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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060727
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】凸版印刷版の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B41C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168187
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 浩一
(72)【発明者】
【氏名】井戸 健二
【テーマコード(参考)】
2H084
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084AA32
2H084BB04
2H084CC01
(57)【要約】
【課題】ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化を抑制し、良好な印刷物を得ることのできる凸版印刷版を提供すること。
【解決手段】支持体上に印刷レリーフを形成する工程および印刷レリーフをホウ酸系化合物溶液に接触させる工程を有する凸版印刷版の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に印刷レリーフを形成する工程および印刷レリーフをホウ酸系化合物溶液に接触させる工程を有する凸版印刷版の製造方法。
【請求項2】
前記印刷レリーフがポリビニルアルコールを含む請求項1の凸版印刷版の製造方法。
【請求項3】
前記ホウ酸系化合物溶液におけるホウ酸系化合物濃度が0.5重量%以上20重量%以下である請求項1または2に記載の凸版印刷版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凸版印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凸版印刷は、凸状の印刷レリーフの頂点にインキを塗布し、被印刷体にインキを転写する印刷方式であり、樹脂凸版印刷やフレキソ印刷などが挙げられる。これらの中で、フレキソ印刷は、その柔軟性を活かして、紙器、ラベル、軟包装用途やエレクトロニクス用途などに広く使用されている。フレキソ印刷に用いられるフレキソ印刷版のレリーフを形成する方法としては、例えば、フレキソ印刷版原版の感光性樹脂層に、画像マスクや原画フィルムを介して紫外線を照射して画像部を選択的に光硬化させ、未硬化部分を現像液により除去する方法や、フレキソ印刷版原版の樹脂層を、レーザーを用いて直接画像様に彫刻する方法などが挙げられる。
【0003】
近年、環境への配慮から、露光・現像により印刷レリーフを形成する方法において、水により現像可能なフレキソ印刷版原版の開発が進んでおり、例えば、イオン性を有する官能基を含む樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性モノマー(C)、および樹脂(A)と対イオンを形成しうるイオン性官能基を有するフッ素含有化合物(D)を含む感光性樹脂組成物を用いてなる感光性樹脂印刷版原版(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。また、現像工程を不要として現像廃液の課題を解決する、レーザーを用いた彫刻により印刷レリーフを形成する方法に用いられる印刷版原版として、例えば、支持体および支持体上に樹脂層を有し、樹脂層が(A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(B)塩基性窒素を有するポリアミド、(C)5~7員環を有し、かつ重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物、および(D)光重合開始剤を含有するレーザー彫刻用樹脂印刷原版(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/088336号
【特許文献2】国際公開第2014/129243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来技術の印刷版原版から得られる印刷版によりロングラン印刷を行うと、ベタ部の印刷濃度が低下したり、網点径が細るという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化を抑制し、良好な印刷物を得ることのできる凸版印刷版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は主として以下の構成を有する。
支持体上に印刷レリーフを形成する工程および印刷レリーフをホウ酸系化合物溶液に接触させる工程を有する凸版印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化を抑制し、良好な印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における凸版印刷版とは、支持体上に印刷レリーフを有する印刷版を指し、例えば、樹脂凸版印刷版やフレキソ印刷版などが挙げられる。前述のとおり、凸版印刷版を用いた印刷においては、ロングラン印刷の際に、ベタ部の印刷濃度(ベタ濃度)の低下や網点径が細る課題があった。本発明者らは、かかるベタ濃度の低下や網点径の細りは、印刷レリーフ中の未硬化成分が、印刷中に徐々にインキ中に抽出され、印刷レリーフの高さが低くなったり、印刷レリーフの径が小さくなったりすることによるものであることを見出した。そこで、本発明においては、支持体上に印刷レリーフを形成する工程(以下、「レリーフ形成工程」と記載する場合がある)に加えて、印刷レリーフをホウ酸系化合物溶液に接触させる工程(以下、「表面処理工程」と記載する場合がある)を有することを特徴とする。表面処理工程において、ホウ酸系化合物が、印刷レリーフに含まれるバインダー樹脂と反応して緻密な皮膜を形成するため、印刷レリーフ中の未硬化成分のインキ中への抽出を抑制し、ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化を抑制し、良好な印刷物を得ることができる。なお、表面処理工程に用いるホウ酸系化合物溶液を、「表面処理液」と記載する場合がある。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
まず、レリーフ形成工程において、支持体上にレリーフを形成する。印刷レリーフ形成方法としては、例えば、露光・現像により印刷レリーフを形成する場合、例えば、国際公開第2018/088336号において記載された感光性樹脂原版を用いて、同文献に製版方法として記載された方法により、印刷レリーフを形成する方法が挙げられる。また、レーザー彫刻により印刷レリーフを形成する場合、例えば、国際公開第2014/129243号において記載されたレーザー彫刻用樹脂印刷原版を用いて、同文献に印刷版の製造方法として記載された方法により、印刷レリーフを形成する方法が挙げられる。
【0012】
印刷レリーフには、バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを含むことが好ましく、後述する表面処理工程において、ホウ酸系化合物との反応により緻密な皮膜を形成しやすく、印刷レリーフ中の未硬化成分のインキ中への抽出をより抑制し、ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化をより抑制することができる。ポリビニルアルコールは、完全ケン化、部分ケン化のいずれでもよいが、ホウ酸系化合物との反応性の観点から、部分ケン化ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は、印刷レリーフ中の未硬化成分のインキ中への抽出をより効果的に抑制し、ベタ濃度や網点径の変化をより抑制する観点から、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい一方、ポリビニルアルコールのケン化度は、ホウ酸系化合物との反応性の観点から、99モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。また、ポリビニルアルコールは、カルボキシル基やアクリロイル基を有してもよい。かかるポリビニルアルコールを含む印刷レリーフを有する凸版印刷版としては、例えば、国際公開第2018/088336号において記載された凸版印刷用印刷版などが挙げられる。
【0013】
次に、表面処理工程について説明する。本発明においては、表面処理液としてホウ酸系化合物溶液を用いることを特徴とする。
【0014】
ホウ酸系化合物としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、八ホウ酸や、それらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、それらの無水物や水和物、ホウ素酸化物などが挙げられる。ホウ酸のアルカリ金属塩としては、例えば、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸リチウム、五ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸カリウム、八ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。ホウ酸のアンモニウム塩としては、例えば、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウムなどが挙げられる。ホウ素酸化物としては、例えば、三酸化二ホウ素が挙げられる。これらを2種以上もちいてもよい。これらの中でも、溶媒への溶解性の観点から、オルトホウ酸、四ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム十水和物が好ましい。
【0015】
ホウ酸系化合物溶液に用いる溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどのアルコールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ホウ酸系化合物の溶解性の観点から、水が好ましい。
【0016】
ホウ酸系化合物溶液におけるホウ酸系化合物の濃度は、より短時間で表面処理工程による効果を得る観点から、0.5重量%以上が好ましく、2.0重量%以上がより好ましい。一方、ホウ酸系化合物溶液におけるホウ酸系化合物の濃度は、ホウ酸系化合物の析出を抑制する観点から、20重量%以下が好ましい。
【0017】
ホウ酸系化合物溶液には、さらに、防腐剤、着色剤、フッ素系やシリコン系の表面張力調整剤、界面活性剤、消泡剤、シリカ、フッ素樹脂などの粒子を含有してもよい。
【0018】
印刷レリーフにホウ酸系化合物溶液を接触させる方法としては、例えば、印刷版をホウ酸系化合物溶液に浸漬する方法、ホウ酸系化合物溶液を含ませたスポンジや布で印刷レリーフを拭く方法、印刷レリーフにホウ酸系化合物溶液を噴霧する方法などが挙げられる。これらを連続的に行ってもよいし、バッチ式で行ってもよい。
【0019】
表面処理工程におけるホウ酸系化合物溶液の温度は、ホウ酸系化合物の析出を抑制する観点から、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。一方、表面処理工程におけるホウ酸系化合物溶液の温度は、溶媒の揮発を抑制する観点から、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0020】
表面処理工程における処理時間は、印刷レリーフ中の未硬化成分のインキ中への抽出をより抑制し、ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化をより抑制する観点から、10秒間以上が好ましく、1分間以上がより好ましい。一方、表面処理工程における処理時間は、作業の効率の観点から、1時間以下が好ましい。
【0021】
表面処理工程の後、印刷レリーフ表面に残存するホウ酸系化合物溶液を除去する乾燥工程を有することが好ましい。乾燥工程において、ホウ酸系化合物と印刷レリーフに含まれるバインダー樹脂との反応により緻密な皮膜を形成し、印刷レリーフ中の未硬化成分のインキ中への抽出を抑制し、ロングラン印刷においても、ベタ濃度や網点径の変化をより抑制することができる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。これらの中でも、作業の効率の観点から、加熱乾燥が好ましい。加熱乾燥の加熱温度は、乾燥速度の観点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。乾燥時間は、5分間以上が好ましい。
【実施例0022】
各実施例および比較例に用いたフレキソ印刷版原版の作製方法を以下に示す。
【0023】
(製造例1)フレキソ印刷版原版の作製
[支持体の作製]
“バイロン”(登録商標)31SS(飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡(株)製)260重量部およびPS-8A(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2重量部の混合物を、70℃で2時間加熱した後、30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7重量部を加えて、2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、東ソー(株)製)25重量部およびEC-1368(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14重量部を添加して混合し、プライマ層組成物溶液を得た。
【0024】
厚さ188μmの“ルミラー”(登録商標)T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、バーコーターを用いて、プライマ層組成物溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、180℃のオーブンで3分間加熱して溶媒を除去し、プライマ層を形成した。
【0025】
“ゴーセノール”(登録商標)KH-17(ケン化度78.5~81.5モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、重量平均分子量165,000、日本合成化学工業(株)製)50重量部を“ソルミックス”(登録商標)H-11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200重量部および水200重量部の混合溶媒中70℃で2時間混合した後、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日油(株)製)1.5重量部を添加して1時間混合し、さらにジメチルアミノエチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート)共重合体(重量比2/1)(共栄社化学(株)製)3重量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルメチルケタール、BASF社製)5重量部、エポキシエステル70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21重量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20重量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却した後、“メガファック”(登録商標)F-556(DIC(株)製)を0.1重量部添加して30分間混合し、接着層組成物溶液を得た。
【0026】
前述のプライマ層上に、バーコーターを用いて、接着層組成物溶液を、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、160℃のオーブンで3分間加熱して溶媒を除去し、接着層を形成した。
【0027】
その後、接着層側から、超高圧水銀灯(JP2000T、(株)オーク製作所製)を用いて積算光量1,000mJ/cmの露光処理を行い、接着層/プライマ層/PETフィルムで構成される支持体を得た。
【0028】
[感光性樹脂層の形成]
ケン化度70~74モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製JR-05)をアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去して乾燥し、カルボキシル基含有ポリマーを得た。酸価を測定したところ、10.0mgKOH/gであった。
【0029】
撹拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、カルボキシル基含有ポリマーを40質量部、可塑剤としてトリメチロールプロパン(重量平均分子量:134)30質量部、溶媒としてアルコール混合物(日本アルコール(株)製“ソルミックス”(登録商標)H-11)40質量部および蒸留水60質量部を入れた後、撹拌しながら77℃で2時間加熱し、カルボキシル基含有ポリマーおよび可塑剤を溶解させた。
【0030】
この溶解物を70℃に冷却した後、グリシジルメタクリレート5質量部を添加し、1時間撹拌した。この時、グリシジルメタクリレートはカルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との付加反応により、グリシジル基が開環し、水酸基が生成している。
【0031】
次いで、モノマーとしてポリエチレングリコールモノメタクリレート(水酸基1官能、日油(株)製“ブレンマー”(登録商標)AE400)10質量部およびポリエチレングリコールジメタクリレート(日油(株)製“ブレンマー”(商標登録)AD400)10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1.3質量部、撥インキ剤としてフッ素含有4級アンモニウム塩化合物((株)ネオス製“フタージェント”(登録商標)320)0.6質量部、紫外線吸収剤として2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール0.05質量部を添加して60分間撹拌し、感光性樹脂層組成物溶液を得た。
【0032】
得られた感光性樹脂層組成物溶液を、支持体のプライマ層上に、乾燥後の版厚(支持体+感光性樹脂層)が1.14mmとなるよう調整して流延し、60℃で2.5時間乾燥し、支持体上に感光性樹脂層を形成した。
【0033】
[CTP版用カバーフィルムの作製]
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”(登録商標)KL-05(ケン化度78.5モル%~82.0モル%、重量平均分子量38,000)11重量部を水55重量部、メタノール14重量部、n-プロパノール10重量部およびn-ブタノール10重量部に溶解させ、剥離補助層組成物溶液を得た。
【0034】
カーボンブラックMA100(三菱化学(株)製)23重量部、“ダイヤナール”(登録商標)BR-95(アルコール不溶性のアクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製)15重量部、可塑剤ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、(株)ジェイ・プラス製)1重量部およびメチルイソブチルケトン30重量部をあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液を調製した。
【0035】
カーボンブラック分散液に、AER6071(エポキシ樹脂、旭化成ケミカルズ(株)製)1重量部、“ユーバン”(登録商標)20SE60(メラミン樹脂、三井化学(株)製)1重量部、ライトエステルP-1M(リン酸モノマー、共栄社化学(株)製)0.05重量部およびメチルイソブチルケトン100重量部を添加して30分間撹拌し、感熱マスク層組成物溶液を得た。
【0036】
“ゴーセノール”(登録商標)AL-06(ケン化度91~94モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、重量平均分子量46,500、日本合成化学工業(株)製)を水:エタノール=50:50(重量比)の混合溶媒に溶解させ、接着力調整層用組成物溶液を得た。
【0037】
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製)上に、バーコーターを用いて、剥離補助層組成物溶液を、乾燥後の厚みが0.1μmになるように塗布し、120℃で20秒間乾燥し、剥離補助層を形成した。
【0038】
次に、剥離補助層上に、バーコーターを用いて、感熱マスク層組成物溶液を、乾燥後の厚みが1.0μmになるように塗布し、140℃で20秒間乾燥し、感熱マスク層を形成した。
【0039】
さらに、感熱マスク層上に、バーコーターを用いて、接着力調整層組成物溶液を、乾燥後の厚みが1.0μmになるように塗布し、120℃で20秒間乾燥し、接着力調整層を形成した。このようにして、接着力調整層/感熱マスク層/剥離補助層/保護層の積層体であるCTP版用カバーフィルムを得た。
【0040】
[フレキソ印刷版原版の作製]
前述の方法により得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶媒を塗布し、前述の方法により得られたCTP版用カバーフィルムを、接着力調整層が感光性樹脂層側になるように圧着し、フレキソ印刷版原版を得た。
【0041】
(製造例2)彫刻用フレキソ印刷版原版の作製
前述の(製造例1)フレキソ印刷版原版の作製と同様の方法により、支持体上に感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶媒を塗布し、カバーフィルムとして厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製)を圧着した。次いで、支持体側およびカバーフィルム側各々から、高輝度ケミカル灯(Philips社製TL-K 40W/10R)を用いて、積算光量が各々12,000mJ/cm程度になるように露光を行い、彫刻用フレキソ印刷版原版を得た。
【0042】
各実施例および比較例におけるベタ濃度および網点径の変化量の評価方法を以下に示す。
【0043】
各実施例および比較例により得られた凸版印刷版を、1,000線のアニロックスロールを具備したフレキソ印刷機(MPS)の版胴に、0.38μm厚のクッションテープ(TESA社製tesa“softprint”(登録商標)52017)を用いて取り付けた。フレキソインキ((株)T&K TOKA製UVフレキソ紅PHA-LO3)を用いて、70m/分の速さでアート紙に印刷した。印圧は、徐々に印可し、ベタ部のかすれがなくなる印圧から60μm押し込んだ条件で固定した。100m印刷した時点および10,000印刷した時点それぞれにおいて印刷物を採取し、以下の方法によりベタ濃度と網点径を測定した。
【0044】
(1)ベタ濃度
40mm×40mmのベタ部から無作為に選択した10箇所について、印刷濃度を、分光測色・濃度計(X-rite社製“SpectroEye”(登録商標))を用いて印刷濃度を測定し、その平均値を算出してベタ濃度とした。100m印刷した時点のベタ濃度と10,000印刷した時点のベタ濃度の差を変化量として算出した。変化量が小さいほど、ロングラン印刷におけるベタ濃度の低下が抑制されていると評価できる。
【0045】
(2)網点径の変化率
光学顕微鏡デジタルマイクロスコープVHX-2000((株)キーエンス製)を用いて、レンズZ250、200倍の条件で、175線30%網点部分を拡大観察して無作為に選択した10箇所の網点の直径を測定し、その平均値を算出した。測定した網点径の、CTPにおけるデータ上の網点径である105μmからの変化率(%)を算出した。100m印刷した時点の網点径の変化率と10,000印刷した時点の網点径の変化率の差を変化量として算出した。変化量が小さいほど、ロングラン印刷における網点細りが抑制されていると評価できる。なお、網点径の変化率の値は、マイナス値が網点細り、プラス値が網点太りを意味する。
【0046】
(実施例1)
(1)レリーフ形成工程
前述の(製造例1)により得られたフレキソ印刷版原版を10cm×10cmに切り出し、支持体側から、高輝度ケミカル灯(Philips社製TL-K 40W/10R)を用いて、積算光量が700mJ/cm程度になるように、裏露光を行った。次いで、カバーフィルムを剥離し、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム式プレートセッター(エスコ・グラフィックス(株)製CDI SPARK 2530)に、支持体側がドラムに接するように装着し、印刷レリーフのテストパターン(175線1%~50%網点、幅30μmの細線、直径120μmの独立点、300μm幅の抜き線および40mm×40mmのベタ部を有する)を出力2.4J/cmのレーザーで描画し、感熱マスク層から画像マスクを形成した。その後、大気下において、裏露光と同じく高輝度ケミカル灯TL-K 40W/10Rを用いて、積算光量が12,000mJ/cm程度になるように、画像マスク側から主露光を行った。その後、バッチ式露光現像機(Inglese,s.r.l.製Inglese W43)を用いて、25℃に温度調整した水道水を現像液として80秒間現像し、60℃のオーブンで10分間乾燥した。次いで高輝度ケミカル灯TL-K 40W/10Rを用いて、積算光量が12,000mJ/cm程度になるように後露光を行い、印刷レリーフを形成した。得られた印刷レリーフのうち、175線3%網点を、ルーペを用いて拡大観察したところ、網点100個中100個再現できていた。
【0047】
(2)表面処理工程
オルトホウ酸(関東化学(株)製)を水に溶解して濃度0.5重量%のホウ酸系化合物溶液を作製した。作製したホウ酸系化合物溶液を温度30℃に保ち、(1)レリーフ形成工程において得られた印刷レリーフを支持体ごと2分間浸漬した後、60℃で30分間加熱乾燥を行い、フレキソ印刷版を得た。
【0048】
前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2~5)
(2)表面処理工程におけるホウ酸系化合物溶液の濃度および浸漬処理条件を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フレキソ印刷版を得た。評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例6)
(1)レリーフ形成工程
(製造例2)により得られた彫刻用印刷版原版を10cm×10cmに切り出し、カバーフィルムを剥離した。ダイレクトレーザー彫刻システムAdflex Direct 250L((株)コムテックス製)を用いて、印刷レリーフのテストパターン(175線1%~50%網点、幅30μmの細線、直径120μmの独立点、300μm幅の抜き線および40mm×40mmのベタ部を有する)をレーザー彫刻した。次いで、製版装置DX-A3(タカノ(株)製)を用いて、25℃の水道水で1.5分間リンスを行い、その後、60℃の熱風乾燥機で10分間乾燥し、印刷レリーフを形成した。得られた印刷レリーフのうち、175線3%網点を、ルーペを用いて拡大観察したところ、網点100個中100個再現できていた。
【0051】
(2)表面処理工程
オルトホウ酸(関東化学(株)製)を水に溶解して濃度5.0重量%のホウ酸系化合物溶液を作製した。作製したホウ酸系化合物溶液を温度30℃に保ち、(1)レリーフ形成工程において得られた印刷レリーフを支持体ごと2分間浸漬した後、60℃で30分間加熱乾燥を行い、彫刻用フレキソ印刷版を得た。
【0052】
前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
(2)表面処理工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてフレキソ印刷版を得た。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】