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特開2024-60609消臭速乾糸、消臭速乾糸の製造方法、消臭速乾性生地、消臭速乾性衣服
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  • 特開-消臭速乾糸、消臭速乾糸の製造方法、消臭速乾性生地、消臭速乾性衣服 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060609
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】消臭速乾糸、消臭速乾糸の製造方法、消臭速乾性生地、消臭速乾性衣服
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/24 20060101AFI20240424BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20240424BHJP
   D02G 1/02 20060101ALI20240424BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20240424BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20240424BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20240424BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240424BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240424BHJP
【FI】
D02G3/24
D02G3/04
D02G1/02 B
D06M11/83
D04B1/14
D04B21/00 B
A41D31/00 503G
A41D31/00 503F
A41D31/04 F
A41D31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179658
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】202211282758.X
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517260180
【氏名又は名称】依美ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 偉
【テーマコード(参考)】
4L002
4L031
4L036
【Fターム(参考)】
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB01
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC00
4L002BA00
4L002CA00
4L002EA00
4L002EA03
4L002FA01
4L031AA18
4L031AA20
4L031AB21
4L031AB31
4L031BA04
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA06
4L036MA33
4L036MA39
4L036PA42
4L036RA05
4L036UA06
4L036UA25
(57)【要約】
【課題】消臭速乾糸、消臭速乾糸の製造方法、消臭速乾性生地、消臭速乾性衣服を提供する。
【解決手段】消臭速乾糸1であって、少なくとも1本の消臭繊維2と、少なくとも1本の速乾繊維3とを含む。消臭繊維2と速乾繊維3とは、互いに絡み合うとともに、消臭速乾糸1の長手方向に沿ってそれぞれ所定の間隔d1、d2をあけて設けられた第1セグメント4と第2セグメント5とを交互に複数ずつ有する。第1セグメント4はメッシュ発泡状構造を呈し、第2セグメント5は束状構造を呈する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消臭速乾糸であって、少なくとも1本の消臭繊維と少なくとも1本の速乾繊維とを含み、
前記消臭繊維と速乾繊維とは、互いに絡み合うとともに、前記消臭速乾糸の長手方向に沿ってそれぞれ所定の間隔をあけて設けられた第1セグメントと第2セグメントとを交互に複数ずつ有し、
前記第1セグメントはメッシュ発泡状構造を呈し、
前記第2セグメントは束状構造を呈することを特徴とする消臭速乾糸。
【請求項2】
消臭繊維と速乾繊維との質量比が、(消臭繊維):(速乾繊維)=1:0.1~1:10であることを特徴とする請求項1記載の消臭速乾糸。
【請求項3】
消臭繊維の本数が12~300本であることを特徴とする請求項1記載の消臭速乾糸。
【請求項4】
消臭繊維は、消臭ポリエステル繊維および/または消臭ナイロン繊維を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の消臭速乾糸。
【請求項5】
隣り合う第1のセグメントどうしの間隔が0.7~2.0cmであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の消臭速乾糸。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の消臭速乾糸を製造するに際し、消臭繊維を含む消臭糸と速乾繊維を含む速乾糸とを合糸することを特徴とする消臭速乾糸の製造方法。
【請求項7】
消臭糸をほぐすことによって消臭繊維を得ることを特徴とする請求項6記載の消臭速乾糸の製造方法。
【請求項8】
速乾糸をほぐすことによって速乾繊維を得ることを特徴とする請求項6記載の消臭速乾糸の製造方法。
【請求項9】
太さ20~200Dの速乾糸を用いることを特徴とする請求項6記載の消臭速乾糸の製造方法。
【請求項10】
T400糸と、PTT糸と、T8糸と、PBT糸と、ポリエチレン糸と、ポリプロピレン糸とのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである速乾糸を用いることを特徴とする請求項6記載の消臭速乾糸の製造方法。
【請求項11】
合糸機で交絡することで合糸することを特徴とする請求項6記載の消臭速乾糸の製造方法。
【請求項12】
交絡数を50~130個/メートルとすることを特徴とする請求項11記載の消臭速乾糸の製造方法。
【請求項13】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の消臭速乾糸による編構造を呈することを特徴とする消臭速乾生地。
【請求項14】
請求項13に記載の消臭速乾生地を含むことを特徴とする衣服。
【請求項15】
夏服またはスポーツウェアであることを特徴とする請求項14記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭速乾糸、消臭速乾糸の製造方法、消臭速乾性生地、消臭速乾性衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴い、人々の生活の質も絶えず向上している。紡績糸による織物や編物に対する需要は、きれいな外観と快適さだけに留まらず、従来の単一紡績材料では人々の使用上の需要を満たすことができなくなっている。人々の生活環境には、大量の細菌やカビが分布しており、細菌の生産繁殖に際しては、異臭を発生しやすく、人体の健康に危害を及ぼす。織物や編物に繁殖したカビも毒素を分泌し、「カビ臭」を放出し、人体の健康に危害を及ぼし、織物や編物の使用寿命を低下させる。さらに、人々の生活は、汗臭、異臭、老年臭などの、人体から発するにおいに悩まれる。
【0003】
したがって、紡績材料の消臭性能を高めることが紡績分野の重点研究である。特許文献1は、2成分を有する高効率抗菌消臭糸と、その製造方法と、その応用とを開示する。この糸は、Z方向に撚る銅改質ポリアクリロニトリル繊維と主繊維とを混紡して得られるものである。主繊維には、綿繊維、ポリエステル繊維、ビスコース繊維、またはモダール繊維が含まれる。紡績加工工程において、主繊維と銅改質ポリアクリロニトリル繊維とを混合し、梳綿、練条、粗紡、精紡、後加工などの工程を経て、2成分の高効率抗菌消臭糸を得る。さらに2本の糸をS方向に撚り合わせてストランドを形成する。この特許文献1の発明で得られる糸は、抗菌消臭能力とその範囲とを高めることができ、吸湿、通気、快適などの性能を有する。
【0004】
消臭性能以外に、暑い夏や運動後に人体から大量の汗が発生するため、衣服の着心地に影響を与えず、乾いた快適な状態を維持しながら、汗を直ちに体外に排出されることが望まれている。したがって、速乾生地の研究開発が、紡績分野のもう一つの重点研究となっている。特許文献2は、抗菌的に安全に吸湿する速乾生地およびその製造方法を開示する。この生地は、第1糸、第2糸、第3糸から編まれる。第1糸は、純綿繊維糸または綿繊維混紡糸である。この綿繊維混紡糸は、綿繊維と、麻繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミド繊維の1種または複数種とを混紡した糸である。第2糸は、ナノ銀イオンを導入した非円形断面の改質ポリエステル繊維糸、または非円形断面の改質ポリエステル繊維混紡糸である。この改質ポリエステル繊維混紡糸は、ナノ銀イオンを導入した改質ポリエステル繊維と再生セルロース繊維とを混紡した糸である。第3糸は、ポリウレタン繊維糸である。この生地は、抗菌性、吸湿速乾性及び安全性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第108728959号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第104278421号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術で提供されている糸は、性能が比較的に単一であり、優れた消臭性能、抗菌性能、速乾性を兼ね備えるものがない。
【0007】
したがって、優れた消臭性、抗菌性、速乾性を兼ね備えた消臭速乾糸の開発は、当分野で早急に解決しなければならない技術的課題である。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠陥に対して、消臭速乾糸、消臭速乾糸の製造方法、消臭速乾性生地、消臭速乾性衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明の消臭速乾糸は、
少なくとも1本の消臭繊維と少なくとも1本の速乾繊維とを含み、
前記消臭繊維と速乾繊維とは、互いに絡み合うとともに、前記消臭速乾糸の長手方向に沿ってそれぞれ所定の間隔をあけて設けられた第1セグメントと第2セグメントとを交互に複数ずつ有し、
前記第1セグメントはメッシュ発泡状構造を呈し、
前記第2セグメントは束状構造を呈することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の消臭速乾糸は、優れた抗菌性と消臭性とを有すると同時に、速乾性が比較的高い。この消臭速乾糸を用いて製造された生地も、抗菌性、消臭性、速乾性を有すると同時に、手触りが柔らかで快適であり、特に夏服やスポーツウェアなどの衣服の製造に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の消臭速乾糸の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本発明の消臭速乾糸1は、少なくとも1本の消臭繊維2と少なくとも1本の速乾繊維3とを含む。消臭繊維2と速乾繊維3とは、互いに絡み合うとともに、消臭速乾糸1の長手方向に沿ってそれぞれ所定の間隔d1、d2をあけて設けられた第1セグメント4と第2セグメント5とを交互に複数ずつ有する。図示のように、第1セグメント4は、メッシュ発泡状構造を呈する。また図示のように、第2セグメント5は、束状構造を呈する。
【0013】
このような消臭速乾糸1によれば、消臭繊維2の優位性と速乾繊維3の優位性とを最大限に発揮する。このため、消臭速乾糸1は、優れた抗菌性と消臭性を有すると同時に、速乾性が比較的高い。したがって、消臭速乾糸1を用いて製造される生地は、手触りが柔らかで快適であり、特に夏服やスポーツウェアなどの衣服の製造に適する。
【0014】
消臭繊維2と速乾繊維3との質量比は、(消臭繊維):(速乾繊維)=1:0.05~1:20であることが好ましく、1:0.1~1:10であることが特に好ましい。たとえば、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10などである。
【0015】
消臭繊維2と速乾繊維3との質量比を1:0.1~1:10とした消臭速乾糸1は、より優れた消臭性能と速乾性能とを有する。消臭繊維2の質量比が低すぎると、消臭速乾糸1の消臭効果が悪くなる。速乾繊維3の質量比が低すぎると、消臭速乾糸1の速乾効果が悪くなる。
【0016】
消臭繊維2の本数は、12~300本であることが好ましい。たとえば、20本、40本、60本、80本、100本、120本、140本、160本、180本、200本、220本、240本、260、280本などである。
【0017】
消臭繊維2は、消臭ポリエステル繊維および/または消臭ナイロン繊維を含むこと好ましい。
【0018】
消臭繊維2は、消臭糸がほぐされることによって得られたものであることが好ましい。
【0019】
ほぐされる前の消臭糸は、その太さが20~200Dであることが好ましい。たとえば、30D、40D、60D、80D、100D、120D、140D、160D、180Dなどである。
【0020】
この消臭糸は、消臭ポリエステルおよび/または消臭ナイロンを含むことが好ましい。
【0021】
速乾繊維3は、速乾糸がほぐされることによって得られたものであることが好ましい。
【0022】
ほぐされる前の速乾糸は、その太さが20~200Dであることが好ましい。たとえば、30D、40D、60D、80D、100D、120D、140D、160D、180Dなどである。
【0023】
この速乾糸は、T400糸と、PTT糸と、T8糸と、PBT糸と、ポリエチレン糸と、ポリプロピレン糸とのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることが好ましい。
【0024】
本発明において、消臭繊維2と速乾繊維3とは、いずれも市場から直接購入するか、市販の消臭糸や速乾糸をほぐすことで得られる。たとえば、中国の無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製のX-GERM(登録商標)健康機能繊維や、中国の凱泰特種繊維科技有限会社製の銅イオン抗菌ナイロンを消臭糸とし、この消臭糸をほぐすことによって消臭繊維2を得ることができる。そのほぐし工程は、糸を製造する合糸工程において直接行うことができる。
【0025】
隣り合う第1のセグメント4どうしの間隔d1は、0.5~2.5cmであることが好ましく、0.7~2.0cmであることが特に好ましい。たとえば、0.85cm、0.9cm、0.95cm、1cm、1.05cm、1.1cm、1.15cm、1.2cm、1.25cm、1.5cm、1.75cmなどである。
【0026】
本発明の消臭速乾糸の製造方法は、消臭繊維2を含む消臭糸と速乾繊維3を含む速乾糸とを合糸することを特徴とする。
【0027】
本発明の消臭速乾糸の製造方法においては、市販の消臭糸、速乾糸を、消臭繊維2、速乾繊維3の供給源とすることができる。消臭糸と速乾糸とは、合糸工程において消臭繊維2と速乾繊維3とにほぐし、これらのほぐされた消臭繊維2と速乾繊維3とを合糸機内において所望の構造に絡み合わせることができ、これによって消臭速乾糸1が得られる。
【0028】
合糸は、合糸機で交絡することで行うことができる。
【0029】
交絡数は、50~130個/メートルであることが好ましい。たとえば、60個/メートル、70個/メートル、80個/メートル、90個/メートル、100個/メートル、110個/メートル、120個/メートルなどである。
【0030】
本発明の消臭速乾生地は、上述の消臭速乾糸1で編まれたものである。
【0031】
本発明の衣服は、上述の消臭速乾生地を含む。
【0032】
この衣服は、夏服またはスポーツウェアであることが好ましい。
【0033】
本発明の実施の形態によると、以下の有益な効果を有する。
【0034】
(1)上述のように、消臭速乾糸1は、少なくとも1本の消臭繊維2と少なくとも1本の速乾繊維3とを含む。消臭繊維2と速乾繊維3とは、互いに絡み合うとともに、消臭速乾糸1の長手方向に沿ってそれぞれ所定の間隔d1、d2をあけて設けられた第1セグメント4と第2セグメント5とを交互に複数ずつ有する。図示のように、第1セグメント4は、メッシュ発泡状構造を呈する。また図示のように、第2セグメント5は、束状構造を呈する。
【0035】
このため、消臭速乾糸1は、優れた抗菌性と消臭性を有すると同時に、速乾性が比較的高い。また、消臭速乾糸1を用いて製造された生地は、手触りが柔らかで快適であり、特に夏服やスポーツウェアなどの製造に適する。
【0036】
(2)消臭速乾糸1は、さらに、糸中の消臭繊維2と速乾繊維3との質量比が、特に(消臭繊維):(速乾繊維)=1:0.1~1:10であること、および隣り合う第1のセグメント4どうしの間隔d1が、特に0.7~2.0cmであることにより、消臭速乾糸1で編んだ生地の消臭性試験は、以下の結果を示すことができる。すなわち、洗浄前後のアンモニアの減少率は99.9%を超え、洗浄前の酢酸の減少率は86~92%、洗浄後の酢酸の減少率は98%以上、洗浄前のイソ吉草酸の減少率は95.6~98%、洗浄後のイソ吉草酸の減少率は99.1%以上とすることができる。抗菌性試験は、以下の結果を示すことができる。すなわち、洗浄前ブドウ球菌の抗菌活性値は5.0~7.4、洗浄後ブドウ球菌の抗菌活性値は4.8~7.7、洗浄前の肺炎桿菌の抗菌活性値は5.5~6.5、洗浄後の肺炎桿菌の抗菌活性値は4.3~5.2とすることができる。速乾性試験によると、生地の100%乾燥時間は31~49minとすることができる。つまり、優れた抗菌、消臭、速乾性を有する。
【実施例0037】
以下、本発明の技術的解決手段を具体的な実施例によりさらに説明する。ただし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解できるようにするものであり、本発明を限定するものではない。
【0038】
(実施例1)
概略構造を図1に示す消臭速乾糸1である。36本の消臭繊維2と、36本の速乾繊維3とを含み、かつ、36本の消臭繊維2と、36本の速乾繊維3との総質量比は、(消臭繊維):(速乾繊維)=1:1.5である。
【0039】
消臭繊維2と速乾繊維3とは、消臭速乾糸1の長手方向に沿って絡み合っており、消臭速乾糸1の長手方向に沿って間隔d1、d2をあけて複数設けられた第1セグメント4と第2セグメント5とを交互に形成している。第1セグメント4はメッシュ発泡状構造を呈し、第2セグメントは束状構造を呈している。間隔d1、d2すなわち第1セグメント4間の距離および第2セグメント5間の距離は、いずれも1cmである。
【0040】
消臭速乾糸1の製造方法は以下の通りである。すなわち、消臭繊維2を含む消臭糸(太さ50Dの消臭ポリエステル、無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製、抗菌消臭シリーズFDY50D/36f丸穴)と、速乾繊維を含む速乾糸(太さ75D、T400糸)とを合糸機でほぐしたうえで合糸することで、実施例1の消臭速乾糸1を得た。
【0041】
(実施例2)
消臭速乾糸1であり、その構造は実施例1と同様であって、36本の消臭繊維2と、36本の速乾繊維3とを含む。ただし、消臭繊維2と速乾繊維3との総質量比が、(消臭繊維):(速乾繊維)=1:1である点で、実施例1と相違する。
【0042】
消臭繊維2と速乾繊維3とは、消臭速乾糸1の長手方向に沿って絡み合っており、消臭速乾糸1の長手方向に沿って間隔d1、d2をあけて複数設けられた第1セグメント4と第2セグメント5とを形成している。第1セグメント4はメッシュ発泡状構造を呈し、第2セグメント5は束状構造を呈している。間隔d1、d2すなわち第1セグメント4間の距離および第2セグメント5間の距離は、いずれも0.8cmである点で、実施例1と相違する。
【0043】
消臭速乾糸1の製造方法は以下の通りである。すなわち、消臭繊維2を含む消臭糸(太さ75Dの消臭ポリエステル、無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製、抗菌消臭シリーズFDY75D/36f丸穴)と、速乾繊維を含む速乾糸(太さ75D、PTT糸)とを合糸機でほぐしたうえで合糸することで、実施例2の消臭速乾糸1を得た。
【0044】
(実施例3)
消臭速乾糸1であって、その構造は実施例1と同様である。ただし、72本の消臭繊維2と、72本の速乾繊維3とを含み、かつ、消臭繊維2と速乾繊維3との総質量比が、(消臭繊維):(速乾繊維)=2:1である点で、実施例1と相違する。
【0045】
消臭繊維2と速乾繊維3とは、消臭速乾糸1の長手方向に沿って絡み合っており、消臭速乾糸1の長手方向に沿って間隔d1、d2をあけて複数設けられた第1セグメント4と第2セグメント5とを形成している。第1セグメント4はメッシュ発泡状構造を呈し、第2セグメント5は束状構造を呈している。間隔d1、d2すなわち第1セグメント4間の距離および第2セグメント5間の距離は、いずれも1.3cmである点で、実施例1と相違する。
【0046】
消臭速乾糸1の製造方法は以下の通りである。すなわち、消臭繊維2を含む消臭糸(太さ150Dの消臭ポリエステル、無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製、抗菌消臭シリーズFDY150D/144f丸穴)と、速乾繊維3を含む速乾糸(太さ75D、T8糸)とを合糸機でほぐしたうえで合糸することで、実施例3の消臭速乾糸1を得た。
【0047】
(実施例4)
消臭速乾糸1である。実施例2の消臭速乾糸1と比べて、消臭繊維2と速乾繊維3との総質量比が、(消臭繊維):(速乾繊維)=2:0.1である点が相違する。その他の構造、パラメータ、製造方法は、実施例1と同様である。
【0048】
(実施例5)
消臭速乾糸1である。実施例1の消臭速乾糸1と比べて、消臭繊維2と速乾繊維3との総質量比が、(消臭繊維):(速乾繊維)=1:20である点が相違する。その他の構造、パラメータ、製造方法は、実施例1と同様である。
【0049】
(実施例6)
消臭速乾糸1である。実施例1の消臭速乾糸1と比べて、隣り合う第1のセグメント4どうしの間隔d1が0.5cmである点が相違する。その他の構造、パラメータ、製造方法は、実施例1と同様である。
【0050】
(実施例7)
消臭速乾糸1である。実施例1の消臭速乾糸1と比べて、隣り合う第1のセグメント4どうしの間隔d1が2.5cmである点が相違する。その他の構造、パラメータ、製造方法は、実施例1と同様である。
【0051】
(比較例1)
消臭ポリエステル糸である。太さ50Dで、無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製、抗菌消臭シリーズFDY50D/36f丸穴である。
【0052】
(比較例2)
消臭ポリエステル糸である。太さ75Dで、無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製、抗菌消臭シリーズFDY75D/36f丸穴である。
【0053】
(比較例3)
T400糸である。太さは75Dである。
【0054】
(比較例4)
PTT糸である。太さは75Dである。
【0055】
(比較例5)
【0056】
消臭速乾糸である。36本の消臭繊維と36本の速乾繊維とを含み、36本の消臭繊維と36本の速乾繊維との総質量比は、(消臭繊維):(速乾繊維)=1:1.5である。消臭繊維と速乾繊維とは、消臭速乾糸の長手方向に沿って相互に絡み合っている。しかし、上記した各実施例の消臭速乾糸1のような、メッシュ発泡状構造を呈する第1セグメント4と、束状構造を呈する第2セグメントとが交互に複数ずつ形成されたものではない。
【0057】
本比較例5の消臭速乾糸の製造方法は、以下の通りである。すなわち、消臭繊維を含む消臭糸(太さ50Dの消臭ポリエステル、無菌時代複合新材料(蘇州)有限公司製、抗菌消臭シリーズFDY50D/36f丸穴)と、速乾繊維を含む速乾糸(太さ75D、T400糸)とを撚り合わせて、比較例5の消臭速乾糸を得た。ただし、上記した各実施例の消臭速乾糸1を製造する際のように合糸機でほぐしたうえで合糸することは、行わなかった。
【0058】
[性能試験]
各種の性能試験は、下記のようにして行った。
【0059】
(1)消臭性
「一般社団法人繊維評価技術協議会標準」の規定に基づいて、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸の減少率で生地の消臭性を評価した。この評価は、洗浄前の減少率と洗浄後の減少率とを含み、洗浄回数は10回である。
【0060】
アンモニアと酢酸との減少率は、検知管を用いて測定した。その操作手順は、以下の通りとした。すなわち、実施例、比較例の糸にて作製した100cmの生地をサンプリング袋に入れ、所定の初期濃度に達するまで3Lアンモニアまたは酢酸を注入した。そして、2時間後に検知管を用いてサンプリング袋中のアンモニアまたは酢酸の濃度を測定して、アンモニアまたは酢酸の減少率を計算した。
【0061】
イソ吉草酸の減少率は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。その操作手順は、以下の通とした。すなわち、実施例、比較例の糸にて作製した50cmの生地を三角フラスコに入れ、所定の初期濃度に達するまでイソ吉草酸含有のエタノール溶液を滴下して密封した。そして、2時間後に注射器で試料溶液を吸引し、この試料溶液についてガスクロマトグラフィーを用いてエタノール溶液中のイソ吉草酸の濃度を測定して、イソ吉草酸の減少率を計算した。
【0062】
(2)抗菌性
「JIS L1902 紡績製品の抗菌性試験」に規定された方法に基づいて測定を行い、生地洗浄前と10回洗浄後との黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌の抗菌活性値を得た。
【0063】
(3)速乾性
「ISO17617-2014 紡績製品水分乾燥速度」に規定された方法に基づいて測定を行い、生地の100%乾燥時間を得た。
【0064】
上記した性能試験の方法で、実施例1~7、比較例1~5の糸を用いて編んだ生地を測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1のデータから以下のことがわかる。
【0067】
実施例の消臭速乾糸で編まれた生地は、優れた消臭、殺菌、速乾性能を有する。さらに、消臭繊維と速乾繊維の質量比と、構造中の隣り合うセグメントどうしの間隔とを所定の範囲とすることによって得られる消臭速乾糸は、より優れた消臭、殺菌、速乾性能を有する。
【0068】
具体的には、実施例1~3消臭速乾糸を用いた生地の消臭性試験結果は以下の通りである。すなわち、洗浄前後のアンモニアの減少率は99.9%を超え、洗浄前の酢酸の減少率は86~92%、洗浄後の酢酸の減少率は98%以上、洗浄前のイソ吉草酸の減少率は95.6~98%、洗浄後のイソ吉草酸の減少率は99.1%以上である。抗菌性試験結果は以下の通りである。すなわち、洗浄前ブドウ球菌の抗菌活性値は5.0~7.4、洗浄後ブドウ球菌の抗菌活性値は4.8~7.7、洗浄前肺炎桿菌の抗菌活性値は5.5~6.5、洗浄後肺炎桿菌の抗菌活性値は4.3~5.2である。速乾性試験によると、生地の100%乾燥時間は31~49minである。
【0069】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2を対比すると、消臭ポリエステルのみを含む糸を用いた生地は良好な消臭性能と抗菌性能とを備えているが、生地の100%乾燥時間は86~89minと長く、速乾性能は非常に劣っていることがわかる。
【0070】
実施例1と比較例3、実施例2と比較例4を対比すると、T400糸のみ(比較例3)、またはPTT糸のみ(比較例4)を用いて編まれた生地は、速乾性に優れているが、消臭性能と殺菌性能が全くないことがわかる。
【0071】
実施例1と比較例5とを対比すると、消臭繊維と速乾繊維が糸の長手方向に沿って絡み合っているだけの比較例5の糸を用いた生地では、消臭、速乾、抗菌性能が、実施例1の糸を用いた生地に比べて低下していることがわかる。
【0072】
実施例1と実施例4~5とを対比し、実施例1と実施例6~7とを対比すると、実施例4~5および6~7のように、消臭繊維と速乾繊維との質量比と、隣り合うセグメントどうしの間隔とが、上述の特に好ましい範囲から外れている場合には、実施例1の特に好ましい範囲内のものに比べて、消臭速乾糸で編まれた生地の消臭、殺菌、速乾性能が低下していることがわかる。
【0073】
本明細書では、上記実施例によって、消臭速乾糸と、その製造方法と、生地への応用とを説明している。しかし、本発明は、上述の加工手順に限定されるものではない。すなわち、本発明が上記の加工手順によって実施しなければならないことを意味するものではない。本発明のあらゆる改良、本発明で選択された原料の等価交換および補助成分の追加、具体的な方式の選択などは、すべて、本発明の保護範囲および本明細書の開示範囲内にある。
【符号の説明】
【0074】
1 消臭速乾糸
2 消臭繊維
3 速乾繊維
4 第1セグメント
5 第2セグメント
d1 間隔
d2 間隔
図1