(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060581
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】面発光レーザー装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20240424BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/026 650
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175250
(22)【出願日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】111139579
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523384034
【氏名又は名称】華立捷科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HLJ TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】頼 力 弘
(72)【発明者】
【氏名】頼 利 温
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC35
5F173AC52
5F173AD30
5F173AF92
5F173AG03
5F173AH03
5F173AH14
5F173AH22
5F173AP32
5F173AP33
5F173AR96
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部ストレスを減少させ、帯電防止性能を向上させる面発光レーザー装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】面発光レーザー装置Z1は、第1の反射層11、活性発光層12、第2の反射層13及び電流制限構造体14を含む。活性発光層は、第1の反射層と第2の反射層の間に位置し、レーザービームを生成するためである。電流制限構造体は、PN接合またはPIN接合を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反射層、活性発光層、第2の反射層及び電流制限構造体を含む、面発光レーザー装置であって、
前記第2の反射層及び前記活性発光層は、前記第1の反射層及び前記第2の反射層の間に配置され、レーザービームを生成し、
前記電流制限構造体、PN接合またはPIN接合を有する
ことを特徴とする、面発光レーザー装置。
【請求項2】
前記電流制限構造体は前記第2の反射層内に位置しており、前記第2の反射層との間に別のPN接合が形成され、前記電流制限構造体は、第1の導電型ドープ層及び第2の導電型ドープ層を含み、前記第2の導電型ドープ層は、前記第2の反射層とは逆の導電型を有しており、前記電流制限構造体は、前記第1の導電型ドープ層が前記第1の反射層に向かうように配置される、請求項1に記載の面発光レーザー装置。
【請求項3】
前記電流制限構造体は、第1の導電型ドープ層、第2の導電型ドープ層、及び真性半導体層を含み、前記真性半導体層は、前記第1の導電型ドープ層及び前記第2の導電型ドープ層の間に位置してPIN接合を形成し、前記第2の導電型ドープ層は、前記第2の反射層とは逆の導電型を有しており、前記電流制限構造体は、前記第1の導電型ドープ層が前記第1の反射層に向かうように配置される、請求項1に記載の面発光レーザー装置。
【請求項4】
前記電流制限構造体は、前記第2の反射層内に位置し、前記電流制限構造体は、バウンダリーホールを有しており、前記第2の反射層の一部が前記バウンダリーホール内に填入され、前記活性発光層と接続され、前記電流制限構造体を構成する材料のエネルギーバンドギャップは、前記活性発光層を構成する半導体材料のエネルギーバンドギャップよりも大きく、前記電流制限構造体の総厚さは、少なくとも30nmである、請求項1に記載の面発光レーザー装置。
【請求項5】
前記電流制限構造体と前記第2の反射層の間に位置している電流注入層をさらに備え、
前記電流注入層の一部は、前記電流制限構造体の前記バウンダリーホール内に填入されており、かつ、前記電流注入層と前記電流制限構造体との間に、別のPN接合が形成されている、請求項1に記載の面発光レーザー装置。
【請求項6】
前記電流制限構造体は、前記第1の反射層内に位置しており、前記電流制限構造体と前記第1の反射層との間に、別のPN接合が形成されている、請求項1に記載の面発光レーザー装置。
【請求項7】
第1の反射層、活性発光層、第2の反射層、及び電流制限構造体を備える、面発光レーザー装置であって、
前記活性発光層は、前記第1の反射層及び前記第2の反射層の間に位置し、前記電流制限構造体、ツェナーダイオードを有する
ことを特徴とする、面発光レーザー装置。
【請求項8】
前記電流制限構造体は、前記活性発光層及び前記第2の反射層の間、又は前記活性発光層及び前記第1の反射層の間に位置し、前記電流制限構造体は、第1の導電型ドープ層及び第2の導電型ドープ層を有して前記ツェナーダイオードを形成し、前記第2の導電型ドープ層は、前記第2の反射層とは逆の導電型を有し、前記電流制限構造体は、前記第1の導電型ドープ層が前記第1の反射層に向かうように配置される、請求項7に記載の面発光レーザー装置。
【請求項9】
前記第1の反射層に電気的に接続される第1の電極層と、
前記第1の電極層の間で、前記活性発光層を通過する電流路徑が定義される第2の電極層と、をさらに含み、
前記第2の電極層は、前記電流制限構造体のバウンダリーホールに対応する開口部を有しており、この開口部は発光領域を定義するためのものであり、
前記ツェナーダイオードの少なくとも一部が前記電流路徑上に位置する、請求項7に記載の面発光レーザー装置。
【請求項10】
第1の反射層を形成するステップと、
前記第1の反射層に活性発光層を形成するステップと、
電流制限構造体を形成するステップと、
第2の反射層を形成する、するステップと、
を含み、
前記電流制限構造体は、バウンダリーホールを定義し、PN接合またはPIN接合を有する、
ことを特徴とする、面発光レーザー装置の製造方法。
【請求項11】
前記電流制限構造体を形成するステップにはさらに、第1の導電型ドープ層を形成するステップと、第2の導電型ドープ層を形成するするステップと、積層構造体に前記バウンダリーホールを形成するステップと、を含み、前記第1の導電型ドープ層は前記第1の反射層とは逆の導電型を有し、前記第1の導電型ドープ層と前記第2の導電型ドープ層は前記積層構造体を共同で形成する、請求項10に記載の面発光レーザー装置の製造方法。
【請求項12】
前記電流制限構造体を形成するステップはさらに、第1の導電型ドープ層を形成するするステップと、前記第1の導電型ドープ層上に真性半導体層を形成するするステップと、前記真性半導体層上に第2の導電型ドープ層を形成して積層構造体を形成するステップと、前記積層構造体内に前記バウンダリーホールを形成するステップとを含み、前記第1の導電型ドープ層は前記第1の反射層とは逆の導電型を有する、請求項10に記載の面発光レーザー装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザー装置及びその製造方法に関するものであり、特に、垂直共振チャンバー面発光レーザー装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の垂直共振チャンバー面発光レーザーにおいては、通常、イオン注入または湿式酸化のプロセスを利用して、上部ブラッグ反射器内に高抵抗値の酸化層やイオン注入領域を形成し、電流の流れる領域を制限する。しかし、イオン注入や熱酸化のプロセスで電流制限の酸化層やイオン注入領域を形成することは、コストが高く、孔径サイズが容易に制御できない。
【0003】
さらに、酸化層と上部ブラッグ反射器を形成する半導体材料との間には、格子不整合度及び熱膨張係数の違いが大きく、これにより、垂直共振チャンバー面発光レーザーがアニール後に内部ストレスで破壊し易く、製造歩留まりを低下させる原因となる。また、部品内部のストレスは、部品寿命を短縮させるとともに、光出力特性と信頼性も低下させる。一方、既存の垂直共振チャンバー面発光レーザーは、静電気放電(electrostatic discharge,ESD)やサージ(Surge)の影響により内部が損傷しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術課題は、既存の技術における不足を補うために、面発光レーザー装置及びその製造方法を提供することであり、これにより面発光レーザー装置の内部ストレスを減少させ、かつ面発光レーザー装置の帯電防止性能を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の技術課題を解決するために、本発明で採用される1つの技術方案として、面発光レーザー装置が提供される。面発光レーザー装置は、第1の反射層、活性発光層、第2の反射層、及び電流制限構造体を含む。活性発光層は、第1の反射層と第2の反射層との間に位置し、レーザービームを生成する。電流制限構造体は、PN接合またはPIN接合を有する。
【0006】
上述の技術課題を解決するために、本発明で採用される他の技術方案として、面発光レーザー装置が提供される。面発光レーザー装置は、第1の反射層、活性発光層、第2の反射層、及び電流制限構造体を含む。活性発光層は第1の反射層と第2の反射層との間に位置し、レーザービームを生成する。電流制限構造体は、ツェナーダイオード(Zener diode)を有する。
【0007】
上述の技術課題を解決するために、本発明で採用されるさらに1つの技術方案として、面発光レーザー装置の製造方法が提供される。この製造方法は、第1の反射層を形成し、第1の反射層上に活性発光層を形成し、電流制限構造体を形成し、第2の反射層を形成する工程を含む。なかでも、電流制限構造体はバウンダリーホールを定義し、PN接合またはPIN接合を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの有益な効果は、面発光レーザー装置およびその製造方法において、「電流制限構造体がPN接合またはPIN接合を有する」または「電流制限構造体が、ツェナーダイオード(Zener diode)を有する」という技術方案によって、面発光レーザー装置の信頼性、或いは面発光レーザー装置そのものの帯電防止性能が向上する。
【0009】
本発明の特徴および技術内容をさらに理解するためには、以下の本発明に関する詳細な説明および添付図を参照してください。ただし、これらの説明および添付図は本発明の保護範囲を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。
【
図3】本発明の他の実施形態の面発光レーザー装置の部分拡大模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。
【
図8】本発明の他の実施形態の面発光レーザー装置の部分拡大模式図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。
【
図10】本発明の実施形態の面発光レーザー装置の製造方法のフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態の面発光レーザー装置がステップS10での模式図である。
【
図12】本発明の実施形態の面発光レーザー装置がステップS20での模式図である。
【
図13】本発明の実施形態の面発光レーザー装置がステップS30での模式図である。
【
図14】本発明の実施形態の面発光レーザー装置がステップS30での模式図である。
【
図15】本発明の実施形態の面発光レーザー装置がステップS40での模式図である。
【
図16】本発明の実施形態の面発光レーザー装置がステップS50での模式図である。
【
図17】本発明の別の実施形態の面発光レーザー装置がステップS40での模式図である。
【
図18】本発明の別の実施形態の面発光レーザー装置がステップS50での模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1及び
図2に参照すると、本発明の実施形態は、面発光レーザー装置Z1を提供する。本発明の実施形態において、面発光レーザー装置Z1は垂直チャンバー面発光レーザー装置である。面発光レーザー装置Z1は、第1の反射層11、活性発光層12、第2の反射層13及び電流制限構造体14を含む。具体的には、この実施形態において、面発光レーザー装置Z1はまたベース10を含む。第1の反射層11、活性発光層12、第2の反射層13及び電流制限構造体14はすべてベース10上に設置されており、活性発光層12は第1の反射層11と第2の反射層13の間に位置している。
【0012】
ベース10は、絶縁ベースまたは半導体ベースであることができる。絶縁ベースは例えばサファイアであり、半導体ベースは例えばシリコン、ゲルマニウム、炭化ケイ素、またはIII-V族半導体である。III-V族半導体は例えばガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン酸塩(InP)、窒化アルミニウム(Aluminum Nitride, AIN)、窒化インジウム(Indium Nitride, InN)または窒化ガリウム(Gallium Nitride, GaN)である。また、ベース10はエピタキシャル面10aと、エピタキシャル面10aに対して逆の底面10bを有する。
【0013】
第1の反射層11、活性発光層12及び第2の反射層13は、基板10のエピタキシャル面10a上に依序に位置している。本実施形態において、第1の反射層11、活性発光層12及び第2の反射層13は、活性発光層12と同じ断面幅を有する。
【0014】
第1の反射層11及び第2の反射層13は、異なる屈折率を有する二種類の薄膜が交互に積層されて形成される分布型ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector、DBR)であることができ、所定の波長を反射共振させる。本実施形態において、第1の反射層11及び第2の反射層13を構成する材料は、ドープされたIII-V族化合物半導体であり、第1の反射層11と第2の反射層13はそれぞれ異なる導電型を有する。
【0015】
活性発光層12は第1の反射層11上に形成され、レーザービームLを生成するためにある。詳細には、活性発光層12は第1の反射層11及び第2の反射層13の間に位置し、電力によって励起されて初期光束を生成する。活性発光層12によって生成された初期光束は、第1の反射層11と第2の反射層13の間で反射共振されてゲインを増幅し、最終的には第2の反射層13から出射してレーザービームLを生成する。
【0016】
活性発光層12は、複数の量子井戸を形成するための複数の膜層を含む。具体的には、トラップ層とバリア層が交互に積層され、どちらもドープされていない。トラップ層とバリア層の材料は、生成されるレーザービームLの波長に応じて決定される。例えば、生成されるレーザービームLが赤色の場合、トラップ層の材料はインジウムガリウムリン(InGaP)であることができる。発生させるレーザービームLが近赤外光である場合、トラップ層及び障壁層は、それぞれヒ化ガリウム層及びヒ化アルミガリウム(AlxGa(1-x)As)層である。前記レーザービームLが青色光である場合、障壁層及びトラップ層は、それぞれ窒化ガリウム(GaN)層及び窒化インジウムガリウム(InGaN)層となる。
【0017】
図1及び
図2を参照してください。面発光レーザー装置Z1は、電流制限構造体14も含む。そして、電流制限構造体14は活性発光層12の上方または下方に位置する。電流制限構造体14には、バウンダリーホール14Hがあり、電流チャネルを定義する。電流制限構造体14が電流の通過領域を定義できる限り、その位置は本発明において制限されないことは留意されたい。本実施形態において、電流制限構造体14は第2の反射層13内に位置し、活性発光層12に接続されている。
図2に示すように、具体的には、本実施形態において、第2の反射層13の一部はバウンダリーホール14H内に填入され、活性発光層12に接続される。第2の反射層13はドープされた半導体材料であり、高い導電性を有するため、バウンダリーホール14H内に填入された部分は電流の通過を許可する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態において、電流制限構造体14は、少なくとも1つのPN接合SAを有する。詳細には、電流制限構造体14は第1の導電型ドープ層141及び第2の導電型ドープ層142を含むとともに、第1の導電型ドープ層141と第2の導電型ドープ層142の間にPN接合SAが形成される。具体的に、第1の導電型ドープ層141は第1の反射層11とは逆の導電型を有し、第2の導電型ドープ層142も第2の反射層13とは逆の導電型を有する。例えば、第1の反射層11がN型の場合、第2の反射層13と第1の導電型ドープ層141はP型で、第2の導電型ドープ層142はN型である。第1の反射層11がP型の場合、第2の反射層13と第1の導電型ドープ層141はN型で、第2の導電型ドープ層142はP型である。
【0019】
図2に示すように、電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141を第1の反射層11に向けて配置する。第2の反射層13と第2の導電型ドープ層142が逆の導電型を有しているため、第2の反射層13と第2の導電型ドープ層142は、面発光レーザー装置Z1内で別のPN接合SBを形成する。このように、本実施形態の電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141と第2の導電型ドープ層142によって共同で形成されるツェナーダイオード(Zenor diode)を有する。
【0020】
なお、電流制限構造体14を構成する材料は、レーザービームLが吸収されないような半導体材料を選択することができる。言い換えれば、電流制限構造体14を構成する半導体材料は、レーザービームLの透過を許容する。レーザービームLの波長がλ(単位はナノメートル)であり、電流制限構造体14を構成する半導体材料のエネルギーバンドギャップがEgである場合、エネルギーバンドギャップEgとレーザービームLの波長とは、Eg>(1240/λ)の関係式が成立する。例えば、レーザービームLの波長λが850nmである場合、電流制限構造体14のエネルギーバンドギャップEgは1.46eVより大きいべきである。このように、電流制限構造体14がレーザービームLを吸収することによる面発光レーザー装置Z1の発光効率を低下させることを避けることができる。特定の実施形態において、電流制限構造体14を構成する半導体材料のエネルギーバンドギャップ(energy bandgap)は、活性発光層12(トラップ層)を構成する半導体材料のエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0021】
また、本実施形態において、電流制限構造体14の材料の結晶格子定数と活性発光層12の材料の結晶格子定数とが互いにマッチしており、界面欠陥を減らすことが可能である。より良い実施形態においては、電流制限構造体14の材料と活性発光層12の材料との間の格子不整合度(lattice mismatch)は0.1%以下である。さらに、本実施形態の電流制限構造体14は第2の反射層13内に位置しているため、電流制限構造体14の材料と第2の反射層13の材料との間の格子不整合度は0.1%以下である。
【0022】
既存の酸化層と比べて、この実施形態の電流制限構造体14は、活性発光層12および第2の反射層13との間の格子不整合度が少ないため、面発光レーザー装置Z1の内部応力を減少させ、面発光レーザー装置Z1の信頼性を向上させることができる。この実施形態において、電流制限構造体14の全体の厚みは10nmから1000nmである。電流制限構造体14、活性発光層12および第2の反射層13がすべて半導体材料であるため、熱膨張係数の差異が小さい。これにより、アニール処理後の熱膨張係数の違いによる面発光レーザ素子Z1の割れを防ぐことができ、加工歩留まりが向上する。
【0023】
図1を参照して、本発明の実施形態の面発光レーザー装置Z1は、第1の電極層15及び第2の電極層16をさらに含む。第1の電極層15は第1の反射層11に電気的に接続され、第2の電極層16は第2の反射層13に電気的に接続される。
図1の実施形態において、第1の電極層15と第2の電極層16はベース10の異なる側にそれぞれ位置しているが、他の実施形態においては、第1の電極層15と第2の電極層16はベース10の同じ側に位置してもよい。
【0024】
さらに詳しく述べると、本実施形態において、第1の電極層15はベース10の底面10bに設置されている。第2の電極層16は第2の反射層13上に位置し、第2の反射層13に電気的に接続される。第1の電極層15と第2の電極層16の間には、主動発光層12を経由する電流経路が定義されている。第1の電極層15と第2の電極層16は、単一の金属層、合金層、または異なる金属材料で構成された積層層であることができる。
【0025】
図1の実施形態において、第2の電極層16は、発光領域A1を定義する開口部16Hを有し、この開口部16Hは前記電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hに対応し、活性発光層12が生成するレーザービームLが開口部16Hから射出されるようにする。特定の実施形態において、第2の電極層16は環状部分を有するが、本発明は第2の電極層16の平面視の形状を制限しない。第2電極層16の材料は、金、タングステン、ゲルマニウム、パラジウム、チタン、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0026】
また、本実施形態の面発光レーザー装置Z1は、更に電流伝搬層17及び保護層18を含む。電流伝搬層17は第2の反射層13上に位置し、第2の電極層16に電性接続される。特定の実施形態において、電流伝搬層17の材料は導電材料であり、第2の反射層13から活性発光層12へ注入される電流を均等に分布させるように用いられる。さらに、電流伝搬層17の材料はレーザービームLが透過可能な材料であり、面発光レーザー装置Z1の発光効率を過度に犠牲にすることから避けることが可能である。例えば、レーザービームLの波長が850nmの場合、電流伝搬層17の材料は高濃度にドープされた半導体材料であり得る、例えば高濃度にドープされたリン化インジウムであるが、本発明はこれに限らない。
【0027】
保護層18は、電流伝搬層17を、並びに発光領域A1を覆い、面発光レーザー装置Z1内部への水分侵入が発生し、面発光レーザー装置Z1の出光特性または寿命に影響を与えることを避ける。特定の実施形態において、保護層18には、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、またはそれらの組み合わせなどの耐湿性材料を選択することができ、これは本発明これらの例に制限されない。この実施形態において、第2の電極層16は保護層18上に配置され、保護層18及び電流伝搬層17を通って第2の反射層13に接続されるが、本発明はこれに限定されない。また、別の実施形態において、電流伝搬層17は省略されてもよい。
【0028】
なお、電流制限構造体14のツェナーダイオードの少なくとも一部は、電流を遮断するように、第1の電極層15及び第2の電極層16によって定義される電流経路に位置する。このように、第1の電極層15及び第2の電極層16によって面発光レーザー装置Z1にバイアスをかけると、電流制限構造体14のツェナーダイオードには逆方向のバイアスが施されているが、ブレークダウンしていない。このため、ツェナーダイオードは導通しないため、電流は電流制限構造体14を迂回してバウンダリーホール14Hを通る。これにより、活性発光層12に注入される電流密度が増加する。
【0029】
しかし、静電放電が発生する場合、静電電流が正電流であろうと負電流であろうと、電流制限構造体14のツェナーダイオードは導通される。ツェナーダイオードが導通された際の抵抗は、バウンダリーホール14H内の第2の反射層13の抵抗よりもはるかに低いため、大部分の静電電流は電流制限構造体14を通ることになり、バウンダリーホール14Hを通ることはない。注目すべきは、電流制限構造体14の俯瞰面積の占有率は、バウンダリーホール14Hのそれよりも大きい。電流制限構造体14のツェナーダイオードが導通された際、活性発光層12を流れる静電電流は分散され、電流密度が低下し、活性発光層12の損傷を避けることができる。これにより、電流制限構造体14は面発光レーザー装置Z1に対して静電放電の保護を提供することができる。
【0030】
つまり、本発明の実施形態における面発光レーザー装置Z1では、電流制限構造体14にツェナーダイオードを有することで、電流のチャネルを定義するだけでなく、面発光レーザー装置Z1に静電放電の保護を提供し、信頼性を向上させることができる。
【0031】
図3を参照してください。本発明の別の実施形態の面発光レーザー装置の部分拡大図が示されている。この実施形態では、電流制限構造体14はPIN接合を有し、同様の効果を達成することができる。詳しく言うと、この実施形態の電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141、第2の導電型ドープ層142及び真性半導体層143を含む。
【0032】
真性半導体層143は、第1の導電型ドープ層141及び第2の導電型ドープ層142の間に位置する。真性半導体層143は、ドープされていない半導体層であり、真性半導体層143を構成する半導体材料は、第1の導電型ドープ層141(または第2の導電型ドープ層142)を構成する半導体材料と同じであることができるが、本発明はこれに限らない。
【0033】
このように、面発光レーザー装置Z1にバイアスを施すと、電流制限構造体14の第2の導電型ドープ層142及び第1の導電型ドープ層141は、ブレークダウン電圧よりも小さい逆方向のバイアスが印加されるとみなされ、電流制限構造体14は非導通状態となる。そのため、電流は電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hを通過するのみ許される。
【0034】
静電放電が発生し、電流制限構造体14に印加される逆方向のバイアスがブレークダウン電圧を超える場合、電流制限構造体14は導通状態となり、大部分の静電電流は電流制限構造体14を通過する。第1の導電型ドープ層141及び第2の導電型ドープ層142の間に真性半導体層143を設置することにより、電流制限構造体14の面発光レーザー装置Z1への静電放電保護能力をさらに向上させることができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図4を参照されたい。
図4は、本発明の第2の実施形態における面発光レーザー装置Z2の断面模式図である。本実施形態の面発光レーザー装置Z2は、第1の実施形態の面発光レーザー装置Z1と同様の部品に同様の番号が付けられており、同様の部分は省略する。
【0036】
本実施形態の面発光レーザー装置Z2において、電流制限構造体14は第2の反射層13内に配置されるが、活性発光層12には接続されていない。特筆すべきは、本実施形態では、電流制限構造体14の位置は活性発光層12に近く、第2の電極層16から遠くなるように設定されている。このようにして、バウンダリーホール14Hを通じて活性発光層12に注入される電流が集中し、面発光レーザー装置Z2の発光効率が向上する。電流制限構造体14は、
図2または
図3に示される構造である。この実施形態において、電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141を第1の反射層11に向けて配置し、第2の反射層13の下部分に接続する。また、電流制限構造体14の第2の導電型ドープ層142は、第2の反射層13の上部分に接続され、そして第2の導電型ドープ層142と第2の反射層13との間にはPN接合SBが形成される。
【0037】
このように、面発光レーザー装置Z1に偏圧を施すと、電流制限構造体14の第2の導電型ドープ層142と第1の導電型ドープ層141には、ブレークダウン電圧より小さい逆向き偏圧が施され、これにより電流制限構造体14は非導通状態となる。そのため、電流は電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hを通過するのみが許される。このように、電流制限構造体14が電流を制限し、面発光レーザー装置Z2に静電放電の保護を提供する限り、本発明は電流制限構造体14の第2の反射層13内の位置に制約しない。
【0038】
[第3の実施形態]
図5を参照されたい。
図5は本発明の第3の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。本実施形態の面発光レーザー装置Z3は、第1の実施形態の面発光レーザー装置Z1と同じ要素に同じ番号が付けられており、同じ部分については繰り返し説明しない。
【0039】
本実施形態の面発光レーザー装置Z3において、電流制限構造体14は、活性発光層12と第2の反射層13の間に位置しているが、電流制限構造体14は、第2の反射層13内には位置していない。詳しく言うと、本実施形態の面発光レーザー装置Z3はさらに電流注入層19を含み、電流注入層19は電流制限構造体14と第2の電極層16との間に位置している。本実施形態では、電流注入層19の一部が電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hに填入されている。
【0040】
また、本実施形態において、電流注入層19の材料はドープされた半導体材料であり、そして電流注入層19と第2の導電型ドープ層142は逆の導電型を有する。これによって、電流注入層19と第2の導電型ドープ層142の間には別のPN接合(番号なし)が形成される。特定の実施形態において、電流注入層19の半導体材料は電流制限構造体14の第1の導電型ドープ層141の半導体材料と同一であるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、電流制限構造体14は活性発光層12に接続されず、電流注入層19内に埋め込まれる。
【0041】
第2の電極層16は、電流伝搬層17を介して電流注入層19と電気的に接続される。したがって、面発光レーザー装置Z1にバイアスをかけると、電流制限構造体14の第2の導電型ドープ層142と第1の導電型ドープ層141にはブレークダウン電圧よりも小さい逆バイアスがかけられ、電流制限構造体14は非導通状態となる。このため、電流は電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hを通じてのみ許容される。
【0042】
また、本実施形態において、第2の反射層13は第2の電極層16と共に、電流伝搬層17上に配置される。さらに、第2の反射層13は第2の電極層16が定義する開口部16H内に位置する。言い換えれば、本実施形態の第2の電極層16は第2の反射層13を囲む形である。注目すべきは、本実施形態において、第2の反射層13を構成する材料は、半導体材料、絶縁材料、またはその組合せを含むことができる。半導体材料は、本質的な半導体材料であるか、またはドープされた半導体材料であるか、本発明は限定しない。例えば、半導体材料は、例えば、シリコン、インジウムガリウムアルミニウム砒素(InGaAlAs)、インジウムガリウム砒素リン化物(InGaAsP)、インジウムリン化物(InP)、インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)等であってよく、レーザービームLの波長に応じて選択され得る。絶縁材料は、酸化物または窒化物であることができ、例えば酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムなど、本発明は限定しない。
【0043】
本実施形態において、第2の反射層13は複数の膜層を含むことができ、及び前記の材料から選択される各膜層の材料で構成される。例として、各膜層は、レーザービームLの波長に応じて、酸化チタン層と酸化シリコン層、シリコン層と酸化アルミニウム層、又は酸化チタン層と酸化アルミニウム層であることができる。本発明はこれに限定されない。
【0044】
図6及び
図7を参照されたい。
図6は本発明の第4の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図であり、
図7は
図6のVII部分の拡大模式図である。本実施形態の面発光レーザー装置Z4と第1の実施形態の面発光レーザー装置Z1と同じ又は類似の部品は同じ番号を持ち、説明は省略される。本実施形態において、電流制限構造体14は活性発光層12及び第1の反射層11の間に位置することができる。詳しくは、電流制限構造体14は第1の反射層11内に内蔵され、活性発光層12と接続される。
【0045】
図7に示すように、電流制限構造体14は第1の導電型ドープ層141と第2の導電型ドープ層142を含み、及び第1の導電型ドープ層141と第2の導電型ドープ層142の間にPN接合SAが形成される。また、第1の導電型ドープ層141は第1の電極層15に向けて配置され、第2の導電型ドープ層142は第2の電極層16に向けて配置される。これに基づき、第1の反射層11内で、この実施形態の電流制限構造体14は第1の導電型ドープ層141及び第2の導電型ドープ層142によって共同で形成されるツェナーダイオード(Zenor diode)を含む。
【0046】
本実施形態において、第2の導電型ドープ層142は、第1の導電型ドープ層141及び活性発光層12の間に位置する。第1の導電型ドープ層141及び第1の反射層11は、逆の導電型を有するため、第1の導電型ドープ層141及び第1の反射層11の間には、別のPN接合SCが形成される。例えば、第1の反射層11がN型である場合、第1の導電型ドープ層141はP型となり、第2の導電型ドープ層142はN型となる。また、第2の導電型ドープ層142及び第1の反射層11は、同じまたは異なる材料で構成されてもよく、本発明はこれに限定されない。
【0047】
面発光レーザー装置Z4に偏圧を印加すると、電流制限構造体14のツェナーダイオードには、ブレークダウン電圧よりも小さい逆向きの偏圧が印加され、電流制限構造体14は非導通状態となる。したがって、電流は電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hを通過するのみ許される。静電放電が発生した場合、静電電流が正の電流であるか負の電流であるかに関わらず、電流制限構造体14のツェナーダイオードは導通し、大部分の静電電流が電流制限構造体14を通過することを許容し、これにより面発光レーザー装置Z4に静電保護を提供することができる。
【0048】
図8を参照すると、これは本発明の別の実施形態の面発光レーザー装置の部分拡大模式図である。この実施形態において、電流制限構造体14は、第1の反射層11内に位置し、PIN接合を有し、同じ効果を達成することができる。具体的には、この実施形態の電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141、第2の導電型ドープ層142及び真性半導体層143を含む。真性半導体層143は、第1の導電型ドープ層141及び第2の導電型ドープ層142の間に位置する。この実施形態の電流制限構造体14の動作原理は、
図3の実施形態の動作原理と同様であり、静電保護も提供することができる。
【0049】
図9を参照してください、これは本発明の第5の実施形態の面発光レーザー装置の断面模式図である。本実施形態の面発光レーザー装置Z5と第3の実施形態の面発光レーザー装置Z3の同じまたは類似の要素は同じ番号を有しており、再度の説明は省略する。本実施形態において、電流制限構造体14は第1の反射層11内に埋め込まれているが、活性発光層12には接続されていない。しかし、電流制限構造体14の位置は活性発光層12に比較的近く、ベース10からは遠くなるように配置されている。電流制限構造体14は、
図7又は
図8に示される構造に構成されてもよい。具体的には、第1の導電型ドープ層141と第1の反射層11が反対の導電型を持って、PN接合が形成されれば、電流制限構造体14は電流の通過経路を制限するために使用され、面発光レーザー装置Z5に静電保護を提供することができる。
【0050】
図10を参照されたい。
図10は、本発明の実施形態の面発光レーザー装置の製造方法のフローチャートである。ステップS10において、第1の反射層を形成する。ステップS20において、第1の反射層に活性発光層を形成する。ステップS30において、活性発光層に電流制限構造体を形成する。ここで、電流制限構造体は、バウンダリーホールを定義し、PN接合またはPIN接合を有する。ステップS40において、第2の反射層を形成する。ステップS50において、第1の電極層及び第2の電極層を形成する。
【0051】
なお、本実施形態が提供する面発光レーザー装置の製造方法は、第1から第5の実施形態における面発光レーザー装置Z1-Z5を製造するために使用できるということである。
図11から
図16を参照し、第1の実施形態の面発光レーザー装置Z1を製造する例として説明する。
【0052】
図11に示すように、ベース10に第1の反射層11を形成する。詳しくは、第1の反射層11はベース10のエピタキシャル面10a上に形成される。ベース10の材料は前述した通りであり、ここでは重複しない。ベース10は、第1の反射層11と同じ導電型を有してもよい。
【0053】
図12に示すように、第1の反射層11に活性発光層12を形成する。第1の反射層11に複数のトラップ層と複数のバリア層を交互に形成することで、活性発光層12を形成できる。特定の実施形態において、第1の反射層11と活性発光層12は、ベース10のエピタキシャル面10aに化学気相堆積法によって形成できる。
【0054】
図13及び
図14を参照されたい。
図13及び
図14は活性発光層に電流制限構造体14を形成する詳細な流れを示すものである。
図2と
図13を参照すると、
図2に示される電流制限構造体14を形成する必要がある場合、第1の導電型ドープ層141及び第2の導電型ドープ層142を活性発光層12上に順に形成することができる。
図13に示されるように、第1の導電型ドープ層141と第2の導電型ドープ層142は、積層構造体14Aを共同で形成することができる。
【0055】
また、
図3に示される電流制限構造体14を形成する場合、第1の導電型ドープ層141を形成した後、まず真性半導体層143を形成し、その後に第2の導電型ドープ層142を形成することができる。この場合、第1の導電型ドープ層141、真性半導体層143及び第2の導電型ドープ層142は、共同で積層構造体14Aを形成することになる。
【0056】
図14を参照して、本実施形態において、積層構造体14Aにバウンダリーホール14Hを形成し、一部の活性発光層12を露出させてもよい。さらに、エッチングプロセスを通じて、積層構造体14Aにバウンダリーホール14Hを形成することができる。
図15を参照して、電流制限構造体14及び活性発光層12に第2の反射層13が形成される。具体的には、第2の反射層13を形成する際に、第2の反射層13の一部がバウンダリーホール14H内に充填され、活性発光層12と接続される。
【0057】
図16を参照して、ベース10の底面10bに第1の電極層15を形成し、第2の反射層13上に第2の電極層16を形成することで、本発明の第1の実施形態の面発光レーザー装置Z1を製造することができる。本実施形態において、第2の電極層16を形成する前に、電流伝搬層17及び保護層18を先に形成してもよい。
【0058】
なお、第2の実施形態の面発光レーザー装置Z2を製作する際、活性発光層12に第2の反射層13の一部を先に形成し、その後、電流制限構造体14にバウンダリーホール14Hを有するように形成するようにしてもよい。次に、電流制限構造体14に第2の反射層13の別の部分を再成長(regrowth)させる。
【0059】
図17を参照して、このステップは
図14のステップに続く。本発明の実施形態の製造方法は、さらに、電流制限構造体14に電流注入層19を形成するステップを含む。本実施形態において、電流注入層19を形成するステップは、第2の反射層13を形成するステップの前に実行される。
図17に示すように、電流注入層19は、電流制限構造体14のバウンダリーホール14H内に形成され、活性発光層12と連接される。その後、電流注入層19に電流伝搬層17及び第2の反射層13を形成する。
【0060】
図18を参照して、ベース10の底面10bに第1の電極層15を形成し、電流伝搬層17上に第2の電極層16を形成することで、第2の電極層16を電流注入層19と電気的に連接させる。また、第2の電極層16は、バウンダリーホール14Hに対応する開口部16Hを有し、第2の反射層13を囲むように配置される。言い換えれば、第2の反射層13は、第2の電極層16が定義する開口部16H内に位置する。特定の実施形態において、電流伝搬層17を形成した後、先に第2の反射層13を形成し、その後、第2の電極層16を形成することができる。別の実施形態においては、第2の反射層13と第2の電極層16の形成ステップを入れ替えることも可能である。以上のステップを実行することで、第3の実施形態の面発光レーザー装置Z3を製作することができる。
【0061】
説明すべきは、第4の実施形態の面発光レーザー装置Z4を製造する際に、電流制限構造体14を成形するステップ(S30)は、活性発光層12を成形するステップ(S20)の前に実施することもできる。第5の実施形態の面発光レーザー装置Z5を製造する際には、まず第1の反射層11の一部を形成し、次いでバウンダリーホール14Hを有する電流制限構造体14を形成するようにしてもよい。その後、電流制限構造体14上に、第1の反射層11の他の一部を再成長(regrowth)させる。
【0062】
[実施形態の有益な効果]
本発明の1つの有益な効果は、本発明が提供する面発光レーザー装置及びその製造方法において、「電流制限構造体14がPN接合またはPIN接合を有する」または「電流制限構造体14が、ツェナーダイオード(Zener diode)を有する」という技術方案によって、面発光レーザー装置Z1~Z5がより良い発光効率及び高い信頼性(reliability)を有することができる。
【0063】
さらに詳しく言うと、電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141と第2の導電型ドープ層142を含む。第2の導電型ドープ層142は、第2の反射層13とは逆の導電型を持ち、電流制限構造体14は、第1の導電型ドープ層141が第1の反射層11を向いている。面発光レーザー装置Z1-Z5にバイアスをかけると、電流制限構造体14の第2の導電型ドープ層142と第1の導電型ドープ層141には、ブレークダウン電圧未満の逆バイアスがかけられ、電流制限構造体14は非導通状態となる。そのため、電流は電流制限構造体14のバウンダリーホール14Hを通るのみ許される。
【0064】
静電放電が生じると、電流制限構造体14は導通状態となり、大部分の静電電流は電流制限構造体14を通る。したがって、本発明の実施形態の電流制限構造体14は、電流経路の制限だけでなく、面発光レーザー装置Z1-Z5への静電放電保護も提供することができる。
【0065】
既存の面発光レーザー装置と比較して、本発明の実施形態の面発光レーザー装置Z1-Z5では、電流制限構造体14自体が静電防護構造として機能し、保護のために別のダイオードを並列に接続する必要がない。これにより、コストを削減し、電子製品の回路レイアウトのスペースを節約することができる。
【0066】
また、第1の反射層11、電流制限構造体14、活性発光層12及び第2の反射層13は全て半導体材料で構成されているため、熱膨張係数の差異が小さい。これにより、面発光レーザー装置Z1-Z5がアニール処理後に熱膨張係数の差異によって破裂するのを防ぐことができ、製造歩留りを高める。本発明実施形態の面発光レーザー装置Z1~Z5においては、酸化層を使用する必要がないため、面発光レーザー装置Z1~Z5の製造過程で側方酸化のステップを省略することもできる。さらに、本発明実施形態の面発光レーザー装置Z1~Z5では側方溝を形成する必要もない。これにより、面発光レーザー装置Z1~Z5の製造流程をさらに簡素化し、製造コストを低減することができる。また、側方酸化を行う際に、面発光レーザー装置Z1~Z5の内部が水蒸気によって侵され、その出光特性に影響を与えることも防ぐことができる。したがって、本発明実施形態の面発光レーザー装置Z1-Z5は更に高い信頼性を持つことができる。
【0067】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0068】
Z1-Z5:面発光レーザー装置
L:レーザービーム
10:ベース
10a:エピタキシャル面
10b:底面
11:第1の反射層
12:活性発光層
13:第2の反射層
14:電流制限構造体
141:第1の導電型ドープ層
142:第2の導電型ドープ層
143:真性半導体層
14H:バウンダリーホール
SA、SB、SC:PIN接合
15:第1の電極層
16:第2の電極層
16H:開口部
A1:発光領域
17:電流伝搬層
18:保護層
19:電流注入層
14A:積層構造体
S10~S50:ステップ