(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060689
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】液体収容容器、および、液体収容容器セット
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B41J2/175 115
B41J2/175 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168103
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 巧
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大屋 瞬
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA26
2C056FA10
2C056KC02
2C056KC04
2C056KC05
2C056KC06
2C056KC10
(57)【要約】
【課題】液体収容部に収容された液体の劣化を抑制しつつ、アダプターに液体が付着した場合に利用者が液体に容易に気付くことができる技術を提供する。
【解決手段】液体収容容器は、内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、アダプター外殻と、アダプター外殻に形成された、前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上である第2種色で構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置の容器装着部に着脱可能に装着される液体収容容器であって、
内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、
アダプター外殻と、前記アダプター外殻に形成された、前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、
前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、
前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上である第2種色で構成されている、液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器であって、
前記アダプター外殻の明度は、前記収容部外殻の明度よりも高い、液体収容容器。
【請求項3】
請求項1に記載の液体収容容器であって、
前記収容部外殻と前記アダプター外殻とによって、前記液体収容容器の本体外殻を構成し、
前記本体外殻は、前記容器装着部に前記液体収容容器が挿入される挿入方向における先端側に位置する前壁と、前記前壁とは反対側に位置する後壁と、を有し、
前記後壁には、前記液体収容部に収容される前記液体の色を識別する色識別情報が形成されている、液体収容容器。
【請求項4】
請求項3に記載の液体収容容器であって、
前記色識別情報は、前記液体収容部に収容される前記液体の色で着色された色表示部を含む、液体収容容器。
【請求項5】
請求項3に記載の液体収容容器であって、
前記色識別情報は、前記液体収容部に収容される前記液体の色を表す文字部を含む、液体収容容器。
【請求項6】
請求項1に記載の液体収容容器であって、
前記アダプターは、さらに、前記液体収容容器を前記容器装着部に装着する装着過程時と前記液体収容容器の前記容器装着部への装着完了状態時との少なくとも一方の時に、前記容器装着部の装着部要素と協働するアダプター要素を有する、液体収容容器。
【請求項7】
請求項6に記載の液体収容容器であって、
前記アダプター外殻は、
前記挿入開口部が形成されたアダプター底壁と、
前記アダプター底壁と交差し、前記液体収容容器を前記容器装着部に挿入する挿入方向に沿って延びるアダプター側壁と、を有し、
前記アダプター要素は、前記アダプター側壁において前記挿入方向に沿って延びて形成され、前記容器装着部によって前記挿入方向に案内されるアダプター案内部を有する、液体収容容器。
【請求項8】
請求項6に記載の液体収容容器であって、
前記アダプター外殻は、前記挿入開口部が形成されたアダプター底壁を有し、
前記液体収容容器は、前記液体収容部の内部と連通し、前記液体導入部に接続される液体供給部を有し、
前記アダプター要素は、前記アダプター底壁に形成された凹形状の供給部位置決め部であって、前記容器装着部の装置側位置決め部を受け入れて、前記液体供給部の位置決めを行う供給部位置決め部を有する、液体収容容器。
【請求項9】
請求項6に記載の液体収容容器であって、
前記アダプター要素は、前記アダプターに取り付けられた回路基板であって、前記装着完了状態時に前記容器装着部の装置側端子と接触するアダプター端子を有する回路基板を有する、液体収容容器。
【請求項10】
複数の液体収容容器によって構成される液体収容容器セットであって、
前記複数の液体収容容器はそれぞれ、印刷装置の容器装着部に着脱可能に装着され、
前記複数の液体収容容器はそれぞれ、
内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、
アダプター外殻と、前記アダプター外殻に形成された前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、
前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、
前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上ある第2種色で構成されており、
前記第1種色は、前記複数の液体収容容器のそれぞれに収容される前記液体の色に関わらず、前記複数の液体収容容器に対して同じ色である、液体収容容器セット。
【請求項11】
請求項10に記載の液体収容容器セットであって、
前記第2種色は、前記複数の液体収容容器のそれぞれに収容される前記液体の色に関わらず、前記複数の液体収容容器に対して同じ色である、液体収容容器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体収容容器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を収容するための液体収容部と、アダプターとを有する液体収容容器が知られている(特許文献1)。アダプターは、印刷装置の液体導入部が挿入される挿入開口部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、液体収容部に収容された液体が、紫外線や可視光線などの光によって劣化する恐れがあった。一方で、液体収容部の液体が外部に漏れてアダプターに付着した場合、利用者や他の物体が液体で汚れたり、挿入開口部に液体導入部を円滑に挿入できなかったりする不具合が生じ得る。よって、アダプターに液体が付着した場合には、液体を迅速に拭き取るために、利用者が液体の付着に気付く必要がある。よって、液体収容部に収容された液体の劣化を抑制しつつ、アダプターに液体が付着した場合に利用者が液体に容易に気付くことができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1形態によれば、印刷装置の容器装着部に着脱可能に装着される液体収容容器が提供される。この液体収容容器は、内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、アダプター外殻と、前記アダプター外殻に形成された、前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上である第2種色で構成されている。
【0006】
本開示の第2形態によれば、複数の液体収容容器によって構成される液体収容容器セットが提供される。前記複数の液体収容容器はそれぞれ、印刷装置の容器装着部に着脱可能に装着される。前記複数の液体収容容器はそれぞれ、内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、アダプター外殻と、前記アダプター外殻に形成された前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上ある第2種色で構成されており、前記第1種色は、前記複数の液体収容容器のそれぞれに収容される前記液体の色に関わらず、前記複数の液体収容容器に対して同じ色である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態としての印刷システムの構成を示す斜視図。
【
図6】液体収容容器の容器装着部への装着完了状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A-1.印刷システムの構成:
図1は、本開示の実施形態としての印刷システム1の構成を示す斜視図である。
図1には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向とよぶ。これ以降に示す図及び説明についても同様である。
【0009】
印刷システム1は、印刷装置10と、印刷装置10に液体であるインクを供給する液体収容容器4とを備える。
【0010】
本実施形態の印刷装置10は、液体としてのインクを吐出ヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。この印刷装置10は、ポスター等の大判の用紙に印刷を行う大型のプリンターである。印刷装置10は、容器装着部6と、制御部31と、キャリッジ20と、吐出ヘッド22と、駆動機構30とを備える。また、印刷装置10は、印刷装置10の動作を利用者が操作するための操作ボタン15を備える。
【0011】
容器装着部6は、+Y方向側に位置する第1装置壁67を有する。第1装置壁67は、液体収容容器4の収容室61への出入口である挿抜開口部674を有する。この挿抜開口部674を介して液体収容容器4が容器装着部6の収容室61に収容されたり、収容室61から液体収容容器4が取り外されたりする。容器装着部6には、複数の液体収容容器4がそれぞれ着脱可能に装着される。本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のインクに対応して4種類の液体収容容器4が1つずつ、すなわち合計4つの液体収容容器4が容器装着部6に装着される。ブラックのインクを収容する液体収容容器4を液体収容容器4Kとも呼び、イエローのインクを収容する液体収容容器4を液体収容容器4Yとも呼び、マゼンタのインクを収容する液体収容容器4を液体収容容器4Mとも呼び、シアンのインクを収容する液体収容容器4を液体収容容器4Cとも呼ぶ。本実施形態において、液体収容容器4Kは、液体収容容器4C,4M,4Yよりも多くの液体を収容可能に構成されている。よって、液体収容容器4Kを第1種液体収容容器4Aとも呼び、液体収容容器4C,4M,4Yを第2種液体収容容器4Bとも呼ぶ。また、複数の液体収容容器4K,4C,4M,4Yを液体収容容器セット4Sとも呼ぶ。
【0012】
印刷装置10は、+Y方向側の前面に交換用カバー13を有する。交換用カバー13は開閉可能に構成されている。交換用カバー13を開くことで、容器装着部6の開口が現れて、液体収容容器4の着脱が可能となる。容器装着部6に液体収容容器4が装着されると、液体流通管としてのチューブ24を介してキャリッジ20に設けられた吐出ヘッド22にインクが供給可能となる。本実施形態では、水頭差を利用して液体収容容器4から吐出ヘッド22にインクが供給される。具体的には、容器装着部6内のインクの液面と吐出ヘッド22との水頭差によってインクが吐出ヘッド22に供給される。なお、他の実施形態では、印刷装置10の図示しないポンプ機構によって、液体収容容器4内のインクを吸引することで、インクが吐出ヘッド22に供給されてもよい。なお、チューブ24は、インクの種類毎に設けられている。
【0013】
吐出ヘッド22には、インクの種類毎にノズルが設けられている。吐出ヘッド22は、ノズルから印刷用紙2に向かってインクを吐出して文字や画像等のデータを印刷する。なお、本帆実施形態では、印刷装置10は、容器装着部6がキャリッジ20の動きとは連動しない、いわゆる「オフキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターである。キャリッジ20に容器装着部6が設けられ、キャリッジ20と共に容器装着部6が移動する、いわゆる「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターにも本開示の技術は適用できる。
【0014】
制御部31は、印刷装置10の各部の制御や、液体収容容器4との信号の授受を行う。キャリッジ20は、吐出ヘッド22を印刷用紙2に対して相対的に移動させる。
【0015】
駆動機構30は、制御部31からの制御信号に基づいてキャリッジ20を往復動させる。駆動機構30は、タイミングベルト32と、駆動モーター34とを備える。タイミングベルト32を介して駆動モーター34の動力をキャリッジ20に伝達することによって、キャリッジ20がX方向に沿った方向である主走査方向に往復移動する。また、印刷装置10は、印刷用紙2を+Y方向である副走査方向に移動させるための搬送機構を備える。印刷が行なわれる際には、搬送機構によって印刷用紙2が副走査方向に移動し、前面カバー11上に印刷完了後の印刷用紙2が出力される。
【0016】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷を実行させるためのメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、吐出ヘッド22の底面側でノズルが形成されている面に押し付けられて、ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ部材8や、吐出ヘッド22のノズル面に押し付けるためにキャップ部材8を昇降させる図示しない昇降機構や、キャップ部材8が吐出ヘッド22のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する図示しない吸引ポンプなどから構成されている。
【0017】
本実施形態では、印刷システム1の使用状態において、印刷用紙2を搬送する副走査方向に沿った軸をY軸とし、重力方向に沿った軸をZ軸とし、キャリッジ20の移動方向に沿った軸をX軸とする。ここで、「印刷システム1の使用状態」とは、水平な面に印刷システム1が設置された状態をいう。また、本実施形態では、副走査方向を+Y方向、その逆方向を-Y方向とし、重力方向を-Z方向、反重力方向を+Z方向とする。X方向とY方向は水平方向に沿った方向である。また、印刷システム1を前面側から見たときに、右側から左側に向かう方向を+X方向とし、その逆方向を-X方向とする。また本実施形態では、装着のために容器装着部6に液体収容容器4が挿入される挿入方向D1が-Y方向であり、液体収容容器4が容器装着部6から取り外される取り外し方向D4が+Y方向である。よって、容器装着部6のうち、-Y方向側を奥側とも呼び、+Y方向側を手前側とも呼ぶ。また、本実施形態では、複数の液体収容容器4の配列方向がX方向となる。
【0018】
A-2.容器装着部の詳細構成:
図2は、容器装着部6の第1斜視図である。
図3は、容器装着部6の第2斜視図である。
図2では、複数の液体収容容器4が挿入または装着されている容器装着部6を示している。
図3は、
図2の状態から液体収容容器4を省略した図である。
図2において、液体収容容器4K,4M,4Cは容器装着部6に対して装着された装着完了状態である。また、
図2において、液体収容容器4Yは容器装着部6に対して挿入された挿入完了状態である。装着完了状態とは、液体収容容器4の後述するアダプター端子が容器装着部6の後述する装置側端子に接触し、液体収容容器4の液体供給部に容器装着部6の後述する液体導入部が接続された状態である。挿入完了状態とは、液体収容容器4が容器装着部6に水平方向である挿入方向D1に挿入された状態である。挿入完了状態では、液体収容容器4の後述するアダプター端子が容器装着部6の後述する装置側端子に接触しているが、液体収容容器4の液体供給部が容器装着部6の液体導入部に接続していない。挿入完了状態から、液体収容容器4のうち挿入方向D1の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向D2に回転移動させることで装着完了状態となる。以上のように、液体収容容器4は、容器装着部6に水平方向である挿入方向D1に挿入した後に、挿入方向D1の手前側部分を回転装着方向D2に移動させることで、容器装着部6に装着される。
【0019】
容器装着部6について、X方向を幅方向、Y方向を奥行方向、Z方向を高さ方向とも呼ぶ。以下において、特に状態についての記載がない場合には、挿入完了状態のときの容器装着部6を前提に各要素について説明する。容器装着部6において、挿入完了状態は、液体収容容器4や、液体収容容器4のアダプターが装着されていない初期状態と同じ状態である。
【0020】
図3に示すように、容器装着部6は、液体収容容器4が収容される収容室61を形成する。収容室61は、略直方体形状である。収容室61は、各液体収容容器4C,4M,4Y,4Kを収容するスロットを有する。各スロットは、概ね各液体収容容器4C,4M,4Y,4Kの外観形状に対応している。
【0021】
図3に示すように、容器装着部6は、収容室61を形成する6つの装置壁62,63,64,65,66,67を有する。本開示において「壁」とは、単一の壁に加え、複数の壁によって構成された壁を含む概念である。第1装置壁67は、液体収容容器4を収容室61に挿入したり取り外したりする際に通過させる挿抜開口部674を形成する。第2装置壁62は、収容室61の-Y方向側の壁を形成する。第2装置壁62は、Y方向において第1装置壁67と対向する。第2装置壁62は、印刷装置10の使用状態において、概ね垂直な壁である。
【0022】
装置上壁63は、収容室61の+Z方向側の壁を形成する。装置底壁64は、Z方向において装置上壁63と対向し、収容室61の-Z方向側の壁を形成する。装置底壁64は、支持部材610によって形成されている。装置底壁64は複数の第1装置開口部614を有する。本実施形態では、第1装置開口部614は、装着される液体収容容器4の数に応じて4つ形成されている。装置上壁63および装置底壁64は、第2装置壁62と第1装置壁67と交差する。本開示において、「交わる」や「交差する」とは、(i)2つの要素が相互に交差し実際に交わる状態、(ii)一方の要素を延ばした場合に他方の要素に交わる状態、及び、(iii)相互の要素をそれぞれ延ばした場合に互いの要素が交わる状態、のいずれかの状態であることを意味する。
【0023】
第1装置側壁65は、収容室61の+X方向側の壁を形成する。第2装置側壁66は、X方向において第1装置側壁65と対向し、収容室61の-X方向側の壁を形成する。第1装置側壁65および第2装置側壁66は、第2装置壁62と第1装置壁67と装置上壁63と装置底壁64と交差する。
【0024】
図3に示すように、容器装着部6は、さらに、装置側端子部70と、装置案内部602と、支持部材610と、液体導入部642と、装置側位置決め部644と、固定形成体677と装置側識別部材630とを有する。装置側端子部70、装置案内部602、液体導入部642、装置側位置決め部644、固定形成体677、装置側識別部材630は、液体収容容器4と協働する装着部要素を構成する。
【0025】
支持部材610は、装着される液体収容容器4の数に応じて複数設けられている。本実施形態では、支持部材610は4つ設けられている。収容室61の重力方向側の装置底壁64を形成する。支持部材610は、液体収容容器4を重力方向側である-Z方向側から支持する。支持部材610は、Y方向に沿って延びる部材である。支持部材610は、凹形状である。支持部材610は、装置底壁64を形成する主壁613と、第1支持側壁611と、第2支持側壁612とを有する。支持部材610は、容器装着部6のうちで挿入方向D1の奥側かつ重力方向側に位置する回転支点698を支点として、重力方向の成分を有する回転装着方向D2と、反重力方向の成分を有する解除方向D3に回転移動できる。解除方向D3は、回転装着方向D2とは反対の方向である。
【0026】
主壁613は、重力方向側に位置する凹形状の底部を形成する。主壁613には、第1装置開口部614が形成されている。第1装置開口部614と第2装置開口部626とはそれぞれ、主壁613の厚み方向に主壁613を貫通する。
【0027】
図3に示すように、第1支持側壁611は、主壁613の+X方向側端部から反重力方向である+Z方向に立ち上がる。第2支持側壁612は、主壁613の-X軸方向側端部から+Z方向に立ち上がる。第1支持側壁611と第2支持側壁612とは、X方向に対向する。
【0028】
装置案内部602は、液体収容容器4または液体収容容器4のアダプターを挿入方向D1および取り外し方向D4に案内する。装置案内部602は、支持部材610ごとに設けられている。装置案内部602は、第1支持側壁611と第2支持側壁612とのそれぞれに設けられている。装置案内部602は、第1支持側壁611と第2支持側壁612に設けられた突起である。この突起は、挿入方向D1に沿って間隔を開けて複数配置されている。
【0029】
図3に示すように、液体導入部642は、液体収容容器4の液体を受け入れる。液体導入部642は中心軸CA1を有する。本実施形態では、中心軸CA1は、Z方向に対して+Y方向に4°傾いている。挿入完了状態では、液体導入部642は、収容室61内に位置することなく、収容室61よりも-Z方向側に位置する。つまり、液体導入部642は、支持部材610に対して収容室61を挟んで反対側に位置する。液体導入部642の先端側は、回転支点698を中心に支持部材610を回転装着方向D2に回転させることで、第1装置開口部614が押し下がることで収容室61内に配置される。
【0030】
装置側位置決め部644は、液体収容容器4の後述する液体収容容器位置決め部に受け入れられることで、液体導入部642に対する液体収容容器4の後述するアダプターの動きを規制する。挿入完了状態では、装置側位置決め部644は、収容室61内に位置することなく、収容室61よりも-Z方向側に位置する。つまり、装置側位置決め部644は、支持部材610に対して収容室61を挟んで反対側に位置する。装置側位置決め部644の先端側は、回転支点698を中心に支持部材610を回転装着方向D2に回転させることで、第1装置開口部614が押し下がることで、収容室61内に配置される。
【0031】
装置側端子部70は、液体収容容器4の液体収容容器端子と接触する複数の装置側端子721を有する。装置側端子部70は、支持部材610のうち挿入方向D1における奥側である-Y方向側に設けられている。
【0032】
固定形成体677は、支持部材610よりも+Y方向側に形成されている。また、固定形成体677は、挿抜開口部674よりも-Z方向側に位置する。固定形成体677には、収容室61の各スロットに対応して後述する装置固定部が4つ配置されている。装着固定部は、突起であり、液体収容容器4のアダプターと係合することで液体収容容器4の動きを固定して装着状態を維持する。
図3に示すように、固定形成体677は、各装着固定部に応じて、装着固定部を変位させて液体収容容器4のアダプターとの係合を解除する解除部666を有する。解除部666は、板状部材であり装置固定部と連結されている。解除部666が重力方向側に押し下げられることで、装置固定部が解除方向に変位する。
【0033】
装置側識別部材630は、装置側端子部70よりも+Y方向側に形成された複数のリブである。装置側識別部材630は、容器装着部6のうちで各液体収容容器4C,4M,4Y,4Kをそれぞれ収容するスロットごとに設けられ、スロットごとにリブの数と位置によって定まるパターン形状が異なる。
【0034】
A-3.液体収容容器の詳細構成:
図4は、第1種液体収容容器4Aの分解斜視図である。
図5は、第1種液体収容容器4Aの斜視図である。第1種液体収容容器4Aと、
図1に示す第2種液体収容容器4Bとの違いは、液体収容領域450の容積である。具体的には、第1種液体収容容器4Aの後述する液体収容部401の幅が、第2種液体収容容器4Bの液体収容部401の幅よりも大きいことで、液体収容領域450の容積が相違する。アダプター402などのその他の構成については、第1種液体収容容器4Aと第2種液体収容容器4Bとにおいて同一であるため、以下では第1種液体収容容器4Aを用いて液体収容容器4の詳細構成を説明する。なお、以降では第1種液体収容容器4Aを単に液体収容容器4とも呼ぶ。液体収容容器4を示す図について、X方向、Y方向、Z方向は、液体収容容器4の容器装着部6への挿入が完了した状態である挿入完了状態のときを基準としている。
【0035】
図5に示すように、液体収容容器4の外形は略直方体形状である。液体収容容器4において、容器装着部6への挿入方向である-Y方向に沿った方向が長手方向であり、X方向が幅方向としての短手方向であり、Z方向が高さ方向である。液体収容容器4において、長手方向の寸法が最も大きく、短手方向の寸法が最も小さい。
【0036】
液体収容容器4は、液体収容容器本体41と、液体収容容器本体41に取り付けられた回路基板50とを備える。本実施形態では、液体収容容器本体41は、
図4に示すように2つの部材によって構成されている。詳細には、液体収容容器本体41は、液体収容部401と、液体収容部401に嵌合によって取り付けられるアダプター402とを備える。
【0037】
液体収容部401とアダプター402とはそれぞれ、ポリプロピレンなどの合成樹脂を例えば射出成形することによって成型される。液体収容部401とアダプター402とは同じ材料によって形成されていてもよいし、異なる材料によって形成されていてもよい。
【0038】
図4に示すように、液体収容部401は、内部に液体を収容するための収容部外殻408を有する。収容部外殻408は、液体を収容する液体収容領域450を内部に形成する。収容部外殻408は、収容部前壁432と、収容部後壁437と、収容部上壁43と、収容部底壁431と、側壁としての収容部第1側壁45と、側壁としての収容部第2側壁46とを有する。各壁432,43,431,45,46,437は、各面432,43,431,45,46,437とも呼ぶ。収容部前壁432と収容部後壁437と収容部上壁43と収容部第1側壁45と収容部第2側壁46とは、液体収容容器4の外表面を形成する。また、収容部底壁431の一部も、液体収容容器4の外表面を形成する。
【0039】
収容部前壁432と収容部後壁437とは、挿入方向に沿ったY方向において対向する。収容部上壁43と収容部底壁431とは、Z方向において対向する。Z方向は、液体供給部442の延びる方向に沿った中心軸CA2と平行である。収容部第1側壁45と収容部第2側壁46とはX方向において対向する。
【0040】
収容部前壁432は、液体収容容器4が容器装着部6に挿入される挿入方向D1側に位置する。つまり、収容部前壁432は、挿入方向D1側である-Y方向側の挿入先端面を形成する。収容部後壁437は取り外し方向である+Y方向側の面を形成する。収容部上壁43は、+Z方向側に位置し、収容部前壁432と収容部後壁437とに交差する。収容部上壁43は、液体収容容器4の上壁を構成する。
図4に示す収容部底壁431は、装着状態において重力方向側である-Z方向側に位置する。収容部底壁431は、収容部前壁432と収容部後壁437とに交差する。
【0041】
収容部第1側壁45は-X方向側に位置し、収容部第2側壁46は+X方向側に位置する。収容部第1側壁45と収容部第2側壁46とはそれぞれ、収容部前壁432と収容部後壁437と収容部上壁43と収容部底壁431とに交差する。収容部第1側壁45と収容部第2側壁46とはそれぞれ挿入方向D1に沿って延びる。
【0042】
図4に示すように、液体収容部401は、さらに、収容部外殻408の収容部底壁431から突出する液体供給部442を有する。液体供給部442は、筒状部材であり、液体収容部401の液体を収容する内部領域である液体収容領域450と連通している。液体供給部442は、装着状態において液体導入部642に接続されて、液体導入部642を介して液体収容領域450の液体を印刷装置10の吐出ヘッド22に供給する。液体供給部442は、液体が外部に導出する開口を形成する先端部としての供給部先端部442aを有する。
【0043】
図4および
図5に示すように、アダプター402は、液体収容容器4の外表面を形成するアダプター外殻409と、アダプター外殻409に形成された挿入開口部446とを有する。
【0044】
アダプター外殻409は、アダプター前壁82と、アダプター後壁87と、アダプター底壁84と、第1アダプター側壁85と、第2アダプター側壁86と、コーナー部89とを備える。アダプター前壁82は、前壁42と同様に、挿入方向である-Y方向側の挿入先端面を形成する。アダプター後壁87は、アダプター前壁82とY方向において対向する。アダプター底壁84は、液体収容容器4の底面である。アダプター底壁84は、アダプター前壁82およびアダプター後壁87と交差する。アダプター底壁84には、上述の挿入開口部446が形成されている。アダプター底壁44側から液体収容容器4を見た場合に、挿入開口部446と液体供給部442とは重なる位置関係にある。本実施形態では、液体供給部442の中心軸CA2が、挿入開口部446を通るように液体供給部442は配置される。
【0045】
第1アダプター側壁85は、アダプター底壁84と交差し、アダプター402の長手方向、つまり液体収容容器4を容器装着部6に挿入する挿入方向に沿って延びる。第1アダプター側壁85は、アダプター底壁84から液体収容部401に向かって立ち上がる板状の壁である。第2アダプター側壁86は、アダプター402の短手方向であるX方向において第1アダプター側壁85と対向する。第2アダプター側壁86は、アダプター底壁84と交差し、アダプター402の長手方向、つまり液体収容容器4を容器装着部6に挿入する挿入方向に沿って延びる。第2アダプター側壁86は、アダプター底壁84から液体収容部401に向かって立ち上がる板状の壁である。
【0046】
アダプター402は、アダプター底壁84を底とする凹形状である。アダプター402のうちアダプター底壁84と対向する側は開口しており、この開口を介して液体供給部442がアダプター402の内側に配置される。アダプター402のうち、液体供給部442が配置される部分を供給部配置部831とも呼ぶ。
【0047】
コーナー部89は、アダプター前壁82とアダプター底壁84とが交差するコーナー部分に設けられている。コーナー部89は、内方に凹んだ凹形状の端子配置部90を有する。回路基板50は、この端子配置部90に取り付けられている。回路基板50は、装着完了状態時に装置側端子721と接触するアダプター端子521を表面に複数有する。
【0048】
図5に示すように、収容部外殻408とアダプター外殻409とによって、液体収容容器4の外表面を形成する本体外殻405を構成する。本体外殻405は、容器装着部6に液体収容容器4が挿入される挿入方向D1における先端側に位置する前壁42と、前壁42とは反対側に位置する後壁47とを有する。前壁42は、収容部前壁432とアダプター前壁82とによって構成されている。また後壁47は、収容部後壁437とアダプター後壁87とによって構成されている。
【0049】
図5に示すように、後壁47には、液体収容部401に収容される液体の色を識別する色識別情報LBが形成されている。色識別情報LBは、本実施形態では、後壁47のうちで収容部後壁437に形成されている。本実施形態において、色識別情報LBは、収容部後壁437に貼り付けられたシール状部材である。色識別情報LBは、液体収容部401に収容される液体の色で着色された色表示部Laと、液体収容部401に収容される液体の色を表す文字部Lbとを有する。ここで、液体収容容器4K,4Y,4M,4Cが有する色識別情報LBをそれぞれ区別する場合には、
図2に示すように、符号「LBK」,「LBY」,「LBM」,「LBC」を用いる。
【0050】
図5に示すように、色表示部Laは、色識別情報LBを構成するシート状部材全体を着色することで構成されている。色表示部Laによって、利用者は液体収容部401に収容された液体の色を容易に認識できる。なお、他の実施形態では、色表示部Laは、シート状部材の一部を着色することで構成してもよい。色識別情報LBKの色表示部Laの色は、ブラックである。色識別情報LBYの色表示部Laの色は、イエローである。色識別情報LBMの色表示部Laの色は、マゼンタである。色識別情報LBCの色表示部Laの色は、シアンである。なお、色表示部Laの色は、液体収容部401に収容された液体の色と同程度であれば同一でなくてもよい。例えば、色表示部Laの色は、液体収容部401に収容された液体の色に対して利用者によって同程度の色であると認識できればよい。色表示部Laの色と、液体収容部401に収容された液体の色とは、CIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色差△E
*
abが3.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。液体収容部401の液体の色は、印刷用紙2に液体としてのインクで印刷を実施した結果に基づいて判定される。詳述すると、液体の色は、液体によって印刷用紙2に描出された画像を測色器で測定した値に基づいて決定される。
【0051】
液体の色の決定方法における印刷条件および測定条件は以下のとおりである。
<印刷条件>
・印刷用紙2は、セイコーエプソン(株)社製の光沢写真用紙。
・X軸に沿った1インチ当たりのドット数である解像度は、720dpi。
・Y軸に沿った1インチ当たりのドット数である解像度は、720dpi。
・単位面積当たりに占めるドットの面積比である印刷Dutyは、50%。
<測定条件>
・測色器は、大塚電子社製の分光光度計のMCPD-9800。
・光源はD-50、2度視野角で測定。
【0052】
測色器のXYZ表色系で表された測定結果を、変換プログラムを用いてL*a*b*表色系の値に変換することでL*a*b*表色系の値が導出される。色表示部Laの色も同じ測色器で同条件で測定することで測定されて、測定結果に基づいてL*a*b*表色系の値が導出される。これにより、導出された液体の色と色表示部Laの色とを比較することで、色差△E*
abが算出される。
【0053】
文字部Lbは、例えば、液体収容部401に収容された液体の色を英語で表した時の頭文字を含む文字によって構成されている。色識別情報LBKの文字部Lbは、黒色の英語であるBLACKの頭文字と末尾の文字とを組み合わせた「BK」という文字を有する。また、色識別情報LBYの文字部Lbは、イエローの英語であるYELLOWの頭文字である「Y」という文字を有する。色識別情報LBMの文字部Lbは、マゼンタの英語であるMAGENTAの頭文字である「M」という文字を有する。色識別情報LBCの文字部Lbは、シアンの英語であるCYANの頭文字である「C」という文字を有する。なお、他の実施形態では、上記文字に代えて、または、加えて、他の文字を有していてもよい。例えば、文字部Lbは、「黒色」や「黄色」や「紅色」や「青色」などの液体の色を表す漢字を含んでいてもよい。文字部Lbによって、利用者は液体収容部401に収容された液体の色をより容易に認識できる。
【0054】
図5に示すように、アダプター402は、さらに、アダプター要素700を有する。アダプター要素700は、液体収容容器4を容器装着部6に挿入して装着する装着過程時と、液体収容容器4の容器装着部6への装着完了状態時との少なくとも一方の時に、容器装着部6の装着部要素と協働する。
【0055】
アダプター要素700は、例えば、容器装着部6と接触したり、係合したり、または、容器装着部6に挿通されたりすることで機械的に協働する。アダプター要素700は、アダプター識別部材430と、アダプター案内部447と、供給部位置決め部448と、アダプター係合部497と、回路基板50とを有する。
【0056】
図5に示すアダプター識別部材430は、アダプター底壁84のうちで前壁42側の端部に設けられている。アダプター識別部材430は、リブによって構成されている。アダプター識別部材430は、リブの数と位置によってパターン形状が定められる。パターン形状は、液体収容容器4の種類、すなわち収容する液体の色に応じて異なる。液体収容容器4の装着過程において、正しい種類の液体収容容器4が対応するスロットに挿入される場合には、アダプター識別部材430は、装置側識別部材630に衝突することなく装置側識別部材630の間を通過できる。
【0057】
アダプター案内部447は、
図5に示すように、挿入方向D1に沿って延びる。
図5には、理解の容易のために、アダプター案内部447にシングルハッチングを付している。アダプター案内部447は、挿入方向D1について、コーナー部89が位置する部分から、挿入開口部446が位置する部分まで挿入方向D1に沿って延びる。アダプター案内部447は、第1アダプター側壁85と第2アダプター側壁86との両方に形成されている。アダプター案内部447は、容器装着部6の装置案内部602によって挿入方向D1に案内される。
【0058】
アダプター案内部447は、段差によって形成されている。つまり、アダプター外殻409の幅について、アダプター底壁84を含む一部分は、一部分よりもアダプター底壁84から離れた部分にある他部分よりも小さい。これにより、アダプター案内部447を形成する段差が形成される。アダプター案内部447は、-Z方向を向く面である。
【0059】
容器装着部6に液体収容容器4が挿入される過程において、装置案内部602の+Z方向側の面とアダプター案内部447が接触することで、液体収容容器4の姿勢を維持した状態で、液体収容容器4の挿入方向D1への動きが案内される。
【0060】
図5に示す供給部位置決め部448は、装着過程時において、装置側位置決め部644を受け入れて、液体供給部442の液体導入部642に対する位置決めを行う。具体的には、装着過程において、供給部位置決め部448は、装置側位置決め部644を受け入れて、回転装着方向D2と交差する方向の供給部位置決め部448の動きを規制することで、液体導入部642に対する液体供給部442の位置決めを行う。供給部位置決め部448は、アダプター底壁84に形成され、アダプター底壁84の外表面から窪んだ凹部である。供給部位置決め部448は、アダプター底壁84のうちで、挿入開口部446とアダプター前壁82が接続された端部との間に位置する。なお、供給部位置決め部448は、凹形状であればよく、アダプター底壁84を貫通する孔であってもよい。
【0061】
図5に示すアダプター係合部497は、アダプター後壁87に設けられている。アダプター係合部497は、アダプター後壁87の外表面から窪んだ凹部である。アダプター係合部497は、アダプター後壁87のうちで、アダプター底壁84と交差する端部近傍に形成されている。アダプター係合部497は、後述する
図6に示すように、装着状態において装着係合部697が入り込むことで、装着係合部697と係合する。この係合によって液体収容容器4の容器装着部6に対する装着状態が維持される。
【0062】
図4に示す回路基板50は、アダプター402に設けられた端子配置部90に配置される。回路基板50は、装着完了状態時において装置側端子721と接触するアダプター端子521を有する。
【0063】
収容部外殻408は、紫外線や可視光線などを含む光を透過しない程度の第1種色で構成されている。上記の光は、自然光と照明などの人工光との少なくともいずれか一方の光を含む。アダプター外殻409は、収容する液体の色との間で色差が閾値以上である第2種色で構成されている。光を透過しない程度とは、JIS K7375:2008で定められた全光線透過率で10%以下である。なお、収容部外殻408の全光線透過率は、10%以下であればよく、5%以下がより好ましい。本実施形態では、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cの収容部外殻408の色は同一であり、黒色である。なお、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cの収容部外殻408は、無彩色であってもよく有彩色であってもよい。また各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cの収容部外殻408の明度L*は、理想的な白色を「100」、理想的な黒色を「0」とした場合に、30以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、5以下であることがより一層好ましい。これにより、収容部外殻408は、光を透過しにくい性質を有する。
【0064】
アダプター外殻409は、液体収容部401が収容する液体の色との間で色差△E*
abが閾値以上である第2種色で構成されている。閾値は、アダプター外殻409に液体収容部401の液体が付着した場合に、利用者が容易に液体の付着に気付く程度の値に設定される。閾値は、例えば、12以上の値に設定されることが好ましく、20以上の値に設定されることがより好ましく、30以上の値に設定されることがより一層好ましい。本実施形態では、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cのアダプター外殻409の色は同一である。またアダプター外殻409の色は、無彩色であってもよいし有彩色であってもよい。本実施形態では、アダプター外殻409の色は、無彩色で白色または灰色である。また、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cのアダプター外殻409の明度L*は、対応する収容部外殻408の明度L*よりも高い。例えば、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cのアダプター外殻409の明度L*は、理想的な白色を「100」、理想的な黒色を「0」とした場合に、70以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましく、95以上であることがより一層好ましい。アダプター外殻409の明度L*が、収容部外殻408の明度L*よりも高いことで、アダプター外殻409の明度L*が、収容部外殻408の明度L*以下の場合よりもインクがアダプター外殻409に付着した場合でも、利用者は、インクの付着に容易に気付くことができる。また、アダプター外殻409の明度L*をより高くすることで、明度L*がある程度以下、例えば40以下であるシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクがアダプター外殻409に付着した場合でも、利用者は、インクの付着により容易に気付くことができる。
【0065】
また、上述のごとく、複数の液体収容容器4K,4Y,4M,4Cによって構成される液体収容容器セット4Sについて、収容部外殻408の第1種色は、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cのそれぞれに収容される液体の色に関わらず、複数の液体収容容器4K,4Y,4M,4Cに対して同じである。これにより、例えば、複数の液体収容容器4K,4Y,4M,4Cの液体収容部401を同一材料によって製造できるので、液体収容部401の製造コストを低減できる。また、液体収容容器セット4Sについて、アダプター外殻409の第2種色は、各液体収容容器4K,4Y,4M,4Cのそれぞれに収容される液体の色に関わらず、複数の液体収容容器4K,4Y,4M,4Cに対して同じである。これにより、例えば、複数の液体収容容器4K,4Y,4M,4Cのアダプター402を同一材料によって製造できるので、アダプター402の製造コストを低減できる。
【0066】
A-4.液体収容容器の容器装着部への装着過程および装着完了状態:
図6は、液体収容容器4の容器装着部6への装着完了状態を示す断面図である。
図6を用いて、液体収容容器4の装着過程および装着完了状態を説明する。液体収容容器4を容器装着部6に装着する際には、まず、液体収容容器4を収容部上壁43が水平となる姿勢で、挿入方向D1に移動させて容器装着部6に挿入する。容器装着部6への挿入が完了した状態では、液体収容容器4は一部を点線で示す状態となり、回路基板50のアダプター端子521と図示しない装置側端子721とが接触する。次に、後壁47側を回転支点698を中心に押し下げることで、回転装着方向D2に液体収容容器4を移動させる。これにより、液体収容容器4が容器装着部6に装着された装着完了状態となる。装着完了状態では、液体収容容器4の液体供給部442から液体導入部642に供給された液体は、容器装着部6の液体貯留部699に貯留される。液体貯留部699は、予め定めた圧力に維持されている。
【0067】
液体導入部642内には、液体導入部642内の流路を開閉する導入部弁機構が配置されている。導入部弁機構は、液体導入部642と液体供給部442とが接続していない状態では閉弁状態となっている。液体供給部442内に液体導入部642が挿入されることで、液体供給部442の弁機構および、導入部弁機構が開弁する。
【0068】
上記実施形態によれば、収容部外殻408が光を透過しない程度の第1種色で構成されていることから、光が収容部外殻408を透過する程度を低くできるので、自然光や照明光などの光によって液体収容部401の液体が劣化する可能性を低減できる。また、アダプター外殻409は、液体収容部401の液体の色との間で色差が閾値以上の第2種色で構成されていることから、液体収容部401の液体がアダプターに付着した場合でも、利用者は付着した液体に容易に気付くことができる。これにより、利用者は、アダプター402に付着した液体を迅速に拭き取ることができる。これにより、利用者や他の物体が液体で汚れる可能性を低減できる。
【0069】
また、特に液体が顔料インクの場合、アダプター402への顔料インクの付着を放置しておくと、水分が蒸発して固化する場合がある。この場合、インクの固化によって、アダプター要素700と装着部要素との協働が阻害される可能性が高くなる。上記実施形態によれば、アダプター要素700に液体が付着した状態を抑制できるので、装置案内部602などの装着部要素と、アダプター要素700とが協働することが阻害される可能性を低減できる。例えば、装着過程において、アダプター案内部447が容器装着部6に案内されることが付着した液体によって阻害される可能性を低減できる。また例えば、装着過程において、供給部位置決め部448と装置側位置決め部644とが協働することが阻害される可能性を低減できる。これにより、供給部位置決め部448による液体供給部442の位置決めが阻害される可能性を低減できる。また例えば、アダプター端子521に液体が付着すること、または、付着した状態が維持されることが抑制できるので、アダプター端子521と装置側端子部70との接触が阻害される可能性を低減できる。
【0070】
また上記実施形態によれば、液体収容容器4の後壁47には、色識別情報LBが形成されている。これにより、利用者は液体収容部401の内部が視認できない場合でも、液体収容部401に収容された液体の色を容易に認識できる。よって、本来装着すべき色とは異なる色を収容する液体収容容器4を容器装着部6に装着することが抑制される。
【0071】
B.他の実施形態:
B-1.他の実施形態1:
上記実施形態では、複数の液体収容容器4K,4C,4M,4Yについて、収容部外殻408の色は同一であり、またアダプター外殻409の色は同一であったが、液体収容容器4K,4C,4M,4Yごとに異なる色であってもよい。
【0072】
B-2.他の実施形態2:
上記各実施形態では、液体収容容器4はインクを収容していたが、他の液体を収容していてもよい。例えば、液体としては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材や、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材などが挙げられる。
【0073】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態(aspect)によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0074】
(1)本開示の第1形態によれば、印刷装置の容器装着部に着脱可能に装着される液体収容容器が提供される。この液体収容容器は、内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、アダプター外殻と、前記アダプター外殻に形成された、前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上である第2種色で構成されている。この形態によれば、収容部外殻が第1種色で構成されていることから、光が収容部外殻を透過する程度を低くできるので、自然光や照明光などの光によって液体収容部の液体が劣化する可能性を低減できる。また、アダプター外殻は第2種色で構成されていることから、液体収容部の液体がアダプターに付着した場合でも、利用者は付着した液体に容易に気付くことができる。
【0075】
(2)上記形態の液体収容容器において、前記アダプター外殻の明度は、前記収容部外殻の明度よりも高くてもよい。この形態によれば、液体収容部の液体がアダプターに付着した場合でも、利用者は付着した液体により容易に気付くことができる。
【0076】
(3)上記形態の液体収容容器において、前記収容部外殻と前記アダプター外殻とによって、前記液体収容容器の本体外殻を構成し、前記本体外殻は、前記容器装着部に前記液体収容容器が挿入される挿入方向における先端側に位置する前壁と、前記前壁とは反対側に位置する後壁と、を有し、前記後壁には、前記液体収容部に収容される前記液体の色を識別する色識別情報が形成されていてもよい。この形態によれば、色識別情報によって利用者は液体収容部に収容された液体の色を容易に認識できる。これにより、本来装着すべき色とは異なる色を収容する液体収容容器を容器装着部に装着することが抑制される。
【0077】
(4)上記形態において、前記色識別情報は、前記液体収容部に収容される前記液体の色で着色された色表示部を含んでいてもよい。この形態によれば、色表示部によって利用者は液体収容部に収容された液体の色をより容易に認識できる。
【0078】
(5)上記形態において、前記色識別情報は、前記液体収容部に収容される前記液体の色を表す文字部を含んでいてもよい。この形態によれば、文字部によって利用者は液体収容部に収容された液体の色をより容易に認識できる。
【0079】
(6)上記形態において、前記アダプターは、さらに、前記液体収容容器を前記容器装着部に装着する装着過程時と前記液体収容容器の前記容器装着部への装着完了状態時との少なくとも一方の時に、前記容器装着部の装着部要素と協働するアダプター要素を有していてもよい。この形態によれば、アダプターに液体が付着した場合でも、利用者は付着した液体に容易に気付くことができる。これにより、アダプターに付着した液体は利用者によって拭き取られるので、装着部要素とアダプター要素とが協働することが阻害される可能性を低減できる。
【0080】
(7)上記形態において、前記アダプター外殻は、前記挿入開口部が形成されたアダプター底壁と、前記アダプター底壁と交差し、前記液体収容容器を前記容器装着部に挿入する挿入方向に沿って延びるアダプター側壁と、を有し、前記アダプター要素は、前記アダプター側壁において前記挿入方向に沿って延びて形成され、前記容器装着部によって前記挿入方向に案内されるアダプター案内部を有していてもよい。この形態によれば、アダプターに付着した液体は利用者によって拭き取られるので、付着した液体によって、アダプター案内部が容器装着部によって案内されることが阻害される可能性を低減できる。
【0081】
(8)上記形態において、前記アダプター外殻は、前記挿入開口部が形成されたアダプター底壁を有し、前記液体収容容器は、前記液体収容部の内部と連通し、前記液体導入部に接続される液体供給部を有し、前記アダプター要素は、前記アダプター底壁に形成された凹形状の供給部位置決め部であって、前記容器装着部の装置側位置決め部を受け入れて、前記液体供給部の位置決めを行う供給部位置決め部を有していてもよい。この形態によれば、アダプターに付着した液体は利用者によって拭き取られるので、付着した液体によって、供給部位置決め部による液体供給部の位置決めが阻害される可能性を低減できる。
【0082】
(9)上記形態において、前記アダプター要素は、前記アダプターに取り付けられた回路基板であって、前記装着完了状態時に前記容器装着部の装置側端子と接触するアダプター端子を有する回路基板を有していてもよい。この形態によれば、アダプターに付着した液体は利用者によって拭き取られるので、付着した液体によって、アダプター端子と装置側端子との接触が阻害される可能性を低減できる。
【0083】
(10)本開示の第2形態によれば、複数の液体収容容器によって構成される液体収容容器セットが提供される。前記複数の液体収容容器はそれぞれ、印刷装置の容器装着部に着脱可能に装着される。前記複数の液体収容容器はそれぞれ、内部に液体を収容するための収容部外殻を有する液体収容部と、アダプター外殻と、前記アダプター外殻に形成された前記容器装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部と、を有するアダプターと、を備え、前記収容部外殻は、光を透過しない程度の第1種色で構成され、前記アダプター外殻は、前記液体の色との間で色差が閾値以上ある第2種色で構成されており、前記第1種色は、前記複数の液体収容容器のそれぞれに収容される前記液体の色に関わらず、前記複数の液体収容容器に対して同じ色である。この形態によれば、液体収容部の製造コストを低減できる。
【0084】
(11)上記形態において、前記第2種色は、前記複数の液体収容容器のそれぞれに収容される前記液体の色に関わらず、前記複数の液体収容容器に対して同じ色であってもよい。この形態によれば、アダプターの製造コストを低減できる。
【0085】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、本開示は、液体収容容器や液体収容容器セットの製造方法、印刷装置と液体収容容器とを備えた印刷システムなどの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…印刷システム、2…印刷用紙、4,4C,4M,4Y,4K…液体収容容器、4A…第1種液体収容容器、4B…第2種液体収容容器、4S…液体収容容器セット、6…容器装着部、8…キャップ部材、10…印刷装置、13…交換用カバー、15…操作ボタン、20…キャリッジ、22…吐出ヘッド、24…チューブ、30…駆動機構、31…制御部、32…タイミングベルト、34…駆動モーター、41…液体収容容器本体、42…前壁、43…収容部上壁、44…収容部底壁、45…収容部第1側壁、46…収容部第2側壁、47…後壁、50…回路基板、61…収容室、62…第2装置壁、63…装置上壁、64…装置底壁、65…第1装置側壁、66…第2装置側壁、67…第1装置壁、70…装置側端子部、82…アダプター前壁、84…アダプター底壁、85…第1アダプター側壁、86…第2アダプター側壁、87…アダプター後壁、89…コーナー部、90…端子配置部、401…液体収容部、402…アダプター、405…本体外殻、408…収容部外殻、409…アダプター外殻、430…アダプター識別部材、431…収容部底壁、432…収容部前壁、437…収容部後壁、442…液体供給部、442a…供給部先端部、446…挿入開口部、447…アダプター案内部、448…供給部位置決め部、450…液体収容領域、497…アダプター係合部、521…アダプター端子、602…装置案内部、602a…第1装置案内部、602b…第2装置案内部、610…支持部材、611…第1支持側壁、612…第2支持側壁、613…主壁、614…第1装置開口部、630…装置側識別部材、642…液体導入部、644…装置側位置決め部、666…解除部、674…挿抜開口部、677…固定形成体、697…装着係合部、698…回転支点、699…液体貯留部、700…アダプター要素、721…装置側端子、831…供給部配置部、CA1…中心軸、CA2…中心軸、D1…挿入方向、D2…回転装着方向、D3…解除方向、D4…取り外し方向、LB,LBC,LBM,LBY,LBK…色識別情報、La…色表示部、Lb…文字部