の維持とは全く別の条件で決定され得る。
極低温冷凍機CRの運転を開始した後、極低温冷凍機CRは、略固定値の輻射、伝導等による数ワットの外来熱量の他、超電導コイル3自身及び付帯物の顕熱に対する冷却を行い、冷却温度は次第に低下、冷却温度の低下に従い冷凍機の効率は低下し、冷却能力が外来熱量とバランスした温度で静定し、それ以下の温度には冷却出来ない事になり得る。
超電導状態の維持のみを考慮の場合は、本バランス温度と所定運転開始温度THHとの間では何れの温度でも極低温冷凍機CRの運転を停止する事は可能である。しかし、所定目標冷却温度THLを高くすると、運転停止の後の運転開始、運転開始の後の運転停止までの時間が短くなり、極低温冷凍機CRの発停の頻度が高くなる。極低温冷凍機CRの発停回数が増加する事は、極低温冷凍機CR及び関連機器の機械的な寿命に悪影響を及ぼす事が考えられる事より、所定目標冷却温度THLを下げる事が考えられるが、極低温冷凍機CRの効率が低下する事により蓄冷体22の顕熱による冷却エネルギーの蓄積に時間を要する事になり、極低温冷凍機CRの運転停止後の蓄冷体22の顕熱による冷却時間よりも長くなる事が考えられる。
所定目標冷却温度THLについては、蓄冷量による運転時間と、蓄冷量に必要な時間のバランス点以上で設定されることが好ましい。
蓄冷による運転は、蓄冷による外部侵入熱の冷却にあると考えられる事より、所定目標冷却温度THLの基準点は、例えば、冷却能力が外部侵入熱の2倍の点になると考えられる。この基準温度では、有意な冷却熱量が必要となる事より、無負荷冷却条件に於ける極低温冷凍機CRの最低到達温度よりも高い温度になる。
例えば、外部侵入熱が4Wの場合は、極低温冷凍機CRの第2段寒冷ステージ部CRS2の能力が8Wの点となる、15K程度を、所定目標冷却温度THLの基準点とすることが好ましい。この場合、極低温冷凍機CRの電力節減を図りながら、極低温冷凍機CRの運転開始及び運転停止の時間を最長に出来ると考えられる。
基準点以上の温度では、極低温冷凍機CRの能力が向上する事により、所定運転開始温度THH迄の時間は短くなるが、単位時間当たりの蓄冷量が増加により、極低温冷凍機CRの運転時間に対する停止時間の比率は大きくなり、より省エネなるものと考えられる。
【0075】
以上のことをまとめると、以下のことがいえる:
(ア)所定運転開始温度THHは、使用線材の使用特性に対し、電流条件、叉交磁場強さによる臨界温度基準に対し、必要な裕度を持つ下の値で設定するのが好ましい。
(イ)所定目標冷却温度THLは、外部侵入熱量の2倍の極低温冷凍機CRの冷却能力及びその時の冷却温度を基準に設定するのが好ましい。
(ウ)所定目標冷却温度THLを基準よりも高くすると、極低温冷凍機CRの利用率は向上するが発停頻度が増加し、機械部の寿命に悪影響を及ぼす事を考慮するのが好ましい。
(エ)2段式の極低温冷凍機CRの場合は、第1段寒冷ステージ部CRS1の冷却温度条件、特に第2電流リードD2の高温端D2aの温度が許容範囲を超えない事が好ましく、超過する場合は、本条件での極低温冷凍機CRの運転を行うのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る冷却システム、及び、本発明に係る運転方法は、任意の冷却対象物を冷却するために利用できるものであり、例えば、超電導コイルを冷却するために好適に利用できるものである。また、本発明に係る冷却システム、及び、本発明に係る運転方法は、任意の装置に用いられることができ、例えば、磁場発生装置に用いられることができる。
本発明に係る磁場発生装置は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0077】
RS 冷却システム
RU 冷却ユニット
CR 極低温冷凍機
CRM モータ
CRH コールドヘッド
CRU 寒冷ユニット
CRU1 第1段寒冷ユニット
CRU2 第2段寒冷ユニット
CRC シリンダー
CRD ディスプレーサ
CRL 蓄冷材
CRF 封止部材
CRR 膨張室
CRV スリーブ
CRS 寒冷ステージ部
CRS1 第1段寒冷ステージ部
CRS2 第2段寒冷ステージ部
TS 温度センサ
PS 制御部
TC 熱伝導接続部
SK 均熱部材
SKa 第1均熱部材
SKb 第2均熱部材
SKc 第3均熱部材
SKd 第4均熱部材
PM 冷却導体部材
PMa 第1冷却導体部材
PMb 第2冷却導体部材
PMba 軸直方向板状部
PMbb 軸線方向板状部
TP 伝熱導体部材
SH 輻射シールド
SHR 輻射シールド空間
F 固定部材
D1 第1電流リード(電流リード)
D2 第2電流リード(電流リード)
D2a 高温端
D2b 低温端
E ハーメチック貫通端子
BB1 第1ブスバー
BB2 第2ブスバー
1 磁場発生装置
2 鉄心
21 ヨーク
21a 端部
22 分割鉄心部(蓄冷体、鉄心部材)
221 外周面
2211 段差部
2211a 軸直方向面
2211b 軸線方向面
223 軸線方向内側の端面
224 側面
224a 第1側面
224b 第2側面
224c 第3側面
224d 第4側面
3 超電導コイル(冷却対象物)
31 外周面
4 真空断熱容器
41 上側の壁
42 軸線方向内側の壁
43 軸線方向外側の壁
5 分割鉄心コイル組立体
6 作業空間
7 支持部材
8 スペーサ部材
O 軸線
AD 軸線方向(対向方向)
ADI 軸線方向内側
ADO 軸線方向外側
OD 軸直方向
VD 縦方向
VD1 縦方向第1側
VD2 縦方向第2側
DD 奥行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8