(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060565
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】銅エッチング液組成物及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/18 20060101AFI20240424BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20240424BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240424BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C23F1/18
H01L21/308 F
H01L21/306 F
H05K3/06 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096895
(22)【出願日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2022167537
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511224852
【氏名又は名称】株式会社ファシリティ
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】三井 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】岸 一之
【テーマコード(参考)】
4K057
5E339
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA12
4K057WB04
4K057WE03
4K057WE25
4K057WG01
4K057WG03
4K057WM03
4K057WM13
4K057WN01
5E339AD01
5E339BC02
5E339BD03
5E339BD11
5E339BE13
5E339GG02
5F043AA26
5F043BB18
5F043EE04
(57)【要約】
【課題】本件発明は、硫酸-過酸化水素系エッチング液組成物に塩素イオンを含有し、エッチングすることで、サイドエッチング量を抑制でき、サイドエッチングを直線的に施せるエッチング液組成物とエッチング方法の提供を目的とする。
【解決手段】上記の目的を達成するために、硫酸と、濃度35%の過酸化水素水と、塩素イオンとを含有することを特徴とするエッチング液組成物であって、前記エッチング液組成物を用いて、パドル撹拌やノズル噴流撹拌を備えたエッチング槽で、銅を浸漬法でエッチングを行なうことを特徴とするエッチング方法を採用する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅をエッチングするための銅エッチング液組成物であり、
硫酸濃度を1g/L以上500g/L以下、濃度35%の過酸化水素水を用い過酸化水素水濃度を1mL/L以上500mL/L以下、水溶性塩化物である塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、塩化銅などのいずれか1種以上を用いて塩素イオン濃度を10ppm以上20000ppm以下の組成を備えることを特徴とする銅エッチング液組成物。
【請求項2】
銅をエッチングするための銅エッチング液組成物を用いた浸漬エッチング方法であって、エッチング槽内に請求項1に記載の銅エッチング液組成物を満たし、槽内に銅張積層板を浸漬してエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項3】
前記エッチング槽内のエッチング液組成物に対し、パドル撹拌及びノズル噴流撹拌を用いてエッチング液組成物の緩やかな流れを形成した請求項2に記載のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、銅をエッチングするための銅エッチング液組成物及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、ディスプレイ装置、プリント基板、及びICカードなどは、基板上に金属薄膜などをパターン化することで金属薄膜素子などを形成する。
【0003】
金属薄膜を配線などの微細構造にパターン化する加工技術として、化学薬品によるエッチングによってパターン化するウェットエッチング法と、イオンエッチングまたはプラズマエッチングなどのドライエッチング法などがある。
【0004】
また、ウェットエッチング法は、ドライエッチング法と比べて、大面的または様々な形状の基板にも均一なエッチングを行なうことができるため、薄膜パターンの製造方法として用いられている。
【0005】
上述の基板上に金属薄膜に用いられる金属は、薄膜パターンへの加工性が容易である銅や、チタンなどの金属が好まれている。
【0006】
銅にパターンを形成するエッチングは、スプレー式のエッチングを行なうことが主流であり、代表的なエッチング液組成物として、硫酸-過酸化水素系のエッチング液組成物が用いられる。しかし、このエッチング液組成物を用いたスプレー式のエッチングは、サイドエッチング量が多く、薄膜ファインパターン等の回路形成が困難になってしまう。
【0007】
銅にエッチングを行ったときに、サイドエッチング量を抑えるエッチング液組成物として、特許文献1の実施例1に、純水0.949kgと、過酸化水素0.033kgと、硫酸0.017kg、およびアゾール化合物として5-アミノ-1H-テトラゾール0.0003kgを混合し調製したエッチング液組成物を用いて、スプレー式でエッチングを行なう方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、開示されているスプレー式のエッチングでは、縦方向、横方向、斜め方向などのパターンの方向によって、エッチングを行った後のエッチング状態に差が出やすい問題がある。
【0010】
本件発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、浸漬エッチング方法と、サイドエッチング量を抑制できるエッチング液組成物の組み合わせについて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために、鋭意研究の結果、以下の発明に想到した。
【0012】
銅をエッチングするための銅エッチング液組成物であり、硫酸濃度を1g/L以上500g/L以下、濃度35%の過酸化水素水を用い過酸化水素水濃度1mL/L以上500mL/L以下、水溶性塩化物である塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、塩化銅などのいずれか1種以上を用いて塩素イオン濃度を10ppm以上20000ppm以下とする。
【0013】
銅をエッチングするための銅エッチング液組成物を用いた浸漬エッチング方法であって、エッチング槽内に前記銅エッチング液組成物を満たし、槽内に銅張積層板を浸漬してエッチングするのが好ましい。
【0014】
前記エッチング槽内のエッチング液組成物に対し、パドル撹拌及びノズル噴流撹拌等の緩やかな撹拌を行なうのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本件発明に係る銅エッチング液組成物は、硫酸と、過酸化水素水とを含有するエッチング液組成物に、塩素イオンを含有することで、添加剤を含むものではなく単純化し経済性に優れた組成を備えることを特徴とし、当該銅エッチング液組成物を用いて、浸漬法によりエッチングを行なうことで、サイドエッチング量を抑制することが可能となり、薄膜ファインパターン等の回路形成も容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】塩素イオンを含有するエッチング液組成物でエッチングした銅を撮影した写真である。
【
図3】塩素イオンを含有しないエッチング液組成物でエッチングした銅を撮影した写真である。
【
図4】塩素イオンを含有するエッチング液組成物でエッチングした銅の断面形状を計測し、計測結果を描画したグラフである。
【
図5】塩素イオンを含有しないエッチング液組成物でエッチングした銅の断面形状を計測し、計測結果を描画したグラフである。
【
図6】撹拌を行いながら塩素イオンを含有するエッチング液組成物でエッチングした銅の断面形状を計測し、計測結果を描画したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件発明に係る銅エッチング液組成物、及びエッチング方法について説明する。なお、以下に説明するものは、単に一態様を示したものであり、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0018】
1.銅エッチング液組成物
本件発明に係る銅エッチング液組成物は、硫酸と、濃度(質量濃度)35%の過酸化水素水と、塩素イオンとを含有する構成であり、その他の成分を含まない点が特徴である。塩素イオン供給源として、塩素を含有する水溶性塩化物である塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、塩化銅などのいずれか1種以上を用いることが好ましく、塩素イオンを加える事によって、エッチングを施した銅の表面上の平滑化およびサイドエッチング量を抑制することが可能となる。
【0019】
前記硫酸は、50g/L以上100g/L以下含有するのが好ましい。硫酸が50g/L未満であると、エッチング速度が遅くなるため好ましくない。
【0020】
また、前記過酸化水素水は、濃度(質量濃度)35%の過酸化水素水を利用するのが好ましく、過酸化水素水を50mL/L以上100mL/L以下含有するのが好ましい。過酸化水素水が50mL/L未満であると、エッチング速度が遅くなるため好ましくない。
【0021】
さらに、塩素イオン供給源として、塩素を含有する水溶性塩化物である塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、塩化銅などのいずれか1種以上を用いることが好ましい。そして、当該塩素イオンは、10ppm以上20000ppm以下の範囲で含有するのが好ましい。塩素イオンが10ppm未満であると、サイドエッチング量が増加し、薄膜ファインパターン等の回路形成は困難となるため好ましくない。20000ppmを超えると、エッチングにばらつきが生じるため好ましくない。
【0022】
2.エッチング方法
本件発明のエッチング方法は、浸漬エッチング法で硫酸-過酸化水素系に塩素イオンを加えた銅エッチング液組成物を用いることにより、銅をエッチング加工して銅パターンを形成するエッチング方法である。
【0023】
そして、上述したエッチング液組成物で、エッチング槽を満たし、エッチング液組成物中に銅を浸漬し、浸漬法を用いて銅パターンを形成するエッチングを行なう。銅をエッチング液組成物中に浸漬することで、パターンの方向によるエッチング状態に差が出づらくなり、サイドエッチング量を抑制し、サイドエッチングを直線的に仕上げることができ、エッチングを施した表面を平滑にすることができる。
【0024】
さらに、エッチング槽内には、パドル撹拌及びノズル噴流撹拌を備えることで、緩やかな液の流れを作り出す。この緩やかな液の流れとは、液面を波立たせることなく、エッチング液中に気泡を発生させず、空気を巻き込まない撹拌を行い、エッチング液成分の偏在を解決するものである。前述の通りエッチング液組成物を撹拌しながら、エッチングを行うことでエッチング時間を短縮することができる。
【0025】
当該エッチング方法において、撹拌させながらエッチング液組成物中に銅を浸漬する時間は、300秒以上660秒以下が好ましい。浸漬する時間が300秒未満であると、十分にエッチングを行えないため、好ましくない。一方、浸漬する時間が660秒を超えると、サイドエッチング量が多くなり、薄膜ファインパターンなどの回路形成が困難になるため、好ましくない。また、上述の浸漬する時間は、単に一態様を示したのであり、エッチング液組成物の液温度、及びエッチング液の濃度などの様々な条件により適宜選択すればよい。
【0026】
そして、当該エッチング方法におけるエッチング液組成物の液温度は30℃以上40℃以下が好ましい。液温度が30℃未満であると、エッチング速度が遅くなり、十分にエッチングを行えないため、好ましくない。一方、液温度が40℃を超えると、エッチング速度は早くなるが、過酸化水素の分解が激しく溶液組成の変動が大きくなるため、好ましくない。
【実施例0027】
エッチング液組成物は、硫酸50g/Lと、濃度35%の過酸化水素水50ml/Lと、塩素イオンとして塩化ナトリウム1g/Lとを含有するものとした。ビーカーに、前記エッチング液組成物を満たし、ビーカー内に銅を660秒間浸漬させ、エッチングを行い、サイドエッチング量、および表面の平滑化について確認した。
実施例1と同様のエッチング液組成物を、浸漬パドル装置に満たし、前記エッチング液組成物を用いて、エッチング槽内に銅を510秒間浸漬させ、サイドエッチング量、および表面の平滑化について確認した。