(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060658
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】機械式駐車装置の搬器と機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20240425BHJP
E04H 6/42 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
E04H6/18 610
E04H6/42 C
E04H6/42 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168060
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 正義
(72)【発明者】
【氏名】市川 秀一
(57)【要約】
【課題】搬器からの車両の落下を防止する。
【解決手段】本発明における搬器10は、車両Cが進入可能な入庫位置と、車両が格納される格納位置と、の間を搬送される機械式駐車装置1の搬器であって、車両が載置される載置面11aを備える搬器本体11と、載置面に配置されて、載置面に載置された車両が備える複数のタイヤTのうち、第1タイヤTRrの移動を規制するタイヤ止め16と、を有してなる。タイヤ止めは、第1タイヤの移動を規制する移動規制部材161F,161Rと、載置面に対する摩擦力を増加させる摩擦力増加部材163F,163Rと、を備える。摩擦力増加部材は、移動規制部材の下面161Fa,161Raに取り付けられる。タイヤ止めは、第1タイヤからの荷重を受けたとき、弾性変形する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が進入可能な入庫位置と、前記車両が格納される格納位置と、の間を搬送される機械式駐車装置の搬器であって、
前記車両が載置される載置面を備える搬器本体と、
前記載置面に配置されて、前記載置面に載置された前記車両が備える複数のタイヤのうち、第1タイヤの移動を規制するタイヤ止めと、
を有してなり、
前記タイヤ止めは、
前記第1タイヤの移動を規制する移動規制部材と、
前記載置面に対する摩擦力を増加させる摩擦力増加部材と、
を備え、
前記移動規制部材は、
前記タイヤ止めが前記載置面に配置されたときに前記載置面側に向けられる下面、
を備え、
前記摩擦力増加部材は、前記下面に取り付けられて、
前記タイヤ止めは、前記第1タイヤからの荷重を受けたとき、弾性変形する、
ことを特徴とする機械式駐車装置の搬器。
【請求項2】
前記タイヤ止めは、
磁力により前記載置面に吸着する磁石部材、
を備え、
前記磁石部材は、前記摩擦力増加部材と共に前記下面に取り付けられて、
前記タイヤ止めは、前記磁石部材の磁力により前記載置面に着脱自在である、
請求項1記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項3】
前記第1タイヤは、
前記車両の進退時に地面に接する接地面、
を備え、
前記下面は、
前記タイヤ止めが前記第1タイヤの移動を規制する規制位置に配置されたときに、前記第1タイヤ側に位置する第1端部と、
前記タイヤ止めが前記規制位置に配置されたときに、前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、
を備え、
前記移動規制部材は、
前記下面の前記第1端部側に連続すると共に、前記接地面に当接可能なタイヤ当接面、
を備え、
前記タイヤ当接面は、前記接地面に沿うように傾斜または湾曲する面であり、
前記磁石部材は、前記第2端部側に取り付けられて、
前記摩擦力増加部材は、前記磁石部材よりも前記第1端部側に配置される、
請求項2記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項4】
前記磁石部材は、永久磁石である、
請求項3記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項5】
前記摩擦力増加部材の前記載置面に対する摩擦力は、前記移動規制部材の前記載置面に対する摩擦力よりも大きい、
請求項1記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項6】
前記移動規制部材は、前記摩擦力増加部材よりも硬質である、
請求項5記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項7】
前記摩擦力増加部材は、
前記載置面に当接する平面状の当接面、
を備える、
請求項1記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項8】
前記タイヤ止めは、
前記搬器に進入する前記車両の進入方向において、前記第1タイヤの前側に配置される前部タイヤ止めと、
前記進入方向において、前記第1タイヤの後側に配置される後部タイヤ止めと、
を備える、
請求項1記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項9】
前記タイヤ止めは、
前記前部タイヤ止めと前記後部タイヤ止めとに連結される連結部材、
を備え、
前記前部タイヤ止めは、前記連結部材を介して前記後部タイヤ止めに連結された状態で前記載置面に配置される、
請求項8記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項10】
前記タイヤ止めは、
前記連結部材を磁力により前記載置面に吸着させる連結磁石部材、
を備え、
前記連結部材は、前記連結磁石部材の磁力により前記載置面に着脱自在である、
請求項9記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項11】
前記載置面に配置されて、複数の前記タイヤのうち、前記第1タイヤとは異なる第2タイヤの移動を規制する第2タイヤ止め、
を有してなり、
前記第2タイヤ止めは、
前記第2タイヤの移動を規制する第2移動規制部材と、
前記載置面に対する摩擦力を増加させる第2摩擦力増加部材と、
を備え、
前記第2移動規制部材は、
前記第2タイヤ止めが前記載置面に配置されたときに前記載置面に向けられる第2下面、
を備え、
前記第2摩擦力増加部材は、前記第2下面に取り付けられて、
前記第2タイヤ止めは、前記第2タイヤからの荷重を受けたとき、弾性変形する、
請求項1記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項12】
前記第2タイヤ止めは、前記車両が前記載置面に載置されているとき、
前記搬器に進入する前記車両の進入方向において、前記第2タイヤの前側に配置される第2前部タイヤ止めと、
前記進入方向において、前記第2タイヤの後側に配置される第2後部タイヤ止めと、
で構成される、
請求項11記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項13】
前記載置面に配置されて、複数の前記タイヤのうち、前記第1タイヤとは異なる第3タイヤの移動を規制する第3タイヤ止め、
を有してなり、
前記第3タイヤ止めは、前記載置面に対して移動不能に固定される、
請求項1または12記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項14】
前記載置面には、前記車両が前記載置面に載置されていないときに前記タイヤ止めが保管される保管位置を示す標識が付されている、
請求項1記載の機械式駐車装置の搬器。
【請求項15】
車両が進入可能な入庫位置と、前記車両が格納される格納位置と、の間を搬送される搬器、
を有してなり、
前記搬器は、
前記車両が載置される載置面を備える搬器本体と、
前記載置面に配置されて、前記載置面に載置された前記車両が備える複数のタイヤのうち、第1タイヤの移動を規制するタイヤ止めと、
を備え、
前記タイヤ止めは、
前記第1タイヤの移動を規制する移動規制部材と、
前記載置面に対する摩擦力を増加させる摩擦力増加部材と、
を備え、
前記移動規制部材は、
前記タイヤ止めが前記載置面に配置されたときに前記載置面側に向けられる下面、
を備え、
前記摩擦力増加部材は、前記下面に取り付けられて、
前記タイヤ止めは、前記第1タイヤからの荷重を受けたとき、弾性変形する、
ことを特徴とする機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の搬器と、機械式駐車装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置は、限られたスペースに複数の車両を駐車するために利用されている。機械式駐車装置は、マンション、オフィスビル、ショッピングセンターなどの建物の地下に配置、あるいは、建物に隣接する地上に併設される。
【0003】
地下に配置される機械式駐車装置の一例として、水平循環方式の駐車装置(以下「水平循環式駐車装置」という。)が知られている。
【0004】
水平循環式駐車装置は、入出庫室と、昇降路と、格納空間と、パレットと、リフトと、を有してなる。入出庫室は、車両の入庫と出庫とが行われる空間である。昇降路は、入出庫室と格納空間とを接続する、上下方向におけるパレットの搬送路である。格納空間は、複数の格納階に区画され、格納階ごとに、車両とパレットとを格納する複数の格納部が区画されている地下空間である。パレットは、リフトの昇降により昇降路を上下に搬送されると共に、地下の格納空間を水平方向に搬送される、搬器である。パレットは、入出庫室に前進入庫した車両が載置(搭載)される搬送床である。パレットは、平面視において矩形状の搬送床であり、入出庫室に前進入庫した車両が載置(搭載)される。格納空間において、パレットは、パレットの長手方向(パレットに載置された車両の前後方向)に搬送(縦送り)され、パレットの短手方向(パレットに載置された車両の幅方向)に搬送(横送り)される。リフトは、昇降路において、車両が載置されたパレット、または、車両が載置されていないパレットを昇降させる。
【0005】
車両が載置されたパレットが縦送りされるとき、パレットに載置された車両は、縦送りの開始時に受ける加速度、および、終了時に受ける慣性により、パレット上の載置された位置から移動し得る。換言すれば、車両が載置されたパレットが縦送りされるとき、パレットに載置された車両のタイヤの位置は、変わり得る。縦送りの際にタイヤが変位すると、車両は、移動して、パレットから落下し得る。このような問題を解決するため、タイヤの変位を規制するタイヤ止め(車止め)が上面に配置されたパレットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
特許文献1に開示されたタイヤ止め(車止め)は、パレット(トレー)の上面に固定された複数の棒状部材で構成される。複数の棒状部材は、例えば、溶接などによりパレットに固定される。複数の棒状部材は、パレットの長手方向の一方側(パレットへ前進入庫する車両の前後方向の前側)で、かつ、短手方向の一方側(例えば、車両の右前タイヤの位置付近)に、所定の間隔で配置される。複数の棒状部材で構成されるタイヤ止めは、パレットに停止(載置)される車両のタイヤ(右前タイヤ)が載置される位置(以下「停止位置」という。)を構成する。停止位置の前後に配置される各棒状部材は、車両がパレットに載置されたとき(停止位置にタイヤが載置されたとき)、縦送りによるタイヤの前後方向の移動を規制する。
【0008】
ここで、パレットの縦送りの開始時および終了時、車両に対して断続的・突発的な加速度や慣性が発生する。加速度や慣性により、タイヤには、前後方向への大きな変位を生じさせる力が作用する。そのため、パーキングブレーキが正常に機能していない場合(パーキングブレーキの掛け忘れなど)、加速度や慣性により、停止位置に載置されたタイヤがタイヤ止め(棒状部材)を乗り越えて、車両が移動することがあり得る。タイヤがタイヤ止めを乗り越えると、車両は、パレットから落下し得る。
【0009】
これに対し、タイヤのタイヤ止めの乗り越えを防ぐために、棒状部材の高さを高くすると、縦送りの開始時や終了時におけるタイヤ(車両)のタイヤ止めの乗り越えは防止される。しかしながら、棒状部材の高さが高過ぎると、車両の進入は、困難になる。例えば、高さの高い棒状部材をタイヤが乗り越えるために、運転手は、アクセルペダルを強く踏み込まなければならない。このとき、アクセルペダルの踏み込み具合によっては、タイヤがタイヤ止めを乗り越えた後、車両は勢いよく前進してパレットを越えて入出庫室の壁に衝突し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、搬器からの車両の落下が防止できる、機械式駐車装置の搬器と、機械式駐車装置と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る機械式駐車装置の搬器は、車両が進入可能な入庫位置と、車両が格納される格納位置と、の間を搬送される機械式駐車装置の搬器であって、車両が載置される載置面を備える搬器本体と、載置面に配置されて、載置面に載置された車両が備える複数のタイヤのうち、第1タイヤの移動を規制するタイヤ止めと、を有してなり、タイヤ止めは、第1タイヤの移動を規制する移動規制部材と、載置面に対する摩擦力を増加させる摩擦力増加部材と、を備え、移動規制部材は、タイヤ止めが載置面に配置されたときに載置面側に向けられる下面、を備え、摩擦力増加部材は、下面に取り付けられ、タイヤ止めは、第1タイヤからの荷重を受けたとき、弾性変形する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬器からの車両の落下が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る機械式駐車装置の実施の形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図1の機械式駐車装置が備える格納空間の模式平面図である。
【
図3】
図1の機械式駐車装置が備える入出庫室の模式平面図である。
【
図4】
図1の機械式駐車装置が備えるパレットの平面図である。
【
図5】
図4のパレットが備える可動タイヤ止めの模式背面図である。
【
図6】
図5の可動タイヤ止めが備える前部可動タイヤ止めの模式図であり、(a)は模式側面図、(b)は模式底面図である。
【
図7】
図5の可動タイヤ止めが車両のタイヤに対して配置されている状態を示す模式側面図である。
【
図8】
図4のパレットに車両が載置された状態における、パレットの平面図である。
【
図9】
図5の可動タイヤ止めが車両のタイヤに対して配置される動作を示す模式側面図であり、(a)は可動タイヤ止めが車両のタイヤに対して配置されている途中の状態を示す模式側面図であり、(b)は可動タイヤ止めが車両のタイヤに対して配置された状態を示す模式側面図である。
【
図10】
図4のパレットに車両が載置されて、
図5の可動タイヤ止めが規制位置に配置された状態における、パレットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る機械式駐車装置の搬器と、機械式駐車装置と、の実施の形態について説明する。各図において、同一の部材および要素については同一の符号が付され、重複する説明は省略される。また、各図において、各部材の構成を明確にするため、各部材の形状、大きさは、実寸法よりも意図的に強調して図示される。
【0015】
以下に説明する本発明に係る機械式駐車装置(以下「本装置」という。)の実施の形態は、車両を前進入庫させる水平循環式駐車装置を例に、説明される。
【0016】
なお、本明細書において、前方は車両が入出庫室内のパレットへ進入する方向(以下「進入方向」という。)であり、後方は前方の反対方向(進入方向とは反対の方向)である。左方は入出庫室内のパレットへ進入する車両の左方向(進入方向に対する左方向)であり、右方は同車両の右方向(進入方向に対する右方向)である。下方は重力方向(前後左右に対する下方向)であり、上方は下方の反対方向(前後左右に対する上方向)である。パレットと入出庫室それぞれの詳細は、後述される。
【0017】
●機械式駐車装置●
●機械式駐車装置の構成
図1は、本装置の実施の形態を示す模式断面図である。
同図は、地下の格納空間に複数の車両が格納(駐車)されている状態を模式的に示す。同図は、格納空間が複数の格納階(本実施の形態においては2階)に区画されていることを示す。同図では、後述されるパレットの具体的構成の図示が省略されている。
【0018】
本装置1は、複数の車両Cを格納する。本装置1は、格納空間SPと、昇降路UDと、パレット10と、入出庫室20と、入出庫扉30と、リフト装置40と、搬送装置50と、パレット支持装置60と、車両センサ70(
図3参照)と、を有してなる。本装置1は、地下の格納空間SPにおいて、パレット10を上下方向・前後左右方向に搬送することで、車両Cを格納する。
【0019】
格納空間SPは、複数の車両Cが格納される空間である。格納空間SPは、複数の格納階(本実施の形態では「2」の格納階(第1格納階B1、第2格納階B2))に区画され、格納階ごとに複数の格納部(例えば、後述される第1格納階B1の各格納部B11,B12,・・・B111(
図2参照))が区画されている地下空間である。格納部は、車両Cとパレット10とが格納される領域である。第1格納階B1は、第2格納階B2の上方(地上側)に配置される上階である。第2格納階B2は、第1格納階B1の下階である。すなわち、例えば、第1格納階B1は、地下1階である。第2格納階B2は、地下2階である。
【0020】
図2は、格納空間SPの模式平面図である。
同図は、格納空間SP内の第1格納階B1の平面図を模式的に示す。同図は、説明の便宜上、車両Cの図示を省略している。
【0021】
第1格納階B1は、前述のとおり、複数(本実施の形態では11箇所)の格納部B11,B12,・・・B111を備える。各格納部B11-B111は、パレット10(10a,10b,・・・10i,10z)と、パレット10に載置された車両C(不図示)と、が格納される空間である。各格納部B11-B111は、本発明における「格納位置」の例である。
【0022】
また、同図は、11箇所の格納部B11-B111のうちの9箇所の格納部B11-B14,B17-B111にパレット10が格納されていることを示す。すなわち、第1格納階B1には、パレット10が格納されていない格納部(格納部B15,B16)が2箇所存在する。つまり、本装置1は、第1格納階B1に最大9台の車両Cを格納できる。
【0023】
なお、本発明において、第1格納階に格納される車両の最大数は、「9」に限定されない。
【0024】
図1に戻る。
第2格納階B2の各格納部の構成は、第1格納階B1の各格納部B11-B111の構成と同じである。すなわち、第2格納階B2は、第1格納階B1と同様に、複数の格納部(例えば、11箇所の格納部)を備える。
【0025】
なお、本発明において、格納空間に配置される格納階の数は、「2」に限定されない。すなわち、例えば、格納階の数は、「1」でもよく、あるいは、「3」以上でもよい。
【0026】
また、本発明において、各格納階に配置される格納部の数は、「11」に限定されない。すなわち、例えば、格納部の数は、「10」以下でもよく、あるいは、「12」以上でもよい。
【0027】
昇降路UDは、上下方向において、入出庫室20と格納空間SPとを接続する、パレット10の搬送路である。昇降路UD内では、リフト装置40が昇降する。
【0028】
図1と
図2とに戻る。
以下の説明において、パレット10の水平方向(前後方向・左右方向。以下同じ。)の搬送は、パレット10が第1格納階B1で搬送される場合を例に説明する。以下の説明において、パレット10が個別に特定されて説明される必要があるとき、パレット10には個別の符号(10a-10i,10z)が付され、パレット10が個別に特定されて説明される必要がないとき、パレット10は単に「パレット10」と総称される。
【0029】
パレット10は、車両Cが載置されて、後述される入庫位置と格納位置との間を搬送される、搬送床である。パレット10は、搬送装置50を介して、リフト装置40と、格納部B11-B111の何れかと、に搬送される。パレット10は、昇降路UDにおいて入出庫室20と格納空間SPとの間を上下方向に搬送されると共に、第1格納階B1において水平方向に搬送されて、格納部に格納される。パレット10は、平面視において前後方向に長い矩形状である。パレット10は、本発明に係る「搬器」の例である。パレット10の具体的構成は、後述される。
【0030】
入出庫室20は、入出庫扉30を介して、車両Cの入庫と出庫とが行われる空間である。入出庫室20は、例えば、格納空間SPの上方の地上に配置される。すなわち、例えば、入出庫室20は、地上階である。車両Cの入庫時において、車両Cは、入出庫室20の外部から内部に前進入庫される。車両Cの出庫時において、車両Cは、入出庫室20の内部から外部に前進出庫される。入出庫室20は、プラットホーム21と開口22hとを備える。
【0031】
プラットホーム21は、入出庫室20の床を構成する。プラットホーム21は、入出庫室20内における、例えば、車両Cの利用者、または、本装置1の管理者のための車両Cと入出庫扉30との間の通路である。
【0032】
開口22hは、入出庫室20と昇降路UDとを連通させる、平面視において前後方向に長い矩形状の孔である。開口22hは、プラットホーム21に配置される。パレット10は、開口22hを介して、入出庫室20と昇降路UDとの間を搬送される。開口22hの開口面積は、パレット10の平面積よりも若干広い。入出庫室20において車両Cが入庫可能(出庫可能)な状態のとき、パレット10は、開口22hに配置される。すなわち、パレット10が開口22hに配置されているとき、パレット10は、車両Cがパレット10へ進入可能な入庫位置に位置している。つまり、開口22hの位置は、本発明における「入庫位置」の例である。パレット10が開口22h(入庫位置)に配置されているとき、プラットホーム21の上面(表面)は、パレット10の上面(後述される載置面11a)と略平坦な面を構成する。
【0033】
なお、本発明において、入出庫室の構成は、車両を前進入庫および前進出庫させる構成に限定されない。すなわち、例えば、入出庫室の構成は、車両を後進入庫および後進出庫させる構成でもよい。
【0034】
入出庫扉30は、入出庫室20の出入口を開閉する扉である。入出庫扉30は、車両C、利用者、または、管理者が入出庫室20に出入りするための扉としても機能する。入出庫扉30が開いているとき、車両C(利用者、管理者)は、入出庫室20の内部と外部との間を往来できる。入出庫扉30が閉まっているとき、車両C(利用者、管理者)は、入出庫室20の内部と外部との間を往来できない。
【0035】
「利用者」は、例えば、車両Cの運転手や同乗者である。「管理者」は、例えば、本装置1の利用者に対して車両Cの入出庫を誘導する者、本装置1の管理人、または、保守員である。
【0036】
リフト装置40は、昇降路UD内を昇降することによりパレット10を昇降させて、入出庫室20と、第1格納階B1と、第2格納階B2と、の間でパレット10を搬送(移動)させる。すなわち、リフト装置40は、入出庫室20の開口22hと、開口22hと異なる位置と、の間でパレット10を搬送させる。パレット10は、搬送装置50を介してリフト装置40に載置される。リフト装置40に載置されるパレット10は、車両Cが載置されたパレット10、または、車両Cが載置されていないパレット(以下「空パレット」という。)10である。リフト装置40は、水平方向におけるパレット10の向きを180度旋回させる旋回部(不図示)を備える。
【0037】
なお、本発明において、リフト装置は、旋回部を備えなくてもよい。
【0038】
搬送装置50は、格納空間SP(第1格納階B1)において、パレット10を水平方向に搬送する。搬送装置50は、リフト装置40に載置された第1搬送装置50aと、格納部B11-B111それぞれに載置された第2搬送装置50bと、を備える。第2搬送装置50bの構成は、第1搬送装置50aの構成と同じである。
【0039】
第1搬送装置50aは、リフト装置40に載置されたパレット10を、第2搬送装置50bに搬送する。第2搬送装置50bは、第2搬送装置50bに載置されたパレット10を、隣接する他の第2搬送装置50b、または、第1搬送装置50aに搬送する。
【0040】
このように、格納空間SPにおいて、パレット10は、搬送装置50(第1搬送装置50a,第2搬送装置50b)により、水平方向に搬送される。本明細書において、パレット10を前後方向に搬送させる本装置1の動作は「縦送り」であり、パレット10を左右方向に搬送させる本装置1の動作は「横送り」である。
【0041】
ここで、第2格納階B2に配置される搬送装置50(第2搬送装置50b)の構成は、第1格納階B1に配置される搬送装置50(第2搬送装置50b)の構成と同じである。すなわち、例えば、第1格納階B1と同様に、第2格納階B2において、第2搬送装置50bは、格納部ごとに配置されている。
【0042】
パレット支持装置60は、入庫位置に配置されたパレット10を支持する。パレット支持装置60は、パレット10の前端部側と後端部側それぞれの2点を支持する。すなわち、パレット支持装置60は、4点でパレット10を支持する。パレット支持装置60は、プラットホーム21の下面(地下側の面)に配置される。
【0043】
図3は、入出庫室20の模式平面図である。
同図は、入出庫室20の入庫位置にパレット10が配置されている様子を示す。同図は、車両センサ70から投光されている光を一点鎖線で示す。同図は、後述される固定タイヤ止め15を示す。
【0044】
車両センサ70は、車両Cがパレット10上の所定位置に停車しているか否か(タイヤT(
図1参照)が停止位置に有るか否か)を検知する。
【0045】
「所定位置」は、パレット10において、車両Cが載置されるべき適切な位置である。「停止位置」は、パレット10の載置面(上面)11aのうち、後述される固定タイヤ止め15が配置される箇所であり、パレット10に停止(載置)される車両CのタイヤT(右前タイヤ)が載置される位置である。
【0046】
車両センサ70は、例えば、投光器71と受光器72とを備える公知の光電センサである。投光器71は、入庫位置に配置されたパレット10に車両Cが停車されたとき、停止位置に載置されたタイヤTに光が投光されるように入出庫室20の内部の壁面または入出庫室20の床に配置される。受光器72は、タイヤTが停止位置に無いときに投光器71からの光を受光するように入出庫室20の壁面または入出庫室20の床に配置される。受光器72が投光器71からの光を受光しているとき、車両Cは所定位置に停車されていない。一方、受光器72が投光器71からの光を受光していないとき、車両Cは所定位置に停車されている。このように、車両センサ70は、受光器72の受光の有無に基づいて、車両Cがパレット10の所定位置に停車しているか否かを検知する。
【0047】
なお、本発明において、車両センサは、光電センサに限定されない。すなわち、例えば、車両センサは、いわゆる3D-LiDAR(Light Detection and Ranging)の技術が用いられる公知の3次元測域センサ、または、ミリ波を照射して異物を検出するミリ波センサでもよい。
【0048】
ここで、車両Cがパレット10上に停車しているにもかかわらず、車両センサ70が車両Cを検知しないとき、タイヤTは、パレット10上の停止位置に無い(位置していない)。すなわち、タイヤTは、停止位置よりも前方または後方に位置している。タイヤTが停止位置に無いとき、車両Cの前端部または後端部の少なくとも一方がパレット10の前端または後端からはみ出し得る。すなわち、タイヤTが停止位置に位置していないとき、車両Cは、所定位置(適切な位置)に停車されていない。
【0049】
なお、本発明において、車両センサは、入出庫室の壁面または床ではなく、プラットホーム上またはパレット上に配置されてもよい。
【0050】
●機械式駐車装置のパレットの構成
図4は、パレット10の平面図である。
同図は、説明の便宜上、パレット10の所定位置に車両Cが停車したときのタイヤTを二点鎖線で示している。
【0051】
パレット10に関する以下の説明は、
図1-
図2も適宜参照される。
【0052】
パレット10は、パレット本体11と、縦レール12と、横レール13と、転向部14と、固定タイヤ止め15と、可動タイヤ止め16と、を備える。
【0053】
パレット本体11は、車両Cが載置される載置面11aを備える搬送床を構成する。すなわち、載置面11aは、パレット本体11の上面である。パレット本体11は、本発明における「搬器本体」の例である。パレット本体11は、例えば、表面(載置面11a)に滑り止め用の突起が成形された板状の縞鋼板である。パレット本体11は、平面視において、前後方向に長い矩形状である。
【0054】
縦レール12は、パレット本体11の前後方向に延びるように、パレット本体11の下面(裏面)に配置される。縦レール12は、パレット10が縦送りされるとき、搬送装置50(第1搬送装置50a,第2搬送装置50b)に支持される。縦レール12は、例えば、H形鋼である。縦レール12は、パレット本体11の左右方向に間隔を空けて、パレット本体11の下面に2本配置される。縦レール12は、前後方向の所定箇所において、不連続である。
【0055】
横レール13は、パレット本体11の左右方向に延びるように、パレット本体11の下面(裏面)に配置される。横レール13は、パレット10が横送りされるとき、搬送装置50(第1搬送装置50a,第2搬送装置50b)に支持される。横レール13は、例えば、H形鋼である。横レール13は、パレット本体11の前後方向に間隔を空けて、パレット本体11の下面に2本配置される。横レール13は、左右方向の所定箇所において、不連続である。横レール13の不連続箇所は、縦レール12の不連続箇所との交差部(パレット本体11の下面において、縦レール12と横レール13とが連続すれば交差する部分)である。
【0056】
転向部14は、パレット10の搬送方向を転向して、縦送りと横送りとを切り換える。転向部14は、交差部に配置される。転向部14の数は、例えば、「4」である。
【0057】
固定タイヤ止め15は、載置面11aに載置された車両Cの移動、つまり、タイヤTの移動を規制する。固定タイヤ止め15は、パレット本体11の載置面11aの右前部に配置されて、例えば、溶接などにより固定される。すなわち、固定タイヤ止め15は、載置面11aに対して、移動不能に固定される。固定タイヤ止め15は、載置面11aに載置された車両Cの複数のタイヤTのうち、右前タイヤTFrの移動を規制する。固定タイヤ止め15は、本発明における「第3タイヤ止め」の例である。右前タイヤTFrは、本発明における「第3タイヤ」の例である。
【0058】
固定タイヤ止め15は、左右方向に延びる複数の棒状部材で構成され、本実施の形態では、3つの棒状部材で構成される。各棒状部材は、前後方向に所定の間隔を空けて載置面11aに配置される。各棒状部材は、載置面11aに溶接されて固定される。固定タイヤ止め15の載置面11aからの高さ(載置面11aに直交する垂直方向の高さ。以下同じ。)は、例えば、約35mmである。固定タイヤ止め15を構成する3つの棒状部材は、円柱状である。固定タイヤ止め15は、パレット本体11と同じ鋼材である。固定タイヤ止め15は、運転手に車両Cを所定位置に停車させるための指標としても機能する。
【0059】
なお、本発明において、固定タイヤ止めが配置(固定)される位置は、右前タイヤの移動を規制する位置に限定されない。すなわち、例えば、固定タイヤ止めが配置される位置は、車両の左前タイヤ、左後タイヤ、右後タイヤの何れかのタイヤの移動を規制する位置でもよい。また、固定タイヤ止めは、複数のタイヤの移動を規制する位置に配置されていてもよい。すなわち、例えば、固定タイヤ止めは、パレット本体の右前部と左後部とに配置されて、右前タイヤと左後タイヤとの移動を規制可能にしてもよい。
【0060】
また、本発明において、固定タイヤ止めを構成する棒状部材の数は、「3」に限定されない。すなわち、例えば、棒状部材の数は、「1」以上であればよい。
【0061】
可動タイヤ止め16は、載置面11aに配置されて、載置面11aに載置された車両C(
図1参照)が備える複数のタイヤTのうち、右前タイヤTFrとは異なるタイヤTの移動を規制する。可動タイヤ止め16は、後述される磁石部材(前部磁石部材162F,後部磁石部材162R、
図5参照)の磁力により、載置面11a(パレット本体11)に吸着して固定される。可動タイヤ止め16は、載置面11aから引き離す方向に磁力よりも強い力が加えられると、載置面11aから取り外すことができる。すなわち、可動タイヤ止め16は、載置面11aに着脱自在である。つまり、可動タイヤ止め16は、移動可能な可動式のタイヤ止めである。可動タイヤ止め16は、本発明における「タイヤ止め」の例である。本実施の形態において、「右前タイヤTFrとは異なるタイヤT」は、右後タイヤTRrである。右後タイヤTRrは、本発明における「第1タイヤ」の例である。可動タイヤ止め16は、車両Cが載置面11aに載置されていないとき、保管位置P1に配置され(位置し)、車両Cが載置面11aに載置されているとき、規制位置P2,P3に配置される。
【0062】
なお、本発明において、第1タイヤは、固定タイヤ止めにより移動が規制されるタイヤ(第3タイヤ)と異なるタイヤであればよく、右後タイヤに限定されない。すなわち、例えば、第1タイヤは、左後タイヤ、あるいは、左前タイヤでもよい。この場合、左後タイヤ、あるいは、左前タイヤに対して第1タイヤ止めが配置され、当該タイヤの移動が規制される。
【0063】
「保管位置P1」は、車両Cが載置面11aに載置されていないときに可動タイヤ止め16が保管される位置であり、例えば、載置面11aのうち、車両Cの移動が妨害されない位置である。保管位置P1は、例えば、載置面11a(パレット本体11)にペイントやテープの貼り付けなどによる目印となる標識が付されて、管理者(または利用者)が保管位置P1を容易に視認可能となるように区画されている。すなわち、載置面11aには、保管位置P1を示す標識が付されている。本実施の形態において、保管位置P1は、例えば、載置面11aの略中央部である。
【0064】
「規制位置P2,P3」は、可動タイヤ止め16が右後タイヤTRrの移動を規制する位置であり、例えば、載置面11aのうち、右後タイヤTRrの接地面に可動タイヤ止め16を当接、または、当接可能に対向させた状態で固定可能な位置である。本実施の形態において、規制位置P2,P3は、右後タイヤTRrの前後の位置である。「接地面」は、タイヤT(右後タイヤTRr)の面のうち、車両Cの進退時に地面や載置面11aに接する面(円周面)である。
【0065】
●可動タイヤ止めの構成
図5は、可動タイヤ止め16の模式背面図である。
図6(a)は、可動タイヤ止め16のうち、前部可動タイヤ止め16Fの模式側面図であり、同図(b)は前部可動タイヤ止め16Fの模式底面図である。
図7は、可動タイヤ止め16が車両Cに対して配置されている状態を示す模式側面図である。同図は、右後タイヤTRrを二点鎖線で示している。同図は、説明の便宜上、連結部材16Cの図示を省略している。
【0066】
可動タイヤ止め16は、前部可動タイヤ止め16Fと、後部可動タイヤ止め16Rと、連結部材16Cと、を備える。前部可動タイヤ止め16Fは、本発明における「前部タイヤ止め」の例である。後部可動タイヤ止め16Rは、本発明における「後部タイヤ止め」の例である。
【0067】
前部可動タイヤ止め16Fは、載置面11aに載置された車両Cの右後タイヤTRrの前側の位置である規制位置P2に配置されて、右後タイヤTRrの前方向への移動を規制する。前部可動タイヤ止め16Fは、三角形状の側面を有する三角柱状である。前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されているときの前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aからの高さは、例えば、約75mmである。すなわち、前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aからの高さは、固定タイヤ止め15の載置面11aからの高さよりも高い。前部可動タイヤ止め16Fは、前部移動規制部材161Fと、前部磁石部材162Fと、前部摩擦力増加部材163Fと、を備える。
【0068】
前部移動規制部材161Fは、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、右後タイヤTRrの接地面(円周面)に当接することにより、右後タイヤTRrの前方向への移動を規制する。前部移動規制部材161Fは、右後タイヤTRrから受ける荷重が働いても耐え得る(潰れにくい)素材であり、本実施の形態では、硬質プラスチック製である。前部移動規制部材161Fは、本発明における「移動規制部材」の例である。前部移動規制部材161Fは、下面161Faと、タイヤ当接面161Fbと、連結部材取付面161Fcと、連結部材取付具161Fdと、を備える。
【0069】
下面161Faは、前部可動タイヤ止め16Fが載置面11aに配置されたときに載置面11a側に向けられる面である。下面161Faは、第1端部1611Fと第2端部1612Fとを備える。
【0070】
第1端部1611Fは、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、下面161Faの右後タイヤTRr側に位置する端部である。すなわち、第1端部1611Fは、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、下面161Faにおける後端部である。
【0071】
第2端部1612Fは、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、第1端部1611Fとは反対側に位置する端部である。すなわち、第2端部1612Fは、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、下面161Faにおける前端部である。
【0072】
タイヤ当接面161Fbは、下面161Faの第1端部1611F側に連続する面であり、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、右後タイヤTRrの接地面(円周面)に当接、または、当接可能に対向する面である。タイヤ当接面161Fbは、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されている状態において、載置面11aに対して右後タイヤTRrの接地面に沿うように傾斜する面である。タイヤ当接面161Fbに右後タイヤTRrが当接することで、右後タイヤTRrの前方向への移動は、規制される。
【0073】
なお、本発明において、タイヤ当接面は、右後タイヤの接地面に沿うように湾曲する湾曲面でもよい。
【0074】
連結部材取付面161Fcは、下面161Faの第2端部1612F側に連続する面であり、前部可動タイヤ止め16Fが規制位置P2に配置されたときに、右後タイヤTRrの接地面とは反対側に向けられる面である。連結部材取付面161Fcは、連結部材16Cが連結部材取付具161Fdを介して取り付けられる面である。
【0075】
連結部材取付具161Fdは、例えば、半リング状で、両端部が連結部材取付面161Fcに接合される。連結部材取付具161Fdには、連結部材16Cの一方の端部が取り付けられる。
【0076】
なお、本発明において、連結部材取付具は、連結部材取付面と一体に成形されていてもよい。また、連結部材取付具の形状は、半リング状に限定されない。
【0077】
前部磁石部材162Fは、前部可動タイヤ止め16Fが保管位置P1・規制位置P2に配置されたときに、磁力により載置面11aに吸着して固定される。前部磁石部材162Fは、例えば、円形のボタン型の永久磁石(例えば、ネオジム磁石)である。前部磁石部材162Fは、下面161Faの第2端部1612F側に、例えば、接着剤により取り付けられる。前部磁石部材162Fは、本発明における「磁石部材」の例である。
【0078】
なお、本発明において、前部磁石部材の数は、「1」に限定されない。すなわち、例えば、前部磁石部材の数は、「2」以上でもよい。
【0079】
また、本発明において、前部磁石部材は、永久磁石であればよく、ネオジム磁石に限定されない。すなわち、例えば、前部磁石部材は、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などでもよく、または、複数種の永久磁石の複合体でもよい。
【0080】
また、本発明において、前部磁石部材の形状は、円形のボタン型に限定されない。すなわち、例えば、前部磁石部材は、矩形の板状でもよい。
【0081】
前部摩擦力増加部材163Fは、下面161Faに取り付けられて、前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aに対する摩擦力を増加させる。前部摩擦力増加部材163Fは、下面161Faのうち、前部磁石部材162Fが取り付けられている部分を除く部分に、例えば、接着剤により取り付けられる。すなわち、前部摩擦力増加部材163Fの大部分は、前部磁石部材162Fよりも下面161Faの第1端部1611F側に取り付けられる。前部摩擦力増加部材163Fは、本発明における「摩擦力増加部材」の例である。
【0082】
前部摩擦力増加部材163Fは、右後タイヤTRrから受ける荷重に耐え難い(潰れやすい)素材であり、本実施の形態では、弾性を有するネオプレンゴムなどの合成ゴム製であり、弾性体である。前部摩擦力増加部材163Fは、前部移動規制部材161Fよりも軟質である。換言すれば、前部移動規制部材161Fは、前部摩擦力増加部材163Fよりも硬質である。このため、前部可動タイヤ止め16Fが右後タイヤTRrからの荷重を受けたとき、前部摩擦力増加部材163Fは潰れない。一方、可動タイヤ止め16が右後タイヤTRrからの荷重を受けたとき、前部摩擦力増加部材163Fは潰れて、弾性変形して、載置面11aに対する接触面積が増大する。そのため、載置面11aに対する密着度は、前部摩擦力増加部材163Fが潰れない場合に比べて、増加する。これにより、前部可動タイヤ止め16Fは、右後タイヤTRrからに荷重を受けても、載置面11aを移動しない。その結果、前部可動タイヤ止め16Fは、右後タイヤTRrの移動を規制する。このように、前部可動タイヤ止め16Fは、前部摩擦力増加部材163Fが潰れることで、右後タイヤTRrの移動を規制する。
【0083】
前部摩擦力増加部材163Fの下面は、載置面11aに当接する当接面163Faであり、平面状である。前部摩擦力増加部材163Fは、右後タイヤTRrからの荷重を受けると、潰れて弾性変形する。載置面11aが縞鋼板である場合、前部摩擦力増加部材163Fの下面は、載置面11aの形状に応じて潰れて、弾性変形する。そのため、縞鋼板である載置面11aに噛み合い、前部摩擦力増加部材163Fの載置面11aに対する接触面積は、増大する。このように、前部摩擦力増加部材163Fの下面が載置面11aの形状に応じて潰れることで、前部可動タイヤ止め16Fによる右後タイヤTRrの移動を規制する効果は、より高まる。
【0084】
前部摩擦力増加部材163Fの載置面11aに対する摩擦力は、下面161Fa(前部移動規制部材161F)の載置面11aに対する摩擦力よりも大きい。このため、前部摩擦力増加部材163Fを備える前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aに対する摩擦力は、前部摩擦力増加部材163Fが無い場合の同摩擦力と比較して、大きい。換言すれば、前部摩擦力増加部材163Fは、前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aに対する摩擦力を増加させる。
【0085】
後部可動タイヤ止め16Rは、載置面11aに載置された車両Cの右後タイヤTRrの後側の位置である規制位置P3に配置されて、右後タイヤTRrの後方向への移動を規制する。後部可動タイヤ止め16Rの構成は、右後タイヤTRrに対する配置位置が前部可動タイヤ止め16Fと異なることを除き、前部可動タイヤ止め16Fの構成と同じである。以下の後部可動タイヤ止め16Rの説明では、後部可動タイヤ止め16Rを構成する各部材の詳細な説明は、省略される。後部可動タイヤ止め16Rは、後部移動規制部材161Rと、後部磁石部材162Rと、後部摩擦力増加部材163Rと、を備える。
【0086】
後部移動規制部材161Rは、下面161Raと、タイヤ当接面161Rbと、連結部材取付面161Rcと、連結部材取付具161Rdと、を備える。
【0087】
下面161Raは、第1端部1611Rと第2端部1612Rとを備える。
【0088】
後部摩擦力増加部材163Rは、載置面11aに当接する当接面163Raを備える。
【0089】
後部移動規制部材161Rは、本発明における「移動規制部材」の例である。後部磁石部材162Rは、本発明における「磁石部材」の例である。後部摩擦力増加部材163Rは、本発明における「摩擦力増加部材」の例である。
【0090】
連結部材16Cは、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rとに連結される。連結部材16Cの一端は前部可動タイヤ止め16Fの連結部材取付具161Fdに連結され、連結部材16Cの他の一端は後部可動タイヤ止め16Rの連結部材取付具161Rdに連結される。すなわち、前部可動タイヤ止め16Fは連結部材16Cを介して後部可動タイヤ止め16Rに連結される。したがって、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rそれぞれは、連結部材16Cを介して相互に連結された状態で載置面11aに配置される。連結部材16Cは、例えば、ナイロン製の紐状部材である。
【0091】
●機械式駐車装置の動作
次に、本装置1の動作が、本装置1に駐車される車両Cの動作と、利用者(または管理者)の動作と、共に説明される。本装置1の動作は、入庫動作と出庫動作とを含む。以下の説明において、
図1-
図3と
図6と
図7とは、適宜参照される。
【0092】
●入庫動作
先ず、車両Cが入出庫扉30の手前に停車された後に、例えば、本装置1が備える操作盤(不図示)が管理者(または利用者)により操作されることにより、入出庫扉30が開けられる。このとき、パレット10z(空パレット10)は、入出庫室20の入庫位置に配置されて、パレット支持装置60に支持されている。可動タイヤ止め16は、保管位置P1に保管(配置)されている。このとき、パレット10zは空パレット10であるので、受光器72は投光器71から投光された光を受光する。すなわち、車両センサ70は、パレット10zに車両Cが載置されていないことを検知する。
【0093】
なお、本発明において、パレットが入庫位置に配置されていないとき、利用者の安全性の確保のため、扉は開かない。パレットが入出庫室の開口に配置されていないとき、本装置は、空パレットを格納部から入庫位置まで搬送する。
【0094】
次いで、管理者は、開けられた入出庫扉30から入出庫室20内に進入して、可動タイヤ止め16を保管位置P1から一時保管場所に移動させる。「一時保管場所」は、例えば、入出庫室20内において車両Cと干渉しない位置、すなわち、プラットホーム21上の位置である。
【0095】
次いで、車両Cが入出庫扉30から入出庫室20内に進入する。このとき、本装置1は、例えば、スピーカ(不図示)からの音声案内や、表示盤(不図示)への表示などにより、車両Cの運転手に「前進」「後退」「停止」などの案内をする。車両Cが入出庫扉30から入出庫室20内に進入し、パレット10zにおける所定位置に停車される。このとき、右前タイヤ(第1タイヤ)TFrは、停止位置にある。このとき、右前タイヤTFrの移動は、固定タイヤ止め15により規制される。このとき、右前タイヤTFrが投光器71から投光された光を遮っているため、車両センサ70は、パレット10の所定位置に停車された車両Cを検知する。
【0096】
図8は、パレット10に車両Cが載置された状態におけるパレット10の平面図である。同図は、車両Cを二点鎖線で示している。
図9は、可動タイヤ止め16が車両CのタイヤTに対して配置される動作を示す模式側面図であり、(a)は可動タイヤ止め16が車両CのタイヤTに対して配置されている途中の状態を示す模式側面図であり、(b)は可動タイヤ止め16が車両CのタイヤTに対して配置された状態を示す模式側面図である。同図では、前部可動タイヤ止め16Fが右後タイヤTRrに対して配置される動作が示されていて、後部可動タイヤ止め16Rの図示は、省略されている。
【0097】
次いで、管理者は、可動タイヤ止め16を一時保管場所から移動させて、規制位置P2,P3に配置する。管理者は、前部可動タイヤ止め16Fを載置面11aに配置するとき、前部可動タイヤ止め16Fの第2端部1612F側を載置面11aから浮かした状態で、第1端部1611Fを載置面11aと右後タイヤTRrとの間に楔状に差し込む。次いで、管理者は、第1端部1611Fが載置面11aと右後タイヤTRrとの間に楔状に差し込まれた状態で、第2端部1612F側を載置面11aに配置する。これにより、前部磁石部材162Fは載置面11aに吸着・固定され、前部可動タイヤ止め16Fは載置面11aに固定される。このとき、前部摩擦力増加部材163Fの当接面163Faは載置面11aに当接し、タイヤ当接面161Fbは、右後タイヤTRrの接地面(円周面)に当接、または、当接可能に対向して配置される。永久磁石である前部磁石部材162Fが第2端部1612F側に配置されていることにより、載置面11aに前部磁石部材162Fを吸着・固定させることなく、第1端部1611Fを載置面11aと右後タイヤTRrとの間に差し込むことができる。すなわち、管理者は、前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aへの配置途中に前部磁石部材162Fが載置面11aに吸着して固定されることがないように前部可動タイヤ止め16Fを動かすことができる。前部可動タイヤ止め16Fは、載置面11aに配置されやすい。管理者は、同様に、後部可動タイヤ止め16Rも規制位置P3に配置する。これにより、右後タイヤTRrの前後方向への移動は、可動タイヤ止め16により規制される。
【0098】
図10は、可動タイヤ止め16が規制位置P2,P3に配置された状態におけるパレット10の平面図である。
図11は、
図10のパレット10のAA線における断面図である。
図10-
図11は、車両Cを二点鎖線で示している。これらの図は、説明の便宜上、パレット10と可動タイヤ止め16とを模式的に示すと共に、連結部材16Cの図示を省略している。
【0099】
次いで、利用者および管理者は、入出庫室20の外に退出する。操作盤が管理者により操作されることにより、入出庫扉30が閉められる。
【0100】
次いで、リフト装置40は、入出庫扉30が閉められた後、入庫位置から格納空間SP内の所定の格納部(本実施の形態では、第1格納階B1の格納部)へパレット10zの搬送を開始する。
【0101】
先ず、リフト装置40は、昇降路UDを降下して、入庫位置から格納空間SP内の所定の格納部へ、パレット10zを搬送させる。
【0102】
次いで、リフト装置40により第1格納階B1に搬送されたパレット10zは、第1搬送装置50aから隣接する第2搬送装置50bに水平に搬送される。
【0103】
次いで、第2搬送装置50bに搬送されたパレット10zは、他のパレット10a-10iが載置されていない任意の格納部(例えば、
図2における格納部B16)に水平に搬送される。このとき、パレット10zは、適宜縦送りや横送りされる。
【0104】
パレット10zが第1搬送装置50aや第2搬送装置50bにより縦送りされるとき(縦送りの開始時および終了時)、パレット10zの移動に伴い、車両Cに対して断続的・突発的な加速度や慣性が発生する。パレット10a-10i,10zに載置された車両Cにおいて、右前タイヤTFrの前後には固定タイヤ止め15が配置され、右後タイヤTRrの前後の規制位置P2,P3には可動タイヤ止め16(前部可動タイヤ止め16F,後部可動タイヤ止め16R)が配置されている。これにより、パレット10a-10i,10zに載置された車両CのタイヤTの前後方向への移動は、規制される。
【0105】
ここで、前部可動タイヤ止め16Fは、前部磁石部材162Fの磁力により載置面11aに固定される。さらに、前部摩擦力増加部材163Fを備える前部可動タイヤ止め16Fの載置面11aに対する摩擦力は、前部摩擦力増加部材163Fが無い場合の同摩擦力と比較して、大きい。同様に、後部可動タイヤ止め16Rは、後部磁石部材162Rの磁力により載置面11aに固定される。さらに、後部摩擦力増加部材163Rを備える後部可動タイヤ止め16Rの載置面11aに対する摩擦力は、後部摩擦力増加部材163Rが無い場合の同摩擦力と比較して、大きい。そのため、可動タイヤ止め16は、縦送り時の慣性などにより車両Cがパレット10zに対して前後方向に移動しようとして右後タイヤTRrが可動タイヤ止め16を前後に押しても、移動しない。その結果、右後タイヤTRrの移動は、可動タイヤ止め16により規制される。
【0106】
●出庫動作
次に、本装置1の出庫動作について説明する。出庫動作は、入庫動作の略反対の動作である。
【0107】
先ず、パレット10zに載置された車両Cの管理者(または利用者)により、車両Cを呼び出すために操作盤(不図示)が操作される。本装置1は、操作盤が操作されると、パレット10zに載置された車両Cを呼び出す。
【0108】
このとき、リフト装置40は、入出庫室20の入庫位置に空パレット10(パレット10a-10i)が配置されている場合、空パレット10を格納空間SP(例えば、第1格納階B1)まで降下させる。
【0109】
パレット10zは、格納部B16に載置された第2搬送装置50bにより縦送りや横送りされて、昇降路UDにおけるリフト装置40に載置された第1搬送装置50aまで搬送される。
【0110】
パレット10zが第2搬送装置50bにより縦送りされるとき(縦送りの開始時および終了時)、パレット10zに載置された車両Cの前後方向への移動は、入庫動作と同様に、固定タイヤ止め15と可動タイヤ止め16とにより規制される。
【0111】
第1搬送装置50aにパレット10zが載置された後、リフト装置40は、昇降路UDを通過したパレット10zを入庫位置の少し上方まで上昇させる。上昇後、パレット10zは、旋回部(不図示)の回転により180度旋回される。リフト装置40は、旋回後のパレット10zを入庫位置まで下降させる。パレット10zは、入出庫室20の入庫位置に配置されて、パレット支持装置60に支持される。その結果、車両Cの前部側は、入出庫扉30に対向して配置される。
【0112】
次いで、入出庫扉30が開き、管理者は、入出庫室20内に進入し、右後タイヤTRrの前後に配置された可動タイヤ止め16を、載置面11aから取り外す(規制位置P2,P3から一時保管場所に移動させる)。
【0113】
次いで、利用者は、車両Cに乗車して、車両Cを入出庫室20(本装置1)から前進出庫させる。このとき、右前タイヤTFrは、固定タイヤ止め15を乗り越えて、停止位置から入出庫扉30に向けて移動する。管理者は、車両Cが出庫した後、可動タイヤ止め16を一時保管場所から移動させて保管位置P1に配置する。車両Cが出庫された後、管理者(または利用者)により操作盤が操作されることにより、入出庫扉30は、閉められる。
【0114】
●まとめ●
以上説明した実施の形態によれば、パレット10は、車両CのタイヤTのうち、右後タイヤTRrの移動を規制する可動タイヤ止め16を備える。可動タイヤ止め16は、移動規制部材と、摩擦力増加部材と、を備える。摩擦力増加部材は、移動規制部材の下面に取り付けられる。可動タイヤ止め16は、車両Cの右後タイヤTRr(第1タイヤ)からの荷重を受けたとき、弾性変形する。摩擦力増加部材が弾性変形することにより、摩擦力増加部材の載置面11aに対する接触面積は、増大する。可動タイヤ止め16は、摩擦力増加部材が弾性変形することで、右後タイヤTRrの移動を規制する。このため、パーキングブレーキが正常に機能していない場合(パーキングブレーキの掛け忘れなど)であっても、パレット10の縦送りの開始時および終了時、車両Cに対して継続的・突発的に発生する加速度や慣性による車両Cの移動は、可動タイヤ止め16により抑制(規制)される。その結果、車両Cのパレット10からの落下は、防止される。
【0115】
また、以上説明した実施の形態によれば、可動タイヤ止め16は、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rとを備える。前部可動タイヤ止め16Fは載置面11aに載置された車両Cの右後タイヤTRrの前方向への移動を規制して、後部可動タイヤ止め16Rは同車両Cの右後タイヤTRrの後方向への移動を規制する。このため、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rそれぞれは、パレット10に載置された車両Cの右後タイヤTRrに対して、配置可能になる。パレット10の縦送りの開始時および終了時、車両Cに対して断続的・突発的に発生する加速度や慣性による車両Cの移動は、可動タイヤ止め16により抑制(規制)される。その結果、車両Cのパレット10からの落下は、防止される。
【0116】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、可動タイヤ止め16(前部可動タイヤ止め16F,後部可動タイヤ止め16R)は、磁石部材(前部磁石部材162F,後部磁石部材162R)を備える。磁石部材は、摩擦力増加部材(前部摩擦力増加部材163F,後部摩擦力増加部材163R)と共に、移動規制部材(前部移動規制部材161F,後部移動規制部材161R)の下面(下面161Fa,下面161Ra)に取り付けられる。磁石部材は載置面11aに吸着し、可動タイヤ止め16は載置面11aに固定される。このため、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rそれぞれは、パレット10に載置された車両Cの右後タイヤTRrに対して、配置可能になり、車両Cの移動は、可動タイヤ止め16により抑制(規制)される。その結果、車両Cのパレット10からの落下は、防止される。
【0117】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、磁石部材(前部磁石部材162F,後部磁石部材162R)は下面(下面161Fa,下面161Ra)の第2端部(第2端部1612F,第2端部1612R)側に取り付けられて、摩擦力増加部材(前部摩擦力増加部材163F,後部摩擦力増加部材163R)の大部分は下面(下面161Fa,下面161Ra)の第1端部(第1端部1611F,第1端部1611R)側に取り付けられる。このため、管理者が可動タイヤ止め16を載置面11aに配置するとき、管理者は、可動タイヤ止め16の第2端部側を浮かした状態で、第1端部を載置面11aと右後タイヤTRrとの間に楔状に差し込み、次いで、第2端部側を載置面11aに載置する。磁石部材は、永久磁石である。このため、磁石部材は載置面11aに吸着し、可動タイヤ止め16は載置面11aに固定される。永久磁石である磁石部材が第2端部側に配置されていることにより、載置面11aに磁石部材を吸着・固定させることなく、第1端部を載置面11aと右後タイヤTRrとの間に差し込むことができる。これにより、右後タイヤTRrの前後方向への移動は、可動タイヤ止め16により規制される。このように、第2端部側に磁石部材が配置されていることにより、可動タイヤ止め16の配置途中に磁石部材が載置面11aに吸着して固定されることがないように可動タイヤ止め16を動かすことができるので、管理者は、可動タイヤ止め16を載置面11aに配置しやすい。
【0118】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、移動規制部材(前部移動規制部材161F,後部移動規制部材161R)は、右後タイヤTRrから受ける荷重が働いても耐え得る(潰れにくい)素材(例えば、硬質プラスチック)である。一方、摩擦力増加部材(前部摩擦力増加部材163F,後部摩擦力増加部材163R)は、右後タイヤTRrから受ける荷重に耐え難い(潰れやすい)素材(例えば、合成ゴム製の弾性体)である。移動規制部材は摩擦力増加部材よりも硬質であり、摩擦力増加部材は移動規制部材よりも軟質、かつ、弾性を有する。このため、可動タイヤ止め16が右後タイヤTRrからの荷重を受けたとき、移動規制部材は潰れない。一方、可動タイヤ止め16が右後タイヤTRrからの荷重を受けたとき、摩擦力増加部材は潰れて、弾性変形して、載置面11aに対する接触面積が増大する。そのため、載置面11aに対する密着度は、摩擦力増加部材が潰れない場合に比べて、増加する。このように、可動タイヤ止め16は、摩擦力増加部材が潰れることで、右後タイヤTRrの移動を規制する。これにより、車両Cの移動は、可動タイヤ止め16により抑制(規制)される。その結果、車両Cのパレット10からの落下は、防止される。
【0119】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、摩擦力増加部材(前部摩擦力増加部材163F,後部摩擦力増加部材163R)の下面は、載置面11aに当接する当接面(当接面163Fa,当接面163Ra)であり、平面状である。摩擦力増加部材は、右後タイヤTRrからの荷重を受けると、潰れて弾性変形する。載置面11aが縞鋼板である場合、摩擦力増加部材の下面は、載置面11aの形状に応じて潰れて、弾性変形する。そのため、縞鋼板である載置面11aに噛み合い、摩擦力増加部材の載置面11aに対する接触面積は、増大する。このように、可動タイヤ止め16は、摩擦力増加部材の下面が載置面11aの形状に応じて潰れることで、右後タイヤTRrの移動を、より規制する。
【0120】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、摩擦力増加部材(前部摩擦力増加部材163F,後部摩擦力増加部材163R)の載置面11aに対する摩擦力は、移動規制部材(前部移動規制部材161F,後部移動規制部材161R)の下面(下面161Fa,下面161Ra)の載置面11aに対する摩擦力よりも大きい。このため、摩擦力増加部材を備える可動タイヤ止め16の載置面11aに対する摩擦力は、摩擦力増加部材が無い場合の同摩擦力と比較して、大きい。換言すれば、摩擦力増加部材は、可動タイヤ止め16の載置面11aに対する摩擦力を増加させる。
【0121】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、可動タイヤ止め16は、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rとに連結される連結部材16Cを備える。前部可動タイヤ止め16Fは、連結部材16Cを介して後部可動タイヤ止め16Rに連結された状態で載置面11aに配置される。このため、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rとの何れか一方の紛失や、何れか一方のパレット10からの落下などの問題は、生じない。
【0122】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、パレット10は、車両Cの右後タイヤTRrとは異なる右前タイヤTFrの移動を規制する固定タイヤ止め15を有する。固定タイヤ止め15は、載置面11aに対して、移動不能に固定される。このため、固定タイヤ止め15は、可動タイヤ止め16と共に、パレット10の縦送りの開始時および終了時、車両Cに対して継続的・突発的に発生する加速度や慣性による車両Cの移動を抑制(規制)する。その結果、車両Cのパレット10からの落下は、防止される。
【0123】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、可動タイヤ止め16の載置面11aからの高さは、固定タイヤ止め15の載置面11aからの高さよりも高い。そのため、運転手により固定タイヤ止め15を乗り越える程度の強さでアクセルペダルが踏み込まれたとしても、可動タイヤ止め16によりタイヤTの移動は、規制され得る。その結果、車両Cのパレット10からの落下は、防止される。
【0124】
なお、以上説明した実施の形態では、パレット10は、車両Cの右前タイヤ(第3タイヤ)TFrの移動を規制する固定タイヤ止め15と、車両Cの右後タイヤ(第1タイヤ)TRrの移動を規制する可動タイヤ止め16と、を有する。これに代えて、パレットは、車両の右前タイヤと右後タイヤとは異なる他のタイヤ(例えば、左後タイヤ)(以下「第2タイヤ」という。)の移動を規制する、他の可動タイヤ止めを備えてもよい。すなわち、パレットは、2つの可動タイヤ止めを備えてもよい。この場合、2つ目のタイヤ止め(以下「第2タイヤ止め」という。)の構成は、先に説明した可動タイヤ止め(1つ目の可動タイヤ止め16(以下「第1タイヤ止め」という。))の構成と同じでもよい。すなわち、例えば、第2タイヤ止めは、進入方向において、第2タイヤの前側に配置される前部可動タイヤ止めと、第2タイヤの後側に配置される後部可動タイヤ止めと、前部可動タイヤ止めと後部可動タイヤ止めとに連結される連結部材と、を備える。前部可動タイヤ止めと後部可動タイヤ止めそれぞれは、第2タイヤの接地面に当接する移動規制部材と、磁石部材と、摩擦力増加部材と、を備える。磁石部材と摩擦力増加部材とは、移動規制部材の下面に取り付けられる。これにより、複数の可動タイヤ止めによりタイヤの移動が抑制されることになり、可動タイヤ止めによるタイヤの移動を規制する効果は、より高まる。その結果、車両のパレットからの落下は、より防止される。
【0125】
上記の構成において、「第2タイヤの接地面」は、本発明における「第2接地面」の例である。
【0126】
また、上記の構成において、第2タイヤ止めを構成する、「第2タイヤの前側に配置される前部可動タイヤ止め」は、本発明における「第2前部タイヤ止め」の例である。同様に、第2タイヤ止めを構成する、「第2タイヤの後側に配置される後部可動タイヤ止め」は、本発明における「第2後部タイヤ止め」の例である。さらに、第2タイヤ止めを構成する、「前部可動タイヤ止めと後部可動タイヤ止めとに連結される連結部材」は、本発明における「第2連結部材」の例である。
【0127】
さらに、上記構成において、前部可動タイヤ止め(第2前部可動タイヤ止め)と後部可動タイヤ止め(第2後部可動タイヤ止め)それぞれが備える「移動規制部材」と「磁石部材」と「摩擦力増加部材」それぞれは、本発明における「第2移動規制部材」と「第2磁石部材」と「第2摩擦力増加部材」の例である。また、「移動規制部材(第2移動気鋭部材)の下面」は、本発明における「第2下面」の例である。
【0128】
なお、上記構成において、第2可動タイヤ止めは、連結部材を備えなくてもよい。
【0129】
また、上記構成において、パレットは、車両の左前タイヤの移動を規制するさらに他の可動タイヤ止めを備えてもよい。すなわち、パレットは、3つの可動タイヤ止めを備えてもよい。この場合、3つ目の可動タイヤ止めの構成は、第1可動タイヤ止めの構成と同じでもよい。
【0130】
また、以上説明した実施の形態では、可動タイヤ止め16は、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rとを備えていた。これに代えて、可動タイヤ止めは、前部可動タイヤ止め、または、後部可動タイヤ止めの何れか一方のみを備えていてもよい。
【0131】
さらに、以上説明した実施の形態では、可動タイヤ止め16は、連結部材16Cを備え、前部可動タイヤ止め16Fと後部可動タイヤ止め16Rとは連結部材16Cで連結されていた。これに代えて、可動タイヤ止めは、連結部材を備えなくてもよい。
【0132】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、連結部材16Cは、紐状部材であった。このため、連結部材16Cは、パレット10の移動に応じて、載置面11a上で自由に動き得る。そのため、可動タイヤ止め16がパレット10の端部に載置されると、連結部材16Cがパレット10の外部へはみ出し得る。この場合、パレット10の搬送時に、はみ出た連結部材16Cが搬送装置50に干渉し、本装置1の故障が生じ得る。そこで、可動タイヤ止めは、連結部材を磁力により載置面に吸着させる連結磁石部材を備えてもよい。連結磁石部材は、例えば、連結部材に取り付けられる。連結磁石部材が取り付けられた連結部材は、連結磁石部材の磁力により、載置面に着脱自在である。このため、載置面上における連結部材の自由な移動抑制される。その結果、連結部材のパレットの外部へのはみ出しは、抑制される。
【0133】
また、上記構成において、可動タイヤ止めは、連結部材に連結磁石部材を取り付ける構成に代えて、伸縮自在の連結部材、あるいは、巻き取り可能な連結部材を備えてもよい。伸縮自在の連結部材は例えば、ゴム部材であり、巻き取り可能な連結部材は例えば、コードリールにより巻き取り可能なワイヤで構成されればよい。
【0134】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、連結部材は、ナイロン製の紐状部材に限定されない。すなわち、例えば、連結部材は、麻製の紐状部材でもよい。
【0135】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、保管位置は、可動タイヤ止めが車両の移動が妨害されない位置であればよく、載置面の略中央部に限定されない。すなわち、例えば、保管位置は、載置面のうち、固定タイヤ止めよりも前方の位置であって、左右方向における左部、中央部、または、右部でもよい。つまり、保管位置は、載置面の前部でもよい。また、例えば、保管位置は、載置面のうち、車両が載置されたときの左右の後タイヤよりも後方の位置であって左右方向における中央部でもよい。つまり、保管位置は、載置面の後部でもよい。
【0136】
可動タイヤ止めの載置面からの高さは、一般的な車両の最低地上高よりも低い。そのため、保管位置が載置面の前部、または、後部であっても、可動タイヤ止めが車両の移動の妨害をすることは、抑制される。なお、保管位置が載置面の前部、または、後部であるとき、可動タイヤ止めは、保管位置と規制位置との間で直接移動されることが可能になる。そのため、一時保管場所に配置される必要は、なくなる。
【0137】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、可動タイヤ止めが管理者により保管位置から移動されるタイミングは、車両が載置面に載置された後でもよい。
【0138】
なお、以上説明した実施の形態では、可動タイヤ止めを保管位置と規制位置との間(保管位置と一時保管場所との間、一時保管場所と規制位置との間)で移動させるのは管理者に限定されない。すなわち、例えば、可動タイヤ止めは、車両の利用者により移動されてもよい。
【0139】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、本装置は、車両センサを備えなくてもよい。
【0140】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、パレットは、固定タイヤ止めを備えなくてもよい。この場合、可動タイヤ止めは、車両の右後タイヤではなく、車両の右前タイヤ、左前タイヤ、左後タイヤの何れかのタイヤの移動が規制されるように配置されてもよい。固定タイヤ止めを備えないパレットは、複数の可動タイヤ止めを備えてもよい。
【0141】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、固定タイヤ止めを構成する各棒状部材は、円柱状に限定されない。
【0142】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、可動タイヤ止めは、三角形状の側面を有する三角柱状に限定されない。
【0143】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、パレット本体(搬器本体)の表面は、滑り止め用の突起が成形された縞鋼板に限定されない。すなわち、例えば、パレット本体の表面は、突起を備えない平板上の表面でもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 機械式駐車装置
10 パレット(搬器)
11 パレット本体(搬器本体)
11a 載置面
15 固定タイヤ止め(第3タイヤ止め)
16 可動タイヤ止め(第1タイヤ止め)
16F 前部可動タイヤ止め(前部タイヤ止め)
161F 前部移動規制部材(移動規制部材)
161Fa 下面
1611F 第1端部
1612F 第2端部
161Fb タイヤ当接面
161Fc 連結部材取付面
161Fd 連結部材取付具
162F 前部磁石部材(磁石部材)
163F 前部摩擦力増加部材(摩擦力増加部材)
16R 後部可動タイヤ止め(後部タイヤ止め)
161R 後部移動規制部材(移動規制部材)
162R 後部磁石部材(磁石部材)
163R 後部摩擦力増加部材(摩擦力増加部材)
16C 連結部材
20 入出庫室
22h 開口(入庫位置)
SP 格納空間
B1 第1格納階
B2 第2格納階
UD 昇降路
C 車両
T タイヤ
TFr 右前タイヤ(第1タイヤ)
TRr 右後タイヤ(第2タイヤ)
P1 保管位置
P2,P3 規制位置