(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060697
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ケーブルの止水構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240425BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20240425BHJP
H02G 15/013 20060101ALI20240425BHJP
H02G 3/06 20060101ALI20240425BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240425BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02G3/22
H05K7/00 M
H02G15/013
H02G3/06 016
F16J15/10 B
F16J15/10 U
F16L5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168117
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康二
【テーマコード(参考)】
3J040
4E352
5G363
5G375
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA12
3J040BA03
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA05
4E352AA01
4E352BB10
4E352CC32
4E352CC44
4E352CC46
4E352CC53
4E352DD05
4E352DR02
4E352DR25
4E352DR39
4E352GG04
4E352GG12
5G363AA01
5G363BA01
5G363CA06
5G363CA12
5G363CB01
5G363CB08
5G375AA01
5G375AA08
5G375BA01
5G375BB03
5G375BB17
5G375BB19
5G375BB28
(57)【要約】
【課題】ケーブルに対する止水性能が十分に得られるとともにパッキンの挿通孔にケーブルを通す作業も容易に行うことができ、またケーブルとパッキンの量産性も損なわれることがないケーブルの止水構造を提供する。
【解決手段】ケーブル止水構造は、ケーブル4を挿通させる挿通孔1cを有するパッキン1と、対象物3に取り付けられ対象物3との間でパッキン1を圧縮変形させて挿通孔1cをケーブル4の外周面に押し付ける座金2と、を備え、パッキン1は、対象物3に沿う第一方向の長さが対象物3に沿い第一方向に交差する第二方向の長さよりも大きい長形状であり、挿通孔1cは、第一方向の内径が第二方向の内径よりも大きい長孔状である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物から引き出されるケーブルの端部を止水するためのケーブルの止水構造であって、
前記ケーブルを挿通させる挿通孔を有するパッキンと、
前記対象物に取り付けられ当該対象物との間で前記パッキンを圧縮変形させて前記挿通孔を前記ケーブルの外周面に押し付ける座金と、を備え、
前記パッキンは、前記対象物に沿う第一方向の長さが当該対象物に沿い当該第一方向に交差する第二方向の長さよりも大きい長形状であり、
前記挿通孔は、前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状である、ケーブルの止水構造。
【請求項2】
前記パッキンは、前記対象物と前記座金との間で圧縮変形する基部と、当該基部から突出して前記対象物に設けられた開口に挿入される凸部と、を備え、
前記挿通孔は、前記基部と前記凸部とを貫通している、請求項1に記載のケーブルの止水構造。
【請求項3】
前記挿通孔は、前記基部を貫通している第一挿通孔と前記凸部を貫通している第二挿通孔で構成され、
前記第一挿通孔は、前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状であり、
前記第二挿通孔は、前記第一方向の内径と前記第二方向の内径が等しい円形孔状である、請求項2に記載のケーブルの止水構造。
【請求項4】
前記挿通孔は、前記基部を貫通している第一挿通孔と前記凸部を貫通している第二挿通孔で構成され、
前記第一挿通孔は、前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状であり、
前記第二挿通孔は、前記凸部の根元部において前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状であり、前記凸部の先端部において前記第一方向の内径と前記第二方向の内径が等しい円形孔状である、請求項2に記載のケーブルの止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気信号の伝達や電力の供給のために対象物(電気機器等)にケーブルを接続する場合、対象物から引き出されるケーブルの端部には、ケーブルを伝って水が対象物へ浸入するのを防止する止水構造が設けられる。
【0003】
このようなケーブルの止水構造として、特許文献1には、防水パッキング(パッキン)と固定具(座金)とを備え、防水パッキングには電線(ケーブル)を通す孔(挿通孔)が設けられていて、固定具を防水パッキングに取り付けることによって防水パッキングの孔の周辺部を電線の周りに押し付けるようにした止水構造が示されている。
【0004】
このように従来用いられているケーブルの止水構造は、座金でパッキンを圧縮変形させることによって挿通孔の内周面をケーブルの外周面に密着させるものであり、ケーブルは、パッキンを圧縮変形させる前に挿通孔に通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、パッキンの挿通孔にケーブルを通す作業を容易にするべくケーブルの外径に対して挿通孔の内径を大きくすると、座金でパッキンを圧縮変形させても挿通孔の内周面とケーブルの外周面との間に隙間が生じて十分な止水性能が得られないおそれがある。一方、ケーブルの外径に対して挿通孔の内径を小さくすると、パッキンの挿通孔にケーブルを通す作業が難しくなる。なお、量産においてはケーブル及びパッキンに寸法のばらつきが生じるが、上記のような止水性能と作業性を両立させようとすると、ケーブルの外径と挿通孔の内径を厳密に管理しなければならないうえ、許容される寸法の範囲から外れるものが多く発生することが想定されるため、量産性の点で難がある。
【0007】
このような従来の問題点に鑑み、本発明は、ケーブルに対する止水性能が十分に得られるとともにパッキンの挿通孔にケーブルを通す作業も容易に行うことができ、またケーブルとパッキンの量産性も損なわれることがないケーブルの止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対象物から引き出されるケーブルの端部を止水するためのケーブルの止水構造であって、前記ケーブルを挿通させる挿通孔を有するパッキンと、前記対象物に取り付けられ当該対象物との間で前記パッキンを圧縮変形させて前記挿通孔を前記ケーブルの外周面に押し付ける座金と、を備え、前記パッキンは、前記対象物に沿う第一方向の長さが当該対象物に沿い当該第一方向に交差する第二方向の長さよりも大きい長形状であり、前記挿通孔は、前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状である。
【0009】
上述したケーブルの止水構造において、前記パッキンは、前記対象物と前記座金との間で圧縮変形する基部と、当該基部から突出して前記対象物に設けられた開口に挿入される凸部と、を備え、前記挿通孔は、前記基部と前記凸部とを貫通していることが好ましい。
【0010】
また上述したケーブルの止水構造において、前記挿通孔は、前記基部を貫通している第一挿通孔と前記凸部を貫通している第二挿通孔で構成され、前記第一挿通孔は、前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状であり、前記第二挿通孔は、前記第一方向の内径と前記第二方向の内径が等しい円形孔状であることが好ましい。
【0011】
そして上述したケーブルの止水構造において、前記挿通孔は、前記基部を貫通している第一挿通孔と前記凸部を貫通している第二挿通孔で構成され、前記第一挿通孔は、前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状であり、前記第二挿通孔は、前記凸部の根元部において前記第一方向の内径が前記第二方向の内径よりも大きい長孔状であり、前記凸部の先端部において前記第一方向の内径と前記第二方向の内径が等しい円形孔状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるケール部の止水構造によれば、ケーブルに対する止水性能が十分に得られるとともにパッキンの挿通孔にケーブルを通す作業も容易に行うことができ、またケーブルとパッキンの量産性も損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るケーブルの止水構造に関し、パッキンについて示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るケーブルの止水構造に関し、座金について示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るケーブルの止水構造に関し、固定板について示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るケーブルの止水構造に関し、パッキンを圧縮変形させる前の状態を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るケーブルの止水構造に関し、パッキンを圧縮変形させた後の状態を示した図である。
【
図6】
図1に示したパッキンの変形例を示した図である。
【
図7】
図1に示したパッキンの更なる変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係るケーブルの止水構造について説明する。添付図面の各図には、X、Y、Zの向きを記して図面間での向きの関係を示している。なお、添付図面に示した図は模式的なものであり、各部分の厚みや幅、各部分同士の比率等は、実際に実施されるものとは異なる場合がある。また便宜上、以下の説明においては図面に示した向きで説明するが、本発明は図示した向きのみでの使用に限定されるものではない。
【0015】
まず、本実施形態に係るケーブルの止水構造を構成する各部材について説明する。本実施形態のケーブルの止水構造は、
図1に示したパッキン1と
図2に示した座金2で構成されている。パッキン1と座金2は、
図3に示した固定板3(電気機器に使用される構造物であって、本明細書の「対象物」に相当する)に適用されるものである。また固定板3からは、
図4に示したケーブル4が引き出されている。
【0016】
図1において、(a)はパッキン1の平面図であり、(b)はA-Aに沿う断面図であり、(c)はB-Bに沿う断面図である。本実施形態のパッキン1は、弾性を有する素材(例えばシリコーンゴム)で形成されていて、圧力を付加すると圧縮変形させることができる。
【0017】
図1(a)に示すようにパッキン1は、水平面における第一方向(本実施形態では図示したX方向)の長さが、この第一方向と同一面内で交差する第二方向(本実施形態では、X方向に直交するY方向)の長さよりも大きい長形状であって、本実施形態では角丸長方形(長さが等しく平行な二つの直線と二つの半円で囲まれた形状)である。なお長形状とは、図示した形状に限られず、例えば楕円形や長方形、長方形の角を丸めた形状、卵形等を含む。また上述した第二方向は、第一方向と交差する(すなわち、第一方向と平行でなければよい)ものであればよく、パッキン1には、円形を除いた種々の形状になるものが含まれる。
【0018】
また
図1(b)、
図1(c)に示すように本実施形態のパッキン1は、上記のように角丸長方形になる基部1aと、基部1aの中心に位置するとともに基部1aの下面から突出する凸部1bを備えている。凸部1bの底面視における形状は、X方向の長さがY方向の長さよりも大きい長形状であって、本実施形態では楕円形である。また本実施形態の凸部1bは、基部1aに連結する根元部から先端部に向かって縮径するように形作られている。
【0019】
そしてパッキン1の中心には、上下方向に基部1aと凸部1bを貫通し、上述したケーブル4が挿通される挿通孔1cが設けられている。挿通孔1cの平面視における形状は、X方向の内径がY方向の内径よりも大きい長孔状であって、本実施形態では楕円形である。なお長孔状とは、図示した形状に限られず、例えば角丸長方形や長方形、長方形の角を丸めた形状、卵形等を含む。なお、X方向の内径、Y方向の内径、及びケーブル4の外径との関係については後述する。ここで、挿通孔1cにおける基部1aを貫通する部分を第一挿通孔1dと称し、挿通孔1cにおける凸部1bを貫通する部分を第二挿通孔1eと称する。第一挿通孔1dと第二挿通孔1eは、本実施形態では同形状である。
【0020】
またパッキン1は、挿通孔1cからX方向にずれた位置において、上下方向に基部1aを貫通する二つのねじ挿通孔1fを備えている。本実施形態のねじ挿通孔1fは、
図1(a)に示すように平面視で円形状である。
【0021】
図2において、(a)は座金2の平面図であり、(b)はC-Cに沿う断面図であり、(c)はD-Dに沿う断面図である。本実施形態の座金2は、金属板で形成されている。
【0022】
図2(a)に示すように座金2は、X方向の長さがY方向の長さよりも大きい角丸長方形の天壁2aを備えている。なお天壁2aは、上述したパッキン1の基部1aと略同一形状である。天壁2aの中心には、平面視で円形状であって上下方向に天壁2aを貫通する座金側挿通孔2bが設けられている。座金側挿通孔2bの内径は、本実施形態では挿通孔1cにおけるX方向の内径よりも大きくなっている。更に天壁2aは、座金側挿通孔2bからX方向にずれたところにおいて、平面視で円形状であって上下方向に天壁2aを貫通する二つの座金側ねじ挿通孔2cを備えている。
【0023】
また座金2は、天壁2aの外縁部に設けられた周壁2dを備えている。周壁2dの先端部には、径方向外側に向けて延在するフランジ2eが設けられている。
【0024】
図3において、(a)は固定板3の一部を示した部分平面図であり、(b)はE-Eに沿う部分断面図である。本実施形態の固定板3は、金属板で形成されている。
【0025】
固定板3は、平面視で円形状であって固定板3を貫通する開口3aを備えている。開口3aの内径は、本実施形態では凸部1bの根元部におけるX方向の外径よりも大きくなっている。また固定板3は、開口3aからX方向にずれたところにおいて、固定板3の下面から突出するバーリング加工が施されるとともに内周面にねじ溝が設けられた二つの取り付け孔3bを備えている。
【0026】
ケーブル4は、例えば電気信号の伝達や電力の供給のために使用されるものであって、固定板3の下方に位置する不図示の電気機器に電気的に接続され、開口3aを通って固定板3の上方へ引き出される。
【0027】
本実施形態のケーブル4は、横断面形状が円形状になるように形作られている。ケーブル4の外径は、挿通孔1cのX方向の内径よりも小さく、またY方向の内径とは略同一である。
【0028】
次に、上述したパッキン1、座金2、固定板3、ケーブル4を組み立てる方法について説明する。これらを組み立てるにあたっては、
図4に示すように、パッキン1は凸部1bが下方に位置する姿勢とし、座金2はフランジ2eが下方に位置する姿勢とし、固定板3は、取り付け孔3bのバーリングが下方に位置する姿勢とする。またこの姿勢にした状態で、固定板3、パッキン1、座金2の順で重ねるものとする。なおケーブル4と不図示の電気機器との接続は、予め行っていてもよいし、座金2等を固定板3に取り付けてから行ってもよい。
【0029】
そして、固定板3、パッキン1、座金2の順で重ねつつ、ケーブル4を挿通孔1cと座金側ねじ挿通孔2cに挿通する。上述したように座金側挿通孔2bの内径は、挿通孔1cにおけるX方向の内径よりも大きくなっている。またケーブル4の外径は、挿通孔1cのX方向の内径よりも小さく、Y方向の内径とは略同一である。すなわちケーブル4は、座金側挿通孔2bに対して抵抗なく挿通される。また
図4(b)のように、ケーブル4の外周面と挿通孔1cのY方向の内周面とは接触することがある一方、
図4(a)のように、ケーブル4の外周面と挿通孔1cのX方向の内周面との間には隙間があるため、ケーブル4を挿通孔1cに挿通する際に大きな抵抗が生じることはなく、ケーブル4を挿通孔1cにスムーズに挿通させることができる。
【0030】
その後は、
図5に示すように座金側ねじ挿通孔2cとねじ挿通孔1fにねじSを挿通させ、固定板3の取り付け孔3bでねじSを締結する。取り付け孔3bで締結するにあたってねじSを回転させていくと、座金2は、フランジ2eの下面が固定板3の上面に接触するまで固定板3に向けて移動するため、パッキン1の基部1aは、固定板3と座金2との間で圧縮変形する。ここで基部1aは、X方向の長さがY方向の長さよりも大きい長形状であるため、圧縮変形した際には、Y方向への変形量よりもX方向への変形量が大きくなる。すなわち基部1aに設けた挿通孔1c(特に第一挿通孔1d)は、Y方向よりもX方向へより大きく変形する。従って、当初はX方向の内径がY方向の内径よりも大きい長孔状であった挿通孔1cは、X方向の内径が小さくなって円形状に近づくことになるため、挿通孔1cに挿通させたケーブル4の外周面に対して挿通孔1cの内周面を、全周に亘って略均等に密着させることができる。特に本実施形態のパッキン1は、基部1aから突出する凸部1bを備えていて、圧縮変形によって基部1aがX方向へ大きく変形する際は、基部1aに連結する凸部1bもX方向へ大きく変形するため、第一挿通孔1dとともに第二挿通孔1eも、X方向の内径が小さくなって円形状に近づくことになる。すなわち本実施形態によれば、第一挿通孔1dから第二挿通孔1eに至る長さの長い挿通孔1cがケーブル4に密着することになる。
【0031】
またパッキン1の基部1aが圧縮変形する際は、基部1aに設けたねじ挿通孔1fの内径も小さくなるため、ねじSの外周面にねじ挿通孔1fの内周面を密着させることができる。
【0032】
このように本実施形態によるケーブルの止水構造によれば、パッキン1の挿通孔1cにケーブル4を挿通する作業が行い易いうえ、パッキン1及び座金2を固定板3に取り付けた際は、ケーブル4の外周面に対して挿通孔1cの内周面を密着させ、且つねじSの外周面にねじ挿通孔1fの内周面を密着させることができるため、止水性能も十分に得ることができる。またパッキン1の挿通孔1cの内径寸法、及びケーブル4の外径寸法が多少ばらついても、挿通孔1cにケーブル4を挿通する作業が行い易い効果、及びケーブル4の外周面に対して挿通孔1cの内周面を密着させる効果は維持される。そして本実施形態のパッキン1は、基部1aに凸部1bを設けていて、挿通孔1cは、基部1aと凸部1bを貫通して長さが長くなっているため、ケーブル4の外周面と挿通孔1cの内周面とが密着する面積が増えて止水性能をより高めることができる。
【0033】
上述したパッキン1は、
図6に示したパッキン1Bの如きものでもよい。ここで
図6(a)は、パッキン1Bの平面図であり、
図6(b)はA2-A2に沿う断面図であり、
図6(c)はB2-B2に沿う断面図である。パッキン1Bは、上述した基部1a、凸部1b、第一挿通孔1dを備える一方、挿通孔1cにおける凸部1bを貫通する部分は、第二挿通孔1eBで構成されている。第二挿通孔1eBの平面視における形状は、X方向の内径とY方向の内径が等しい円形孔状である。本実施形態において円形孔状になる第二挿通孔1eBの内径は、第一挿通孔1dのY方向の内径と等しくなっている。
【0034】
このようなパッキン1Bにおいても、ケーブル4を挿通孔1cに挿通するにあたり、ケーブル4の外周面と第一挿通孔1dのX方向の内周面との間には隙間があるため、ケーブル4を挿通孔1cにスムーズに挿通させることができる。なお、第二挿通孔1eBの内径とケーブル4の外径は略同一であるが、第二挿通孔1eBの長さは第一挿通孔1dに比して短いため、ケーブル4を挿通させるにあたりそれ程大きな抵抗が生じることはない。
【0035】
そして、
図5の状態と同様に固定板3と座金2の間にパッキン1Bを配置した状態でねじSを締結すると、パッキン1Bの基部1aが固定板3と座金2との間で圧縮変形する。上述したように、基部1aはX方向の長さがY方向の長さよりも大きい長形状であるため、第一挿通孔1dは、Y方向よりもX方向へより大きく変形し、当初はX方向の内径がY方向の内径よりも大きい長孔状であった第一挿通孔1dは、X方向の内径が小さくなって円形状に近づくことになる。
【0036】
ところで、パッキン1Bの凸部1bは基部1aに連結しているため、圧縮変形によって基部1aがX方向へ大きく変形する際は、凸部1bも同じような傾向で変形することになる。但し凸部1bは、固定板3と座金2に直接挟まれてはいないため、基部1a程は変形しないことがある。一方、本実施形態のパッキン1Bは、凸部1bを貫通する第二挿通孔1eBは円形孔状であり、また第二挿通孔1eBの内径は、ケーブル4の外径と略同一になる第一挿通孔1dのY方向の内径と等しいため、凸部1bの変形量が十分でない場合にもケーブル4の外周面に対して第二挿通孔1eBの内周面を密着させることができる。
【0037】
上述したパッキン1は、
図7に示したパッキン1Cの如きものでもよい。ここで
図7(a)は、パッキン1Cの平面図であり、
図7(b)はA3-A3に沿う断面図であり、
図7(c)はB3-B3に沿う断面図である。パッキン1Cは、上述した基部1a、凸部1b、第一挿通孔1dを備える一方、挿通孔1cにおける凸部1bを貫通する部分は、第二挿通孔1eCで構成されている。第二挿通孔1eCの平面視における形状は、凸部1bの根元部においてはX方向の内径がY方向の内径よりも大きい長孔状であり、そこから凸部1bの先端部に向かって徐々に円形孔状に近づいていき、凸部1bの先端部においてはX方向の内径とY方向の内径が等しい円形孔状である。本実施形態において、凸部1bの根元部における形状は第一挿通孔1dと同一である。また、凸部1bの先端部において円形孔状になる第二挿通孔1eCの内径は、第一挿通孔1dのY方向の内径と等しくなっている。
【0038】
このようなパッキン1Cにおいても、ケーブル4を挿通孔1cに挿通するにあたり、ケーブル4の外周面と第一挿通孔1dのX方向の内周面との間には隙間があるため、ケーブル4を挿通孔1cにスムーズに挿通させることができる。なお第二挿通孔1eCは、凸部1bの先端部は円形孔状であって、その内径はケーブル4の外径と略同一であるが、それ以外の部分では長孔状であるため、ケーブル4を挿通させるにあたりそれ程大きな抵抗が生じることはない。
【0039】
そして固定板3と座金2の間にパッキン1Cを配置した状態でねじSを締結すると、長形状のパッキン1Cの基部1aが固定板3と座金2との間で圧縮変形するため、長孔状であった挿通孔1cは円形状に近づいていく。ここで凸部1bは、固定板3と座金2に直接挟まれてはいないため、基部1a程は変形しないことがある。またこのときの凸部1bにおける変形量は、基部1aから離れるにつれて(凸部1bの根元部から先端部に向かうにつれて)小さくなることが想定される。一方、本実施形態のパッキン1Cは、凸部1bの根元部においてはX方向の内径がY方向の内径よりも大きい長孔状であるものの、そこから凸部1bの先端部に向かって徐々に円形孔状に近づいていって、凸部1bの先端部においてはX方向の内径とY方向の内径が等しい円形孔状であるため、凸部1bの変形量が十分でない場合にもケーブル4の外周面に対して第二挿通孔1eCの内周面を密着させることができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0041】
例えば上述したパッキン1は、基部1aに凸部1bを設けていたが、凸部1bを省略してもよい。また凸部1bは、固定板3に設けた開口3aへの取り付け性を考慮して根元部から先端部に向かって縮径するように形作られていたが、根元部から先端部に向かって同形状で突出するものでもよい。
【符号の説明】
【0042】
1、1B、1C:パッキン
1a:基部
1b:凸部
1c:挿通孔
1d:第一挿通孔
1e、1eB、1eC:第二挿通孔
2:座金
3:固定板(対象物)
3a:開口
4:ケーブル