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特開2024-60600高屈折率パターン形成用のネガ型感光性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060600
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】高屈折率パターン形成用のネガ型感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20240424BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240424BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G03F7/033
G03F7/004 501
G03F7/031
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023178974
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0135004
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】デュポン スペシャルティ マテリアルズ コリア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DUPONT SPECIALTY MATERIALS KOREA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン-キ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジュ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】コ ウィ-ジン
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AC34
2H225AC36
2H225AC63
2H225AD06
2H225AE13P
2H225AM11P
2H225AM12P
2H225AM13P
2H225AM22P
2H225AM32P
2H225AM57P
2H225AM92P
2H225AN39P
2H225AN41P
2H225BA01P
2H225BA33P
2H225CA15
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】 高屈折率パターン形成用のネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、従来使用されている高屈折率モノマーよりも比較的に硬度が小さく、且つ溶解性を確保する観点から有利であるモノマーと、開始剤とを採用することにより、1.6以上の屈折率を有し、且つパターニング性に優れたネガ型硬化膜を提供することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネガ型感光性樹脂組成物であって、(A)以下の式1で表される構造単位(a1)及び以下の式2で表される構造単位(a2)を含むアクリルコポリマーと;
(B)光重合性化合物と;
(C)光重合開始剤と
を含むネガ型感光性樹脂組成物:
【化1】

[式中、R、R、及びRxは、それぞれ独立して、水素であるか又は1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;
、L、及びLxは、それぞれ独立して、単結合であるか、又はN、S、及びOから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む又は含まない1~6個の炭素原子を有する鎖である]。
【請求項2】
式1で表される前記構造単位(a1)の含量が、前記アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、20重量%~80重量%である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
式2で表される前記構造単位(a2)の含量が、前記アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、20重量%~80重量%である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリルコポリマー(A)が、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)を1:4~4:1の重量比で含む、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アクリルコポリマー(A)が、高屈折率モノマー由来の構造単位(a3)を更に含み、並びに
前記高屈折率モノマーが、カルバゾール環、フルオレン環、ベンゼン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合とを含む、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記アクリルコポリマー(A)が、エポキシ基含有のエチレン性不飽和化合物由来の構造単位(a4)を更に含む、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記光重合性化合物(B)が、少なくとも1つの高屈折率モノマーを含み、且つ
前記高屈折率モノマーが、カルバゾール環、フルオレン環、ベンゼン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合とを含む、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記光重合開始剤(C)が、芳香族又は脂肪族環を含有するオキシムエステル系化合物である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ネガ型感光性樹脂組成物から得られた硬化膜が、1.6以上の高屈折率を有する、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物から調製される硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率パターン形成用のネガ型感光性樹脂組成物に関するより具体的には、本発明は、液晶ディスプレイデバイス又は有機発光ディスプレイデバイスに適用される硬化膜又は有機絶縁膜を調製するための、優れた屈折率及びパターニング性を有するネガ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイデバイス、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)型の液晶ディスプレイ(LCD)デバイス又は有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスにおいては、例えば、窒化ケイ素でできた無機保護膜が、TFT回路を保護する及び絶縁するための保護膜として使用されてきた。しかしながら、そのような無機保護膜は、その高い誘電率のために開口率を高めることが困難であるという問題を有するので、低い誘電率を有する有機絶縁膜に対する需要が増加し続けている。
【0003】
光又は電子ビームと化学的に反応して特定の溶媒へのその溶解性を変化させるポリマー化合物である、感光性樹脂が、一般に、そのような絶縁膜を調製するために使用される。感光性樹脂は、現像液への露光部分の溶解性に応じてポジ型及びネガ型へ分類される。ポジ型においては、露光部分は、現像液によって溶かされてパターンを形成する。ネガ型においては、露光部分は、現像液によって溶かされず、一方で非露光部分が溶かされてパターンを形成する。
【0004】
ポジ型は、屈折率を低下させる添加剤を殆ど含有していないので、ネガ型の屈折率よりも高い屈折率を実現できる。しかしながら、現状の技術では、ポジ型感光性樹脂の溶解性を確保することには難しい問題が存在する。これに対して、ネガ型は、光重合性モノマー又は添加剤の量を調整することにより、溶解度を調整できるが、従来の手法で溶解度を調整する場合、屈折率が低下する;したがって、ネガ型硬化膜の屈折率を高めるには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2010-0043259号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高屈折率材料を調製する先行技術は、主に、屈折率を容易に制御するポジ型感光性樹脂組成物を用いるか又は無機粒子を添加して屈折率を高める方法を用いる。このような場合においては、パターン形成が困難なので、単一の膜だけが提供される。
【0007】
加えて、硬質モノマーを用いて硬化膜の屈折率を高める試みも行われている。しかしながら、従来一般的に使用される硬質モノマーは溶解性及び透過率を低下する傾向があるので、添加量を増やすことは困難である。
【0008】
本発明者らは、比較的硬度が小さく、溶解性を確保する観点から有利であるモノマーと、開始剤とを採用することにより、従来から既知の高屈折率の硬化膜と同等の屈折率を実現し、且つ共振構造による透過率の低下を最小限に抑え、それにより透過率を更に向上させることが可能であるネガ型感光性樹脂組成物を開発した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、硬化膜に調製した場合に屈折率が高く且つ溶解性が優れたネガ型感光性樹脂組成物と、その組成物から得られる硬化膜とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明は、(A)以下の式1で表される構造単位(a1)及び以下の式2で表される構造単位(a2)を含むアクリルコポリマーと、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含む、ネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【化1】

[式中、R、R、及びRxは、それぞれ独立して水素又は1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;並びにL、L、及びLxは、それぞれ独立して単結合であるか、又はN、S、及びOから選択されるヘテロ原子を1つ又は複数個含む又は含まない1~6個の炭素原子を有する鎖である。]
【0011】
加えて、本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜を提供する。
【0012】
発明の有利な効果
本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、従来使用されている高屈折率モノマーよりも比較的に硬度が小さく、且つ溶解性を確保する観点から有利であるモノマーと、開始剤とを採用することにより、1.6以上の屈折率を有し、且つパターニング性に優れたネガ型硬化膜を提供することが可能である。
【0013】
したがって、本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、液晶ディスプレイデバイス、有機ELディスプレイデバイスなどに使用される硬化膜又は有機絶縁膜を調製するのに使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明がより詳細に説明される。
【0015】
本発明は、以下の記述に限定されない。むしろ、それは、本発明の趣旨が変更されない限り様々な形態に修正することができる。
【0016】
本明細書の全体にわたって、ある部分がある要素を「含む」と言われる場合、特に明記しない限り、他の要素が除外されるよりもむしろ、他の要素が含まれ得ると理解される。加えて、本明細書で用いられる成分の量、反応条件などに関する全ての数字及び表現は、特に明記しない限り、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。
【0017】
ネガ型感光性樹脂組成物
本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、(A)アクリルコポリマー、(B)光重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む。
【0018】
加えて、ネガ型感光性樹脂組成物は、(D)界面活性剤を含んでもよく、(E)溶媒を更に含んでもよく、そして場合により、(F)エポキシ化合物、(G)光増感剤、及び/又は(H)接着補助剤を更に含んでもよい。
【0019】
本明細書では以下、感光性樹脂組成物の各成分が詳細に説明される。
【0020】
本明細書で使用するとき、「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指し、そして、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す。
【0021】
下記のそれぞれの成分の重量平均分子量は、ポリスチレン標準を基準とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、溶離剤:テトラヒドロフラン)により測定される重量平均分子量を指す。典型的には、それは単位を伴わないが、g/モル又はDaの単位を有すると理解してもよい。
【0022】
(A)アクリルコポリマー
本発明による感光性樹脂組成物は、アクリルコポリマーを含む。
【0023】
アクリルコポリマーは、現像ステップにおいて現像性を達成するためのアルカリ可溶性樹脂であり、また、コーティング時に膜を形成するためのベース及び最終パターンを形成するための構造体の役割を果たす。
【0024】
アクリルコポリマー(A)は、以下の式1で表される構造単位(a1)及び以下の式2で表される構造単位(a2)を含む:
【化2】

[式中、R、R、及びRxは、それぞれ独立して水素又は1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;並びにL、L、及びLxは、それぞれ独立して単結合であるか、又はN、S、及びOから選択されるヘテロ原子を1つ又は複数個含む又は含まない1~6個の炭素原子を有する鎖である]。
【0025】
具体的には、式1及び2においては、R及びRは、それぞれ独立して水素又はメチルであってよい。加えて、式1においては、Rxは、具体的には水素、又は1~3個の炭素原子を有するアルキルであってよい。
【0026】
式1においては、Lは、具体的には、単結合であり得るか、又は1~6個の炭素原子若しくは1~3個の炭素原子を有するアルキレン若しくはオキシアルキレンであり得る。加えて、式2においては、Lは、1~6個の炭素原子若しくは1~3個の炭素原子を有するアルキレン若しくはオキシアルキレン基であり得る。加えて、式2においては、Lxは、具体的には1~6個の炭素原子若しくは1~3個の炭素原子を有するアルキレン若しくはオキシアルキレン基であり得る。
【0027】
構造単位(a1)は、従来使用されている高屈折率モノマーよりも硬度が小さく、且つ構造単位(a2)との組み合わせにおいて溶解性を確保する上で更に有利となる場合がある。アクリルコポリマー(A)は、上述のように構造単位(a1)及び(a2)を同時に含むので、硬化膜のパターン性に優れており、且つ、最大吸収ピークが300nm以下の波長領域に存在するので、短波長及び可視光領域での透過率を高めることができ、同時に従来から既知の高屈折率硬化膜の屈折率と同程度の屈折率を実現する。
【0028】
式1で表される構造単位(a1)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、又は40モル%以上であってよく、且つ90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、又は60モル%以下であってよい。具体的な例として、式1で表される構造単位(a1)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、20モル%~80モル%であってよい。
【0029】
式2で表される構造単位(a2)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、又は40モル%以上であってよく、且つ90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、又は60モル%以下であってよい。具体的な例として、式2で表される構造単位(a2)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、20モル%~80モル%であってよい。
【0030】
加えて、アクリルコポリマーは、1:4~4:1のモル比で構造単位(a1)と構造単位(a2)を含んでよい。例えば、構造単位間のモル比(a1:a2)は、1:4~4:1、1:4~1:1、1:1~4:1、1:3~1:1、1:1~3:1、1:2~4:1、1:4~2:1、1:4~3:2、又は2:3~4:1であってよい。
【0031】
式1で表される構造単位(a1)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、又は40重量%以上であってよく、且つ90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、又は60重量%以下であってよい。具体的な例として、式1で表される構造単位(a1)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、20重量%~80重量%であってよい。
【0032】
式2で表される構造単位(a2)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、又は40重量%以上であってよく、且つ90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、又は60重量%以下であってよい。具体的な例として、式2で表される構造単位(a2)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、20重量%~80重量%であってよい。
【0033】
加えて、アクリルコポリマーは、1:4~4:1のモル比で構造単位(a1)と構造単位(a2)を含んでよい。例えば、構造単位間の重量比(a1:a2)は、1:4~4:1、1:4~1:1、1:1~4:1、1:3~1:1、1:1~3:1、1:2~4:1、1:4~2:1、1:4~3:2、又は2:3~4:1であり得る。
【0034】
式1で表される構造単位(a1)と式2で表される構造単位(a2)の総含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、又は90重量%以上であってよく、且つ100重量%以下、100重量%未満、99重量%以下、95重量%以下、又は93重量%以下であってよい。
【0035】
アクリルコポリマー(A)は、高屈折率モノマー由来の別の構造単位(a3)を更に含んでもよい。
【0036】
高屈折率モノマーは、例えば芳香族モノマーであってよく、及び、例えば1つ、2つ、又はそれ以上の芳香族環を含有するモノマーであってよい。
【0037】
具体的には、高屈折率モノマーは、カルバゾール環、フルオレン環、ベンゼン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合とを含んでもよい。
【0038】
より具体的には、高屈折率モノマーは、N-ビニルカルバゾール、フルオレン(メタ)アクリレート、ビスフルオレン(メタ)ジアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、プロポキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、アセチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、及びp-ビニルベンジルメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0039】
構造単位(a3)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10~90重量%、より具体的には40~70重量%であってよい。上述の含量の範囲内においては、溶解性及び高屈折率性を確保する上で有利である。
【0040】
アクリルコポリマー(A)は、エポキシ基含有のエチレン性不飽和化合物由来の別の構造単位(a4)を更に含んでもよい。
【0041】
エチレン性不飽和化合物由来の構造単位(a4)は、アクリル系モノマーの共重合性及び絶縁膜の強度を更に高めることができる。
【0042】
エポキシ基含有のエチレン性不飽和化合物由来の構造単位(a4)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジルアクリレート、α-n-プロピルグリシジルアクリレート、α-n-ブチルグリシジルアクリレート、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルプロピル)アクリルアミド、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、及び2-メチルアリルグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0043】
具体的な例として、エポキシ基含有のエチレン性不飽和化合物由来の構造単位(a4)は、グリシジル(メタ)アクリレート又は3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位であってよい。
【0044】
構造単位(a4)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10~70重量%、より具体的には20~40重量%であってよい。上述の含量の範囲内においては、膜の形成中に溶解性を低下させることなく、適切に硬化度を増大することができるという利点がある。
【0045】
アクリルコポリマー(A)は、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、又はそれらの組み合わせ由来の別の構造単位(a5)を更に含んでもよい。
【0046】
エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、又はそれらの組み合わせは、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を含有する重合性不飽和化合物である。それは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸及び桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸及びメサコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びその無水物;3価以上の不飽和ポリカルボン酸及びその無水物;並びに2価以上のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステルから選択される少なくとも1つであってよいが、それらに限定されない。上述のうちでは、(メタ)アクリル酸が現像性の観点から好ましい。
【0047】
構造単位(a5)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10~70重量%、より具体的には、20~60重量%であってよい。上述の含量の範囲内においては、ポリマー鎖が解けず、適切な分子量を確保できるという利点がある。
【0048】
アクリルコポリマー(A)は、構造単位(a1)~(a5)とは異なるエチレン性不飽和化合物由来の別の構造単位(a6)を更に含んでもよい。
【0049】
エチレン性不飽和化合物由来の構造単位(a6)は、メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、プロピルα-ヒドロキシメチルアクリレート、ブチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル;N-ビニルピロリドン及びN-ビニルモルホリンなどのN-ビニル基含有の第三級アミン;ビニルメチルエーテル及びビニルエチルエーテルなどの不飽和エーテル;N-フェニルマレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミドなどからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0050】
既に例示した化合物由来の構造単位は、単独で又は2種以上の組み合わせで本コポリマーに含まれてもよい。
【0051】
構造単位(a6)の含量は、アクリルコポリマー(A)を構成する全ての構造単位を基準として、10~70重量%、より具体的には20~40重量%であってよい。上述の含量の範囲内においては、ポリマーの高屈折率性が劣化されない利点がある。
【0052】
アクリルコポリマー(A)は、個々の構造単位を提供する化合物のそれぞれを配合し、分子量制御剤、重合開始剤、溶媒などを添加した後、そこに窒素を装入し、重合するために混合物をゆっくりと撹拌することにより調製することができる。
【0053】
分子量制御剤は、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン化合物、又はα-メチルスチレン二量体であってよいが、これは、特にそれらに限定されない。重合開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;又はベンゾイルパーオキシド;ラウリルパーオキシド;t-ブチルパーオキシピバレート;又は1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどであってよいが、それらに限定されない。重合開始剤は、単独で又はそれらの2つ以上の組み合わせで使用してよい。加えて、溶媒は、アクリルコポリマーの調製に一般的に使用される任意の溶媒であり得る。それは、好ましくは、メチル3-メトキシプロピオネート又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であり得る。
【0054】
重合反応中に反応条件をより穏やかに維持する一方で反応時間をより長く保つことによって未反応モノマーの残留量を低減させることが可能である。反応条件及び反応時間は、特に限定されない。例えば、反応温度は、従来の温度より低い温度、例えば室温~60℃又は室温~65℃に調節することができる。そのとき、反応時間は、十分な反応が行われるまで維持されるべきである。
【0055】
アクリルコポリマーが上述のプロセスによって調製される場合、アクリルコポリマーにおける未反応モノマーの残留量を非常にわずかなレベルまで低減させることが可能である。ここで、本明細書で用いる、用語アクリルコポリマーの未反応モノマー(又は残留モノマー)は、アクリルコポリマー(A)の構造単位を提供することを目的とするが、反応に関与しない(すなわち、コポリマーの鎖を形成しない)化合物(モノマー)を指す。具体的には、本発明の感光性樹脂組成物中に残留するアクリルコポリマー(A)の未反応モノマーの含量は、(固形分に基づく)アクリルコポリマーの100重量部を基準として、2重量部以下、好ましくは、1重量部以下であり得る。ここで、固形分という用語は、溶媒を除いて、組成物の成分を指してよい。
【0056】
アクリルコポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、5,000~20,000、具体的には8,000~13,000、より具体的には9,000~11,000であってよい。上述の範囲内においては、基板への接着性は優れており、物理的及び化学的特性は良好であり、粘度は適切である。
【0057】
アクリルコポリマーの含量は、溶媒を除いて、本発明の感光性樹脂組成物の固形分を基準として、10~90重量%、好ましく10~80重量%、より好ましくは10~75重量%であってよい。上述の含量の範囲内においては、現像性は適切に制御され、それは、膜保持率の観点から有利である。
【0058】
(B)光重合性化合物
本発明で用いられる光重合性化合物は、光重合開始剤の作用によって重合可能である化合物である。具体的には、光重合性化合物は、二重結合を有する単官能性化合物又は多官能性化合物であり得る。より具体的には、この光重合性化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する単官能性エステル化合物又は多官能性エステル化合物であり得る。これは、耐薬品性の観点からは、少なくとも2つの官能基を有する多官能性化合物であってもよい。
【0059】
一実施形態として、光重合性化合物(B)が、少なくとも1つの高屈折率モノマーを含むことがある。高屈折率モノマーは、例えば芳香族モノマーであってよく、及び、例えば1つ、2つ、又はそれ以上の芳香族環を含有するモノマーであってよい。具体的には、高屈折率モノマーは、カルバゾール環、フルオレン環、ベンゼン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合とを含んでもよい。より具体的には、高屈折率モノマーは、N-ビニルカルバゾール、フルオレン(メタ)アクリレート、ビスフルオレン(メタ)ジアクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、プロポキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、アセチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、及びp-ビニルベンジルメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0060】
別の実施形態として、光重合性化合物(B)が、非芳香族モノマーを含むことがある。非芳香族モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとコハク酸とのモノエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとコハク酸とのモノエステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート-ヘキサメチレンジイソシアネート(ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物)、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、及びエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、それらに限定されない。加えて、これは、2つ以上のイソシアネート基を有し直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有する化合物と、1つ又は複数のヒドロキシル基並びに3、4、若しくは5つのアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を分子内に有する化合物とを反応させることによって得られる多官能性ウレタンアクリレート化合物を含んでもよい。
【0061】
光重合性化合物(B)は、単独で又はそれらの2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0062】
例としては、光重合性化合物(B)は、芳香族モノマーと非芳香族モノマーを同時に含んでもよく、それらの重量比は、1:9~9:1、1:7~7:1、又は1:5~5:1であり得る。より具体的には、芳香族モノマーと非芳香族モノマーの重量比は、5:5~10:1又は6:4~8:2であり得る。
【0063】
市販されている光重合性化合物の例としては、以下のものが挙げられる:単官能性(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-101、M-111、及びM-114(東亞合成株式会社製)、KAYARAD TC-110S及びTC-120S(日本化薬株式会社製)、並びにV-158及びV-2311(大阪有機化学工業株式会社製);二官能性(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-210、M-240、及びM-6200(東亞合成株式会社製)、KAYARAD HDDA、HX-220、及びR-604(日本化薬株式会社製)、並びにV-260、V-312、及びV-335HP(大阪有機化学工業株式会社製);並びにトリ-及びそれより高級な(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-309、M-400、M-403、M-405、M-450、M-7100、M-8030、M-8060、及びTO-1382(東亞合成株式会社製)、KAYARAD TMPTA、DPHA、DPHA-40H、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、及びDPCA-120(日本化薬株式会社製)、並びにV-295、V-300、V-360、V-GPT、V-3PA、V-400、及びV-802(大阪有機化学工業株式会社製)。
【0064】
光重合性化合物(B)は、溶媒を除いて固体重量に基づいた100重量部のアクリルコポリマー(A)に対して5~90重量部、好ましくは5~70重量部、より好ましくは5~50重量部の量で用いることができる。上述の好ましい含量の範囲内においては、感度及び平坦性を更に高めることができる。
【0065】
(C)光重合開始剤
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。例えば、既知の光重合開始剤を使用することができる。
【0066】
具体的には、光重合開始剤は、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、多核キノン系化合物、チオキサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホネート系化合物、オキシム系化合物、カルバゾール系化合物、スルホニウムボレート系化合物、ケトン系化合物及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。具体的には、光重合開始剤は、オキシム系化合物、トリアジン系化合物、又はケトン系化合物からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。より具体的には、オキシム系化合物、トリアジン系化合物、及びケトン系化合物の組み合わせを使用できる。
【0067】
光重合開始剤のより具体的な例としては、1,2-キノンジアジド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ジエチルチオキサントン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-p-メトキシフェニル-s-トリアジン、2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキソジアゾール、9-フェニルアクリジン、3-メチル-5-アミノ-((s-トリアジン-2-イル)アミノ)-3-フェニルクマリン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾイルダイマー、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-オクタン-1,2-ジオン-2-(o-ベンゾイルオキシム)、o-ベンゾイル-4’-(ベンズメルカプト)ベンゾイル-ヘキシル-ケトキシム、2,4,6-トリメチルフェニルカルボニル-ジフェニルホスホニルオキシド、ヘキサフルオロホスホロ-トリアルキルフェニルスルホニウム塩、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2,2’-ベンゾチアゾリルジスルフィド、(E)-2-(4-スチリルフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、及びそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0068】
一実施形態においては、光重合開始剤(C)は、芳香族又は脂肪族環を含有するオキシムエステル系化合物であってよい。
【0069】
オキシムエステル系化合物における芳香族環は、単環又は多環の芳香族炭素環又は複素環であってよい。加えて、オキシムは、アルドキシムでもケトキシムでもよい。加えて、1つ、2つ、又はそれ以上のオキシム基が、オキシムエステル系化合物に存在することもある。
【0070】
具体的な例として、光重合開始剤(C)は、以下の式3:
【化3】

[式中、Rは、N、S、及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する又は含有しない、並びに少なくとも1つの置換基を有する又は有さない5~20個の炭素原子を有する芳香族又は脂肪族基の単環又は多環である]
で表される化合物を含んでもよい。R、R、及びRの置換基は、それぞれ独立して水素、1~10個の炭素原子を有するアルキル、ケトン、又はオキシム、或いは5~10個の炭素原子有する芳香族又は脂肪族環を含有する基である。
【0071】
一例によると、光重合開始剤は、複素環式のマルチケトキシムエステル系化合物であり得る。別の例によると、光重合開始剤は、フルオレンオキシムエステル系化合物、フルオレンケトキシムエステル系化合物、又はカルバゾールケトキシムエステル系化合物であり得る。
【0072】
加えて、光重合開始剤(C)は、溶媒を除いて固体重量に基づいた100重量部のアクリルコポリマー(A)に対して、1~20重量部、好ましくは1~10重量部、より好ましくは1~7重量部の量で用いることができる。上述の好ましい含量の範囲内においては、優れた現像性及び塗膜特性で高感度を実現する上でより有利である場合がある。
【0073】
(D)界面活性剤
本発明の感光性樹脂組成物は、必要ならば、その塗布性を向上させるために界面活性剤を更に含んでもよい。
【0074】
界面活性剤の種類は特に限定されないが、それの例としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0075】
界面活性剤の具体例としては、フッ素及びケイ素系の界面活性剤、例えばDow Corning Toray Co.,Ltd.によって供給されるFZ-2122、BM CHEMIE Co.,Ltd.によって供給されるBM-1000及びBM-1100、大日本インキ化学工業株式会社によって供給されるMegapack F-142D、F-172、F-173、及びF-183、住友3M株式会社によって供給されるFlorad FC-135、FC-170C、FC-430、及びFC-431、旭硝子株式会社によって供給されるSufron S-112、S-113、S-131、S-141、S-145、S-382、SC-101、SC-102、SC-103、SC-104、SC-105、及びSC-106、Shinakida Kasei Co.,Ltd.によって供給されるEftop EF301、EF303、及びEF352、Toray Silicon Co.,Ltd.によって供給されるSH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、及びDC-190;非イオン界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどを含むポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどを含むポリオキシエチレンアリールエーテル、及びポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどを含むポリオキシエチレンジアルキルエステル;並びにオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社によって製造される)、(メタ)アクリレート系コポリマーPolyflow No.57及び95(Kyoei Yuji Chemical Co.,Ltd.によって製造される)などを挙げることができる。それらは、単独で又はそれらの2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0076】
界面活性剤は、溶媒を除いて固体重量に基づいた100重量部のアクリルコポリマー(A)に対して0.001~5重量部、好ましくは0.001~3重量部、より好ましくは0.001~2重量部の量で用いることができる。上述の好ましい含量の範囲内においては、組成物の適用性を向上させる上でより有利である場合がある。
【0077】
(E)溶媒
本発明による感光性樹脂組成物は、上記の成分が溶媒と混合されている液体組成物として調製することができる。溶媒は、例えば、有機溶媒であり得る。
【0078】
本発明の溶媒は、それが上述の成分を溶解させることができ、且つ、化学的に安定である限り、特に限定されない。例えば、溶媒は、アルコール、エーテル、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素、ケトン、エステルなどであってよい。
【0079】
溶媒の特定の例としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、アセト酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エトキシ酢酸エチル、エチルヒドロキシアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエート、メチル2-メトキシプロピオネート、メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0080】
上述のうちで、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ケトンなどが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メチル2-メトキシプロピオネート、γ-ブチロラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどが好ましい。
【0081】
既に例示された溶媒は、単独で又はそれらの2つ以上の組み合わせで使用できる。
【0082】
本発明による感光性樹脂組成物中の溶媒の量は、特に限定されない。例えば、溶媒は、固形分が感光性樹脂組成物の総重量を基準にして、10~90重量%、好ましくは15~80重量%、より好ましくは15~70重量%であるように用いることができる。固形分という用語は、溶媒を除いて、組成物の成分を指してよい。溶媒の量が上述の範囲内であるならば、組成物のコーティングを容易に実施することができ、それの流動性を適切なレベルで維持することができる。
【0083】
(F)エポキシ化合物
本発明による感光性樹脂組成物は、樹脂の内部密度を高め、それにより、それから形成される硬化膜の耐薬品性を向上させるためにエポキシ化合物を含有していてもよい。
【0084】
エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を含有する不飽和モノマーのホモオリゴマー又はヘテロオリゴマーであってよい。
【0085】
少なくとも1つのエポキシ基を含有する不飽和モノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジルアクリレート、α-n-プロピルグリシジルアクリレート、α-n-ブチルグリシジルアクリレート、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルプロピル)アクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0086】
エポキシ化合物は、当技術分野において既知の任意の方法によって合成することができる。
【0087】
市販のエポキシ化合物の例は、GHP03(メタクリル酸グリシジルホモポリマー、Miwon Commercial Co.,Ltd.)であり得る。
【0088】
エポキシ化合物の重量平均分子量は、好ましくは100~30,000、より好ましくは、1,000~15,000であり得る。エポキシ化合物の重量平均分子量が100以上であるならば、硬化膜は、より優れた硬度を有することができる。また、エポキシ化合物の重量平均分子量が30,000以下であるならば、硬化膜は、その上での任意のステップを平坦化するのに好適である、一様な厚さを有することができる。
【0089】
エポキシ化合物(F)は、溶媒を除いて固体重量に基づいた100重量部のアクリルコポリマー(A)に対して0.001~20重量部又は0.001~10重量部の量で用いることができる。上述の含量の範囲内においては、感光性樹脂組成物から調製された硬化膜の耐薬品性及び接着性はより優れたものであり得る。
【0090】
(G)光増感剤
光増感剤は、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホネート系化合物、又はo-アシルオキシム系化合物であり得る。具体的には、光増感剤は、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、及びo-アシルオキシム系化合物からなる群から選択される1つを含有してよい。加えて、チオキサントン系化合物は、光重合性化合物(B)及び光重合開始剤(C)の効率を増大させる観点から、光増感剤として使用することができる。
【0091】
チオキサントン系化合物は、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、又は2,4-ジイソプロピルチオキサントンであってよい。
【0092】
アセトフェノン系化合物は、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、又は2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンであってよい。
【0093】
ビイミダゾール系化合物は、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、又は2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールであってよい。
【0094】
加えて、ビイミダゾール系化合物を光増感剤として使用する場合、感度向上の観点から、水素供与体を併用するのが好ましい。水素供与体は、露光時にビイミダゾール系化合物から発生するラジカルに水素原子を供与できる化合物を指す。水素供与体は、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール及び2-メルカプトベンゾオキサゾールなどのメルカプタン系水素供与体;並びに4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン系水素供与体であってよい。本発明においては、水素供与体を単独で用いても、2つ以上の組み合わせで用いてもよいが、感度向上の観点から、1つ又は複数のメルカプタン系水素供与体と1つ又は複数のアミン系水素供与体の組み合わせを使用するのが好ましい。
【0095】
トリアジン系化合物は、例えば、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、又は2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンであってよい。
【0096】
光増感剤(G)は、溶媒を除いて固体重量に基づいたアクリルコポリマー(A)の100重量部に対して、0.05~20重量部、又は1~15重量部の量で用いることができる。光増感剤の含量が上述の範囲内であるならば、光増感剤の作用効率が高まり、露光時の硬化が十分に行われて、それが、基材との接着性を向上させる。
【0097】
(H)接着補助剤
本発明の感光性樹脂組成物は、基板への接着性を増進させる接着補助剤を更に含んでもよい。
【0098】
接着補助剤の種類は、特に限定されない。例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を有するシランカップリング剤を使用できる。
【0099】
接着補助剤のより具体的な例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましいのは、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランであり、これは、膜保持率を増進させることができ、且つ基板との接着性に優れている。加えて、イソシアネート基を有するγ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(例えば、信越(Shin-Etsu)からのKBE-9007)は、耐薬品性を向上させるために、使用できる。
【0100】
接着補助剤(H)は、溶媒を除いて固体重量に基づいた100重量部のアクリルコポリマー(A)に対して、0.001~5重量部、好ましくは0.01~1重量部の量で用いることができる。上述の範囲内においては、基板への接着性が更に良好となる場合がある。
【0101】
加えて、本発明の感光性樹脂組成物は、その物理的特性に悪影響を及ぼさない限り、酸化防止剤、安定剤及びラジカル捕捉剤などの他の添加剤を更に含むことができる。
【0102】
組成物の特性及び使用
上述の成分を含む本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、一般的な方法で調製できる。
【0103】
本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、従来使用されている硬質モノマーよりも比較的に硬度が小さく、且つ溶解性を確保する観点から有利であるモノマーと、開始剤とを採用することにより、1.6以上の屈折率を有し、且つパターニング性に優れたネガ型硬化膜を提供することが可能である。
【0104】
具体的には、ネガ型感光性樹脂組成物は、パターン形成が可能なレベルである、300Å/s以上のアルカリ溶解速度(ADR)を有することができる。具体的には、400Å/s以上、700Å/s以上、1,000Å/s以上、1,300Å/s以上、1,500Å/s以上、2,000Å/s以上、3,000Å/s以上、4,000Å/s以上、5,000Å/s以上、又は6,000Å/s以上であることが優れている。より具体的な例としては、400Å/s~10,000Å/s、400Å/s~8,000Å/s、又は2000Å/s~10,000Å/sであってよい。
【0105】
したがって、本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、液晶ディスプレイデバイス、有機ELディスプレイデバイスなどに使用される硬化膜又は有機絶縁膜を調製するのに使用できる。
【0106】
本発明は、硬化膜、具体的には、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される有機絶縁膜を提供する。
【0107】
硬化膜は、当技術分野において既知の方法、例えば、感光性樹脂組成物を基板上にコートした後に、硬化する方法によって形成することができる。より具体的には、硬化ステップにおいて、基板上にコートした感光性樹脂組成物は、溶媒を除去するために、例えば、60℃~130℃の温度でのプリベークにかけられ;次に所望のパターンを有するフォトマスクを使用して露光させられ;コーティング層上にパターンを形成するために、現像液(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)を使用して、現像処理してよい。その後、必要があれば、そのパターン形成したコーティング層に、例えば、150~300℃の温度で10分~5時間ポストベークを行い、所望の硬化膜を調製する。露光は、200~500nmの波長域において365nmの波長を基準として10mJ/cm~100mJ/cmの露光量で行うことができる。本発明のプロセスによれば、プロセスの観点から所望のパターンを容易に形成することが可能である。
【0108】
基板への感光性樹脂組成物のコーティングは、例えば、2~25μmの所望の厚さで、スピンコーティング法、スリットコーティング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などによって行うことができる。更に、曝露(照射)のために使用される光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲン化金属ランプ、アルゴンガスレーザーなどを使用できる。必要に応じて、X線、電子線なども使用することができる。
【0109】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、耐熱性、透明性、誘電率、耐溶媒性、耐酸性、及び耐アルカリ性の観点から優れている硬化膜を形成することができる。
【0110】
特に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、1.6以上、具体的には1.6~1.8、1.6~1.75、又は1.6~1.7の高屈折率を有することができる。
【0111】
加えて、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、300nm以下の範囲に、より具体的には270nm~290nmの範囲に最大吸収ピークの波長を有することがある。従来の高屈折率コポリマーにおいては、共振構造の長さが長くなることにより、屈折率を確保するのに有利であるとしても、最大吸収ピークが可視光線領域にシフトし易くなって、それにより透過率が低下する。しかしながら、本発明による高屈折率モノマーを用いる場合には、最大吸収ピークが、300nm以下に存在し、それは短波長領域及び可視光線領域において透過率を確保するのに有利である。
【0112】
加えて、このように形成された本発明の硬化膜は、それが熱処理にかけられるか、又は溶媒、酸、塩基などに浸漬されるか、若しくはそれらと接触するときに、表面粗さがない優れた光透過率を有する。したがって、硬化膜は、液晶ディスプレイデバイス又は有機発光ディスプレイデバイスの薄膜トランジスタ(TFT)基板用の平坦化膜;有機発光ディスプレイデバイス用のバリアリブ;半導体デバイスの層間誘電体;光導波路のコア又はクラッド材などとして効果的に使用することができる。
【実施例0113】
本発明の形態
以降で、以下の実施例を参照しながら、本発明を更に詳しく説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されない。
【0114】
以下の調製実施例において、重量平均分子量は、ポリスチレン標準を基準とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、溶離液:テトラヒドロフラン)によって測定される。
【0115】
合成例1:アクリルコポリマーA-1
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としての200重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを装入し、溶媒をゆっくりと攪拌しながら温度を60℃に上げた。21.56重量%のスチレン、15.05重量%のメタクリル酸グリシジル、27.32重量%のメタクリル酸、24.57重量%のメタクリル酸メチル、及び11.50重量%のメタクリル酸ヒドロキシエチルで構成される100重量部のモノマー混合物をそこに添加した。その後、3重量部のラジカル重合開始剤(V-65)を5時間にわたって滴下し、温度を維持しながら、重合反応を3時間行った。結果として、10,170の重量平均分子量(Mw)を有するアクリルコポリマー(34.09重量%の固形分)を得た。
【0116】
合成例2:アクリルコポリマーA-2
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としての259重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを装入し、溶媒をゆっくりと攪拌しながら温度を70℃に上げた。71.1重量%の9-ビニルカルバゾールと28.9重量%のコハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)とで構成される100重量部のモノマー混合物をそこに添加した。その後、4.2重量部のラジカル重合開始剤(V-65)を2時間にわたって滴下し、温度を維持しながら、重合反応を1時間行った。結果として、6,771の重量平均分子量(Mw)を有するアクリルコポリマー(25.0重量%の固形分)を得た。
【0117】
合成例3:アクリルコポリマーA-3
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としての260重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを装入し、溶媒をゆっくりと攪拌しながら温度を70℃に上げた。66.3重量%の2-ビニルナフタレンと33.7重量%のコハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)とで構成される100重量部のモノマー混合物をそこに添加した。その後、5重量部のラジカル重合開始剤(V-65)を2時間にわたって滴下し、温度を維持しながら、重合反応を1時間行った。結果として、12,259の重量平均分子量(Mw)を有するアクリルコポリマー(24.3重量%の固形分)を得た。
【0118】
合成例4:アクリルコポリマーA-4
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としての260重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを装入し、溶媒をゆっくりと攪拌しながら温度を70℃に上げた。39.6重量%の2-ビニルナフタレンと60.4重量%のコハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)とで構成される100重量部のモノマー混合物をそこに添加した。その後、5重量部のラジカル重合開始剤(V-65)を2時間にわたって滴下し、温度を維持しながら、重合反応を1時間行った。結果として、19,894の重量平均分子量(Mw)を有するアクリルコポリマー(24.3重量%の固形分)を得た。
【0119】
合成例5:アクリルコポリマーA-5
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としての259重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを装入し、溶媒をゆっくりと攪拌しながら温度を70℃に上げた。86.6重合%の2-ビニルナフタレンと13.4重合%のアクリル酸とで構成される100重量部のモノマー混合物をそこに添加した。その後、6.5重量部のラジカル重合開始剤(V-65)を2時間にわたって滴下し、温度を維持しながら、重合反応を1時間行った。結果として、13,080の重量平均分子量(Mw)を有するアクリルコポリマー(24.9重量%の固形分)を得た。
【0120】
合成例6:アクリルコポリマーA-6
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としての259重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを装入し、溶媒をゆっくりと攪拌しながら温度を70℃に上げた。56.8重合%のスチレンと43.2重合%のコハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)とで構成される100重量部のモノマー混合物をそこに添加した。その後、6.4重量部のラジカル重合開始剤(V-65)を2時間にわたって滴下し、温度を維持しながら、重合反応を1時間行った。結果として、19,033の重量平均分子量(Mw)を有するアクリルコポリマー(24.9重量%の固形分)を得た。
【0121】
合成例A1~A6の組成物を下の表1及び2に要約する。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
実施例1:感光性樹脂組成物の調製
7.14重量部の合成例1のアクリルコポリマー(A-1)、92.86重量部の合成例3のアクリルコポリマー(A-3)、35.71重量部の光重合性化合物(B-1)、7.14重量部の光重合性化合物(B-2)、5.96重量部の重合開始剤(C-1)、及び0.30重量部の界面活性剤(D-1)を混合溶媒(E-1/E-2=84.5:15.5、w/w)中で3時間溶かした。それを、0.2μmの細孔サイズを有するメンブランフィルターを通して濾過し、17重量%の固形分を有する組成物を得た。
【0125】
実施例2及び比較例1~4:感光性樹脂組成物の調製
下の表3及び4に示す実施例1と同じ手法で、実施例2及び比較例1~4の組成物をそれぞれ調製した(17重合%の固形分)。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
試験例1:アルカリ溶解速度(ADR、Å/s)
実施例及び比較例において調製した組成物をそれぞれスピンコーティングによってウェーハ上にコートした後、105℃に保持したホットプレート上で90秒間それをプリベークして、厚さ約1μmを有する乾燥膜を形成した。その後、ADR測定器(TFA-11)を用いて、乾燥膜のADRを測定した。
【0129】
測定においては、23℃で2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水性現像液を塗布し、波長変化が完了する時間を測定して、ADR値を求めた。ADR値が大きいほど、材料の溶解性が高い。測定したADR値が300Å/s以上であった場合、それを優秀と評価した。しかしながら、溶解が速すぎる場合や遅すぎる場合には、測定は不可能であった。一般的には、有機膜のパターン形成条件として、目標が最終的に20,000Åを実現することである場合には、初期のコーティングは、約25000Åであり、現像時間は60秒である。このような場合においては、パターン形成の非露光部に残膜が存在してはならないので、25,000Å/60s=357Å/sのADRを確保する必要がある。
【0130】
試験例2:屈折率
実施例及び比較例において調製した組成物をそれぞれスピンコーティングによってウェーハ上にコートした後、105℃に保持したホットプレート上で90秒間それをプリベークして、乾燥膜を形成した。その後、膜を対流式オーブンにおいて240℃で20分間加熱して、厚さ0.3~0.5μmを有する硬化膜を調製した。硬化膜の屈折率を22℃、波長550nmで、エリプソメトリー(M-2000D,J.A.Wollam)を用いて、測定した。
【0131】
測定した屈折率が1.6以上である場合、それを優秀と評価した。
【0132】
測定結果を下の表5に示す。
【0133】
【表5】
【0134】
上の表から分かるように、実施例1及び2においては、ADR値が、400Å/s以上であり、屈折率が1.6以上であり、高屈折率パターン形成に好適であることを確証した。対照的に、比較例1及び4において、屈折率が1.6未満の値で劣っていた。加えて、比較例3においては、ADR値が400Å/s未満であり;比較例2においては、溶解していなく;及び比較例4においては、溶解速度が速すぎて測定できなかった。
【0135】
上述のように、本発明の組成物は、1.6以上の高屈折率を維持し、且つ同時に、パターンに有利なADRを有する。本組成物は、短波長領域及び可視光線領域において透過率を確保することも又有利である。したがって、本組成物は、液晶ディスプレイデバイス又は有機発光ディスプレイデバイスに適用される硬化膜又は有機絶縁膜の製造に使用することができる。
【外国語明細書】