(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060546
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240424BHJP
E05B 77/04 20140101ALI20240424BHJP
【FI】
B60J5/00 H
B60J5/00 Q
E05B77/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167995
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦彦
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
(57)【要約】
【課題】側突が発生した場合におけるドアの開放を防止しつつ、ドアの剛性を維持させる。
【解決手段】車両用ドア1の内部空間RSにおいて、車両前後方向に延在したビーム210と、車両用ドア1の内板を構成するインナパネル部20と、ビーム210に結合され、側方からの衝突が発生した際に、ドアラッチ機構部100の動作を制限するレバーロックブラケット230と、車両上下方向に形成された縦壁部240aおよび240bを車両前後両側に有するビームブラケット240と、を備え、ビームブラケット240において、車両後方側の縦壁部240bは、車幅方向外側に向かって形成され、車両前方側の縦壁部240aは、車幅方向外側に向かって車両前方側に傾斜する傾斜面SLが形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアラッチ機構が車体側に設けられたストライカと係合して閉状態にさせる車両用ドアにおいて、
前記車両用ドアの内部において、車両前後方向に延在したビームと、
前記車両用ドアの内板としてのインナパネル部と、
前記ビームと結合され、側方からの衝突が発生した際に、前記ドアラッチ機構の動作を制限するレバーロックブラケットと、
車両上下方向に形成された縦壁面を車両前後方向両側に有し、前記縦壁面が前記ビームの車両後方側端部に結合され、前記ビームを前記インナパネル部に固定するビームブラケットと、
を備え、
前記レバーロックブラケットは、前記ビームブラケットよりも車両前方側に配設され、
前記ビームブラケットにおいて、車両後方側の前記縦壁面は、車幅方向外側に向かって形成され、車両前方側の前記縦壁面は、車幅方向外側に向かって車両前方側に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用ドアにおいては、側面から衝突を受けても、車室内側への変形量を低減するような車体構造が要求されている。
自動車などの車両用ドアは、一般的には、鋼板製の板状パネルによって構成されている。車両用ドアの車幅方向外側にはアウタパネル部が配設され、車幅方向内側にはインナパネル部が配設され、相互に組み合わされ、溶接等により結合されている。
【0003】
車両用ドアは、側面からの衝突(以下、側突と記載する)に対する剛性を向上させるために、アウタパネル部とインナパネル部との間の空間(車両用ドア内部)に、ビームを車両前後方向に延在させることにより、側突による衝撃を吸収させる構造がとられている。車両用ドア内部にビームが配設された構造においては、側突が発生した場合、アウタパネル部およびビームが衝突エネルギーを吸収しながら変形し、さらに、インナパネル部に当たることによって、衝突エネルギーが吸収される。
【0004】
一方、この種の車両用ドアにおいては、側突が発生した場合に、車両用ドアと車体との係合が解除されないように構成されていることも重要である。
例えば、特許文献1においては、側突が発生し、車両の外部から衝撃荷重が入力された場合に、規制部材が、車両用ドア本体と車体との係合を解除するロッドの変位を規制することによって、車両用ドアと車体との係合が解除され、車両用ドアが開状態となるのを防止する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、規制部材が、接続部においてビームに接続されているため、側突が発生し、車両の外部から衝撃荷重が入力された場合に、スティフナ(ビーム)が変形し、規制部材とロッドとの相対位置がずれてしまう虞があるという課題があった。また、規制部材およびビームの相対位置を確保する場合には、規制部材が大型化し、ビームとの接続部およびロッド形状が複雑化する虞があるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、側面からの衝突が発生した場合におけるドアの開放を防止しつつ、ドアの剛性を維持させる車両用ドアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、ドアラッチ機構が車体側に設けられたストライカと係合して閉状態にさせる車両用ドアにおいて、前記車両用ドアの内部において、車両前後方向に延在したビームと、前記車両用ドアの内板を構成するインナパネル部と、前記ビームに結合され、側方からの衝突が発生した際に、前記ドアラッチ機構の動作を制限するレバーロックブラケットと、車両上下方向に形成された縦壁面を車両前後両側に有し、前記縦壁面が前記ビームの車両後方側端部に結合され、前記ビームを前記インナパネル部に固定するビームブラケットと、を備え、前記レバーロックブラケットは、前記ビームブラケットよりも車両前方側に配設され、前記ビームブラケットにおいて、車両後方側の前記縦壁面は、車幅方向外側に向かって形成され、車両前方側の前記縦壁面は、車幅方向外側に向かって車両前方側に傾斜する傾斜面が形成されている車両用ドアを提案している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、側方からの衝突が発生した場合におけるドアの開放を防止しつつ、ドアの剛性を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアを車幅方向外側から見た概要構成図である。
【
図2】
図1に示されたDL部を拡大しアウタパネルを透して車幅方向外側から見た概要構成図である。
【
図3】
図2に示されたA-A線での断面をA方向から見た断面図である。
【
図4】
図3に示されたB-B線での断面をB方向から見た断面図である。
【
図5】側方からの衝突が発生した場合の
図2に示されたA-A線での断面をA方向から見た断面図である。
【
図6】側方からの衝突が発生した場合の
図5に示されたC-C線での断面をC方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1から
図6を用いて、本実施形態に係る車両用ドア1が適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、
図1に示す車両Vの前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0012】
<実施形態>
図1~
図4を用いて、車両用ドア1の構成について説明する。なお、車両Vの正面視において右方側に装着される車両用ドア1を例示して説明する。
<車両用ドア1の構成>
図1に示すように、車両用ドア1は、アウタパネル部10と、インナパネル部20と、ドアウインド部30と、ドアサッシュ部40と、アウタハンドル部50と、インナハンドル部60と、ドアラッチ機構部100と、ドアビーム部200と、を含んで構成されている。車両用ドア1の車幅方向内側には、車両Vの強固な骨格をなすフレームが構成されている。車両用ドア1の車両前方部にはフロントピラー部FP、その車両後方部にはセンターピラー部CP、その車両下方部にはサイドシル部SSが設けられている。また、車両用ドア1は、ヒンジHGによって、フロントピラー部FPに固定されている。
【0013】
(アウタパネル部10について)
アウタパネル部10は、車両用ドア1の外板を構成する板状の部材であり、車幅方向外側に配置される。アウタパネル部10は、金属板等をプレスして作成されている。
【0014】
(インナパネル部20について)
インナパネル部20は、車両用ドア1の内板を構成する板状の部材であり、アウタパネル部10よりも車幅方向内側に配置される。インナパネル部20は、金属板等をプレスして形成されている。インナパネル部20には、剛性を確保するためにリブ20aが形成されている。
アウタパネル部10とインナパネル部20とは、相互に組み合わされ、車両前後上下方向端部それぞれにおいて、溶接等により結合されている。また、車両用ドア1の内部には、アウタパネル部10とインナパネル部20とに囲まれた内部空間RSが形成されている。車両用ドア1の内部としての内部空間RSには、後述するドアラッチ機構部100、ドアビーム部200等が収容されている。
【0015】
(ドアウインド部30について)
ドアウインド部30は、車両用ドア1において、昇降可能に装着された板状の強化ガラスである。ドアウインド部30が上昇した状態においては、後述するドアサッシュ部40を閉塞する。ドアウインド部30は、車両Vの側面視において、その前端縁部および後端縁部がドアサッシュ部40の傾斜に合わせて形成された略台形を成している。
【0016】
(ドアサッシュ部40について)
ドアサッシュ部40は、車両用ドア1の車両上方部にドアウインド部30を囲んで設けられている。ドアサッシュ部40は、車両用ドア1の車両前方部および車両後方部において、アウタパネル部10とインナパネル部20と、に溶接等により結合されている。
【0017】
(アウタハンドル部50およびインナハンドル部60について)
図2に示すように、アウタハンドル部50は、ユーザーが、車室外から車両用ドア1を開く際に操作を行う把持部51と、ロッド機構部52と、ロッド53と、を含んで構成されている。
把持部51は、樹脂あるいは金属を部材として車両前後方向を長手方向とする略矩形に形成されている。把持部51は、例えば、車両上方側の車両前後方向に回転軸を有している。把持部51は、図示しないアームによって、把持部51の車幅方向内側に配設されているロッド機構部52と接続されている。
ロッド機構部52は、把持部51の操作を、ロッド53を介してドアラッチ機構部100に伝達させる図示しない機構部を含んで構成されている。ロッド機構部52には、ロッド53の一端が接続され、ロッド53の他端は、後述するドアラッチ機構部100と接続されている。
また、インナハンドル部60には、ユーザーが、車室内から車両用ドア1を開く際に操作を行う把持部61と、ロッド機構部62と、ロッド63と、を含んで構成されている。
把持部61は、樹脂あるいは金属を部材として車両前後方向を長手方向とする略矩形に形成されている。把持部61は、図示しないアームによって、把持部61の車幅方向外側に配設されているロッド機構部62と接続されている。
ロッド機構部62は、把持部61の操作を、ロッド63を介してドアラッチ機構部100に伝達させる図示しない機構部を含んで構成されている。ロッド機構部62は、ロッド63の一端と接続され、ロッド63の他端は、ドアラッチ機構部100と接続されている。
【0018】
(ドアラッチ機構部100について)
ドアラッチ機構部100は、ラッチ機構部110と、ラッチアーム部120と、ラッチレバー部130と、を含んで構成されている。ドアラッチ機構部100は、車両用ドア1内部に収容され、インナパネル部20の車幅方向外側に固定されている。
ラッチ機構部110は、車両用ドア1内部に収容され、インナパネル部20の車幅方向外側に固定されている。ラッチ機構部110は、樹脂あるいは金属の部材で形成されたカバーに収容されており、アウタハンドル部50からのロッド53と、インナハンドル部60からのロッド63と、が接続されている。ラッチ機構部110の内部には、ハンドル部の操作によってラッチアーム部120を動作させる図示しない解放機構部と、ラッチアーム部120の動作とラッチレバー部130との動作を連動させる図示しない連動機構部と、を含んで構成されている。また、車両後方側縦壁面には、車両後方側に突出する係合部110aが形成されている。
ラッチアーム部120は、車両用ドア1が閉じられた際に、車両本体に備えられているストライカSTと係合し、車両用ドア1をロックする。ラッチアーム部120は、金属製の高い剛性を有する棒状の部材で形成されている。ラッチアーム部120は、ラッチ機構部110の車両後方側縦壁面から突出して設けられ、例えば、先端部は車幅方向内側に屈曲して係合部110aに収容されている。
ラッチレバー部130は、樹脂あるいは金属の部材で形成された、例えば、車両前後方向に延在した略矩形形状をなしている。ラッチレバー部130は、ドアラッチ機構部100の車両下方外側に、ドアラッチ機構部100の外側面から突出して配設されている。ラッチアーム部120とラッチレバー部130とは、ラッチ機構部110の内部において、連動可能に接続されている。ラッチアーム部120がストライカSTと係合し、車両用ドア1をロックした場合には、ラッチレバー部130は、ドアラッチ機構部100に収容された状態となる。また、ラッチアーム部120がストライカSTを解放し、車両用ドア1をロック解除状態の場合には、ラッチレバー部130は、ドアラッチ機構部100の車両下方側に突出した状態となる。
【0019】
(ドアビーム部200について)
ドアビーム部200は、ビーム210と、固定ブラケット220と、レバーロックブラケット230と、ビームブラケット240と、を含んで構成されている。
【0020】
(ビーム210について)
ビーム210は、金属製の高い剛性を有する、断面が円形のパイプ状の部材で形成されている。ビーム210は、車両用ドア1の車両上下方向中央部に、車両前方部から車両後方部を横断して車両前後方向に延在している。また、ビーム210は、車両前方端部に結合された固定ブラケット220および車両後方端部に結合されたビームブラケット240を介して、インナパネル部20に固定されている。
【0021】
(固定ブラケット220について)
固定ブラケット220は、金属等の板材をプレス加工等により形成された固定用金具である。固定ブラケット220には、ビーム210の車両前方側端が溶接等により結合されている。そして、固定ブラケット220は、ボルト等によりインナパネル部20の車両前方側に固定されている。固定ブラケット220が固定されているインナパネル部20には、インナパネル部20の剛性を高める、例えば、リブ加工等が形成されている。また、固定ブラケット220が配設されている車幅方向内側には、車両Vの骨格をなす高い剛性を有するフロントピラー部FPが設けられている。
【0022】
(レバーロックブラケット230について)
レバーロックブラケット230は、金属等の板材をプレス加工等して形成された金具である。レバーロックブラケット230は、車両上下方向に延在した板状の略矩形形状をしている。レバーロックブラケット230は、後述するビームブラケット240よりも車両前方側において、ビーム210と溶接等により結合されている。
図3に示すように、レバーロックブラケット230は、その車両上方側において、車両上部外側に向けて屈曲し、さらに、その車両上方側において、その車両上方に向けて屈曲している。また、レバーロックブラケット230は、その車両下方側の車両前後方向両側部において、車両下方側に向けて略矩形状に突出し、その車両下方側の突出端において、レバーロックブラケット230は、ビーム210と溶接等により結合されている。また、レバーロックブラケット230は、ドアラッチ機構部100の車両下方側に配設されており、レバーロックブラケット230の車両上方端部は、ドアラッチ機構部100のラッチレバー部130の車両下部外側に近接して配設されている。
【0023】
(ビームブラケット240について)
ビームブラケット240は、金属等の板材をプレス加工等して形成された金具である。ビームブラケット240は、車両上下方向に延在した板状の略矩形形状をしている。ビームブラケット240は、ビーム210の車両後方端部において、ビーム210と溶接等により結合されている。また、ビームブラケット240は、車幅方向内側において、インナパネル部20にボルト等により固定されている。ビームブラケット240が固定されているインナパネル部20には、剛性を高める、例えば、リブ加工等が形成されている。
また、
図4に示すように、ビームブラケット240の車両上下方向中央部の車両前後方向両端部には、車幅方向外側に向けて突出した略矩形状の縦壁部が形成されている。車両前方側の縦壁部240aは、ビーム210の軸方向と直交する車幅方向を向いた垂直軸に対して、車両前方側に傾斜している。その傾斜面SLは、例えば、ビーム210の軸方向と直交する車幅方向を向いた垂直軸に対して、30度~60度の角度ALに形成されている。また、車両後方側の縦壁部240bは、車幅方向外側に向かって形成されており、ビーム210の軸方向に対して車幅方向を向いた略直角に形成されている。そして、ビームブラケット240は、縦壁部240aおよび縦壁部240bの車両下方端部において、ビーム210と溶接等により結合されている。
【0024】
<作用・効果>
以下、
図5および
図6を用いて、側方からの衝突(以下、側突と記載する)が発生した場合の作用について説明する。
【0025】
車両用ドア1が閉状態である車両Vに側突が発生した場合には、
図5に示すように、矢印SIで示す方向から衝突エネルギーが伝達される。衝突エネルギーは、アウタパネル部10が変形させ、ビーム210に伝達される。ビーム210に伝達された衝突エネルギーは、ビーム210の車両前後方向端に結合された固定ブラケット220およびビームブラケット240に伝達される。
固定ブラケット220に伝達された衝突エネルギーは、インナパネル部20を変形させながらインナパネル部20を車幅方向内側に向けて押す。そして、衝突エネルギーは、インナパネル部20をフロントピラー部FPに当接させ、インナパネル部20を介してフロントピラー部FPに伝達され分散する。
【0026】
また、ビームブラケット240に伝達された衝突エネルギーは、ビーム210に結合されている縦壁部240aおよび縦壁部240bを車幅方向内側に向けて押す。ビームブラケット240の車両前方側の縦壁部240aには、傾斜面SLが形成されているため、縦壁部240aがインナパネル部20と固定されている側の辺を支点として、車両前部内側に向けて倒れ込む。また、ビームブラケット240の車両後方側の縦壁部240bは、車幅方向内側に向かって変形しながら、縦壁部240bがインナパネル部20と固定されている側の辺を支点として、車両前部内側に向けて倒れ込む。
ビームブラケット240が倒れ込むことにより、衝突エネルギーは、ビームブラケット240を介してインナパネル部20に伝達され、インナパネル部20を変形させながらインナパネル部20を車幅方向内側に向けて押す。そして、衝突エネルギーは、インナパネル部20をセンターピラー部CPおよびサイドシル部SSに当接させ、インナパネル部20を介してセンターピラー部CPおよびサイドシル部SSに伝達され分散する。
【0027】
以上のように、側突が発生した場合には、ビーム210に伝達された衝突エネルギーは、固定ブラケット220および変形したビームブラケット240を介して、車両Vの骨格をなすフロントピラー部FP、センターピラー部CP、およびサイドシル部SSに伝達され分散されることによって、吸収される。
【0028】
一方、車両用ドア1が閉状態である場合には、ドアラッチ機構部100のラッチアーム部120は、車体側に設けられたストライカSTに係合し、車両用ドア1は、ロック状態となる。このとき、ドアラッチ機構部100のラッチレバー部130は、ラッチアーム部120と連動し、ドアラッチ機構部100に収容された状態となる。また、ラッチレバー部130がドアラッチ機構部100に収容された状態にある場合には、ラッチアーム部120は、ストライカSTに係合した状態が維持され、ドアラッチ機構部100は、ラッチレバー部130をストライカSTから解放した状態に移行することはできない。
【0029】
車両用ドア1が閉状態で側突が発生した場合には、ビームブラケット240よりも車両前方側に結合されているレバーロックブラケット230は、ビーム210が車幅方向内側に押されることにより、車両前部内側に向けて押される。さらに、ビームブラケット240が車両前部内側に向けて倒れ込むことによって、レバーロックブラケット230は、車両前部内側に向けて倒れ込む。そして、レバーロックブラケット230の車両上方側端は、レバーロックブラケット230の車両前部内側に配設されているドアラッチ機構部100の車両下方側に入り込む。
図6に示すように、レバーロックブラケット230がドアラッチ機構部100の車両下方側に入り込む位置は、ビームブラケット240の形状により決まる。ビームブラケット240の車両前方側の縦壁部240aには、傾斜面SLが形成されているため、縦壁部240aにおけるインナパネル部20と固定されている側の辺を支点として、縦壁部240aは、車両前部内側に向けて倒れ込む。したがって、レバーロックブラケット230は、確実に車両下方側に入り込む。レバーロックブラケット230は、ラッチレバー部130の車両下方部に近接あるいは密接することによって、ラッチレバー部130をドアラッチ機構部100に収容された状態に制限する。そして、ラッチアーム部120は、ストライカSTに係合した状態が維持されることによって、車両用ドア1を閉状態にロックした状態となる。
【0030】
以上、本実施形態に係る車両用ドア1は、ドアラッチ機構部100が車体側に設けられたストライカSTと係合して閉状態にさせる車両用ドア1において、車両用ドア1の内部空間RSにおいて、車両前後方向に延在したビーム210と、車両用ドア1の内板を構成するインナパネル部20と、ビーム210に結合され、側方からの衝突が発生した際に、ドアラッチ機構部100の動作を制限するレバーロックブラケット230と、車両上下方向に形成された縦壁面としての縦壁部240aおよび縦壁部240bを車両前後両側に有し、縦壁部240aおよび縦壁部240bがビーム210の車両後方側端部に結合され、ビーム210をインナパネル部20に固定するビームブラケット240と、を備え、レバーロックブラケット230は、ビームブラケット240よりも車両前方側に配設され、ビームブラケット240において、車両後方側の縦壁部240bは、車幅方向外側に向かって形成され、車両前方側の縦壁部240aは、車幅方向外側に向かって車両前方側に傾斜する傾斜面SLが形成されている。
側突が発生した場合には、ビーム210に衝突エネルギーが伝達され、ビーム210は、車幅方向内側に押される。ビームブラケット240は、ビーム210から伝達された衝突エネルギーによって、車幅方向内側に押される。ビームブラケット240の車両前方側の縦壁部240aには、傾斜面SLが形成されているため、縦壁部240aにおけるインナパネル部20と固定されている側の辺を支点として、縦壁部240aは、車両前部内側に向けて倒れ込む。そして、ビーム210は、車両前部内側に向けて倒れ込む。ビーム210の動きによって、ビーム210にビームブラケット240よりも車両前方側において結合されているレバーロックブラケット230は、レバーロックブラケット230の車両前部内側に配設されているドアラッチ機構部100の車両下方側に確実に入り込む。
また、固定ブラケット220およびビームブラケット240の車幅方向内側には、フロントピラー部FPおよびセンターピラー部CPが設けられており、ビームブラケット240が変形することによって、ビーム210は、高い剛性を有するフロントピラー部FPおよびセンターピラー部CPに両端部が突き当たる。
つまり、側突が発生した場合には、ビーム210の車両後方端部に結合されているビームブラケット240が、車両前部内側に向かって変形することによって、レバーロックブラケット230は、ドアラッチ機構部100の車両下方側に確実に入り込むことができる。したがって、ドアラッチ機構部100の車両下方外側に設けられたラッチレバー部130の車両下方側に入り込み、その動作を制限することによって、ビームブラケット240は、ラッチレバー部130をドアラッチ機構部100に収容された状態に制限させることができる。そして、車両用ドア1を確実にロック状態に保つことができる。また、ビームブラケット240が変形することによって、ビーム210は、高い剛性を有するフロントピラー部FPおよびセンターピラー部CPに確実に両端部が突き当たることによって、衝突エネルギーをフロントピラー部FPおよびセンターピラー部CPに伝達し分散させることができる。
そのため、側突が発生した場合におけるドアの開放を防止しつつ、ドアの剛性を維持させることができる。
【0031】
なお、本発明の実施形態として、ドアラッチ機構部100は、アウタハンドル部50からのロッド機構部52と、インナハンドル部60からのロッド機構部62によって解放動作をさせる手動式を例示しているが、制御回路を搭載し、電動モータ等を駆動することによって解放動作をさせる電動式であってもよい。
【0032】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
10;アウタパネル部
20;インナパネル部
30;ドアウインド部
40;ドアサッシュ部
50;アウタハンドル部
60;インナハンドル部
100;ドアラッチ機構部
130;ラッチレバー部
200;ドアビーム部
210;ビーム
220;固定ブラケット
230;レバーロックブラケット
240;ビームブラケット
CP;センターピラー部
FP;フロントピラー部
HG;ヒンジ
RS;内部空間
SL;傾斜面
SS;サイドシル部
ST;ストライカ
V;車両