(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060626
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】外用水系組成物、及びオゾン水製造用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/40 20060101AFI20240425BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240425BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240425BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20240425BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240425BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240425BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61K33/40
A61K47/18
A61K9/08
A61P31/02
A61K8/19
A61K8/44
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043649
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】細川 欣哉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC32
4C076DD51
4C076FF70
4C083AB501
4C083AB502
4C083AC711
4C083AC712
4C083BB48
4C083CC04
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA10
4C086HA08
4C086HA22
4C086HA30
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA03
4C086ZA89
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】オゾンによる殺菌作用に加え、追加された外用成分の作用も十分に奏する外用水系組成物を提供する。
【解決手段】皮膚塗布用水性組成物が、水と、オゾンと、トリメチルグリシンとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
オゾンと、
トリメチルグリシンとを含む、外用水系組成物。
【請求項2】
前記オゾンの濃度が、前記外用水系組成物の全量に対し、1mg/L以上10mg/L以下である、請求項1に記載の外用水系組成物。
【請求項3】
前記トリメチルグリシンの含有量が、前記外用水系組成物の全量に対し、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の外用水系組成物。
【請求項4】
化粧水である、請求項1から3のいずれか一項に記載の外用水系組成物。
【請求項5】
水と、
トリメチルグリシンとを含む、オゾン水製造用組成物。
【請求項6】
前記トリメチルグリシンの含有量が、前記オゾン水製造用組成物の全量に対し、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項5に記載のオゾン水製造用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用水系組成物、及びオゾン水製造用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを水に溶かしてなるオゾン水は、殺菌作用に優れ、また取り扱いが容易なことから、医療、美容、食品、畜産、半導体等の様々な分野において利用されている。中でも、人体の皮膚表面の殺菌、消毒を目的としたオゾン水の利用が進められており、特にオゾン水を手指消毒用、手洗い用として使用することが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-52556号公報
【特許文献2】特開2014-64663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに近年、オゾン水を、皮膚等に塗布して使用する外用剤として利用することについての検討も進められている。すなわち、オゾン水に、追加的な効能を有する外用成分(例えば保湿成分等)を添加してなる水系組成物の開発が進められている。しかしながら、オゾン水に、オゾン以外の別の外用成分を添加した場合、当該外用成分がオゾンによって分解されてしまい、その効能を全く発揮できないか又は十分に発揮できない。
【0005】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、オゾンによる殺菌作用に加え、追加された外用成分の作用も十分に奏する外用水系組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、外用水系組成物が、水と、オゾンと、トリメチルグリシンとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、オゾンによる殺菌作用に加え、追加された外用成分の作用も十分に奏する外用水系組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態による組成物は、外用組成物、すなわち、人や動物の皮膚、毛髪、粘膜等に塗布して利用される組成物であり、特に皮膚に塗布して利用される皮膚塗布用組成物として好適に使用される。また、本形態による組成物は、水系組成物、すなわち水をベースにした組成物である。例えば、本形態による組成物中に含まれる水の割合が、組成物の全量に対して80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上となり得る。
【0009】
本形態による外用水系組成物は液体状態であることが好ましい。組成物が粘性を有していてもよいが、その粘性は噴霧可能な程度の低いものであると好ましい。例えば、外用水系組成物の粘度は、30℃で測定した値で100mPa・s以下が好ましい。であってよい。
【0010】
本形態による外用水系組成物は、オゾンによって酸化又は変性された物質の殺菌作用を利用するものではなく、オゾン自体の殺菌作用を利用するものである。そのため、組成物中のオゾンの含有量をそれほど大きくせずとも、高い殺菌作用を供することができる。なお、本明細書において、「殺菌」とは、細菌、ウイルス等の微生物を死滅させたり、減らしたり、或いは弱体化若しくは不活性化させたりすることを指す。本明細書における「殺菌作用」には、除菌、滅菌、消毒等の概念も含まれるものとする。
【0011】
本形態による外用水系組成物におけるオゾンの濃度は、外用水系組成物の全量に対し、質量基準で、好ましくは1mg/L以上、より好ましくは2mg/L以上であってよい。オゾン濃度が1mg/L以上であることで、微生物に対する殺菌作用が十分に得られる。一方、外用水系組成物中のオゾン濃度の上限は、オゾンの生成方法にもよるが、水に対するオゾンの溶解度に照らすと、外用水系組成物の全量に対して質量比で10mg/L以下であると好ましい。また、上記上限のオゾン濃度であると、人体又は動物に対する確実な安全性が得られる。
【0012】
外用水系組成物中のオゾンは、電解法(水の電気分解によるオゾン生成方法)により水中で生成されたものであってよいし、或いは放電法、紫外線ランプ法等によって空気中でオゾンガスを生成し、そのオゾンガスを水又は水系液中に溶解させたものであってもよい。オゾンガスを水又は水系液中に溶解させるための方法は、気泡溶解法、隔膜溶解法、充填層溶解法等であってよく、特に限定されない。このうち、小型の簡便な装置でオゾン生成を行うことができるため、電解法を用いることが好ましい。なお、上記のいずれのオゾン生成方法であっても、オゾン又はオゾン水を発生させる機器は、公知のものを用いることができる。
【0013】
本形態による外用水系組成物は、上記のオゾンと共に、トリメチルグリシン(TMG)を含有するものである。トリメチルグリシンは、グリシンベタイン、ベタイン、又は無水ベタインと称される成分である。トリメチルグリシンの作用は、主として保湿作用(塗布した対象からの水分の蒸発を防止する作用)である(特許第3577113号等)。よって、皮膚や毛髪に塗布した場合、皮膚や毛髪の状態を改善することができる。例えば、皮膚に対しては、水分の消失を防止することで皮膚にハリや弾力を与えることができるし、毛髪に対してはツヤを与え、またダメージを防ぐことができる。また、このようなアミノ酸系保湿成分は、安全性が高く、取り扱いも容易であり、帯電防止作用等も有する。
【0014】
従来、オゾンとオゾン以外の別成分とを配合してなり、且つオゾン及び別成分が十分な機能を発揮できる水系組成物を提供することは、技術的に困難であった。オゾンは酸化力が高いため、併用される別成分がオゾンによって分解され、当該別成分の機能が低下又は消失してしまうと考えられていたからである。この場合、別成分の分解反応によってオゾン自体も還元され、その機能が低下するか又は消失してしまうので、結果として、オゾンも別成分も機能を十分に発揮することができなかった。これに対し、本発明者らは、水中でオゾンとトリメチルグリシンとが共存可能であることを見出し、本発明に至った。よって、本発明の形態によれば、オゾン及びトリメチルグリシンがそれぞれの機能を十分に発揮できる水系組成物を提供できる。より具体的には、オゾンの殺菌作用と、トリメチルグリシンの保湿等の作用とがそれぞれ十分に発揮される水系組成物を提供できる。
【0015】
外用水系組成物中のトリメチルグリシンの含有量は、外用水系組成物の全量に対し、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であってよい。トリメチルグリシンの含有量が0.01質量%以上であることで、保湿効果を高めることができ、また10質量%以下であることで、外用水系組成物の使用触感を良好にできる、すなわちべたつきを抑えた心地良い使用感を付与できる。
【0016】
なお、トリメチルグリシンとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製「アミノコート(登録商標)」、Evonik社製「TEGO(登録商標)Natural Betaine」等の市販品を使用することもできる。
【0017】
外用水系組成物において、オゾンの含有量(wO)に対するトリメチルグリシンの含有量(wt)の比の値(wt/wO)は、質量比で、好ましくは10以上100,000以下、より好ましくは100以上10,000以下であってよい。比の値(wt/wO)が上記範囲であることで、殺菌作用及びトリメチルグリシンが機能をそれぞれ十分に発揮できる外用水系組成物が得られる。
【0018】
外用水系組成物は、その機能を阻害しない量で、オゾン及びトリメチルグリシン以外の成分、より具体的には無機化合物を添加することも可能である。無機化合物としては、塩、鉱物、顔料等が挙げられる。
【0019】
本発明の一実施形態は、外用水系組成物の製造方法であって、オゾン水を生成し、当該オゾン水にトリメチルグリシンを添加することを含む方法であってよい。或いは、別の製造方法は、水にトリメチルグリシンを溶解させてトリメチルグリシン水溶液を調製し、当該トリメチルグリシン水溶液中に、予め空気中で生成させたオゾンを溶解させることを含む方法であってよい。また、水にトリメチルグリシンを溶解させてトリメチルグリシン水溶液を調製し、当該トリメチルグリシン水溶液中の水を原料としてオゾンを生成することを含む方法であってもよい。水を原料としたオゾンの生成には、上述の電解法等を用いることができる。
【0020】
本形態による外用水系組成物は、化粧料、衛生日用品(パーソナルケア製品)、医薬部外品として好適に利用できる。例えば、殺菌作用のある化粧水、美容液、ボディーローション、ハンドローション、ヘアローション、として使用できる。
【0021】
外用水系組成物を使用する際には、使用者は、組成物を手に取って、塗布対象、例えば手指、顔、身体等の皮膚、毛髪に塗布したり、擦り込んだりすることができる。上記の塗布又は擦り込みのために、組成物はコットン、シート、刷毛等を利用することもできる。また、外用水系組成物を、噴霧器を備えた容器に収容しておき、使用時に対象の表面に噴霧することができる。或いは、シートを外用水系組成物に含侵させてなる、組成物含侵シートを予め製作して密閉容器等に保管しておき、使用者は、使用時にそのシートを取り出して使用することができる。
【0022】
なお、本形態による外用水系組成物は、保湿作用、帯電防止作用のある殺菌剤としても利用できる。言わば、高保湿性殺菌剤若しくは消毒剤、又は帯電防止性殺菌剤若しくは消毒剤として利用できる。より具体的には、様々な産業又は家庭における手洗い剤、手指消毒剤として利用することで、高い保湿効果を得ることができる。本形態による外用水系組成物を用いた手指消毒剤は、殺菌成分としてオゾンを利用するため、アルコールを用いた従来の手指消毒剤に比べて手荒れしにくいが、さらにトリメチルグリシンを含むことによって手荒れ防止の効果が一層高められ、使用後も皮膚が保湿された状態を持続させることができる。
【0023】
また、本発明の別の実施形態は、水と、トリメチルグリシンとを含む、オゾン水製造用組成物であってよい。水とトリメチルグリシンとを含む当該組成物は、オゾン水、より具体的にはオゾンによる作用以外の作用が追加されたオゾン水を製造するために使用することができる。その場合、水とトリメチルグリシンとを含む本形態による組成物を、オゾン水と混合するか、或いは、水とトリメチルグリシンとを含む本形態による組成物中に、電解法オゾン生成装置を挿入する等により、当該組成物に含まれる水からオゾンを生成させることができる。
【0024】
上記オゾン水製造用組成物において、トリメチルグリシンの含有量は、オゾン水製造用組成物の全量に対し、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であってよい。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態は、上記オゾン水製造用組成物を塗布対象に塗布又は噴霧した後、オゾン水を塗布又は噴霧する、オゾン水製造用組成物の使用方法であってもよい。或いは、オゾン水を塗布対象に塗布又は噴霧した後、上記オゾン水製造用組成物を塗布又は噴霧する、使用方法であってもよい。
【実施例0026】
オゾン水生成器(アースウォーカートレーディング株式会社製「オゾンバスター」)を用いてイオン交換水中でオゾンを発生させることによって、オゾン濃度5mg/Lのオゾン水を生成した。このオゾン水に、表1に示す外用成分を、組成物中の濃度が同表に示す値(質量%)になるよう添加して、組成物を調製した。調製後直ちに、荏原実業株式会社製「溶存オゾンチェッカーDOC-05A」を用いて、組成物中のオゾン濃度(mg/L)を測定した。
【0027】
【0028】
表中の%は、質量基準である。
【0029】
表1に示すように、トリメチルグリシンを外用成分として使用した組成物(例1及び例2)では、オゾン濃度の低下が抑えられており、組成物調製時の状態が実質的に維持されていると考えられる。一方、トリメチルグリシン以外の外用成分を添加した組成物(例3~例16)では、オゾン濃度が低下しており、外用成分とオゾンとが反応し、両成分の機能が低下又は消失していると考えられる。