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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060747
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】水中作業機械
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240425BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168222
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大地 康史
(72)【発明者】
【氏名】新納 保
(72)【発明者】
【氏名】深澤 敏彦
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA19
3D235BB22
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC15
3D235CC37
3D235DD16
3D235DD21
3D235EE63
3D235FF02
3D235FF44
(57)【要約】
【課題】水中の作業においても適切な重量バランスを得ることが容易な水中作業機械を提供する。
【解決手段】水中作業機械1は、車体フレームFRと、複数の機器11~15と、複数の圧力容器PC1、PC2、PC3とを有している。複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々は、車体フレームFRに配置され、機器11~15を収納する内部空間を有し、外部から内部空間への水の浸入を防止できるよう構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で作業する自走可能な水中作業機械であって、
車体フレームと、
複数の機器と、
各々が前記車体フレーム上に配置され、前記機器を収納する内部空間を有し、外部から前記内部空間への水の浸入を防止できる複数の圧力容器と、を備えた、水中作業機械。
【請求項2】
前記複数の圧力容器に含まれる少なくとも1つの圧力容器は、第1容器部と第2容器部との組合わせにより前記内部空間を有する箱型構造を有し、
前記第1容器部と前記第2容器部との接合面が、前記少なくとも1つの圧力容器の高さの中心に位置する、請求項1に記載の水中作業機械。
【請求項3】
走行装置と、作業機と、をさらに備え、
前記水中作業機械は前記走行装置で走行しながら前記作業機により対象物を押して作業する押土式の作業機械であり、
前記複数の圧力容器は、前記車体フレームの前後方向に沿って配置される第1圧力容器および第2圧力容器を有する、請求項1または請求項2に記載の水中作業機械。
【請求項4】
前記複数の機器はバッテリを含み、前記作業機はブレードを含み、
前記第1圧力容器は、前記ブレードと前記第2圧力容器との間に配置され、前記バッテリを前記内部空間に収納する、請求項3に記載の水中作業機械。
【請求項5】
前記走行装置は、左右1対の走行体を有し、
前記第1圧力容器は、上面視において前記左右1対の走行体の間に配置されている、請求項3に記載の水中作業機械。
【請求項6】
前記複数の圧力容器に含まれる少なくとも1つの圧力容器は、前記内部空間に突き出すリブを有する、請求項1に記載の水中作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8-60662号公報(特許文献1)には、水深の深い場所で使用できる水中作業機が記載されている。この水中作業機は均圧室を有している。この均圧室には、走行装置の制御機構、作業装置の制御機構などの水濡れまたは水の浸入を避けるべき機構または機器類が収納される。この均圧室には水上に配置された動力ユニットから空気が供給され、それにより均圧室の内部の圧力は水圧と平衡する値に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-60662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、均圧室に空気を供給するため、水中で作業を行うための適切な重量バランスおよび接地圧を得ることが難しい。
【0005】
本開示の目的は、水中の作業においても適切な重量バランスを得ることが容易な水中作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水中作業機械は、水中で作業する自走可能な水中作業機械である。この水中作業機械は、車体フレームと、複数の機器と、複数の圧力容器とを備える。複数の圧力容器の各々は、車体フレーム上に配置され、機器を収納する内部空間を有し、外部から内部空間への水の浸入を防止できる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、水中の作業においても適切な重量バランスを得ることが容易な水中作業機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を示す斜視図である。
図2】本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を示す上面図である。
図3】本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を示す側面図である。
図4図1の水中作業機械における圧力容器の構成を示す分解斜視図である。
図5図4に示す圧力容器の構成を示す側面図である。
図6】比較例の圧力容器に水圧が作用した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0011】
以下の説明において、水中作業機械1が直進走行する方向を、水中作業機械1の前後方向という。水中作業機械1の前後方向において、車体フレームFRに対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。水中作業機械1の左右方向とは、平坦な地面上にある水中作業機械1を平面視したときに前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。水中作業機械1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0012】
<水中作業機械1の構成>
図1図2および図3は、本開示の一実施形態における水中作業機械の構成を概略的に示す斜視図、上面図および側面図である。図1図2および図3においては、水中作業機械1における本体4の外側を覆う外装パネルの図示が省略されている。また図2および図3においては、作業機の図示が省略されている。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態の水中作業機械1は、たとえばバッテリに蓄えられた電力により駆動する電動モータからの駆動力を得て動作する。水中作業機械1は、水中で作業する自走可能な作業機械である。水中作業機械1は、たとえば走行装置2で走行しながら作業機3により対象物を押して作業する押土式の作業機械である。
【0014】
水中作業機械1は、走行装置2と、作業機3と、本体4とを主に有している。本体4は、車体フレームFRと、複数の圧力容器PC1、PC2、PC3と、作動油タンクTAと、水冷式クーラ5とを主に有している。
【0015】
走行装置2は、左右1対の走行体2R、2Lを有している。左右1対の走行体2R、2Lは、本体4を左右方向(車幅方向)に挟み込んでいる。左右1対の走行体2R、2Lの各々は、本体4の車体フレームFRに取り付けられている。
【0016】
左右1対の走行体2R、2Lの各々は、たとえば走行モータ2aからの駆動力を得て動作する。左右1対の走行体2R、2Lの動作により水中作業機械1は走行可能である。左右1対の走行体2R、2Lは、たとえば左右1対の履帯装置よりなっている。左右1対の走行体2R、2Lの各々は、履帯を有している。
【0017】
作業機3は、本体4の車体フレームFRなどに取り付けられている。作業機3は、ブレード3aと、エプロン3bと、左右1対のフレーム3cと、チルトシリンダ3dと、左右1対のリフトシリンダ3eと、左右1対のエプロン用シリンダ3fとを主に有している。
【0018】
ブレード3aおよびエプロン3bは、車体フレームFRおよび走行装置2の前方に配置されている。ブレード3aはたとえば整地などに用いられる。左右1対のフレーム3cの各々は、本体4とブレード3aとに接続されている。左右1対のフレーム3cの各々は、ブレード3aの背面に接続されている。
【0019】
ブレード3aは、チルトシリンダ3dの伸縮に応じて左右1対のリフトシリンダ3eの一方が伸び、他方が縮むことによりチルトする。ブレード3aは、リフトシリンダ3eの伸縮によって、フレーム3cの本体4への支持部を中心にして上下方向に移動する。
【0020】
エプロン3bは、ブレード3aに回動可能に取り付けられている。エプロン3bは、エプロン用シリンダ3fの伸縮によって、エプロン3bのブレード3aへの支持部を中心に回動する。これによりエプロン3bは、ブレード3aの前面を覆ったり、開放したりすることができる。
【0021】
エプロン3bがブレード3aの前面を開放した状態では、ブレード3aによる掘削が可能である。エプロン3bがブレード3aの前面を覆った状態では、ブレード3aにより掘削された掘削対象物をエプロン3bとブレード3aとにより抱え込んで運搬することができる。エプロン3bを閉じることにより(エプロン3bでブレード3aの前面を覆うことにより)、エプロン3bとブレード3aとにより抱え込んだ掘削対象物(たとえば泥など)が水中で拡散することが抑制される。
【0022】
複数の圧力容器PC1、PC2、PC3、作動油タンクTAおよび水冷式クーラ5の各々は、車体フレームFR上に配置されている。複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々は、内部空間を有している。複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々の内部空間には、機器が配置されている。
【0023】
複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々の内部空間に配置される機器は、電気機器、油圧機器、コントローラなどを含む。複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々は、外部から内部空間への水の浸入を防止できるように構成されている。
【0024】
本実施形態の水中作業機械1は、マスト7と、送受信機8とをさらに有している。マスト7は本体4(たとえば車体フレームFR)に取り付けられ、本体4の上側に向かって延びている。マスト7の上端には送受信機8が取り付けられている。マスト7は、水中作業機械1が水中で作業する際に送受信機8を水上に位置させる役割をなす。すなわち、本実施形態の水中作業機械1は、送受信機8が水面下に潜らない程度の水深での作業を前提とした機械である。
【0025】
送受信機8は、たとえば特定小電力無線送受信機または無線LAN(Local Area Network)送受信機を含む。これにより送受信機8は、水中作業機械1から離れた場所(遠隔地)にいるオペレータからの操作信号を受信する。また送受信機8は、たとえばGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)受信機を含む。衛星測位システムは、GNSSレシーバが衛星から受信した測位信号により、GNSS受信機のアンテナの位置を演算して、水中作業機械1の位置を算出する。
【0026】
図2に示されるように、圧力容器PC1(第1圧力容器)の内部空間には、たとえばバッテリ11が配置されている。圧力容器PC2(第2圧力容器)の内部空間には、たとえば油圧機器、電気機器などが配置されている。圧力容器PC3(第3圧力容器)の内部空間には、たとえばコントローラが配置されている。
【0027】
圧力容器PC1内に配置されるバッテリ11は、たとえば複数のバッテリモジュールを含み、複数のバッテリモジュールの各々はバッテリセルを有している。バッテリ11は、二次電池(充電池、蓄電池)であり、外部電源から得た電気エネルギーを蓄える。バッテリ11は、蓄えた電気エネルギーを起電力として取り出す。バッテリ11は、リチウムイオンバッテリ、全固体電池、鉛蓄電池などである。
【0028】
圧力容器PC2内に配置される油圧機器は、たとえば油圧ポンプ12と、メインバルブ13とを有している。油圧ポンプ12は、たとえばチャージポンプと、作業機ポンプと、HST(Hydro Static Transmission)用ポンプとを含んでいる。圧力容器PC2内に配置される電気機器は、たとえばインバータ14と、電動モータ15とを有している。
【0029】
圧力容器PC3内に配置されるコントローラは、送受信機8によって受信される、遠隔地にいるオペレータからの操作信号に基づいて、メインバルブ13、インバータ14および電動モータ15を制御するための信号を出力する。これによりオペレータの運転操作に応じて、水中作業機械1の本体4および作業機3を作動させることができる。
【0030】
圧力容器PC1は、上面視においてブレード3aと圧力容器PC2との間に配置されており、前後方向においてブレード3aと圧力容器PC2とに挟まれている。圧力容器PC1は、上面視においてブレード3aとマスト7との間に配置されており、前後方向においてブレード3aとマスト7とに挟まれている。上面視とは、水平な地面に配置された水中作業機械1を地面に対して垂直な方向に沿って上から下を見る視点を意味する。
【0031】
圧力容器PC1は、上面視において左右1対の走行体2R、2Lの間に配置されており、左右方向において左右1対の走行体2R、2Lに挟まれている。圧力容器PC1は、上面視において圧力容器PC3と作動油タンクTAとの間に配置されており、左右方向において圧力容器PC3と作動油タンクTAとに挟まれている。
【0032】
圧力容器PC2は、上面視において圧力容器PC1、PC3、作動油タンクTAおよびマスト7の各々よりも後方に配置されている。圧力容器PC2は、上面視において走行装置2の後端2REよりも後方に突き出す部分を有している。圧力容器PC2の左右方向の幅は、圧力容器PC1の左右方向の幅よりも大きい。
【0033】
圧力容器PC3および作動油タンクTAは、上面視においてマスト7を左右方向に挟むように配置されている。
【0034】
水冷式クーラ5は、たとえば圧力容器PC1内のバッテリ11の冷却に使用される冷却水を冷却する。水冷式クーラ5は、上面視において圧力容器PC1の前方に配置されている。水冷式クーラ5は、上面視において左右1対の走行体2R、2Lの間に配置されている。圧力容器PC1は、上面視において水冷式クーラ5と圧力容器PC2との間に配置されており、前後方向において水冷式クーラ5と圧力容器PC2とに挟まれている。
【0035】
図3に示されるように、圧力容器PC1、PC2、PC3の各々は、車体フレームFRの上に配置されている。圧力容器PC1、PC2、PC3、作動油タンクTAおよびマスト7の各々は、たとえばボルトなどの固定部材により車体フレームFRに固定されている。圧力容器PC1は、たとえば車体フレームFRに設けられたタップ穴を有するマウントにボルト結合されている。また、たとえばボルトが、車体フレームFRの下側から車体フレームFRの貫通孔に挿入された後に圧力容器PC2、PC3、作動油タンクTAの各々の雌ネジ部に螺合されている。
【0036】
圧力容器PC1、PC2、PC3内の各機器と作動油タンクTAとは、電気配線、油配管などにより互いに接続されている。具体的には圧力容器PC1内のバッテリ11と圧力容器PC2内のインバータ14とは電気配線により接続されている。圧力容器PC2内のメインバルブ13と圧力容器PC3内のコントローラとは電気配線により接続されている。圧力容器PC2内の油圧ポンプ12と作動油タンクTAとは油配管により接続されている。圧力容器PC2内のメインバルブ13と各油圧アクチュエータ(走行モータ2a、各油圧シリンダ3d、3e、3f)とは油配管により接続されている。
【0037】
各容器(圧力容器PC1、PC2、PC3、作動油タンクTA)同士の電気配線や油配管による接続には水密な構造が用いられ、たとえば水中コネクタ、耐水圧コネクタ、防水コネクタなどが用いられる。これらのコネクタにおいては、容器との接続部にOリングなどのシール部材が用いられている。このためコネクタと各容器との接続部から各容器の内部空間に水が浸入することは防止されている。
【0038】
図1図3に示されるように、バッテリ11は、インバータ14を通じて、動力源としての電動モータ15に電力を供給する。具体的にはバッテリ11は、電気配線を通じてインバータ14に電力を供給する。インバータ14は、バッテリ11の出力である直流電力を、周波数などを制御した交流電力に変換する。インバータ14は、電気配線を通じて電動モータ15に交流電力を供給する。これにより電動モータ15は、バッテリ11を電源として、インバータ14から供給された交流電力により駆動する。
【0039】
電動モータ15と油圧ポンプ12とは機械的に連結されている。電動モータ15の駆動力が油圧ポンプ12に伝達されることにより油圧ポンプ12が駆動する。油圧ポンプ12は、駆動することにより、作動油タンクTAから作動油を汲み出す。油圧ポンプ12は、作動油タンクTAから汲み出した作動油をメインバルブ(切替バルブ)13を通じて各油圧アクチュエータ(走行モータ2a、各油圧シリンダ3d、3e、3f)に供給する。
【0040】
メインバルブ13は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。メインバルブ13は、油圧ポンプ12と油圧アクチュエータとの間の油路(油配管)に配置されている。メインバルブ13は、作動油タンクTAから油圧ポンプ12により汲み出された作動油を、油圧アクチュエータに給排する。メインバルブ13からの作動油の給排により各油圧アクチュエータが作動する。
【0041】
水中で作業する水中作業機械1の遠隔地にいるオペレータの運転操作信号を送受信機8が受信する。送受信機8が受信した操作信号に基づいて、圧力容器PC3内に配置されるコントローラは、メインバルブ13における各弁の開閉、インバータ14および電動モータ15を制御する。これによりオペレータの運転操作に応じて、水中作業機械1の本体4および作業機3を作動させることができる。具体的にはオペレータは、油圧シリンダ3d、3e、3fを作動させることにより作業機3を操作でき、走行モータ2aを作動させることにより水中作業機械1の走行を操作できる。
【0042】
<圧力容器PC1、PC2、PC3の構成>
次に、本実施形態における圧力容器PC1、PC2、PC3の構成について、圧力容器PC1を例に挙げて図4および図5を用いて説明する。
【0043】
図4および図5のそれぞれは、図1の水中作業機械における圧力容器の構成を示す分解斜視図および側面図である。
【0044】
図4に示されるように、圧力容器PC1は、たとえば第1容器部LCと第2容器部UCとの組み合わせにより内部空間を有する箱型構造を有している。本明細書における箱型構造とは、平面の組合わせからなる外形を意味する。圧力容器PC1が平面からなる箱型の形状を有することにより、圧力容器PC1が曲面の外殻を有する場合と比較して、圧力容器PC1を車体フレームFR上に配置したときにデッドスペースが生じにくく、また容器の製造も容易となる。第1容器部LCと第2容器部UCとは上下に互いに重ね合わされている。第2容器部UCが第1容器部LCの上に配置されている。
【0045】
第1容器部LCは上端に内部空間に通じる開口を有している。第1容器部LCは、上端に容器外部および内部の双方へ張り出すフランジ部FG1を有している。フランジ部FG1は、第1容器部LCの周囲全周において連続して設けられている。フランジ部FG1の容器外側に張り出した部分には、複数の雌ネジ部H1が設けられている。フランジ部FG1の上面は、第2容器部UCとの接合面CS1となる。
【0046】
第2容器部UCは下端に内部空間に通じる開口を有している。第2容器部UCは、下端に容器外部および内部の双方へ張り出すフランジ部FG2を有している。フランジ部FG2は、第2容器部UCの周囲全周において連続して設けられている。フランジ部FG2の容器外側に張り出した部分には、複数の貫通孔H2が設けられている。フランジ部FG2の下面は、第1容器部LCとの接合面CS2となる。
【0047】
第1容器部LCと第2容器部UCとの開口部同士が重なるように第1容器部LCと第2容器部UCとが組み合わされている。これにより第1容器部LCの内部空間と第2容器部UCの内部空間とが一体化して圧力容器PC1の内部空間を構成している。第1容器部LCと第2容器部UCとが組み合わされた状態において第1容器部LCのフランジ部FG1と第2容器部UCのフランジ部FG2とが互いに対向する。これによりフランジ部FG1の接合面CS1とフランジ部FG2の接合面CS2とが互いに対向する。
【0048】
第1容器部LCのフランジ部FG1と第2容器部UCのフランジ部FG2との間には、Oリングなどのシール部材SMが配置されている。シール部材SMは、内部空間の周囲を取り囲んでいる。シール部材SMは、第1容器部LCと第2容器部UCとの間から圧力容器PC1の内部空間に水が浸入することを防止する。シール部材SMは、フランジ部FG1の接合面CS1に設けられた溝内に配置されていてもよい。
【0049】
第1容器部LCと第2容器部UCとは、ボルトBLにより互いに固定されている。具体的にはボルトBLが、フランジ部FG2の貫通孔H2に挿入された後にフランジ部FG1の雌ネジ部H1に螺合されることにより、第1容器部LCと第2容器部UCとは互いに固定されている。
【0050】
ボルトBLで締付けることにより、第1容器部LCと第2容器部UCとがシール部材SMを挟んで互いに強固に押し付け合う。これにより第1容器部LCと第2容器部UCとが互いに固定されている。またシール部材SMが接合面CS1、CS2の双方に密着することにより、第1容器部LCと第2容器部UCとの間から圧力容器PC1の内部空間に水が浸入することが防止されている。
【0051】
圧力容器PC1は、内部空間に突き出す複数の内側リブIR1、IR1a、IR2、IR2aを有している。具体的には第1容器部LCは内部空間に突き出す複数の内側リブIR1、IR1aを有し、第2容器部UCは内部空間に突き出す複数の内側リブIR2、IR2aを有している。複数の内側リブIR1、IR1a、IR2、IR2aにより圧力容器PC1の強度は補強されている。
【0052】
複数の内側リブIR1は、第1容器部LCの長手方向D1に沿って並んでいる。複数の内側リブIR1の各々は、第1容器部LCの内部空間に面する両側壁面および底面に亘って設けられている。複数の内側リブIR1の各々は、第1容器部LCの内部空間に面する両側壁面および底面の各々にたとえば溶接により接合されている。内側リブIR1は、たとえばU字形状を有している。
【0053】
複数の内側リブIR1aは、第1容器部LCの短手方向D2に沿って並んでいる。複数の内側リブIR1aの各々は、第1容器部LCの内部空間に面する側壁面および底面に亘って設けられている。複数の内側リブIR1aの各々は、第1容器部LCの内部空間に面する側壁面および底面の各々にたとえば溶接により接合されている。内側リブIR1aは、たとえばL字形状を有している。複数の内側リブIR1、IR1aの各々はフランジ部FG1に接続されていてもよい。
【0054】
複数の内側リブIR2は、第2容器部UCの長手方向D1に沿って並んでいる。複数の内側リブIR2の各々は、第2容器部UCの内部空間に面する両側壁面および天面に亘って設けられている。複数の内側リブIR2の各々は、第2容器部UCの内部空間に面する両側壁面および天面の各々にたとえば溶接により接合されている。内側リブIR2は、たとえば逆U字形状を有している。
【0055】
複数の内側リブIR2aは、第2容器部UCの短手方向D2に沿って並んでいる。複数の内側リブIR2aの各々は、第2容器部UCの内部空間に面する側壁面および天面に亘って設けられている。複数の内側リブIR2aの各々は、第2容器部UCの内部空間に面する側壁面および天面の各々にたとえば溶接により接合されている。内側リブIR2aは、たとえば逆L字形状を有している。複数の内側リブIR2、IR2aの各々はフランジ部FG2に接続されていてもよい。
【0056】
なお上記においてはフランジ部FG1に雌ネジ部H1が設けられた場合について説明したが、雌ネジ部H1はネジ溝を有しない単なる貫通孔であってもよい。この場合、ボルトBLは、フランジ部FG2の貫通孔H2とフランジ部FG1の貫通孔とに挿通された後にナット(図示せず)に螺合されてもよい。ボルトBLとナットとによりフランジ部FG1、FG2を挟み込んで締付けることにより、第1容器部LCと第2容器部UCとがシール部材SMを挟んで互いに強固に押し付け合う。
【0057】
図5に示されるように、圧力容器PC1において、第1容器部LCと第2容器部UCとの接合面CS1、CS2が、上下方向(第1容器部LCと第2容器部UCとの接合方向)における圧力容器PC1の高さHTの中心に位置する。具体的には第1容器部LCの底面から接合面CS1までの高さHLと第2容器部UCの接合面CS2から上面までの高さHUは互いに略等しく、かつ圧力容器PC1の全体の高さHTの高さの2分の1の高さである。
【0058】
なお上記においては圧力容器PC1の構成を例に挙げて説明したが、圧力容器PC2、PC3も圧力容器PC1と同様の構成を有しているため、その説明を繰り返さない。
【0059】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0060】
本実施形態においては図1図3に示されるように、複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々は、機器を収納する内部空間を有し、外部から内部空間への水の浸入を防止できるよう構成されている。このため水中作業機械1が水中で作業する際においても、複数の圧力容器PC1、PC2、PC3の各々の内部における機器の水濡れなどを防止することができる。
【0061】
また複数の圧力容器PC1、PC2、PC3が車体フレームFR上に配置されている。また圧力容器PC1、PC2、PC3には外部から空気が供給されることもない。このため複数の圧力容器PC1、PC2、PC3を車体フレームFRの適切な位置に配置することにより、水中で作業を行うための適切な重量バランスおよび接地圧が実現される。これにより、たとえば走行装置2で走行しながら作業機3により対象物を押して作業する押土式の水中作業機械1において、効果的に対象物を押して作業することが可能となる。
【0062】
以上より、水中で作業する際においても機器の水濡れなどを防止でき、かつ水中の作業においても適切な重量バランスおよび接地圧を得ることが容易な水中作業機械1を実現することができる。
【0063】
図6に示される比較例では、たとえば圧力容器PCAは、下容器部LCAと、中容器部MCAと、上容器部UCAとが上下に積層された構成を有している。下容器部LCAと中容器部MCAとはボルトBL1で固定されている。また中容器部MCAと上容器部UCAとはボルトBL2で固定されている。ボルトBL1は、圧力容器PCAの上下方向の高さの約3分の1の高さに位置している。またBL2は、圧力容器PCAの上下方向の高さの約3分の2の高さに位置している。
【0064】
この比較例においては、図中太い矢印で示す水圧により圧力容器PCAの側面が太い破線で示すように内側へ湾曲すると、ボルトBL1、BL2の各々には引張力の他に剪断方向の力が生じる。剪断方向の力によってボルトBL1、BL2が緩んで締結力が低下するおそれがある。このため下容器部LCAと中容器部MCAとの隙間および中容器部MCAと上容器部UCAとの隙間の各々から水が圧力容器PCAの内部空間に浸入しやすくなる。
【0065】
これに対して本実施形態においては図5に示されるように、圧力容器PC1において、第1容器部LCと第2容器部UCとの接合面CS1、CS2が、上下方向(第1容器部LCと第2容器部UCとの接合方向)における圧力容器PC1の高さHTの中心に位置する。これにより図中太い矢印で示す水圧により圧力容器PCAの側面が太い破線で示すように内側へアーチ状に湾曲しても、ボルトなどの固定部材はそのアーチ形状の頂点に位置するため、ボルトBLなどの固定部材には引張力のみが作用し、剪断方向の力は0(ゼロ)となる。よってボルトBLなどの固定部材に滑りは生じず、圧力容器PC1の内部空間への水の浸入を抑制することができる。
【0066】
なお圧力容器PC2、PC3においても圧力容器PC1と同様、第1容器部LCと第2容器部UCとの接合面CS1、CS2が、上下方向における圧力容器PC1の高さの中心に位置する。このためボルトBLなどの固定部材に滑りは生じず、圧力容器PC2、PC3の各々の内部空間への水の浸入を抑制することができる。
【0067】
また本実施形態においては図1図3に示されるように、車体フレームFRの上に配置される複数の圧力容器は、車体フレームFRの前後方向に沿って配置される圧力容器PC1および圧力容器PC2を有する。これにより前後方向において適切な重量バランスおよび接地圧を得ることが可能となる。
【0068】
また本実施形態においては図1図3に示されるように、圧力容器PC1は、ブレード3aと圧力容器PC2との間に配置され、バッテリ11を内部空間に収納する。バッテリ11の重量は他の機器の重量に比較して大きい。このためバッテリ11を収納した圧力容器PC1をブレード3aと圧力容器PC2との間に配置することにより、ブレード3aによる地面への押し付け力が増大する。このため水中でも走行装置2で走行しながら作業機3により対象物を押して作業することが容易となる。
【0069】
また本実施形態においては図2に示されるように、圧力容器PC1は、上面視において左右1対の走行体2R、2Lの間に配置されている。これにより重量バランスおよび接地圧において左右のバランスをとることができる。
【0070】
仮に圧力容器PC1、PC2、PC3の各々に外側に突き出す外側リブを設けた場合、圧力容器PC1、PC2、PC3の各々の外側に水圧が作用すると、外側リブには主に引張力が作用する。この引張力により、外側リブと容器との溶接部において外側リブを容器から引き離すような力が作用し、破断するおそれがある。
【0071】
これに対して本実施形態においては図4に示されるように、圧力容器PC1、PC2、PC3の各々は、内部空間に突き出す内側リブIR1、IR1a、IR2、IR12aを有している。圧力容器PC1、PC2、PC3の各々の外側に水圧が作用した場合、内側リブIR1、IR1a、IR2、IR12aには主に圧縮力が作用する。また最大応力発生部が内側リブIR1、IR1a、IR2、IR12aの角部(R部)となる。このため圧力容器PC1、PC2、PC3の各々の破断を抑制することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 水中作業機械、2 走行装置、2R,2L 走行体、2RE 後端、2a 走行モータ、3 作業機、3a ブレード、3b エプロン、3c フレーム、3d チルトシリンダ、3e リフトシリンダ、3f エプロン用シリンダ、4 本体、5 水冷式クーラ、7 マスト、8 送受信機、11 バッテリ、12 油圧ポンプ、13 メインバルブ、14 インバータ、15 電動モータ、BL ボルト、CS1,CS2 接合面、FG1,FG2 フランジ部、FR 車体フレーム、H1 雌ネジ部、H2 貫通孔、IR1,IR1a,IR2,IR2a 内側リブ、LC 第1容器部、PC1,PC2,PC3 圧力容器、SM シール部材、TA 作動油タンク、UC 第2容器部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6