(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060636
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用シール材
(51)【国際特許分類】
B60J 10/70 20160101AFI20240425BHJP
B60J 10/16 20160101ALI20240425BHJP
B60J 10/35 20160101ALI20240425BHJP
【FI】
B60J10/70
B60J10/16 ZHV
B60J10/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168013
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000123549
【氏名又は名称】化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 芳晴
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA17
3D201BA01
3D201CB02
3D201DA18
3D201DA23
3D201EA02B
3D201EA03D
3D201EA04D
(57)【要約】
【課題】車両組立時及びヘッドランプ交換時のいずれであってもシールリップ部の弾性変形の形状を略一致させることができ、十分なシール安定性を確保し、歩行者保護安全基準の要件を満たす車両用シール材の提供を課題とする。
【解決手段】車両用シール材1は、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間に配設され、フロントガラス2の周縁に沿って取り付けられるシール基体部6と、シール基体部6の一端から延設され、ヘッドランプ3の一部と当接し、弾性変形可能な断面中空形状を呈するシールリップ部7とを具備する。シールリップ部7は、車両組立時、及び、ヘッドランプ交換時のいずれであっても、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間で一致した弾性変形の形状を呈する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラス及びヘッドランプの間に配設される車両用シール材であって、
前記フロントガラスの周縁に沿って取り付けられるシール基体部と、
前記シール基体部の一端から延設され、前記ヘッドランプの一部と当接し、弾性変形可能な断面中空形状を呈するシールリップ部と
を具備し、
前記シールリップ部は、
車両本体に予め取り付けられたヘッドランプに対し、前記車両用シール材の配設された前記フロントガラスをフロントガラス取付方向に沿って近接させ、前記車両本体に前記フロントガラスを組み付ける車両組立時、及び、前記車両用シール材の配設された前記フロントガラスに対し、前記ヘッドランプを前記フロントガラス取付方向と相違するヘッドランプ取付方向に沿って近接させ、前記車両本体に前記ヘッドランプを装着するヘッドランプ交換時のいずれにおいても、前記フロントガラス及び前記ヘッドランプの間で同一の弾性変形の形状を呈する車両用シール材。
【請求項2】
前記シールリップ部は、
前記シール基体部から延設されたリップ基体部と、
前記リップ基体部のリップ先端部及びリップ基端部からそれぞれ斜め方向に沿って延設された一対の斜めリップ部と、
一対の前記斜めリップ部の間を連結する連結リップ部と
を備え、
前記シールリップ部の断面中空形状は、
前記リップ基体部、一対の前記斜めリップ部、及び前記連結リップ部によって断面四角形状を呈し、
前記シールリップ部の弾性変形によって前記断面四角形状が変化する請求項1に記載の車両用シール材。
【請求項3】
前記フロントガラス及び前記ヘッドランプの間に配設され、弾性変形の状態にある前記シールリップ部は、
一方の前記斜めリップ部及び前記連結リップ部が接続されたシール突端部の突出位置が、前記フロントガラス及び前記ヘッドランプにそれぞれ当接する仮想当接円を基準として所定範囲内に位置する請求項2に記載の車両用シール材。
【請求項4】
前記シール基体部及び前記シールリップ部の一部を構成する前記リップ基体部は、
互いに同一材質で形成され、
一対の前記斜めリップ部及び前記連結リップ部は、
互いに同一材質で形成され、かつ、前記シール基体部及び前記リップ基体部と異なる材質で形成される請求項2または3に記載の車両用シール材。
【請求項5】
前記シール基体部及び前記リップ基体部は、
硬質ゴム材料で形成され、
一対の前記斜めリップ部及び前記連結リップ部は、
前記硬質ゴム材料と比重及び硬度の異なる軟質発泡スポンジ材料で形成される請求項4に記載の車両用シール材。
【請求項6】
前記硬質ゴム材料は、
エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とする硬質ゴムであり、
前記軟質発泡スポンジ材料は、
前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴムである請求項5に記載の車両用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シール材に関する。更に詳しくは、フロントガラス及びヘッドランプの間に配設される車両用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、ガソリンや軽油等の化石燃料をエネルギー源として使用するガソリン車・ディーゼル車の他に、ガソリンエンジン等と電気モーターとを併用したハイブリッド車(HV)、バッテリーに充填された電気を利用して電気モーターを駆動する電気自動車(EV)、或いは水素を燃料電池に供給し、化学反応によって得られた電気を利用して電気モーターを駆動する燃料電池自動車(FCV)、更には天然ガスをエネルギー源として使用する天然ガス自動車(CNG)等の種々の「次世代型自動車」の開発が進められ、実用化がされている。
【0003】
次世代型自動車は、従来のガソリン車等とは車両構造が異なるため、新しい設計思想を取り入れた新規なデザインや車両構造を採用することができる。従来の一般的なガソリン車の場合、駆動方式はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)やFR(フロントエンジン・リアドライブ)等が採用されることが多く、車体前部に駆動源となるエンジンを搭載するためのエンジンルームを設ける必要がある。これに対し、電気自動車等の場合、車両下部にバッテリー搭載用のスペースを設け、更にそれぞれのタイヤに近接する位置に電気モーターが分散して配置されるため、車両前部に上記のようなエンジンルームのためのスペースを設ける必要がない。
【0004】
そのため、電気自動車等の次世代型自動車の場合、従来のガソリン車等に課せられる設計上の制約に制限されることなく、新規な車両構造の設計を行うことが可能となり、様々なタイプの次世代型自動車の設計を行うことができる。例えば、エンジンルームのスペースの問題から従来の小型車や中型車のガソリン車等では困難であった、車体最前部にフロントガラス及びヘッドランプを近接するようにレイアウトした車両構造を採用することができる。
【0005】
一方、従来のガソリン車等において、ドアパネルや車両開口部等に対し、ドアの開放作業や閉止作業を行っても高い止水性等のシール性を発揮することが可能な車両用シール材(車両用ドアシール材)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
更に、フロントガラスとその周囲の車両本体との間に隙間が形成されると、走行時に当該隙間に起因する風切り音が発生することが従来から知られている。風切り音の発生が騒音となり、走行時の快適性を損なうおそれがあった。そこで、かかる問題を解消するために、フロントガラスの周縁に沿って弾性変形可能なゴム材料で形成された車両用シール材を配設し、フロントガラスと車両本体との間の隙間を防ぎ、上記風切り音の発生を抑制する対策が実施されている。
【0007】
したがって、上述したフロントガラス及びヘッドランプを近接するようにレイアウトした車両構造を有する次世代型自動車であっても、フロントガラス及びヘッドランプとの間に、車両用シール材を用いた風切り音の発生を防止するための対策が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記したようなフロントガラスとヘッドランプとが近接した新規な車両構造を採用する場合、下記に掲げる不具合を生じる可能性があった。すなわち、ヘッドランプは、経年的使用或いは事故等の衝撃によってランプ切れ等の故障が発生する可能性があり、車両本体に取り付けられていた交換対象のヘッドランプ(以下、「旧ヘッドランプ」と称す。)を取り外すとともに、新しいヘッドランプ(以下、「新ヘッドランプ」と称す。)を車両本体に取り付けるヘッドランプの交換作業を行う必要があった。
【0010】
ここで、一般的な自動車等(電気自動車等の次世代型自動車を含む)を製造するためには、各種部品を組み付ける車両組立作業を実施する必要がある。そして、フロントガラス及びヘッドランプが近接するようにレイアウトされた車両の場合、一般的には既に車両本体(シャーシ)に取り付け済みのヘッドランプに対し、車両用シール材の配設されたフロントガラスを近接させ、車両用シール材のシールリップ部(詳細は後述する。)を弾性変形させつつ、フロントガラスを車両本体に組み付ける作業が行われている。
【0011】
かかる車両組立作業によって、車両用シール材のシールリップ部が弾性変形した状態でヘッドランプの一部と当接することとなり、フロントガラス及びヘッドランプの間に形成された隙間を弾性変形の状態を保ったままで塞ぐことができる。その結果、走行時における風切り音の発生等の不具合を抑制することができる。すなわち、車両組立時の場合、既に固定されたヘッドランプに対し、フロントガラス(及び車両用シール材)を近接させる作業が行われる。
【0012】
一方、経年変化等によってランプ切れとなったヘッドランプを交換するヘッドランプ交換作業の場合、車両本体から交換対象となる旧ヘッドランプを取り外し、その後、新ヘッドランプをフロントガラスに対して近接させるようにして車両本体に取り付ける作業を行う必要があった。すなわち、ヘッドランプ交換時の場合、車両本体に固定されたフロントガラス(及び車両用シール材)に対し、ヘッドランプを近接させる作業が行われる。
【0013】
ここで、旧ヘッドランプが車両本体から取り外されると、フロントガラス及び旧ヘッドランプの間で弾性変形した状態で配設されていた車両用シール材は、弾性変形していたシールリップ部の弾性変形の状態が解除される。
【0014】
すなわち、新ヘッドランプをフロントガラスに近接させるヘッドランプ交換時には、弾性変形から復帰した状態のシールリップ部(車両用シール材)に対し、新ヘッドランプの一部でシールリップ部を弾性変形させながら車両本体に取り付ける作業を行う必要があった。その結果、車両組立時における車両用シール材を弾性変形するために加える力の方向とヘッドランプ交換時における車両用シール材を弾性変形するために加える力の方向が相違することとなった。
【0015】
このように、車両用シール材に加わる力の方向が車両組立時とヘッドランプ交換時とで相違するため、それぞれの作業後にフロントガラス及びヘッドランプの間に配設された車両用シール材の弾性変形の形状(状態)が異なる可能性があった。その結果、フロントガラス及びヘッドランプの間の隙間を十分に閉塞することができず、風切り音の発生を抑制することができない等、十分なシール安定性を確保することが困難となることがあった。そのため、車両組立時及びヘッドランプ交換時のいずれの場合においても、車両用シール材の弾性変形の形状を略一致させる必要があった。
【0016】
加えて、フロントガラス及びヘッドランプの間に配設される車両用シール材は、弾性変形後のシールリップ部の一部が、フロントガラス及びヘッドランプの間から突出する可能性があり、車両と歩行者とが接触した際の歩行者保護を目的として、かかる弾性変形後のシールリップ部の一部(シール突端部、詳細は後述する。)の突出量を予め規定された歩行者保護安全基準に従って所定範囲内に制限する必要があった。
【0017】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、フロントガラス及びヘッドランプが近接するようにレイアウトされた電気自動車等の車両に配設され、車両組立時及びヘッドランプ交換時のいずれの作業時においてもシールリップ部の安定した弾性変形を可能とし、かつ、シール突端部が歩行者安全基準の要件を満たす車両用シール材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、シールリップ部の形状や使用する材質等を改良することにより、上記課題を解決することが可能なことを見出し、下記に示す本発明を完成するに至ったものである。
【0019】
[1] フロントガラス及びヘッドランプの間に配設される車両用シール材であって、前記フロントガラスの周縁に沿って取り付けられるシール基体部と、前記シール基体部の一端から延設され、前記ヘッドランプの一部と当接し、弾性変形可能な断面中空形状を呈するシールリップ部とを具備し、前記シールリップ部は、車両本体に予め取り付けられたヘッドランプに対し、前記車両用シール材の配設された前記フロントガラスをフロントガラス取付方向に沿って近接させ、前記車両本体に前記フロントガラスを組み付ける車両組立時、及び、前記車両用シール材の配設された前記フロントガラスに対し、前記ヘッドランプを前記フロントガラス取付方向と相違するヘッドランプ取付方向に沿って近接させ、前記車両本体に前記ヘッドランプを装着するヘッドランプ交換時のいずれにおいても、前記フロントガラス及び前記ヘッドランプの間で同一の弾性変形の形状を呈する車両用シール材。
【0020】
[2] 前記シールリップ部は、前記シール基体部から延設されたリップ基体部と、前記リップ基体部のリップ先端部及びリップ基端部からそれぞれ斜め方向に沿って延設された一対の斜めリップ部と、一対の前記斜めリップ部の間を連結する連結リップ部とを備え、前記シールリップ部の断面中空形状は、前記リップ基体部、一対の前記斜めリップ部、及び前記連結リップ部によって断面四角形状を呈し、前記シールリップ部の弾性変形によって前記断面四角形状が変化する前記[1]に記載の車両用シール材。
【0021】
[3] 前記フロントガラス及び前記ヘッドランプの間に配設され、弾性変形の状態にある前記シールリップ部は、一方の前記斜めリップ部及び前記連結リップ部が接続されたシール突端部の突出位置が、前記フロントガラス及び前記ヘッドランプにそれぞれ当接する仮想当接円を基準として所定範囲内に位置する前記[2]に記載の車両用シール材。
【0022】
[4] 前記シール基体部及び前記シールリップ部の一部を構成する前記リップ基体部は、互いに同一材質で形成され、一対の前記斜めリップ部及び前記連結リップ部は、互いに同一材質で形成され、かつ、前記シール基体部及び前記リップ基体部と異なる材質で形成される前記[2]または[3]に記載の車両用シール材。
【0023】
[5] 前記シール基体部及び前記リップ基体部は、硬質ゴム材料で形成され、一対の前記斜めリップ部及び前記連結リップ部は、前記硬質ゴム材料と比重及び硬度の異なる軟質発泡スポンジ材料で形成される前記[4]に記載の車両用シール材。
【0024】
[6] 前記硬質ゴム材料は、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とする硬質ゴムであり、前記軟質発泡スポンジ材料は、前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴムである前記[5]に記載の車両用シール材。
【発明の効果】
【0025】
本発明の車両用シール材は、車両組立時及びヘッドランプ交換時のいずれであってもシールリップ部の弾性変形の形状を略一致させることができ、十分なシール安定性を確保することができる。更に、弾性変形後のシールリップ部のシール突端部が予め規定された歩行者保護安全基準の要件を満たすように、所定範囲内に位置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態の車両用シール材の概略構成を示す説明図である。
【
図2】車両用シール材の概略構成を示す
図1のB-B’線拡大断面図である。
【
図3】車両用シール材の概略構成を示す
図1のA-A’線拡大断面図である。
【
図4】車両用シール材の概略構成を示す
図1のC-C’線拡大断面図である。
【
図5】車両組立時の(a)フロントガラス組立前、及び(b)フロントガラス組立後の
図1のB-B’線付近の車両用シール材の弾性変形の一例を示す説明図である。
【
図6】ヘッドランプ交換時の(a)ヘッドランプ交換前、(b)ヘッドランプ交換途中、及び(c)ヘッドランプ交換後の
図1のB-B’線付近の車両用シール材の弾性変形の一例を示す説明図である。
【
図7】車両組立時の(a)フロントガラス組立前、及び(b)フロントガラス組立後の
図1のA-A’線付近の車両用シール材の弾性変形の一例を示す説明図である。
【
図8】ヘッドランプ交換時の(a)ヘッドランプ交換前、(b)ヘッドランプ交換途中、及び(c)ヘッドランプ交換後の
図1のA-A’線付近の車両用シール材の弾性変形の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の車両用シール材の実施の形態について説明する。なお、本発明の車両用シール材は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0028】
1.車両用シール材
本発明の一実施形態の車両用シール材1(以下、単に「シール材1」と称す。)は、
図1-8に示すように、フロントガラス2及びヘッドランプ3が近接するようにレイアウトされた電気自動車(図示しない)に使用されるものであり、当該フロントガラス2及びヘッドランプ3の間に配設され、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間に形成される隙間4を塞ぎ、走行時における風切り音の発生等を抑制することを主たる目的とするものである。
【0029】
なお、本発明の車両用シール材は、上記した電気自動車への使用に限定されるものではなく、フロントガラス及びヘッドランプが近接されるようにレイアウトされた既存のガソリン車・ディーゼル車、或いは、種々のその他次世代型自動車に使用することができる。
【0030】
ここで、
図1は本実施形態のシール材1の概略構成を示す説明図であり、
図2はシール材1の概略構成を示す
図1のB-B’線拡大断面図であり、
図3はシール材1の概略構成を示す
図1のA-A’線拡大断面図であり、
図4はシール材1の概略構成を示す
図1のC-C’線拡大断面図であり、
図5は車両組立時の(a)フロントガラス組立前、及び(b)フロントガラス組立後の
図1のB-B’線付近のシール材1の弾性変形の一例を示す説明図であり、
図6はヘッドランプ交換時の(a)ヘッドランプ交換前、(b)ヘッドランプ交換途中、及び(c)ヘッドランプ交換後の
図1のB-B’線付近の車両用シール材の弾性変形の一例を示す説明図であり、
図7は車両組立時の(a)フロントガラス組立前、及び(b)フロントガラス組立後の
図1のA-A’線付近のシール材1の弾性変形の一例を示す説明図であり、
図8はヘッドランプ交換時の(a)ヘッドランプ交換前、(b)ヘッドランプ交換途中、及び(c)ヘッドランプ交換後の
図1のA-A’線付近のシール材1の弾性変形の一例を示す説明図である。
【0031】
本実施形態のシール材1は、
図1及び
図2等に示すように、フロントガラス2の周縁に沿って取り付け可能な長尺体を呈して構成されるものであり、当該フロントガラス2に両面テープ5等の周知の固定手段を用いて取り付けられている。なお、
図1はフロントガラス2の周囲に沿って取り付けられるシール材1の一部を図示している。更に、
図2-4においては、フロントガラス2及びヘッドランプ3を破線を用いて示している。
【0032】
本実施形態のシール材は、その基本的な構成として、フロントガラス2に取り付けられるシール基体部6と、当該シール基体部6の一端から延設され、ヘッドランプ3の一部と当接し、弾性変形可能な断面中空形状を呈するシールリップ部7とを具備している。
【0033】
本実施形態のシール材1は、車両本体12(
図5等参照)にフロントガラス2と組み付ける車両組立時、及び、メンテンアンス等によってヘッドランプ3を交換するヘッドランプ交換時のいずれの作業においても、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間の隙間を弾性変形しつつ、安定して塞ぐことが可能な上記シールリップ部7を備えている。
【0034】
ここで、シールリップ部7の構成について詳述すると、
図2に示すように、フロントガラス2に取り付けられたシール基体部6の一端から所定方向(
図2において、略直交方向)に沿って延設されたリップ基体部8と、リップ基体部8のリップ先端部8a及びリップ基端部8bからそれぞれ斜め方向(
図2において右斜め下方向)に沿って並行に延設された一対の斜めリップ部9a,9bと、一対の当該斜めリップ部9a,9bを連結する連結リップ部10とを備えている。
【0035】
上記構成を備えることにより、シールリップ部7の断面中空形状は、リップ基体部8、一対の斜めリップ部9a,9b、及び連結リップ部10をそれぞれの辺とする断面四角形状、特に
図2においては断面略平行四辺形状を呈して構成されている。
【0036】
なお、
図2に示したシール材1のシールリップ部7の断面形状は、
図1におけるB-B’線断面位置を示したものであり、これに限定されるものではなく、長尺体のシール材1のそれぞれの部位において異なる断面形状を有している。例えば、
図3に示すような
図1のA-A’線断面位置では断面略菱形形状を呈しており、一方、
図4に示すような
図1のC-C’線断面位置では、断面略台形状を呈している。
【0037】
すなわち、本実施形態のシール材1のシールリップ部7は、リップ基体部8、一対の斜めリップ部9a,9b、及び連結リップ部10を各辺として、種々の断面四角形状を呈するように構成されている。このように、シールリップ部7が断面(略)四角形状を呈することによってシールリップ部7に対して異なる方向から力が加わった場合でも、四角形状を変形させることにより安定したシール性を確保することができる。
【0038】
更に、本実施形態のシール材1は、
図2及び
図4に示されるように、異なる二種類の材質によって構成することができる。具体的に説明すると、
図2に示すように、シール材1を構成するシール基体部6及びシールリップ部7の一部であるリップ基体部8は、強い応力によって弾性変形可能なゴムの特性を有するエチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とする硬質ゴム(以下、「硬質ゴムEPDM」と称す。)によって形成されている。すなわち、強い応力に対して弾性変形可能であり、比較的弱い応力の場合は当該応力に抗して弾性変形することがない性状を示し、一定の強度及び硬度を有するものである。
【0039】
一方、シールリップ部7の斜めリップ部9a,9b及び連結リップ部10は、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とし、内部に複数の空隙を有し、応力に対して比較的容易に弾性変形可能なスポンジの特性を有するスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴム(以下、「スポンジEPDM」と称す。)によって形成されている。すなわち、上述した硬質ゴムEPDMでは弾性変形することができない、比較的弱い応力であっても弾性変形可能な性状を示し、硬質ゴムEPDMよりも強度及び硬度が低いものである。ここで、硬質ゴムEPDMが本発明における硬質ゴム材料に相当し、スポンジEPDMが本発明における軟質発泡スポンジ材料に相当する。
【0040】
すなわち、シール材1において、シール基体部6及びリップ基体部8は、同一材質の硬質ゴム材料である硬質ゴムEPDMによって形成され、一方、斜めリップ部9a,9b及び連結リップ部10は、同一材質のスポンジEPDMによって形成され、かつ、シール基体部6及びリップ基体部8の硬質ゴムEPDMとは異なる材質で形成されている。
【0041】
そのため強度及び硬度等が相違し、応力に対する弾性変形の程度が異なるに二種類の材質で本実施形態のシール材1のシールリップ部7が形成されている。なお、本実施形態のシール材1の全体が、上記の通り、硬質ゴムEPDM及びスポンジEPDMの二種類の材質から形成されている必要はなく、部位に応じていずれか一方のみから形成されているものでも構わない。例えば、
図3に示すように、シール材1の
図1のA-A’線付近では、硬質ゴムEPDMのみで形成されている。
【0042】
ここで、本発明の車両用シール材において、硬質ゴム材料として硬質ゴムを例示したがこれに限定されるものではなく、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー、或いはその他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を挙げることができる。同様に、軟質発泡スポンジ材料として、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを例示したがこれに限定されるものではなく、軟質発泡スポンジ材料として、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー、或いはその他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を挙げることができる。
【0043】
上記したように、シールリップ部7をスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMのように、互いに強度や硬度、及び比重等の性状の異なる二種類の材質の材料を用いることにより、シール材1(特に、シールリップ部7)に力が加えられた場合の弾性変形の程度がそれぞれ異なることになる。ここで、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMは、自動車用の樹脂成形部品の製造において使用される周知の材料であり、その詳細についての説明はここでは省略する。
【0044】
特に、車両組立時及びヘッドランプ交換時のいずれにおいても、シール材1に対して力が直接加わる可能性がある、換言すれば、ヘッドランプ3の一部と当接する可能性がある部位(斜めリップ部9a,9b、及び連結リップ部10)をスポンジEPDMで形成し、応力に対して容易に弾性変形することを可能としている。一方、ヘッドランプ3と直に当接しないリップ基体部8を硬質ゴムEPDMで形成することにより、シールリップ部7の全体が弾性変形することなく、シールリップ部7の一部が弾性変形するように構成されている。すなわち、シールリップ部7のリップ基体部8はほぼ変形することなく、一対の斜めリップ部9a,9b及び連結リップ部10が弾性変形することにより、シールリップ部7の断面四角形状が変化するようになる。
【0045】
なお、前述したように、本実施形態のシール材1は、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMのように性状の異なる二種類の材料を用いて製造される。このとき、シール材1の製造には、二種類の材料を同時に成形用口金から押し出す「共押出成形」の技術を用いることができる。かかる共押出成形(または、二色押出成形)は、樹脂加工やゴム加工等において周知のものであり、硬質材と軟質材とを同時押出したり、透明材と着色材とを同時押出したりすることが可能であり、製品の特定の部位の性状を変化させることが可能なものである。
【0046】
更に具体的に説明すると、始めにシール材1の断面形状に相当する成形用口金(図示しない)を、共押出成形可能な押出装置にセットする。一方、押出装置に設けられた二つの原材料供給部には、それぞれ加熱され、押出可能な粘度に調整され、流動可能な状態のスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMを準備する。かかる状態で二つの原材料供給部からスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMを所定の押出圧力によって加圧し、成形用口金から同時に押し出し成形を行う。このとき、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMの押出圧力をそれぞれ調整することで、成形用口金の所定の位置にスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMを押し出すことができる。これにより、シール材1の断面におけるスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMの配置及び比率を均一にすることができる。
【0047】
成形用口金から押し出されたスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMは、周囲の外気と接することで冷却され、流動性を失う。そして、所定の長さ(例えば、500mm程度)まで押し出した後でカットされる。これにより、二種類の材料で構成された長手形状の加工物が形成される。かかる長手形状の加工物に対してトムソン打ち抜き加工を行うことにより、前述した固定用孔や切欠部等を形成することができる。その結果、本実施形態のシール材1の製造が完了する。なお、トムソン打ち抜き加工は、ベースとなる合板に刃を埋め込んだトムソン型を用い、加工材料をプレスして打ち抜く周知の加工方法であり、ここでは詳細な説明は省略する。本実施形態の車両用シール材1の製造方法において、上記した共押出成形によるものを例示したがこれに限定されるものではなく、その他周知の樹脂材料の成形加工技術を用いてシール材1を製造するものであっても構わない。
【0048】
更に、本実施形態のシール材1の車両交換時及びヘッドランプ交換時における弾性変形の詳細について、
図5-
図8に基づいてそれぞれ説明する。ここで、
図5及び
図6は、フロントガラス底部2a付近(
図1におけるB-B’線断面位置付近)における車両組立時(
図5)及びヘッドランプ交換時(
図6)のシール材1の弾性変形を段階的に示すものであり、一方、
図7及び
図8は、フロントガラス側部2b付近(
図1におけるA-A’線断面位置付近)における車両組立時(
図7)及びヘッドランプ交換時(
図8)のシール材1の断面変形を段階的に示すものである。
【0049】
図5(a)に示すように、車両組立時において、車両本体12には、既にヘッドランプ3が取り付けられている(
図5(a)における紙面左下方側)。かかるヘッドランプ3に対し、本実施形態のシール材1が既に取り付けられた状態のフロントガラス2を水平方向に沿って近接させる(
図5(a)における左矢印参照、フロントガラス取付方向A)。
【0050】
その結果、ヘッドランプ3の一部とシール材1のシールリップ部7の一部、更に具体的に説明すると、
図5(a)の紙面左側に位置する斜めリップ部9aとが当接する。斜めリップ部9aは、前述の通り、スポンジEPDMによって形成されており、ヘッドランプ3と当接することで容易に弾性変形する。
【0051】
ここで、フロントガラス2の車両組立にかかる作業は、継続して実施されるため、斜めリップ部9aはリップ基体部8のリップ先端部8aを基点としてリップ基体部8に近接するように変形する。更に、斜めリップ部9aと接続された連結リップ部10も同様に変形し、かつ、連結リップ部10と接続された
図5(a)の紙面右側に位置する斜めリップ部9b(本発明における一方の斜めリップ部に相当)も当該連結リップ部10に伴って変形する。
【0052】
これにより、
図5(b)に示すように、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間の隙間4をシール材1の弾性変形によって閉塞することができる。このとき、シールリップ部7は、
図5(a)と比較して断面四角形状が僅かに潰れたように変形している。その結果、走行時の風切り音の発生等を抑えることができる。
【0053】
更に、
図5(b)に示すように、車両本体へのフロントガラス2の取り付けが完了した状態では、シールリップ部7の一方の斜めリップ部9b及び連結リップ部10が接続され、弾性変形によって突出(
図5(b)において紙面右方向に突出)したシール突端部11の突出位置が、フロントガラス2及びヘッドランプ3のそれぞれに当接する仮想当接円C(
図5(b)における二点鎖線参照)を基準として所定範囲内に位置するように設計されている。ここで、本実施形態のシール材1の場合、仮想当接円Cの半径に更に+1mmを加えた歩行者保護基準円C’を想定し、当該歩行者保護基準円C’にシール突端部11が接しないようになっている。
【0054】
すなわち、弾性変形によってシール材1のシール突端部11がフロントガラス2及びヘッドランプ3の仮想当接円Cを基準として設定された歩行者保護基準円C’を超えて、
図5(b)における紙面右方向に突出し、車両外部から出た場合、フロントガラス2またはヘッドランプ3と歩行者とが接触した際に、歩行者の安全性を損なう危険性がある。そのため、本実施形態のシール材1は、上記したように、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間に形成される隙間4において、シール突端部11が所定範囲内に位置するように設計されている。
【0055】
一方、
図6(a)に示すように、ヘッドランプ交換時の場合、車両本体12には既にシール材1の取り付けられたフロントガラス2が固定された状態となっている。なお、
図6(a)は、ランプ切れ等によって交換対象となるヘッドランプ(前述の旧ヘッドランプに相当)は既に取り外された状態を示している。
【0056】
かかる状態で、フロントガラス2及びシール材1に対し、新たに取り付けるヘッドランプ3(前述の新ヘッドランプに相当)を下方から上方向(
図6(a)における上矢印参照、第一ヘッドランプ取付方向B1)に沿って近接させる。すなわち、第一ヘッドランプ取付方向B1は、
図5において既に示したフロントガラス取付方向Aとは相違する方向である。ここで、第一ヘッドランプ取付方向B1が本発明におけるヘッドランプ取付方向に相当する。
【0057】
その結果、ヘッドランプ3の一部とシール材1のシールリップ部7の一部、更に具体的に説明すると、斜めリップ部9a及び連結リップ部10の接続箇所及びその近傍が当接する。斜めリップ部9a及び連結リップ部10は、前述の通り、スポンジEPDMによって形成されており、上方向に近接されたヘッドランプ3と当接することで容易に弾性変形する。
【0058】
ここで、ヘッドランプ3の交換にかかる作業は、継続して実施されるため、斜めリップ部9a及び連結リップ部10は、リップ基体部8のリップ先端部8a、及び、連結リップ部10及び一方の斜めリップ部9bの接続箇所(シール突端部11)を基点として、シールリップ部7の断面四角形状が潰れるように変形する(
図6(b)参照)。
【0059】
更に、ヘッドランプ3が上方向に近接し、シールリップ部7が弾性変形した状態で、更にヘッドランプ3を水平方向(
図6(c)における左矢印参照、第二ヘッドランプ取付方向B2)に沿って移動させる。ここで、第二ヘッドランプ取付方向B2も第一ヘッドランプ取付方向B1と同様に本発明におけるヘッドランプ取付方向に相当する。
【0060】
これにより、
図6(c)に示すように、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間の隙間4をシール材1の弾性変形によって閉塞することができる。このとき、シールリップ部7は、断面四角形状が僅かに潰れたように変形している。その結果、走行時の風切り音の発生等を抑えることができる。更に、
図6(c)は、車両組立時のフロントガラス2の取付完了後を示す
図5(c)とシール材1の弾性変形の形状が一致するものである。加えて、同様に、シール突端部11の突端位置が前述の歩行者保護基準円C’に接しないように設定されている。
【0061】
このように、本実施形態のシール材1は、シール材1(シールリップ部7)に加わる力の方向(フロントガラス取付方向A、及び、第一ヘッドランプ取付方向B1)が互いに相違する場合であっても、最終的にシールリップ部7の弾性変形の形状を一致若しくは略一致させることができる。その結果、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間の隙間4を本実施形態のシール材1によって閉塞することができ、十分なシール安定性を確保することができ、風切り音の発生等を抑制することができる。
【0062】
更に、シール材1の別の位置、すなわち、フロントガラス側部2b付近におけるシールリップ部7の弾性変形の用紙を
図7及び
図8に基づいて説明する。ここで、フロントガラス側部2b付近では、フロントガラス2(及びシール材1)及びヘッドランプ3との位置関係が
図5及び
図6と相違している。そのため、
図7(a)に示すように、シール材1の取り付けられたフロントガラス2を、ヘッドランプ3を紙面下方(
図7(a)の下矢印参照、フロントガラス取付方向A)に沿って近接させる。
図5(a)及び
図7(a)等から明らかなように、それぞれのフロントガラス取付方向Aは相違している。
【0063】
これにより、
図7(b)に示すように、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間にシール材1が配設された状態でフロントガラス2が車両本体12に取り付けられる。一方、ヘッドランプ交換時には、
図8(a)に示すように、車両本体12に固定されたフロントガラス2及びシール材1に近接するようにヘッドランプ3を左方向(
図8(a)の左矢印参照、第一ヘッドランプ取付方向B1)に沿って近接させる。これにより、ヘッドランプ3と当接したシールリップ部7は弾性変形し、断面四角形状が縦方向に潰れた状態となり(
図8(b)参照)、更にこの状態からヘッドランプ3を下方向(
図8(c)における下矢印参照、第二ヘッドランプ取付方向B2)に沿って移動させる。
【0064】
その結果、
図7(b)と同様に、フロントガラス2及びヘッドランプ3の間にシール材1を弾性変形させた状態で配設することができる。このように、フロントガラス側部2b付近においても、車両組立時及びヘッドランプ交換時の双方において、シール材1のシールリップ部7の弾性変形を一致または略一致させた形状とすることができる。
【0065】
これにより、本実施形態のシール材1は、車両組立時及びヘッドランプ交換時のそれぞれフロントガラス取付方向A及び第一ヘッドランプ取付方向B1が相違する場合であっても、最終的に同一の弾性変形の形状にすることができ、十分なシール安定性を確保し、風切り音の発生等を抑制する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の車両用シール材は、シール材を使用する電気自動車等の次世代型自動車、或いは既存のガソリン車・ディーゼル車等の各種自動車の製造に係る産業技術分野において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0067】
1:シール材(車両用シール材)、2:フロントガラス、2a:フロントガラス底部、2b:フロントガラス側部、3:ヘッドランプ、4:隙間、5:両面テープ、6:シール基体部、7:シールリップ部、8:リップ基体部、8a:リップ先端部、8b:リップ基端部、9a,9b:斜めリップ部、10:連結リップ部、11:シール突端部、12:車両本体、A:フロントガラス取付方向、B1:第一ヘッドランプ取付方向(ヘッドランプ取付方向)、B2:第二ヘッドランプ取付方向(ヘッドランプ取付方向)、C:仮想当接円、C':歩行者保護基準円。