(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060695
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】果実感増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20240425BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240425BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20240425BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20240425BHJP
【FI】
A23L27/20 E
A23L27/00 C
A23L27/00 Z
A23C9/13
A23L29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168112
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000201733
【氏名又は名称】曽田香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾菜
(72)【発明者】
【氏名】金田 奈穂
【テーマコード(参考)】
4B001
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B001AC21
4B001AC43
4B001BC01
4B001EC01
4B041LC01
4B041LD01
4B041LK05
4B041LK30
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF05
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG12
4B047LG13
4B047LG38
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、飲食品の果実感を増強することができる果実感増強剤を提供することにある。
【解決手段】フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群から選択される1種以上の化合物を有効成分とする果実感増強剤。当該果実感増強剤は、飲食品の風味に悪影響を及ぼすことなく、当該飲食品の果実感を増強することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分とする果実感増強剤。
【請求項2】
フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群より選択される1種以上の化合物を含有する飲食品用香料組成物。
【請求項3】
飲食品用香料組成物が飲食品用果実系香料組成物である、請求項2に記載の飲食品用香料組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の果実感増強剤、請求項2に記載の飲食品用香料組成物又は請求項3に記載の飲食品用香料組成物を含有する飲食品。
【請求項5】
請求項1に記載の果実感増強剤、請求項2に記載の飲食品用香料組成物又は請求項3に記載の飲食品用香料組成物を添加することにより、有効成分である化合物を1ppq~100ppt含有する飲食品。
【請求項6】
請求項1に記載の果実感増強剤、請求項2に記載の飲食品用香料組成物又は請求項3に記載の飲食品用香料組成物を添加することによる、飲食品の果実感増強方法。
【請求項7】
請求項1に記載の果実感増強剤、請求項2に記載の飲食品用香料組成物又は請求項3に記載の飲食品用香料組成物を添加することにより、有効成分である化合物を1ppq~100ppt添加する、飲食品の果実感増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果実感増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
果実系香料は日常生活における身近な商材に幅広く使用されている。例えば、食品香料としてはジュースや菓子などに使用され、果実風味を付与又は増強する上で非常に重要である。特に飲食品に対する消費者のニーズは年々多様化しており、果実の風味を有する飲食品については、果実の本物らしさ、搾りたて感、摘みたて感といった要素が求められる傾向にあるが、このような効果をもたらす香料化合物はあまり知られていない。
【0003】
香料化合物として含硫化合物が使用されることは公知であるが、一般に含硫化合物は閾値が低く、少なくとも他の香料化合物が使用される濃度帯では、不快で独特な香気を有することが多いため、その利用範囲は広くない。
【0004】
含硫化合物の中でも、チオール類は特に閾値が低く、低濃度でも独特な香気が強いため、成分分析で検出されても香気への寄与が想定できないことも多い(非特許文献1)。また、チオール類は焙煎コーヒーの香気やその他調理香など加熱生成香気の一種としては想定が比較的容易であるが、その他の食品においてはビールの劣化臭などの好ましくない香気として認識されることの方が多い(非特許文献2)。
【0005】
チオール類の中でも、フェニルメタンチオールは香料化合物として公知であり、その香調は硫黄臭、焦げ臭として知られている(非特許文献3)。しかし、果実感を増強する知見は見出されておらず、果実系香料用の香料化合物としての活用も知られていない。
【0006】
同じく香料化合物として公知である2-フェニルエタン-1-チオールは、牛肉等の畜肉の香気成分との報告があるが、果実からはレッドポメロからしか同定されていない(非特許文献4)。しかし、その香調はゴム様、キノコ様として知られており(非特許文献3)、果実系の香気からは程遠いことから、果実感を増強する知見は見出されておらず、果実系香料用の香料化合物としての活用も知られていない。
【0007】
また、3-フェニルプロパン-1-チオールの香調はゴム様、キノコ様との報告があるが(非特許文献3)、天然物から同定された報告はなく、食品香料としての添加効果を検証した文献もない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Identification, Synthesis, and Characterization of Novel Sulfur-Containing Volatile Compounds from the In-Depth Analysis of Lisbon Lemon Peels (Citrus limon L. Burm. f. cv. Lisbon)”,Journal of Agricultural and Food Chemistry,(米),2015,Vol.63,No.7,p.1915-1931
【非特許文献2】日本食品科学工学会誌,「飲料フレーバーに関する食品科学的研究」,2011年,第58巻,第3号,p.81-87
【非特許文献3】“Structure/Odor Activity Studies on Aromatic Mercaptans and Their Cyclohexane Analogues Synthesized by Changing the Structural Motifs of Naturally Occurring Phenyl Alkanethiols”,Journal of Agricultural and Food Chemistry,(米),2019,Vol.67,No.9,p.2598-2606
【非特許文献4】“Screening for Novel Mercaptans in 26 Fruits and 20 Wines Using a Thiol-Selective Isolation Procedure in Combination with Three Detection Methods”,Journal of Agricultural and Food Chemistry,(米),2019,Vol.67,No.16,p.4553-4559
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、飲食品の果実感を増強することができる果実感増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鋭意研究の結果、本発明者らは、独自の分析技術により、化合物自体の香気特性から果実系香料の素材としては全く着目されていなかったフェニルメタンチオールについて果実感増強効果を見出し、さらに類似の化合物である2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールについても同効果を見出した。これらのチオール類について、香料組成物や飲食品に対する添加試験を繰り返すことにより本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分とする果実感増強剤。
[2]フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群より選択される1種以上の化合物を含有する飲食品用香料組成物。
[3]飲食品用香料組成物が飲食品用果実系香料組成物である、[2]に記載の飲食品用香料組成物。
[4][1]に記載の果実感増強剤、[2]に記載の飲食品用香料組成物又は[3]に記載の飲食品用香料組成物を含有する飲食品。
[5][1]に記載の果実感増強剤、[2]に記載の飲食品用香料組成物又は[3]に記載の飲食品用香料組成物を添加することにより、有効成分である化合物を1ppq~100ppt含有する飲食品。
[6][1]に記載の果実感増強剤、[2]に記載の飲食品用香料組成物又は[3]に記載の飲食品用香料組成物を添加することによる、飲食品の果実感増強方法。
[7][1]に記載の果実感増強剤、[2]に記載の飲食品用香料組成物又は[3]に記載の飲食品用香料組成物を添加することにより、有効成分である化合物を1ppq~100ppt添加する、飲食品の果実感増強方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の果実感増強剤は、飲食品の風味に悪影響を及ぼすことなく、当該飲食品の果実感を増強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体例を挙げながら詳細に説明する。なお、本発明においてppq、ppt、ppb、ppm及び%とは、特に記載の無い限り質量比のことを示す。
【0014】
本発明における果実とは、リンゴ、ナシ、カリン、モモ、ウメ、アンズ、サクランボ、アメリカンチェリー、スモモ、アーモンド、クリ、クルミ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー、キウイフルーツ、カキ、カシス、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、ユズ、スダチ、カボス、バナナ、パイナップル、パパイア、マンゴー、ココナッツ、アセロラ、グアバ、ライチ、マンゴスチン、パッションフルーツ、ビワ、オリーブ、イチゴ、メロン、スイカなどを指すが、これらに限定はされない。
【0015】
本発明における果実感とは、本物の果実が有する果肉感、果皮感、果汁感、フレッシュ感、渋さ、グリーン感、完熟感、繊維感などの要素を総合的に捉えた本物の果実風味らしさ(以降、本物感と記載することもある)のことを指す。
【0016】
本発明の果実感増強剤は、フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群から選択される1種以上の化合物を有効成分として用い、これらのチオール類が有する特有の香気の閾値以下で果実感増強効果を示すため、果実風味を有する飲食品に添加することにより、当該飲食品の風味に悪影響を及ぼすことなく、当該飲食品の果実感を増強することができ、果実感が増強された飲食品を得ることが可能となる。
【0017】
本発明の果実感増強剤に用いられる上記チオール類は、市販品を購入すること又は公知の方法で合成することにより調達可能である。
【0018】
本発明の飲食品用香料組成物は、フェニルメタンチオール、2-フェニルエタン-1-チオール及び3-フェニルプロパン-1-チオールからなる群から選択される1種以上の化合物を含有し、飲食品に添加することで、当該飲食品に任意の風味を付与できる。この飲食品用香料組成物の添加対象となる飲食品が果実風味を有する飲食品である場合、当該飲食品の果実感を増強することができ、果実感が増強された飲食品を得ることができる。また、飲食品用香料組成物が果実系香料組成物であれば、上記チオール類を含有しない果実系香料組成物を飲食品に添加する場合と比較して、添加対象の飲食品に、より果実感に優れた果実系風味を付与することが可能となる。
【0019】
本発明の飲食品用香料組成物の形態として、水溶性香料、油溶性香料、乳化香料、粉末香料などを例示できるが、特に限定はされない。
【0020】
本発明の飲食品用香料組成物は、上記チオール類の他、任意の化合物又は成分を含有し得る。そのような化合物又は成分としては、香料化合物や精油類などの各種香料素材、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示できるが、これらに限定はされない。なお、各種香料素材としては、「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料」(平成12年1月14日発行)、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)及び「合成香料 化学と商品知識」(合成香料編集委員会編集、化学工業日報社、2016年12月20日増補新版発行)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。また、溶剤は香料組成物の調製に一般的に用いる溶剤であれば何でもよく、特に限定はされない。
【0021】
本発明の果実感増強剤又は飲食品用香料組成物の添加対象となる飲食品としては、その飲食品自体が果実風味を有するものであれば何でもよく、この果実風味は果汁や果肉などの本物の果実由来のものに限らず、香料組成物などで人工的に作られた果実風味であってもよい。
【0022】
本発明の果実感増強剤又は飲食品用香料組成物が適用される飲食品の具体例としては、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、スポーツドリンク、機能性飲料、乳性飲料、豆乳類、ココア飲料、栄養飲料、ゼリー飲料、酢飲料などの清涼飲料;乳飲料;乳酸菌飲料;チューハイ、カクテル、発泡酒、果実酒などのアルコール飲料;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類及びそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、ガム、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類及びそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、ジャム、マーマレード、スープ、缶詰、冷凍食品、各種インスタント食品などの一般食品類;歯磨き、口内清涼剤、うがい剤などの口腔衛生製品;シロップ剤などの医薬品を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0023】
本発明の果実感増強剤の飲食品に対する好適な添加量は、添加対象の飲食品に応じて、所望の効果が得られる範囲で適宜調整できる。一例として、有効成分であるチオール類の添加量が飲食品に対し、下限値を1ppq、10ppq、100ppq、1ppt、10pptのいずれか、上限値を100ppt、10ppt、1ppt、100ppq、10ppqのいずれかとして、これら下限値及び上限値の任意の組み合わせの範囲を好適な添加量の範囲として挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0024】
好適な添加量のより具体的な例としては、フェニルメタンチオールであれば、1ppq~100ppt含まれるのが好ましく、10ppq~10ppt含まれるのがより好ましく、1ppt~10ppt含まれるのがさらに好ましく、2-フェニルエタン-1-チオールであれば、1ppq~100ppt含まれるのが好ましく、1ppq~10ppt含まれるのがより好ましく、100ppq~10ppt含まれるのがさらに好ましく、3-フェニルプロパン-1-チオールであれば、1ppq~100ppt含まれるのが好ましく、10ppq~100ppt含まれるのがより好ましく、100ppq~10ppt含まれるのがさらに好ましい。なお、有効成分であるチオール類の飲食品中の添加量が1ppq未満だと、果実感増強効果を認められない場合があり、100pptを超えると、上記チオール類自体が有する特有の香気が添加対象の飲食品の風味に悪影響を与える場合があるが、添加対象の飲食品の風味次第では、1ppqを下回る添加量又は100pptを上回る添加量で使用してもよい。
【0025】
本発明の飲食品用香料組成物中の上記チオール類の好適な含有量は、所望の効果が得られる範囲で適宜調整できる。飲食品に対する香料組成物の添加量が、一般的に0.01%~1%程度であることを考慮すると、上記の本発明の果実感増強剤の飲食品に対する好適な添加量から、本発明の飲食品用香料組成物に対する上記チオール類の好適な含有量の一例としては、下限値を100ppq、1ppt、10ppt、100ppt、1ppbのいずれか、上限値を1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値及び上限値の任意の組み合わせの範囲を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0026】
本発明の果実感増強剤は、そのまま飲食品に添加して使用してもよいが、使用時の利便性のため適宜溶剤などで希釈されてもよい。希釈に用いる溶剤などは香料組成物に常用されるものであれば特に制限はない。さらに、本発明においては香料一般に適用される製剤化技術の適用も可能であり、粉末化、カプセル化など、所望の形態に調製することもできる。
【0027】
本発明の果実感増強剤又は飲食品用香料組成物は、飲食品中に均等に混合することができれば、製造工程のどの時点で添加しても構わない。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)フェニルメタンチオールの添加試験
表1及び表2に記載の一般的な処方により、グレープ様香料組成物及びレモン様香料組成物をそれぞれ調製した。また、同じく一般的な処方により、ピーチ様香料組成物及びパイン様香料組成物も別途調製した。
【0030】
【0031】
【0032】
果糖ぶどう糖液糖9.0%、グラニュー糖3.0%、クエン酸0.1%を含む糖酸液を調製し、この糖酸液に上記香料組成物を0.1%添加し、グレープ風味飲料、レモン風味飲料、ピーチ風味飲料及びパイン風味飲料をそれぞれ調製した。これらの各種果実風味飲料に対し、本発明のフェニルメタンチオールを表3に記載の濃度となるようそれぞれ添加して評価用サンプルを調製し、フェニルメタンチオール無添加のコントロールサンプルと比較した官能評価を行った。官能評価は、訓練された社内の専門パネル5名によって、表4に記載の基準(4段階)で行い、点数の平均点を表3に併せて示した。官能評価の結果、表3に記載のとおり、全ての評価用サンプルについて果実感増強効果を確認できた。
【0033】
【0034】
【0035】
(実施例2)2-フェニルエタン-1-チオールの添加試験
実施例1と同じ手順で、2-フェニルエタン-1-チオールの果実感増強効果についての官能評価を行った。果実風味飲料に対する2-フェニルエタン-1-チオールの添加濃度は表5に記載のとおりとし、点数の平均点も表5に併せて示した。官能評価の結果、表3に記載のとおり、全ての評価用サンプルについて果実感増強効果を確認できた。
【0036】
【0037】
(実施例3)3-フェニルプロパン-1-チオールの添加試験
実施例1と同じ手順で、3-フェニルプロパン-1-チオールの果実感増強効果についての官能評価を行った。果実風味飲料に対する3-フェニルプロパン-1-チオールの添加濃度は表6に記載のとおりとし、点数の平均点も表6に併せて示した。官能評価の結果、表3に記載のとおり、全ての評価用サンプルについて果実感増強効果を確認できた。
【0038】
【0039】
(実施例4)フェニルメタンチオールの市販品に対する添加効果
フェニルメタンチオールを、市販のピーチ果汁入りゼリー、市販のグレープ果汁入りゼリー、市販のピーチ果汁・果肉入りヨーグルト、市販のグレープ果汁入りヨーグルト、市販のレモン果汁入りヨーグルトそれぞれに対して100ppq、1ppt、10pptの濃度となるよう添加したサンプルをそれぞれ調製した。これらのサンプルに対して、フェニルメタンチオール無添加品と比較した果実感増強効果の有無についての官能評価を、訓練された社内パネル4名によって行った。官能評価の結果、評価者4名全員が、上記の全てのサンプルについて果実感増強効果を認めた。
【0040】
(実施例5)2-フェニルエタン-1-チオールの市販品に対する添加効果
2-フェニルエタン-1-チオールを、市販のピーチ果汁入りゼリー、市販のグレープ果汁入りゼリー、市販のピーチ果汁・果肉入りヨーグルト、市販のグレープ果汁入りヨーグルト、市販のレモン果汁入りヨーグルトそれぞれに対して100ppq、1ppt、10pptの濃度となるよう添加したサンプルをそれぞれ調製した。これらのサンプルに対して、2-フェニルエタン-1-チオール無添加品と比較した果実感増強効果の有無についての官能評価を、訓練された社内パネル4名によって行った。官能評価の結果、評価者4名全員が、上記の全てのサンプルについて果実感増強効果を認めた。
【0041】
(実施例6)3-フェニルプロパン-1-チオールの市販品に対する添加効果
3-フェニルプロパン-1-チオールを、市販のピーチ果汁入りゼリー、市販のグレープ果汁入りゼリー、市販のピーチ果汁・果肉入りヨーグルト、市販のグレープ果汁入りヨーグルト、市販のレモン果汁入りヨーグルトそれぞれに対して100ppq、1ppt、10pptの濃度となるよう添加したサンプルをそれぞれ調製した。これらのサンプルに対して、3-フェニルプロパン-1-チオール無添加品と比較した果実感増強効果の有無についての官能評価を、訓練された社内パネル4名によって行った。官能評価の結果、評価者4名全員が、上記の全てのサンプルについて果実感増強効果を認めた。
【0042】
実施例1~6の結果から、多様な果実風味に対して本発明の果実感増強効果を確認できたため、果実風味を有する数多の飲食品について、本発明の果実感増強剤及び飲食品用香料組成物は有効活用できるものと推測できる。