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特開2024-60746水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法
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  • 特開-水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法 図1
  • 特開-水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060746
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
E02F9/20 C
E02F9/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168221
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】新納 保
(72)【発明者】
【氏名】小松 崇
(72)【発明者】
【氏名】大地 康史
(72)【発明者】
【氏名】中野 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003BA04
2D003FA01
(57)【要約】
【課題】水中においても作業機の正確な刃先位置を把握することが可能な水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法を提供する。
【解決手段】水中で作業する自走可能な水中作業機械1において、マスト7は、本体4から上方に延びる。作業機3は、本体4に対して相対移動可能で、刃先を有する。作業機姿勢センサ23は、本体4に対する作業機3の位置を検出する。位置センサ8aは、グローバル座標系での本体4の位置を示す衛星測位信号を受信し、水中作業機械1の水中での稼働時に水上に位置するようにマスト7に取り付けられている。コントローラ30は、衛星測位信号と作業機姿勢センサ23の検出結果とに基づいて、グローバル座標系での作業機3の刃先の位置を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で作業する自走可能な水中作業機械であって、
本体と、
前記本体から上方に延びるマストと、
前記本体に対して相対移動可能で、刃先を有する作業機と、
前記本体に対する前記作業機の位置を検出する作業機姿勢センサと、
グローバル座標系における前記本体の位置を示す衛星測位信号を受信し、前記水中作業機械の水中での稼働時に水上に位置するように前記マストに取り付けられた位置センサと、
前記衛星測位信号と前記作業機姿勢センサの検出結果とに基づいて、グローバル座標系における前記作業機の前記刃先の位置を算出するコントローラと、を備えた、水中作業機械。
【請求項2】
バッテリと、
前記バッテリに蓄えられた電力により駆動する電動モータと、を備え、
前記電動モータからの駆動力を得て動作する、請求項1に記載の水中作業機械。
【請求項3】
前記マストは上下方向の長さが伸縮可能である、請求項1または請求項2に記載の水中作業機械。
【請求項4】
水中で作業する自走可能な水中作業機械を含むシステムであって、
本体と、
前記本体から上方に延びるマストと、
前記本体に対して相対移動可能で、刃先を有する作業機と、
前記本体に対する前記作業機の位置を検出する作業機姿勢センサと、
グローバル座標系における前記本体の位置を示す衛星測位信号を受信し、前記水中作業機械の水中での稼働時に水上に位置するように前記マストに取り付けられた位置センサと、
前記衛星測位信号と前記作業機姿勢センサの検出結果とに基づいて、グローバル座標系における前記作業機の前記刃先の位置を算出するコントローラと、を備えた、水中作業機械システム。
【請求項5】
前記本体に取り付けられた周囲情報センサと、
前記水中作業機械の遠隔地に配置された表示装置と、さらに備え、
前記表示装置は、前記周囲情報センサにより検出された情報を表示する、請求項4に記載の水中作業機械システム。
【請求項6】
水中で作業する自走可能な水中作業機械の制御方法であって、
前記水中作業機械は、本体と、前記本体から上方に延びるマストと、前記本体に対して相対移動可能で刃先を有する作業機と、前記水中作業機械の水中での稼働時に水上に位置するように前記マストに取り付けられた位置センサと、を備え、
前記位置センサにより受信された、グローバル座標系における前記本体の位置を示す衛星測位信号を取得するステップと、
前記本体に対する前記作業機の位置に基づいてローカル座標系における前記作業機の前記刃先の位置を算出するステップと、
前記衛星測位信号とローカル座標系における前記作業機の前記刃先の前記位置とに基づいて、グローバル座標系における前記作業機の前記刃先の位置を算出するステップと、を備えた、水中作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8-60662号公報(特許文献1)には、水深の深い場所で使用できる水中作業機が記載されている。特許文献1によれば、水中作業機を潜水士が操縦することによって水中での作業が行われる。
【0003】
また以下の非特許文献1には、水陸両用ブルドーザの位置をGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)などで計測し、計測された位置座標データを予め入力された設計値と比較して、その差異情報をリアルタイムにオペレータに提供することで水陸両用ブルドーザの操縦をサポートすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-60662号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】坂本繁一、他2名、“7.水陸両用ブルドーザ施工支援システムの開発”、[online]、2016年、青木あすなろ建設 技術研究所報 第1項 2016、<https://www.aaconst.co.jp/common/docs/upfile/2018/04/report_2016_07.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の水中作業機では、潜水士の視覚に頼って作業を行う必要がある。このため水中作業機の正確な位置を把握しながら作業を行うことは困難である。また潜水士はフェイスマスクのレンズ越しに作業状況を確認するため、レンズの屈折、水の透過度合いなどにより作業機の刃先位置を正確に把握することも困難である。
【0007】
一方、非特許文献1では、GNSSなどを用いることにより水中での水陸両用ブルドーザの位置を知ることができるとされているが、作業機の正確な刃先位置を把握することはできない。
【0008】
本開示の目的は、水中においても作業機の正確な刃先位置を把握することが可能な水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の水中作業機械は、水中で作業する自走可能な水中作業機械である。本開示の水中作業機械は、本体と、マストと、作業機と、作業機姿勢センサと、位置センサと、コントローラとを備えている。マストは、本体から上方に延びる。作業機は、本体に対して相対移動可能で、刃先を有する。作業機姿勢センサは、本体に対する作業機の位置を検出する。位置センサは、グローバル座標系における本体の位置を示す衛星測位信号を受信し、水中作業機械の水中での稼働時に水上に位置するようにマストに取り付けられている。コントローラは、衛星測位信号と作業機姿勢センサの検出結果とに基づいて、グローバル座標系における作業機の刃先の位置を算出する。
【0010】
本開示の水中作業機械システムは、水中で作業する自走可能な水中作業機械を含むシステムである。本開示の水中作業機械システムは、本体と、マストと、作業機と、作業機姿勢センサと、位置センサと、コントローラとを備えている。マストは、本体から上方に延びる。作業機は、本体に対して相対移動可能で、刃先を有する。作業機姿勢センサは、本体に対する作業機の位置を検出する。位置センサは、グローバル座標系における本体の位置を示す衛星測位信号を受信し、水中作業機械の水中での稼働時に水上に位置するようにマストに取り付けられている。コントローラは、衛星測位信号と作業機姿勢センサの検出結果とに基づいて、グローバル座標系における作業機の刃先の位置を算出する。
【0011】
本開示の水中作業機械の制御方法は、水中で作業する自走可能な水中作業機械の制御方法である。水中作業機械は、本体と、本体から上方に延びるマストと、本体に対して相対移動可能で刃先を有する作業機と、水中作業機械の水中での稼働時に水上に位置するようにマストに取り付けられた位置センサとを有している。本開示の水中作業機械の制御方法は、以下のステップを備える。
【0012】
位置センサにより受信された、グローバル座標系における本体の位置を示す衛星測位信号が取得される。作業機姿勢センサにより検出された本体に対する作業機の位置に基づいてローカル座標系における作業機の刃先の位置が算出される。衛星測位信号とローカル座標系における作業機の刃先の位置とに基づいて、グローバル座標系における作業機の刃先の位置が算出される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、水中においても作業機の正確な刃先位置を把握することが可能な水中作業機械、水中作業機械システムおよび水中作業機械の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を示す斜視図である。
図2】本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を示す上面図である。
図3】本開示の一実施形態における水中作業機械システムの機能ブロックを示す図である。
図4図3に示すコントローラの機能ブロックを示す図である。
図5】本開示の一実施形態における水中作業機械の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0017】
以下の説明において、水中作業機械1が直進走行する方向を、水中作業機械1の前後方向という。水中作業機械1の前後方向において、車体フレームに対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。水中作業機械1の左右方向とは、平坦な地面上にある水中作業機械1を平面視したときに前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。水中作業機械1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0018】
<水中作業機械1の構成>
本実施形態の水中作業機械1の構成について図1および図2を用いて説明する。
【0019】
図1および図2は、本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を概略的に示す斜視図および上面図である。図2においては、作業機の図示が省略されている。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の水中作業機械1は、たとえばバッテリに蓄えられた電力により駆動する電動モータからの駆動力を得て動作する。水中作業機械1は、水中で作業する自走可能な作業機械である。水中作業機械1は、たとえば走行装置2で走行しながら作業機3により対象物を押して作業する押土式の作業機械である。
【0021】
水中作業機械1は、走行装置2と、作業機3と、本体4とを主に有している。本体4は、車体フレームを有している。
【0022】
走行装置2は、左右1対の走行体2R、2Lを有している。左右1対の走行体2R、2Lは、本体4を左右方向(車幅方向)に挟み込んでいる。左右1対の走行体2R、2Lの各々は、本体4の車体フレームに取り付けられている。
【0023】
左右1対の走行体2R、2Lの各々は、たとえば走行モータ2aからの駆動力を得て動作する。左右1対の走行体2R、2Lの動作により水中作業機械1は走行可能である。左右1対の走行体2R、2Lは、たとえば左右1対の履帯装置よりなっている。左右1対の走行体2R、2Lの各々は、履帯を有している。
【0024】
作業機3は、本体4の車体フレームなどに取り付けられている。作業機3は、本体4に対して相対移動可能である。作業機3は、ブレード3aと、エプロン3bと、左右1対のフレーム3cと、チルトシリンダ3dと、左右1対のリフトシリンダ3eと、左右1対のエプロン用シリンダ3fとを主に有している。
【0025】
ブレード3aおよびエプロン3bは、本体4および走行装置2の前方に配置されている。ブレード3aはたとえば整地などに用いられる。ブレード3aは整地などに際して地面に接する刃先を有している。左右1対のフレーム3cの各々は、本体4とブレード3aとに接続されている。左右1対のフレーム3cの各々は、ブレード3aの背面に接続されている。
【0026】
ブレード3aは、チルトシリンダ3dの伸縮に応じて左右1対のリフトシリンダ3eの一方が伸び、他方が縮むことによりチルトする。ブレード3aは、リフトシリンダ3eの伸縮によって、フレーム3cの本体4への支持部を中心にして上下方向に移動する。
【0027】
エプロン3bは、ブレード3aに回動可能に取り付けられている。エプロン3bは、エプロン用シリンダ3fの伸縮によって、エプロン3bのブレード3aへの支持部を中心に回動する。これによりエプロン3bは、ブレード3aの前面を覆ったり、開放したりすることができる。
【0028】
エプロン3bがブレード3aの前面を開放した状態では、ブレード3aによる掘削が可能である。エプロン3bがブレード3aの前面を覆った状態では、ブレード3aにより掘削された掘削対象物をエプロン3bとブレード3aとにより抱え込んで運搬することができる。エプロン3bを閉じることにより(エプロン3bでブレード3aの前面を覆うことにより)、エプロン3bとブレード3aとにより抱え込んだ掘削対象物(たとえば泥など)が水中で拡散することが抑制される。
【0029】
本実施形態の水中作業機械1は、マスト7と、送受信機8とをさらに有している。マスト7は本体4(たとえば車体フレーム)に取り付けられ、本体4から上方に向かって延びている。マスト7の上端には送受信機8が取り付けられている。送受信機8は、水中作業機械1の水中での稼働時に水上に位置するようにマスト7に取り付けられている。マスト7は、水中作業機械1が水中で作業する際に送受信機8を水上に位置させる役割をなす。すなわち、本実施形態の水中作業機械1は、送受信機8が水面下に潜らない程度の水深での作業を前提とした機械である。
【0030】
マスト7は、本体4からたとえば7m以上であり、地面からたとえば8m以上の長さで上方へ延びている。マスト7は、たとえば上下方向の長さが伸縮可能に構成されていてもよい。マスト7は、たとえばテレスコピック機構により上下方向の長さが伸縮可能とされていてもよい。
【0031】
送受信機8は、位置センサ8aを含む。位置センサ8aは、たとえばGNSS受信機である。GNSS受信機は、グローバル座標系における本体4の位置を示す衛星測位信号を衛星から受信する。また送受信機8は、通信機8bを含む。通信機8bは、たとえば特定小電力無線送受信機または無線LAN(Local Area Network)送受信機である。これにより送受信機8は、水中作業機械1から離れた場所(遠隔地)にいるオペレータからの操作信号を受信する。位置センサ8aおよび通信機8bの各々は、水中作業機械1の水中での稼働時に水上に位置するようにマスト7に取り付けられている。
【0032】
本実施形態の水中作業機械1は、周囲情報センサ21をさらに有している。周囲情報センサ21は、たとえば本体4の上面であって前端付近に取り付けられている。周囲情報センサ21は、たとえば本体4の前方を撮像可能に配置されている。周囲情報センサ21は、たとえば作業機3の刃先付近を撮像可能に配置されている。
【0033】
複数個の周囲情報センサ21が本体4に配置されていてもよい。複数個の周囲情報センサ21は、本体4の前方、左右側方および後方を撮像可能に配置されていてもよい。
【0034】
図2に示されるように、本体4は、バッテリ11と、油圧機器12、13と、電気機器14、15と、コントローラ30と、作動油タンクTAとを有している。バッテリ11、油圧機器12、13、電気機器14、15、コントローラ30および作動油タンクTAの各々は、本体4の外装カバーに覆われている。
【0035】
バッテリ11は、たとえば複数のバッテリモジュールを含み、複数のバッテリモジュールの各々はバッテリセルを有している。バッテリ11は、二次電池(充電池、蓄電池)であり、外部電源から得た電気エネルギーを蓄える。バッテリ11は、蓄えた電気エネルギーを起電力として取り出す。バッテリ11は、リチウムイオンバッテリ、全固体電池、鉛蓄電池などである。
【0036】
油圧機器12、13は、たとえば油圧ポンプ12と、メインバルブ13とを有している。油圧ポンプ12は、たとえばチャージポンプと、作業機ポンプと、HST(Hydro Static Transmission)用ポンプとを含んでいる。電気機器14、15は、たとえばインバータ14と、電動モータ15とを有している。
【0037】
コントローラ30は、オペレータからの操作信号に基づいて、メインバルブ13、インバータ14および電動モータ15を制御するための信号を出力する。これによりオペレータの運転操作に応じて、水中作業機械1の本体4および作業機3を作動させることができる。なお遠隔地にいるオペレータの操作信号は、送受信機8によって受信され、コントローラ30へ出力される。
【0038】
<水中作業機械システム>
次に、本実施形態における水中作業機械システムについて図3を用いて説明する。
【0039】
図3は、本開示の一実施形態における水中作業機械システムの機能ブロック図を示す図である。図3において1本線は電気回路を示し、2本線は油圧回路を示し、破線は機械的な連結を示している。
【0040】
図3に示されるように、バッテリ11は、電気配線を通じてコントローラ30およびインバータ14の各々に接続されている。コントローラ30は、電気配線で接続されたインバータ14に制御信号を与える。バッテリ11は、インバータ14を通じて、動力源としての電動モータ15に電力を供給する。
【0041】
インバータ14は、コントローラ30からの制御信号に基づいて、バッテリ11の出力である直流電力を周波数などを制御した交流電力に変換する。インバータ14は、電気配線を通じて電動モータ15に交流電力を供給する。これにより電動モータ15は、バッテリ11を電源として、インバータ14から供給された交流電力により駆動する。
【0042】
電動モータ15と油圧ポンプ12とは機械的に連結されている。電動モータ15の駆動力が油圧ポンプ12に伝達されることにより油圧ポンプ12が駆動する。油圧ポンプ12は、駆動することにより、作動油タンクTAから作動油を汲み出す。油圧ポンプ12は、作動油タンクTAから汲み出した作動油をメインバルブ(切替バルブ)13を通じて各油圧アクチュエータ(走行モータ2a、各作業機アクチュエータ3d、3e、3f)に供給する。なお作業機アクチュエータにはチルトシリンダも含まれる。
【0043】
メインバルブ13は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。メインバルブ13は、各油圧アクチュエータと油圧ポンプ12との間の油路(油配管)に配置されている。メインバルブ13は、作動油タンクTAから油圧ポンプ12により汲み出された作動油を、各油圧アクチュエータに給排する。メインバルブ13からの作動油の給排により各油圧アクチュエータが作動する。
【0044】
メインバルブ13は、たとえば作業機用電磁制御弁16と、走行モータ用電磁制御弁17とを含んでいる。作業機用電磁制御弁16は、油圧ポンプ12と作業機アクチュエータ3d、3e、3fの各々との間の油路に配置されている。走行モータ用電磁制御弁17は、油圧ポンプ12と走行モータ2aとの間の油路に配置されている。
【0045】
コントローラ30は、作業機用電磁制御弁16の開閉を制御する。これにより作業機アクチュエータ3d、3e、3fの各々の駆動が制御される。コントローラ30は、走行モータ用電磁制御弁17の開閉を制御する。これにより走行モータ2aの駆動が制御される。
【0046】
遠隔操作装置40は、オペレータが遠隔地から水中作業機械1を操作するための装置である。遠隔操作装置40は、たとえば通信装置41と、操作装置42と、表示装置43とを有している。通信装置41、操作装置42および表示装置43の各々は、水中作業機械1の遠隔地に配置されている。
【0047】
通信装置41は、通信機8bと無線で通信可能である。通信装置41と通信機8bとの無線通信は、たとえば特定小電力無線または無線LANを用いて行われる。
【0048】
操作装置42は、たとえばオペレータが操作するための操作レバー、操作スイッチなどを含む。オペレータにより操作装置42に入力された操作信号は、通信装置41を通じて通信機8bにより受信され、水中作業機械1のコントローラ30へ出力される。
【0049】
表示装置43は、水中作業機械1の作業状況、現況地形、設計地形、水中の撮像画像などの各種情報を表示する。表示装置43は、通信機8bおよび通信装置41を通じて水中作業機械1から取得した情報を表示することができる。
【0050】
通信機8bは、遠隔操作装置40からの操作信号を受信する。通信機8bはコントローラ30と電気配線により接続されている。通信機8bは、受信した操作信号をコントローラ30へ出力する。
【0051】
コントローラ30は、取得した操作信号に基づいて、インバータ14、作業機用電磁制御弁16および走行モータ用電磁制御弁17への制御信号を出力する。これにより遠隔操作装置40からの操作信号に基づいて水中作業機械1の走行装置2および作業機3を操作することができる。
【0052】
位置センサ8aは、グローバル座標系における本体4の位置を示す衛星測位信号を衛星から受信する。位置センサ8aはコントローラ30と電気配線により接続されている。位置センサ8aは、受信した衛星測位信号をコントローラ30へ出力する。
【0053】
周囲情報センサ21、車体姿勢センサ22および作業機姿勢センサ23の各々は、コントローラ30と電気配線により接続されている。周囲情報センサ21は、たとえば光学カメラ、音響ソナー、音響カメラなどである。周囲情報センサ21として光学カメラを用いることにより透明な水中において水中作業機械1の周囲を撮像することができる。また周囲情報センサ21として音響ソナーまたは音響カメラを用いることにより、濁った水中においても水中作業機械1の周囲を撮像することができる。周囲情報センサ21は、撮像した情報をコントローラ30へ出力する。
【0054】
車体姿勢センサ22は、ローカル座標系における本体4の姿勢を検出する。車体姿勢センサ22は、本体4に設けられる。車体姿勢センサ22は、たとえば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含む。本体4の姿勢は、前後方向に延びる軸を中心とする本体4の傾斜角度を示すロール角、左右方向に延びる軸を中心とする本体4の傾斜角度を示すピッチ角、および上下方向に延びる軸を中心とする本体4の傾斜角度を示すヨー角を含む。車体姿勢センサ22は、検出したローカル座標系における本体4の姿勢に関する情報をコントローラ30へ出力する。
【0055】
作業機姿勢センサ23は、本体4に対する作業機3の姿勢(位置)を検出する。作業機姿勢センサ23は、ローカル座標系における作業機3の姿勢を検出する。作業機姿勢センサ23は、たとえばストロークセンサであってもよい。作業機姿勢センサ23がストロークセンサである場合、たとえばピッチシリンダ3d、リフトシリンダ3e、チルトシリンダ、およびエプロン用シリンダの各々にストロークセンサが取り付けられる。ストロークセンサにより各シリンダのストローク量を検出することができる。このストローク量と、作業機3の各要素の寸法などによりフレーム3cおよびブレード3aの姿勢を検出することができる。作業機姿勢センサ23は、検出した作業機3の姿勢に関する情報をコントローラ30へ出力する。
【0056】
作業機姿勢センサ23は、上記のストロークセンサに限定されず、ロータリーエンコーダ、慣性計測装置、ポテンショメータ、視覚センサなどであってもよい。
【0057】
作業機姿勢センサ23としてロータリーエンコーダが用いられる場合、たとえば本体4に対するフレーム3cの回転軸付近と、フレーム3cに対するブレード3aの回転軸付近とにロータリエンコーダが取り付けられる。ロータリエンコーダにより検出された本体4に対するフレーム3cの角度と、フレーム3cに対するブレード3aの角度と、作業機3の各要素の寸法などによりフレーム3cおよびブレード3aの姿勢(作業機3の姿勢)を検出することができる。
【0058】
作業機姿勢センサ23として慣性計測装置が用いられる場合、たとえばフレーム3cおよびブレード3aの各々に慣性計測装置が取り付けられる。各慣性計測装置は、3軸の角度(または角速度)と加速度とを検出する。慣性計測装置により検出された3軸の角度(または角速度)と加速度とによりフレーム3cおよびブレード3aの各々の姿勢を検出することができる。
【0059】
作業機姿勢センサ23としてポテンショメータが用いられる場合、たとえばフレーム3cと本体4との接続部付近と、ブレード3aとフレーム3cとの接続部付近とにポテンショメータが取り付けられる。各ポテンショメータにより、本体4に対するフレーム3cの回転角度、フレーム3cに対するブレード3aの回転角度の各々を検出することができる。これらの回転角度からフレーム3cおよびブレード3aの各々の姿勢を検出することができる。
【0060】
作業機姿勢センサ23として視覚センサが用いられる場合、視覚センサによりフレーム3cおよびブレード3aの状態が撮像される。視覚センサにより撮像された撮像情報から、フレーム3cおよびブレード3aの各々の姿勢を検出することができる。視覚センサは、たとえばカメラなどの撮像装置である。
【0061】
水中作業機械1は、記憶部24を有している。記憶部24は、コントローラ30とは別に設けられていてもよく、またコントローラ30内に設けられていてもよい。記憶部24には、たとえば現況地形データ、設計地形データ、作業機データなどが格納されている。現況地形データは、施工現場の現況地形データであり、たとえば周囲情報センサ21により検出されたデータであってもよく、また他の装置により検出されたデータであってもよい。設計地形データは、施工現場における地面の目標形状であり、たとえば施工会社により作成されたデータであってもよい。作業機データは、作業機3を構成する要素(ブレード3a、フレーム3cなど)の寸法を示すデータである。
【0062】
<コントローラ30>
次に、コントローラ30の機能ブロックについて図4を用いて説明する。
【0063】
図4は、図3に示すコントローラの機能ブロック図を示す図である。図4に示されるように、コントローラ30は、データ取得部31と、算出部32と、制御部33とを有している。
【0064】
データ取得部31は、周囲情報取得部31Aと、位置情報取得部31Bと、車体姿勢データ取得部31Cと、作業機姿勢データ取得部31Dと、現況地形データ取得部31Eと、設計地形データ取得部31Fと、作業機データ取得部31Gとを有している。
【0065】
周囲情報取得部31Aは、周囲情報センサ21の検出結果を取得する。位置情報取得部31Bは、位置センサ8aが受信した測位衛星信号を取得する。車体姿勢データ取得部31Cは、車体姿勢センサ22の検出結果を取得する。作業機姿勢データ取得部31Dは、作業機姿勢センサ23の検出結果を取得する。現況地形データ取得部31Eは、記憶部24に格納された現況地形データを取得する。設計地形データ取得部31Fは、記憶部24に格納された設計地形データを取得する。作業機データ取得部31Gは、記憶部24に格納された作業機データを取得する。
【0066】
算出部32は、ローカル座標系における作業機刃先位置算出部32Aと、グローバル座標系における作業機刃先位置算出部32Bと、施工計画データ算出部32Cとを有している。ローカル座標系における作業機刃先位置算出部32Aは、作業機姿勢データ取得部31Dにより取得された作業機3の姿勢データと作業機データ取得部31Gにより取得された作業機データとに基づいて、ローカル座標系における作業機3の刃先の位置を算出する。
【0067】
グローバル座標系における作業機刃先位置算出部32Bは、位置情報取得部31Bにより取得されたグローバル座標系における本体4の位置(衛星測位信号)と、算出されたローカル座標系における作業機3の刃先の位置(作業機姿勢センサ23の検出結果)とに基づいて、グローバル座標系における作業機3の刃先の位置を算出する。
【0068】
グローバル座標系における作業機刃先位置算出部32Bは、グローバル座標系における作業機3の刃先の位置を算出する際に、車体姿勢データ取得部31Cにより取得されたローカル座標系における本体4の姿勢を考慮してもよい。たとえば本体4が水平面に対して傾斜している場合には、車体姿勢センサ22により検出された本体4の傾斜角度を加味してグローバル座標系における作業機3の刃先の位置が算出されてもよい。
【0069】
施工計画データ算出部32Cは、現況地形データ取得部31Eにより取得された現況地形データと、設計地形データ取得部31Fにより取得された設計地形データとに基づいて施工計画を算出する。施工計画データ算出部32Cは、施工計画を算出する際に、作業機データ取得部31Gにより取得された作業機データを考慮して施工計画を算出してもよい。施工計画データ算出部32Cは、施工計画を算出する際に、施工のための作業機3の刃先の移動経路を算出する。
【0070】
制御部33は、表示制御部33Aと、作業機制御部33Bと、走行制御部33Cとを有している。表示制御部33Aは、通信機8bを通じて遠隔操作装置40における表示装置43(図3)の表示内容を制御する。表示装置43には、たとえば周囲情報センサ21により検出された周囲情報が表示されてもよく、現況地形データ、設計地形データ、作業機3の刃先位置などが表示されてもよく、施工計画データが表示されてもよい。
【0071】
作業機制御部33Bは、作業機用電磁制御弁16の動作を制御する。また走行制御部33Cは、走行モータ用電磁制御弁17の動作を制御する。たとえば作業機制御部33Bおよび走行制御部33Cは、施工計画データ算出部32Cにより算出された施工計画における作業機3の刃先の移動経路に沿って作業機3の刃先が移動するように作業機用電磁制御弁16および走行モータ用電磁制御弁17の各々の動作を制御する。
【0072】
上記のように施工計画データ算出部32Cにより作業機3における刃先の移動経路を算出し、その移動経路に沿って作業機3の刃先が移動するように作業機3および走行装置2が制御されることによりブレード3aの自動制御が可能となる。
【0073】
またグローバル座標系における作業機刃先位置算出部32Bにより、グローバル座標系における作業機3の刃先の位置を算出することができる。このためオペレータによる遠隔操作においても正確な施工が可能となる。
【0074】
コントローラ30は、水中作業機械1に搭載されていてもよく、水中作業機械1の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ30は、水中作業機械1の外部にある遠隔操作装置40、サーバなどに配置されていてもよい。コントローラは、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部24は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などのメモリであってもよい。
【0075】
<水中作業機械1の制御方法>
次に、本実施形態における水中作業機械1の制御方法について図4および図5を用いて説明する。
【0076】
図5は、本開示の一実施形態における水中作業機械の制御方法を示すフロー図である。図4および図5に示されるように、コントローラ30は、作業機姿勢データ取得部31Dにて、作業機姿勢センサ23から作業機姿勢データを取得する(ステップS1a:図5)。コントローラ30は、作業機データ取得部31Gにて、記憶部24から作業機データを取得する(ステップS1b:図5)。コントローラ30は、ローカル座標系における作業機刃先位置算出部32Aにて、作業機姿勢データ取得部31Dにより取得された作業機3の姿勢データと作業機データ取得部31Gにより取得された作業機データとに基づいて、ローカル座標系における作業機3の刃先の位置を算出する(ステップS2:図5)。
【0077】
コントローラ30は、位置情報取得部31Bにて、位置センサ8aからグローバル座標系における本体4の位置を取得する(ステップS1c:図5)。またコントローラ30は、車体姿勢データ取得部31Cにて、車体姿勢センサ22から車体姿勢データを取得する(ステップS1d:図5)。
【0078】
コントローラ30は、グローバル座標系における作業機刃先位置算出部32Bにて、ローカル座標系における作業機刃先位置算出部32Aにより算出されたローカル座標系における作業機3の刃先位置と、位置情報取得部31Bにより取得されたグローバル座標系における本体4の位置とに基づいて、グローバル座標系における作業機3の刃先位置を算出する(ステップS3:図5)。この際、コントローラ30は、車体姿勢データ取得部31Cにより取得された本体4の姿勢データを考慮して、グローバル座標系における作業機3の刃先位置を算出してもよい。
【0079】
コントローラ30は、算出されたグローバル座標系における作業機3の刃先位置に基づいて表示装置43、作業機3および走行装置2を制御する(ステップS4:図5)。コントローラ30は、表示制御部33Aにて、たとえばグローバル座標系における作業機3の刃先位置を現況地形または設計地形などとともに表示装置43(図3)に表示するよう制御する。またコントローラ30は、たとえば施工計画データ算出部32Cにより算出された施工計画における作業機3の刃先の移動経路に沿って作業機3の刃先が移動するように作業機制御部33Bおよび走行制御部33Cにより作業機用電磁制御弁16および走行モータ用電磁制御弁17の各々の開閉動作を制御する。
【0080】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0081】
本実施形態においては図4に示されるように、グローバル座標系における作業機刃先位置算出部32Bにより、グローバル座標系における作業機3の刃先の位置を算出することができる。このためオペレータによる遠隔操作で水中作業機械1を水中で稼働させる場合においても作業機3の正確な刃先位置を把握することが可能となり、正確な施工が可能となる。
【0082】
また図4に示されるように、施工計画データ算出部32Cにより作業機3における刃先の移動経路を算出し、その移動経路に沿って作業機3の刃先が移動するように作業機3および走行装置2が制御される。これによりブレード3aの自動制御が可能となる。
【0083】
また本実施形態においては図3に示されるように、水中作業機械1は、バッテリ11に蓄えられた電力により駆動する電動モータ15からの駆動力を得て動作する。このように水中作業機械1は内燃機関を用いることなしにバッテリ11により駆動されるため、内燃機関からの排気ガスを排出する必要がない。
【0084】
また本実施形態においては図3に示されるように、水中作業機械1のシステムは、本体4に取り付けられた周囲情報センサ21と、水中作業機械1の遠隔地に配置された表示装置43とを有している。表示装置43は、周囲情報センサ21により検出された情報を表示する。これによりオペレータは、周囲情報センサ21により検出された水中作業機械1の周囲の状況を表示装置43にて視認することができる。このため水中の作業を正確に行うことが可能となる。
【0085】
また本実施形態においては図1に示されるマスト7の上下方向の長さが伸縮可能である。このため水深に応じてマスト7の長さを調整することが可能となる。マスト7の長さを短くすることで水中作業機械1の重心位置を下方に下げることができ安定した動作が可能となる。またマスト7の長さを長くすることで水深が深くなった場合においても送受信機8を水上に位置させることが容易となる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 水中作業機械、2 走行装置、2L,2R 走行体、2a 走行モータ、3 作業機、3a ブレード、3b エプロン、3c フレーム、3d ピッチシリンダ、3e リフトシリンダ、3f エプロン用シリンダ、4 本体、7 マスト、8 送受信機、8a 位置センサ、8b 通信機、11 バッテリ、12 油圧ポンプ、13 メインバルブ、14 インバータ、15 電動モータ、16 作業機用電磁制御弁、17 走行モータ用電磁制御弁、21 周囲情報センサ、22 車体姿勢センサ、23 作業機姿勢センサ、24 記憶部、30 コントローラ、31 データ取得部、31A 周囲情報取得部、31B 位置情報取得部、31C 車体姿勢データ取得部、31D 作業機姿勢データ取得部、31E 現況地形データ取得部、31F 設計地形データ取得部、31G 作業機データ取得部、32 算出部、32A ローカル座標系における作業機刃先位置算出部、32B グローバル座標系における作業機刃先位置算出部、32C 施工計画データ算出部、33 制御部、33A 表示制御部、33B 作業機制御部、33C 走行制御部、40 遠隔操作装置、41 通信装置、42 操作装置、43 表示装置、TA 作動油タンク。
図1
図2
図3
図4
図5