(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060741
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】増毛用つけペン及び増毛用つけペンセット
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20240425BHJP
B05C 17/10 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B05C1/02 101
B05C17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168215
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】519447721
【氏名又は名称】一般社団法人湊式増毛技術協会
(74)【代理人】
【識別番号】100092576
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 久男
(72)【発明者】
【氏名】湊 英次
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AB01
4F040BA09
4F040CA01
4F040CA02
4F040CA05
4F040CA12
4F040CA17
4F042FA28
4F042FA31
4F042FA43
(57)【要約】
【課題】接着剤を塗布する増毛の施術効率を向上させることができる増毛用具の提供。
【解決手段】被増毛者の自毛に結着した増毛材料の結着部に接着剤を塗布する増毛用つけペン100であって、軸部10と、軸部10の先端に設けられ、軸方向に貫通孔31が形成され、貫通孔31に接着剤を溜める管状部材30と、管状部材30の貫通孔31の一部又は全部に挿入されて内接し、複数の線状部材を撚り合わせたツイスト形状にし、空気抜き流路21を形成する芯部材20とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被増毛者の頭部の自毛に結着した増毛材料の結着部に接着剤を塗布する増毛用つけペンであって、
軸部と、
前記軸部の先端に設けられ、軸方向に貫通孔が形成され、前記貫通孔に接着剤を溜める管状部材と、
前記管状部材の前記貫通孔の一部又は全部に挿入されて内接し、前記貫通孔に接着剤を溜めた状態で前記貫通孔内に空気を流通させる空気抜き流路を形成する芯部材と、
を備えることを特徴とする増毛用つけペン。
【請求項2】
前記芯部材は、複数の線状部材を撚り合わせたツイスト形状を有することを特徴とする請求項1記載の増毛用つけペン。
【請求項3】
前記管状部材は、軟質材料で形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載の増毛用つけペン。
【請求項4】
増毛材料を結着する自毛として、産毛状の自毛を対象とすることを特徴とする請求項1記載の増毛用つけペン。
【請求項5】
請求項1記載の増毛用つけペンと、
前記増毛用つけペンの前記管状部材を支持するための穴部が形成された支持部を有し、前記穴部の内周にシリコン側壁部が設けられたスタンドと、
を備えることを特徴とする増毛用つけペンセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増毛用つけペン及び増毛用つけペンセットに係り、より詳細には、被増毛者の自毛に結着した増毛材料の結着部に接着剤を塗布する増毛用つけペン及びその増毛用つけペンを備えた増毛用つけペンセットに関する。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は、特許文献1において、増毛作業に手間がかからず、増毛材料の保管場所もとらないため、一般の理髪店、美容室などで希望者に気安く、おしゃれな増毛ができるような、増毛法と増毛用具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頭髪の増毛の施術にあたっては、増毛材料のリング部に自毛を挿通し、リング部を引き絞って自毛に食い込ませて結着させている。しかし、増毛材料を結着させる頭部の自毛が産毛状の自毛、いわゆる軟弱毛である場合には、リング部が自毛に十分に食い込むことが困難であるため、結着部に更に接着剤を塗布し、結着部が自毛から外れないようにしている。結着部に接着剤を塗布する際には、例えば、爪楊枝の先端に接着剤を付着させ、その爪楊枝の先端を結着部に接触させることにより接着剤を塗布していた。
【0005】
しかし、接着剤を塗布すべき結着部は、例えば、何百、何千箇所にもなる場合もあるため、結着部に接着剤を塗布する際に、接着剤を、一回一回、爪楊枝の先端に付けていたのでは手間が掛かり、増毛の施術効率が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、接着剤を塗布する増毛の施術効率を向上させることができる増毛用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明の増毛用つけペンは、被増毛者の頭部の自毛に結着した増毛材料の結着部に接着剤を塗布する増毛用つけペンであって、軸部と、前記軸部の先端に設けられ、軸方向に貫通孔が形成され、前記貫通孔に接着剤を溜める管状部材と、前記管状部材の貫通孔の一部又は全部に挿入されて内接し、前記貫通孔に接着剤を溜めた状態で前記貫通孔内に空気を流通させる空気抜き流路を形成する芯部材と、を備えることを特徴としている。
【0008】
第2の本発明の増毛用つけペンセットは、第1の発明の増毛用つけペンと、前記増毛用つけペンの前記管状部材を支持するための穴部が形成された支持部を有し、前記穴部の内周にシリコン側壁部が設けられたスタンドと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着剤を塗布する増毛の施術効率を向上させることができる増毛用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る増毛用つけペンの説明図であり、(a)は、増毛用つけペンの要部分解斜視図であり、(b)は、(a)に示す増毛用つけペンの管状部材の貫通孔に接着剤を一時的に溜めた状態を示す部分断面図である。
【
図2】比較例の説明図であり、(a)は、太い芯部材を備えたつけペンの要部断面図を示し、(b)は、細い芯部材を備えたつけペンの要部断面図を示す。
【
図3】(a)及び(b)は、増毛用つけペンの芯部材の変形例の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る増毛用つけペンセットの説明図であり、(a)は、増毛用つけペンセットの斜視図であり、(b)は、増毛用つけペンセットの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1に、本実施形態の増毛用つけペン100を示す。増毛用つけペン100は、被増毛者の頭部の自毛に結着した増毛材料の結着部に接着剤を塗布するための増毛用つけペン100である。増毛用つけペン100は、増毛材料を結着する自毛として、産毛状の自毛を対象とした場合に、結着部に接着剤を塗布するのに用いて特に好適である。
増毛用つけペン100は、軸部10と、軸部10の先端に設けられ、軸方向に貫通孔31が形成され、貫通孔31に接着剤を溜める管状部材30と、管状部材30の貫通孔31の一部に挿入されて内接する芯部材20とを備えている。
なお、
図1(a)は、管状部材30を芯部材20から外した状態で増毛用つけペン100を示している。
【0012】
芯部材20は、複数の線状部材を撚り合わせたツイスト形状を有している。本実施形態では、芯部材20は、1本の針金を二つ折りにし、撚り合わせて形成されている。二つ折りにした折返部分が芯部材20の先端を形成し、芯部材20の根元側の端部は軸部10に埋め込まれて固定されている。
芯部材20では、撚り合わされた線状部材に沿った谷間である溝部が螺旋状に延びている。その結果、この溝部が芯部材20の先端から根元側まで空気抜き流路21を形成しているため、管状部材30に芯部材20を挿入し、貫通孔31の先端付近に接着剤を溜めた状態で貫通孔31内に空気を流通させることができる。
なお、
図1(b)では、管状部材30の端部が軸部10先端部に当接しているが、芯部材20を管状部材30の貫通孔31に挿入したときに、管状部材30の端部と軸部10先端部との間に隙間があることが好ましい。これにより、貫通孔に接着剤を溜めた状態で貫通孔31内の円滑な空気の流通を確保できる。
【0013】
管状部材30の貫通孔31は、例えば、直径が1mm程度の毛管であるため、
図1(b)に示すように、貫通孔31に接着剤gを一時的に溜めることができる。接着剤gとしては、例えば、市販の睫毛用グルーを使用することができる。
管状部材30は、軟質材料であるシリコン樹脂製のシリコンチューブで構成されている。これにより、接着剤gが管状部材30の貫通孔31内で固着しにくく、貫通孔31の目詰まりを防止できる。その上、管状部材30を軟質材料で形成したことにより、増毛施術時に、管状部材30の先端が被増毛者の頭皮に触れても、被増毛者が痛みを感じることを回避できる。
【0014】
図1(b)に示すように、管状部材30の貫通孔31に接着剤gを一時的に溜めた場合にも、ツイスト形状の谷間である螺旋状の溝部が空気抜き流路21を形成し、芯部材20の根元側から先端まで空気を流通させることができる。このため、接着剤gを塗布したときに、空気が芯部材20の根元側から空気抜き流路を通って貫通孔31内へ流通するので、貫通孔31内が負圧となることなく大気圧が保たれ、接着剤gが先端側へ円滑に移動できる。その結果、貫通孔31内に一時的に溜めた接着剤gを、複数箇所の結着部に連続的に塗布することが可能となる。また、一度に塗布される接着剤gの分量がほぼ一定量となる。これにより、管状部材30の先端に一回一回接着剤gを付け直すことなく、貫通孔31に一時的に溜めた接着剤gで塗布を繰り返すことができる。
【0015】
ここで、
図2を参照して、比較例として、上述した実施形態の増毛用つけペン100の芯部材20とは構造の異なる芯部材を備えたつけペンを説明する。
本発明の創作過程において、本件発明者は、つけペン先端にチューブのような管状部材を設け、その管状部材内に複数回分の接着剤を一時的に留めておいて、複数箇所の結着部に次々に接着剤を連続して塗布できれば、接着剤を塗布する増毛の施術効率を向上させることができると考えた。そこで、本件発明者は、まず、
図2(a)に第1の比較例として示すつけペンを試作した。
【0016】
第1の比較例としてのつけペン101aは、軸部10の先端に、管状部材30の貫通孔31の内径と同程度の直径を有し、貫通孔31に挿入する太い芯部材24を備えている。太い芯部材24の場合、貫通孔31内で太い芯部材24と管状部材30との間に隙間がないため、太い芯部材24で管状部材30を摩擦で保持することができる。
しかし、貫通孔31内で太い芯部材24と管状部材30との間に隙間がないため、管状部材30の貫通孔31に接着剤gを一時的に溜めた場合に、貫通孔31内に空気を流通させることが困難となる。このため、つけペン101aで接着剤gを塗布したときに、空気が貫通孔31内へ太い芯部材24の根元側から進入できないので、貫通孔31内の接着剤gが先端側へ円滑に移動することができない。その結果、つけペン101aでは、貫通孔31内に一時的に溜めた接着剤gを、複数箇所の結着部に連続的に塗布することが困難であった。
【0017】
そこで、本件発明者は、次に、
図2(b)に比較例として示すつけペンを試作した。
第2の比較例としてのつけペン101bは、軸部10の先端に、管状部材30の貫通孔31の内径よりも小さい直径を有し、貫通孔31に挿入する細い芯部材22を備えている。
細い芯部材22の場合、貫通孔31内で細い芯部材22と管状部材30との間に隙間があるため、管状部材30の貫通孔31に接着剤gを一時的に溜めた場合であっても、芯部材20の根元側から先端まで空気が流通する。
しかし、今度は、この隙間のために、細い芯部材22で管状部材30を保持することが難しく、つけペン101bの先端を下へ向けると管状部材30がつけペン101bから簡単に脱落してしまう。
【0018】
このように、第1の比較例のつけペン101aのように、芯部材が管状部材の貫通孔に密着する太さでは、貫通孔内の接着剤が先端から出てこなくなってしまい、一方、第2の比較例のつけペン101bのように、管状部材に挿入する芯部材が管状部材の貫通孔の太さに対して細すぎると、管状部材が脱落してしまうという問題が生じた。
【0019】
そこで、本件発明者は、
図2(a)及び
図2(b)に示した比較例のつけペン101a及び101bに更に改良を加え、試行錯誤の末、
図1に増毛用つけペン100として例示した本発明に想到した。
増毛用つけペン100では、芯部材20をツイスト形状としたことにより、貫通孔31に挿入された芯部材20は貫通孔31に内接し、かつ、ツイスト形状の谷間である螺旋状の溝部が空気抜き流路21を形成し、芯部材20の根元側から先端まで空気が流通することができる。これにより、芯部材20から管状部材30が脱落することを防止できるとともに、管状部材30の貫通孔31内の接着剤gが先端側へ円滑に移動できるので、複数箇所の結着部に接着剤gを連続して塗布できる。
その上、
図1に示す増毛用つけペン100では、芯部材20の線状部材に溝等を形成する切削加工を施すことなく、芯部材20を複数の線状部材を撚り合わせたツイスト形状とすることにより、芯部材20の根元側から先端まで空気を流通させる空気抜き流路21を有する芯部材20を容易に形成できる。
【0020】
次に、
図3を参照して、本発明による増毛用つけペンの変形例を説明する。なお、
図3では、管状部材の図示を省略する。
図3(a)に示す変形例では、増毛用つけペン100aの芯部材20aの周囲に螺旋状に溝21aが形成されている。芯部材20aを管状部材30の貫通孔31(
図1参照)に挿入すれば、芯部材20aが貫通孔31に内接した状態で、螺旋状の溝21aが空気抜き流路となる。
【0021】
図3(b)に示す変形例では、増毛用つけペン100bの芯部材20bに、芯部材20bの軸方向に沿った溝21bが形成されている。芯部材20bを管状部材30の貫通孔31(
図1(a)参照)に挿入すれば、芯部材20bが貫通孔31に内接した状態で、直線状の溝21bが空気抜き流路となる。
【0022】
次に、
図4を参照して、本発明の増毛用つけペンセットの実施形態を説明する。
図4に示すように、本実施形態の増毛用つけペンセットは、上述した実施形態の増毛用つけペン100と、スタンド200とを備えている。
スタンド200は、ベース40と、ベース40に設けられた、増毛用つけペン100の管状部材30を支持するための穴部が形成された支持部50と、ベース40に設けられた、凹部61が形成された接着剤入れ60とから構成されている。凹部61には、接着剤gの乾燥を防ぐため、蓋を設けるとよい。
【0023】
スタンド200の接着剤入れ60の凹部61に接着剤gを入れておき、この凹部61に増毛用つけペン100の先端を浸すことにより、管状部材30の貫通孔1の先端付近に、複数回分の塗布量の接着剤gを一時的に溜めることができる。
【0024】
また、増毛施術中に、一旦接着剤gを溜めた増毛用つけペン100を置く場合には、増毛用つけペン100をスタンド200の円筒形状の支持部50の穴部51に差し込んで支持させれば、増毛用つけペン100の先端に付着した接着剤gで周囲を汚すことが防止できる。
【0025】
支持部50の穴部の内周には、シリコン樹脂製のシリコン側壁部51が設けられている。睫毛用のグルーのような接着剤gは、シリコン樹脂には固着しにくいため、増毛用つけペン100をスタンド200の支持部50に立てたときに、増毛用つけペン100の管状部材30に付着した接着剤gが支持部50の穴部51に固着することが防止できる。
【0026】
図4(b)に示すように、支持部50の軟部51の直径D1は、増毛用つけペン100の軸部10の直径d1より大きくなっている。支持部50の穴部51に設けられたシリコン側壁部51の内径D2は、増毛用つけペン100の軸部10の直径d1より小さく、かつ、管状部材30の直径d2よりも大きくなっている。このため、増毛用つけペン100を支持部50の穴部51に差し込むと、軸部10の先端の肩部がシリコン側壁部51の上端部51aと当接する。
このとき、シリコン側壁部51の軸方向の長さL2は、支持部51の高さL1よりも低く、かつ、増毛用つけペン100の管状部材30の長さt1よりも長くなっているため、増毛用つけペン100は、管状部材30の先端が穴部51の底面51bから離間した状態で支持される。その結果、管状部材30の先端付近に溜まっている接着剤gが、穴部51の底面51bに付着することが回避される。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、芯部材を2本の線状部材を撚り合わせて形成した例を説明したが、本発明では、芯部材は、3本以上の線状部材を撚り合わせて形成してもよい。
また、上述した実施形態では、芯部材を管状部材の貫通孔の一部に挿入した例を説明したが、本発明では、芯部材を管状部材の貫通孔の全部に挿入してもよい。
また、上述した実施形態では、空気抜き流路によって管状部材の貫通孔の両端間で空気を流通させた例をしたが、本発明では、貫通孔に接着剤が溜められた状態で貫通孔内に空気が流通できればよく、例えば、管状部材の円周部に空気抜き孔があれば、空気抜き通路は、貫通孔の両端間で空気を流通させるものに限定されない。
【符号の説明】
【0028】
10 軸部
20、20a、20b 芯部材
21 空気抜き流路
21a、21b 溝
22 細い芯部材
24 太い芯部材
30 管状部材
31 貫通孔
40 ベース
50 支持部
50a 穴部
51 シリコン側壁部
51a 上端部
51b 底面
60 接着剤入れ
61 凹部
100、100a、100b 増毛用つけペン
101a、101b 比較例のつけペン
200 スタンド