(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060630
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168002
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】小柳 聖
(72)【発明者】
【氏名】森崎 想
(72)【発明者】
【氏名】中尾 元春
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和善
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈太
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA10
2H033AA23
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB38
2H033CA07
2H033CA30
(57)【要約】
【課題】画像の光沢ムラを抑制するとともにベルト部材のライフの向上を図る。
【解決手段】循環移動するベルト部材と、ベルト部材に接触しベルト部材との間を移動する記録媒体を加圧する加圧手段と、基材と基材の表面に基材の長手方向に沿って配置された抵抗発熱体と抵抗発熱体を覆う絶縁体とを有しベルト部材を介して加圧手段と接触してベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を備え、絶縁体は、基材のベルト部材の移動方向における角部を覆うように形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動するベルト部材と、
前記ベルト部材に接触し、前記ベルト部材との間を移動する記録媒体を加圧する加圧手段と、
基材と、前記基材の表面に前記基材の長手方向に沿って配置された抵抗発熱体と、前記抵抗発熱体を覆う絶縁体と、を有し、前記ベルト部材を介して加圧手段と接触して前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を備え、
前記絶縁体は、前記基材の前記ベルト部材の移動方向における角部を覆うように形成されている、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記絶縁体は、前記基材の厚み方向における側部を覆うように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ベルト部材の内面は、移動方向における下流側で前記基材の角部と前記絶縁体を介して接触する、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ベルト部材の内面は、移動方向における下流側で前記基材の角部と前記絶縁体を介して接触する、
ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
記録媒体への画像形成を行う画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された前記記録媒体への前記画像を定着する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱体と、加熱体を固定保持する加熱体保持部材と、加熱体と摺動するベルトと、ベルトを介して加熱体とニップを形成する加圧部材と、を有し、ニップ部のベルトと加圧部材との間で被加熱材を挟持搬送させてベルトを介した加熱体からの熱により被加熱材を加熱する加熱装置において、ベルトの基材が金属であり、加熱体は、加熱体保持部材よりもベルトとの摺動面側に突出した加熱装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
板状発熱体と、板状発熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、板状発熱体および可撓性部材を保持する支持ホルダーと、可撓性部材を介して板状発熱体とニップ部を形成する弾性ローラと、を有し、ニップ部の可撓性部材と弾性ローラとの間で像を担持した被記録材を挟持搬送して加熱する像加熱装置において、弾性ローラの回転軸線に対して鉛直な断面において、板状発熱体の中心位置がニップ部の中心よりも被記録材搬送方向上流側に位置し、かつ板状発熱体の被記録材搬送方向下流側端部は、ニップ部のニップ内にあり、被記録材搬送方向上流側端部は定着ニップ部のニップ外にある像加熱装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-093842号公報
【特許文献2】特開2006-078578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像の光沢ムラを抑制するとともにベルト部材のライフの向上を図る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の定着装置は、
循環移動するベルト部材と、
前記ベルト部材に接触し、前記ベルト部材との間を移動する記録媒体を加圧する加圧手段と、
基材と、前記基材の表面に前記基材の長手方向に沿って配置された抵抗発熱体と、前記抵抗発熱体を覆う絶縁体と、を有し、前記ベルト部材を介して加圧手段と接触して前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を備え、
前記絶縁体は、前記基材の前記ベルト部材の移動方向における角部を覆うように形成されている、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
前記絶縁体は、前記基材の厚み方向における側部を覆うように形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
前記ベルト部材の内面は、移動方向における下流側で前記基材の角部と前記絶縁体を介して接触する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載の定着装置において、
前記ベルト部材の内面は、移動方向における下流側で前記基材の角部と前記絶縁体を介して接触する、
ことを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決するために、請求項5に記載の画像形成装置は、
記録媒体への画像形成を行う画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された前記記録媒体への前記画像を定着する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えた、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、画像の光沢ムラを抑制するとともにベルト部材内面の傷を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ベルト部材内面の傷を抑制することができる。
【0013】
請求項3、4に記載の発明によれば、定着画像の光沢ムラを抑制するとともに光沢を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、画像の光沢ムラを抑制するとともにベルト部材内面の傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】画像形成装置の内部構成を示す断面模式図である。
【
図4】加熱源の構成を説明する
図3におけるA-A拡大断面模式図である。
【
図5】変形例に係る加熱源の構成を示す断面模式図である。
【
図6】(a)は定着装置におけるトナー像の定着作用を説明する図、(b)は定着ニップ部内での定着ベルトの表面の伸び縮みによる歪み変化を説明する概念図である。
【
図7】変形例の加熱源を備えている定着装置における定着ベルトの変形を模式的に示す図である。
【
図8】比較例の定着装置におけるトナー像の定着作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
尚、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0017】
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の内部構成を示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、画像形成装置1の全体構成及び動作を説明する。
【0018】
画像形成装置1は、制御装置10、給紙装置20、感光体ユニット30、現像装置40、転写装置50、定着装置60、電源装置70を備えて構成されている。画像形成装置1の上面(Z方向)には、画像が記録された用紙が排出・収容される排出トレイ1aが形成されている。
【0019】
制御装置10は、画像形成装置1の動作を制御する画像形成装置制御部11と、印刷処理要求に応じた画像データを準備するコントローラ部12、露光装置LHの点灯を制御する露光制御部13等を有する。
【0020】
コントローラ部12は、外部の情報送信装置(例えばパーソナルコンピュータ等)から入力された印刷情報を潜像形成用の画像情報に変換して予め設定されたタイミングで、駆動信号を露光装置LHに出力する。本実施形態の露光装置LHは、複数の発光素子(LED:Light Emitting Diode)が主走査方向に沿って線状に配列されたLEDヘッドにより構成されている。
【0021】
画像形成装置1の底部には、給紙装置20が設けられている。給紙装置20は、用紙積載板21を備え、用紙積載板21の上面には記録媒体としての用紙Pが積載される。用紙積載板21に積載され、規制板(不図示)で幅方向位置が決められた用紙Pは、上側から1枚ずつ用紙引き出し部22により前方(X方向)に引き出された後、レジストローラ対23のニップ部まで搬送される。
【0022】
感光体ユニット30は、給紙装置20の上方(Z方向)に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する像保持体としての感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向にそって、帯電ローラ32、露光装置LH、現像装置40、一次転写ローラ52、クリーニングブレード34が配置されている。帯電ローラ32には、帯電ローラ32の表面をクリーニングするクリーニングローラ33が対向、接触して配置されている。
【0023】
現像装置40は、内部にトナーとキャリアからなる現像剤が収容される現像ハウジング41を有する。現像ハウジング41内には、感光体ドラム31に対向して配置された現像剤保持体としての現像ローラ42と、この現像ローラ42の背面側斜め下方には現像剤を現像ローラ42側へ撹拌搬送する一対のオーガ44、45が配設されている。現像ローラ42には、現像剤の層厚を規制する層規制部材46が近接配置されている。
現像装置40各々は、現像ハウジング41に収容される現像剤を除いて同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0024】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電ローラ32により帯電され、露光装置LHから出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ローラ42によりトナー像として現像される。
【0025】
転写装置50は、各感光体ユニット30の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト51、各感光体ユニット30にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ローラ52、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ローラ53から構成されている。
【0026】
各感光体ユニット30の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、画像形成装置制御部11により制御される電源装置70から所定の転写電圧が印加された一次転写ローラ52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0027】
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って二次転写ローラ53が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて給紙装置20から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、二次転写ローラ53には、画像形成装置制御部11により制御される電源装置70から所定の転写電圧が印加され、レジストローラ対23から送り出され、搬送ガイドにより案内された用紙Pに中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0028】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニングブレード34により除去され、廃現像剤収容部に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電ローラ32により再帯電される。尚、クリーニングブレード34で除去しきれず帯電ローラ32に付着した残留物は、帯電ローラ32に接触して回転するクリーニングローラ33表面に捕捉され、蓄積される。
【0029】
定着装置60は、加熱源を備えた加熱モジュール61と加圧モジュール62を有し、加熱モジュール61と加圧モジュール62の圧接領域によって定着ニップ部N(定着領域)が形成される。
【0030】
転写装置50においてトナー像TNが転写された用紙Pは、トナー像TNが未定着の状態で搬送ガイドを経由して定着装置60に搬送される。定着装置60に搬送された用紙Pは、一対の加熱モジュール61と加圧モジュール62により、圧着と加熱の作用でトナー像が定着される。
定着トナー像が形成された用紙Pは、搬送ローラ対68を介して排出ローラ対69から画像形成装置1上面の排出トレイ1aに排出される。
【0031】
(2)定着装置60の構成
図2は定着装置60の構成を示す断面模式図、
図3は加熱源612の構成を示す平面模式図、
図4は加熱源612の構成を説明する
図3におけるA-A拡大断面模式図である。
【0032】
(2.1)定着装置の全体構成
定着装置60は、加熱モジュール61と加圧手段の一例としての加圧モジュール62から構成されている。
【0033】
(2.2)加熱モジュール
加熱モジュール61は、用紙Pへのトナー像の定着に用いられるベルト部材の一例としての定着ベルト611と、定着ベルト611の内面が接触摺動する加熱源612とを有し、定着ベルト611は、図中反時計回り方向(
図2中 矢印R参照)に回転して循環移動する。加熱源612は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性を有する合成樹脂により構成された保持部材614で保持されている。保持部材614は、加熱源612の保持機能と共に定着ベルト611の循環移動を案内するガイドの機能も有している。
そして、保持部材614が金属で構成され大きな曲げ強度を有する支持部材615で支持されている。
【0034】
(定着ベルト)
定着ベルト611は、基材層、トナー像TNの定着性を向上させる弾性層、最上層に被覆された表面離型層からなる多層構造のベルト部材である。
基材層としては、例えば、厚さ50μm~200μmの樹脂材料等(例えばポリイミド樹脂)が用いられる。弾性層は、定着対象となる用紙Pに各色トナーが積層して形成され、ニップ部においてトナー像の全体に均一に熱を供給するために、用紙P上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト611表面が変形することが好ましく、例えば厚みが100μm~600μm、硬度が10°~30°(JIS-A)のシリコーンゴムが用いられている。
表面離型層は、用紙P上で溶融されたトナーとの接着力を弱めて、用紙Pを定着ベルト611から剥離しやすくするために、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられている。
【0035】
(加熱源)
定着ベルト611の内側には、
図2に示すように、定着ベルト611の移動方向(X方向)、および、定着ベルト611の幅方向(Y方向)に沿って延びる加熱源612が設けられている。加熱源612は長手方向に延びる面状発熱体であり、この加熱源612により定着ベルト611が所定の温度になるように加熱される。
【0036】
加熱源612は、基材612A上に、複数の抵抗発熱体612B、絶縁体612Cが積層されて構成されている。
基材612Aは、例えばセラミックで形成された長尺平板であり加熱源612の支持体となる。基材612Aの表面側にはガラスペーストを印刷・焼成して形成した絶縁層(不図示)を介して抵抗発熱体612Bが設けられ、更に抵抗発熱体612Bは絶縁性(本実施形態ではガラス)の絶縁体612Cで覆われている。
【0037】
抵抗発熱体612Bは、
図3に示すように、基材612Aの表面側の定着ベルト611の移動方向に対して交差(直交)する長手方向(Y方向)に沿って平行に、銀(Ag)/パラジウム(Pd)合金を主成分とする金属ペーストを印刷して焼成することで形成された所定の抵抗値を有する帯状の抵抗発熱体である。
抵抗発熱体612Bは、一端が重層形成した例えばAg/Pd合金による良導電体膜からなる給電電極612Dを有し、不図示の電源に接続されて給電を受ける。
【0038】
給電電極612Dを残した複数の抵抗発熱体612B及び複数の抵抗発熱体612Bの間隙には、ガラスペーストを厚膜として印刷して焼成することで絶縁体612Cが形成されている。絶縁体612Cは、
図4に示すように、基材612Aの定着ベルト611の移動方向(X方向)における角部612Aaを覆うように基材612Aの幅全体に亘って形成されている。これにより、後述するように、基材612Aが定着ベルト611の内面611aと接触しても傷をつけにくく、摩耗粉の偏在等も発生しにくく定着画像における光沢ムラを抑制可能となっている。
【0039】
「変形例」
図5は変形例に係る加熱源612の構成を示す断面模式図である。
変形例に係る加熱源612は、絶縁体612Caが基材612Aの幅全体及び基材612Aの厚み方向における側部612Abを覆うように形成されている。これにより、後述するように、定着ニップ部Nで用紙詰りが発生し用紙Pを除去する際に、定着ベルト611が意図しない変形をした場合に基材612Aの側部612Abと接触して定着ベルト611内面が傷つくのを抑制している。
【0040】
(温度センサ)
加熱モジュール61には、さらに、温度センサSNRが設けられている。温度センサSNRは、保持部材614及び熱受け板613を貫通して加熱源612に接触配置され、加熱源612の温度を検出する。
また、保持部材614と支持部材615の両端部には、定着ベルト611の開放された両端部の内周面を回転可能に支持する一対のベルトガイド部材616(不図示)が設けられている。
【0041】
(2.3)加圧モジュール
加圧モジュール62は、加圧ローラ621と、加圧ローラ621を加熱モジュール61に押圧する押圧ばね(不図示)を含む押圧機構(不図示)から構成されている。
加圧ローラ621は、例えば、金属製の円筒状の芯材622と、芯材622の外周面に被覆された耐熱性弾性体層623(例えばシリコーンゴム層や、フッ素ゴム層等)と、さらに、必要に応じて、例えばPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による表面離型層624とが積層されて構成される。
【0042】
加圧ローラ621は、モータ(不図示)から動力を受けて図中時計回り方向(
図2中 矢印R方向)に回転する。加圧ローラ621が回転することによって、定着ベルト611が従動して図中反時計回り方向(
図2中 矢印R方向)に回転する。用紙Pが定着ニップ部Nで挟持されて搬送されることにより、定着ベルト611の表面が接触する用紙Pのトナー像TNは加熱源612の熱が伝達されることで用紙Pに加熱定着される。
【0043】
(3)定着作用
図6は定着装置60におけるトナー像の定着作用を説明する図である。
定着装置60は、
図6(a)に模式的に示すように、用紙Pへのトナー像の定着に用いられる定着ベルト611が、その内面が加熱源612と接触摺動しながら、定着ニップ部Nで圧接する加圧ローラ621に従動して図中反時計回り方向(
図6中 矢印R参照)に回転して循環移動する。
転写装置50においてトナー像TNが転写された用紙Pは、定着ニップ部Nで挟持されて搬送されることにより、定着ベルト611の表面が接触する用紙Pのトナー像は加熱源612の熱が伝達されることで用紙Pに加熱定着される。
【0044】
図6(b)には定着ニップ部N内での定着ベルト611の表面の伸び縮みによる歪み変化を概念的に示している
定着装置60においては、
図6(b)に概念的に示すように、定着ニップ部N内で定着ベルト611の移動方向に沿って定着ベルト611の表面に伸び縮みによる歪み変化をつけることにより、トナー表面が搬送方向にずれるような剪断力を与えて未定着トナー像の不均一性を改善し、定着トナー像のムラを抑制するとともに光沢を増加させている。このような定着ベルト611の表面に歪み変化を与える位置は、トナー像TNが高温になり溶融変形しやすい定着ニップ部Nの定着ベルト611の移動方向における後端側(特に
図6(b)中 (A)の範囲)が適していることが知られている。
【0045】
図8は、絶縁体612Cが基材612Aの定着ベルト611の移動方向における角部612Aaに形成されていない比較例の定着装置100におけるトナー像TNの定着作用を説明する図、
図9は加熱源612の製造過程を示す断面模式図である。
加熱源612は、
図9に示すように、一枚の基材612A上に、複数の抵抗発熱体612Bと絶縁体612Cを形成し、必要な抵抗発熱体612Bの単位で基材612Aを切断して(
図9(b)中 スクライブ参照)形成される。この場合、
図9(c)に示すように、基材612Aの端部には絶縁体612Cが積層されず、基材612Aの端部はセラミックが露出した状態となる(
図9(c)中 矢印で示す)。
【0046】
このような基材612Aの端部に絶縁体612Cが積層されず、端部にセラミックが露出した加熱源においては、
図8に示すように、定着ニップ部Nの定着ベルト611の移動方向における後端側で定着ベルト611の内面611aが基材612Aの角部612Aaに接触しやすくなる(
図8中 破線で囲む領域(B))。その結果、基材612Aのセラミックが定着ベルト611の内面611aを傷付けて定着ベルト611の寿命を短くしたり、摩耗粉が不均一に堆積することで筋状の画像欠陥が発生する虞があった。
【0047】
本実施形態に係る定着装置60は、
図6に示すように、加熱源612は、絶縁体612Cが基材612Aの定着ベルト611の移動方向における角部612Aaを覆うように基材612Aの幅全体に亘って形成されている。これにより、定着ニップ部Nの定着ベルト611の移動方向における後端側では、定着ベルト611の内面611aは基材612Aと絶縁体612Cを介して接触することになる。絶縁体612Cは、ガラス材料で形成されセラミックに比べて表面が平滑であるため、定着ベルト611の内面611aと接触しても傷を付けにくく、摩耗粉の偏在等も発生しにくく定着画像における光沢ムラを抑制可能となっている。
【0048】
図7には、絶縁体612Caが基材612Aの幅全体及び基材612Aの厚み方向における側部612Abを覆うように形成されている変形例の加熱源612を備えている定着装置60における定着ベルト611の変形を模式的に示している。
定着ニップ部Nで用紙詰りが発生し用紙Pを除去する場合、定着ベルト611が意図しない変形をして基材612Aの側部612Abに定着ベルト611の内面611aが接触して定着ベルト611の内面611aが傷つく虞があった。
変形例の加熱源612においては、ガラスを材料とする絶縁体612Caが基材612Aの幅全体及び基材612Aの厚み方向における側部612Abを覆うように形成されている。これにより、
図7(b)に模式的に示すように、定着ベルト611が意図しない変形をして定着ベルト611の内面611aが基材612Aの側部612Abと接触しても傷を付けにくくなっている(
図7中 破線で囲む領域(C))。
【符号の説明】
【0049】
1・・・画像形成装置
10・・・制御装置、20・・・給紙装置、30・・・感光体ユニット、31・・・感光体ドラム、40・・・現像装置、42・・・現像ローラ、50・・・転写装置、51・・・中間転写ベルト、53・・・二次転写ローラ
60・・・定着装置
61・・・加熱モジュール、611・・・定着ベルト、612・・・加熱源、612A・・・基材、612B・・・抵抗発熱体、612C・・・絶縁体
N・・・定着ニップ