(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060531
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】給餌制御装置、給餌制御方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/85 20170101AFI20240424BHJP
【FI】
A01K61/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167970
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三宅 寿英
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】矢路 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】大渕 隆文
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA01
2B104CB04
2B104CB29
2B104CF01
2B104CF12
2B104CF28
2B104EE05
(57)【要約】
【課題】水生生物に対する給餌を適正に制御する。
【解決手段】給餌制御装置10は、魚が含まれる飼育水槽2を飼育水槽カメラ5にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す分散値を算出する分散値算出部31と、分散値算出部31が算出した分散値に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定部32と、判定部32の判定結果に基づいて、飼育水槽2に給餌する給餌装置4の動作を制御する動作制御部33と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物が含まれる水槽を第1の撮像装置にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量を算出する第1算出部と、
前記第1算出部が算出した統計量に基づいて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記水槽に給餌する給餌装置の動作を制御する動作制御部と、を備える給餌制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記複数の分割領域のうち、所定の第1の区分に分類される前記統計量を有する前記分割領域の数に応じた第1指標値と、前記第1の区分よりも大きい統計量の範囲を示す所定の第2の区分に分類される前記統計量を有する前記分割領域の数に応じた第2指標値と、の値の大きさの違いを示す摂餌指数を用いて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する、請求項1に記載の給餌制御装置。
【請求項3】
前記第2の区分における統計量の下限値は、前記第1の区分における統計量の上限値の2倍以上である、請求項2に記載の給餌制御装置。
【請求項4】
前記撮像画像は、前記水槽の水面を平面視した状態を示す画像であり、前記給餌装置から餌が供給される領域を含む、請求項1に記載の給餌制御装置。
【請求項5】
前記水槽からの排水流路に設置されて排水に含まれる残餌を回収する残餌回収器を撮像した残餌撮像画像に基づいて、残餌量を特定する残餌量特定部をさらに備え、
前記判定部は、前記統計量および前記残餌量に基づいて前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する、請求項1に記載の給餌制御装置。
【請求項6】
給餌動作における時間当たりの給餌量の設定を含む給餌スケジュールに基づいて前記水槽に給餌する前記給餌装置に対して、前記残餌量に基づいて前記時間当たりの給餌量を調整する調整部をさらに備える、請求項5に記載の給餌制御装置。
【請求項7】
複数の前記撮像画像に対して動画像処理を行うことにより前記水生生物の行動量を算出する第2算出部をさらに備え、
前記判定部は、前記給餌装置から給餌を行っている状態において前記行動量が所定値を下回っている場合に、前記水生生物が摂餌中の状態ではないと判定する、請求項1に記載の給餌制御装置。
【請求項8】
前記給餌装置の予め設定された給餌開始予定時刻を所定時間過ぎているにも関わらず、前記水生生物が摂餌中の状態でないと前記判定部が判定した場合、前記給餌装置に異常が発生していることを報知する異常報知部をさらに備える、請求項1に記載の給餌制御装置。
【請求項9】
水生生物が含まれる水槽を第1の撮像装置にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップにて算出した統計量に基づいて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記水槽に給餌する給餌装置の動作を制御する動作制御ステップと、を含む給餌制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水生生物に対する給餌を制御する、給餌制御装置及び給餌制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖されている水生動物に対して給餌する給餌装置が知られている。
【0003】
特許文献1は、水棲動物養殖支援システムを開示する。該水棲動物養殖支援システムは、養殖池から上げられた採取器をカメラで撮影することにより得られた静止画又は動画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部を備える。また、該水棲動物養殖支援システムは、取得された撮影画像を解析する画像解析部と、画像解析部の解析結果に基づいて、養殖池中の水棲動物に関する水棲動物情報を取得する水棲動物情報取得部と、を備える。
【0004】
特許文献2は、給餌システムを開示する。該給餌システムは、養殖魚への給餌を行う給餌装置と、カメラと、カメラで取得した画像データの示す画像の動きを解析し、養殖魚の動きに関する情報を取得する画像処理装置と、を備え、給餌装置の給餌の開始後に、カメラが画像データの取得を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/250330号
【特許文献2】国際公開第2018/042651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の水棲動物養殖支援システムは、養殖池から採取器を上げ下げする必要がある。また、特許文献2の給餌システムは、給餌装置の給餌の開始後にカメラが画像データの取得を開始する。このため、特許文献1の水棲動物養殖支援システム及び特許文献2の給餌システムは何れも、水生生物に対する給餌をさらに適正に制御する余地を残す。
【0007】
本開示の一態様は、水生生物に対する給餌を適正に制御する、給餌制御装置及び給餌制御方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る給餌制御装置は、水生生物が含まれる水槽を第1の撮像装置にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量を算出する第1算出部と、前記第1算出部が算出した統計量に基づいて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記水槽に給餌する給餌装置の動作を制御する動作制御部と、を備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る給餌制御方法は、水生生物が含まれる水槽を第1の撮像装置にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量を算出する第1算出ステップと、前記第1算出ステップにて算出した統計量に基づいて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記水槽に給餌する給餌装置の動作を制御する動作制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、水生生物に対する給餌を適正に制御する、給餌制御装置及び給餌制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に係る養殖システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本開示に係るオーバーフロー槽の一例を示す概略図である。
【
図3】本開示の一態様に係る給餌制御装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図4】飼育水槽カメラにより撮像された、魚(マサバ)の遊泳状態の一例を示す図である。
【
図5】摂餌中の遊泳状態における分散値のヒストグラムを算出する方法を説明するための図である。
【
図6】摂餌中の遊泳状態における分散値のヒストグラムを算出する方法を説明するための図である。
【
図7】第1指標値及び第2指標値の算出方法を説明するための図である。
【
図8】魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する方法を説明するための図である。
【
図9】動作制御部による給餌装置の動作制御の一例を示すフロー図である。
【
図10】判定部が、統計量及び残餌量特定部によりカウントされた残餌量の両方に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する一例を示すフロー図である。
【
図11】判定部が、残餌量特定部によりカウントされた残餌量に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する一例を示すフロー図である。
【
図12】判定部が、残餌量特定部によりカウントされた残餌量に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する一例を示すフロー図である。
【
図13】判定部が、残餌量特定部によりカウントされた残餌量に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する一例を示すフロー図である。
【
図14】調整部が残餌量に基づいて時間当たりの給餌量を調整する動作の一例をフロー図である。
【
図15】魚の遊泳速度も考慮して、魚が摂餌中の状態か否かを判定する方法を説明するためのフロー図である。
【
図16】オプティカルフローを用いて、2フレーム間の魚の動きを2次元ベクトルで表現した図である。
【
図17】同じ時刻における、分散度数比と魚の遊泳速度を比較した図である。
【
図18】本開示に係る給餌制御方法の一例を説明するためのフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、模式的に示した
図1等を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
最初に、本開示に係る養殖システム1について説明する。養殖システム1は、陸上養殖及び海面養殖の何れに対しても適用可能であるが、以下では、陸上養殖に適用されるものとして説明する。
【0014】
(陸上養殖)
陸上養殖は、陸上に人工的に創設した環境下で水生生物を養殖するものである。陸上養殖は、主に、「かけ流し式陸上養殖」及び「閉鎖循環式陸上養殖」という2つの方式を有する。かけ流し式陸上養殖は、天然環境から海水等を継続的に引き込み、飼育水として使用する養殖方式である。閉鎖循環式陸上養殖は、濾過システムを用いて飼育水を浄化しながら、飼育水を循環利用する養殖方式である。閉鎖循環式陸上養殖は、基本的に飼育水を排水しない、環境負荷の低い方式であり、今後の市場拡大が期待されている。
【0015】
従来の陸上養殖においては、設定された時間に所定の給餌量が飼育水槽に供給される。給餌時間及び給餌量の設定は、飼育員の目視及び/又は経験に基づいてなされていたことから、飼育員の負荷が大きかった。また、魚種及び/又は魚の成長過程等によっても給餌量は変化するため、給餌を適正に制御することは容易ではなかった。
【0016】
本開示に係る養殖システム1は、以下に述べる構成を備えることによって、水生生物に対する給餌を適正に制御する。
【0017】
(本開示に係る養殖システム)
以下、本開示に係る養殖システム1を説明する。養殖システム1は、かけ流し式陸上養殖及び閉鎖循環式陸上養殖の両方式に適用可能であるが、以下の説明では、閉鎖循環式陸上養殖に適用されるものとする。養殖システム1は、水生生物、特に貝類を除く魚介類の飼育に適用可能であり、養殖対象の一例として、サバ、フグ、ヒラメ、エビ、タコ、イカ、ナマズ、又はウナギを挙げることができる。
【0018】
最初に概要を説明すれば、本開示に係る養殖システム1は、養殖する魚が摂餌中及び通常時(非摂餌時)の何れの遊泳状態であるかを画像解析し、その結果に基づいて給餌装置の動作を制御して魚に対する給餌を適正に制御する、というものである。以下、養殖システム1を具体的に説明する。
【0019】
養殖システム1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、養殖システム1の概略構成の一例を示す図である。
【0020】
養殖システム1は、主として、飼育水槽2、オーバーフロー槽3、給餌装置4、飼育水槽カメラ5(第1の撮像装置)、残餌カメラ6(第2の撮像装置)、及び給餌制御装置10を備える。
【0021】
飼育水槽2は、養殖対象となる魚と、該魚に好適な水(淡水、海水、又は汽水)とを含む。飼育水槽2は、養殖対象となる魚の種類、又は魚の成長過程等に応じた環境に設定されている。飼育水槽2は、屋内及び屋内の何れに設置されてもよい。飼育水槽2は、特定の大きさ、形状に限定されない。飼育水槽2は、従来の陸上養殖に使用される水槽及びその付帯設備を含む。
【0022】
飼育水槽2は、オーバーフローによって、水面上の浮遊物、並びに、水底の残餌及び糞などを除去する仕組みを有してよい。これにより、飼育水槽2は、壁面における汚れの付着を軽減し、清潔な壁面を維持する。オーバーフローした水は、飼育水槽2からオーバーフロー槽3へと排出される。
【0023】
オーバーフロー槽3は、飼育水槽2から後流へと向かう排水流路に設置される。より具体的に、オーバーフロー槽3は、飼育水槽2と、排水を濾過するためのフィルター槽(不図示)との間に設置されてよい。飼育水槽2から後流のフィルター槽まで自然流下により送水されてよい。仮に飼育水槽2とフィルター槽とがオーバーフロー槽3を介さずに直接接続されている場合、飼育水槽2とフィルター槽との高低差によって、飼育水槽2の水がフィルター槽に全量流出する事態が生じうる。オーバーフロー槽3は、そのような事態を防止するために飼育水槽2とフィルター槽との間に設置される。オーバーフロー槽3は、その設置高さに応じて飼育水槽2の運転水位を自動調整できる。
【0024】
オーバーフロー槽3について、
図2も参照しつつ、より具体的に説明する。
図2は、本開示に係るオーバーフロー槽3の一例を示す概略図である。
【0025】
参照番号200に示す図を参照して、オーバーフロー槽3は、飼育水槽2から後流へと向かう排水流路に設置されており、飼育水槽2の水面上の浮遊物、並びに、水底の残餌及び糞などを受け入れる。オーバーフロー槽3は、第1配管3aを介して飼育水槽2と接続する。オーバーフロー槽3は、簡易な構造の小型の水槽であってよい。
【0026】
第1配管3aは、飼育水槽2の水面上の浮遊物、並びに、水底の残餌及び糞などを含む飼育水をオーバーフロー槽3へ送る。第1配管3aは、オーバーフロー槽3の上部又は下部など、適宜の位置に設けられてよい。第1配管3aは、オーバーフロー槽3に直接接続されていなくてもよく、
図2の参照番号200に示す図のように、オーバーフロー槽3の上方に配管出口が位置決めされてもよい。第1配管3aは、1本以上あってよい。
【0027】
飼育水槽2からオーバーフロー槽3に送られた飼育水は、第2配管3bを介してフィルター槽へと送出される。
【0028】
オーバーフロー槽3の一例を示す
図2を参照して、オーバーフロー槽3の上部には残餌回収器7が載置され、第1配管3aから排出された飼育水に含まれる残餌を回収する。残餌回収器7は、水を通し、かつ、残餌を捕捉可能な構造を有する。残餌回収器7は、例えば、網又は笊(ざる)などであってよい。前記網の目は、残餌よりも小さい。これにより、残餌回収器7は、飼育水槽2から送られた、飼育水槽2の残餌を捕捉できる。
【0029】
残餌回収器7は、飼育水槽2の残餌を捕捉できればよく、オーバーフロー槽3の上部ではなく、飼育水槽2から後流へと向かう排水流路内、又はオーバーフロー槽3の後流に位置するフィルター槽に設置されてもよい。残餌回収器7は、残餌をすべて回収する必要はなく、残餌の一部を回収するものであってよい。
【0030】
養殖システム1は、飼育水槽2から排出される飼育水の流量を制御するためのバルブを有してもよい。バルブは、飼育水槽2内の飼育水が全量流出しないよう飼育水の排出量を調整できる。この場合、養殖システム1は、オーバーフロー槽3を有していなくてよく、残餌回収器7は飼育水槽2の後流の排水流路内に設けられていればよい。
【0031】
図2に示すオーバーフロー槽3は、一例であって、特定の構造、仕様に限定されない。
【0032】
給餌装置4(給餌装置)は、飼育水槽2で養殖する魚に給餌する装置である。餌は、生餌(生魚の切り身)、モイストペレット(半生の固形タイプ)、及びドライペレット(乾燥した固形タイプ)の何れであってもよい。以下の説明では、餌は、水よりも比重が大きいペレット状であるものとする。水より比重が大きいことにより、魚に食べられなかった餌(残餌)は、飼育水槽2の底に沈み、第1配管3aを介してオーバーフロー槽3に送られる。なお、餌は、水よりも比重が軽くてもよい。その場合でも、残餌は、第1配管3aを介してオーバーフロー槽3に送られ、残餌回収器7にて回収される。
【0033】
給餌装置4は、飼育水槽2の上方に設置されており、給餌時間になると飼育水槽2に餌を供給する。給餌装置4は、予め設定された時刻になると、給餌を開始・停止してよい。給餌装置4は、給餌制御装置10(後述)の命令、又は飼育員等のマニュアル操作によって、給餌を開始・停止し、及び/又は、給餌量を調整してもよい。給餌装置4は、従来の給餌装置が使用されてよく、例えば、餌タンク、餌計量部、給餌機構、駆動部、制御部、及び/又は通信部などを有してよい。
【0034】
飼育水槽カメラ5は、飼育水槽2を撮像し、撮像画像(撮像データ)を給餌制御装置10に送信する。撮像画像は、飼育水槽2の水面を平面視した状態を示す画像であり、給餌装置4から餌が供給される領域Tの画像を含む。飼育水槽カメラ5は、飼育水槽2における領域Tとは異なる領域を撮像することもできる。領域Tは、飼育水槽2の全域であってもよい。飼育水槽カメラ5と給餌制御装置10とは有線及び/又は無線により接続される。飼育水槽カメラ5は、動画及び静止画の何れも撮像することができる。
【0035】
飼育水槽カメラ5は、可視光領域及び赤外光領域の両領域において対象物を撮像できる装置であってよい。陸上養殖設備では夜間に消灯する運用形態がある。そのため、飼育水槽カメラ5は、昼間は可視画像を撮像し、夜間は赤外画像を撮像してよい。給餌制御装置10における画像処理(後述)は、可視画像と赤外画像とを区別せずに行われてよい。
【0036】
残餌カメラ6は、残餌を回収する残餌回収器7を撮像する。残餌回収器7は、例えば、前述されているとおり、オーバーフロー槽3の上部、後流の配管、又はフィルター槽などに設置される。残餌カメラ6は、残餌回収器7を撮像し、残餌撮像画像(撮像データ)を給餌制御装置10に送信する。残餌カメラ6と給餌制御装置10とは有線及び/又は無線により接続される。残餌カメラ6は、動画及び静止画の何れも撮像することができる。
【0037】
残餌カメラ6は、可視光領域及び赤外光領域の両領域において対象物を撮像できる装置であってよい。残餌カメラ6は、昼間は可視画像を撮像し、夜間は赤外画像を撮像してよい。残餌カメラ6における画像処理(後述)は、可視画像と赤外画像とを区別せずに行われてよい。
【0038】
(給餌制御装置)
給餌制御装置10は、以下(1)、(2)、及び/又は(3)に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、飼育水槽2に給餌する給餌装置4の動作を制御する。
【0039】
(1)飼育水槽カメラ5が撮像した飼育水槽2の撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて、当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量。
【0040】
(2)残餌カメラ6が撮像した残餌回収器7の残餌撮像画像に基づいて特定される残餌量。
【0041】
(3)飼育水槽カメラ5が撮像した飼育水槽2の複数の撮像画像に対して動画像処理を行うことにより算出された魚の行動量。
【0042】
以下、給餌制御装置10の構成を
図3により説明する。
図3は、本開示の一態様に係る給餌制御装置10の概略構成の一例を示す図である。
【0043】
図3に示すように、給餌制御装置10は、通信部20、及び制御部30を備える。
【0044】
給餌制御装置10は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び外部記憶装置などの記録部40を備えてよい。記録部40は、制御部30によって実行される所定のアプリケーションプログラムなどを記憶してよい。記録部40は、給餌動作における時間当たりの給餌量の設定を含む給餌スケジュールを記録してよい。記録部40は、後述する飼育水槽カメラ5及び残餌カメラ6により撮像された画像(静止画及び/又は静止画)を記録してよい。記録部40は、後述する判定部32による判定結果、判定部32が判定に用いる各種の閾値等を記録してよい。このように、記録部40は、給餌制御装置10の動作に関連する任意のデータ及び/又は情報を記録してよい。
【0045】
給餌制御装置10は、キーボード、マウス、又は音声入力などの、ユーザの各種操作を受け付ける入力部50を備えてよい。給餌制御装置10は、テキスト、画像、又は後述する異常報知部37による異常報知などを表示する表示部60を備えてよい。
【0046】
通信部20は、少なくとも飼育水槽カメラ5、残餌カメラ6、及び給餌装置4との通信を行うことが可能な構成を有している。この通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。無線通信の場合、電波を用いるもの、赤外線を用いるものなどが適用され得る。電波を用いるものとしては、Bluetooth(登録商標)及びWiFi(登録商標)などが適用され得る。
【0047】
通信部20は、養殖システム1の運転に係る様々な情報を、インターネット又はクラウド等を介して、養殖システム1の管理者等に送信することができる。そのような情報の例としては、後述する異常報知部37による異常報知、飼育水槽カメラ5及び/又は残餌カメラ6により撮像された撮像画像、給餌装置4による給餌状況(給餌スケジュール、給餌量など)などが挙げられる。
【0048】
制御部30は、給餌制御装置10が備える各機能の処理を実行するように制御するものであり、分散値算出部31、判定部32、動作制御部33、残餌量特定部34、調整部35、行動量算出部36、及び異常報知部37を備える。以下、それぞれの構成について説明する。
【0049】
(統計量の算出)
分散値算出部31は、水生生物(魚)が含まれる飼育水槽2を飼育水槽カメラ5にて撮像した撮像画像を、通信部20を介して飼育水槽カメラ5から取得する。そして、分散値算出部31は、該撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値のばらつきを示す統計量を算出する。以下、
図4等を用いて具体的に説明する。
【0050】
なお、以下では、算出される統計量は画素値のばらつきを示す統計量(分散値又は標準偏差)であるものとして説明しているが、撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す、他の統計量が算出されてもよい。画素値の分布の特徴を示す統計量は、例えば、画素値のバラツキを示す、分散値又は標準偏差に加え、画素値の、平均値、中央値、最頻値、尖度、又は歪度等を含みうる。水中生物の種類又は飼育水槽カメラ5の種類等によっては、画素値の、平均値、中央値、最頻値、尖度、又は歪度等の統計値を用いて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定することができる。
【0051】
図4は、飼育水槽カメラ5により撮像された、魚(マサバ)の遊泳状態の一例を示す図である。
【0052】
参照番号400に示す図は、通常時(非摂餌中)の魚の遊泳状態を示す。参照番号410に示す図は、摂餌中の魚の遊泳状態を示す。両者を比較すると、通常時と摂餌中とで魚の遊泳状態が相違する。通常時の遊泳では、魚群による水面への影響は少ない。摂餌中の遊泳では、魚が餌に食いつき、水面が荒れている。
【0053】
通常時と摂餌中とで魚の遊泳状態が相違する点に注目して、分散値算出部31は、次のように統計量を算出する。そのことを
図5、
図6を参照して説明する。なお、以下の説明では、統計量は分散値であるものとして説明する。
【0054】
図5は、通常時の遊泳状態における分散値のヒストグラムを算出する方法を説明するための図である。
【0055】
参照番号500に示す図のように、分散値算出部31は、通常時の魚の遊泳状態を示す撮像画像を、10px×10pxの大きさのブロックサイズに分割する。次に、分散値算出部31は、すべてのブロックについて、ブロック内の画素値の分散値を算出する。画素値は、0~255の256階調で表現される。
【0056】
続いて、参照番号510に示す図を参照して、分散値算出部31は、ヒストグラムを作成する。ヒストグラムは、横軸が分散値を示し、縦軸が度数を示す。一例として、分散値算出部31は、横軸の分散値を20刻み(すなわち階級幅を20)とするヒストグラムを作成する。
【0057】
図6は、摂餌中の遊泳状態における分散値のヒストグラムを算出する方法を説明するための図である。
【0058】
参照番号600に示す図を参照して、分散値算出部31は、摂餌中の魚の遊泳状態を示す撮像画像を、10px×10pxの大きさのブロックサイズに分割する。次に、分散値算出部31は、すべてのブロックについて、ブロック内の画素値の分散値を算出する。画素値は、0~255の256階調で表現される。
【0059】
続いて、参照番号610に示す図を参照して、分散値算出部31は、ヒストグラムを作成する。ヒストグラムは、横軸に分散値を、縦軸に度数を示す。一例として、分散値算出部31は、分散値を20刻みとするヒストグラムを作成する。
【0060】
このようにして、分散値算出部31は、飼育水槽2の領域Tを飼育水槽カメラ5にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値のばらつきを示す分散値を算出する。そして、分散値算出部31は、算出した分散値に係るデータを判定部32に送出する。
【0061】
なお、分散値算出部31は、ばらつきを示す統計量として、分割領域内の画素値の標準偏差を算出してもよい。分割されるブロックサイズは、15px×15px等の他のサイズであってもよい。ヒストグラムにおける横軸の分散値は、30刻み等の他の数値であってもよい。分散値算出部31は、ヒストグラムという形式ではなく、分散値と度数とを対応付けたデータを判定部32に送出してよい。
【0062】
(判定部による判定)
判定部32は、分散値算出部31から、分散値算出部31が算出した分散値に係るデータを受け取る。そして、判定部32は、分散値算出部31が算出した分散値に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する。以下、具体的に説明する。
【0063】
最初に、
図5及び
図6を参照して、
図5及び
図6の2つのヒストグラムを比較すると、通常時の遊泳状態では、魚は穏やかに遊泳するため、ヒストグラムは左側に偏った分布を有する。これに対して、摂餌中の遊泳状態では、魚は活動的に遊泳するため、ヒストグラムはより広がりを持った分布を有する。
【0064】
そこで、判定部32は、通常時及び摂餌中の遊泳状態における分散値の差を顕著に表現するために、分散値の度数比を算出する。その後、判定部32は、その度数比に基づいて魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する。そのことを
図7等により説明する。
【0065】
図7は、判定部32による、第1指標値及び第2指標値の算出方法を説明するための図である。参照番号700に示す図は、
図5の参照番号510に示すヒストグラムにおいて、所定の第1の区分及び所定の第2の区分が設定された様子を示す。参照番号710に示す図は、
図6の参照番号610に示すヒストグラムにおいて、所定の第1の区分及び所定の第2の区分が設定された様子を示す。
【0066】
最初に、判定部32は、飼育水槽2の領域Tを飼育水槽カメラ5にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のうち、所定の第1の区分に分類される分散値を有する分割領域の数に応じた第1指標値を算出する。
図7に示す例では、所定の第1の区分は、分散値0~50が設定されている。第1指標値は、分散値0~50を有する分割領域の数である。
【0067】
また、判定部32は、第1の区分よりも大きい分散値の範囲を示す所定の第2の区分に分類される分散値を有する分割領域の数に応じた第2指標値を算出する。
図7に示す例では、所定の第2の区分は、分散値200~250が設定されている。第2指標値は、分散値200~250を有する分割領域の数である。
【0068】
そして、判定部32は、第1指標値と第2指標値の大きさの違いを示す摂餌指数を算出し、その摂餌指数を用いて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する。
図7に示す例では、判定部32は、第1指標値(分散値0~50を有する分割領域の数)と第2指標値(分散値200~250を有する分割領域の数)の大きさの違いを示す摂餌指数(分散度数比)を算出し、その度数比を用いて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する。そのことを
図8により説明する。
【0069】
図8は、判定部32によって魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する方法を説明するための図である。
【0070】
図8のグラフは、横軸が撮像画像のフレーム番号を示し、縦軸が分散度数比を示す。フレーム番号は、時間(時系列データ)に相当すると考えてよい。判定部32は、飼育水槽カメラ5によって経時的に撮像された撮像画像それぞれに対して摂餌指数(分散度数比)を算出し、時間と分散度数比とを対応付けるグラフ(又は、テーブル等)を作成する。
【0071】
図8の例を参照すると、横軸のフレーム番号1000~1400を境として、左右で分散度数比の違いが顕著に表れている。これは、通常時の遊泳状態と摂餌中の遊泳状態とで分散度数比に有意な差が生じることに起因する。度数比が相対的に高い左側は、第1指標値と第2指標値との差が大きい通常時の魚の遊泳状態を示す。度数比が相対的に低い右側は、第1指標値と第2指標値との差が小さい摂餌中の魚の遊泳状態を示す。
【0072】
そこで、判定部32は、予め定められた分散度数比の閾値(例えば、1.0)よりも分散度数比が大きい、フレーム番号1000~1400より左側に対応する時間帯は「通常時の遊泳状態」と判定する。また、判定部32は、当該閾値よりも分散度数比が小さい、フレーム番号1000~1400より右側に対応する時間帯は「摂餌中の遊泳状態」と判定することができる。
【0073】
このように、判定部32は、通常時の遊泳状態と摂餌中の遊泳状態とで分散度数比に顕著な差が見出されることを利用して、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定できる。従来の画像処理技術においては、例えば通常時の遊泳状態と摂餌中の遊泳状態とを判別する場合に、両者の撮像画像の輝度を比較する手法も検討されたが、有意な結果を得ることができなかった。この点、判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かを分散度数比に基づき高い精度で判定することができる。
【0074】
所定の第1の区分及び所定の第2の区分はそれぞれ適宜設定されてよい。例えば、所定の第1の区分は分散値50~100が設定され、所定の第2の区分は分散値200~250が設定されてよい。
【0075】
ただし、経験的に、第2の区分における分散値の下限値は、第1の区分における分散値の上限値の2倍以上であることが好ましい。これにより、判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かをより高い精度で判定できる。
【0076】
第1指標値及び第2指標値はそれぞれ、分割領域の数ではなく、分割領域の合計面積を示す値とすることもできる。摂餌指数は、第1指標値と第2指標値との比又は差分等であってよい。何れの場合においても、判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定できる。
【0077】
図3に戻り、判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定し、その判定結果に係る情報を動作制御部33に送出する。
【0078】
動作制御部33は、判定部32の判定結果に基づいて、飼育水槽2に給餌する給餌装置4の動作を制御する。その一例を
図9により説明する。
図9は、動作制御部33による給餌装置4の動作制御の一例を示すフロー図である。なお、
図9の例では、給餌装置4は魚へ給餌しておらず、かつ、判定部32の判定結果が「摂餌中ではない」であるものとする。
【0079】
最初に、S900にて、判定部32が、前述の統計量に基づく手法により、「魚は摂餌中ではない」と判定したとする。続いて、S902では、判定部32が、記録部40に記録されている、魚への給餌スケジュールを確認する。そして、S904では、判定部32が、魚への給餌スケジュールを参照して、現在の時刻が給餌開始予定時刻を過ぎているか否かを判定する。
【0080】
S904にてNOの場合、現在の時刻は給餌開始予定時刻を過ぎていない。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌装置4の停止状態を継続させる。判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌停止を継続」を実行するものであってもよい。S904にてNOの場合、フローは、S900とS902との間に戻る。
【0081】
S904にてYESの場合(S906)、現在の時刻は給餌開始予定時刻を過ぎている。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌装置4に給餌を開始させる。
【0082】
次に、フローはS908に進む。ここで、S908以降のフローは、動作制御部33から給餌装置4に対して給餌開始が指示されたにも拘わらず、給餌装置4が給餌動作をしていない状況を想定しているものとする。給餌装置4が給餌動作をしていないことは、例えば、判定部32が、前述の統計量に基づく手法により、「魚は摂餌中ではない」と判定してもよい。あるいは、給餌動作中であることを示す信号が給餌装置4から送出されていないことを受けて、給餌装置4は給餌動作を行っていないと判定部32が判定してもよい。
【0083】
S908では、判定部32は、魚への給餌スケジュールを参照して、現在の時刻が給餌開始予定時刻から所定時間過ぎているか否かを判定する。所定時間は、給餌装置4に異常が発生しているか否かを判定するための閾値であって、適宜の時間を設定してよい。
【0084】
S908にてYESの場合(S910)、現在の時刻が給餌開始予定時刻から所定時間過ぎているにも拘わらず魚に給餌されていないことを示す。そこで、判定部32は、給餌装置4に異常が発生していると判定し、異常報知部37に異常警報を発報させる。
【0085】
S908にてNOの場合、給餌装置4に異常が発生していると判定するタイミングではないことから、フローはS906に戻り、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌装置4に給餌を開始させる。
【0086】
このように、動作制御部33は、判定部32の判定結果に基づいて、飼育水槽2に給餌する給餌装置4の動作を制御することができる。
【0087】
(残餌量に基づく判定)
次に、残餌量特定部34について説明する。前述したように、残餌カメラ6は、飼育水槽2からの排水流路に設置されて、排水に含まれる残餌を回収する残餌回収器7を撮像する。残餌量特定部34は、その残餌撮像画像に基づいて、残餌量を特定する。残餌量特定部34は、周知の画像検出方法、例えば、YOLO(You Only Look Once)のアルゴリズムを用いて、残餌回収器7に回収された残餌量を検出できる。この場合、残餌量特定部34(YOLO)は、残餌回収器7に回収された残餌を1つずつ検出し、その数をカウントする。残餌量特定部34(YOLO)は、残餌撮像画像中の残餌の占める面積に基づいて、残餌の数をカウントしてもよい。
【0088】
残餌量特定部34は、YOLOに代えて、SSD(Single Shot MultiBox Detector)、R-CNN、又はそれらから派生した物体検出手法を用いて、残餌回収器7に回収された残餌量を検出してもよい。
【0089】
例えば、残餌を回収する残餌回収器7が網である場合を考える。網がオーバーフロー槽3の上部に常時載置されている場合には、残餌量特定部34は、網に回収された残餌の合計量を検出する。網がオーバーフロー槽3の上部に常時載置されず、定期的に新しい網と交換される場合には、残餌量特定部34は、新しい網と交換されたタイミングで、残餌の量を0からカウントし始めてよい。
【0090】
判定部32は、前述した統計量(分散値又は標準偏差)及び残餌量特定部34によりカウントされた残餌量の両方に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定することもできる。その一例を
図10により説明する。
図10は、判定部が、統計量及び残餌量特定部によりカウントされた残餌量の両方に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する一例を示すフロー図である。
【0091】
S1000にて、判定部32は、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量Nが「N>N1」を満たすか否かを判定する。N1は、摂餌中であるか否かを判断するための閾値であって、適宜の数値を設定してよい。
【0092】
S1000にてYESの場合(S1002)、残餌量が多いことを示す。そこで、判定部32は、前述した統計量を考慮することなく、「摂餌中ではない」と判定する。
【0093】
S1000にてNOの場合(S1004)、判定部32は、前述した統計量に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する。
【0094】
S1004にてYESの場合(S1006)、判定部32は、「摂餌中である」と判定する。
【0095】
S1004にてNOの場合(S1008)、判定部32は、「摂餌中ではない」と判定する。
【0096】
ここに挙げた判定方法は一例であるが、このようにして、判定部32は、前述した統計量及び残餌量特定部34によりカウントされた残餌量の両方に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定できる。閾値自体は、給餌量、魚の個体数、季節、残餌回収器7の交換頻度、及び/又は魚の成長具合等によって適宜設定してよい。また、閾値は、残餌量ではなく、残餌量の増加速度などに基づき設定されてもよい。設定された閾値は、記録部40に記録されていてよい。
【0097】
また、判定部32は、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量のみに基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定することもできる。以下、
図11~13を参照して説明する。
図11~
図13はそれぞれ、判定部が、残餌量特定部によりカウントされた残餌量に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定する一例を示すフロー図である。
【0098】
図11を参照して、S1100では、給餌装置4による給餌開始後、判定部32は、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量Nが「N>N2」を満たすか否かを判定する。N2は、摂餌中であるか否かを判断するための閾値であって、適宜の数値を設定してよい。
【0099】
S1100にてYESの場合(S1102)、残餌量が多いことを示す。そこで、判定部32は、「摂餌中ではない」と判定する。次に、S1104にて、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌装置4に給餌を停止させる。
【0100】
S1100にてNOの場合(S1106)、残餌量が少ないことを示す。そこで、判定部32は、「摂餌中である」と判定する。そして、S1108にて、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌装置4による給餌を継続させる。S1108は「給餌停止を継続」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌停止を継続」を実行してもよい。
【0101】
次に、
図12を参照して、S1200では、判定部32は、給餌装置4による給餌開始から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、適宜に設定されてよい。
【0102】
S1200にてNOの場合(S1202)、給餌終了が時期尚早であることを示す。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌量(kg/h)を維持させる。S1202は「給餌量を維持」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌量を維持」を実行してもよい。
【0103】
S1200にてYESの場合(S1204)、次に、判定部32は、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量Nが「N<N3」を満たすか否かを判定する。N3は、給餌量を増加させるか否かを判断するための閾値である。N3は、適宜の数値を設定してよい。
【0104】
S1204にてNOの場合(S1206)、残餌量が少なくないことを示す。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌量(kg/h)を維持させる。S1206は「給餌量を維持」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌量を維持」を実行してもよい。
【0105】
S1204にてYESの場合(S1208)、残餌量が少ないことを示す。そこで、判定部32は、調整部35(後述)に指示して、給餌量(kg/h)を増加させる。
【0106】
図13を参照して、S1300にて、判定部32は、給餌装置4による給餌開始から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、適宜に設定されてよい。
【0107】
S1302にてNOの場合(S1302)、給餌終了が時期尚早であることを示す。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌量(kg/h)を維持させる。S1302は「給餌量を維持」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌量を維持」を実行してもよい。
【0108】
S1300にてYESの場合(S1304)、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量Nが「N≧N4」を満たすか否かを判定する。N4は、給餌量を減少させるか否かを判断するための閾値である。N4は、1以上の数字であって、適宜に決められてよい。
【0109】
S1304にてNOの場合(S1306)、給餌量を減少させる必要が無いことを示す。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌量(kg/h)を維持させる。S1304は「給餌量を維持」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌量を維持」を実行してもよい。
【0110】
S1304にてYESの場合(S1308)、給餌量を減少させる必要があることを示す。そこで、判定部32は、調整部35(後述)に指示して、給餌量(kg/h)を減少させる。
【0111】
このように、判定部32は、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量に基づいて、魚が摂餌中の状態であるか否かを判定し、かつ、給餌量を調整することもできる。
【0112】
調整部35は、給餌動作における時間当たりの給餌量の設定を含む給餌スケジュールに基づいて飼育水槽2に給餌する給餌装置4に対して、残餌量に基づいて時間当たりの給餌量を調整する。調整部35は、給餌スケジュールに関するデータを記録部40より取得してよい。調整部35は、残餌量に関するデータを残餌量特定部34より取得してよい。
【0113】
調整部35が残餌量に基づいて時間当たりの給餌量を調整する動作の一例を
図14により説明する。
図14は、調整部35が残餌量に基づいて時間当たりの給餌量を調整する動作の一例をフロー図である。
【0114】
S1400にて、判定部32は、残餌量特定部34によりカウントされた残餌量Nが「N>N5」を満たすか否かを判定する。N5は、給餌量の増減を判断するための閾値であって、適宜の数値を設定してよい。
【0115】
S1400にてNOの場合(S1402)、残餌量がN5以下であることを示す。そこで、判定部32は、「N≦N5」の状態が所定時間経過したか否かを判定する。所定時間は、適宜に設定されてよい。
【0116】
S1402にてNOの場合(S1404)、残餌量がN5以下である状態が所定時間継続していないこと、つまり、魚への給餌量を増加させる必要が無いことを示す。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌量(kg/h)を維持させる。S1404は「給餌量を維持」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌量を維持」を実行してもよい。
【0117】
S1402にてYESの場合(S1406)、残餌量がN5以下である状態が所定時間継続したこと、つまり、魚への給餌量を増加させる必要があることを示す。そこで、判定部32は、調整部35に指示して、給餌量(kg/h)を増加させる。
【0118】
S1400にてYESの場合(S1408)、残餌量がN5よりも多いことを示す。そこで、判定部32は、給餌スケジュールに基づく給餌終了時刻まで所定の時間未満か否かを判定する。
【0119】
S1408にてNOの場合(S1410)、給餌終了時刻まで所定の時間以上残されていること、つまり、魚への給餌量を減少させる必要があることを示す。そこで、判定部32は、調整部35に指示して、給餌量(kg/h)を減少させる。
【0120】
S1408にてYESの場合(S1412)、給餌終了時刻まで所定の時間未満しか残されていないこと、つまり、魚への給餌量を減少させる必要がないことを示す。そこで、判定部32は、動作制御部33に指示して、給餌量(kg/h)を維持させる。S1412は「給餌量を維持」に該当するため、判定部32は、動作制御部33に対して何らの指示をせず、それにより「給餌量を維持」を実行してもよい。
【0121】
ここに挙げた給餌量の調整方法は一例であるが、このように、調整部35は、給餌動作における時間当たりの給餌量の設定を含む給餌スケジュールに基づいて飼育水槽2に給餌する給餌装置4に対して、残餌量に基づいて時間当たりの給餌量を調整できる。
【0122】
(遊泳速度に基づく判定)
次に、魚の遊泳速度も考慮して、魚が摂餌中の状態か否かを判定する方法を
図15により説明する。
図15は、魚の遊泳速度も考慮して、魚が摂餌中の状態か否かを判定する方法を説明するためのフロー図である。
【0123】
まず、S1500にて、行動量算出部36は、飼育水槽2の領域Tを飼育水槽カメラ5にて撮像した撮像画像を、通信部20を介して飼育水槽カメラ5から取得する。
【0124】
次に、S1502にて、行動量算出部36は、複数の撮像画像に対して動画像処理を行うことにより魚の行動量(遊泳速度)を算出する。行動量算出部36は、周知の画像検出方法、例えば、オプティカルフローのアルゴリズムを用いて、魚の遊泳速度を算出してよい。オプティカルフローは、常時動作させていてよい。
【0125】
オプティカルフローは、画像における物体の見かけ速度の分布を示したものである。撮像画像間のオプティカルフローを推定して、映像における物体の速度を測定できる。
図16は、オプティカルフローを用いて、2フレーム間の魚の動きを2次元ベクトルで表現した図である。このような手法を用いて、行動量算出部36は、複数の撮像画像に対して動画像処理を行うことにより遊泳速度を算出できる。
【0126】
図15に戻り、S1504にて、判定部32は、魚の行動量(遊泳速度)が所定値を下回っているか否かを判定する。このとき、給餌装置4は魚への給餌を行っているものとする。
【0127】
S1504にてNOの場合(S1506)、魚は摂餌中であり、行動量が多いことを示す。そこで、判定部32は、魚は「摂餌中である」と判定する。
【0128】
S1504にてNOの場合(S1508)、魚は十分に摂餌し、行動量が少ないことを示す。そこで、判定部32は、「摂餌中ではない」と判定する。
【0129】
S1504、S1506、及びS1508の各ステップに関して、より具体的に
図17を用いて説明する。
図17は、同じ時刻における、分散度数比と魚の遊泳速度を比較した図である。
【0130】
参照番号1700に示す図は、横軸が時刻を示し、縦軸が分散度数比を示す。グラフ中のFで示す時間帯は給餌中を示す。参照番号1710に示す図は、横軸が時刻を示し、縦軸が魚の遊泳速度(pixel)を示す。グラフ中のFで示す時間帯は給餌中を示す。参照番号1700と参照番号1710とで時刻を揃えている。
【0131】
図17から分かるように、遊泳速度は、給餌中Fの当初は上昇するが、暫く時間が経過すると下降する。この魚の性質を利用して、判定部32は、給餌装置4から給餌を行っている状態において魚の遊泳速度が所定値を下回った場合に、魚が摂餌中の状態ではないと判定する。一例として、給餌を開始して時間が経過すると、魚は満腹感を感じ遊泳速度が低下する。そこで、魚の遊泳速度が給餌開始直後の50%にまで低下した場合、判定部32は、魚が摂餌中の状態ではないと判定する。所定値は、給餌量、魚の個体数、季節、及び/又は魚の成長具合等によって適宜設定してよい。所定値は、記録部40に記録されていてよい。
【0132】
なお、魚の遊泳速度を測定する方法は、オプティカルフローに限定されず、フレーム間差分又は個体追跡に基づく画像解析手法などの他の方法であってもよい。
【0133】
以上のように、判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かを以下(1)、(2)、及び/又は(3)に基づいて判定することができる。
【0134】
(1)飼育水槽カメラ5が撮像した飼育水槽2の撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて、当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量。
【0135】
(2)残餌カメラ6が撮像した残餌回収器7の残餌撮像画像に基づいて特定される残餌量。
【0136】
(3)飼育水槽カメラ5が撮像した飼育水槽2の複数の撮像画像に対して動画像処理を行うことにより算出された魚の行動量。
【0137】
判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かを、(1)乃至(3)の個別の結果に基づいて判定できる。また、判定部32は、魚が摂餌中の状態であるか否かを、(1)から(3)から抽出される少なくとも2つ以上の結果に基づいて判定することもできる。例えば、判定部32は、(1)及び(2)、(2)及び(3)、又は(1)及び(3)の結果に基づき魚が摂餌中の状態であるか否かを判定できる。さらに、判定部32は、(1)乃至(3)すべての結果に基づき魚が摂餌中の状態であるか否かを判定できる。判定部32が(1)乃至(3)の何れの結果に魚が摂餌中の状態であるか否かを判定するかは、魚の種類、魚の成長具合、及び/又は季節等によって適宜変更してよい。ただし、魚が摂餌中の状態か否かを、(1)から(3)から抽出される少なくとも2つ以上の結果に基づいて判定することによって、養殖システム1及び給餌制御装置10は、魚に対する給餌をより適正に制御できるという効果が得られる。
【0138】
以上により、本開示に係る、給餌制御装置10及び給餌制御装置10を備えた養殖システム1は、魚に対する給餌を従来よりも適正に制御することができる。水産養殖業が直面する最大の課題は、魚の飼料代と言われている。その背景として、魚の飼料に用いられる魚粉費が過去15年で3倍にまで高騰していることが挙げられている。飼料代は、総コストの半分を占め、魚種によっては8割に達することもある。
【0139】
この点、養殖システム1及び給餌制御装置10は、前記の構成を備えることにより、魚に対する給餌を従来よりも適正に制御でき、その結果、魚の飼料代を低減できる。
【0140】
また、養殖システム1及び給餌制御装置10は、飼料の無駄を削減することもでき、より環境に優しい陸上養殖及び海面養殖を実現することができる。
【0141】
さらに、養殖システム1及び給餌制御装置10は、給餌時間及び給餌量を適正に設定できるため、飼育員の負荷を低減できる。
【0142】
(異常報知)
次に、
図3に戻り、異常報知部37について説明する。
【0143】
異常報知部37は、給餌装置4の異常(動作不良等)を報知することができる。例えば、予め設定された給餌装置4の給餌開始予定時刻を所定時間過ぎているにも関わらず、魚が摂餌中の状態でないと判定部32が判定した場合、異常報知部37は、給餌装置4において異常が発生していることを報知してよい(例えば、
図9のS912)。異常報知部37は、メール等の電子的手段及び/又は音声等によって、給餌装置4に異常が発生していることを、飼育員及び/又は養殖システム1の運営者等に報知してよい。異常報知部37は、異常が発生していることを表示部60に表示することもできる。
【0144】
給餌装置が故障すると、魚の死活に直結する。この点、給餌制御装置10は、異常報知部を備えることにより、判定部32による判定結果を、給餌装置4の異常の有無と関連付けることができる。これにより、給餌制御装置10は、養殖システム1をより安全に運転することができる。
【0145】
(給餌制御方法)
次に、本開示に係る給餌制御方法の一例を
図18により説明する。
図18は、本開示に係る給餌制御方法の一例を説明するためのフローシートである。
【0146】
まず、S1800において、養殖システム1の運転を開始する。
【0147】
次に、S1802において、飼育水槽カメラ5が、飼育水槽2の領域Tを撮像し、撮像画像(撮像データ)を給餌制御装置10に送信する。また、残餌カメラ6が、排水に含まれる残餌を回収する残餌回収器7を撮像し、残餌撮像画像(撮像データ)を給餌制御装置10に送信する。飼育水槽カメラ5及び残餌カメラ6は、養殖システム1の運転開始後、常時、画像を撮像することができる。
【0148】
続いて、S1804において、判定部32が、第1指標値と第2指標値の大きさの違いを示す摂餌指数を算出する。
【0149】
続いて、S1806にて、判定部32が、給餌装置4に動作不良があるかどうかを判定する。一例として、予め設定された給餌装置4の給餌開始予定時刻を所定時間過ぎているにも関わらず、魚が摂餌中の状態でないと判定部32が判定した場合、判定部32は、給餌装置4に動作不良があると判定する。その後、異常報知部37が、給餌装置4において異常が発生していることを報知する。S30では、後述するS40における残餌量も判定材料に含めてもよい。
【0150】
S1808では、残餌量特定部34が、残餌撮像画像に基づいて、残餌量を算出する。
【0151】
S1810では、行動量算出部36が、複数の撮像画像に対して動画像処理を行うことにより魚の行動量(遊泳速度)を算出する。
【0152】
S1806、S1808、及びS1810は、並行処理されてよいし、所定の順序に従って実行されてもよい。
【0153】
S1812では、S1804乃至S1810の結果を受けて、判定部32が、給餌装置4の運転継続の可否を判定する。判定部32は、摂餌指数、残餌量、及び/又は遊泳速度の各々の閾値を比較して、給餌装置4の運転継続又は運転停止を判定する。判定部32は、摂餌指数、残餌量、又は遊泳速度の各々の閾値に基づいて、給餌装置4の運転継続又は運転停止を判定することもできる。
【0154】
このようにして、本開示に係る養殖システム1は、養殖する魚が摂餌中及び通常時(非摂餌時)の何れの遊泳状態であるかを画像解析し、その結果に基づいて給餌装置の動作を制御して魚に対する給餌を適正に制御する。
【0155】
(ソフトウェアによる実現例)
給餌制御装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部30に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0156】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0157】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0158】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0159】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0160】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る給餌制御装置は、水生生物が含まれる水槽を第1の撮像装置にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量を算出する第1算出部と、前記第1算出部が算出した統計量に基づいて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記水槽に給餌する給餌装置の動作を制御する動作制御部と、を備える。
【0161】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る給餌制御装置は、水生生物に対する給餌を適正に制御することができる。
【0162】
本開示の態様2に係る給餌制御装置は、前記の態様1において、前記判定部が、前記複数の分割領域のうち、所定の第1の区分に分類される前記統計量を有する前記分割領域の数に応じた第1指標値と、前記第1の区分よりも大きい統計量の範囲を示す所定の第2の区分に分類される前記統計量を有する前記分割領域の数に応じた第2指標値と、の値の大きさの違いを示す摂餌指数を用いて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する。
【0163】
前記の構成によれば、判定部は、水生生物が摂餌中の状態であるか否かを摂餌指数により高い精度で判定することができる。
【0164】
本開示の態様3に係る給餌制御装置は、前記の態様2において、前記第2の区分における統計量の下限値は、前記第1の区分における統計量の上限値の2倍以上である。
【0165】
前記の構成によれば、判定部は、水生生物が摂餌中の状態であるか否かをより高い精度で判定することができる。
【0166】
本開示の態様4に係る給餌制御装置は、前記の態様1において、前記撮像画像は、前記水槽の水面を平面視した状態を示す画像であり、前記給餌装置から餌が供給される領域を含む。
【0167】
前記の構成によれば、前記撮像画像は、魚が餌に食いつき様子をより確実に撮像することができる。その結果、本開示の態様4に係る給餌制御装置は、水生生物に対する給餌をより適正に制御することができる。
【0168】
本開示の態様5に係る給餌制御装置は、前記の態様1から4の何れかにおいて、前記水槽からの排水流路に設置されて排水に含まれる残餌を回収する残餌回収器を撮像した残餌撮像画像に基づいて、残餌量を特定する残餌量特定部をさらに備え、前記判定部は、前記統計量および前記残餌量に基づいて前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する。
【0169】
前記の構成によれば、判定部は、統計量及び残餌量という二つの指標に基づいて前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定するため、より高い精度で判定することができる。
【0170】
本開示の態様6に係る給餌制御装置は、前記の態様5において、給餌動作における時間当たりの給餌量の設定を含む給餌スケジュールに基づいて前記水槽に給餌する前記給餌装置に対して、前記残餌量に基づいて前記時間当たりの給餌量を調整する調整部をさらに備える。
【0171】
前記の構成によれば、本開示の態様6に係る給餌制御装置は、飼料の無駄を削減でき、飼料代の節約、環境に優しい陸上養殖の実現、といった効果を奏することもできる。
【0172】
本開示の態様7に係る給餌制御装置は、前記の態様1から6の何れかにおいて、複数の前記撮像画像に対して動画像処理を行うことにより前記水生生物の行動量を算出する第2算出部をさらに備え、前記判定部は、前記給餌装置から給餌を行っている状態において前記行動量が所定値を下回っている場合に、前記水生生物が摂餌中の状態ではないと判定する。
【0173】
前記の構成によれば、判定部は、水生生物の行動量にも基づいて水生生物より高い精度で判定することができる。
【0174】
本開示の態様8に係る給餌制御装置は、前記の態様1から7の何れかにおいて、前記給餌装置の予め設定された給餌開始予定時刻を所定時間過ぎているにも関わらず、前記水生生物が摂餌中の状態でないと前記判定部が判定した場合、前記給餌装置に異常が発生していることを報知する異常報知部をさらに備える。
【0175】
給餌装置が故障すると、水生生物の死活に直結する。この点、本開示の態様8に係る給餌制御装置は、前記の構成を備えることにより、判定部による判定結果を、給餌装置の異常の有無と関連付けることができため、給餌制御装置が適用される養殖システムをより安全に運転することができる。
【0176】
本開示の態様9に係る給餌制御方法は、水生生物が含まれる水槽を第1の撮像装置にて撮像した撮像画像における複数の分割領域のそれぞれについて当該分割領域内の画素値の分布の特徴を示す統計量を算出する第1算出ステップと、前記第1算出ステップにて算出した統計量に基づいて、前記水生生物が摂餌中の状態であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおける判定結果に基づいて、前記水槽に給餌する給餌装置の動作を制御する動作制御ステップと、を含む。
【0177】
前記の構成によれば、本開示の態様9に係る給餌制御方法は、水生生物に対する給餌を適正に制御することができる。
【0178】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、それぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0179】
1 養殖システム
2 飼育水槽
3 オーバーフロー槽
3a 第1配管
3b 第2配管
4 給餌装置
5 飼育水槽カメラ(第1の撮像装置)
6 残餌カメラ(第2の撮像装置)
7 残餌回収器
10 給餌制御装置
20 通信部
30 制御部
31 分散値算出部(第1算出部)
32 判定部
33 動作制御部
34 残餌量特定部
35 調整部
36 行動量算出部(第2算出部)
37 異常報知部
40 記録部
50 入力部
60 表示部