(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060623
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】密封容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20240424BHJP
B67B 7/48 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B65D51/22 100
B67B7/48 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030869
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2023021228の分割
【原出願日】2016-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2015051527
(32)【優先日】2015-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511188336
【氏名又は名称】岡部 法基
(72)【発明者】
【氏名】岡部 法基
(57)【要約】
【課題】ポーション型容器は、容器の開口を塞ぐ膜状の蓋を、使用者が両手を用いてその指先で摘まんで開けるようにしており、開封し難い。
【解決手段】ポーション型容器70は、粉末状の内容物を収容するカップ形状をなすカップ部61と、カップ部61の開口を塞いで密封する膜部62と、膜部62を開封可能な開封手段71と、開封手段71の上面に形成され、開封手段71を膜部62に向かって移動させる押圧操作が可能な操作部と、開封手段71の下面に設けられ、下方に突出し、下端が鋭角な錐形状に形成されている開封用突起部72とを含み、操作部が押圧操作されたときに開封用突起部72が膜部62を貫通することで、粉末状の内容物を排出可能な排出孔74が膜部62に形成される。
【選択図】
図29
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の内容物を収容するカップ形状をなすカップ部と、
前記カップ部の開口を塞いで密封する膜部と、
平面的な板状をなし、前記カップ部の周縁片の一部から前記膜部の上方に傾斜されて延びる突出片であり、かつ前記膜部の位置と同じ高さの位置に設けられた基端側を支点として上下方向に揺動可能であり、前記膜部に向かって揺動されたときに、前記膜部を開封可能な開封手段と、
前記開封手段の上面に形成され、前記開封手段を前記膜部に向かって移動させる押圧操作が可能な操作部と、
前記開封手段の下面に設けられ、下方に突出し、下端が鋭角な錐形状に形成されている開封用突起部と、
前記膜部を貫通した前記開封用突起部を前記膜部から離間させる方向に移動させる移動手段と、
を含み、
前記操作部が押圧操作されたときに前記開封用突起部が前記膜部を貫通することで、前記粉末状の内容物を排出可能な排出孔が前記膜部に形成される、
密封容器。
【請求項2】
前記粉末状の内容物は、砂糖、塩、コショウ、その他調味料、の少なくともいずれかである、
請求項1に記載の密封容器。
【請求項3】
1食分の使用量に相当する前記粉末状の内容物が収容される使い捨てのポーション型容器である、
請求項1または請求項2に記載の密封容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を密封して収容する密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者が開封操作をしたときに、袋体内部の液体の圧力が上昇して膜部が突起部に向かって膨出し、突起部により膜部が貫通されるとともに、この膜部に開いた穴から袋体内部の液体が流出される容器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の容器にあっては、使用者が開封操作をして袋体内部の液体の圧力を上昇させたときに、膜部の膨出の度合いを使用者が把握し難くなっており、突起部により膜部が貫通されるタイミングが分かり難く、かつ突起部により膜部が貫通されると同時に、袋体内部の液体が流出されるので、この流出のタイミングを使用者が調整し難いという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、内容物が排出されるタイミングを使用者が調整することができる密封容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の密封容器は、
内容物を収容する収容部と、
前記収容部を密封する膜部と、
少なくとも一部が前記膜部に向かって移動可能に設けられて前記膜部を開封可能な開封手段と、
前記開封手段を移動させる操作を行うための操作部と、
前記操作部の操作が行われることにより前記開封手段が前記膜部を貫通するタイミングとは異なるタイミングで前記内容物を前記収容部から排出可能な排出手段と、
を含む。
このようにすれば、使用者が操作部の操作を行うことにより、膜部を開封する操作のみを行うことが可能であるので、内容物が排出されるタイミングを使用者が任意に調整することができる。
【0007】
また、本発明の密封容器は、
前記操作部の操作が行われた後に、前記内容物を前記収容部から排出させる操作が行われることにより前記内容物を前記収容部から排出可能である。
このようにすれば、使用者が内容物を収容部から排出させる操作を行ったタイミングで内容物が排出されるので、内容物が排出されるタイミングを使用者が調整することができる。
【0008】
また、本発明の密封容器は、
前記膜部を貫通した前記開封手段の少なくとも一部を前記膜部から離間させる方向に移動させる移動手段を含む。
このようにすれば、内容物が収容部から排出されるときに、開封手段が膜部に形成された開口を塞ぐことがなくなるので、開封手段が内容物の排出を妨げてしまうことを防止できる。例えば、従来技術の容器にあっては、膜部に開いた穴から袋体内部の液体が流出するときに、膜部を貫通した突起部の先端が穴を塞ぐように配置されるので、この突起部の先端が液体の流出を妨げてしまうという課題があるが、本発明はこのような課題を解決することができる。
【0009】
また、本発明の密封容器において、
前記開封手段の少なくとも一部は、定常位置にある前記膜部を超えて移動可能である。
このようにすれば、開封手段が定常位置にある膜部を貫通することができる。
【0010】
また、本発明の密封容器は、
前記開封手段が前記膜部を貫通したときに前記開封手段が前記収容部に所定の進入長以上入り込むことを防止する進入防止手段を含む。
このようにすれば、開封手段が膜部を貫通したときに、開封手段が収容部に入り込み過ぎることを防止できる。
【0011】
また、本発明の密封容器は、
前記開封手段が前記膜部を貫通したときに前記開封手段が前記収容部に入り込む進入長を確保するための空間を前記収容部の内部に形成する空間形成部を含む。
このようにすれば、開封手段が膜部を貫通したときに、誤って開封手段が収容部の内面側に接触してしまい、収容部が疵付けられることを防止できる。
【0012】
また、本発明の密封容器において、
前記開封手段は、少なくとも一部が屈曲された線状をなす刃部を有し、前記刃部により前記膜部に切れ目が形成される。
このようにすれば、開封手段の刃部が膜部に貫通されることにより、少なくとも一部が屈曲された線状の切れ目が膜部に形成され、この切れ目から膜部が捲れることで、膜部の開口が大きく拡がるようになり、内容物を膜部の開口からスムーズに排出させることができる。
【0013】
また、本発明の密封容器は、
前記刃部により形成された切れ目から前記膜部の開口が拡大された状態を維持する維持手段を含む。
このようにすれば、膜部の開口が拡大された状態が維持されるようになり、内容物を膜部の開口からスムーズに排出させることができる。
【0014】
また、本発明の密封容器は、
前記開封手段により前記膜部に形成された開口から排出される前記内容物が入り込む前室と、
前記前室から前記内容物を外方に排出する排出口と、
前記前室に前記内容物が入り込んだことを確認可能な確認手段と、
を含む。
このようにすれば、膜部の開口から排出される内容物が前室に一旦入り込むので、不用意に内容物が外方に排出されてしまうことを防止でき、かつ使用者が操作部の操作を行った後に、膜部が開口したこと、つまり、内容物の排出が可能になったことを確認手段により確認することができる。例えば、従来技術の容器にあっては、使用者が開封操作をしたときに、突起部により膜部が貫通されても、袋体内部の液体が外部に流出されるまで、液体の流出が可能になったことを使用者が確認できないという課題があるが、本発明はこのような課題を解決することができる。
【0015】
また、本発明の密封容器は、
前記開封手段により前記膜部に形成された開口から排出される前記内容物が入り込む前室と、
前記前室から前記内容物を外方に排出する排出口と、
前記内容物が流体であり、前記前室から前記排出口に向かって流れる前記内容物が逆流されることを防止する逆止弁手段と、
を含む。
このようにすれば、膜部の開口から排出される内容物が前室に一旦入り込むので、不用意に内容物が外方に排出されてしまうことを防止でき、かつ前室から排出口に向かって流れる内容物が逆流されることを防止できる。
【0016】
また、本発明の密封容器において、
前記逆止弁手段は、流体の流れに応じて変形動作する膜状の部材を有する。
このようにすれば、逆止弁手段を膜状の部材という簡素な要素で実現でき、かつ逆止弁手段の小型化を図ることができる。
【0017】
また、本発明の密封容器は、
前記開封手段により前記膜部に形成された開口から排出される前記内容物が入り込む前室と、
前記前室から前記内容物を外方に排出する排出口と、
を含み、
前記前室は、前記膜部と前記膜部に対向して配置される第2の膜部であって前記開封手段を操作可能な状態で覆う操作用膜部とにより形成される。
このようにすれば、膜部の開口から排出される内容物が前室に一旦入り込むので、不用意に内容物が外方に排出されてしまうことを防止でき、かつ前室を2つの膜部という簡素な要素で形成できるとともに第2の膜部を操作部として用いることができる。
【0018】
また、本発明の密封容器は、
折曲可能な板部材を含み、
前記内容物が流体であり、前記内容物を前記収容部から排出させる操作は、折曲された前記板部材により前記収容部の少なくとも一部を挟み込むことで前記収容部の内部の前記内容物の圧力を上昇させる操作である。
このようにすれば、使用者が内容物の排出操作を容易に行うことができ、かつ内容物の圧力を上昇させる操作を、収容部を挟み込む折曲可能な板部材という簡素な要素で実現できる。
【0019】
また、本発明の密封容器は、
前記内容物を外方に排出する排出口を有する排出管と、
前記排出管に対して揺動可能に設けられて前記排出管を収納可能な収納手段と、
を含み、
前記収納手段が揺動されることで前記排出管の少なくとも一部が覆われる。
このようにすれば、使用者が排出管を収納手段により収納するときに、収納手段を操作する使用者の手指の動きが、排出管に対して揺動される動きとなるので、排出管の先端が使用者の手指に触れてしまうことを防止できる。例えば、医療器具である注射器(プレフィルドシリンジ)に適用される技術において、医療関係者が使用後の注射針(排出管)をキャップに収納するときに、間違って注射針が自分の手指に刺さってしまうという課題があるが、本発明を注射器に適用した場合には、このような課題を解決することができる。
【0020】
また、本発明の密封容器において、
前記収納手段が前記排出管を両側方から挟み込む板状の部分を有する。
このようにすれば、排出管に対して揺動される収納手段を簡素な要素で実現できる。
【0021】
また、本発明の密封容器は、
前記操作部の操作が行われる前に、前記操作部に外力が加わらないように保護する保護手段を含む。
このようにすれば、不用意に操作部に外力が加わってしまい、膜部が開封されることを防止できる。
【0022】
また、本発明の密封容器は、
前記内容物を外方に排出する排出口を有する排出管と、
前記排出管を両側方から挟み込む板状の部分を有して前記排出管を収納可能な収納手段と、
を含み、
前記保護手段は、前記排出管とともに前記操作部を覆うことが可能な前記収納手段が有する板状の部分である。
このようにすれば、排出管の収納操作とともに操作部を覆うことができる。
【0023】
なお、本発明の使い捨て型密封容器は、
内容物を収容するカップ形状をなす収容部と、
前記収容部の開口を塞いで密封する膜部と、
少なくとも一部が前記膜部に向かって移動可能に設けられて前記膜部を開封可能な開封手段と、
を含む。
このようにすれば、開封手段を用いて膜部を開封できるので、使用者が簡単に容器を開封することができる。例えば、コーヒー用ミルクやガムシロップ等が充填されるポーション型容器では、容器の開口を塞ぐ膜状の蓋を、使用者が両手を用いてその指先で摘まんで開けるようにしており、容器を開封し難いという課題があるが、本発明は開封手段を用いて膜部を開封できるので、簡単に容器を開封することができる。
【0024】
なお、本発明の使い捨て型密封容器は、
前記開封手段により前記膜部に形成される開口以外に前記収容部に空気を流入させるための空気孔を前記膜部に形成可能な空気孔形成手段を含む。
このようにすれば、収容部内の内容物を膜部に形成された開口から排出させるときに、空気孔から収容部内に空気が流入されるようになるので、内容物を膜部に形成された開口からスムーズに排出させることができる。
【0025】
なお、本発明の使い捨て型密封容器において、
前記空気孔形成手段は、前記開封手段の移動とともに前記膜部に向かって移動可能に設けられる。
このようにすれば、開封手段を用いて膜部を開封すると同時に空気孔を形成可能になるので、使用者は空気孔を膜部に容易に形成することができる。
【0026】
なお、本発明の使い捨て型密封容器は、
前記膜部が前記開封手段により開封される前に、前記開封手段に外力が加わらないように保護する保護手段を含み、
前記保護手段は、前記膜部と前記開封手段とを覆うことが可能で、かつ前記収容部に対して分離可能な蓋部材である。
このようにすれば、膜部または開封手段に不用意に外力が加わってしまい、膜部が疵付けられることを防止できる。
【0027】
なお、本発明の密封容器において、
前記開封手段は、前記収容部または前記膜部に対して分離不能に設けられる。
このようにすれば、開封手段が収容部または膜部と一体的な部材となるので、開封手段の紛失防止となるとともに、使用者が使用後の密封容器を廃棄するときに開封手段を収容部または膜部と一体的な部材として廃棄することができる。
【0028】
なお、本発明の逆止弁手段は、
仕切部を介して仕切られた第1空間部と第2空間部とが設けられ、前記仕切部に開口された孔部を介して前記第1空間部から前記第2空間部に向かって流れる流体が逆流されることを防止する逆止弁手段であって、
前記孔部を前記第2空間部側から覆う膜状の部材が設けられ、前記膜状の部材の一端が前記孔部の周囲近傍に固定されるとともに前記膜状の部材の他端が流体の流れに応じて変形動作される。
このようにすれば、逆止弁手段を膜状の部材という簡素な要素で実現でき、かつ逆止弁手段の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1の密封容器としてのプレフィルドシリンジを示す斜視図。
【
図2】プレフィルドシリンジのカバー板部を開いた状態を示す斜視図。
【
図8】プレフィルドシリンジを示す
図4のA-A断面図。
【
図9】使用者が開封操作中のプレフィルドシリンジを示す側断面図。
【
図10】プレフィルドシリンジの使用状態を示す側断面図。
【
図11】使用者が密封用膜部の開封状態を確認している使用例を示す図。
【
図17】実施例2の密封容器としてのパウチ型パックを示す斜視図。
【
図18】パウチ型パックのカバー板部を開いた状態を示す斜視図。
【
図20】使用者が開封操作中のパウチ型パックを示す側断面図。
【
図21】パウチ型パックの使用状態を示す側断面図。
【
図22】実施例3の密封容器としてのポーション型容器を示す斜視図。
【
図23】使用者が開封操作中のポーション型容器を示す斜視図。
【
図24】ポーション型容器の使用状態を示す斜視図。
【
図27】使用者が開封操作中のポーション型容器を示す側断面図。
【
図28】開封後のポーション型容器を示す側断面図。
【
図29】実施例4の密封容器としてのポーション型容器を示す斜視図。
【
図30】ポーション型容器の開封手段を示す斜視図。
【
図32】使用者が開封操作中のポーション型容器を示す側断面図。
【
図33】開封後のポーション型容器を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る密封容器を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。なお、具体的な構成は以下の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【実施例0031】
実施例1に係る密封容器につき、
図1から
図16を参照して説明する。
図1の符号1は、実施例1の密封容器としてのプレフィルドシリンジである。このプレフィルドシリンジ1は、薬液(内容物)が予め充填された状態で提供される使い捨て型の注射器であって、注射針2(排出管)が予め装着された状態で安全に搬送できる注射器である。
【0032】
図1および
図2に示すように、プレフィルドシリンジ1は、薬液を対象者(実施例1では患者等)に注射するための注射針2と、ほぼ1回分の使用量に相当する液体状の薬液が充填される袋状をなす袋部材3(収容部:収容空間を形成する部材)と、長方形の板状をなす板状部材4(板部材)と、を主に含む。なお、注射針2は、金属等の材質により形成されている。この注射針2は、屈曲された板状部材4に覆われた状態で収納される。また、袋部材3は、柔軟性を有して変形し易く、かつ可塑性を有する合成樹脂等の材質により形成されることが好ましい。
【0033】
図3に示すように、板状部材4は、1枚の長方形状をなす部材であり、その長手方向の2箇所の部分が屈曲可能である。この板状部材4は、可撓性を有しつつ、変形し難い合成樹脂等の材質により形成されることが好ましい。なお、板状部材4の上面(
図3において見える側の面)を第1面と称し、板状部材4の下面(
図3において見えない側の面)を第2面と称して以下に説明する。
【0034】
この板状部材4は、袋部材3が第2面(下面)に取り付けられる第1板部5と、この第1板部5に隣接する第2板部6と、この第2板部6に隣接するカバー板部7と、の3つの板部により構成される。なお、第1板部5と第2板部6との間が第1屈曲部8により屈曲可能であるとともに、第2板部6とカバー板部7が第2屈曲部9により屈曲可能である。
【0035】
また、第1板部5と第2板部6とは、ほぼ同じ大きさ(面積)に形成されている。つまり、第1板部5の長さ寸法および幅寸法と、第2板部6の長さ寸法および幅寸法と、がほぼ同じ寸法となっている。また、板状部材4が第1屈曲部8を中心として折り曲げられたときに、第2板部6の第2面が第1板部5の第2面に近接可能となっている(
図10参照)。
【0036】
また、カバー板部7は、第2板部6から第1板部5までの第1面(上面)を覆うことが可能な大きさ(面積)に形成される。つまり、第1板部5と第2板部6とを合わせた長さ寸法と、カバー板部7の長さ寸法と、がほぼ同じ寸法となっている。なお、カバー板部7の幅寸法は、第1板部5および第2板部6とほぼ同じ寸法となっている。また、板状部材4が第2屈曲部9を中心として折り曲げられたときに、カバー板部7の第1面が第1板部5および第2板部6の第1面に近接可能となっている(
図1および
図8参照)。
【0037】
また、袋部材3は、上方が開口する直方体形状をなしている。袋部材3の開口の周縁片10が第1板部5の第2面(下面)の周縁部(
図5の網点部分)に接着されることで、袋部材3が第1板部5の第2面に取り付けられる。なお、実施例で述べる接着とは、接着剤を用いた接合であっても良いし、部材同士を強く押し付けて圧着する接合であっても良いし、その他の手段を用いた接合であっても良い。
【0038】
図5に示すように、板状部材4の第1板部5の中央には、四角形状(正方形状)に開口した開口部11が形成されている。この開口部11は、第1板部5の第2面側に取り付けられる密封用膜部12により閉鎖されている(
図7参照)。なお、袋部材3の内部に充填された薬液は、密封用膜部12により密封された状態で保持される。
【0039】
図6および
図7に示すように、第1板部5の第1面(上面)側には、開口部11に対応する位置に、使用者(実施例1では医療関係者等)が密封用膜部12を開封する操作を行うための開封操作部13が設けられている。この開封操作部13は、平面視で四角形状(正方形状)をなして上方に突出された枠部14を有し、この枠部14の内周面の一部から枠部14の内方に向かって開封手段15が延びている。
【0040】
この開封手段15は、その先端側の縁辺が半円形状に丸く形成された薄い板状をなす突出片である。また、開封手段15は、枠部14の一辺から延びるとともに他の三辺から離間されている。さらに、開封手段15は、その基端側を支点として上下方向に揺動可能(密封用膜部12に近接する方向に移動可能)となっている。つまり、開封手段15は、板状部材4と一体的に形成されているが、開封手段15が薄い板状をなしていることで、弾性変形可能になっている。
【0041】
また、開封操作部13の枠部14の上端面には、使用者が開封手段15を操作するときに押し込むことが可能な操作用膜部16(操作部)が取り付けられている。なお、この操作用膜部16の周縁部は、枠部14の上端面(
図6の網点部分)に接着される。さらに、密封用膜部12と枠部14と操作用膜部16とにより囲まれた空間が前室17となっている。このように前室17を2つの膜部を用いた簡素な要素で形成できる。
【0042】
なお、密封用膜部12と操作用膜部16は、側面視で平行をなすように配置されている。さらに、密封用膜部12と操作用膜部16の間である前室17に開封手段15が配置されている。また、開封手段15は、密封用膜部12から離れた位置に設けられている。さらに、開封手段15は、密封用膜部12および操作用膜部16に対して側面視で平行をなすように配置されている。
【0043】
また、開封操作部13には、注射針2が取り付けられている。この開封操作部13の枠部14には、前室17から注射針2に向けて薬液を通過させるための連通孔18が設けられている(
図3参照)。そして、注射針2は、開封操作部13の連通孔18に対応する部位に逆止弁部19を介して接続されている。なお、前室17に袋部材3内部に薬液が流入されると、この薬液が注射針2の先端の開口(排出口)から流出される。
【0044】
なお、密封用膜部12は、変形しにくい合成樹脂等の材質により形成されることが好ましい。この密封用膜部12は、張力が付与された状態で開口部11を閉塞している。また、操作用膜部16は、弾性変形し易い合成樹脂等の材質により形成されることが好ましい。少なくとも操作用膜部16は、密封用膜部12よりも弾性変形し易い材質で形成されている。さらに、操作用膜部16は、透明な部材となっている。この操作用膜部16が使用者の指により押されたときに、操作用膜部16とともに開封手段15を押し下げることが可能になっている(
図9参照)。この押し下げられた開封手段15により密封用膜部12を開封することができる。
【0045】
図7に示すように、開封手段15には、下方に突出した刃部20が設けられている。この刃部20の下端縁は、鋭角な形状をなし、密封用膜部12を貫通可能となっている。この刃部20は、開封手段15の先端の縁辺から側端の縁辺にかけて延びている。なお、刃部20の下端辺は、開封手段15の基端側から先端側にゆくに従って下がるように傾斜されている。即ち、開封手段15が押し下げられたときに、開封手段15の先端側の刃部20が最初に密封用膜部12が接触し、さらに開封手段15が押し下げられることで、密封用膜部12に切れ目が形成される(
図9参照)。
【0046】
図6に示すように、刃部20は、平面視でU字形状(馬蹄形状)に形成されている。この刃部20が密封用膜部12を貫通(切断)することで、密封用膜部12には、U字形状(馬蹄形状)の切れ目(開口)、つまり、少なくとも一部が屈曲された線状の切れ目が形成される。なお、この切れ目から密封用膜部12が捲れることで、密封用膜部12の開口が大きく拡がるようになり、薬液を密封用膜部12の開口からスムーズに排出させることができる。
【0047】
図7に示すように、開封手段15の刃部20は、袋部材3の外部から定常位置Sにある密封用膜部12を超えて袋部材3の内部に進入可能になっている。なお、板状部材4の第1板部5の第2面には、開口部11および密封用膜部12を囲むように突出された凸条21(空間形成部)が設けられている。また、この凸条21は、突出長Lを有している。この凸条21が設けられることで、袋部材3が変形した場合に、袋部材3の一部の内面(底面等)が密封用膜部12に近接(接触)されることを防止している。そのため、開封手段15の刃部20が密封用膜部12を貫通しても、袋部材3が刃部20に接触されないようにしている。つまり、凸条21が突出長Lを有していることで、開封手段15の刃部20が、密封用膜部12を超えて袋部材3の内部に入り込む進入長を確保するための空間が形成されている。この空間が確保されることで、開封手段15の刃部20が密封用膜部12を貫通したときに、誤って開封手段15が袋部材3の内面側に接触してしまい、袋部材3が疵付けられることを防止できる。
【0048】
また、開封手段15は、板状部材4(枠部14)と一体的に形成された部分であり、可撓性を有している部分である。この開封手段15は、板状部材4よりも薄く形成されているので、開封手段15の基端側を中心として撓み易くなっている。しかしながら、この開封手段15の剛性は、凸条21の突出長Lを超えて撓まない程度の剛性となっている。このように開封手段15の剛性が規定されることで、開封手段15が袋部材3の内部に所定の進入長以上入り込み過ぎることを防止している。つまり、実施例1の進入防止手段が構成されている。なお、この開封手段15の剛性は、使用者が親指で操作用膜部16を押し込むときの平均的な押圧力に基づいて規定される。
【0049】
図4に示すように、開封操作部13に接続された注射針2は、第1板部5から第1屈曲部8を超えて第2板部6側にまで延びている。また、注射針2は、平面視において板状部材4の幅方向の中央位置から一側方(
図4の紙面下方)に変位した位置に設けられている。
【0050】
図3に示すように、カバー板部7には、開封操作部13および注射針2を収納可能な収納部22が形成されている。この収納部22は、カバー板部7の一部が第1面側から凹ませられることで形成された凹部となっている。なお、収納部22は、開封操作部13を収納する四角形状をなす凹部(保護手段)と注射針2を収納する直線状をなす凹部(収納手段)とを有する。
【0051】
図8に示すように、プレフィルドシリンジ1が可搬状態(安全に搬送可能な状態)である場合には、第1屈曲部8が屈曲されていない非屈曲状態であるとともに、第2屈曲部9が屈曲された屈曲状態となっている。この可搬状態では、第1板部5と第2板部6とが平坦な状態であり、第2板部6が注射針2に近接して配置される。なお、第2屈曲部9の折り曲げ角度は、ほぼ180度となっている。そして、カバー板部7の第1面が第1板部5および第2板部6の第1面に接触されている。
【0052】
この可搬状態では、開封操作部13および注射針2が、カバー板部7に覆われて収納部22に収納された状態にある。なお、注射針2の先端側は、カバー板部7と第2板部6とにより挟み込まれるように覆われる。なお、開封操作部13がカバー板部7により覆われるので、不用意に操作用膜部16に外力が加わってしまい、開封手段15が押圧されることで、密封用膜部12が開封されることを防止できる。また、注射針2がカバー板部7と第2板部6とにより覆われるので、プレフィルドシリンジ1を安全に搬送できる。
【0053】
図3に示すように、カバー板部7の端部近傍の両側部には、掛止爪23が設けられている。また、第1板部5の端部近傍の両側部には、掛止爪23が掛止可能な爪固定部24が設けられる。なお、掛止爪23は、カバー板部7の側部から第1面側に突出した突出片であり、爪固定部24は、第1板部5の側端部が切り欠かれて形成された切欠部である。この掛止爪23は、爪固定部24に対して着脱可能な状態で掛止される。
【0054】
図1に示すように、プレフィルドシリンジ1が可搬状態にあるときには、カバー板部7の掛止爪23が第1板部5の爪固定部24に掛止されるので、カバー板部7が第1板部5から不用意に離れないようにできる。さらに、カバー板部7が第2板部6から第1板部5にかけて第1屈曲部8を跨ぐように配置されるので、第1屈曲部8が不用意に屈曲されないようにできる。
【0055】
また、カバー板部7の端縁は、第1板部5から離れる方向に屈曲されており、この端縁は、使用者が指を掛けることが可能になっている。使用者がプレフィルドシリンジ1を使用するときには、カバー板部7の端縁に指を掛けることで、掛止爪23を爪固定部24から外すことができる。そして、使用者は、カバー板部7を第1板部5および第2板部6から離間(開放)させることができる(
図2参照)。
【0056】
図9に示すように、カバー板部7を開放すると、開封操作部13が露呈される。この状態で、使用者が操作用膜部16を親指で押すと、開封手段15が押し下げられ、刃部20が密封用膜部12を貫通し、密封用膜部12が開封される。そして、密封用膜部12が開封されると、袋部材3内の薬液が前室17に流出可能になる。なお、使用者が操作用膜部16を介して開封手段15に触れながら開封操作を行えるので、密封用膜部12が開封されるタイミングを使用者が把握することができる。
【0057】
また、使用者が操作用膜部16から親指を離すと、開封手段15がその弾性力により密封用膜部12から離れた通常位置(退避位置)に復帰する(
図10参照)。そのため、密封用膜部12に形成された開口から開封手段15が離間され、開封手段15が袋部材3内の薬液が前室17に排出されることを妨げてしまうことがない。なお、開封手段15が弾性力を有していることが、実施例1の移動手段を構成する。
【0058】
図10に示すように、使用者がカバー板部7をさらに揺動(回動)させることで、第2板部6が注射針2から離間される。そして、第2板部6は、第1屈曲部8を中心として揺動され、第2板部6の第2面が第1板部5の第2面に近接する。このように第2板部6が第1板部5に近接すると、袋部材3が第1板部5と第2板部6との間に挟まれるようになる。使用者は、第1板部5と第2板部6とで挟み込んだ状態で袋部材3を摘まむと、袋部材3内の薬液の圧力が上昇され、密封用膜部12の開口から前室17に薬液が流出される。
【0059】
なお、操作用膜部16(確認手段)は、透明な部材となっているので、使用者は、操作用膜部16を介して前室17内に薬液が流出されたか否かを確認できる。つまり、密封用膜部12が開封され、薬液の注射が可能となったことを、使用者が操作用膜部16を介して確認できる(
図11参照)。また、使用者が操作用膜部16を介して開封手段15を視認しながら開封操作を行えるので、密封用膜部12が開封されるタイミングを使用者が把握することができる。
【0060】
さらに使用者が第1板部5と第2板部6とで袋部材3を強く摘まむと、前室17に連通された注射針2の先端の開口から薬液が流出される。対象者に薬液を注射する場合には、先ず、密封用膜部12を開封し、操作用膜部16により前室17内が薬液で充填されていることを確認する。この確認する段階で、前室17内の全ての空気を注射針2の先端の開口から排出させておく。その後、注射針2を対象者に穿刺し、第1板部5と第2板部6とで袋部材3を強く摘まむと対象者に薬液を注入することができる(
図12参照)。なお、注射針2が板状部材4の幅方向の中央位置から一側方に変位した位置に設けられることで、板状部材4が対象者に当り難くなるので、注射針2を対象者に穿刺し易くなっている。
【0061】
実施例1では、注射針2が逆止弁部19(逆止弁手段)を介して前室17と連通されている。この逆止弁部19は、前室17から注射針2の先端の開口に向かって流れる薬液が逆流されることを防止する。
図13に示すように、逆止弁部19には、その内部空間を仕切る仕切壁25(仕切部)が設けられている。そして、逆止弁部19の内部には、仕切壁25により仕切られた第1室26(第1空間部)と第2室27(第2空間部)とが設けられている。なお、第1室26が前室17に連通されているとともに、第2室27が注射針2に連通されている。
【0062】
図15および
図16に示すように、仕切壁25には、微小な孔部28が貫通されている。この孔部28を介して第1室26から第2室27に薬液が通過可能となっている。この孔部28の第2室27側には、孔部28を覆う膜部材29が設けられている。なお、孔部28は四角形状をなしているとともに、膜部材29も孔部28の形状に合わせて四角形状(正方形状)をなしている。さらに、膜部材29は、孔部28の面積よりも大きな面積を有しており、孔部28全体を閉鎖可能になっている。この膜部材29の一辺全体は、孔部28の一辺の近傍の仕切壁25に接着(固定)された接着部30(固定部)となっている。膜部材29は、固定された部分を中心として孔部28から離れる方向に捲れる(変形動作)ようになっている。なお、膜部材29は、弾性変形し易い合成樹脂等の材質により形成されている。
【0063】
さらに、使用者が第1板部5と第2板部6とで袋部材3を強く摘まむと、前室17から第1室26内に流入した薬液の圧力が上昇して、膜部材29が捲れ上がり、孔部28から薬液が第2室27に流入される(
図13参照)。そして、薬液が第2室27を介して注射針2の先端の開口から流出されるようになる。
【0064】
また、使用者が第1板部5と第2板部6とで袋部材3を摘まむ力を弱めると、袋部材3の圧力が低下し、さらに袋部材3の形状が復帰されるので、注射針2の先端の開口から空気が流入してしまう場合がある。このときに、第1室26の薬液の圧力が低下するとともに、第2室27から第1室26に流れる薬液の流動に応じて膜部材29が孔部28を閉鎖するようになる(
図14参照)。このように、孔部28が膜部材29により閉鎖されることで、外部の空気が前室17や袋部材3の内部に入り込むことを防ぐことができる。さらに、孔部28を覆う膜部材29で簡素な要素で逆止弁手段を実現でき、かつ逆止弁部19の小型化を図ることができる。
【0065】
図10に示すように、第1板部5と第2板部6とで袋部材3を強く摘まむことで、袋部材3内の薬液のほぼ全てを対象者に注射することができる。実施例1のプレフィルドシリンジ1では、指で摘まむ作業で薬液を注射できるので、従来のようなシリンジバレルとプランジャにより構成される注射器と比較して、簡便に操作を行うことができる。
【0066】
また、対象者に対する注射が終了した後は、プレフィルドシリンジ1を対象から離して注射針2を再び収納部22に収納する。注射針2を収納する際には、第2板部6の第2面を第1板部5の第2面から離す方向に、第2板部6を揺動(回動)させる。そして、第2板部6を、第1屈曲部8を中心として揺動させて、第1板部5と第2板部6とを平坦な状態に戻す。さらに、カバー板部7を、第2屈曲部9を中心として揺動させて、カバー板部7の第1面を第1板部5および第2板部6の第1面に近接させる。すると、注射針2および開封操作部13がカバー板部7の収納部22に収納されるとともに、カバー板部7の掛止爪23が第1板部5の爪固定部24に掛止される。このようにプレフィルドシリンジ1を再び可搬状態に戻すことができる。また、注射針2が収納部22に収納されるので、袋部材3内に残った薬液が注射針2から垂れ落ちることがなくなる。
【0067】
実施例1のプレフィルドシリンジ1では、使用者が注射針2をカバー板部7の収納部22に収納するときに、カバー板部7を操作する使用者の手指の動きが、注射針2に対して揺動される動きとなるので、注射針2の先端が使用者の手指に触れてしまうことを防止できる。例えば、従来の注射器では、注射針をキャップに収納するときに、使用者の手指の動きが、注射針2に対して直線的に動くので、間違って注射針が自分の手指に刺さってしまうという課題があるが、実施例1のプレフィルドシリンジ1では、このような課題を解決することができる。
【0068】
また、カバー板部7および第2板部6により注射針2が挟み込まれて収納されるので、注射針2に対して揺動される収納手段を簡素な要素で実現できる。また、カバー板部7および第2板部6は、注射針2に対して相対的に分離不能になっているので、収納手段の紛失防止となる。また、注射針2の収納操作とともに開封操作部13をカバー板部7で覆うことができる。また、カバー板部7を、第2屈曲部9を中心として揺動させることで、注射針2の先端が始めに収納部22に収納されるので、注射針2を安全に収納することができる。なお、実施例1では、注射針2の全体が収納部22に収納されるが、少なくとも注射針2の先端が収納部22に収納される構成でも良い。
【0069】
以上、実施例1のプレフィルドシリンジ1では、使用者が開封操作部13の押圧操作を行うことにより開封手段15が密封用膜部12を貫通し、密封用膜部12が貫通されるタイミングと異なるタイミングで薬液を袋部材3から排出可能であるため、使用者が密封用膜部12を開封する操作のみを行うことが可能であるので、薬液が排出されるタイミングを使用者が任意に調整することができる。なお、実施例1では、柔軟性を有する袋部材3と、この袋部材3を挟み込む第1板部5および第2板部6とにより排出手段が構成される。
【0070】
また、使用者が開封操作部13の押圧操作を行った後に、使用者が薬液を袋部材3から排出させる操作を行うことにより薬液を袋部材3から排出可能であるため、使用者が薬液を袋部材3から排出させる操作を行ったタイミングで薬液が排出されるので、薬液が排出されるタイミングを使用者が調整することができる。
【0071】
また、密封用膜部12を貫通した開封手段15の刃部20を密封用膜部12から離間させる方向に移動させるため、薬液が袋部材3から排出されるときに、開封手段15が密封用膜部12に形成された開口を塞ぐことがなくなるので、開封手段15が薬液の排出を妨げてしまうことを防止できる。
【0072】
また、開封手段15の少なくとも刃部20は、袋部材3の外部から定常位置Sにある密封用膜部12を超えて移動可能であるので、開封手段15の刃部20が定常位置Sにある密封用膜部12を貫通することができる。
【0073】
なお、実施例1では、定常位置Sにある密封用膜部12を刃部20が貫通されるようにしているが、その他の開封態様であっても良い。例えば、使用者が密封用膜部12を開封する操作を行う前に、第1板部5と第2板部6とで袋部材3を強く摘まんで、袋部材3内部の液体の圧力を上昇させることで、密封用膜部12の少なくとも一部を、定常位置Sから前室17内部に向かって膨出した膨出位置まで移動させ、この膨出された密封用膜部12を刃部20により貫通させても良い。このような開封態様において、袋部材3内部の液体の圧力を充分に上昇させた後に密封用膜部12を開封することで、使用者が密封用膜部12を開封する操作を行うタイミングと同時に液体を外部に排出(噴出)させることが可能になる。また、第1板部5と第2板部6とで袋部材3を軽く摘まんで、袋部材3内部の液体の圧力を上昇させることで、密封用膜部12に張力を与えるようにし、この張力が与えられた密封用膜部12を刃部20により貫通させても良い。
【0074】
なお、実施例1では、刃部20が平面視でU字形状(馬蹄形状)に形成されているが、少なくとも一部が屈曲された線状をなす形状であれば、刃部20がその他の形状に形成されていても良い。例えば、刃部20が平面視でS字形状やV字形状やX形状やY字形状等に形成されても良い。
【0075】
また、実施例1では、密封用膜部12の開口から流出される薬液が前室17に一旦入り込むので、不用意に薬液が外方に流出されてしまうことを防止でき、かつ使用者が開封操作部13の押圧操作を行った後に、密封用膜部12が開口したこと、つまり、注射針2から薬液の流出が可能になったことを透明な操作用膜部16により確認することができる。
【0076】
また、実施例1では、使用者が薬液(液体)を袋部材3から排出させる操作は、折曲された板状部材4により袋部材3を挟み込むことで袋部材3の内部の薬液の圧力を上昇させる操作であることで、使用者が薬液の排出操作を容易に行うことができ、かつ薬液の圧力を上昇させる操作を、袋部材3を挟み込む折曲可能な板状部材4という簡素な要素で実現できる。
【0077】
また、実施例1では、開封手段15が袋部材3または密封用膜部12に対して相対的に分離不能な状態に設けられているため、開封手段15が袋部材3または密封用膜部12と一体的な部材となるので、開封手段15の紛失防止となるとともに、使用者が使用後のプレフィルドシリンジ1を廃棄するときに、開封手段15を袋部材3または密封用膜部12と一体的な部材として廃棄することができる。なお、実施例で述べる相対的に分離不能な状態とは、2つの部材同士が直接的に接続されている態様を含むのみならず、2つの部材同士が第3の部材を介して一体的に接続されている態様を含む。
【0078】
なお、実施例1のプレフィルドシリンジ1は、板状部材4を有していることで、薬品名、濃度、有効期限等の各種情報を表記する面積を確保できる。また、このプレフィルドシリンジ1は、1回の使用で使用不可能になるので、使用後の注射器が薬物乱用者等に再利用されてしまうという問題もなくなる。
【0079】
なお、袋部材3の内部の薬液が、密封用膜部12により完全に密封された状態で搬送できるので、搬送中に外部の気圧が変化した場合であっても気密性を保つことができ、薬液の漏れ等が防止される。さらに、気泡等が薬液に混入されることもなくなる。また、このプレフィルドシリンジ1では、スクリューキャップ等により密閉される従来のプレフィルドシリンジと比較してガスバリア性が高まるので長期間の保存に耐えられる。例えば、従来のプレフィルドシリンジの保管寿命は1年間程度であるが、実施例1のプレフィルドシリンジ1を用いれば、長期間の保管寿命が実現される。
【0080】
なお、実施例1では、操作用膜部16が透明な部材となっているが、操作用膜部16は、少なくとも透光性を有する部材であれば良く、完全な透明でなくても良い。例えば、操作用膜部16が着色された透明な部材であっても良いし、光線の直線透過を防いで散光させる部材であっても良い。さらに、確認手段は、透明な操作用膜部16でなくても良く、液体に触れることで色彩が変化する部材で操作用膜部を構成し、この操作用膜部の色彩の変化により前室17内に液体が流出されたか否かを確認できるようにしても良い。また、前室17内に液体に浮く浮き部材(目立つ色彩の部材)を設けるようにし、この浮き部材の動作を、使用者が操作用膜部16を介して視認することで、前室17内に液体が流出されたか否かを確認できるようにしても良い。
【0081】
なお、実施例1では、操作用膜部16(操作部)と刃部20(開封手段15)とが別部材となっているが、操作用膜部16と刃部20とを一体的な部材にしても良い。例えば、操作用膜部16の部分を弾性変形し易いエラストマー等の材質にするとともに、刃部20の部分を硬質な合成樹脂等の材質にし、操作用膜部16と刃部20とを二色成形(異材質成形)により一体的な部材として製造しても良い。
【0082】
なお、
図6に示すように、開封操作部13(枠部14)は、平面視で四角形状(正方形状)をなしているが、開封操作部13の形状は、円形状や楕円形状であっても良く、使用者が親指で押圧操作し易い形状であれば、どのような形状であっても良い。
【0083】
なお、
図15および
図16に示すように、逆止弁部19の孔部28を覆う膜部材29は、四角形状をなしているが、この膜部材29は、円形状や三角形状やU字形状であっても良い。また、四角形状をなす膜部材29の一辺全体(基端部)が孔部28の近傍に固定され、膜部材29の他辺(自由端部)が孔部28から離れる方向に捲れるようになっているが、この捲れる部分は、膜部材29の固定された一辺の幅と同一幅、または、膜部材29の固定された一辺の幅よりも狭い幅寸法となっていることが好ましい。このようにすることで、膜部材29により孔部28を安定的に閉鎖することができる。
【0084】
なお、実施例1では、開封手段15の剛性が、凸条21の突出長Lを超えて撓まない程度の剛性となっていることで、実施例1の進入防止手段が構成されているが、その他の態様で進入防止手段を構成しても良い。例えば、枠部14の内周面の一部から開封手段15に向かって延びる凸部を設け、開封手段15が通常位置にあるときには、この凸部に開封手段15が接触せず、開封手段15が押し込まれて、所定の進入長まで移動したときに、この凸部に開封手段15が接触することで、開封手段15がそれ以上入り込むことを防止しても良い。
【0085】
なお、実施例1のプレフィルドシリンジ1は、災害時や緊急時に使用される簡易型の注射器として使用できる。また、薬液が外気に触れる機会がないので、薬液が汚染されることがない。さらに、注射針が開放されてから使用されるまでの時間を短縮できるので、注射針2が外部に曝されて汚染される可能性を低下できる。特に、プレフィルドシリンジ1を野外で使用するときの利便性が向上されている。
なお、第1開口部49は、袋部材42の内部に向けて開口されている部分である。この第1開口部49は、袋部材42の内部側から密封用膜部51で閉鎖されている。なお、密封用膜部51の周縁全体が第1開口部49の周縁(スパウト部41)に接着されている。また、袋部材42の内部に充填された飲料は、密封用膜部51により密封された状態で保持される。さらに、密封用膜部51は、合成樹脂膜やアルミ箔等をラミネート加工により重ね合わせたシートを基にして形成される。
なお、第2開口部50は、外部に向けて開口されている部分である。この第2開口部50は、スパウト部41の外部側から操作用膜部52で閉鎖されている。なお、操作用膜部52の周縁全体が第2開口部50の周縁(スパウト部41)に接着されている。また、操作用膜部52で閉塞された第2開口部50が実施例2の操作部となっている。さらに、操作用膜部52は、弾性変形し易い合成樹脂等の材質により形成される。また、板状部材43は、操作用膜部52が設けられた第2開口部50を覆うことができる。この板状部材43により操作用膜部52に外力が加わらないように保護する保護手段が構成される。
なお、密封用膜部51と操作用膜部52は、側面視で平行をなすように配置されている。さらに、密封用膜部51と操作用膜部52の間に開封手段53が配置されている。また、開封手段53は、その先端側が操作用膜部52に向かって近づくように傾いて配置されている。つまり、開封手段53は、その先端側が密封用膜部51から離れるように傾いて配置され、密封用膜部51および操作用膜部52と開封手段53とは、側面視で非平行をなしている。
また、袋部材42の内部には、袋部材42の内面同士が密着されることを抑える密着抑止部54(空間形成部)が設けられている。この密着抑止部54は、スパウト部41と一体的に形成された部分であって、スパウト部41の後面側から後方に延びるとともに、下方に長く延びる2枚の板状の部分で構成される。なお、これら2枚の板状の部分が互いに平行に配置され、その間に第1開口部49が配置されている。この密着抑止部54が設けられることで、袋部材42の内面が密封用膜部51(第1開口部49)に近接(接触)されることを防止している。そのため、開封手段53の刃部が、袋部材42の外部から定常位置(非膨出位置)にある密封用膜部51を超えて袋部材42の内部に入り込む進入長を確保するための空間が形成されている。
なお、操作用膜部52(確認手段)は、透明な部材となっているので、使用者は、操作用膜部52を介して前室48内に飲料が流出可能になったか否かを確認できる。つまり、密封用膜部51が開封され、飲料を飲むことが可能となったことを、使用者が操作用膜部52を介して確認できる。
なお、袋部材42の内部の飲料を飲み終わった後は、板状部材43を揺動させて、この板状部材43をスパウト部41に再び取り付けることができる。このときに、スパウト部41の飲み口44は、板状部材43の栓部45により再び閉塞される。そのため、袋部材42の内部に飲料が残っていても、飲み口44から飲料が零れ出ることがない。また、飲み口44を栓部45により閉塞した状態で密封用膜部51を開封し、その後に栓部45を飲み口44から外しても良い。このようにすると、密封用膜部51の開封と同時に、袋部材42の内部の飲料が噴き出してしまうことを防止できる。また、板状部材43を合成樹脂等の材質にするとともに、栓部45を弾性変形し易いエラストマー等の材質にし、板状部材43と栓部45とを二色成形(異材質成形)により一体的な部材として製造しても良い。
以上、実施例2のパウチ型パック40では、使用者が操作用膜部52の押圧操作を行うことにより開封手段53が密封用膜部51を貫通し、密封用膜部51が貫通されるタイミングと異なるタイミングで飲料を袋部材42から排出可能であるため、使用者が密封用膜部51を開封する操作のみを行うことが可能であるので、飲料が排出されるタイミングを使用者が任意に調整することができる。なお、実施例2では、外部から圧力が加えられること、または、使用者が吸い出すことで、内部の流体を排出可能な袋部材42により排出手段が構成される。
なお、従来のスクリューキャップ付のスパウトパウチパックでは、内容物に非常に小さい低分子(水素等)が含まれている場合に、この低分子がスクリューキャップの部分から漏れ出してしまう虞があるが、実施例2のパウチ型パック40では、第1開口部49が密封用膜部51により閉鎖されて高い気密性が保たれるので、内容物に漏れ易い低分子が含まれている場合であっても、内容物を長期間保持することができる。また、スクリューキャップを用いて密封性を高めようとすると、スクリューキャップをきつく締めなければならず、その開封が困難になるが、実施例2のパウチ型パック40では、密封性を高めることができるとともに開封を容易に行うことができる。
なお、実施例2のパウチ型パック40は、人間の手指により操作される道具でなくても良く、所定の装置に着脱可能に搭載される部品(カートリッジ)としてパウチ型パック40を使用しても良い。