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特開2024-60701同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ
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  • 特開-同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ 図1
  • 特開-同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ 図2
  • 特開-同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ 図3
  • 特開-同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ 図4
  • 特開-同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060701
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】同軸電気コネクタおよび回路基板付同軸電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/50 20110101AFI20240425BHJP
【FI】
H01R24/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168125
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】岸 修人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敦宏
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA13
5E223AB08
5E223BA17
5E223CD01
5E223CD25
5E223GA08
5E223GA11
5E223GA44
5E223GA74
(57)【要約】
【課題】回路基板に対して正確に位置決めしやすい同軸電気コネクタおよび該同軸電気コネクタが回路基板に取り付けられた回路基板付同軸電気コネクタを提供する。
【解決手段】取付部材60は、フランジ部11Aの上面に係止可能な取付頭部61と、取付頭部61から下方へ延びて取付孔部13および貫通部P3を挿通するように配設されるねじ軸部62とを有し、係止部材70は、ねじ軸部62に下方から螺合され、回路基板Pに下方から係止可能であり、取付頭部61の回転操作により、取付頭部61と協働してフランジ部11Aおよび回路基板Pを挟持可能となっており、延出部17は、ねじ軸部62の軸線まわりの方向で係止部材70に当接可能に隣接しているとともに、貫通部P3の縁部に形成された位置決め部P4によって実装面に対して平行な方向での移動を規制されるようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に接続される同軸電気コネクタであって、
前記回路基板の実装面に対して直角な上下方向に延びる筒状の胴体部と、前記胴体部よりも前記胴体部の半径方向で外側に設けられ、前記回路基板への取付けのための取付孔部が上下方向に貫通して形成されたフランジ部とを有する外部導体と、
前記胴体部の内部空間内に収容される誘電体と、
前記内部空間内で上下方向に延び前記誘電体に保持される中心導体とを有する同軸電気コネクタにおいて、
前記取付孔部および前記回路基板を貫通して形成された貫通部を挿通するように配設される取付具を有し、
前記外部導体は、前記フランジ部から下方へ延び、前記貫通部に挿通するように配設される延出部を有し、
前記取付具は、前記フランジ部に対して上方から配設される取付部材と、前記フランジ部に対して下方から配設される係止部材とを有し、
前記取付部材は、前記フランジ部の上面に係止可能な取付頭部と、前記取付頭部から下方へ延びて前記取付孔部および前記貫通部を挿通するように配設されるねじ軸部とを有し、
前記係止部材は、前記ねじ軸部に下方から螺合され、前記回路基板に下方から係止可能であり、前記取付頭部の回転操作により、前記取付頭部と協働して前記フランジ部および前記回路基板を挟持可能となっており、
前記延出部は、前記ねじ軸部の軸線まわりの方向で前記係止部材に当接可能に隣接しているとともに、前記貫通部の縁部に形成された位置決め部によって前記実装面に対して平行な方向での移動を規制されるようになっていることを特徴とする同軸電気コネクタ。
【請求項2】
回路基板に接続される同軸電気コネクタであって、
前記回路基板の実装面に対して直角な上下方向に延びる筒状の胴体部と、前記胴体部よりも前記胴体部の半径方向で外側に設けられ、前記回路基板への取付けのための取付孔部が上下方向に貫通して形成されたフランジ部とを有する外部導体と、
前記胴体部の内部空間内に収容される誘電体と、
前記内部空間内で上下方向に延び前記誘電体に保持される中心導体とを有する同軸電気コネクタにおいて、
前記取付孔部および前記回路基板を貫通して形成された貫通部を挿通するように配設される取付具を有し、
前記外部導体は、前記フランジ部から下方へ延び、前記貫通部に挿通するように配設される延出部と、前記フランジ部から上方へ延びる被係止部とを有し、
前記取付具は、前記フランジ部に対して下方から配設される取付部材と、前記フランジ部に対して上方から配設される係止部材とを有し、
前記取付部材は、前記回路基板の下面に係止可能な取付頭部と、前記取付頭部から上方へ延びて前記貫通部および前記取付孔部を挿通するように配設されるねじ軸部とを有し、
前記係止部材は、前記ねじ軸部に上方から螺合され、前記フランジ部に上方から係止可能であり、前記取付頭部の回転操作により、前記取付頭部と協働して前記フランジ部および前記回路基板を挟持可能となっており、
前記延出部は、前記貫通部の縁部に形成された位置決め部によって前記実装面に対して平行な方向での移動を規制されるようになっており、
前記被係止部は、前記ねじ軸部の軸線まわりの方向で前記係止部材に当接可能に隣接していることを特徴とする同軸電気コネクタ。
【請求項3】
前記延出部が複数設けられていることとする請求項1または請求項2に記載の同軸電気コネクタ。
【請求項4】
前記ねじ軸部が挿通されるばね部材を有し、
前記ばね部材は、前記取付頭部での回転操作により前記フランジ部と前記係止部材とで上下方向に圧縮されることとする請求項1または請求項2に記載の同軸電気コネクタ。
【請求項5】
前記請求項1または請求項2に記載の同軸電気コネクタが回路基板に取り付けられていることを特徴とする回路基板付同軸電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に接続される同軸電気コネクタおよび該同軸電気コネクタが回路基板に取り付けられた回路基板付同軸電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装される同軸電気コネクタとして、例えば、取付具によって回路基板に取り付けられる特許文献1の同軸電気コネクタが知られている。この同軸電気コネクタの外部導体は、回路基板の実装面に対して直角な上下方向に延びる軸線をもつ円筒状の胴体部と、該胴体部の下部から径方向外方へ向けて延びる取付フランジ部とを有している。取付フランジ部には、胴体部を挟んだ2位置で取付フランジ部を上下方向に貫通する取付孔が形成されている。取付具は、取付孔に上方から挿通されるねじ体としての取付部材と、取付部材のねじ軸部に下方から螺合して取り付けられる係止部材とを有している。係止部材は、略角柱状外形をなし、その下端部には回路基板に下方から係止するための係止爪部が設けられている。また、回路基板には、同軸電気コネクタの取付孔と対応する位置で回路基板を上下方向に貫通する四角形状の係止孔が形成されている。
【0003】
同軸電気コネクタを回路基板に取り付ける際には、同軸電気コネクタに取り付けられている取付具において、係止部材がねじ軸部に緩く螺合した状態としておく。同軸電気コネクタが回路基板の実装面上に配置されると、ねじ軸部および係止部材が回路基板の取付孔に上方から挿通する。このとき、取付具は上下方向に対して傾斜した姿勢となっている。次に、取付フランジ部の上面に位置している取付部材の取付頭部を回転させる取付操作をすると、取付具が垂立した姿勢になるとともに係止部材が上方へ引き上げられる。係止部材が引き上げられることにより係止爪部が回路基板の下面に下方から係止し、ねじ軸部と係止部材とが十分に締められる結果、取付頭部と係止爪部とによって取付フランジ部および回路基板がしっかりと挟持される。このとき、垂立した係止部材の外周面と回路基板の係止孔の内縁が当接することにより、同軸電気コネクタが回路基板に対して位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-064497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、回路基板に対する同軸電気コネクタの位置決めは、上述したように、係止部材の外周面と回路基板の係止孔の内縁が当接することで行われる。つまり、同軸電気コネクタと回路基板とは、取付具の取付部材および係止部材を介して位置決めされている。したがって、同軸電気コネクタを回路基板に取り付ける際には、取付孔と取付部材、取付部材と係止部材、係止部材と係止孔とのそれぞれの関係において存在する誤差(製造誤差や組立誤差)が全て重畳されるので、回路基板に対して同軸電気コネクタの正確に位置決めすることは容易ではない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、回路基板に対して正確に位置決めしやすい同軸電気コネクタおよび該同軸電気コネクタが回路基板に取り付けられた回路基板付同軸電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る同軸電気コネクタは、回路基板に接続される同軸電気コネクタであって、前記回路基板の実装面に対して直角な上下方向に延びる筒状の胴体部と、前記胴体部よりも前記胴体部の半径方向で外側に設けられ、前記回路基板への取付けのための取付孔部が上下方向に貫通して形成されたフランジ部とを有する外部導体と、前記胴体部の内部空間内に収容される誘電体と、前記内部空間内で上下方向に延び前記誘電体に保持される中心導体とを有する。
【0008】
かかる同軸電気コネクタにおいて、本発明では、前記取付孔部および前記回路基板を貫通して形成された貫通部を挿通するように配設される取付具を有し、前記外部導体は、前記フランジ部から下方へ延び、前記貫通部に挿通するように配設される延出部を有し、前記取付具は、前記フランジ部に対して上方から配設される取付部材と、前記フランジ部に対して下方から配設される係止部材とを有し、前記取付部材は、前記フランジ部の上面に係止可能な取付頭部と、前記取付頭部から下方へ延びて前記取付孔部および前記貫通部を挿通するように配設されるねじ軸部とを有し、前記係止部材は、前記ねじ軸部に下方から螺合され、前記回路基板に下方から係止可能であり、前記取付頭部の回転操作により、前記取付頭部と協働して前記フランジ部および前記回路基板を挟持可能となっており、前記延出部は、前記ねじ軸部の軸線まわりの方向で前記係止部材に当接可能に隣接しているとともに、前記貫通部の縁部に形成された位置決め部によって前記実装面に対して平行な方向での移動を規制されるようになっていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る同軸電気コネクタを回路基板に取り付ける際には、係止部材をねじ軸部に緩く螺合させた状態で、同軸電気コネクタを回路基板の実装面上に配置する。このとき、延出部、取付部材のねじ軸部および係止部材は回路基板の貫通部を挿通するように配設される。また、延出部を、実装面に対して平行な方向で、貫通部の縁部に形成された位置決め部に当接させて位置決めする。次に、取付頭部を回転操作することで係止部材が上方へ移動し、取付頭部と係止部材とによってフランジ部および回路基板を挟持する。このとき、ねじ軸部に螺合している係止部材は、ねじ軸部の軸線まわりの方向で延出部に当接するので、ねじ軸部とともに回転することを阻止され、その結果、係止部材と取付部材とが確実に相対移動する。また、本発明では、同軸電気コネクタの延出部の移動が回路基板の位置決め部によって規制される。したがって、同軸電気コネクタは取付部材を介することなく回路基板に対して直接位置決めされるので、同軸電気コネクタの正確な位置決めが可能となる。
【0010】
(2) (1)の発明とは異なる本発明に係る同軸電気コネクタは、回路基板に接続される同軸電気コネクタであって、前記回路基板の実装面に対して直角な上下方向に延びる筒状の胴体部と、前記胴体部よりも前記胴体部の半径方向で外側に設けられ、前記回路基板への取付けのための取付孔部が上下方向に貫通して形成されたフランジ部とを有する外部導体と、前記胴体部の内部空間内に収容される誘電体と、前記内部空間内で上下方向に延び前記誘電体に保持される中心導体とを有する。
【0011】
かかる同軸電気コネクタにおいて、本発明では、前記取付孔部および前記回路基板を貫通して形成された貫通部を挿通するように配設される取付具を有し、前記外部導体は、前記フランジ部から下方へ延び、前記貫通部に挿通するように配設される延出部と、前記フランジ部から上方へ延びる被係止部とを有し、前記取付具は、前記フランジ部に対して下方から配設される取付部材と、前記フランジ部に対して上方から配設される係止部材とを有し、前記取付部材は、前記回路基板の下面に係止可能な取付頭部と、前記取付頭部から上方へ延びて前記貫通部および前記取付孔部を挿通するように配設されるねじ軸部とを有し、前記係止部材は、前記ねじ軸部に上方から螺合され、前記フランジ部に上方から係止可能であり、前記取付頭部の回転操作により、前記取付頭部と協働して前記フランジ部および前記回路基板を挟持可能となっており、前記延出部は、前記貫通部の縁部に形成された位置決め部によって前記実装面に対して平行な方向での移動を規制されるようになっており、前記被係止部は、前記ねじ軸部の軸線まわりの方向で前記係止部材に当接可能に隣接していることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る同軸電気コネクタを回路基板に取り付ける際には、係止部材をねじ軸部に緩く螺合させた状態で、同軸電気コネクタを回路基板の実装面上に配置する。このとき、延出部、取付部材の取付頭部およびねじ軸部は回路基板の貫通部を挿通するように配設される。また、延出部を、実装面に対して平行な方向で、貫通部の縁部に形成された位置決め部に当接させて位置決めする。次に、取付頭部を回転操作することで係止部材が下方へ移動し、取付頭部と係止部材とによってフランジ部および回路基板を挟持する。このとき、ねじ軸部に螺合している係止部材は、ねじ軸部の軸線まわりの方向で被係止部に当接するので、ねじ軸部とともに回転することが阻止され、係止部材と取付部材とが確実に相対移動する。また、本発明では、同軸電気コネクタの延出部の移動が回路基板の位置決め部によって規制される。したがって、同軸電気コネクタは取付部材を介することなく回路基板に対して直接位置決めされるので、同軸電気コネクタの正確な位置決めが可能となる。
【0013】
(3) (1)または(2)の発明において、前記延出部が複数設けられていてもよい。回路基板の位置決め部によって移動を規制される延出部が複数設けられることにより、より正確な位置決めが可能となる。
【0014】
(4) (1)ないし(3)の発明において、前記ねじ軸部が挿通されるばね部材を有し、前記ばね部材は、前記取付頭部での回転操作により前記フランジ部と前記係止部材とで上下方向に圧縮されることとしてもよい。このように設けられたばね部材がフランジ部および係止部材によって上下方向に圧縮されると、フランジ部および係止部材には、ばね部材の弾性力が、圧縮力に対する反力として作用する。したがって、係止部材と、該係止部材が螺合されたねじ軸部ひいては取付部材とが、回路基板に対して安定した姿勢となり、その結果、貫通部に取付部材を円滑に挿通させて配設することができる。
【0015】
(5) 本発明に係る回路基板付同軸電気コネクタは、(1)ないし(4)の同軸電気コネクタが回路基板に取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、回路基板に対して正確に位置決めしやすい同軸電気コネクタおよび該同軸電気コネクタが回路基板に取り付けられた回路基板付同軸電気コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の同軸電気コネクタを回路基板とともに示した斜視図であり、(A)は回路基板へ取り付ける直前の状態、(B)は回路基板へ取り付けられた状態を示している。
図2】回路基板に取り付けられた同軸電気コネクタの断面図であり、(A)は中心導体の軸線を含むXZ平面での断面図を示し、(B)は中心導体の軸線を含むYZ平面での断面図を示している。
図3】同軸電気コネクタの斜視図であり、取付部材、係止部材、ばね部材を分離して示した斜視図である。
図4】回路基板に取り付けられた同軸電気コネクタの断面図であり、(A)は取付部材の回転動作前の状態、(B)は取付部材の回転動作完了後の状態における中心導体の軸線を含むYZ平面での断面を示している。
図5】本発明の実施形態の同軸電気コネクタを変形例に係る回路基板とともに示した斜視図であり、(A)は回路基板へ取り付ける直前の状態、(B)は回路基板へ取り付けられた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1(A),(B)は、本発明の実施形態の同軸電気コネクタ1(以下、「同軸コネクタ1」という)を回路基板Pとともに示した斜視図であり、図1(A)は回路基板Pへ取り付ける直前の状態、図1(B)は回路基板Pへ取り付けられた状態を示している。図2(A),(B)は、回路基板に取り付けられた同軸コネクタ1の断面図であり、図2(A)は中心導体の軸線を含むXZ平面での断面図を示し、図2(B)は中心導体の軸線を含むYZ平面での断面図を示している。図3は、同軸コネクタ1の斜視図であり、取付部材60、係止部材70、ばね部材80を分離して示した斜視図である。
【0020】
同軸コネクタ1が実装される回路基板Pは、ICチップ等の電子部品(図示せず)の性能試験に使用される、いわゆるテストボードである。また、同軸コネクタ1は、回路基板Pに実装され、電子部品の電気的特性を測定するための測定機器(図示せず)に相手同軸コネクタ(図示せず)および同軸ケーブル(図示せず)を介して接続される、いわゆるテストコネクタである。回路基板Pの実装面には、図1に示されているように、実装面上で前後方向(Y軸方向)に延びる信号パターンP1と、信号パターンP1を囲むようにして前後方向で帯状に延びるグランドパターンP2が形成されている。本実施形態では、前後方向においてY1方向を「後方」、Y2方向を「前方」とする。信号パターンP1の前方側(Y2側)の端部近傍には、性能試験の対象である電子部品(図示せず)が実装され、信号パターンP1の後方側(Y1側)の端部近傍(コネクタパターン部)には、同軸コネクタ1が実装される。同軸コネクタ1には、同軸ケーブル(図示せず)に接続された相手同軸コネクタ(図示せず)が上方から嵌合接続される。
【0021】
また、回路基板Pには、コネクタ幅方向(X軸方向)でのコネクタパターン部の両側において、グランドパターンP2よりも外側に、回路基板Pをその板厚方向である上下方向(Z軸方向)に貫通する孔状の貫通部P3が形成されている。貫通部P3は、上下方向に見て略鍵穴状をなしており、略円形状をなす基孔部P3Aと、基孔部P3Aから前方に延びる直状の前方ガイド孔部P3Bと、基孔部P3Aから後方へ突出する後方ガイド孔部P3Cとが互いに連通して形成されている。回路基板Pにおいて、貫通部P3を囲む領域に形成された貫通部P3の縁部のうち、前方ガイド孔部P3Bおよび後方ガイド孔部P3Cのそれぞれの縁部は、回路基板Pに対して平行な方向で同軸コネクタ1の移動を規制するための前方位置決め部P4および後方位置決め部P5をなしている。
【0022】
同軸コネクタ1は、回路基板Pの実装面に対して直角な上下方向(Z軸方向)に延びる軸線を有しており、X軸方向およびY軸方向において対称な形状をなしている。同軸コネクタ1は、図2(A),(B)に示されているように、金属製の外部導体10と、外部導体10の後述の内部空間16と同心をなすように該内部空間16内に配置される金属製の中心導体20、樹脂製の誘電体30および金属製の支持体40と、同軸コネクタ1を回路基板Pに固定するための取付具50と、取付具50とともに設けられるばね部材80とを有している。また、取付具50は、互いに螺合可能な取付部材60と係止部材70とを有している。
【0023】
外部導体10は、回路基板Pの実装面に対して平行に広がる板状の基部11と、基部11の上面から上方へ延びる円筒状の胴体部12と、基部11の下面から下方へ延びる複数の延出部17とを有している。基部11は、図1(A),(B)に示されるように、コネクタ幅方向(X軸方向)を長手方向とする板状をなしている。基部11は、コネクタ幅方向における胴体部12の両外側に張り出したフランジ部11Aを有している。それぞれのフランジ部11Aには、該フランジ部11Aを上下方向に貫通するねじ孔である取付孔部13(図2(A)参照)が1つ形成されている。
【0024】
図2(A),(B)に示されるように、基部11の底面には、コネクタ幅方向(X軸方向)における中央部で基部11の短手方向(Y軸方向)に延びる底溝部14が形成されている。底溝部14は、図2(A)に示されるように、Y軸方向に見て基部11の底面から四角形状に没しているとともに、図2(B)に示されるように、Y軸方向で基部11の全域にわたって延びて基部11を貫通している。図2(A)に示されるように、底溝部14の溝幅寸法(X軸方向での寸法)は、信号パターンP1(図1参照)の幅寸法(X軸方向での寸法)および中心導体20の外径よりも大きくなっている。
【0025】
胴体部12は、上下方向に延びる中心軸線をもち、基部11の上面から上方へ向けて起立した円筒状をなしている。胴体部12は、上下方向での中間部が他部よりも大径となっている。
【0026】
外部導体10には、上下方向に延びる中心軸線をもち、図2(A),(B)に示されるように、基部11および胴体部12を上下方向に貫通する内部空間16が形成されている。内部空間16は、大径空間16Aと、大径空間16Aよりも下方に形成された小径空間16Bとを有している。
【0027】
大径空間16Aは、胴体部12の上端位置から下端寄りの位置にわたる上下方向での範囲に形成された円筒状の空間である。大径空間16Aは、図2(A),(B)に示されるように、上部の空間が下部の空間よりも若干大径となっている。該下部の空間には、図3(A),(B)に示されるように、支持体40が収容されている。また、上部の空間は、同軸コネクタ1に相手同軸コネクタ(図示せず)が上方から嵌合接続される際に相手同軸コネクタを受け入れるための空間となっている。相手同軸コネクタが嵌合接続されたとき、外部導体10に支持される支持体40の上面が、相手同軸コネクタの相手外部導体(図示せず)の下面に接触して電気的に導通可能となる。
【0028】
小径空間16Bは、図2(A),(B)に示されるように、大径空間16Aよりも小径となっており、大径空間16Aの下端位置から基部11の底溝部14の上端位置にわたる上下方向での範囲に形成されている。小径空間16Bは、上部の空間が下部の空間よりも若干大径となっている。
【0029】
延出部17は、図1(A)および図3に示されるように、略四角柱状をなしており、コネクタ幅方向での基部11の両端部に2つずつ設けられている。具体的には、延出部17は、図3に示されるように、基部11のそれぞれの端部において、前後方向で取付孔部13を挟んだ位置に1つずつ設けられている(図4(A),(B)も参照)。それぞれの延出部17は、前後方向で互いに対面しており、取付部材60との間に若干の隙間をもって該取付部材60に隣接している(図4(A),(B)参照)。延出部17は、コネクタ幅方向において、回路基板Pの前方ガイド孔部P3Bおよび後方ガイド孔部P3Cと同じあるいは若干小さい寸法で形成されている。
【0030】
中心導体20は、図2(A),(B)に示されるように、上下方向に延びるピン状をなしており、上下方向に見て内部空間16と同心をなす位置に設けられている。中心導体20は、上部に設けられ相手同軸コネクタの相手中心導体(図示せず)が接続される接続部21と、下部に設けられ回路基板Pの信号パターンP1(図1参照)に接触可能な接触部22と、接続部21と接触部22との間に設けられ両者を連結する連結部23とを有している。
【0031】
接続部21は、図2(A),(B)に示されるように、外部導体10の大径空間16A内、より詳細には、大径空間16A内に配置された支持体40の後述の内部空間41内に収容されている。接続部21は、その上部にて周方向に配置された複数の接続片によって略円筒状をなしている。複数の接続片で囲まれた空間には、相手同軸コネクタの相手中心導体(図示せず)が上方から挿入されるようになっている。このとき、複数の接続片は、相手中心導体によって接続部21の径方向外方へ押し広げられて弾性変形した状態となり、相手中心導体の外周面に接圧をもって接触することにより、相手中心導体と電気的に導通可能となる。
【0032】
連結部23は、接続部21および接触部22よりも小径の円柱状をなし、図2(A),(B)に示されているように、誘電体30に挿通されて保持された状態で、内部空間16に収容されている。具体的には、連結部23は、上下方向で大径空間16Aおよび小径空間16Bの両者を跨ぐ範囲にわたって延びている。
【0033】
接触部22は、接続部21よりも小径の円柱状をなしており、図2(A),(B)に示されるように、上下方向で基部11とほぼ同じ範囲にわたって延びている。接触部22は、その下端側部分が底溝部14内に突出しており、その他の部分は小径空間16B内に収容されている。接触部22は、下端部が底溝部14から若干下方へ突出しており、その下端面で信号パターンP1(図1(A)参照)に確実に接触するようになっている。また、接触部22は、連結部23よりも大径となっており、該連結部23との境界位置に形成された段部で誘電体30に下方から当接している。換言すると、誘電体30が上記段部を上方から支持している。
【0034】
誘電体30は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であり、略円筒状に成形されて作られている。誘電体30は、図2(A),(B)に示されるように、外部導体10の小径空間16Bの上部の空間の内径とほぼ同じ外径で形成されており、この上部の空間内に圧入されて収容されている。また、誘電体30の上端部は、他部よりも小径をなしており、大径空間16Aの底面よりも上方に突出して、支持体40の後述の内部空間41の下部に収容されている。
【0035】
また、誘電体30には、周方向での1箇所で上下方向全域にわたって切込部(図示せず)が形成されている。この切込部は、径方向で誘電体30の外周面の位置から内周面の位置にわたって形成されている。つまり、誘電体30は、周方向における上記切込部の位置で不連続となっている。
【0036】
支持体40は、円筒状をなしており、外部導体10の大径空間16Aの下部に収容されている。支持体40は、その上部に、他部よりも若干大径となっている部分を有しており、この部分で外部導体10に圧入保持されている。支持体40には、外部導体10の内部空間16と共通の軸線をもち支持体40を貫通する内部空間41が形成されている。支持体40の下部には、内部空間41へ向けて径方向内方へ張り出す部分が内部空間41の周方向全域にわたり形成されている。この部分は、図2(A),(B)に示されるように、誘電体30の上端部と他部との境界位置に形成された段部に上方から接面して該段部を支持している。
【0037】
取付部材60は、上下方向を軸線方向とするねじ部材であり、図2(A),(B)および図3に示されるように、取付頭部61と、取付頭部61から下方へ延び外部導体10の取付孔部13を挿通するように配設されるねじ軸部62とを有している。取付頭部61は、上下方向に見て取付孔部13の内径よりも大きい外径の円形状をなしており、外部導体10のフランジ部11Aの上面に対して上方から係止可能となっている。取付頭部61の上面には、取付部材60の回転操作を行うための図示しない工具(例えばドライバー)の先端が差し込まれる十字状の溝部が形成されている。ねじ軸部62は、取付孔部13よりも若干小さい外径の円柱状をなしており、上下方向の全範囲にわたって外周面にねじ溝(図示せず)が形成されている。図2(A)に示されるように、ねじ軸部62は、上下方向におけるフランジ部11A、回路基板Pおよび係止部材70の合計寸法よりも長くなっている。
【0038】
係止部材70は、上下方向を板厚方向とする板状部材であり、ねじ軸部62に下方から螺合されるためのねじ孔71が、係止部材70の中央位置で上下方向に貫通して形成されている。係止部材70は、上下方向に見て略長方形をなしており、コネクタ幅方向を長手方向とする姿勢となった状態で、図2(B)に示されるように、前後方向にて2つの延出部17の間に設けられている(図4(A),(B)も参照)。係止部材70の長手方向での寸法は、図1(A)に示されるように、回路基板Pの基孔部P3Aよりもコネクタ幅方向で若干小さく、かつ、回路基板Pの前方ガイド孔部P3Bの幅寸法(コネクタ幅方向での寸法)よりも大きい。したがって、係止部材70が、コネクタ幅方向に延びた姿勢となっているとき、係止部材70の両端部は、コネクタ幅方向で前方ガイド孔部P3Bよりも外側に位置する。また、図3に示されるように、係止部材70の前端面および後端面は前後方向に対して直角な平坦面をなしており、コネクタ幅方向での両端面は、回路基板Pの基孔部P3Aの内縁に沿って湾曲する凸湾曲面をなしている。
【0039】
ばね部材80は、図3に示されるように、コイルばねであり、図2(A),(B)に示されるように、ねじ軸部62に下方から外挿されている。ばね部材80の外径は、外部導体10の取付孔部13および係止部材70のねじ孔71の両方の内径より大きく、かつ、回路基板Pの基孔部P3Aの内径よりも小さい。ばね部材80は、ねじ軸部62に外挿された状態で、上下方向でフランジ部11Aと係止部材70との間に設けられている。
【0040】
次に、同軸コネクタ1の使用要領について説明する。本実施形態では、同軸コネクタ1は、性能試験の対象となる電子部品(ICチップ等)が実装された回路基板P(テストボード)のコネクタパターン部に実装されて使用される。
【0041】
まず、外部導体10の取付孔部13へ取付部材60のねじ軸部62を上方から挿通させる。このとき、取付部材60は、取付頭部61でフランジ部11Aの上面に係止してその位置に留まる。次に、フランジ部11Aよりも下方に延出するねじ軸部62にばね部材80を下方から外挿する。さらに、係止部材70をねじ軸部62の下端部に下方から螺合して取り付ける。このとき、係止部材70は、係止部材70の少なくとも一部が前後方向で2つの延出部17の間に進入するまで螺合させておく(図4(A)参照)。ここで、係止部材70の少なくとも一部を2つの延出部17の間に進入させるためには、係止部材70を指で摘んでコネクタ幅方向に延びた姿勢に維持しつつ、取付部材60の取付頭部61を締め付ける方向に回転操作して、係止部材70を上方へ移動させる。また、ばね部材80は、フランジ部11Aと係止部材70とによって上下方向で圧縮された状態となっている。このようにして、係止部材70をねじ軸部62に緩く螺合させることにより、同軸コネクタ1を回路基板Pに取り付けるための準備が完了する。
【0042】
次に、図1(A)に示されるように、回路基板Pの上方に同軸コネクタ1を位置させる。このとき、同軸コネクタ1のフランジ部11Aを回路基板Pの貫通部P3の直上に位置させる。次に、同軸コネクタ1を回路基板Pの実装面上に配置する。このとき、外部導体10の延出部17、取付部材60のねじ軸部62および係止部材70が回路基板の貫通部P3を挿通するように配設される。具体的には、取付部材60のねじ軸部62および係止部材70が基孔部P3Aに挿通され、前方に位置する延出部17が前方ガイド孔部P3Bに挿通され、後方に位置する延出部17が後方ガイド孔部P3Cに挿通される。
【0043】
本実施形態では、ばね部材80がフランジ部11Aおよび係止部材70によって上下方向に圧縮された状態となっているので、フランジ部11Aおよび係止部材70には、ばね部材80の弾性力が、圧縮力に対する反力として作用している。したがって、係止部材70と、該係止部材70が螺合されたねじ軸部62ひいては取付部材60とが、上下方向に対して傾斜することなく延びて回路基板Pに対して安定した姿勢となる。その結果、基孔部P3Aにねじ軸部62および係止部材70を円滑に挿通させて配設することができる。
【0044】
貫通部P3へ同軸コネクタ1の取付具50および延出部17が挿通される結果、係止部材70は回路基板Pの下面よりも下方に位置する。また、前方の延出部17の上部が前方ガイド孔部P3Bの後部に位置し、前方位置決め部P4によってコネクタ幅方向(X軸方向)での移動を規制される。また、後方の延出部17の上部が後方ガイド孔部P3C内に位置し、後方位置決め部P5によって後方への移動およびコネクタ幅方向(X軸方向)での移動を規制される。
【0045】
次に、同軸コネクタ1を前方へ向けてスライド移動させる。このスライド移動は、前方の延出部17が前方ガイド孔部P3Bの前縁(前方位置決め部P4の一部)に後方から当接するまで行われる。その結果、図4(A)に示されるように、前方の延出部17の上部および取付部材60のねじ軸部62の上部は前方ガイド孔部P3B内に位置する。また、係止部材70は、コネクタ幅方向での両端部が回路基板Pの前方位置決め部P4の下面に下方から対向して位置する。また、本実施形態では、後方の延出部17の上部は、前方ガイド孔部P3Bには進入せず、基孔部P3A内に位置している。なお、変形例として、前方ガイド孔部P3Bをさらに長く形成して、後方の延出部17の上部が前方ガイド孔部P3B内に位置するようにしてもよい。
【0046】
上記スライド移動が完了すると、中心導体20の接触部22の下端面が回路基板Pの信号パターンP1に上方から接触し、外部導体10の基部11の下面が回路基板PのグランドパターンP2に上方から接触した状態となる。
【0047】
次に、取付頭部61を回転操作することで係止部材70を上方へ移動させ、図4(B)に示されるように、取付頭部61と係止部材70とによって、上下方向でフランジ部11Aおよび回路基板Pを締め付けるようにして挟持する。このとき、ねじ軸部62に螺合している係止部材70は、ねじ軸部62の軸線まわりの方向で延出部17に当接するので、ねじ軸部62とともに回転することを阻止される。その結果、係止部材70と取付部材60とが確実に相対移動し、係止部材70は円滑に上方へ移動する。
【0048】
取付頭部61と係止部材70とによってフランジ部11Aおよび回路基板Pがしっかり挟持されると、中心導体20の接触部22と回路基板Pの信号パターンP1との接圧が高められ、両者が確実に接触する。また、外部導体10の基部11と回路基板PのグランドパターンP2との接圧が高められ、両者が確実に接触する。
【0049】
また、同軸コネクタ1には、同軸ケーブル(図示せず)の一端に取り付けられた相手同軸コネクタ(図示せず)が上方から嵌合接続される。この結果、同軸コネクタ1の中心導体20の接続部21に相手同軸コネクタの相手中心導体(図示せず)が接続され、同軸コネクタ1の外部導体10の胴体部12に相手同軸コネクタの相手外部導体(図示せず)が接続される。また、同軸ケーブルの他端は、電気的特性を測定するための測定機器(図示せず)に接続される。電子部品の性能試験では、テストボードに実装された電子部品に電圧が印加されて、測定機器で電気的特性が測定される。
【0050】
本実施形態では、上述したように、同軸コネクタ1の前方の延出部17が前方位置決め部P4によって、回路基板Pの実装面に対して平行な方向での移動を規制されている。したがって、同軸コネクタ1は取付具50を介することなく回路基板Pに対して直接位置決めされるので、同軸コネクタ1の正確な位置決めが可能となる。また、本実施形態では、コネクタ幅方向で胴体部12を挟んだ両側に延出部17が設けられており、これらの延出部17で位置決めされている。このように、回路基板Pの位置決め部P4によって移動を規制される延出部17が複数設けられることにより、より正確な位置決めが可能となる。
【0051】
同軸コネクタ1を回路基板Pから取り外す際には、まず、取付部材60の取付頭部61を、既述したコネクタ取付時の回転操作とは反対の方向に回転操作する。この回転操作により、係止部材70は下方へ移動し、その結果、取付頭部61および係止部材70によりフランジ部11Aおよび回路基板Pを挟持した状態が解除される。次に、同軸コネクタ1を後方へ向けてスライド移動させ、係止部材70を回路基板Pの基孔部P3Aの直下に位置させる。そして、同軸コネクタ1を上方へ真っ直ぐ移動させると、係止部材70が基孔部P3Aを通過し、同軸コネクタ1を回路基板Pから簡単に取り外すことができる。
【0052】
本実施形態では、回路基板Pの貫通部P3は孔部として形成されているが、貫通部P3の形状はこれに限られず、変形例として、図5(A)に示されるような、切欠部として形成されていてもよい。この変形例における回路基板Qにおいて、貫通部Q3は、前後方向に延び後端が開口した切欠部として形成されている。具体的には、図1(A)に示される貫通部P3から基孔部P3Aおよび後方ガイド孔部P3Cを省略し、前方ガイド孔部P3Bを回路基板Pの後端まで延ばしたような形状をなしている。なお、図5(A)に示される回路基板Qにおいて、信号パターンQ1、グランドパターンQ2は、図1(A)に示される回路基板Pの信号パターンP1、グランドパターンP2と同じ構成であるので、説明を省略する。
【0053】
この変形例において、貫通部Q3は、上述したように、後方へ開口している。したがって、同軸コネクタ1を回路基板Qに取り付ける際、係止部材70をねじ軸部62に緩く螺合させた状態としておき、回路基板Pの後端部に対して同軸コネクタ1を斜め後上方から近づけながら、延出部17およびねじ軸部62を貫通部Q3に進入させることができる。そして、前方の延出部17を貫通部Q3の前縁に当接する位置に同軸コネクタ1を配置した後は、既述した取付動作と同様に、取付部材60の取付頭部61を回転操作して係止部材70を上方へ移動させて、取付頭部61および係止部材70でフランジ部11Aおよび回路基板Pを挟持すればよい。また、延出部17は、貫通部Q3の縁部で形成された位置決め部Q4によって、回路基板Qの実装面に対して平行な方向、具体的には、前方およびコネクタ幅方向での移動が規制される。
【0054】
このように、貫通部Q3を切欠部として形成することにより、同軸コネクタ1を斜め方向に移動させながら、換言すると、前方および下方の両方向へ同時に移動させながら、回路基板Qの実装面上に配置することができる。したがって、この変形例では、図1ないし図4に示した回路基板Pへの取付動作のように同軸コネクタ1を真っ直ぐ下方へ移動させた後に前方へ向けてスライド移動させる場合と比べて、実装面上への同軸コネクタ1の配置を円滑に行うことができる。
【0055】
本実施形態では、取付部材60がフランジ部11Aに対して上方から配設され、係止部材70がフランジ部11Aに対して下方から配設されることとしたが、変形例として、取付部材がフランジ部に対して下方から配設され、係止部材がフランジ部に対して上方から配設されることとしてもよい。この変形例では、外部導体に、フランジ部から上方へ延びる被係止部が設けられており、この点で、本実施形態とは構成が異なっている。該被係止部は、ねじ軸部の軸線まわりの方向で係止部材に当接可能に隣接しており、例えば、フランジ部の取付孔部を囲む周縁部の一部から上方へ延びる単数または複数の突部によって形成される。
【0056】
この変形例では、取付頭部を回転操作することで係止部材が下方へ移動し、取付頭部と係止部材とによってフランジ部および回路基板を挟持する。このとき、ねじ軸部に螺合している係止部材は、ねじ軸部の軸線まわりの方向で被係止部に当接するので、ねじ軸部とともに回転することが阻止され、係止部材と取付部材とが確実に相対移動する。また、同軸コネクタの延出部の移動が回路基板の位置決め部によって規制されているので、同軸コネクタは取付部材を介することなく回路基板に対して直接位置決めされ、その結果、同軸電気コネクタの正確な位置決めが可能となる。
【0057】
本実施形態では、同軸コネクタ1が、回路基板P上に実装された電子部品の性能試験を目的として使用されることとしたが、試験対象はこれに限られず、例えば、回路基板自体の性能試験を目的として使用されてもよい。このとき、回路基板上に電子部品を実装することは必須ではない。
【0058】
本実施形態では、同軸コネクタ1は、いわゆるテストコネクタとして使用される例を説明したが、使用用途はこれに限られず、例えば、電気製品に設けられる回路基板に実装されてもよい。
【0059】
本実施形態では、信号パターン全体およびグランドパターン全体が、回路基板の実装面(上面)上に設けられていることとしたが、これに替えて、例えば、信号パターンおよびグランドパターンの少なくとも一部が回路基板の裏面(下面)や内層で回路基板の面に沿って延びるように設けられていてもよい。このとき、回路基板の板厚方向で異なって位置するパターン同士はビア等によって接続される。
【符号の説明】
【0060】
1 同軸コネクタ
10 外部導体
11A フランジ部
12 胴体部
13 取付孔部
16 内部空間
17 延出部
20 中心導体
30 誘電体
50 取付具
60 取付部材
61 取付頭部
62 ねじ軸部
70 係止部材
80 ばね部材
P 回路基板
P3 貫通部
P4 前方位置決め部
Q3 貫通部
Q4 位置決め部

図1
図2
図3
図4
図5