(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060730
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】歯科用ジグ
(51)【国際特許分類】
A61C 9/00 20060101AFI20240425BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61C9/00 Z
A61C13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168191
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】522410776
【氏名又は名称】高倉 功
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵章
(57)【要約】
【課題】従来使用していた咬合床を用いないで印象採得の前又は後に咬合採得が可能な歯科用のジグを提供すること。
【解決手段】咬合採得において利用されるシリコン印象材を保持するための基礎床を有する歯科用ジグであって、前記基礎床は隣接面観からみて湾曲形状であって、前記基礎床の床縁近傍にシリコン印象材を保持するための第1の保持部材と、前記基礎床の咬合面側にシリコン印象材を保持するための第2の保持部材と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咬合採得において利用されるシリコン印象材を保持するための基礎床を有する歯科用ジグであって、
前記基礎床は隣接面観からみて湾曲形状であって、
前記基礎床の床縁近傍にシリコン印象材を保持するための第1の保持部材と、
前記基礎床の咬合面側にシリコン印象材を保持するための第2の保持部材と、
を有する歯科用ジグ。
【請求項2】
前記第1の保持部材は切り込み部である請求項1に記載の歯科用ジグ。
【請求項3】
前記第2の保持部材はレール状の部材である請求項1に記載の歯科用ジグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科用ジグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、義歯を作成する方法が知られている。例えば、義歯の作成方法としては、特許文献1のような方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、例えば、従来使用していた咬合床を用いないで印象採得の前又は後に咬合採得が可能な歯科用のジグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の歯科用ジグは、咬合採得において利用されるシリコン印象材を保持するための基礎床を有する歯科用ジグであって、前記基礎床は隣接面観からみて湾曲形状であって、前記基礎床の床縁近傍にシリコン印象材を保持するための第1の保持部材と、前記基礎床の咬合面側にシリコン印象材を保持するための第2の保持部材を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明のジグによれば、従来使用していた咬合床を用いないで印象採得の前又は後に咬合採得が可能となったり、咬合床を用いない咬合採得が可能となったりする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図8】ジグを用いて咬合採得をすることを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示を提供した一つの実施形態であり、以下の記載に基づいて本開示の内容が限定して解釈されるものではない。また、本明細書において使用する用語は、特に断りがないときは、一般的な歯科用語を用いて説明する。歯科用語は、歯科関係者が治療、義歯の製作等において用いられる用語である。
【0009】
ここで、歯科関係者とは、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士等を含むものをいう。また、歯科関係者は、歯科について知識があるスタッフであり、歯科で働く看護師等を含んでもよい。歯科用語は、いわゆる当業者である歯科関係者であれば技術的内容を理解することが十分な用語である。
【0010】
従来義歯の製作に際して歯科医師は、個人トレーまたは既製品のトレーを使用して印象採得する。採得された印象に石膏を注入し、硬化させ石膏模型を作る。その模型で歯科医師または歯科技工士が咬合床を製作する。通常、印象採得日とは別の日に(咬合床を製作するのに日数がかかるため)咬合採得をする。
【0011】
製作された咬合床を使用して歯科医師は患者の口腔内で咬合採得し、咬合器に上下模型を装着して歯科医師、歯科技工士による義歯の製作が始まる。通法は印象採得から咬合採得まで一週間ほどかかるが、本発明は印象採得直前又は直後に咬合採得できるように工夫されたジグである。また、従来と同じく正中や排列位置豊隆具合(リップサポート)の情報も付け加えることができる。
【0012】
従来の咬合採得は歯牙の欠損部にブロック状のパラフィンワックスを配し、残存歯はそのまま、欠損部のパラフィンワックスをレジン製の基礎床の舌側で連結した咬合床を使うことが多い。
【0013】
他にパラフィンワックスやトレーコンパウンド、パテタイプのシリコン印象材を無垢で使用して行うこともあるが操作性が悪く、正確性にかけるのであまり用いられていない。
【0014】
上顎前歯部用、上顎左右臼歯部用の3種類、下顎前歯部用、下顎左右臼歯部用の3種類の6種類ある。なお、臼歯部用については共通の形状でもよい。この場合、上顎左右臼歯部、上顎左右臼歯部を単一の形状とすることができる。
【0015】
この発明は大幅な歯科医師の診療時間と操作の短縮と、咬合床の製作費用がかからない利点がある。これは歯科の診療体系を大きく好転させる可能性がある。
【0016】
本発明のジグは平均的な歯槽の歯槽頂から歯肉頬移行部までの範囲を覆う基礎床が本体である。
【0017】
基礎床は粘膜に面している粘膜面側と、その反対の面の咬合面側からできている。この本体の低位方向の床縁部付近にシリコン印象材を保持するための第1の保持部材を有している。
【0018】
第1の保持部材としては、例えば切り込み(切り込み部)を1又は複数有している。切り込み部は、凸状のクサビ形状であることが好ましい。例えば、切り込み部は、低位方向に向かって拡がる形状に形成されていることが好ましい。また、第1の保持部材は、シリコン印象材が嵌まって固まればよく、例えば、第1の保持部材は、鉤穴形状や、櫛側形状等であってもよい。
【0019】
この本体の咬合面側の一部にシリコン印象材を保持するための第2の保持部材を有している。例えば、第2の保持部材として、高位方向へアンダーカットがあるレール状の保持部材(レール部)を歯槽頂と平行に頬側舌側に1又は複数有している。なお、第2の保持部材は、基礎床の咬合面側にクラスプの鉤腕状のレールを歯槽頂と平行に頬側舌側に穴を有するように設けてもよい。また、第2の保持部材は、シリコン印象材を保持するとしているが、例えば、シリコン印象材の代わりにパラフィンワックスや、モデリングコンパウンドを使用しても良い。なお、第2の保持部材の咬合面はレール状又は溝状であり、レール状の保持部材についてはアンダーカットを有していることが好ましいが、シリコン印象材を保持できる形状であればよく、アンダーカットを有さなくてもよい。
【0020】
本発明のジグは、好ましくは本体の基礎床の床縁部にクサビ状の切り込み部を1又は複数設けており、咬合面側にレール部を設けている。本発明のジグは、第1の保持部材(例えば、切り込み部)と、第2の保持部材(例えば、レール部)とによりシリコン印象材を保持することができる。
【0021】
切り込み部及びレール部にシリコン印象材を保持させて、ジグの下側にあるシリコン印象材、ジグ本体、ジグ本体の上側にあるシリコン印象材の三層のサンドウィッチ構造となり、印象採得の前又は直後に咬合採得を可能にする。
【0022】
上述したように、本発明のジグは上顎前歯左右臼歯用、下顎前歯左右臼歯用がある。また、臼歯部用は上下顎左右の特徴をなくした単一的なジグであってもよい。前歯部用ジグは、臼歯部用ジグと違い緩やかな曲線をなしている。なお、前歯部用ジグにおいては、上顎には口蓋があるため下顎より大きいが、単一的デザインとしてもよい。この場合、前歯部用ジグは、上顎用の大きさで構成されることが好ましい。
【0023】
本発明におけるジグの素材はレジン(非可塑性樹脂)、熱可塑性樹脂、シリコン、金属ではチタン、ステンレス、錫など、単体、又は複合で製作する。また、ジグの形状は板状と網状がある。
【0024】
この発明のジグは、シリコン印象材を粘膜面側と咬合面側に別々に保持させることが肝要である。そのため、本発明が適用可能なジグは、第1の保持部材は床縁付近でシリコン印象材を保持できる部材や形状であればよく、第2の保持部材は、ジグ本体の咬合面側(ジグの天井部分)においてシリコン印象材を保持できる部材や形状の構造は本発明の技術的範囲に含まれる。また、第1の保持部材と、第2の保持部材とは、ジグ本体と一体として形成されていてもよいし、別の部材を装着してもよい。
【0025】
また、本発明のジグは同一箇所のジグを重ねて使用することができる。これにより歯槽骨の吸収が大きく、歯の喪失によってできた大きな顎間の空間にも対応できる。また、ジグの補強にもなる。
【0026】
近心、遠心の方向を示すデザインは咬合面側から見た基礎床は近心から遠心に向かって末広がるようにできている。また、ジグ本体は、臼歯の大きさを考慮し、頬側、舌側面から見た基礎床の床縁は遠心に行くほど長くなるように設計してもよい。なお、上顎結節の膨隆や、歯槽骨の膨隆を考慮したときは、また頬側、舌側面から見た基礎床の床縁は遠心に行くほど短くなるように設計してもよい。
【0027】
上顎は口蓋があるため隣接面から見た基礎床の湾曲度は小さく鈍角である。下顎は歯槽骨の吸収が大きく隣接面から見た基礎床の湾曲度は大きく鋭角である。また、経年変化による歯槽骨の吸収や骨隆起の発現により、上記のようなデザインの区別をつけると適応できなくなる可能性があるので上下顎同一デザインにすることもある。
【0028】
また、遠心部は大きくえぐられているがこれは解剖上の経年変化による上顎結節の骨の膨隆を避けるためである。
【0029】
上顎用の前歯部では右側側切歯から左側側切歯の欠損を想定している。前歯部用ジグは、上述した臼歯部用ジグと同様に設計されるが、保持部材の形状を異なることにしてもよい。
【0030】
なお、本発明のジグとして、上顎用のジグを例に説明したが、下顎用のジグとしても利用することができる。
【0031】
また、上述した実施形態は、臼歯部用、前歯部用の部分に対応するジグとして説明したが、一体の形状としても良い。例えば、全顎堤が含まれるように、第1の保持部材と、第2の保持部材とを有するジグとして成型してもよい。この場合、例えば、ジグの途中で切断・分離することで、1又は複数のジグを構成することが可能となる。また、患者の欠損部の大きさに応じて切断することで、患者の欠損部に適した大きさのジグにすることができる。
【0032】
[咬合採得方法]
本発明のジグは既製品である。そのため個々の症例に適応するように設計されている。想定される症例は上顎欠損、下顎欠損、上下顎欠損の3パターンである。また、残存歯で位置が決定できる時と、できない時のどちらも有効である。
【0033】
本発明のジグの咬合採得方法は以下のとおりである。
【0034】
パーシャルデンチャー用の上または下顎の場合、ジグの粘膜面側からパテタイプの練り込んだシリコン印象材を圧入し、患者の口腔内の欠損箇所に圧接する。余剰のシリコン印象材はジグの下部(低位側)から排出される。また、ジグの咬合面側(咬合平面)にシリコン印象材も圧着させる。ジグの咬合面側に圧着したシリコン印象材を、例えば患者が咬合することで、シリコン印象材で対合の印象がとれ咬合採得ができる。また、対合が粘膜の場合は、ジグを同じ方向に重ねて利用してもよいし、異なるジグを対合に利用して印象をとり咬合採得ができる。
【0035】
医師は咬頭嵌合位または中心咬合位へ誘導し硬化を待つ。対合が歯牙の場合はチェックバイトも採得でき、粘膜の場合は対合にジグを用いて同じように再度咬合採得する。
【0036】
把持床と把持床の間から余剰シリコンが排出され患者の口腔内の粘膜面を加圧することなく被圧変位を防ぐ。このことにより、印象採得され製作した模型に適合する。
【0037】
この操作はジグを使用することによって印象採得時の直前又は直後に行うことができるのが利点である。有床義歯のみならず、歯冠修復物製作時の咬合採得にも応用できる。
【0038】
本発明のジグは、上述した形状を成形可能な材料を使用することができる。例えば、ジグの材料としてはレジン、熱可塑性樹脂、シリコン、ステンレス、錫、チタン等の金属等の何れの材料を使用してもよい。
【0039】
[ジグの形態]
上述したジグについて、具体的に図に示す。
【0040】
図1、
図2は、本発明のジグを用いず咬合床を利用するときの状態を示した図である。
図1は、パーシャルデンチャー用の咬合床であり、
図2は、フルデンチャー用の咬合床を示した図である。
【0041】
それに対して、本発明のジグを利用した場合を
図3、
図4に示す。また、
図5は模式的に説明するための図である。
【0042】
例えば、
図3は、上顎用の前歯部用ジグ11と、臼歯部用ジグ12、13を模型(上顎用模型)91に置いた状態を主に示している。臼歯部用ジグ12は右上顎に配置しており、臼歯部用ジグ13は左上顎に配置している。
【0043】
図4は、下顎用の前歯部用ジグ21と、臼歯部用ジグ22、23を模型(下顎用模型)92に置いた状態を主に示している。臼歯部用ジグ22は右下顎に配置しており、臼歯部用ジグ23は左下顎に配置している。
【0044】
なお、これらのジグは、配置を説明するものであり、必ずしも異なるジグである必要はない。例えば、臼歯部用ジグ12、臼歯部用ジグ13、臼歯部用ジグ22、臼歯部用ジグ23は共通の臼歯部用のジグを利用することができる。また、前歯部用ジグ11、前歯部用ジグ21は、それぞれ異なるジグを利用してもよいし、共通のジグを利用することもできる。
【0045】
ジグは、基礎床を有している。基礎床は、ジグ本体のうち、粘膜に載置可能な部分となり、隣接面観からみて湾曲形状に形成されているとよい。また、基礎床は、顎堤に沿った形状であることか好ましく、例えば、緩やかに湾曲形状に形成されていると好ましい。
【0046】
これらのジグは、ジグの咬合面側(例えば、咬合平面上(例えば、ジグの天井部))に第2の保持部材を有していることが特徴である。第2の保持部材として、例えば、レール状の保持部材を1又は複数有している。ここでは、基礎床と一体となった、高位方向に突出した形状であり、咬合平面上(ジグ本体の天井部)の中央に長手方向に沿って溝を設けるように第2の保持部材が設けられている。
【0047】
また、これらのジグは、ジグの低位方向(下方、第1の保持部材と逆側)に、第1の保持部材を有していることが特徴である。第1の保持部材として、切り欠け部を1又は複数有している。ここでは、基礎床の低位方向(ジグ本体の下端側)に、ジグ本体の中央に突起部を有するようにクサビ状の切り欠け部を有していてもよい。
【0048】
図5は、ジグ本体を模式的に示した図である。
図5は、上述したジグのうち、臼歯部用のジグを例に説明する。
【0049】
図5(a)は、ジグ本体60を頬側から見た断面を示す模式図である。また、
図5(b)は、ジグ本体60を隣接面観から見た断面を示す模式図である。また、
図5(a)に示すように、(右)頬側からみたときに、ジグ本体60の上側を高位側、ジグ本体60の下側を低位側とする。また、
図5(a)の右側を一例として近心側、左側を遠心側とする。
図5(b)に示すように、
図5(b)の右側を舌側、
図5(b)の左側を頬側とする。また、ジグ本体60の低位側の縁部近傍を床縁という。
【0050】
ジグ本体60は、基礎床61の上に、第2の保持部材62を有している。第2の保持部材62は、例えば、土手状の連続した突起部である。第2の保持部材は、頬側と、舌側とに好ましくは2つ平行に設けられる。これにより、第2の保持部材はレール状のように形成されてもよい。
【0051】
第2の保持部材62は、
図5(b)に示すように基礎床61の部材を端部で折り返し、内側に折り返した形状としてもよい。この場合、ジグ本体60の外側(頬側寄り、舌側寄り)では2重に部材が折り重なってもよい。また、第2の保持部材62は、連続している必要はなく、複数の突起部を連続して並べて配置してもよい。
【0052】
第2の保持部材62の間には、溝部65が形成される。したがって、ジグ本体60の咬合面側に圧着したシリコン印象材は、溝部65に入りつつ、第2の保持部材62を内側及び外側から挟み込むことになる。したがって、シリコン印象材は、第2の保持部材62を利用することで、ジグ本体60に保持される。
【0053】
ジグ本体60は、第1の保持部材として低位側に(ジグ本体60の床縁近傍に)切り欠け部63を有している。切り欠け部63は、
図5では、遠心側と近心側とに2つクサビ状に有している。なお、切り欠け部は、高位側から低位側にかけて外側に拡がるように形成されてもよい。このとき、切り欠け部63により、ジグ本体60の床縁には突起部64が形成される。突起部64は、
図5(a)では模式的に中央近傍にあるが、例えば、遠心側又は近心側に寄せて設けることが好ましい。第1の保持部材は、シリコン印象材を保持する部材であり、例えば、基礎床61の低位側に、切り欠け部63により突起部64が形成されていることを示してもよい。
【0054】
なお、咬合採得をするときには、印象材をジグ本体60の粘膜面側、咬合面側に圧着することから、基礎床61は直接粘膜面に接しない。また、基礎床61は、顎堤に沿うように湾曲していることが好ましい。
【0055】
なお、上述した実施形態では、第2の保持部材として頬側、舌側の縁を土手状に盛り上げた形状として説明したが、他の部材を設けて、第2の保持部材を構成してもよい。
【0056】
例えば、
図6は、上顎用の前歯部用ジグ31と、臼歯部用ジグ32、33を模型(上顎用模型)91に置いた状態を主に示している。臼歯部用ジグ32は右上顎に配置しており、臼歯部用ジグ33は左上顎に配置している。
【0057】
図7は、下顎用の前歯部用ジグ41と、臼歯部用ジグ42、43を模型(下顎用模型)92に置いた状態を主に示している。臼歯部用ジグ42は右下顎に配置しており、臼歯部用ジグ43は左下顎に配置している。
【0058】
なお、これらのジグは、配置を説明するものであり、必ずしも異なるジグである必要はない。例えば、臼歯部用ジグ32、臼歯部用ジグ33、臼歯部用ジグ42、臼歯部用ジグ43は共通の臼歯部用のジグを利用することができる。また、前歯部用ジグ31、前歯部用ジグ41は、それぞれ異なるジグを利用してもよいし、共通のジグを利用することもできる。
【0059】
また、それぞれのジグは、土手状の形状の代わりに、シリコン印象材を保持するための第2の保持部材として、別部材をジグの咬合平面上(天井)に有している。例えば、
図6及び
図7では、ワイヤー状の部材としてワイヤークラスプを有している。この場合、ワイヤークラスプと、ジグ本体の隙間にシリコン印象材が嵌まることで、シリコン印象材を保持することが可能となる。
【0060】
図8は、本発明のジグと、印象材とを利用して咬合採得を行っている状態を説明する図である。
図8(a)(b)(c)は、臼歯部の咬合採得の例であり、
図8(d)(e)は、前歯部の咬合採得の例である。例えば、歯科医師が、ジグの粘膜面側にシリコン印象材を圧入させる。歯科医師は、シリコン印象材を圧入したジグを患者の欠損部の粘膜部に印象を採得するように圧着させる。また、歯科医師はシリコン印象材をジグの咬合面側に圧着させる。歯科医師は、ジグの上に圧着されたシリコン印象材を利用し、咬合誘導して咬合採得が可能となる。
【0061】
[変形例]
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0062】
なお、本開示の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や限定されるものではなく、本明細書に開示される技術の組み合わせも、その範囲に含むものである。本開示のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に記載しているが、特許請求の範囲に記載されていないことを理由として技術的範囲から排除する意思ではない。
【0063】
また、上述した明細書において、「~の場合」「~のとき」という記載については、一つの例として説明しているものであり、記載した内容に限られる構成としているものではない。これらの場合やときでない構成についても、当業者であれば自明である範囲についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。
【0064】
また、臼歯部用ジグにおいて、保持部材を2つのレール状の部材として説明しているが、複数の保持部材を有していてもよい。例えば、3つのレール状の部材や、土手状の構造を有していても良い。また、レール状の部材は、必ずしもジグ本体の長手方向に沿って連続しているとは限らず、レール状の部材が複数に区切られていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
11、21 前歯部用ジグ
12、13、22、23 臼歯部用ジグ
60 ジグ本体
61 基礎床
62 第2の保持部材
63 切り欠け部
64 突起部
65 溝部