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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060684
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】板紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/20 20060101AFI20240425BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
D21H11/20
D21H27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168096
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勇介
(72)【発明者】
【氏名】松野 祐也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 洸太
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 賢太郎
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AC09
4L055AH16
4L055BD18
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA13
4L055GA06
(57)【要約】
【課題】広葉樹クラフトパルプを高配合していながらも、従来品と同等以上の物性を有する板紙を提供すること。
【解決手段】表層、1層以上の中層、裏層を有し、
全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプを20質量%以上含み、
前記表層が、針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含む板紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、1層以上の中層、裏層を有し、
全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプを20質量%以上含み、
前記表層が、針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含むことを特徴とする板紙。
【請求項2】
前記裏層が、広葉樹クラフトパルプを40~100質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の板紙。
【請求項3】
前記裏層が、パルプ質量に対して、内添紙力増強剤を0.3~0.8質量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の板紙。
【請求項4】
比破裂強さが、4.5kPa・m/g以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の板紙。
【請求項5】
全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプ含有量が20~95質量%、針葉樹クラフトパルプ含有量が5~50質量%、古紙パルプ含有量が0~35質量%であり、
前記表層が、古紙パルプを含有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の板紙。
【請求項6】
全坪量に対する裏層の坪量の割合が、30%以上50%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の板紙。
【請求項7】
請求項1または2に記載の板紙からなる段ボール用ライナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙、特に、段ボール用ライナや製函、積層合紙等に好適な板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールは、波形に成形した中芯の片面あるいは両面にライナをコルゲーターで貼り合わせて製造される。
段ボールは、軽量で安価であるため、種々の物品の梱包に使用されている。段ボールは、運搬時等に梱包物が内側から衝突する、あるいは、保管時等に外部から衝撃を受ける場合がある。そのため、段ボール用ライナには、その用途に応じて、衝撃を受けても破れないように、高い破裂強さが要求される場合がある。一般的に、破裂強さが要求される板紙には、原料パルプとして、針葉樹クラフトパルプが配合される。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも表面層、表下層及び裏面層を備え、表面層が針葉樹クラフトパルプを含有し、表面層における針葉樹クラフトパルプの含有量が80質量%以上であり、表下層が針葉樹クラフトパルプ及び段ボール古紙パルプを含有し、表下層における針葉樹クラフトパルプの含有量が25質量%以上35質量%以下であり、裏面層が段ボール古紙パルプ及び雑誌古紙パルプを含有し、裏面層における段ボール古紙パルプの含有量が30質量%以上70質量%以下であり、裏面層における雑誌古紙パルプの含有量が30質量%以上70質量%以下である、耐衝撃性に優れた段ボール用ライナが提案されている。
このように、板紙には、一般的に針葉樹クラフトパルプが配合されるが、これは、針葉樹クラフトパルプは広葉樹クラフトパルプと比較して繊維が長いことから、強度に優れた紙が得られるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-193396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、広葉樹クラフトパルプを高配合していながらも、従来品と同等以上の物性を有する板紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.表層、1層以上の中層、裏層を有し、
全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプを20質量%以上含み、
前記表層が、針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含むことを特徴とする板紙。
2.前記裏層が、広葉樹クラフトパルプを40~100質量%含むことを特徴とする1.に記載の板紙。
3.前記裏層が、パルプ質量に対して、内添紙力増強剤を0.3~0.8質量%含むことを特徴とする1.または2.に記載の板紙。
4.比破裂強さが、4.5kPa・m/g以上であることを特徴とする1.または2.に記載の板紙。
5.全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプ含有量が20~95質量%、針葉樹クラフトパルプ含有量が5~50質量%、古紙パルプ含有量が0~35質量%であり、
前記表層が、古紙パルプを含有しないことを特徴とする1.または2.に記載の板紙。
6.全坪量に対する裏層の坪量の割合が、30%以上50%以下であることを特徴とする1.または2.に記載の板紙。
7.1.または2.に記載の板紙からなる段ボール用ライナ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の板紙は、従来の板紙と同等以上の物性を備えている。本発明の板紙は、段ボール用ライナ、中しん原紙、紙器用板紙、製函用の板紙、積層合紙等に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の板紙は、表層、1層以上の中層、裏層を有し、
全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプを20質量%以上含み、
前記表層が、針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含む。
なお、本明細書において、「A~B」(A、Bは数値)との記載は、その両端を含む数値範囲、すなわち、A以上B以下を意味する。
【0009】
本発明の板紙は、表層、1層以上の中層、裏層とで構成され、表層と裏層とが最外層である。本発明の板紙の層数は、3層以上であり、要求される坪量等に応じて中層の層数を適宜設定することができる。
【0010】
本発明の板紙は、全パルプ質量に対して、広葉樹クラフトパルプを20質量%以上含む。また、本発明の板紙は、少なくとも表層が針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含有する。広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとしては、未晒クラフトパルプ(LUKP/NBKP)、晒クラフトパルプ(LBKP/NBKP)のどちらも使用することができるが、白さが求められない用途に用いる場合、未晒クラフトパルプが、強度に優れるうえ、漂白工程が無いため低エネルギーで生産できる点で好ましい。
【0011】
本発明の板紙において、全パルプ質量に対する広葉樹クラフトパルプの配合量は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、65質量%以上がよりさらに好ましく、70質量%以上がよりさらに好ましい。また、全パルプ質量に対する広葉樹クラフトパルプの配合量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
本発明の板紙において、全パルプ質量に対する針葉樹クラフトパルプの配合量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、全パルプ質量に対する針葉樹クラフトパルプの配合量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0012】
本発明の板紙は、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプの他に、古紙パルプ、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材繊維由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ等を含むことができる。他のパルプとしては、安価な古紙パルプを用いることが好ましい。ただし、本発明の板紙は、表層と裏層の少なくとも一方が古紙パルプを含有しないことが好ましく、表層が古紙パルプを含有しないことがより好ましく、表層と裏層の両方が古紙パルプを含有しないことがさらに好ましい。
本発明の各層で使用するパルプの濾水度は特に制限されないが、300mlCSF以上600ml以下であることが好ましい。
【0013】
古紙パルプとしては、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を離解した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に印刷された古紙、および筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)等の1種、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、段ボール古紙由来の古紙パルプ(以下、段ボール古紙パルプという。)を用いることが好ましい。段ボールは、針葉樹未晒クラフトパルプなどの比較的長繊維のパルプが主に使用され、ライナと中しんとは澱粉系接着剤で貼合され、印刷量も少ないため、段ボール古紙パルプは、他の古紙パルプと比較して、繊維長が長く、リグニン含有率および澱粉含有率が高く、インキ含有率が低い傾向がある。また、段ボール古紙は、リサイクルシステムが確立されており、新聞古紙や雑誌古紙と並び回収率が高いため、段ボール古紙パルプは安価である。そのため、段ボール古紙パルプを用いることにより、板紙の強度発現と、生産コスト低減とを両立することができる。古紙パルプに対する段ボール古紙パルプの配合率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0014】
本発明の板紙において、全パルプ質量に対する古紙パルプの配合量は特に制限されないが、古紙パルプの配合量が少ないほど破裂強さを高く保つことができる。そのため、比破裂強さの点からは、全パルプ質量に対する古紙パルプの配合量は45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がよりさらに好ましく、10質量%以下がよりさらに好ましく、5質量%以下がよりさらに好ましく、含まないこと(0質量%)が最も好ましい。一方、古紙パルプは安価なため、配合量が増えるほど低コストとなる。そのため、コストの点からは、全パルプ質量に対する古紙パルプの配合量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
【0015】
本発明の板紙は、表層が、針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含む。これにより、本発明の板紙は印刷性に優れ、また破裂強さにも優れている。表層は、広葉樹クラフトパルプ、古紙パルプ等を含むことができるが、針葉樹クラフトパルプの割合が最も高いことが好ましい。また、表層は、古紙パルプを含まないこと、すなわち、表層の製紙用繊維は、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプのみであることが好ましい。表層における針葉樹クラフトパルプの配合量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0016】
本発明の板紙は、裏層が、広葉樹クラフトパルプを40~100質量%含むことが好ましい。裏層は、針葉樹クラフトパルプ、古紙パルプ等を含むことができるが、古紙パルプを含まないこと、すなわち、裏層の製紙用繊維は、広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプのみであることが好ましい。裏層における広葉樹クラフトパルプの配合量は、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましく、90質量%以上がよりさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0017】
本発明の板紙は、板紙が含有する全パルプ質量に対して広葉樹クラフトパルプを20質量%以上含み、表層が針葉樹クラフトパルプを40~100質量%含めばよく、これを満足する限り中層を構成するパルプは特に制限されない。中層は、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、古紙パルプ、古紙パルプ、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材繊維由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ等の種または2種以上を含むことができる。中層が2層以上である場合、各中層を構成するパルプ組成は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
本発明の板紙において、裏層が、パルプ質量に対して内添紙力増強剤(以下、内添紙力剤ともいう。)を0.3~0.8質量%含むことが、破裂強さの点から好ましい。裏層に配合する内添紙力剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)や変性でん粉等の製紙分野で用いられているものを特に制限することなく使用することができるが、紙力増強効果が高いため、ポリアクリルアミドを用いることが好ましい。ポリアクリルアミドとしては、アニオン性、カチオン性、両性のいずれも使用することができる。裏層におけるパルプ質量に対する内添紙力増強剤の配合量は、破裂強さの点から、0.35質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、0.45質量%以上であることがよりさらに好ましい。内添紙力剤を、パルプ質量に対して0.8質量%を越えて配合することもできるが、0.8質量%を越えて配合しても紙力増強効果はほぼ飽和してほとんど向上せず、高コストとなる。
本発明の板紙は、裏層以外の層も内添紙力剤を含むことができる。この場合、裏層以外の層が含む内添紙力剤の量は、特に制限されないが、0.01質量%以上0.5質量%以下程度である。本発明の板紙の各紙層における内添紙力剤の配合量は、同一であってもよく、異なるものであってもよい。ただし、各層におけるパルプに対する内添紙力剤の配合量は、裏層が最も多いことが好ましい。
【0019】
本発明の板紙は、板紙の耐候性等を向上するために、サイズ剤を内添することができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸等、また、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤等が挙げられ、1種または2種以上を使用することができる。また、品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾル等の内添薬品を内添することができる。なお、本発明の板紙の各紙層におけるサイズ剤、さらにその他の内添薬品の配合率は、同一であってもよく、また、異なるものであってもよい。
【0020】
さらに、本発明の板紙の各層には、必要に応じて、公知の填料を内添させることができる。填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、及び尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料等が挙げられ、1種または2種以上を使用することができる。なお、本発明の板紙の各紙層における填料の配合率は、同一であってもよく、また、異なるものであってもよい。
【0021】
本発明の板紙は、板紙の強度向上や印刷適性付与等を目的として、表面に塗工層を有することができる。塗工層は、その目的に応じて、外添紙力増強剤(以下、表面紙力剤ともいう)、表面サイズ剤、撥水剤、顔料、バインダー樹脂、防滑剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、罫割防止剤等の公知の表面処理薬品の1種、または2種以上を含むことができる。
本発明の板紙は、強度向上の点から、表面紙力剤を含む塗工層を有することが好ましい。表面紙力剤は、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、酸化澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉等の澱粉系、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系等を用いることができるが、ポリアクリルアミド系が好ましい。表面紙力剤の塗工量が、0.05g/m以上であることが好ましく、0.1g/m以上であることがより好ましい。
また、耐候性の向上を目的として、塗工層は、表面サイズ剤、撥水剤を含むことが好ましい。表面サイズ剤としては、上記した内添用と同様のものが挙げられ、撥水剤としては、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックスエマルジョン等が挙げられる。
【0022】
本発明の板紙は、JIS P8131:2009に規定する比破裂強さ(破裂強さを坪量で除した値)が、4.5kPa・m/g以上であることが好ましい。この比破裂強さが4.5kPa・m/g以上である板紙は、破裂強さに優れているため衝撃を受けても破れにくい。この比破裂強さは、4.8kPa・m/g以上であることがより好ましく、5.0kPa・m/g以上であることがさらに好ましく、5.2kPa・m/g以上であることがよりさらに好ましく、5.5kPa・m/g以上であることが最も好ましい。本発明の板紙の比破裂強さの上限は特に制限されないが、例えば、6.5kPa・m/g以下である。
【0023】
本発明の板紙の坪量は、特に制限されないが、例えば、50g/m以上800g/m以下とすることができる。本発明の板紙は、例えば、段ボール、特に梱包用の段ボール用ライナ、中しん原紙、紙器用板紙、製函用の板紙、積層合紙用の板紙等として好適に用いることができる。2層以上の紙層を有する多層抄き紙の場合、全層の合計を50g/m以上800g/m以下の範囲で適宜設定することができ、例えば、段ボール用ライナとして用いる場合は、70g/m以上550g/m以下とすることができる。
【0024】
全体の坪量に対する裏層の坪量の割合は、破裂強さの点から、30質量%以上50質量%以下が好ましく、32質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。
全体の坪量に対する表層の坪量の割合は、破裂強さの点から、10質量%以上30質量%以下が好ましく、12質量%以上25質量%以下がより好ましい。
全体の坪量に対する全中層の坪量の割合は、破裂強さの点から、30質量%以上50質量%以下が好ましく、35質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。中層が2層以上である場合、各中層の坪量の割合は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
本発明に係る板紙は、3層以上の紙層を有するが、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等を組み合わせた抄き合わせの抄紙機等を用いた公知の製造(抄紙)方法、抄紙機が選択可能である。また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙層の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。
【0026】
本発明の板紙は、各層毎に原料パルプ等の配合が異なるため、各層に応じた紙料を調製して、抄紙する。
本発明の板紙を抄紙する場合、ワイヤーパートは、シェーキング装置を使用することが好ましい。シェーキング装置とは、ワイヤーパートのブレストロールを紙料の流れ方向と垂直な方向(マシン幅方向とも呼ぶ。)に摺動させる装置である。シェーキング装置を使用することにより、坪量が均一化する(地合が向上する)ため、破壊の起点となる他の部分と比較して薄い箇所が減少するため、破裂強さが向上する。
【0027】
さらに、各層の抄造条件を調整することにより、板紙の強度を向上させることもできる。例えば、ヘッドボックスから射出されるジェット液(紙料)の速度(J)と、ワイヤーの速度(W)との比であるJ/W比(=J/W×100)を100%未満とすることにより、ジェット液がワイヤーに引っ張られるため、パルプを抄紙方向(流れ方向)に配向させることができる。そして、パルプが縦方向(長手方向)に配向した板紙は、比破裂強さが向上する傾向がある。J/W比は、81%以上99%以下であることが好ましく、84%以上98%以下であることがより好ましい。また、各層の坪量配分を変更して表層および/または裏層の坪量を増加させること、各層の紙力増強剤配合率を調整して表層および/または裏層への紙力増強剤配合率を中層より高くすること等により、強度を向上させることができる。
【0028】
ワイヤーパート以降の製造(抄紙)方法、抄紙機についても、要求される板紙の強度および生産効率を損なわない範囲で特に限定されず、通常の抄紙機に使用されているものを用いることができる。
抄紙機のプレスパート工程におけるプレスの形式は、例えばストレートスルー型プレス、リバース型プレス、インバープレス、ツインバープレス、ピックアッププレス、ユニプレス、トライニッププレス、トライベントプレス、シュープレス、ミニシュープレス等、特に限定されるものではないが、公知のプレス装置を用いることができる。また、プレス条件についても特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できるが、プレス時間を長くすることで繊維がより水素結合しやすくなり、板紙の強度が向上することから、生産効率を損なわない範囲で低速抄造することが好ましい。
【0029】
抄紙機のドライパート工程におけるドライヤー(乾燥装置)の形式についても、生産効率および板紙の強度を損なわない範囲であれば特に限定されるものではなく、通常の抄紙機に使用されている熱風乾燥方式、多筒式シリンダー乾燥方式等、公知の乾燥装置が使用でき、乾燥装置の設置数についても1台でもよく、プレドライヤー、アフタードライヤー等を2台以上設置してもよい。また、乾燥条件についても特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。
【0030】
また、塗工層を設ける場合、抄紙した後に、表面紙力剤、表面サイズ剤、撥水剤等の表面処理薬品を含む塗工液を塗工する。塗工液を塗布する方法は特に限定はなく、ツーロールサイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー、スプレー等の公知の装置を適宜用いることができる。カレンダーは、バイパスしてもよく、通常の操業範囲内で処理してもよい。
【実施例0031】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で得られた板紙は、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
(坪量)
JIS P 8124を参考に測定した。
(密度)
JIS P 8118及びJIS P 8124を参考に坪量と厚さから求めた。
【0032】
(比破裂強さ)
JIS P 8131を参考に破裂強さを測定し、これを坪量で除して比破裂強さを算出した。
<マクベス濃度>
作製した板紙の表層に、フレキソ印刷機(アイジーティーテスティングシステム株式会社製、印刷適正試験機F1)を使用して、マゼンタのベタ印字(大きさ:縦2cm×横3cm)を行った。1日後にマクベス濃度計(Gretag Macbeth RD-19)を用いて印字後のマクベス濃度を測定した。
本条件においては、1.1以上が好ましい印字後のマクベス濃度である。
<光沢度>
JIS Z8741に準じて、上記のフレキソ印刷後のマゼンタベタ部板紙表層の光沢度(光入射角75度)を光沢度計(村上色彩技術研究所製、True GLOSS GM-26PRO)を用いて印字後の光沢度を測定した。
本条件においては、12%以上が好ましい印字後の光沢度である。
【0033】
・実施例、比較例
各層に使用したパルプを表1に示す。なお、パルプの機械的処理は、表層はダブルコニファイナー、中層および裏層はダブルディスクリファイナーを使用した。ダブルコニファイナーおよびダブルディスクリファイナー出口における濾水度(CSF)を、機械的処理直後の濾水度(CSF)として表1に示す。
各層において、内添紙力増強剤(PAM)と内添サイズ剤(ロジン系)を、対パルプで表1に示す量で加えて紙料とした。
各層の紙料を、裏層(35質量%)、中層を2層(裏中25質量%、表中20質量%)、表層(20質量%)の順に、全層で合計230g/mとなるように多層抄き板紙抄紙機を用いて抄き合わせ、表層、中層(2層)、裏層のJ/W比をいずれも90%とし、ワイヤーパートにおいては裏層抄造時にシェーキング装置を作動させて、板紙を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
本発明である実施例1~9で得られた板紙は、針葉樹クラフトパルプ(NUKP)や古紙パルプを多く含む比較例1、2、4、5で得られた板紙と、同等以上の強度と印刷適性を備えていた。
実施例1、2と実施例8、9より、内添紙力増強剤を多く含む場合に、広葉樹クラフトパルプ(LUKP)を多く含む板紙は、針葉樹クラフトパルプ(NUKP)を多く含む板紙よりも破裂強さに優れていた。また、裏層がLUKP100%である実施例3の板紙は、LUKP80%である実施例4の板紙よりも破裂強さに優れていた。
比較例3の板紙は、強度は同等以上であったが、印字後の光沢度(75°)の値が低く、印刷適性に劣っていた。
比較例4は古紙パルプを高配合した一般的な板紙、比較例5は破裂強さ向上のために内添紙力剤量を増やした板紙である。古紙パルプを多く含む比較例4、5の板紙は、破裂強さに劣り、内添紙力剤量を増やしても、本発明の板紙には及ばなかった。