(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060716
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】作業機械、及び、作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
E02F3/85 B
E02F3/85 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168166
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】園田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中江 好秀
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AA03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業機械が起伏のある地面を走行するときであっても、作業機を目標高さに精度よく保持すると共に、作業機のクロススロープ角を維持する。
【解決手段】作業機械は、車体と、作業機と、アクチュエータと、第1操作装置と、コントローラとを備える。作業機は、車体に対して動作可能に支持される。アクチュエータは、作業機を動作させる。第1操作装置は、重力方向における作業機の目標高さと、水平面に対する作業機の傾斜角度を示すクロススロープ角とを設定するために操作される。コントローラは、作業機の目標高さを取得する。コントローラは、車体の姿勢が変化しても、重力方向における作業機の高さを目標高さに維持するようにアクチュエータを制御する。
【選択図】
図13A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に対して動作可能に支持される作業機と、
前記作業機に接続され、前記作業機を動作させるアクチュエータと、
重力方向における前記作業機の目標高さと、水平面に対する前記作業機の傾斜角度を示すクロススロープ角とを設定するために操作される第1操作装置と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機の目標高さを取得し、
前記車体の姿勢が変化しても、重力方向における前記作業機の高さを前記目標高さに維持するように前記アクチュエータを制御する、
作業機械。
【請求項2】
前記作業機の目標高さを設定するための第1設定モードと第2設定モードとを切り替えるために操作される第2操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1設定モードにおいて、前記第1操作装置の操作に応じて、前記作業機の左端部と右端部とのそれぞれの前記目標高さを個別に設定し、
前記第2設定モードでは、前記クロススロープ角を維持しながら前記作業機の目標高さを設定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1操作装置は、上昇方向と下降方向とにそれぞれ操作可能な左リフトレバーと右リフトレバーとを含み、
前記第2操作装置は、
前記左リフトレバーに対応する左設定スイッチと
前記右リフトレバーに対応する右設定スイッチと、
を含み、
前記左設定スイッチと前記右設定スイッチとは、オン状態とオフ状態とにそれぞれ操作可能であり、
前記コントローラは、
前記左設定スイッチがオン状態である場合には、前記左リフトレバーの操作に応じて、前記作業機の右端部の高さを維持しながら前記作業機の左端部の高さを変更することで、前記作業機のクロススロープ角を変更し、
前記右設定スイッチがオン状態である場合には、前記右リフトレバーの操作に応じて、前記作業機の左端部の高さを維持しながら前記作業機の右端部の高さを変更することで、前記作業機のクロススロープ角を変更する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記左設定スイッチがオフ状態である場合には、前記左リフトレバーの操作に応じて、前記作業機のクロススロープ角を維持しながら前記作業機の高さを変更し、
変更された前記作業機の高さを前記目標高さとして設定する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記右設定スイッチがオフ状態である場合には、前記右リフトレバーの操作に応じて、前記作業機のクロススロープ角を維持しながら前記作業機の高さを変更し、
変更された前記作業機の高さを前記目標高さとして設定する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項6】
車体と、前記車体に対して動作可能に支持される作業機と、前記作業機に接続され、前記作業機を動作させるアクチュエータとを含む作業機械を制御するための方法であって、
重力方向における前記作業機の目標高さと、水平面に対する前記作業機の傾斜角度を示すクロススロープ角とを設定するために操作される第1操作装置の操作に応じて、前記作業機の目標高さとクロススロープ角とを設定することと、
前記車体の姿勢が変化しても、重力方向における前記作業機の高さを前記目標高さに維持するように前記アクチュエータを制御すること、
を備える方法。
【請求項7】
第2操作装置の操作に応じて、前記作業機の目標高さを設定するための第1設定モードと第2設定モードとを切り替えることと、
前記第1設定モードにおいて、前記第1操作装置の操作に応じて、前記作業機の左端部と右端部とのそれぞれの前記目標高さを個別に設定することと、
前記第2設定モードでは、前記クロススロープ角を維持しながら前記作業機の目標高さを設定すること、
を備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1操作装置は、上昇方向と下降方向とにそれぞれ操作可能な左リフトレバーと右リフトレバーとを含み、
前記第2操作装置は、
前記左リフトレバーに対応する左設定スイッチと
前記右リフトレバーに対応する右設定スイッチと、
を含み、
前記左設定スイッチと前記右設定スイッチとは、オン状態とオフ状態とにそれぞれ操作可能であり、
前記左設定スイッチがオン状態である場合には、前記左リフトレバーの操作に応じて、前記作業機の右端部の高さを維持しながら前記作業機の左端部の高さを変更することで、前記作業機のクロススロープ角を変更することと、
前記右設定スイッチがオン状態である場合には、前記右リフトレバーの操作に応じて、前記作業機の左端部の高さを維持しながら前記作業機の右端部の高さを変更することで、前記作業機のクロススロープ角を変更すること、
を備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記左設定スイッチがオフ状態である場合には、前記左リフトレバーの操作に応じて、前記作業機のクロススロープ角を維持しながら前記作業機の高さを変更することと、
変更された前記作業機の高さを前記目標高さとして設定すること、
を備える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記右設定スイッチがオフ状態である場合には、前記右リフトレバーの操作に応じて、前記作業機のクロススロープ角を維持しながら前記作業機の高さを変更することと、
変更された前記作業機の高さを前記目標高さとして設定すること、
を備える請求項8に記載の方法。
【請求項11】
車体と、前記車体に対して動作可能に支持される作業機と、前記作業機に接続され、前記作業機を動作させるアクチュエータとを含む作業機械を制御するための方法であって、
重力方向における前記作業機の目標高さを設定するために操作される第1操作装置の操作に応じて、前記作業機の左端部と右端部とのそれぞれの目標高さを設定することと、
前記車体の姿勢が変化しても、重力方向における前記作業機の左端部と右端部とのそれぞれの高さを前記目標高さに維持するように、前記アクチュエータを制御することによって、前記クロススロープ角を維持する、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、及び、作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械は、車体と、作業機と、アクチュエータとを備えている。アクチュエータは、例えば油圧シリンダである。アクチュエータは、オペレータの操作に応じて駆動されることで、作業機を動作させる。例えば、モータグレーダは、作業機として、ブレードを備えている。モータグレーダは、車体として、タンデムドライブとフレームとを備えている。ブレードは、フレームに支持されている。フレームは、前輪を回転可能に支持している。タンデムドライブは後輪を支持している。オペレータは、作業機の操作レバーを操作することで、ブレードを上下に動作させる。
【0003】
上述したモータグレーダでは、前輪が起伏を乗り越えるときに、フレームの姿勢が変化することで、ブレードの高さが変化してしまう。この問題に対応する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1においては、コントローラは、フレームとタンデムドライブとの相対回転角からブレードの高さの変化を算出する。コントローラは、ブレードの高さの変化に応じて、ブレードを上下に移動させる。それにより、ブレードが所定の高さに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のモータグレーダでは、タンデムドライブを含んだ車体全体の姿勢が変化した場合には、車体に対するブレードの高さ方向も変化してしまう。例えば、タンデムドライブが水平面から傾斜したときには、コントローラが算出したブレードの高さは、実際のブレードの高さとは異なる値を取る。そのため、ブレードを地面に対して所定の高さに精度よく保持することは困難である。
【0006】
また、モータグレーダでは、ブレードを水平面に対して傾けた状態で作業を行う場合がある。この場合、車体後方から見たブレードの水平面に対する傾斜角度(以下、クロススロープ角と呼ぶ)は、一定に維持される。しかし、上記のように車体全体の姿勢が変化した場合には、クロススロープ角を一定に維持することは困難である。本開示は、作業機械が起伏のある地面を走行するときであっても、作業機を目標高さに精度よく保持すると共に、作業機のクロススロープ角を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、作業機械であって、車体と、作業機と、アクチュエータと、第1操作装置と、コントローラとを備える。作業機は、車体に対して動作可能に支持される。アクチュエータは、作業機に接続される。アクチュエータは、作業機を動作させる。第1操作装置は、重力方向における作業機の目標高さと、水平面に対する作業機の傾斜角度を示すクロススロープ角とを設定するために操作される。コントローラは、作業機の目標高さを取得する。コントローラは、車体の姿勢が変化しても、重力方向における作業機の高さを目標高さに維持するようにアクチュエータを制御する。
【0008】
本開示の他の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、車体と、作業機と、アクチュエータとを備える。作業機は、車体に対して動作可能に支持される。アクチュエータは、作業機に接続される。アクチュエータは、作業機を動作させる。当該方法は、重力方向における作業機の目標高さと、水平面に対する作業機の傾斜角度を示すクロススロープ角とを設定するために操作される第1操作装置の操作に応じて、作業機の目標高さとクロススロープ角とを設定することと、車体の姿勢が変化しても、重力方向における作業機の高さを目標高さに維持するようにアクチュエータを制御すること、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車体の姿勢が変化しても、重力方向における作業機の高さとクロススロープ角とが維持される。そのため、作業機械が起伏のある地面を走行するときであっても、作業機の高さとクロススロープ角とが精度よく維持される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】作業機械の駆動系及び制御系を示す模式図である。
【
図4】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図5】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な平面図である。
【
図6】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な拡大側面図である。
【
図7】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な平面図である。
【
図8】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な平面図である。
【
図9】作業機械の車体座標系を示す模式的な側面図である。
【
図10】作業機械の車体座標系を示す模式的な背面図である。
【
図11】作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【
図12】作業機械の車体座標系を示す模式的な側面図である。
【
図13A】自動制御による作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図13B】自動制御による作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図14A】第1設定モードによる作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図14B】第1設定モードによる作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図15A】第1設定モードによる作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図15B】第1設定モードによる作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図16A】第2設定モードによる作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【
図16B】第2設定モードによる作業機の位置を示す作業機械の模式的な背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1の側面図である。
図2は、作業機械1の前部の斜視図である。本実施形態における作業機械1は、モータグレーダである。
図1に示すように、作業機械1は、車体2と作業機3とを備える。作業機3は、車体2に対して動作可能に支持される。車体2は、車体フレーム4と、タンデムドライブ5と、前輪6と、後輪7A,7Bとを含む。
【0012】
車体フレーム4は、前輪6と作業機3とを支持する。車体フレーム4は、フロントフレーム11とリアフレーム12とを含む。リアフレーム12は、フロントフレーム11に接続されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して、左右にアーティキュレート可能である。なお、以下の説明において、前後左右の各方向は、アーティキュレート角が0、すなわち、フロントフレーム11とリアフレーム12とが真っすぐな状態での車体2の前後左右の各方向を意味するものとする。
【0013】
リアフレーム12上には、キャブ13と動力室14とが配置されている。キャブ13には、図示しない運転席が配置されている。動力室14には、後述する駆動系が配置されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12から前方へ延びている。前輪6は、フロントフレーム11に取り付けられている。
【0014】
タンデムドライブ5は、リアフレーム12に接続されている。タンデムドライブ5は、後輪7A,7Bを支持すると共に、後輪7A,7Bを駆動する。タンデムドライブ5は、左右方向に延びる後軸10を含む。タンデムドライブ5は、車体フレーム4のリアフレーム12を後軸10回りに揺動可能に支持する。前輪6が作業機3によって整地されていない路面の起伏によって上下動するとき、車体フレーム4は後軸10回りに揺動する(
図9を参照)。
【0015】
後輪7A,7Bは、一対の第1後輪7Aと、一対の第2後輪7Bとを含む。なお、
図1では、左側の第1後輪7Aと、左側の第2後輪7Bのみが図示されている。第2後輪7Bは、第1後輪7Aの後方に配置されている。後軸10は、第1後輪7Aと第2後輪7Bとの間に配置されている。後軸10は、タンデムドライブ5に対する車体フレーム4の揺動中心となる。
【0016】
作業機3は、車体2に対して可動的に接続されている。作業機3は、支持部材15とブレード16とを含む。支持部材15は、車体2に可動的に接続されている。支持部材15は、ブレード16を支持している。支持部材15は、ドローバ17とサークル18とを含む。ドローバ17とサークル18とは、フロントフレーム11の下方に配置される。
【0017】
図2に示すように、ドローバ17は、フロントフレーム11の軸支部19に接続されている。軸支部19は、フロントフレーム11の前部に配置されている。ドローバ17は、フロントフレーム11の前部から後方へ延びている。ドローバ17は、フロントフレーム11に対して、少なくとも車体2の上下方向と左右方向とに揺動可能に支持されている。例えば、軸支部19は、ボールジョイントを含む。ドローバ17は、ボールジョイントを介して、フロントフレーム11に対して回転可能に接続されている。
【0018】
サークル18は、ドローバ17の後部に接続されている。サークル18は、ドローバ17に対して回転可能に支持される。ブレード16は、サークル18に接続される。ブレード16は、サークル18を介して、ドローバ17に支持されている。ブレード16は、チルト軸21回りに回転可能にサークル18に支持されている。チルト軸21は、左右方向に延びている。ブレード16は、左右方向にスライド可能にサークル18に支持されている。
【0019】
作業機械1は、作業機3の姿勢を変更するための複数のアクチュエータ22-27を備えている。複数のアクチュエータ22-27は、複数の油圧シリンダ22-26を含む。複数の油圧シリンダ22-26は、作業機3に接続されている。複数の油圧シリンダ22-26は、油圧によって伸縮する。複数の油圧シリンダ22-26は、伸縮することで、車体2に対する作業機3の姿勢を変更する。以下の説明では、油圧シリンダの伸縮を「ストローク動作」と呼ぶ。
【0020】
詳細には、複数の油圧シリンダ22-26は、左リフトシリンダ22と、右リフトシリンダ23と、ドローバシフトシリンダ24と、ブレードチルトシリンダ25と、ブレードシフトシリンダ26とを含む。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、左右方向に互いに離れて配置されている。左リフトシリンダ22は、ドローバ17の左部分に接続されている。右リフトシリンダ23は、ドローバ17の右部分に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、ドローバ17に対して左右に揺動可能に接続されている。
【0021】
左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、フロントフレーム11に対して、左右に揺動可能に接続されている。詳細には、左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、リフタブラケット29を介して、フロントフレーム11に接続されている。リフタブラケット29は、フロントフレーム11に接続されている。リフタブラケット29は、左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とを左右に揺動可能に支持している。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とのストローク動作により、ドローバ17は、軸支部19回りに上下に揺動する。それにより、ブレード16が上下に移動する。
【0022】
ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17とフロントフレーム11とに接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、リフタブラケット29を介してフロントフレーム11に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11に対して、揺動可能に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17に対して、揺動可能に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11からドローバ17に向かって、斜め下方に延びている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11の左右の一側方から反対の側方へ向かって延びている。ドローバシフトシリンダ24のストローク動作により、ドローバ17は、軸支部19回りに左右に揺動する。
【0023】
図1に示すように、ブレードチルトシリンダ25は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードチルトシリンダ25のストローク動作により、ブレード16がチルト軸21回りに回転する。
図2に示すように、ブレードシフトシリンダ26は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードシフトシリンダ26のストローク動作により、ブレード16がサークル18に対して左右にスライドする。
【0024】
複数のアクチュエータ22-27は、回転アクチュエータ27を含む。回転アクチュエータ27は、ドローバ17とサークル18とに接続されている。回転アクチュエータ27は、ドローバ17に対してサークル18を回転させる。それにより、ブレード16が、上下方向に延びる回転軸回りに回転する。
【0025】
図3は、作業機械1の駆動系8及び制御系9を示す模式図である。
図3に示すように、作業機械1は、駆動源31と、油圧ポンプ32と、動力伝達装置33と、制御弁34とを備えている。駆動源31は、例えば内燃機関である。或いは、駆動源31は、電動モータ、或いは内燃機関と電動モータとのハイブリッドであってもよい。油圧ポンプ32は、駆動源31によって駆動されることで、作動油を吐出する。
【0026】
制御弁34は、油圧回路を介して油圧ポンプ32と複数の油圧シリンダ22-26とに接続されている。制御弁34は、複数の油圧シリンダ22-26にそれぞれ接続される複数の弁を含む。制御弁34は、油圧ポンプ32から複数の油圧シリンダ22-26に供給される作動油の流量を制御する。
【0027】
本実施形態では、回転アクチュエータ27は、油圧モータである。制御弁34は、油圧回路を介して油圧ポンプ32と回転アクチュエータ27とに接続されている。制御弁34は、油圧ポンプ32から回転アクチュエータ27に供給される作動油の流量を制御する。なお、回転アクチュエータ27は、電動モータであってもよい。
【0028】
動力伝達装置33は、駆動源31からの駆動力を後輪7A,7Bに伝達する。動力伝達装置33は、トルクコンバータ、及び/又は、複数の変速ギアを含んでもよい。或いは、動力伝達装置33は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などのトランスミッションであってもよい。
【0029】
図3に示すように、作業機械1は、第1操作装置35とコントローラ36とを備えている。第1操作装置35は、作業機3の姿勢を変更するためにオペレータによって操作可能である。作業機3の姿勢は、車体2に対するブレード16の位置と向きとを示す。
図4は、作業機3の姿勢を示す作業機械1の模式的な背面図である。
図4に示すように、第1操作装置35の操作に応じて、ブレード16の左端部161の高さと、右端部162の高さとが変更される。
【0030】
第1操作装置35の操作に応じて、ドローバ17のヨー角θ1と、ピッチ角θ2と、ロール角θ3とが変更される。
図5は、作業機3の姿勢を示す作業機械1の模式的な平面図である。
図5に示すように、ドローバ17のヨー角θ1は、車体2の前後方向に対するドローバ17の左右方向の傾斜角度である。なお、ドローバ17のヨー角θ1は、フロントフレーム11の前後方向に対するドローバ17の左右方向の傾斜角度であってもよい。ブレード16の左右方向における位置は、ドローバ17のヨー角θ1に応じて変化する。
【0031】
図6は、作業機3の姿勢を示す作業機械1の模式的な側面図である。
図6に示すように、ドローバ17のピッチ角θ2は、車体2の前後方向に対するドローバ17の上下方向の傾斜角度である。
図4に示すように、ドローバ17のロール角θ3は、車体2の前後方向に延びるロール軸A1回りのドローバ17の傾斜角度である。
【0032】
また、第1操作装置35の操作に応じて、サークル18の回転角θ4と、ブレード16のチルト角θ5と、ブレード16のシフト量W1とが変更される。
図7は、作業機3の姿勢を示す作業機械1の模式的な平面図である。
図7に示すように、サークル18の回転角θ4は、車体2の前後方向に対するサークル18の回転角θ4である。
図6に示すように、ブレード16のチルト角θ5は、左右方向に延びるチルト軸21回りのブレード16の傾斜角である。
図8は、作業機3の姿勢を示す作業機械1の模式的な平面図である。
図8に示すように、ブレード16のシフト量W1は、サークル18に対するブレード16の左右方向へのスライド量である。
【0033】
第1操作装置35は、複数の操作部材41-46を含む。複数の操作部材41-46は、左リフトシリンダ22と、右リフトシリンダ23と、ドローバシフトシリンダ24と、ブレードチルトシリンダ25と、ブレードシフトシリンダ26と、回転アクチュエータ27とのそれぞれに対応して設けられている。
【0034】
複数の操作部材41-46は、左リフトレバー41と、右リフトレバー42と、ドローバシフトレバー43と、回転レバー44と、ブレードチルトレバー45と、ブレードシフトレバー46とを含む。左リフトレバー41の操作に応じて、左リフトシリンダ22が伸縮する。右リフトレバー42の操作に応じて、右リフトシリンダ23が伸縮する。
【0035】
ドローバシフトレバー43の操作に応じて、ドローバシフトシリンダ24が伸縮する。回転レバー44の操作に応じて、回転アクチュエータ27が回転する。ブレードチルトレバー45の操作に応じて、ブレードチルトシリンダ25が伸縮する。ブレードシフトレバー46の操作に応じて、ブレードシフトシリンダ26が伸縮する。複数の操作部材41-46のそれぞれは、オペレータによる各操作部材41-46への操作を示す信号を出力する。
【0036】
コントローラ36は、駆動源31及び動力伝達装置33を制御することで、作業機械1を走行させる。また、コントローラ36は、油圧ポンプ32と制御弁34とを制御することで、作業機3を動作させる。コントローラ36は、プロセッサ37と記憶装置38とを含む。プロセッサ37は、例えばCPUであり、作業機械1を制御するためのプログラムを実行する。記憶装置38は、RAM及びROMなどのメモリと、SSD或いはHDDなどの補助記憶装置を含む。記憶装置38は、作業機械1を制御するためのプログラムとデータとを記憶している。
【0037】
図3に示すように、作業機械1は、上述した作業機3の姿勢を検出するための作業機センサ48を含む。作業機センサ48は、複数のセンサS1-S8を含む。複数のセンサS1-S8は、例えば磁気センサである。ただし、複数のセンサS1-S8は、光学センサなどの他の方式のセンサであってもよい。複数のセンサS1-S5は、上述した複数の油圧シリンダ22-26のストローク長を検出する。複数のセンサS1-S5は、左リフトセンサS1と、右リフトセンサS2と、ドローバシフトセンサS3と、ブレードチルトセンサS4と、ブレードシフトセンサS5とを含む。
【0038】
左リフトセンサS1は、左リフトシリンダ22のストローク長を検出する。右リフトセンサS2は、右リフトシリンダ23のストローク長を検出する。ドローバシフトセンサS3は、ドローバシフトシリンダ24のストローク長を検出する。ブレードチルトセンサS4は、ブレードチルトシリンダ25のストローク長を検出する。ブレードシフトセンサS5は、ブレードシフトシリンダ26のストローク長を検出する。
【0039】
複数のセンサS1-S8は、回転センサS6を含む。回転センサS6は、サークル18の回転角θ4を検出する。複数のセンサS1-S8は、検出したストローク長及び回転角θ4を示す信号を出力する。複数のセンサS1-8は、左シリンダ角度センサS7と右シリンダ角度センサS8とを含む。左シリンダ角度センサS7は、リフタブラケット29に対する左リフトシリンダ22の左右方向の揺動角度を検出する。右シリンダ角度センサS8は、リフタブラケット29に対する右リフトシリンダ23の左右方向の揺動角度を検出する。これらセンサS1-S8により、車体2に対するドローバ17の姿勢が検出されると共に、ドローバ17に対するブレード16の姿勢が検出される。すなわち、これらセンサS1-S8により、車体2に対するブレード16の姿勢が検出される。
【0040】
作業機械1は、車体センサ49を含む。車体センサ49は、例えばIMU(慣性計測装置)である。車体センサ49は、車体2の姿勢を示す車体姿勢データを検出する。車体姿勢データは、車体2のピッチ角とロール角とを含む。なお、車体センサ49はIMUに限定されるものではない。車体センサ49は、車体2のピッチ角とロール角を計測する手段であればよく、例えば傾斜計であってもよい。
【0041】
車体センサ49は、車体フレーム4に取り付けられている。従って、
図9に示すように、車体2のピッチ角θ6は、水平面に対する車体フレーム4の上下方向の傾斜角度である。
図10に示すように、車体2のロール角θ7は、水平面に対する車体フレーム4の左右方向の傾斜角度である。なお、車体センサ49は、車体フレーム4に限らず、車体フレーム4に対する相対位置が変化しない車体2の他の場所に取り付けられてもよい。例えば、車体センサ49は、タンデムドライブ5やドローバ17等の車体フレーム4に対する相対位置が変化する場所以外の他の場所に配置されてもよい。
【0042】
コントローラ36は、作業機センサ48からの信号に基づいて、車体2に対する作業機3の姿勢を示す作業機姿勢データを取得する。作業機姿勢データは、上述したブレード16の左端部161の高さと、右端部162の高さと、ドローバ17のヨー角θ1と、ピッチ角θ2と、ロール角θ3と、サークル18の回転角θ4と、ブレード16のチルト角θ5と、ブレード16のシフト量W1とを含む。コントローラ36は、車体センサ49からの信号に基づいて、車体姿勢データを取得する。
【0043】
作業機械1は、モード選択スイッチ47を備えている。モード選択スイッチ47は、作業機3の制御モードを選択するためにオペレータによって操作可能である。モード選択スイッチ47は、例えばキャブ13のピラー上に配置される。モード選択スイッチ47は、マニュアルモードの操作位置と、自動制御モードの操作位置とに操作可能である。コントローラ36は、モード選択スイッチ47の操作位置に応じた制御モードにて、複数のアクチュエータ22-27を制御する。
【0044】
コントローラ36は、モード選択スイッチ47によってマニュアルモードが選択されている場合には、複数の操作部材41-46の操作に応じて、複数のアクチュエータ22-27を制御することで、作業機3の姿勢を変更する。例えば、左リフトレバー41と右リフトレバー42とは、上昇方向と下降方向とにそれぞれ操作可能である。
【0045】
左リフトレバー41が上昇方向に操作されることで、コントローラ36は、ブレード16の左端部161が上昇するように、複数のアクチュエータ22-27を制御する。左リフトレバー41が下降方向に操作されることで、コントローラ36は、ブレード16の左端部161が下降するように、複数のアクチュエータ22-27を制御する。
【0046】
右リフトレバー42が上昇方向に操作されることで、コントローラ36は、ブレード16の右端部162が上昇するように、複数のアクチュエータ22-27を制御する。右リフトレバー42が下降方向に操作されることで、コントローラ36は、ブレード16の右端部162が下降するように、複数のアクチュエータ22-27を制御する。
【0047】
左リフトレバー41と右リフトレバー42とが共に上昇方向に操作されることで、コントローラ36は、ブレード16を上方に並行移動させる。左リフトレバー41と右リフトレバー42とが共に下降方向に操作されることで、コントローラ36は、ブレード16を下方に並行移動させる。
【0048】
コントローラ36は、モード選択スイッチ47によって自動制御モードが選択されている場合には、上述した車体姿勢データと、作業機姿勢データとに基づいて、作業機3の自動制御を実行する。コントローラ36は、自動制御において、車体2の姿勢が変化しても、重力方向における作業機3の高さを目標高さに維持するようにアクチュエータを制御する。以下、作業機3の自動制御の処理について説明する。
図11は、作業機3の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0049】
図11に示すように、ステップS101では、コントローラ36は、第1操作装置35の操作があるかを判定する。コントローラ36は、第1操作装置35の操作入力が一定時間無かった場合に、第1操作装置35の操作が行われなくなったと判断してもよい。上述した操作部材41-46の少なくとも1つが操作されているときには、コントローラ36は、作業機3の自動制御を実行しない。従って、コントローラ36は、複数の操作部材41-46の操作に応じて、複数のアクチュエータ22-27を制御することで、作業機3の姿勢を変更する。操作部材41-46が操作されていないときには、処理はステップS102に進む。
【0050】
ステップS102では、コントローラ36は、車体2の現在の姿勢を取得する。ここでは、コントローラ36は、車体姿勢データにより、車体2の現在の姿勢を取得する。ステップS103では、コントローラ36は、作業機3の現在の姿勢を取得する。ここでは、コントローラ36は、作業機姿勢データにより、作業機3の現在の姿勢を取得する。
【0051】
ステップS104では、コントローラ36は、作業機3の現在の高さを算出する。コントローラ36は、車体姿勢データと、作業機姿勢データとに基づいて、作業機3の高さを算出する。例えば、作業機3の高さは、ブレード16の左端部161の高さと右端部162の高さである。ここで、作業機3の高さは、
図12に示す車体2の原点O1を基準点として、原点O1からの重力方向における高さを意味する。例えば、作業機3の高さは、車体2の原点O1を含む水平面からの重力方向における作業機3の高さを意味する。
【0052】
図12に示すように、作業機械1が前進して作業を行う場合、車体2の原点O1は、タンデムドライブ5に配置される。例えば、車体2の原点O1は、後軸10の左右方向における中心に配置される。
図12において、Z1軸は、重力方向を示している。X1軸は、重力方向に垂直な車体2の前後方向を示している。
図4において、Y1軸は、重力方向に垂直な車体2の左右方向を示している。車体2の姿勢は、車体2の原点O1を中心に変化する。例えば、
図9に示すように、車体2のピッチ角θ6は、原点O1を中心に変化する。
図10に示すように、車体2のロール角θ7は、原点O1を中心に変化する。なお、
図10において、θ8はクロススロープ角である。
【0053】
ステップS105では、コントローラ36は、作業機3の目標姿勢を決定する。コントローラ36は、ブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さが目標高さとなるような、作業機3の目標姿勢を算出する。例えば、コントローラ36は、ブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さが目標高さとなるような、ドローバ17の目標ピッチ角と目標ロール角を算出する。目標高さの設定方法については、後述する。
【0054】
ステップS106では、コントローラ36は、ブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さが目標高さとなるように、アクチュエータ22-27の少なくとも1つを制御する。例えば、コントローラ36は、ドローバ17のピッチ角θ2が目標ピッチ角となり、且つ、ドローバ17のロール角θ3が目標ロール角となるように、リフトシリンダ22,23とドローバシフトシリンダ24とを制御する。
【0055】
この場合、コントローラ36は、ブレード16の左右方向の位置を変化させないように、リフトシリンダ22,23とドローバシフトシリンダ24とを制御する。すなわち、作業機械1においては、リフトシリンダ22,23の伸縮により、ブレード16の高さ方向だけでなく、ブレード16の左右方向の位置も変化してしまう。そのため、コントローラ36は、リフトシリンダ22,23の伸縮によるブレード16の左右方向の位置の変化を相殺するように、ドローバシフトシリンダ24を制御する。それにより、作業機3の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さが目標高さに維持されると共に、作業機3の左右方向の位置が維持される。作業機3の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さが目標高さに維持される結果として、作業機3のクロススロープ角θ8も変化せずに一定に保たれる。
【0056】
コントローラ36は、上述したステップS102~S106の処理を繰り返すことで、作業機3の左端部161と右端部162とのそれぞれを目標高さに保持するように、アクチュエータ22-27を制御する。また、コントローラ36は、自動制御中に第1操作装置35が操作されたときには、自動制御を終了する(ステップS101)。
【0057】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1によれば、自動制御によって、作業機3が、作業機3の目標高さに保持される。目標高さは、車体2の原点O1からの重力方向における高さであり、車体2の姿勢が変化しても、作業機3が、作業機3の目標高さに保持される。そのため、作業機械1が起伏のある地面を走行するときであっても、作業機3が目標高さに精度よく保持される。
【0058】
例えば、
図9において、破線で示すブレード16’は、自動制御が行われない場合のブレード16の位置を示している。
図9に示すように、自動制御が行われない場合、前輪6が起伏に乗り上げたときに、ブレード16’は、
図12に示すブレード16の位置よりも上昇してしまう。しかし、本実施形態に係る作業機械1では、
図9に示すように、自動制御によって、ブレード16が、重力方向における作業機3の目標高さに保持される。そのため、前輪6が起伏に乗り上げても、コントローラ36がアクチュエータ22-27を制御することで、ブレード16が目標高さに精度よく保持される。
【0059】
また、自動制御によって、車体2の姿勢が変化しても、ブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さが維持されることで、作業機3のクロススロープ角θ8が維持される。
図4及び
図10に示すように、クロススロープ角θ8は、車体2の後方から見た水平面HPに対するブレード16の横方向の傾斜角度である。そのため、作業機械1が起伏のある地面を走行するときであっても、作業機3のクロススロープ角θ8が維持される。例えば、
図13A及び
図13Bは、車体2のロール角θ7が変化した場合のブレード16の姿勢を示している。本実施形態に係る作業機械1では、車体2のロール角θ7が、
図13Aから
図13Bに示すように変化しても、コントローラ36が自動制御によってアクチュエータ22-27を制御することで、作業機3のクロススロープ角θ8が維持される。
【0060】
次に、作業機3の目標高さとクロススロープ角θ8の設定方法について説明する。
図3に示すように、作業機械1は、第2操作装置39を備えている。第2操作装置39は、自動制御の設定モードを、ブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの目標高さを個別に設定するための第1設定モードと、クロススロープ角θ8を維持しながらブレード16の左端部161と右端部162との目標高さを設定するための第2設定モードとに切り替えるように、操作可能である。
【0061】
コントローラ36は、第1設定モードでは、第1操作装置35の操作に応じてブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さを個別に変更し、変更されたブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さを目標高さとして設定する。コントローラ36は、第2設定モードでは、第1操作装置35の操作に応じて作業機3のクロススロープ角θ8を維持しながらブレード16の左端部161と右端部162との高さを変更し、変更されたブレード16の左端部161と右端部162とのそれぞれの高さを目標高さとして設定する。
【0062】
詳細には、第2操作装置39は、左リフトレバー41に対応する左設定スイッチ51と、右リフトレバー42に対応する右設定スイッチ52とを含む。左設定スイッチ51と右設定スイッチ52とは、オン状態とオフ状態とにそれぞれ操作可能である。左設定スイッチ51と右設定スイッチ52とは、例えば押しボタンスイッチである。左設定スイッチ51は、左リフトレバー41に取り付けられている。右設定スイッチ52は、右リフトレバー42に取り付けられている。
【0063】
コントローラ36は、左設定スイッチ51と右設定スイッチ52との両方がオン状態である場合には、自動制御の設定モードを第1設定モードとする。第1設定モードでは、コントローラ36は、左リフトレバー41の操作に応じて、ブレード16の左端部161の高さを変更する。コントローラ36は、右リフトレバー42の操作に応じて、ブレード16の右端部162の高さを変更する。
【0064】
図14A及び
図14Bは、第1設定モードにおいて、左リフトレバー41が操作された場合のブレード16の位置を示している。コントローラ36は、左リフトレバー41の操作に応じて、ブレード16の左端部161を、
図14Aに示す位置から
図14Bに示す位置に、重力方向において上下に移動させながら右端部162の高さを維持する。この場合、左端部161の移動に応じて、クロススロープ角θ8は変化する。コントローラ36は、左リフトレバー41の操作が行われなくなったと判定したときの左端部161の高さを、左端部161の目標高さとして設定する。
【0065】
図15A及び
図15Bは、第1設定モードにおいて、右リフトレバー42が操作された場合のブレード16の位置を示している。コントローラ36は、右リフトレバー42が操作された場合には、ブレード16の右端部162を、
図15Aに示す位置から
図15Bに示す位置に、重力方向において上下に移動させながら左端部161の高さを維持する。この場合、右端部162の移動に応じて、クロススロープ角θ8は変化する。コントローラ36は、右リフトレバー42の操作が行われなくなったと判定したときの右端部162の高さを、右端部162の目標高さとして設定する。
【0066】
コントローラ36は、左設定スイッチ51と右設定スイッチ52とのいずれか一方のみがオン状態である場合には、自動制御の設定モードを第2設定モードとする。
図16A及び
図16Bは、右設定スイッチ52のみがオン状態であり、左設定スイッチ51がオフ状態であり、左リフトレバー41が操作されたとき場合の作業機3の位置を示している。コントローラ36は、左リフトレバー41の操作に応じて、作業機3のクロススロープ角θ8を維持しながらブレード16の左端部161の高さを変更する。すなわち、コントローラ36は、クロススロープ角θ8を維持するように、左リフトレバー41の操作に応じて、ブレード16の左端部161と右端部162との高さを変更する。
【0067】
左設定スイッチ51のみがオン状態であり、右設定スイッチ52がオフ状態であり、右リフトレバー42が操作された場合には、コントローラ36は、右リフトレバー42の操作に応じて、作業機3のクロススロープ角θ8を維持しながらブレード16の右端部162の高さを変更する。すなわち、
図16A及び
図16Bと同様に、コントローラ36は、クロススロープ角θ8を維持するように、右リフトレバー42の操作に応じて、ブレード16の右端部162と左端部161との高さを変更する。
【0068】
なお、左設定スイッチ51のみがオン状態であり、左リフトレバー41が操作された場合には、コントローラ36は、
図14A及び
図14Bと同様に、ブレード16の右端部162の高さを維持しながら、左リフトレバー41の操作に応じてブレード16の左端部161を鉛直方向において上下に移動させる。それにより、作業機3のクロススロープ角θ8が変更される。右設定スイッチ52のみがオン状態であり、右リフトレバー42が操作された場合には、コントローラ36は、
図15A及び
図15Bと同様に、ブレード16の左端部161の高さを維持しながら、右リフトレバー42の操作に応じてブレード16の右端部162を鉛直方向において上下に移動させる。それにより、作業機3のクロススロープ角θ8が変更される。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
作業機械1は、モータグレーダに限らず、ブルドーザなどの他の作業機械1であってもよい。ブルドーザなどの他の作業機械1においては、原点O1の位置は作業機械1の構造上の特性に応じて、適宜設定することができる。作業機3の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、作業機3は、ブレード16とリフトアームとを含んでもよい。リフトアームは、ブレード16を支持し、車体2に接続されてもよい。作業機3の姿勢を示すパラメータは、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0071】
複数の操作部材41-46は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、操作部材は、レバーに限らず、ジョイスティック、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。複数の操作部材41-46は、アクチュエータ22-27のそれぞれを直接的に操作するものであってもよい。
【0072】
左設定スイッチ51と右設定スイッチ52とは、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、左設定スイッチ51と右設定スイッチ52とは、スライド式、或いは回転式のスイッチであってもよい。左設定スイッチ51と右設定スイッチ52とは、それぞれ左リフトレバー41と右リフトレバー42と異なる場所に配置されてもよい。
【0073】
作業機3の姿勢を検出するためのセンサは、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。センサS1-S5は、ストローク長に限らず、角度を直接的に検出してもよい。作業機センサ48は、IMU(慣性計測装置)を含んでもよい。IMUは、ドローバ17に装着されてもよい。IMUによって、ドローバ17の姿勢が検出されてもよい。左シリンダ角度センサS7と右シリンダ角度センサS8とのいずれか一方が省略されてもよい。
【0074】
第1操作装置35は、自動制御の開始/終了のための操作部材を含んでもよい。コントローラ36は、自動制御のための操作部材の操作に応じて、自動制御を開始してもよい。コントローラ36は、自動制御のための操作部材の操作に応じて、自動制御を終了してもよい。コントローラ36は、自動制御のための操作部材の操作に応じて、自動制御が開始されたときの作業機3の高さを、目標高さとして記憶してもよい。
【0075】
上述した自動制御において、車体2の姿勢(角度)、或いは、姿勢の変化(角速度)が所定値を超えるような場合には、センサS1-S8による検出誤差が大きくなる可能性がある。また、所定量以上の急加速、或いは、急減速が行われた場合にも、センサS1-S8の反応速度が追い付かない可能性がある。このような場合に、コントローラ36は、自動制御を一時的に解除してもよい。コントローラ36は、作業機3の目標姿勢と現在の姿勢との差が所定の閾値を超える場合に、自動制御を一時的に解除してもよい。
【0076】
上述した実施形態においては、作業機械1が前進して作業を行う場合の自動制御について説明したが、作業機械1が後進して作業を行う場合に対して、本発明が適用されてもよい。その場合、車体2の原点Oは、左右の前輪6の間の中心位置であってもよい。
【0077】
上述した実施形態においては、コントローラ36は、第1操作装置35の操作が一定時間無かったときの作業機3の姿勢を取得し、そのときの作業機3の高さを、作業機3の現在の高さとして取得している。しかし、作業機3の現在の高さを取得するための方法は、これに限らず、変更されてもよい。
【0078】
例えば、コントローラ36は、押しボタンなどの操作装置の操作が行われたときの作業機3の姿勢を取得し、そのときの作業機3の高さを、作業機3の目標高さとして取得してもよい。取得された作業機3の目標高さを所定量だけ増減させるためのスイッチが設けられてもよい。コントローラ36は、スイッチの操作に応じて、作業機3の目標高さを変更してもよい。それにより、作業機3の目標姿勢を微調整することができる。
【0079】
モード選択スイッチ47の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、モード選択スイッチ47は、マニュアルモードの操作位置と、自動制御の第1設定モードの操作位置と、自動制御の第2設定モードの操作位置とに操作可能であってもよい。
【0080】
コントローラ36は、スイッチ或いはタッチパネルなどの入力装置によって、クロススロープ角θ8の目標角度が入力されることで、クロススロープ角θ8の目標角度を取得してもよい。コントローラ36は、クロススロープ角θ8の目標角度と、ブレード16の左端部161の高さから、右端部162の目標高さを算出してもよい。コントローラ36は、クロススロープ角θ8の目標角度と、ブレード16の右端部162の高さから、左端部161の目標高さを算出してもよい。
【0081】
或いは、コントローラ36は、押しボタンなどの操作装置の操作が行われたときの作業機3の姿勢を取得し、そのときの作業機3のクロススロープ角θ8を、作業機3の目標角度として取得してもよい。取得された作業機3の目標角度を所定量だけ増減させるためのスイッチが設けられてもよい。コントローラ36は、スイッチの操作に応じて、作業機3の目標角度を変更してもよい。それにより、作業機3の目標姿勢を微調整することができる。
【0082】
上記の実施形態では、第2設定モードにおいて、オン状態の設定スイッチに対応するブレード16の左右の端部の一方の高さが維持されると共に、オフ状態の設定スイッチに対応するブレード16の左右の端部の他方の高さがオペレータによるリフトレバーの操作によって変更可能となる。ただし、上記の実施形態とは逆に、第2設定モードにおいて、オフ状態の設定スイッチに対応するブレード16の左右の端部の一方の高さが維持されると共に、オン状態の設定スイッチに対応するブレード16の左右の端部の他方の高さがオペレータによるリフトレバーの操作によって変更可能となってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示によれば、車体の姿勢が変化しても、重力方向における作業機の高さとクロススロープ角とが維持される。そのため、作業機械が起伏のある地面を走行するときであっても、作業機の高さとクロススロープ角とが精度よく維持される。
【符号の説明】
【0084】
2:車体、 3:作業機、 4:車体フレーム、 22-27:アクチュエータ、 35:第1操作装置、 36:コントローラ、 39:第2操作装置、 41:左リフトレバー、 42:右リフトレバー、 51:左設定スイッチ、 52:右設定スイッチ