(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060634
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/12 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B23Q11/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168006
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 健児
(72)【発明者】
【氏名】早川 義法
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011FF05
(57)【要約】
【課題】潤滑油の消費量を低減することができる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械は、ワークの加工を行う加工部と、工作機械の給油対象部(ボールねじ13b,32b,33b,23b,24b,43b、ボールねじ13bの外周、ガイド13g、回転工具装置80、回転ガイドブッシュ60)へ潤滑油を供給可能な供給許可状態、及び給油対象部への潤滑油の供給を停止した供給停止状態の間で状態を切り替え可能な油供給部71と、予め設定された加工プログラムに従って上記加工部を制御することによりワークを加工するための加工運転を実行する制御部300と、を備える。制御部300は、油供給部71を、加工運転の開始時に供給許可状態(オン状態)とすることで上記給油対象部への潤滑油の供給を開始し、加工運転の終了時に停止状態(オフ状態)とすることで上記給油対象部への潤滑油の供給を停止する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの加工を行う加工部と、
工作機械の給油対象部へ潤滑油を供給可能な供給許可状態、及び前記給油対象部への前記潤滑油の供給を停止した供給停止状態の間で状態を切り替え可能な油供給部と、
予め設定されたプログラムに従って前記加工部を制御することにより前記ワークを加工するための加工運転を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記油供給部を、前記加工運転の開始時に前記供給許可状態とすることで前記給油対象部への潤滑油の供給を開始し、前記加工運転の終了時に前記供給停止状態とすることで前記給油対象部への潤滑油の供給を停止する、
工作機械。
【請求項2】
前記制御部は、前記加工運転が終了したとき、又は前記油供給部が前記供給停止状態に切り替わったときから、一定時間が経過したときに、前記油供給部を前記供給許可状態とすることで前記給油対象部への潤滑油の供給を開始する、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御部は、前記工作機械への電源投入後に、前記油供給部を一時的に前記供給許可状態とすることで前記給油対象部へ潤滑油を供給する、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記加工部は、回転工具を回転可能に保持する回転工具装置を備え、
前記制御部は、前記回転工具装置を起動する旨の指令を出力する際、前記油供給部を前記供給許可状態とすることで前記給油対象部への潤滑油の供給を開始する、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記給油対象部に到達する前の前記潤滑油に気体を供給することにより潤滑油と気体の混合体を生成し、生成した前記混合体を前記給油対象部に供給する気体供給システムを備え、
前記気体供給システムは、
前記気体の供給を可能とする開状態と前記気体の供給を停止する閉状態の間で切り替え可能であるバルブを備え、
前記工作機械は、前記油供給部から前記潤滑油が供給されているときには前記バルブを前記開状態とし、前記油供給部からの前記潤滑油の供給が停止しているときには前記バルブを前記閉状態とする連動部を備える、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の工作機械は、モータの駆動力により複数の歯車を介して工具ユニットを回転可能に構成され、歯車同士の噛み合う位置、及び歯車と工具ユニットが嵌合する位置に、潤滑油をポンプの動作を通じて供給可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成において、一般的に、工作機械本体の電源又は工作機械のブレーカ電源がオンすると、ポンプの電源もオンし、ポンプの電源がオンしている期間においては、常に潤滑油が供給されていた。このため、工作機械本体の電源等がオンであれば、加工プログラムに沿った加工運転が停止している期間においても、ポンプの動作を通じて潤滑油が供給されており、潤滑油の消費量が多くなっていた。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、潤滑油の消費量を低減することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、ワークの加工を行う加工部と、工作機械の給油対象部へ潤滑油を供給可能な供給許可状態、及び前記給油対象部への前記潤滑油の供給を停止した供給停止状態の間で状態を切り替え可能な油供給部と、予め設定されたプログラムに従って前記加工部を制御することにより前記ワークを加工するための加工運転を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記油供給部を、前記加工運転の開始時に前記供給許可状態とすることで前記給油対象部への潤滑油の供給を開始し、前記加工運転の終了時に前記供給停止状態とすることで前記給油対象部への潤滑油の供給を停止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、潤滑油の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る第1主軸移動機構の概略平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第2主軸移動機構の概略平面図である。
【
図6】
図1の矢印Aから見た第1工具移動機構の概略側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る油供給システムの流体的な接続関係を示すブロック図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る工作機械及びポンプの動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る工作機械の電源状態とポンプの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る工作機械について図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、工作機械1は、ワークWを加工するNC(Numerical Control)旋盤である。詳しくは、工作機械1は、工作機械1の各構成を支持する台であるベッドSと、
第1主軸ユニット10と、第1主軸移動機構13と、回転ガイドブッシュ60と、第2主軸ユニット20と、第2主軸移動機構23,24と、第1工具ユニット30と、第1工具移動機構32,33と、第2工具ユニット40と、制御部300と、油供給システム70と、を備える。
【0010】
(第1主軸ユニット10)
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、円柱状のワークWを把持し、把持したワークWをZ軸方向に沿う回転軸を中心に軸回転させる。第1主軸ユニット10は、ワークWを把持する第1主軸11と、第1主軸11を軸回転可能に支持する第1主軸台15と、を備える。
【0011】
第1主軸移動機構13は、制御部300による制御のもと、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。
図1及び
図4に示すように、第1主軸移動機構13は、第1主軸ユニット10が上面に設置されるスライド台13sと、モータ13mと、モータ13mの回転運動を直線運動に変換するボールねじ13bと、を備える。ボールねじ13bは、Z軸方向に沿って延びるねじ軸部13kと、ねじ軸部13kに螺合するナット13nと、を備える。ナット13nは、スライド台13sの下面に固定され、ボールねじ13bの軸回転により、スライド台13s及び第1主軸ユニット10とともにZ軸方向に移動する。
【0012】
図4に示すように、ナット13nには接続部13tが設けられている。接続部13tは、スライド台13sに固定される継手19aに、オイルエア供給路18aを介して接続されている。継手19aは、オイルエア供給路18aの他、潤滑油が供給される潤滑油供給路72aと気体の一例であるエア(空気)が供給されるエア供給路53とに接続されている。継手19aは、潤滑油供給路72aからの潤滑油とエア供給路53からのエアを混合し、エア(気体)と潤滑油の混合体(以下、単にオイルエア)をオイルエア供給路18aに供給する。オイルエア供給路18aを通って接続部13tに供給されたオイルエアは、ナット13nとねじ軸部13kの間に進入する。
【0013】
図4に示すように、スライド台13sは、スライド台13sの下面に固定される複数のガイド13gを備える。各ガイド13gは、ベッドSの上面に設けられる一対のレール13rに沿って移動可能にレール13rに嵌まるガイド溝を有する。各ガイド13gには接続部13jが設けられている。各接続部13jは、スライド台13sに固定される継手19bに、潤滑油供給路72bを介して接続されている。潤滑油供給路72bを通って接続部13jに供給された潤滑油は、各ガイド13gとレール13rの間に進入する。
【0014】
図4に示すように、ねじ軸部13kには、油供給システム70の吐出部76から潤滑油が供給される。吐出部76は、ねじ軸部13kの直上に位置し、ねじ軸部13kの外周面に潤滑油を滴下する。吐出部76は、継手19bに流体的に接続されていて、スライド台13sとともに移動可能に構成されている。継手19bは、後述する油供給部71からの潤滑油供給路72cを経た潤滑油を受けて、この潤滑油を吐出部76、潤滑油供給路72a,72bに供給するように構成されている。継手19bは、
図1に示すように、潤滑油供給路72c→継手19e→潤滑油供給路72gを介して後述する油供給部71に流体的に接続されている。
【0015】
(第2主軸ユニット20)
図1及び
図2に示すように、第2主軸ユニット20は、第1主軸ユニット10にZ軸方向に対向して位置し、ワークWを把持し、把持したワークWをZ軸方向に沿う回転軸を中心に軸回転させる。
第2主軸ユニット20は、ワークWを把持する第2主軸21と、第2主軸21を軸回転可能に支持する第2主軸台25と、を備える。
【0016】
図2に示すように、第2主軸移動機構23は、制御部300による制御のもと、第2主軸ユニット20をZ軸方向に移動させる。第2主軸移動機構23は、上述した第1主軸移動機構13と同様の構成を有する。
第2主軸移動機構24は、制御部300による制御のもと、第2主軸移動機構23及び第2主軸ユニット20をX軸方向に移動させる。第2主軸移動機構24は、上述した第1主軸移動機構13と向きが異なるが、それ以外は第1主軸移動機構13と同様の構成を有する。
詳しくは、
図5に示すように、第2主軸移動機構23,24は、スライド台23s,24sと、ナット23n,24nを含むボールねじ23b,24bと、モータ23m,24mと、を備える。
図1に示すように、ナット23nには、潤滑油が供給される接続部23tが設けられている。ナット24nには、潤滑油が供給される接続部24tが設けられている。接続部23t,24tは、それぞれ、ベッドSに固定される継手19cに、潤滑油供給路72dを介して接続されている。継手19cは、潤滑油供給路72e→継手19d→潤滑油供給路72f→継手19e→潤滑油供給路72gを介して後述する油供給部71に流体的に接続されている。接続部23t,24tに供給された潤滑油は、ナット23n,24nとボールねじ23b,24bのねじ軸部の間に進入する。
【0017】
(回転ガイドブッシュ60)
図1に示すように、回転ガイドブッシュ60は、第1主軸11の先端側に位置し、第1主軸11により保持されたワークWを保持しつつ第1主軸11と同期して回転する。回転ガイドブッシュ60は、何れも図示しない、ワークWを外周から支持するワーク支持部と、ワーク支持部を回転可能に支持する軸受と、ワーク支持部を回転駆動するモータと、を備える。回転ガイドブッシュ60には、潤滑油が供給される接続部60tが設けられている。接続部60tは、それぞれ、ベッドSに固定される継手19eに、潤滑油供給路72hを介して接続されている。継手19eは、潤滑油供給路72gを介して後述する油供給部71に流体的に接続されている。接続部60tに供給され潤滑油は、回転ガイドブッシュ60の軸受の摩擦部に進入する。
【0018】
(第2工具ユニット40)
図1及び
図2に示すように、第2工具ユニット40は、第2主軸ユニット20により把持されたワークWを加工するために利用される。第2工具ユニット40は、工具41と、工具41が装着可能な刃物台46と、第2工具移動機構43と、を備える。工具41は、クロスドリル等の回転工具、及び固定工具等からなる。
【0019】
図1及び
図3に示すように、第2工具移動機構43は、制御部300による制御のもと、刃物台46をY軸方向に移動させる。第2工具移動機構43は、上述した第1主軸移動機構13と向きが異なるが、それ以外は第1主軸移動機構13と同様の構成を有する。
詳しくは、第2工具移動機構43は、スライド台43sと、ボールねじ43bと、モータ43mと、を備える。
図1に示すように、ボールねじ43bのナット43nには、潤滑油が供給される接続部43tが設けられている。接続部43tは、ベッドSに固定される継手19dに、潤滑油供給路72iを介して接続されている。継手19dは、潤滑油供給路72f→継手19e→潤滑油供給路72gを介して後述する油供給部71に流体的に接続されている。接続部43tに供給された潤滑油は、ナット43nとボールねじ43bのねじ軸部の間に進入する。
【0020】
(第1工具ユニット30)
図2及び
図3に示すように、第1工具ユニット30は、第1主軸11により把持されたワークWを加工するために利用される。第1工具ユニット30は、複数の工具31a,31bと、回転工具装置80と、を備える。
複数の工具31bは、切削バイトであり、工具台であるスライド台33sに固定されている。
【0021】
回転工具装置80は、スライド台33sに固定され、回転工具である工具31aが装着可能であり、制御部300による制御のもと、装着された工具31aを回転可能に構成されている。回転工具装置80は、モータ80mと、歯車機構(図示略)と、モータ80mの駆動力を歯車機構を介して受けることで工具31aとともに回転する回転軸部(図示略)と、回転軸部を回転可能に支持する軸受(図示略)と、を備える。
図1に示すように、回転工具装置80には、潤滑油が供給される接続部80tが設けられている。接続部80tは、ベッドSに固定される継手19dに、潤滑油供給路72jを介して接続されている。接続部80tに供給され潤滑油は、歯車機構の噛合部、回転軸部と工具31aの嵌合部、又は軸受に進入する。
【0022】
図3に示すように、第1工具移動機構33は、制御部300による制御のもと、工具31a,31bをY軸方向に移動させる。
図2に示すように、第1工具移動機構32は、制御部300による制御のもと、工具31a,31bをX軸方向に移動させる。
図6に示すように、第1工具移動機構32,33は、第2主軸移動機構23,24と同様に、スライド台32s,33sと、ボールねじ32b,33bと、モータ32m,33mと、を備える。
【0023】
ボールねじ32bのナット32nには、潤滑油が供給される接続部32tが設けられている。接続部32tは、継手19fに、オイルエア供給路18bを介して接続されている。継手19fは、オイルエア供給路18bの他、潤滑油が供給される潤滑油供給路72kとエアが供給されるエア供給路53に接続されている。継手19fは、潤滑油供給路72kからの潤滑油とエア供給路53からのエアを混合し、混合したオイルエアをオイルエア供給路18bに供給する。オイルエア供給路18bを通って接続部32tに供給されたオイルエアは、ナット32nとボールねじ32bのねじ軸部の間に進入する。
【0024】
ボールねじ33bのナット33nには、潤滑油が供給される接続部33tが設けられている。接続部33tは、継手19gに、潤滑油供給路72mを介して接続されている。
図1に示すように、継手19gは、潤滑油供給路72n→継手19e→潤滑油供給路72gを介して後述する油供給部71に流体的に接続されている。接続部33tに供給された潤滑油は、ナット33nとボールねじ33bのねじ軸部の間に進入する。
【0025】
(油供給システム70)
図7に示すように、油供給システム70は、各給油対象部の摩擦及び摩耗の減少を目的として、潤滑油を各給油対象部に供給する。各給油対象部は、上述した各接続部13j,13t,23t,24t,32t,33t,43t,60t,80tを給油口とする部位であり、本例では、各ボールねじ13b,32b,33b,23b,24b,43b、ボールねじ13bの外周、各ガイド13g、回転工具装置80、回転ガイドブッシュ60である。
【0026】
油供給システム70は、油供給部71と、潤滑油供給路72と、エア供給システム50と、を備える。
潤滑油供給路72は、上述した潤滑油供給路72a~72k,72m,72nを含み、上記各給油対象部と油供給部71の間に流体的に接続されている。油供給部71は、制御部300による制御のもと動作し、潤滑油供給路72を介して上記各給油対象部に潤滑油を供給する。
【0027】
図7に示すように、油供給部71は、ポンプ71pと、タンク71kと、を備える。
タンク71kには潤滑油が収容されている。
ポンプ71pは、制御部300による制御のもと、タンク71kに収容された潤滑油を潤滑油供給路72に供給可能に構成されている。ポンプ71pは、電源が供給されるとオンとなり、電源の供給が停止されるとオフとなる。本例では、ポンプ71pは、オン(供給許可状態)であるときには、一定時間が経過する毎に、すなわち、間欠的に、一定量の潤滑油を供給するように動作する、いわゆる間欠型ポンプである。ポンプ71pは、例えば、電動間欠型ピストンポンプである。ポンプ71pがオンしているときにはポンプ71pのモータ(図示略)は連続回転する。モータの回転は、ギア等の減速機構(図示略)を介してカム機構(図示略)に伝達される。減速機構は、モータの回転数を下げたうえで、本例では、上記一定時間あたり1回転の回転数としたうえで回転力をカム機構に伝達する。カム機構は、減速機構からの回転力を受けてシリンダ(図示略)内のピストン(図示略)を往復運動させる。ピストンが1往復すると、潤滑油をシリンダ内に吸引したうえで、ピストンの外部へ潤滑油を吐出する。以上のように、ポンプ71pがオンしているときには、モータが連続回転しつつ、上記一定時間あたり1回の間欠的な吐出が可能となる。ポンプ71pは、油量調整ノブの操作により、潤滑油の供給量を調整可能である。潤滑油の供給量は、例えば、0.3mL/3分に設定されている。ポンプ71pは、オフ(供給停止状態)であるときには、モータの回転が停止し、潤滑油の供給が停止されている。間欠型ポンプは、常時、潤滑油が供給されないため、潤滑油の消費量を削減することができる。
【0028】
図7に示すように、エア供給システム50は、各ボールねじ13b,32b,33b,23b,24b,43bのうち、第1主軸ユニット10のZ軸方向への移動に係るボールねじ13b、及び第1工具ユニット30のX軸方向への移動に係るボールねじ32bへ向かう潤滑油にエアを混合してオイルエアを生成し、生成したオイルエアをボールねじ13b,32bを供給する。オイルエアは、液体である潤滑油に比べて空間的に広がりやすく均一に供給可能であるとともに、エアによる冷却効果及び異物の侵入防止等のメリットを有する。ボールねじ13b,32bは、他のボールねじ33b,23b,24bに比べて使用頻度が高いため、ボールねじ13b,32bにオイルエアを供給することは特に効果的である。
【0029】
エア供給システム50は、空圧源51と、ソレノイドバルブ52と、エア供給路53と、を備える。
空圧源51は、エアコンプレッサからなり、正圧のエアをエア供給路53に供給する。エア供給路53の一端は、空圧源51に接続されている。エア供給路53の他端は、潤滑油供給路72のうちボールねじ13b,32bに到達する手前の接続点P1,P2に接続されている。接続点P1は、上述した継手19a(
図4参照)に対応しており、接続点P2は、上述した継手19f(
図6参照)に対応している。
ソレノイドバルブ52は、エア供給路53上に、空圧源51と接続点P1,P2の間に設けられている。制御部300による制御により、ポンプ71pからの潤滑油の供給と停止に連動して、ソレノイドバルブ52の状態が開状態(オン)と閉状態(オフ)の間で切り替えられる。これにより、潤滑油とエアの供給タイミングを同期させることができる。詳しくは、ソレノイドバルブ52は、開状態となると、空圧源51からのエアを各接続点P1,P2に供給可能であり、閉状態となると、空圧源51からのエアの接続点P1,P2への供給を停止する。ソレノイドバルブ52は、通電されると開状態となり、通電されないと閉状態となる。
【0030】
図1に示すように、制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御する。制御部300は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等からなる。制御部300は、予め設定されたNCプログラムに沿って後述する自動加工運転を実行する。
【0031】
制御部300は、
図8に示すように、自動加工運転の開始時(時刻ta)にポンプ71pをオンし、自動加工運転中においてはポンプ71pのオンを継続し、自動加工運転の終了時(時刻tb)にポンプ71pをオフする。自動加工運転中において、ポンプ71pのオンが継続されると、本例では、間欠的に潤滑油が供給される。自動加工運転中において、制御部300は、潤滑油の供給時にはソレノイドバルブ52を開状態に切り替え、潤滑油の供給停止時にはソレノイドバルブ52を閉状態に切り替える。制御部300は、自動加工運転を行っていない自動運転停止期間Tsにおいては、後述する第1~第3の例外給油条件を満たさない限り、ポンプ71pをオフに維持する。言い換えると、制御部300は、自動運転停止期間Tsにおいて、後述する第1~第3の例外給油条件の何れかの条件を満たすと、一時的にポンプ71pをオンに、かつソレノイドバルブ52を開状態に切り替えて、一定量の潤滑油及びオイルエアを供給する。
また、工作機械1の電源がオンとなると、工作機械1の稼働を可能とするために各部に電源が供給される運転準備が実行され、制御部300は、この運転準備が完了すると、運転準備のフラグをオンする。一方、制御部300は、工作機械1の電源がオフとなる際、運転準備のフラグをオフする。工作機械1が非常停止となった場合には、運転準備のフラグがオフされずにオンに維持される。
【0032】
以下、第1~第3の例外給油条件について順に説明する。
第1の例外給油条件は、工作機械1への電源投入後の初回の運転準備完了時である。
詳しくは、作業者は、工作機械1を起動させるためには、工作機械1のブレーカ電源をオンした後、工作機械1の電源スイッチをオンする。これにより、工作機械1へ電源投入される(
図9の時刻t1)。工作機械1へ電源が投入された後、準備時間が経過すると、工作機械1を稼働させることが可能な運転準備完了となる(
図9の時刻t2)。時刻t2において、制御部300は、上記運転準備のフラグの状態を確認することにより、初回の運転準備完了時であるか否かを判別する。制御部300は、運転準備のフラグがオフであると確認すると、初回の運転準備完了時であると判別する。この場合、運転準備のフラグをオンするとともに、
図9の時刻t2から給油時間T1にわたってポンプ71pをオンに切り替える。そして、給油時間T1の経過後に、ポンプ71pをオフに切り替える。給油時間T1は、ポンプ71pによる1回分の潤滑油の供給が行われる時間、例えば、3分間に設定される。初回の運転準備完了時では、潤滑油が供給されていない時間が長時間であることが想定されるため、運転準備完了時に潤滑油を供給することが好ましい。
一方、制御部300は、例えば、前回に工作機械1が非常停止となって復帰した後の運転準備完了時には、運転準備のフラグがオンであると確認し、この場合、初回の運転準備完了時でないと判別して、ポンプ71pをオフに維持する。この非常停止後の復帰の際には、潤滑油が供給されていない時間が短時間であることが想定されるため、ポンプ71pをオフに維持することにより、潤滑油を無駄に消費することが抑制される。
【0033】
第2の例外給油条件は、回転工具起動時である。
詳しくは、制御部300は、例えば、作業者によりプログラムが入力されるMDI(Manual Data Input)運転において、回転工具を起動する旨の指令を出力する際、回転工具が回転する時間である回転時間にわたってポンプ71pをオンに切り替え、この回転時間の経過後に、ポンプ71pをオフに切り替える。この回転時間は、上述した給油時間T1と同様に設定される。これにより、回転工具装置80だけでなく、他の全ての給油対象部に潤滑油が供給される。なお、この指令を出力する際とは、出力すると同時のみならず、出力する直前又は出力する直後を含む概念である。回転工具装置80の歯車機構(図示略)は、無給油では高速回転により摩耗しやすいため、このように回転工具の起動時に潤滑油を供給することが好ましい。
【0034】
第3の例外給油条件は、ポンプ71pがオフに維持された時間(ポンプオフ維持時間)が一定時間T2を経過したことである。
詳しくは、制御部300は、
図8に示すように、例えば、自動加工運転の終了時(時刻tb)からポンプオフ維持時間の計測を開始し、計測したポンプオフ維持時間が一定時間T2に到達すると、給油時間にわたってポンプ71pをオンに切り替え、この給油時間の経過後に、ポンプ71pをオフに切り替える。このオフへの切り替え後、再び、ポンプオフ維持時間の計測を開始する。この給油時間は、上述した給油時間T1と同様に設定される。これにより、自動運転停止期間Tsが継続する限り、ポンプオフ維持時間が一定時間T2を経過する毎に潤滑油が供給される。
仮に、この第3の例外給油条件が設定されないと、長時間にわたって自動運転停止期間Tsが続いた状態から、サイクルスタートボタンが作業者により操作されることで、自動加工運転を開始すると、この開始時に、ポンプ71pによる間欠的な潤滑油の供給タイミングが合わない限り、供給タイミングとなるまでは潤滑油が不足した状態で工作機械1の運転が行われる。この点、この第3の例外給油条件を設定することにより、自動運転停止期間Tsにも定期的に潤滑油が供給されるため、長時間にわたって自動運転停止期間Tsが続いた状態から自動加工運転を開始したときでも、潤滑油が不足した状態で工作機械1の加工運転が行われることが抑制される。
制御部300は、ポンプオフ維持時間の計測途中で、自動加工運転の開始、又は上述した第2の例外給油条件を満たしたことに伴い、ポンプ71pがオンに切り替えられたときには、ポンプオフ維持時間の計測をリセットする。そして、ポンプ71pがオフに切り替えられたとき(例えば、自動加工運転の終了時)、ポンプオフ維持時間の計測をゼロから開始する。なお、本例に限らず、このリセットは行われなくてもよい。
【0035】
次に、制御部300により実行される自動加工運転について説明する。制御部300は、予め設定されたNCプログラムに沿って、この自動加工運転を実行する。
まず、図示しないワーク供給装置からワークWが第1主軸11及び回転ガイドブッシュ60に供給される。制御部300は、供給されたワークWを第1主軸11で把持し、把持したワークWに対して第1工具ユニット30を利用して第1の加工を行う。
【0036】
この第1の加工を完了すると、制御部300は、第1主軸11が把持するワークWを第2主軸21に受け渡し、次に、第2主軸21で把持したワークWに対して第2工具ユニット40を利用して第2の加工を行う。この第2の加工が完了すると、制御部300は、ワーク排出装置(図示略)を利用して加工済みのワークWを工作機械1の外部へ排出する。
以上で、自動加工運転が終了となる。この自動加工運転は、ワークWの供給毎に繰り返し実行される。
【0037】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械1は、ワークWの加工を行う加工部(第1主軸ユニット10、第1主軸移動機構13、第2主軸ユニット20、第2主軸移動機構23,24、第1工具ユニット30、第1工具移動機構32,33、及び第2工具ユニット40)と、工作機械1の給油対象部(主に、加工部を駆動する駆動部の可動部:ボールねじ13b,32b,33b,23b,24b,43b、ボールねじ13bの外周、ガイド13g、回転工具装置80、回転ガイドブッシュ60)へ潤滑油を液体又は液体と気体との混合体の形態で供給可能な供給許可状態(オン状態)と給油対象部への潤滑油の供給を停止した停止状態(オフ状態)との間で状態を切り替え可能な油供給部71と、予め設定された加工プログラムに従って上記加工部を制御することによりワークWを加工するための加工運転を実行する制御部300と、を備える。制御部300は、油供給部71を、加工運転の開始時に供給許可状態(オン状態)とすることで上記給油対象部への潤滑油の供給を開始し、加工運転の終了時に停止状態(オフ状態)とすることで上記給油対象部への潤滑油の供給を停止する。
この構成によれば、加工運転の停止時に、原則的に、給油対象部への潤滑油の供給が停止されるため、潤滑油の消費量を低減することができる。
【0038】
(2)制御部300は、油供給部71が停止状態(オフ状態)に切り替わったときから、一定時間T2が経過したときに、油供給部71を供給許可状態(オン状態)とすることで上記給油対象部への潤滑油の供給を開始する。
この構成によれば、潤滑油が不足した状態で、加工運転が開始されることが抑制される。
【0039】
(3)制御部300は、工作機械1への電源投入後に、油供給部71を一時的に供給許可状態とすることで上記給油対象部へ潤滑油を供給する。
この構成によれば、工作機械1への電源投入後に、潤滑油が不足した状態で、加工運転が開始されることが抑制される。
【0040】
(4)上記加工部は、回転工具の一例である工具31aを回転可能に保持する回転工具装置80を備える。制御部300は、回転工具装置80を起動する旨の指令を出力する際、油供給部71を供給許可状態とすることで上記給油対象部への潤滑油の供給を開始する。
この構成によれば、潤滑油が不足した状態で、回転工具装置80(例えば、歯車機構)が動作することが抑制される。
【0041】
(5)工作機械1は、上記給油対象部(例えば、ボールねじ13b,32b)に到達する前の潤滑油に、気体の一例であるエアを供給することにより潤滑油と気体の混合体を生成し、生成した混合体を上記給油対象部に供給する気体供給システムの一例であるエア供給システム50を備える。エア供給システム50は、気体の供給を可能とする開状態と気体の供給を停止する閉状態の間で切り替え可能であるバルブの一例であるソレノイドバルブ52を備える。工作機械1は、油供給部71から潤滑油が供給されているときにはソレノイドバルブ52を開状態とし、油供給部71からの潤滑油の供給が停止しているときにはソレノイドバルブ52を閉状態とする連動部の一例である制御部300を備える。
この構成によれば、潤滑油が供給されていないときには、気体の供給も停止されるため、気体の消費量を削減することができる。
【0042】
(変形例)
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0043】
上記実施形態においては、油供給システム70は、エア供給システム50を有するため、ボールねじ13b,32bの両方に潤滑油とエアの混合体であるオイルエアを供給可能であったが、ボールねじ13b,32bの何れか一方のみ、又はボールねじ13b,32b以外の給油対象部にオイルエアを供給可能であってもよい。また、潤滑油に混合する気体としてエアを例示したが、他の気体、例えば、窒素等を混合してもよい。
また、エア供給システム50は省略されてもよい。この場合、ボールねじ13b,32bにも潤滑油が液体で供給される。
また、潤滑油が供給される給油対象部は、上記実施形態の各構成から適宜変更可能である。例えば、第1主軸移動機構13のガイド13g以外のガイドに潤滑油又はオイルエアが供給されてもよい。
【0044】
上記実施形態における第1~第3の例外給油条件以外の例外給油条件を設定してもよいし、第1~第3の例外給油条件の何れか1~3つが省略されてもよい。
上記実施形態の第1~第3の例外給油条件の内容を適宜変更してもよい。例えば、第1の例外給油条件は、工作機械1への電源投入後の初回の運転準備完了時であったが、初回でなくてもよく、例えば、非常停止後の復帰の際の運転準備完了時にも第1の例外給油条件が満たしたとして潤滑油を供給してもよい。
【0045】
上記実施形態においては、ポンプ71pは、電動間欠型ピストンポンプであったが、ピストンポンプ以外の種類のポンプであってもよい。
また、ポンプ71pは、間欠型ポンプであったが、これに限らず、オン(供給許可状態)であるときには、常時、潤滑油を供給し続ける連続型ポンプであってもよい。
【0046】
上記実施形態においては、油供給システム70は、各給油対象部に同時に潤滑油を供給する構成であったが、各給油対象部に個別に潤滑油を供給する構成であってもよい。この場合、各給油対象部に個別にソレノイドバルブを設け、制御部300による制御のもと、ソレノイドバルブを開状態と閉状態の間で切り替えることにより、各給油対象部に個別に潤滑油を供給するか否かを制御可能である。
【0047】
第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20の何れか一方が省略されてもよい。また、主軸ユニットの数は、3つ以上であってもよい。
また、回転工具装置80は省略されてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、刃物台46は、Y軸方向に移動可能に構成されていたが、X軸方向及びZ軸方向に移動可能に構成されてもよいし、各軸方向に移動不能であってもよい。
【0049】
上記実施形態においては、工作機械1は、回転ガイドブッシュ60を備えていたが、回転ガイドブッシュ60が省略されてもよい。また、ダイレクト駆動型の回転ガイドブッシュ60に代えて、ダイレクト駆動型以外の種類のガイドブッシュ装置、例えば、ケレ式回転ガイドブッシュ装置又はベルト駆動ガイドブッシュ装置が設けられていてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、制御部300による制御により、ソレノイドバルブ52の動作とポンプ71pの動作が連動していたが、これに限らず、ソレノイドバルブ52は、ポンプ71pのモータ電流の有無を検出する検出信号を受けて開閉してもよい。例えば、ソレノイドバルブ52は、ポンプ71pのモータ電流が流れている旨の検出信号をポンプ71pから受けると開状態となり、ポンプ71pのモータ電流が流れていない旨の検出信号をポンプ71pから受けると閉状態となってもよい。この場合、ソレノイドバルブ52の動作とポンプ71pの動作の連動に制御部300が関わらずに済むため、より簡易に連動を実現することができる。
【0051】
上記実施形態においては、制御部300は、ポンプ71pがオフに維持された時間が一定時間T2を経過したときに第3の例外給油条件を満たしたと判別していたが、ポンプ71pのオンオフに限らず、自動加工運転が終了した後、自動運転停止期間Tsが一定時間T2を経過したときに第3の例外給油条件を満たしたと判別してもよい。
【0052】
上記実施形態においては、ポンプ71pは、減速機構(図示略)により、間欠的な潤滑油の吐出を可能としていたが、間欠的な潤滑油の吐出が可能であれば、この構成に限定されない。例えば、制御部300は、タイマにより時間を計測し、計測した時間が一定時間に達したときにポンプ71pを動作させることにより間欠的な潤滑油の吐出を可能としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、13…第1主軸移動機構、13b,23b,24b,32b,33b,43b…ボールねじ、13g…ガイド、13j,13t,23t,24t,32t,33t,43t,60t,80t…接続部、13k…ねじ軸部、13m,23m,24m,32m,33m,43m,80m…モータ、13n,23n,24n,32n,33n,43n…ナット、13r…レール、13s,23s,24s,32s,33s,43s…スライド台、15…第1主軸台、18a,18b…オイルエア供給路、19a~19g…継手、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、23,24…第2主軸移動機構、25…第2主軸台、30…第1工具ユニット、31a,31b,41…工具、32,33…第1工具移動機構、40…第2工具ユニット、43…第2工具移動機構、46…刃物台、50…エア供給システム、51…空圧源、52…ソレノイドバルブ、53…エア供給路、60…回転ガイドブッシュ、70…油供給システム、71…油供給部、71k…タンク、71p…ポンプ、72,72a~72k,72m,72n…潤滑油供給路、76…吐出部、80…回転工具装置、300…制御部、P1,P2…接続点、S…ベッド、T1…給油時間、T2…一定時間、W…ワーク、ta,tb,t1,t2…時刻、Ts…自動運転停止期間