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特開2024-60737流体搬送方法、及び、流体搬送システム
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  • 特開-流体搬送方法、及び、流体搬送システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060737
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】流体搬送方法、及び、流体搬送システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
F04B49/06 321
F04B49/06 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168208
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 聖和
(72)【発明者】
【氏名】増澤 智之
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 幹朗
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA06
3H145AA42
3H145BA19
3H145BA32
3H145BA40
3H145CA06
3H145CA25
3H145DA07
3H145EA35
(57)【要約】
【課題】消費電力を削減できる流体搬送方法、及び、流体搬送システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る流体搬送方法は、インバータポンプ1によって流体を搬送する流体搬送方法であって、インバータポンプ1の設定吐出し量をQd(m/s)とした場合において、インバータポンプ1の流量Q(m/s)をQd×0.6以下とし、搬送すべき流体量をF(m)とした場合において、インバータポンプ1の稼働時間T(s)をF/Q以上として消費電力を削減する。また、本発明に係る流体搬送方法のインバータポンプ1は、遠心ポンプであるのが好ましく、稼働時間T(s)の期間において、インバータポンプ1を停止させないのが好ましく、流体は液体であるのが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータポンプによって流体を搬送する流体搬送方法であって、
前記インバータポンプの設計吐出し量をQd(m/s)とした場合において、前記インバータポンプの流量Q(m/s)をQd×0.6以下とし、
搬送すべき流体量をF(m)とした場合において、前記インバータポンプの稼働時間T(s)をF/Q以上として消費電力を削減する流体搬送方法。
【請求項2】
前記インバータポンプは、遠心ポンプである請求項1に記載の流体搬送方法。
【請求項3】
前記稼働時間T(s)の期間において、前記インバータポンプを停止させない請求項1又は請求項2に記載の流体搬送方法。
【請求項4】
前記流体は液体である請求項1又は請求項2に記載の流体搬送方法。
【請求項5】
流体を搬送するインバータポンプと、
前記インバータポンプの設計吐出し量をQd(m/s)とした場合において、前記インバータポンプの流量Q(m/s)をQd×0.6以下に制御するとともに、搬送すべき流体量をF(m)とした場合において、前記インバータポンプの稼働時間T(s)をF/Q以上に制御する制御手段と、
を備える流体搬送システム。
【請求項6】
前記インバータポンプの上流側に位置し、前記インバータポンプへ吸い込まれる流体を保持する上流側タンクと、
前記インバータポンプの下流側に位置し、前記インバータポンプから吐き出される流体を保持する下流側タンクと、
をさらに備える請求項5に記載の流体搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体搬送方法、及び、流体搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体や気体といった流体を搬送するために、インバータを用いたモータ駆動のポンプ(インバータポンプ)が広く使用されている。
そして、インバータポンプに関しては様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体を移送するポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータに可変周波数の交流電力を供給して前記ポンプを可変速運転するインバータと、第1の制御モードおよび第2の制御モードのうち予め選択された一方の制御モードに従って前記インバータを制御することで前記ポンプの運転を制御するポンプ制御部と、を備え、前記第1の制御モードは、流量0から第1の流量までの第1の流量領域で前記ポンプの吐出圧力を所定の圧力に保つ圧力一定制御モードであり、前記第2の制御モードは、流量0から、前記第1の流量よりも低い第2の流量までの第2の流量領域においては、前記ポンプを前記所定の圧力よりも高い吐出圧力で運転させ、前記第2の流量から前記第1の流量までの第3の流量領域においては、前記ポンプの吐出圧力を前記所定の圧力に保つ圧力ブースト制御モードであることを特徴とするポンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-124632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、各種製品の製造量が減少するような状況(コロナや人口減少に基づく減産など)を想定した場合に、製造量とは関係のない「固定的なエネルギー」(固定的に消費されるエネルギー)に対する省エネは非常に重要視される一方、製造量に比例する「比例的なエネルギー」(製造量に比例して消費されるエネルギー)は省エネの度合いが低下してしまうため軽視される傾向があることを確認した。
しかしながら、このような「比例的なエネルギー」に対しても、省エネ対策を行わなければ、各種製品の製造工場などにおいて製造量の変動が生じた場合に、十分な省エネ効果は得られない。
そのため、本発明者らは、特許文献1などでも使用されているインバータポンプによって流体を搬送する際に、出来るだけ消費電力を削減することで、「比例的なエネルギー」に関する省エネを実現し、最終的には、製造量の変動に強い流体搬送方法や流体搬送システムを創出したいと考えた。
【0006】
そこで、本発明は、消費電力を削減できる流体搬送方法、及び、流体搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)インバータポンプによって流体を搬送する流体搬送方法であって、前記インバータポンプの設計吐出し量をQd(m/s)とした場合において、前記インバータポンプの流量Q(m/s)をQd×0.6以下とし、搬送すべき流体量をF(m)とした場合において、前記インバータポンプの稼働時間T(s)をF/Q以上として消費電力を削減する流体搬送方法。
(2)前記インバータポンプは、遠心ポンプである前記1に記載の流体搬送方法。
(3)前記稼働時間T(s)の期間において、前記インバータポンプを停止させない前記1又は前記2に記載の流体搬送方法。
(4)前記流体は液体である前記1から前記3のいずれか1つに記載の流体搬送方法。
(5)流体を搬送するインバータポンプと、前記インバータポンプの設計吐出し量をQd(m/s)とした場合において、前記インバータポンプの流量Q(m/s)をQd×0.6以下に制御するとともに、搬送すべき流体量をF(m)とした場合において、前記インバータポンプの稼働時間T(s)をF/Q以上に制御する制御手段と、を備える流体搬送システム。
(6)前記インバータポンプの上流側に位置し、前記インバータポンプへ吸い込まれる流体を保持する上流側タンクと、前記インバータポンプの下流側に位置し、前記インバータポンプから吐き出される流体を保持する下流側タンクと、をさらに備える前記5に記載の流体搬送システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る流体搬送方法によれば、インバータポンプによって流体を搬送する際に必要となる消費電力を削減することができる。
本発明に係る流体搬送システムによれば、インバータポンプによって流体を搬送する際に必要となる消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る流体搬送システムの模式図である。
図2】バルブによって流量調整を行った場合におけるポンプの性能曲線を示すグラフである。
図3】インバータによって流量調整を行った場合におけるポンプの性能曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システムを実施するための実施形態について、図を参照して説明する。
まず、図1~3を参照して、バルブとインバータによる流量調整について説明する。
【0011】
[バルブによる流量調整について]
図1は、ポンプ1によって上流側タンク2から下流側タンク3に液体を搬送する液体搬送システム10の模式図である。
このポンプ1は、定格回転速度においては図2に示すような性能曲線L1を示す。そして、配管や機器内での流体の圧力損失(以下「配管等の圧力損失」という)は、一般的に流量の約2乗に比例するとされており、この配管等の圧力損失を示す損失曲線F1と性能曲線L1との交点Bがポンプ1の運転点となる。
そして、ポンプ1のポンプ電力(ポンプの消費電力)は、以下の式(1)で表される。
P=gQHη・・・(1)
P:ポンプ電力
g:重力加速度
Q:流量
H:揚程
η:ポンプ・モータ効率
仮に、ポンプ・モータ効率ηを無視すれば、図2のOABCで囲まれる面積がポンプ電力に比例する。
ここで、バルブを用いて流量を調整(減らす)場合は、ポンプ1の運転点を損失曲線F2と性能曲線L1との交点Eに移動することとなる。この場合、ポンプ電力は、OABCで囲まれる面積よりも小さなODEFで囲まれる面積に比例することとなる。しかしながら、実際には、流量を減らすほど、ポンプ・モータ効率ηが低下してしまう。その結果、図2におけるOABCで囲まれる面積→ODEFで囲まれる面積への減少率よりもポンプ電力の減少率は小さくなる。
したがって、バルブによる流量調整を行う場合、流量を減らすよりも、定格流量付近で流体搬送を行う方が省エネとなる。
【0012】
[インバータによる流量調整について]
インバータによってポンプ1の回転速度を変化させる(流量を減らすように調整する)と、図3に示すように、性能曲線L1が性能曲線L2に変化する。この場合、ポンプ1の運転点は、損失曲線F1と性能曲線L2との交点E´となる。つまり、ポンプ電力は、OABCで囲まれる面積よりも大幅に小さいOD´E´Fで囲まれる面積に比例することとなる。
ここで、ポンプ電力は、前記(1)式に示したように、流量Qと揚程Hの積に比例する点を考慮すると、以下の式(2)を示すことができる。
P∝Q×H・・・(2)
∝:比例記号
そして、揚程Hは、配管等の圧力損失と実揚程の合計であるものの、この配管等の圧力損失が流量の約2乗に比例することから、以下の式(3)を示すことができる。
P∝Q・・・(3)
さらに、ポンプの稼働時間Tを考慮すると、以下の式(4)を示すことができる。
∝QT・・・(4)
:ポンプ電力量(稼働時間Tにおいてポンプで消費される電力)
このように、図1の液量搬送システム10のポンプ1が、インバータポンプ(インバータを用いたモータ駆動のポンプ)である場合、ポンプ1のポンプ電力量Pは、前記式(4)を満たすこととなる。
【0013】
[流体搬送方法]
次に、本実施形態に係る流体搬送方法を説明する。
本実施形態に係る流体搬送方法は、インバータポンプによって流体を搬送する流体搬送方法であって、インバータポンプの流量Qが所定値以下であり、インバータポンプの稼働時間Tが所定値以上である。
以下、本実施形態に係る流体搬送方法の各構成要件を詳細に説明する。
【0014】
(流量Qについて)
流量Q(m/s)は、インバータポンプの設計吐出し量をQd(m/s)とした場合において、Qd×0.6以下である。
本発明者らは、インバータポンプを使用した流体搬送の消費電力について鋭意検討した結果、前記式(4)「P∝QT」の右辺の3乗のパラメータである流量Qを低く設定することによって、ポンプ電力量を大幅に削減できることを見出した。
そして、流量Qは、Qd×0.6以下であるのが好ましく、Qd×0.55以下、Qd×0.5以下がより好ましい。流量Qが所定値以下であることによって、消費電力の削減効果をしっかりと発揮させることができる。
なお、インバータポンプの設計吐出し量とは、JIS B0131:2017のとおり、ポンプを設計するときに設定する吐出し量であり、詳細には、当該ポンプの吐出し量の最大値である。そして、インバータポンプの設計吐出し量は、計器(電磁流量計など)を使用して測定することができる。
【0015】
(稼働時間Tについて)
稼働時間T(s)は、搬送すべき流体量をF(m)とした場合において、F/Q以上である。
本発明者らは、前記した流量Qを低くする代わりに、稼働時間Tを延ばすことによって、搬送すべき流体量F(=Q×T)を確保しながら、総合的にポンプ電力量Pを削減できる(前記式(4)「P∝QT」の右辺の1乗のパラメータであるTが増加するものの、3乗のパラメータであるQを低減できるため)ことを見出した。
そして、稼働時間Tは、F/Q以上であればよく、例えば、丁度F/Qでもよいが、余裕を持った十分な流体量を確保するために、1.5×F/Q以上、1.8×F/Q以上、2.0×F/Q以上がより好ましい。
なお、搬送すべき流体量Fとは、流体搬送方法を実施する際に要求される流体の量(例えば、図1の下流側タンク3に保持すべき流体の量)である。
【0016】
稼働時間Tの期間において、インバータポンプを停止させないのが好ましい。
インバータポンプを停止させないことによって、ポンプの起動回数を低減することが可能となる。インバータポンプは、起動時において特に負荷がかかることから、ポンプの起動回数を低減することによって、インバータポンプ自体の機器寿命を延ばすという効果も発揮できる。
【0017】
(インバータポンプ)
本実施形態に係る流体搬送方法で使用するポンプは、インバータポンプである。
インバータポンプとは、インバータ駆動式のポンプであって、インバータが可変周波数の交流電力をポンプ(詳細には、ポンプを駆動するモータ)に供給して、ポンプ(モータ)の回転をコントロールする。
なお、インバータポンプの「ポンプ」とは、インペラ(羽根車)をケーシング内で回転させることによって流体にエネルギーを与える機械であって、インペラから吐き出される流れが主として主軸に垂直な面内にある「遠心ポンプ」(JIS B0131:2017の規定に準ずる)が好ましい。
【0018】
(流体)
本実施形態に係る流体搬送方法の対象である「流体」については、ポンプで搬送可能な気体や液体であれば特に限定されないが、液体が好ましい。
液体としては、特に限定されず、例えば、地下水、雨水、工業用水、下水、純水などの水、各種飲料、油などである。
【0019】
[流体搬送システム]
次に、本実施形態に係る流体搬送システムを説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る流体搬送システム10は、インバータポンプ1と制御手段4とを備え、さらに、上流側タンク2と下流側タンク3とを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る流体搬送システムの各構成要件を詳細に説明する。
【0020】
(インバータポンプ)
図1に示すインバータポンプ1は、本実施形態に係る流体搬送方法において説明したとおりである。
そして、インバータポンプ1は、流体の吸込み口が上流側タンク2に配管を介して接続され、流体の吐き出し口が下流側タンク3に配管を介して接続される。
なお、流体搬送システム10が上流側タンク2を備えない場合は、インバータポンプ1は、直接、水源などから配管を介して流体を吸い込むこととなり、下流側タンク3を備えない場合は、直接、流体の使用先に配管を介して流体を吐き出すこととなる。
【0021】
(上流側タンク、下流側タンク)
上流側タンク2は、インバータポンプ1の上流側に位置するタンクであり、インバータポンプ1へ吸い込まれる流体を保持するタンク(容器または空間)である。また、下流側タンク3は、インバータポンプ1の下流側に位置するタンクであり、インバータポンプ1から吐き出される流体を保持するタンクである。
そして、上流側タンク2、下流側タンク3は、いずれも、流体を保持できる構造であれば構造は特に限定されず、また、容量、サイズなども、要求される流体量に応じて、適宜、設定すればよい。
なお、上流側タンク2が保持する流体は、水源などから供給されるものであり、下流側タンク3が保持する流体は、インバータポンプ1から供給されたものであって、その後、使用先に搬送される(送り出される)ものである。
【0022】
上流側タンク2を設けることにより、当該タンク2に所定量の流体を保持させておくことが可能となる結果、インバータポンプ1に吸込まれる流体が不足して所望の流量Qを維持できなくなるといった事態を回避することができる。また、下流側タンク3を設けることにより、当該タンク3に所定量の流体を保持させておくことが可能となる結果、使用先への流体の搬送量が増えた場合であっても、インバータポンプ1の所望の流量Qを維持することが可能となる。
つまり、本実施形態に係る流体搬送システム10において、上流側タンク2と下流側タンク3とがバッファーの役目を果たすため、インバータポンプ1をより確実に所望の流量Qで稼働させることができ、また、稼働途中に停止すべき事態の発生を回避することもできる。
ただ、本実施形態に係る流体搬送システム10において、上流側タンク2、下流側タンク3は、必須の構成要件ではない。
【0023】
(制御手段)
制御手段4は、インバータポンプ1の流量Qや稼働時間Tを制御する手段である。
そして、制御手段4は、記憶部に記憶されている「インバータポンプ1の設計吐出し量Qd(m/s)」の値と係数(例えば、0.6)に基づいて算出される値(Qd×0.6)以下となるように、インバータポンプ1の流量Q(m/s)を制御する。
また、制御手段4は、記憶部に記憶されている「搬送すべき流体量をF(m)」の値と算出した流量Q(m/s)に基づいて算出される値(F/Q)以上となるように、インバータポンプ1の稼働時間T(s)を制御する。
なお、制御手段4で制御するインバータポンプ1の流量Qや稼働時間Tは、本実施形態に係る流体搬送方法において説明したとおりである。
【0024】
そして、制御手段4は、CPU(Central Processing Unit)によるプログラムの実行処理や、専用回路等によって実現される。
また、記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の一般的な記憶装置で構成することができる。
【0025】
次に、本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システムの効果について、図1を参照して説明する。
[本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システムの効果]
本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システム10によれば、前記式(4)「P∝QT」の右辺の3乗のパラメータである流量Qを低く設定するとともに、右辺の1乗のパラメータである稼働時間Tを長く設定することで、搬送すべき流体量F(=Q×T)を確保しながら、総合的にポンプ電力量Pを削減することができる。
また、本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システム10によれば、稼働時間Tにおいてインバータポンプを停止させないことによって、ポンプの起動回数を低減することが可能となる結果、インバータポンプ自体の機器寿命を延ばすという効果も発揮できる。
【0026】
また、本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システム10は、所定製品の製造量が減少しても原単位あたりの消費エネルギーは変化しない(つまり、製造量の減少に伴って省エネ効果が低減してしまうといったことがない)という特徴を有する。
この点について、以下、具体例を示して説明する。
[1]所定製品の製造に要求される水の量が100mの場合、100m/hの供給量のポンプによって水を搬送させる時間は1時間となる。このときの電力量を100kWhとする。
[2]所定製品の製造量が半減し、所定製品の製造に要求される水の量が50mに減少した場合、100m/hの供給量のポンプを稼働させる時間は0.5時間となる。このときの電力量は50kWhとなる。
[2]の場合に本発明を適用して、例えば、ポンプによる供給量を100m/hの半分の50m/hとし、ポンプによって水を搬送させる時間を2倍の1時間とすると、前記式(4)に基づけば、電力量は(1/2)×2=25%に比例するため、12.5kWh(=50×0.25)となる。その結果、原単位あたりの消費エネルギーは、0.25kWh/m(=12.5/50)となる。
このように、本発明によれば、所定製品の製造量が減少しても原単位あたりの消費エネルギーはよくなる(減少する)ことがわかる。
【0027】
次に、本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システムの変形例について、図1を参照して説明する。
[本実施形態に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システムの変形例]
制御手段4は、上流側タンク2と下流側タンク3との各内部に設けられている水位センサ(図示せず)から、水位データを読み出し、当該水位データに基づいてインバータポンプ1の流量Qを変化させる制御をさらに行ってもよい。
例えば、上流側タンク2の水位データWが下限閾値XD1よりも低い場合(W<XD1)、制御手段4がインバータポンプ1の流量Qをさらに低い値(例えば、現在の流量をQとした場合にQ×0.9以下)に変化させる。一方、上流側タンク2の水位データWが上限閾値XD2よりも高い場合(W>XD2)、制御手段4がインバータポンプ1の流量Qを少し高い値(例えば、現在の流量をQとした場合にQ×1.1以上、ただし、Qd×0.6以下の範囲内)に変化させる。
また、下流側タンク3の水位データWが下限閾値XU1よりも低い場合(W<XU1)、制御手段4がインバータポンプ1の流量Qを少し高い値(例えば、現在の流量をQとした場合にQ×1.1以上、ただし、Qd×0.6以下の範囲内)に変化させる。一方、下流側タンク3の水位データWが上限閾値XU2よりも高い場合(W>XU2)、制御手段4がインバータポンプ1の流量Qをさらに低い値(例えば、現在の流量をQとした場合にQ×0.9以下)に変化させる。
【0028】
また、上流側タンク2の水位データWが下限閾値XD1よりも低い場合(W<XD1)や上限閾値XD2よりも高い場合(W>XD2)において、前記の制御とともに、又は、前記の制御に代えて、音や光を発することで問題が生じた旨を知らせる警報装置を作動するように制御手段4が制御してもよく、また、モニターなどの表示手段にその旨が表示されるように制御手段4が制御してもよい。
なお、下流側タンク3の水位データWが下限閾値XU1よりも低い場合(W<XU1)や上限閾値XU2よりも高い場合(W>XU2)も、上流側タンク2の場合と同様に制御してもよい。
【0029】
水源などから上流側タンク2に対して流体を搬送する際、水源と上流側タンク2との間の配管に前記したインバータポンプ1を設けてもよく、本実施形態に係る流体搬送方法と同様の制御を行ってもよい。
また、下流側タンク3から最終的な使用場所に対して流体を搬送する際、下流側タンク3と最終的な使用場所との間の配管に前記したインバータポンプ1を設けてもよく、本実施形態に係る流体搬送方法と同様の制御を行ってもよい。
さらに、図1では、上流側タンク2と下流側タンク3との間が1つのインバータポンプ1を介して1つの流路が形成されている構成を説明したが、両タンクの間に並列に複数の流路が形成され、各流路にインバータポンプが設置されている構成でもよい。
つまり、水源などの流体の供給源と最終的な使用場所との間の全ての流路の中で、インバータポンプの設置数は、1つでもよいが、複数でもよい。そして、インバータポンプを複数設置する場合は、少なくとも1つのインバータポンプが本実施形態に係る流体搬送方法で制御されていればよい。
【0030】
本実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【実施例0031】
次に、実施例を例示して、本発明に係る流体搬送方法、及び、流体搬送システムについて説明する。
【0032】
図1に示すような構成の流体搬送システム10を用いて、インバータポンプ1の流量Qを変化させて実験を行った。
なお、使用したインバータポンプ(荏原製作所製 型式125BHS3522C 設計点 全揚程55m 22kW)の設計吐出し量Qdは、1,700L/minであった。
(実施例1)
実施例1では、インバータポンプの流量を56m/h(=933L/min)で稼働させ、総揚水量(搬送すべき流体量)が224mとなるように4時間稼働させた。
そして、実施例1でのインバータポンプが稼働時間内に消費した電力量Pは、44kWhであった。
(比較例1)
比較例1では、インバータポンプの流量を94m/h(=1,567L/min)で稼働させ、総揚水量(搬送すべき流体量)が188mとなるように2時間稼働させた。
そして、比較例1でのインバータポンプが稼働時間内に消費した電力量Pは、54kWhであった。
【0033】
(結果の検討)
本発明の要件を満たす実施例1は、1mあたり0.1964kWhの電力を消費し、本発明の要件を満たさない比較例1は、1mあたり0.2872kWhの電力を消費する結果となり、実施例1は比較例1よりも、大幅に消費電力を削減(31%削減)できることがわかった。
【符号の説明】
【0034】
1 インバータポンプ(ポンプ)
2 上流側タンク
3 下流側タンク
4 制御手段
10 流体搬送システム
図1
図2
図3