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特開2024-60750媒体発行装置、媒体発行システム、及び媒体発行方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060750
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】媒体発行装置、媒体発行システム、及び媒体発行方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20240425BHJP
   B41J 17/04 20060101ALI20240425BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20240425BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J17/04
B41J11/42
G06F3/12 315
G06F3/12 354
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168225
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】星 朋宏
【テーマコード(参考)】
2C058
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C058AB08
2C058AB22
2C058AC06
2C058AC12
2C058AE11
2C058GA07
2C058GB12
2C058GB30
2C058GB47
2C058GE12
2C065AA01
2C065AD07
2C065DA24
2C065DA37
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068BD23
2C068GG01
2C068GH02
(57)【要約】
【課題】媒体への印刷時間を短縮する媒体発行装置を提供する。
【解決手段】
媒体であるカード4を印刷して発行する媒体発行装置である。印刷ヘッド13は、カード4にインクリボン3を接触させて印刷する。センサ16は、印刷ヘッド13より搬送路の上流側に配置される。ヘッド駆動部17は、印刷ヘッド13を待機位置と印刷位置との間で移動させる。リボン送出部18は、インクリボン3を送出する。制御部10は、媒体搬送部14によりカード4を第一速度で搬送し、センサ16がオンになったことを検出した場合、ヘッド駆動部17により印刷位置への印刷ヘッド13の移動を開始させ、第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した後、カード4への印刷が第二速度となるように媒体搬送部14とリボン送出部18とが同期して駆動されるように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を印刷して発行する媒体発行装置であって、
媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路内で前記媒体を搬送する媒体搬送部と、
前記媒体搬送部により前記搬送路内を搬送される前記媒体にインクリボンを接触させて印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドより前記搬送路の上流側に配置されたセンサと、
前記印刷ヘッドを待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部と、
前記インクリボンを送出するリボン送出部と、
前記センサがオンになったことを検出した場合、前記媒体搬送部により前記媒体を第一速度で搬送し、前記ヘッド駆動部により前記印刷位置への前記印刷ヘッドの移動を開始させ、
前記第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した後、前記媒体への印刷が前記第二速度となるように前記媒体搬送部と前記リボン送出部とが同期して駆動されるように制御する制御部とを備える
ことを特徴とする媒体発行装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記媒体が格納される媒体格納部から前記媒体が取り出される指示があった際に、前記印刷ヘッドにより印刷される印刷データを上位装置から取得開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体発行装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第一速度のまま印刷する通常モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した際に、前記印刷データの取得が完了するまで前記媒体搬送部と前記リボン送出部とを停止させ、
前記高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した際に、前記印刷データの取得が途中であっても前記媒体搬送部と前記リボン送出部とを停止させないように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体発行装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記印刷データの属性と前記上位装置との通信速度とに基づいて前記印刷データの取得予想時間を算出し、搬送された前記媒体が前記印刷ヘッドに接触するまでの移動時間が前記予想時間より短い場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した際に、前記媒体搬送部と前記リボン送出部とを停止させないように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体発行装置。
【請求項5】
媒体を印刷して発行する媒体発行装置と、前記媒体発行装置用の印刷データを送信する上位装置とを含む媒体発行システムであって、
前記上位装置は、
前記印刷データを生成する印刷データ生成部と、
第一速度のまま印刷する通常モードと、前記第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードとを設定するモード設定部と、
前記印刷データを前記媒体発行装置へ送信する送信部とを備え、
前記媒体発行装置は、
媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路内で前記媒体を搬送する媒体搬送部と、
前記媒体搬送部により前記搬送路内を搬送される前記媒体にインクリボンを接触させて印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドより前記搬送路の上流側に配置されたセンサと、
前記印刷ヘッドを待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部と、
前記インクリボンを送出するリボン送出部と、
前記センサがオンになったことを検出した場合、前記媒体搬送部により前記媒体を前記第一速度で搬送し、前記ヘッド駆動部により前記印刷位置への前記印刷ヘッドの移動を開始させ、
前記高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した後、前記媒体への印刷が前記第二速度となるように前記媒体搬送部と前記リボン送出部とが同期して駆動されるように制御する制御部とを備える
ことを特徴とする媒体発行システム。
【請求項6】
前記モード設定部は、
前記印刷データが白黒データを含む特定容量より記憶容量が小さなデータであった場合には前記高速モードに設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体発行システム。
【請求項7】
媒体を印刷して発行する媒体発行装置により実行される媒体発行方法であって、
前記媒体発行装置は、
媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路内で前記媒体を搬送する媒体搬送部と、
前記媒体搬送部により前記搬送路内を搬送される前記媒体にインクリボンを接触させて印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドより前記搬送路の上流側に配置されたセンサと、
前記印刷ヘッドを待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部と、
前記インクリボンを送出するリボン送出部と、
制御部とを備え、前記制御部により、
前記センサがオンになったことを検出した場合、前記媒体搬送部により前記媒体を第一速度で搬送させ、前記ヘッド駆動部により前記印刷位置への前記印刷ヘッドの移動を開始させ、
前記第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した後、前記媒体への印刷が前記第二速度となるように前記媒体搬送部と前記リボン送出部とが同期して駆動されるように制御させる
ことを特徴とする媒体発行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカード等の媒体を発行する媒体発行装置、媒体発行システム、及び媒体発行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カード状記録媒体(以下、単に「カード」という。)を発行するカード発行システムが存在する。
このようなカード発行システムは、カードを発行する媒体発行装置が、ATM(Automated Teller Machine)等の上位装置と接続されて構成される。
このような媒体発行装置では、発行前のカードが積層されて収容されるホッパユニットと、カードに印刷を行うプリンタ等を備えることが多い。加えて、このカード用のプリンタ等では、サーマル方式の印刷ヘッドでインクリボンを加熱してカードに転写する方式を用いることが多い。
このような媒体発行装置では、カードの印刷と発行を高速化したい、すなわちカードの印刷と発行の時間を短縮したいという技術的なニーズが存在している。
【0003】
ここで、従来の熱転写印刷では、特許文献1を参照すると、プリンタの印字モードにより紙送りスピードを制調する制御回路、及び紙送りモータの駆動回路により紙送りスピードを可変にする手段が記載されている。
この特許文献1の技術では、感熱紙や転写紙など専用紙等の負荷の軽い記録紙に対する紙送りモードと紙が厚いために負荷が大きい厚紙等の紙送りモードを設けている。初期状態においては、高速紙送りモードとしてプリンタ専用紙等の薄い紙対応であり、ハガキモード又はカットシートフィーダモード等が設定された場合は低速紙送りモードとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-273268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、ある程度の厚みのあるカードでは「低速送りモード」にする必用があるため、媒体発行装置にてカード等の媒体の印刷を高速化したいというニーズに応えることができなかった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題を解消し、カードへの印刷時間を短縮する媒体発行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る媒体発行装置は、媒体を印刷して発行する媒体発行装置であって、媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路内で前記媒体を搬送する媒体搬送部と、前記媒体搬送部により前記搬送路内を搬送される前記媒体にインクリボンを接触させて印刷する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドより前記搬送路の上流側に配置されたセンサと、前記印刷ヘッドを待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部と、前記インクリボンを送出するリボン送出部と、前記センサがオンになったことを検出した場合、前記媒体搬送部により前記媒体を第一速度で搬送し、前記ヘッド駆動部により前記印刷位置への前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した後、前記媒体への印刷が前記第二速度となるように前記媒体搬送部と前記リボン送出部とが同期して駆動されるように制御する制御部とを備えることを特徴とする。
このように構成することで、媒体を第一の速度で搬送することで媒体と印刷ヘッドとの位置合わせを確実に行えるとともに、位置合わせ後、搬送速度を第二速度とすることで印刷時間を短縮できる。
【0008】
本発明の一形態に係る媒体発行装置は、前記制御部は、前記媒体が格納される媒体格納部から前記媒体が取り出される指示があった際に、前記印刷ヘッドにより印刷される印刷データを上位装置から取得開始することを特徴とする。
このように構成することで、媒体が印刷開始位置まで搬送完了するまでの間に、大部分の印刷画像データが受信完了できる。
【0009】
本発明の一形態に係る媒体発行装置は、前記制御部は、前記第一速度のまま印刷する通常モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した際に、前記印刷データの取得が完了するまで前記媒体搬送部と前記リボン送出部とを停止させ、前記高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した際に、前記印刷データの取得が途中であっても前記媒体搬送部と前記リボン送出部とを停止させないように制御することを特徴とする。
このように構成することで、高速モードでは、媒体の搬送を止めずに印刷を高速化することができる。
【0010】
本発明の一形態に係る媒体発行装置は、前記制御部は、前記印刷データの属性と前記上位装置との通信速度とに基づいて前記印刷データの取得予想時間を算出し、搬送された前記媒体が前記印刷ヘッドに接触するまでの移動時間が前記予想時間より短い場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した際に、前記媒体搬送部と前記リボン送出部とを停止させないように制御することを特徴とする。
このように構成することで、媒体の搬送を印刷開始位置で停止させることがなくなり、印刷を高速化することができる。
【0011】
本発明の一形態に係る媒体発行システムは、媒体を印刷して発行する媒体発行装置と、前記媒体発行装置用の印刷データを送信する上位装置とを含む媒体発行システムであって、前記上位装置は、前記印刷データを生成する印刷データ生成部と、第一速度のまま印刷する通常モードと、前記第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードとを設定するモード設定部と、前記印刷データを前記媒体発行装置へ送信する送信部とを備え、前記媒体発行装置は、媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路内で前記媒体を搬送する媒体搬送部と、前記媒体搬送部により前記搬送路内を搬送される前記媒体にインクリボンを接触させて印刷する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドより前記搬送路の上流側に配置されたセンサと、前記印刷ヘッドを待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部と、前記インクリボンを送出するリボン送出部と、前記センサがオンになったことを検出した場合、前記媒体搬送部により前記媒体を前記第一速度で搬送し、前記ヘッド駆動部により前記印刷位置への前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した後、前記媒体への印刷が前記第二速度となるように前記媒体搬送部と前記リボン送出部とが同期して駆動されるように制御する制御部とを備えることを特徴とする。
このように構成することで、媒体を第一の速度で搬送することで媒体と印刷ヘッドとの位置合わせ確実に行えるとともに、位置合わせ後、搬送速度を第二速度とすることで印刷時間を短縮できる。
【0012】
本発明の一形態に係る媒体発行システムは、前記モード設定部は、前記印刷データが白黒データを含む特定容量より記憶容量が小さなデータであった場合には前記高速モードに設定することを特徴とする。
このように構成することで、記憶容量の小さな印刷データでは、高速モードに変更して印刷することができる。
【0013】
本発明の一形態に係る媒体発行方法は、媒体を印刷して発行する媒体発行装置により実行される媒体発行方法であって、前記媒体発行装置は、媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路内で前記媒体を搬送する媒体搬送部と、前記媒体搬送部により前記搬送路内を搬送される前記媒体にインクリボンを接触させて印刷する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドより前記搬送路の上流側に配置されたセンサと、前記印刷ヘッドを待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部と、前記インクリボンを送出するリボン送出部と、制御部とを備え、前記制御部により、前記センサがオンになったことを検出した場合、前記媒体搬送部により前記媒体を第一速度で搬送させ、前記ヘッド駆動部により前記印刷位置への前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードが設定されていた場合、前記印刷ヘッドが前記媒体に接触した後、前記媒体への印刷が前記第二速度となるように前記媒体搬送部と前記リボン送出部とが同期して駆動されるように制御させることを特徴とする。
このように構成することで、媒体を第一の速度で搬送することで媒体と印刷ヘッドとの位置合わせを確実に行えるとともに、位置合わせ後、搬送速度を第二速度とすることで印刷時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、媒体搬送部により媒体を第一速度で搬送し、センサがオンになったことを検出した場合、印刷ヘッドの移動を開始させ、印刷ヘッドが媒体に接触した後、媒体への印刷が第二速度となるように媒体搬送部とリボン送出部とが同期して駆動されるように制御することで、カードへの印刷を高速化したい場合に高速化可能となり、結果としてカードへの印刷時間を短縮する媒体発行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るカード発行システムのシステム構成図である。
図2図1に示すカード発行システムの外観を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るカード発行処理のフローチャートである。
図4図2に示すカード発行処理におけるカードの印刷の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態>
〔カード発行システムXの構成〕
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係るカード発行システムXの構成について説明する。本実施形態に係るカード発行システムXは、媒体を発行する媒体発行システムの一例である。
具体的には、カード発行システムXは、新規のカード4(媒体)を発行するための装置である。カード発行システムXは、例えば、カード発行機能を備えたATM、キオスク(Kiosk)の端末、交通機関のチケット発行システム、コンビニエンスストア等のポイントカード発行システム、小売店のメンバーカード発行システム、遊技機のカード発行支払システム、入退場管理システム、乗り物のチケット発行システム、駐車場の管理システム等(以下、単に「ATM等」と省略して記載する。)を含む。
【0017】
図1によれば、具体的には、カード発行システムXは、カード発行装置1及び上位装置2を含んでいる。本実施形態において、カード発行装置1と上位装置2とは、USB(Universal Serial Bus)等により接続されている。
【0018】
カード発行装置1は、上位装置2からの指示により、カード4に必要な情報を印刷して発行する印字発行プリンタ、カードリーダ、及びカード4を収容するホッパユニット15等を備えた装置である。本実施形態において、カード発行装置1と上位装置2との通信は、例えば、USB、LAN(Local Area Network)、シリアル通信(RS-232C)等にて行われる。
【0019】
上位装置2は、本実施形態においては、カード発行装置1を制御し、ATM等の各機能を実現するための情報処理装置である。具体的には、上位装置2は、例えば、ATM等の本体装置であり制御用のPC(Personal Computer)、タブレット端末、携帯電話等の制御演算装置を含む。このため、上位装置2は、カード発行システムXの機能を実現するためのアプリケーションソフトウェア(Application Software、以下、単に「アプリ」と省略して記載する。)を実行する。
本実施形態において、上位装置2は、制御対象のカード発行装置1に接続される。これに加え、上位装置2は、ネットワーク、各種の周辺機器等とも接続可能である。
【0020】
本実施形態に係るカード4は、本実施形態に係るカード発行システムXに対応した媒体の一例である。カード4は、非接触型ICカード、接触型ICカード、及び/又は磁気ストライプを備えた磁気カード等である。カード4は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製である。カード4が磁気カードの場合、例えば、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。また、カード4が非接触型ICカード及び/又は接触型ICカードの場合、例えば、ICチップが内蔵されている。ここで、カード4には、ICチップと磁気ストライプとが両方設けられていてもよい。これに加え、カード4が非接触型ICカードの場合、近距離無線用のR/W(Read / Write)アンテナが内蔵されていてもよい。
なお、カード4は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であってもよい。
【0021】
本実施形態に係るカード発行システムXに対応したインクリボン3は、例えば、カード4にカラーや白黒で印字(印刷)するための熱昇華式又は熱転写式のインクリボンであってもよい。さらに、本実施形態においては、このインクリボン3は、規定として、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック(黒)のフィルムが含まれるカラーのインクリボンであってもよい。このカラーのインクリボンは、更に印刷面を保護するためのオーバーコート層のフィルムが含まれていてもよい。加えて、インクリボン3として、黒のみのもの、特殊な金属粒子等が入った偽造防止色、メタル(金属)や、蛍光色、ホログラム、熱により膨張し点字や凹凸による識別用の印刷を行う熱膨張フィルム等の特殊なもの(以下、「特殊色」という。)も含んでいてもよい。さらに、インクリボン3は、マルチタイム(複数回使用可能)のもの等も含んでいてもよい。本実施形態においては、インクリボン3には、非接触型ICカードと同様の通信方式(ISO14443)のRFIDタグ(以下、「無線タグ」という。)が貼り付けられ、インクリボンの種類やIDやシリアル番号等を含むインクリボン情報が管理されてもよい。このインクリボン情報は、カード発行装置1から上位装置2で取得可能であってもよい。
【0022】
(カード発行装置1のシステム構成)
次に、カード発行装置1の制御構成について説明する。
カード発行装置1は、共通基板12、制御部10、記憶部11、印刷ヘッド13、媒体搬送部14、ホッパユニット15、センサ16、ヘッド駆動部17、及びリボン送出部18等のユニットを含んでいる。
【0023】
共通基板12は、ホッパユニット15及び印刷ヘッド13を上位装置2に接続するためのデバイスである。本実施形態において、共通基板12は、カード発行装置1の基板上に設けられた専用回路、USB基板の回路、及びインターフェイス等である。たとえば、共通基板12は、制御演算部と、USBのハブの回路とを含んでおり、このハブを介してホッパユニット15、及び制御部10と接続する。
【0024】
具体的には、共通基板12は、上位装置2からのコマンド(命令)の受信、及びコマンドに対するレスポンス(応答)を、USBケーブルを介して行うことが可能である。この上で、共通基板12は、上位装置2から取得した印刷データ300を、DMA(Direct Memory Access)等により、記憶部11に格納することが可能である。
【0025】
制御部10は、カード発行装置1の各部の制御を行う主制御演算部である。制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含んでいてもよい。
制御部10は、新規のカード4の発行及び印刷の指示(コマンド)を上位装置2から受信した場合、これに従って、カード4のホッパユニット15からの取り出し(排出)、搬送、印刷、排出、読取/書込等に対する制御を行う。
【0026】
記憶部11は、制御プログラム、及び暗号データを含む各種データを格納する一時的でない記録媒体である。
この記憶部11は、例えば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。このROMは、フラッシュメモリ(Flash Memory)やその他の不揮発性半導体メモリを含む。さらに、ROMは、SSD(Solid State Drive)やeMMC(embedded MultiMediaCard)として構成されていてもよい。
なお、記憶部11は、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体、光ディスクのような光学記録媒体、その他の一時的でない記録媒体を備えていてもよい。
【0027】
印刷ヘッド13は、媒体搬送部14の駆動に応じて、印刷データ300を読み出してカード4への印刷を行うカードプリンタの熱転写式又は昇華式のサーマルヘッド等である。
本実施形態において、印刷ヘッド13は、インクリボン3に含まれるインクを溶融又は昇華させ、カード4に定着させることで印刷を行うヒータアレイ等であってもよい。印刷ヘッド13は、ホッパユニット15内から搬送された新規のカード4にインクリボン3を接触させて、写真品質の画像や文字を、カード4の表面に印刷可能である。
【0028】
具体的には、印刷ヘッド13は、例えば、後述する印刷データ300のようなビットマップ画像を、縁なし、両面、白黒、カラー等で、数百dpi等で印刷する。本実施形態においては、後述する元サイズの印刷データ300を通常印刷する場合のdpiが300dpiである例について説明する。
さらに、本実施形態においては、印刷ヘッド13は、印刷層を保護するオーバーコート、金属色、蛍光色、ホログラム、熱膨張フィルム等の特殊なインクリボン3を用いた印刷(以下、「特殊印刷」という。)を行うことも可能であってもよい。
【0029】
媒体搬送部14は、カード発行装置1の内部に形成されている搬送路内でカード4を搬送する。媒体搬送部14は、駆動ローラ及びプラテンローラのような搬送機構とを備えており、カード4を搬送路の前後方向へ搬送する。搬送機構には、動力伝達機構を介して共通のステッピングモータ及びエンコーダ等の駆動手段が連結されている。
ここで、本実施形態においては、後述するように、搬送路におけるカード4の搬送方向において、カード4が発行され排出される側を前方向とし、カード4が格納されるホッパユニット15のある内部側を後ろ方向とする。また、このカード4の搬送方向に鉛直の重力方向を下方向、これに対する方向を上方向とする。
【0030】
ホッパユニット15は、発行前の新規(未使用)のカード4を複数枚蓄積、収容されるカードホッパ等の媒体格納部である。本実施形態においては、ホッパユニット15-1~15-4の4つが備えられている例について記載する。なお、以下、ホッパユニット15-1~15-4のいずれかを示す場合、単にホッパユニット15という。
【0031】
ホッパユニット15は、上位装置2からの指示により、制御部10からの制御で内部に収納されたカード4を、搬送路に沿って、印刷ヘッド13の方(前方向)へ排出することが可能である。
さらに、ホッパユニット15は、別途、設けられている回収ボックスに、使用され回収されるカード4を落下させて回収することも可能である。この回収ボックスに回収されたカード4は、ATMの管理者等により引き出されて保管される。
【0032】
センサ16は、カード発行装置1内で搬送されるカード4の位置を検知するセンサ16である。センサ16は、例えば、発光素子(フォトダイオード)と受光素子(フォトセンサ16)とからなる光学式センサ16、カード4と接触した際の押圧の圧力を検出する圧電センサ16、カード4の静電容量を検知する静電容量センサ16、物理的なスイッチ等を含んでいてもよい。
本実施形態においては、センサ16は、印刷ヘッド13より搬送路の上流側に配置され、カード4への印刷時のタイミング合わせに用いられる基準センサである例について説明する。
【0033】
なお、センサ16は、上述のものの他に、搬送路内で位置を変化させて複数個配置されてもよい。このような搬送路内の他のセンサ16により、搬送路内におけるカード4の位置を、詳細に検出可能となる。加えて、印刷ヘッド13の直下に設けられ、カード4と印刷ヘッド13とが接触した又は印刷ヘッド13のみが搬送路に接触したことを検出する接触センサが備えられていてもよい。
【0034】
ヘッド駆動部17は、印刷ヘッド13を待機位置と印刷位置との間で移動させる機構及びモータやソレノイド等の駆動手段とを備えている。本実施形態においては、ヘッド駆動部17は、印刷ヘッド13を上下方向に昇降させるヘッド昇降機構を含む。
ヘッド駆動部17は、カード4が印刷されない場合、印刷ヘッド13を搬送路の上方向の待機位置に保持する。この上で、カード4の発行及び印刷の際には、制御部10からの制御により、印刷ヘッド13を特定の速度にて印刷位置まで下方向に移動させることが可能である。この待機位置から印刷位置までの移動には、予め測定された数十ミリ秒~数秒程度で一定の特定時間が必用となる。
【0035】
リボン送出部18は、セットされたインクリボン3を送出するリボン送り機構である。本実施形態においては、リボン送り機構もステッピングモータ等の駆動手段を備えている。これにより、カード4の位置と同期して、正確にインクリボン3の位置を制御可能となる。
【0036】
なお、カード発行装置1は、媒体搬送部14によるモータ駆動により、ATM等の使用者のカード4を装置内部へ取り込み、読み出し(リード)又は書き込み(ライト)可能なカードリーダとしての機能も備えていてもよい。この場合、カード発行装置1は、例えば、ICチップのリード/ライト、磁気ストライプのリード/ライトを行うことが可能であってもよい。
【0037】
(上位装置2のシステム構成)
具体的に説明すると、上位装置2は、制御部20、記憶部21、及び送受信部22等を含んでいる。
【0038】
制御部20は、CPU、MPU、GPU、DSP、ASIC等を含む制御演算部である。
【0039】
記憶部21は、RAM及びROMを含む記録媒体である。このうち、ROMは、フラッシュメモリやその他の不揮発性半導体メモリを含む。さらに、記憶部21は、HDD(Hard Disk Drive)のような磁気記録媒体、光ディスクのような光学記録媒体等の、その他の一時的でない記録媒体を含んでいてもよい。
【0040】
送受信部22は、外部の機器に接続するためのチップセット(Chipset)、I/O(Input / Output)等の回路及び物理的なインターフェイスである。送受信部22は、カード発行装置1に接続するためのUSB等の汎用シリアルインターフェイス、パラレルインターフェイス、デジタルビデオインターフェイス等を含んでいる。さらに、送受信部22は、ネットワークと接続するためのネットワークインターフェイスの物理層等も含む。
【0041】
具体的には、送受信部22は、各種コマンド及びデータをカード発行装置1との間にて送受信可能である。本実施形態においては、送受信部22は、印刷データ300をカード発行装置1へ送信する送信部となる。
加えて、送受信部22は、ATM等に備えられるLCD(Liquid Crystal Display)パネルや有機ELパネル等のディスプレイ、タッチパネル及び各種ボタン等の周辺機器も接続してもよい。
【0042】
次に、図2により、本発明の実施の形態にかかるカード発行装置1の外観構成を斜視図にて説明する。図2(a)は、ホッパユニット15-1~15-4を示し、図2(b)は、これが搭載されるカード発行装置1とインクリボン3の位置関係を示す。
【0043】
図2において、X方向はカード発行装置1の前後方向であり、Z方向はカード発行装置1の上下方向であり、Y方向は前後方向と上下方向とに直交するカード発行装置1の左右方向である。前後方向のうちのX1方向側は、カード発行装置1の前端側(前側)であり、その反対側であるX2方向側は、カード発行装置1の後ろ側(奥側)である。
カード発行装置1は、ATM等の前面側にカード発行装置1の前端側が配置されるように、上位装置2に搭載される。
【0044】
〔カード発行システムXの機能構成〕
ここで、再び図1を参照して、本発明の実施の形態に係るカード発行システムXにおいて、カード4の印刷と発行を行うための機能的な構成について説明する。
上位装置2の制御部20は、印刷データ生成部200、及びモード設定部210を含む。
カード発行装置1の記憶部11は、印刷データ300を格納する。
上位装置2の記憶部21は、印刷データ300を格納する。
【0045】
印刷データ生成部200は、カード4の発行の際に印刷される印刷データ300を生成し、記憶部21に格納する。
加えて、印刷データ生成部200は、例えば、各種決済等を行い、カード発行装置1でカード4を発行させるATM等のアプリを実行する。すなわち、本実施形態において、印刷データ生成部200は、アプリの実行部としても機能する。本実施形態において、このアプリは、決済に加え、ユーザと対話的に応答し、カード4のデザインをして発行を手助けすることも可能である。
【0046】
さらに、印刷データ生成部200は、カード発行装置1を制御するためのデバイスドライバやミドルウェア等も実行する。これにより、印刷データ生成部200は、カード発行装置1との間でコマンド及びこれに付随するデータを送受信する。
また、印刷データ生成部200は、決済やカード4の発行を行わせる際に、各種コマンド及びデータを送信する。加えて、印刷データ生成部200は、カード4に格納された情報の読み出しを行うカード読み出しコマンド、カード4に情報を書き込むカード書き込みコマンド等も送信可能である。
【0047】
モード設定部210は、印刷速度のモード(以下、「印刷モード」という。)として、通常モード又は高速モードを設定可能である。この通常モードは、媒体搬送部14によりカード4が搬送されてセンサ16で検出された後に、カード4を通常速度である第一速度で搬送してカード4の位置合わせを行い、この第一速度のまま印刷を行うモードである。高速モードは、第一速度より高速の第二速度で印刷するモードである。モード設定部210は、通常モードか高速モードかを印刷データ300の属性設定301に設定可能である。より具体的に、本実施形態では、第一速度は、印刷データ300の1ms(ミリ秒)/1L(ライン)であり、第二速度は4ms/L、すなわち四倍速である例について記載する。
【0048】
加えて、モード設定部210は、印刷データ300の属性に応じて、適切な印刷モードに設定可能である。具体的には、モード設定部210は、例えば、印刷データ300の記憶容量が特定容量より小さなデータであった場合には、属性設定301に高速モードと設定することが可能である。この特定容量は、通信速度に依存する容量である。具体的には、例えば、搬送されたカード4が印刷ヘッド13に接触するまでの時間、すなわち、カード4がホッパユニット15から排出されてセンサ16まで搬送される時間と特定時間とを足した時間(以下、「移動時間」という)が経過するまでに、印刷データ300が全て受信可能であるような記憶容量を、特定容量としてもよい。すなわち、記憶容量が小さなデータであれば、この特定容量以下となる可能性が高くなる。より具体的には、モード設定部210は、印刷データ300が低解像度で単色印刷される単色データであった場合には、高速モードに設定することが可能である。この単色印刷は、白黒印刷が含まれる。逆に、モード設定部210は、カラー印刷されるカラー印刷データ300、高解像度データ等の場合は、低速モードに設定することが可能である。
【0049】
また、本実施形態において、カード発行装置1の制御部10は、上位装置2から送信された印刷データ300を、内蔵する記憶部11に格納する。
そして、制御部10は、この格納された印刷データ300に基づいて、カード4に印刷することが可能である。
【0050】
本実施形態において、制御部10は、例えば、白黒又は単色印刷の場合は、印刷データ300に含まれる単色のビットマップデータについて一回のみ印刷を行う。
制御部10は、カラー印刷の場合はカード4が複数回搬送される度に、印刷データ300に含まれる色毎のビットマップデータに応じた印刷を行う。
これに加えて、制御部10は、印刷データ300に含まれるオーバーコート層の印刷を行うことも可能である。
【0051】
この上で、本実施形態において、制御部10は、媒体搬送部14によりカード4を第一速度で搬送し、センサ16がオンになったことを検出した場合、ヘッド駆動部17により印刷位置への印刷ヘッド13の移動を開始させる。この際、制御部10は、高速モードが設定されていた場合は、印刷ヘッド13がカード4に接触した後、カード4への印刷が第二速度となるように媒体搬送部14とリボン送出部18とが同期して駆動されるように制御する。
【0052】
さらに、制御部10は、カード4が格納される媒体格納部からカード4が取り出される指示があった際に、印刷ヘッド13により印刷される印刷データ300を上位装置2から取得開始するようにしてもよい。本実施形態においては、制御部10は、上位装置2からの新規のカード4の発行及び印刷のコマンドを受信した場合に、すぐに上位装置2から印刷データ300を取得開始してもよい。
【0053】
加えて、制御部10は、通常モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した際に、印刷データ300の取得が完了するまで、媒体搬送部14とリボン送出部18とを停止させ、待機する(以下、「待機停止」という。)ことも可能である。これにより、印刷データ300が取得されてから、通常モードでの印刷が実行される。
一方、制御部10は、高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した際に、印刷データ300の取得途中であっても、待機停止させないように制御することが可能である。
【0054】
さらに、制御部10は、印刷データ300の属性と上位装置2との通信速度とに基づいて印刷データ300の取得予想時間を算出してもよい。この上で、制御部10は、移動時間も算出してもよい。本実施形態においては、この移動時間は、ホッパユニット15の位置関係により変更されてもよい。具体的には、手前側のホッパユニット15の方が、奥側のホッパユニット15よりも短い移動時間となってもよい。
【0055】
ここで、制御部10は、移動時間が取得予想時間より短い場合、待機停止させないように制御することも可能である。たとえば、制御部10は、印刷データ300が上述の特定容量以下の場合、この移動時間が取得予想時間以下になるとして、印刷モードに関わらず、待機停止させないように制御する。
【0056】
印刷データ300は、印刷ヘッド13によりカード4に印刷される画像データである。本実施形態においては、印刷データ300は、上述の印刷ヘッド13の解像度(dpi)に応じたビットマップデータを用いる。このビットマップデータは、例えば、白黒等の単色のビットマップデータであってもよい。または、印刷データ300は、C(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(black, Key plate)の補色系のカラー、又はR(Red)、G(Green)、B (Blue)の原色系カラーのビットマップデータであってもよい。これに加えて、ビットマップデータは、オーバーコート層を印刷するためのビットマップデータを含んでいてもよい。
【0057】
また、印刷データ300のビットマップデータは、Windows(登録商標)BMP形式、TIFF形式、PNG形式等のデータであってもよく、圧縮されていなくても、ランレングスやLZW等で圧縮されていてもよい。なお、ビットマップデータは、JPG形式等の非可逆圧縮のビットマップデータであってもよい。加えて、印刷データ300の各色のビット数は、例えば、8ビット(0~255)、16ビット(0~65536)等であってもよく、ログスケール等であってもよい。加えて、印刷データ300は、他の特殊印刷用のビットマップデータも含んでいてもよい。
【0058】
本実施形態の具体例としては、印刷データ300のサイズとして、例えば、300dpiにて、元サイズが960(横)×600(縦)ピクセルの白黒又はカラービットマップデータを用いる。すなわち、このサイズは、1ピクセルが約0.084mmとなり、縦横比が1:1となる。印刷データ300は、他にも、高解像度データとして、600dpi、1200dpi等の高精細なデータを設定することも可能である。
【0059】
本実施形態においては、印刷データ300には、属性設定301が設定されている。この属性設定301は、例えば、印刷データ300の記憶容量、上述のようにカラーか単色かのカラー設定、搬送スピード、ストローブ値、温度補正値、出力階調値等のデータが含まれていてもよい。さらに、属性設定301は、他の印刷用のインクリボン3の状態に応じて適切に印刷させるための設定値等も含んでいてもよい。
【0060】
ここで、カード発行装置1の制御部10は、記憶部11に格納された制御プログラムを実行することで、上述のように機能させられる。
また、上位装置2の制御部20は、記憶部21に格納された制御プログラムを実行することで、印刷データ生成部200及びモード設定部210として機能させられる。
また、上述のカード発行装置1及び上位装置2の各部は、本実施形態のカードリーダ制御方法を実行するハードウェア資源となる。
なお、上述の機能構成部の一部又は任意の組み合わせをICやプログラマブルロジックやFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で回路的、ハードウェア的に構成してもよい。
【0061】
〔カード発行システムXによるカード発行処理〕
次に、図3図4により、本発明の実施の形態に係るカード発行システムXのカード発行処理の説明を行う。
本実施形態のカード発行処理では、上位装置2がATM等のアプリを実行し、カード発行装置1を用いてカード4に印刷して発行する。このため、まず上位装置2にて印刷データ300を生成し、モード設定を行う。そして、上位装置2から印刷データ300を送信し、カード発行装置1にて受信する。そして、カード発行装置1は、媒体搬送部14により媒体を第一速度で搬送させる。そして、センサ16がオンになったことを検出した場合、ヘッド駆動部17により印刷位置への印刷ヘッド13の移動を開始させる。ここで、高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13が媒体に接触した後、媒体への印刷が第二速度となるように媒体搬送部14とリボン送出部18とが同期して駆動されるように制御させる。
【0062】
本実施形態のカード発行処理は、カード発行装置1においては、主に制御部10及び各部の制御手段が記憶部11に格納された制御プログラム(図示せず)を、上位装置2においては、制御部20が記憶部21に格納された制御プログラム(図示せず)を、各部と協働し、ハードウェア資源を用いて実行する。
以下で、図3のフローチャートにより、本実施形態のカード発行処理をステップ毎に説明する。
【0063】
(ステップS201)
まず、上位装置2の印刷データ生成部200が印刷データ生成処理を行う。
ここでは、印刷データ生成部200が、ATM等のカード発行及び印刷を行うためのアプリを実行する。このアプリは、ATM等を操作するユーザの指示、カード4によるカード決算やポイントカード発行等に伴って実行されてもよい。
【0064】
次に、印刷データ生成部200は、タッチパネルやテンキー等のユーザによる操作を受け付けて、カード発行用に印刷データ300を生成する。この際、印刷データ生成部200は、記憶部21に格納されたデフォルト(規定)の画像データを読み出して、これを印刷データ300にコピー等してもよい。この際、印刷データ生成部200は、カード発行装置1からインクリボン情報、各ホッパユニット15に格納されたカード4種類の情報等を取得して、適切な印刷データ300を生成することが可能である。
【0065】
さらに、印刷データ生成部200は、ベクトルデータの規定の画像データから、印刷データ300の形式に合わせたビットマップデータへ変換してもよい。さらに、印刷データ生成部200は、この際に、図示しないカメラにて、ユーザの顔写真が撮影し、これを印刷データ300に加えてもよい。
【0066】
(ステップS202)
次に、モード設定部210がモード設定処理を行う。
モード設定部210は、印刷データ300の属性設定301に通常モード又は高速モードの設定をする。この際に、モード設定部210は、ATM等の提供者又はユーザの指示に合わせて設定することが可能である。すなわち、できるだけ高速に早く発行したいと指示していた場合は、高速モードに設定することが可能である。それ以外の場合は、モード設定部210は、通常モードに設定することが可能である。
【0067】
(ステップS203)
次に、モード設定部210が、特定容量より小さいか否かを判定する。
モード設定部210は、印刷データ300のデータ容量を参照し、印刷データ300が単色データ等で特定容量より小さなデータであった場合に、Yesと判定する。モード設定部210は、カラー印刷データ300、高解像度データ等で特定容量以上であった場合には、Noと判定する。加えて、モード設定部210は、特に高精細で高品質に書き込みたい等の理由で通常モードを特に指定していた等の場合も、Noと判定してもよい。
Yesの場合、モード設定部210は、処理をステップS204に進める。
Noの場合、モード設定部210は、処理をステップS205に進める。
【0068】
(ステップS204)
印刷データ300が特定容量よりも小さかった場合、モード設定部210が高速モード設定処理を行う。
モード設定部210は、印刷データ300の容量が特定容量よりも小さかった場合は、印刷データ300の属性設定301に高速モードの設定をする。
【0069】
(ステップS205)
ここで、印刷データ生成部200が、発行指示送信処理を行う。
印刷データ生成部200は、デバイスドライバやミドルウェア等を実行し、新規のカード4の発行及び印刷のコマンドを、送受信部22を介してカード発行装置1へ送信する。
本実施形態においては、このコマンドには、印刷データ300の属性設定301の少なくとも一部のデータが追加データとして付加されていてもよい。
【0070】
(ステップS101)
次に、カード発行装置1の制御部10が、発行指示受信処理を行う。
上述の発行及び印刷のコマンドは、共通基板12を介して、制御部10が受信する。
制御部10は、コマンドを解析し、適切なホッパユニット15からカード4を排出させ、搬送路で搬送開始させる。
ここで、制御部10は、コマンドに追加データが付加されていた場合は、通信方式等も鑑みて取得予想時間を算出する。この上で、制御部10は、移動時間についても算出する。
【0071】
図4(a)は、ホッパユニット15から印刷されていない新規のカード4が搬送路Cに排出され、搬送開始された状態の例を示している。
この状態では、制御部10は、第一速度で、搬送方向の手前側(X1方向)へカード4の搬送を開始している。なお、制御部10は、この時点では、例えば、第一速度より速い搬送用の搬送速度でカード4を搬送してもよい。
【0072】
(ステップS206)
次に、上位装置2の印刷データ生成部200が、データ送信処理を行う。
印刷データ生成部200は、印刷データ生成部200により選択された印刷データ300を、送信コマンドにてカード発行装置1に送信する。
印刷データ生成部200は、印刷データ300をコマンドに付随するデータとして、カード発行装置1へUSB等で送信する。
【0073】
(ステップS102)
次に、カード発行装置1の制御部10が、データ受信処理を行う。
ここで、共通基板12の制御手段は、上位装置2から印刷データ300を受信する。この際、共通基板12の制御手段は、例えば、DMA等を用いて、記憶部11に、印刷データ300を直接格納するようにしてもよい。または、共通基板12の制御手段は、制御部10へ、この印刷データ300をそのまま送信してもよい。制御部10は、この受信された印刷データ300をデコード(復号)等することが可能である。
【0074】
(ステップS103)
次に、制御部10が、受信完了か否かを判定する。
制御部10は、印刷データ300の受信が完了した場合に、Yesと判定する。制御部10は、まだ印刷データ300の受信が完了していない場合には、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS107に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS104に進める。
【0075】
(ステップS104)
印刷データ300の受信が完了していない場合、制御部10が、センサ検出したか否かを判定する。
制御部10は、センサ16の信号を参照し、センサ16にてカード4を検出した場合、Yesと判定する。制御部10は、それ以外の場合、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS105に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS102に戻して、印刷データ300の受信を続ける。
【0076】
(ステップS105)
センサ16にてカード4を検出した場合、制御部10が、ヘッド移動開始処理を行う。
制御部10は、ヘッド駆動部17により、駆動手段を駆動させて、印刷ヘッド13を待機位置から印刷位置へ移動開始させる。
この上で、制御部10は、媒体搬送部14により、カード4を第一速度で手前側(X1方向)へ搬送させる。具体的には、制御部10は、センサ16によるカード4の検出のタイミングで、媒体搬送部14のステッピングモータ等の駆動手段に対する割り込み周期を、カード4が第一速度で搬送されるように調整する。
【0077】
図4(b)は、センサ16でカード4が検出され、印刷ヘッド13が移動開始した状態を示している。
上述したように、印刷ヘッド13の待機位置から印刷位置までの移動には、特定時間が必用である。
【0078】
(ステップS106)
次に、制御部10が、高速モードであるか否かを判定する。
制御部10は、印刷データ300の属性設定301を参照し、高速モードが設定されていた場合、Yesと判定する。制御部10は、通常モードであった場合、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をS102に戻して、印刷データ300の受信を続ける。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS107に進める。
【0079】
(ステップS107)
通常モードの場合、制御部10が、受信中待機処理を行う。
制御部10は、印刷データ300が受信完了されるまで、待機する。
その最中に、印刷ヘッド13の待機位置から印刷位置までの移動が完了していてもよい。
この場合、図4(c)に示したように、カード4の手前側の先端部がちょうど印刷ヘッド13によりインクリボン3と接触した状態の印刷開始位置で停止する。
【0080】
すなわち、本実施形態においては、センサ16によるカード4の検出から第一速度による駆動を行うと、特定時間でちょうど、この印刷開始位置まで搬送されることになる。これにより、カード4の位置合わせを行うことができる。
そして、制御部10は、印刷ヘッド13が搬送中のカード4に触れたタイミングで、カード4の搬送を停止させる。
なお、制御部10は、この印刷開始位置での停止の判断時に、既に受信が完了していた場合は、搬送を停止させなくてもよい。
【0081】
(ステップS108)
印刷データ300の受信が完了した場合、制御部10が、媒体印刷処理を行う。
制御部10は、図4(c)のように、印刷ヘッド13によりインクリボン3とカード4とが接触した状態の印刷開始位置から、印刷を開始させる。
この際、制御部10は、通常モードが設定されていた場合は、第一速度のままで媒体搬送部14とリボン送出部18とが同期して駆動されるように制御して、印刷ヘッド13によりカード4に印刷させる。すなわち、本実施形態においては、例えば、印刷速度4ms/Lとして印刷を行う。
【0082】
一方、高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した後、カード4への印刷が第二速度となるように媒体搬送部14とリボン送出部18とが、ステッピングモータにより同期して駆動されるように制御する。すなわち、制御部10は、第一速度の状態で印刷開始位置までカード4が搬送された状態から、第二速度まで加速しつつ印刷を行う。
【0083】
本実施形態においては、高速モードの場合、例えば、印刷速度を4ms/Lから四倍速となる1ms/Lまで加速して、この速度を保って印刷を行う。この際、制御部10は、リボン送出部18によるインクリボン3の送出速度と、媒体搬送部14によるカード4の搬送とは、同じ速度にする必用があるため、これらの駆動手段の割り込み周期等を変更して速度調整を行いつつ印刷を行う。
【0084】
ここで、制御部10は、カラー印刷やオーバーコート層等の印刷を行う必用がある場合には、媒体搬送部14によりカード4をまた印刷開始位置まで奥側(X2方向)に搬送しつつ、リボン送出部18によりインクリボン3の別の色を送出してカード4への印刷を続ける。
その後、制御部10は、処理をステップS109に進める。
【0085】
(ステップS205)
ここで、印刷ヘッド13及び媒体搬送部14が、媒体排出処理を行う。
印刷終了後、印刷ヘッド13は、共通基板12を介して、上位装置2へ印刷結果を通知する。
この上で、印刷ヘッド13は、媒体搬送部14を駆動して、カード4を搬送路内で前方向に搬送させ、排出させる。これにより、ATM等を操作しているユーザは、印刷されたカード4を取得可能となる。
以上により、本発明の実施の形態に係るカード発行処理を終了する。
【0086】
〔本実施形態の主な効果〕
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来の媒体発行装置では、ホッパユニットから取り出したカードを装置内に取り込んでから画像データを一画面ずつ受信してから、例えば4ms/Lの速度で印刷を行っていた。この印刷速度を高速化し、カードへの印刷時間を短縮したいという技術的なニーズが存在した。
【0087】
ここで、印刷を高速化させるには、印刷速度4ms/Lに対して、より速い速度で印刷すればよいものの、従来のカード発行装置では、印刷を単純に高速化できない事情が存在した。
具体的には、カード発行装置においては、カード発行を行わない場合には、印刷ヘッドを待機位置まで移動させて、カードと接触させないようにしておく必用がある。この上で、印刷時には、通常、滑りやすいプラスチックのカードに印刷するために、印刷ヘッドにかなりの押圧をかけてインクリボンをカードと接触させる必用がある。このため、カードがない状態で、印刷ヘッドを印刷位置まで移動させると、搬送路を塞いでしまい、カードが搬送できない状態となってしまう。
【0088】
このため、カードへの印刷開始時に、印刷ヘッドのヘッド駆動部のモータ、インクリボンのリボン送出部のモータ、媒体搬送部の搬送用のモータ三つを駆動させるタイミングを合わせる必要がある。この際、特に、印刷ヘッドのヘッド駆動部のモータは他の二つに対して速度が遅いため、適切なタイミングで駆動開始しないと印刷開始位置がずれてしまうという問題があった。一方、インクリボン用モータもまたタイミングが早いと印刷前に余分なリボンを送ってしまい印刷失敗してしまうという問題があった。
このような理由から、従来、ただ単純に印刷を高速化することは難しかった。このような問題に対して、特許文献1のような技術では対応できなかった。
【0089】
これに対して、(1)本発明の実施の形態に係るカード発行システムXは、カード4(媒体)を発行する媒体発行装置であるカード発行装置1(媒体発行装置)と、カード発行装置1用の印刷データ300を生成する上位装置2とを含む媒体発行システムであって、上位装置2は、印刷データ300を生成する印刷データ生成部200と、第一速度のまま印刷する通常モードと、第一速度より高速の第二速度で印刷する高速モードとを設定するモード設定部210と、印刷データ300をカード発行装置1へ送信する送受信部22とを備え、カード発行装置1は、カード4が搬送される搬送路と、搬送路内でカード4を搬送する媒体搬送部14と、媒体搬送部14により搬送路内を搬送されるカード4にインクリボン3を接触させて印刷する印刷ヘッド13と、印刷ヘッド13より搬送路の上流側に配置されたセンサ16と、印刷ヘッド13を待機位置と印刷位置との間で移動させるヘッド駆動部17と、インクリボン3を送出するリボン送出部18と、媒体搬送部14によりカード4を第一速度で搬送し、センサ16がオンになったことを検出した場合、ヘッド駆動部17により印刷位置への印刷ヘッド13の移動を開始させ、高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した後、カード4への印刷が第二速度となるように媒体搬送部14とリボン送出部18とが同期して駆動されるように制御する制御部10とを備えることを特徴とする。
【0090】
すなわち、制御部10は、媒体搬送部14によりカード4を搬送し、センサ16がオンになったら第一速度で搬送し、ヘッド駆動部17により印刷ヘッド13を印刷位置に移動を開始するとともに、高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触したのち、第二速度でカード4への印刷が行われるように媒体搬送部14とリボン送出部18とを同期して駆動するように制御する。
【0091】
具体的には、最初から高速印刷の速度でシームレスな印刷を行おうとすると印刷開始位置のセンサ16が検出したタイミングで印刷ヘッド13を待機位置から印刷位置へ移動させ始めたのでは間に合わないため、センサ16検出した際には、通常の速度である第一速度でカード4を搬送する。その後、印刷ヘッド13がカード4に接触したタイミングで、第二速度にさらに変更することができる。
このように構成することで、センサ16の検出に基づいて、印刷ヘッド13のヘッド駆動部17、インクリボン3のリボン送出部18、及び媒体搬送部14を適切なタイミングで駆動させてカード4を印刷開始位置に確実に位置合わせしてから、高速化することができる。これにより、例えば、印刷の速度を4ms/Lから4倍向上させて1ms/Lで印刷を行うことができる。
【0092】
結果として、カード4を第一の速度で搬送することで、カード4と印刷ヘッド13との位置合わせ確実に行うことができるとともに、位置合わせ後、搬送速度を第二速度とすることで印刷時間を短縮できる。この際、ステッピングモータ等の駆動手段を使用し、位置はステップ数を管理等して同期させることで、速度を変更しても印刷開始位置をずれなくすることができる。
すなわち、カード4の搬送を段階的に必用に応じて変化させることで、カード4の印刷位置合わせ中の必要な場所以外では搬送を速くすることができるため、印刷時間を短縮することができる。
さらに、印刷ヘッド13の機構等の構造的な変更する必要がないため、コストを削減しつつ、高速に印刷させることが可能となる。
【0093】
また、従来のカード発行装置では、カードの搬送路への搬送を始めた後で、印刷データの受信を始めていた。このため、カラーの印刷データ等、記憶容量が大きなデータの場合、受信が間に合わず、カード4を印刷開始位置まで搬送した後、停止させる必用があった。
【0094】
これに対して、(2)本発明の実施の形態に係るカード発行装置1において、制御部10は、カード4が格納される媒体格納部からカード4が取り出される指示があった際に、印刷ヘッド13により印刷される印刷データ300を上位装置2から取得開始する(1)に記載のカード発行装置であることを特徴とする。
【0095】
このように構成し、新規のカード4の発行及び印刷の指示を受信し、ホッパユニット15からカード4が排出され始めた時点で、印刷データ300を受信開始する。すなわち、カード4の搬送開始から印刷前に印刷データ300を受信しておく。
これにより、ホッパユニット15から排出されたカード4がカード発行装置1の印刷開始位置まで搬送完了するまでの間に、大部分の印刷画像データが受信完了できる。このため、印刷開始までの待ち時間を減らせる可能性を高めることが可能である。さらに、受信待ちでカード4の搬送を停止させなくてもよくなるため、印刷時間を短縮できる。
【0096】
また、従来のカード発行装置では、カラー印刷の場合、各色のビットマップデータをその都度、上位装置から受信していた。このため、時間的に毎回わずかなロスが発生してしまっていた。
これに対して、本実施形態に係るカード発行装置1では、印刷前にカラー等の画像データをカード4の搬送中にまとめて受信しておくことを特徴とする。
このように構成することで、印刷前の印刷データ300の受信待ち時間を短縮することが可能になる。
【0097】
(3)本発明の実施の形態に係るカード発行装置1において、制御部10は、第一速度のまま印刷する通常モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した際に、印刷データ300の取得が完了するまで媒体搬送部14とリボン送出部18とを停止させ、高速モードが設定されていた場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した際に、印刷データ300の取得が途中であっても媒体搬送部14とリボン送出部18とを停止させないように制御する(2)に記載のカード発行装置であることを特徴とする。
【0098】
このように構成することで、カード発行の際の印刷時に、高速モードでは、印刷開始位置でカード4を停止させずに印刷を高速化することができる。加えて、高速モードの場合は、通常モードのようにカード4を停止させないため、すぐに第一速度から第二速度まで加速することができ、印刷完了までの時間を短縮可能となる。
【0099】
(4)本発明の実施の形態に係るカード発行装置1において、制御部10は、印刷データ300の属性と上位装置2との通信速度とに基づいて印刷データ300の取得予想時間を算出し、印刷位置への印刷ヘッド13の移動を開始された後、印刷ヘッド13がカード4に接触するまでの移動時間が取得予想時間より短い場合、印刷ヘッド13がカード4に接触した際に、媒体搬送部14とリボン送出部18とを停止させないように制御する(2)又は(3)に記載のカード発行装置であることを特徴とする。
【0100】
このように構成することで、カード発行の際の印刷時に、カード4の搬送を印刷開始位置で停止させることがなくなり、印刷を高速化することができる。この際、通常モードであっても、高速モードと同様に印刷を高速化できる。また、高速モードでは、印刷開始位置からすぐ第二速度まで加速することができ、印刷完了までの時間を短縮可能となる。
【0101】
(5)本発明の実施の形態に係るカード発行システムXは、モード設定部210が、印刷データ300が白黒データを含む特定容量より記憶容量が小さなデータであった場合には高速モードに設定する(1)~(4)のいずれかに記載のカード発行装置を含む媒体発行システムであることを特徴とする。
【0102】
このように構成することで、カード発行の際の印刷時に、記憶容量の小さな印刷データ300では、高速モードに変更して印刷することが可能となる。これにより、カード4の発行の待ち時間を自動的に短縮することができ、ATM等のユーザの利便性を高めることができる。また、上位装置2の開発者がわざわざ高速モードを指定する手間を減らせる。このため、開発コストを低減できる。
【0103】
〔他の実施の形態〕
なお、上述の実施形態においては、第二速度が第一速度より速い速度であり、この速い速度の例として、通常モードの四倍速であるように記載した。
しかしながら、第二速度を印刷データ300の属性設定301により可変速としてもよい。たとえば、印刷データ300が単色の場合は第一速度の四倍速とするものの、写真等を含むカラーデータの場合には二倍速とするような構成であってもよい。
【0104】
さらに、カラーデータの場合、印刷ズレ等が目立ちにくいY(黄色)の印刷の際には四倍速として、目立ちやすいK(黒色)の印刷の際には一~二倍速とするような構成も可能である。
さらに加えて、属性設定301に、高精細なデータや顔写真があるように設定されていた場合には、第一速度よりも遅い速度で印刷するような構成も可能である。
また、全ての印刷色について、写真等のある箇所のみを低速度で駆動するようにしてもよい。
【0105】
このように構成することで、印刷のクォリティーを維持して高精度に印刷しつつ、可能な限り高速に印刷することができる。また、速度変化等による微小なズレの発生や解像度の変化による印刷の変化等を抑えて、高精度にカード4を印刷することができる。
【0106】
上述の実施形態においては、印刷データ300の取得予想時間が、カード4の搬送と印刷ヘッド13の移動に係る移動時間以下である場合に高速モードに変更する構成について記載した。
これについて、取得予想時間が移動時間より長かった場合に、設定されたホッパユニット15を奥側に変更して移動時間を長くして、取得予想時間が間に合うように構成してもよい。
これにより、カード4を印刷開始位置で停止させて待機させることなく、カード4の印刷を開始でき、印刷完了までの時間を短くできる可能性がある。
【0107】
または、高速モードで取得予測時間が移動時間よりも長くなると判断した場合、印刷データ300自体を変更してもよい。
すなわち、カラー等の印刷データ300であっても、圧縮してもよく、ビットマップデータではなく、PDF(Portable Document Format)、PS(Post Script)、オブジェクト単位のデータ等のベクトルデータを含むデータとしてカード発行装置1へ送信してもよい。
【0108】
さらに、上述の実施形態においては、上位装置2で高速モード又は通常モードの設定をするように記載したものの、カード発行装置1の制御部10にて設定することが可能であってもよい。
この場合、制御部10は、コマンドの追加データを解析して、取得予想時間が移動時間より長かった場合、印刷データ300の変更を要求するように構成してもよい。
このように構成することで、様々な構成に対応可能となる。
【0109】
さらに、上述の実施形態においては、高速モードで駆動する際に、印刷データ300の明度値や濃度の制御については記載していなかった。
これについて、高速で駆動すると濃度が薄くなる場合、濃くするように制御してもよい。この場合、単に濃度をn倍とするのではなく、印刷データ300のピクセルの明度値に応じて、段階的又は特定の濃度変化曲線に従った濃度制御を行うことが可能である。
これにより、更にカード4の印刷のクォリティーを高めることができる。
【0110】
上述の実施形態においては、主にインクリボン3を用いた熱転写や昇華式のプリンタでカード4に印刷する例について記載した。
しかしながら、感熱紙を用いたサーマルプリンタ、インクジェットプリンタ、ドットマトリクスプリンタ、電子乾写真方式のプリンタ、レーザー刻印式プリンタ、溶融式又は紫外線硬化式の3Dプリンタ等、他の印刷方式のプリンタであっても、カード4を搬送するプリンタについて用いることが可能である。さらに、単票印刷のプリンタでなくロール紙のプリンタでも、カラーでなくても、白黒のプリンタであってもよい。また、これら印刷の方式により、上述の濃度制御の方式も変更することが可能である。
このように構成することで、様々な構成に対応したカード4の印刷が可能となる。
【0111】
上述の実施形態においては、上位装置2が、ATM等の本体である例について説明した。
しかしながら、上位装置2は、カード4のデザインを行うPCやスマートフォン等であってもよい。この場合、PCやスマートフォン等に、カード4のデザインを行うアプリ等がインストールされ、カード発行装置1と有線又は無線で接続されてもよい。
【0112】
加えて、上述の実施の形態においては、上位装置2から、印刷データ300が直接接続されたカード発行装置1へ送信される例について記載した。
しかしながら、印刷データ300を共通鍵や公開鍵等で暗号化等してから、ネットワーク経由でカード発行装置1へ送信するような構成も可能である。また、上位装置2とは違うユーザの携帯電話、いわゆるクラウド上のサーバーやNAS(Network Attached Storage)等から印刷データ300が取得されてもよい。
このように構成することで、様々な構成に対応可能となる。また、暗号化することでセキュリティを向上させられる。
【0113】
また、カード発行装置1の印刷ヘッド13を含む印刷ユニットが、カード発行装置1に搭載されず、別途、USBや無線等で接続されていてもよい。または、カード発行装置1は、上位装置2と筐体内で接続されず、PCやスマートフォン等の上位装置2とUSBや無線等で接続されてもよい。
さらに、カード発行装置1は、上位装置2と接続されない、いわゆる「スタンドアロン」で印刷可能であってもよい。この場合、スタンドアロンのカード発行装置1は、上位装置2やメンテナンス用端末と一時的に接続して、上述の印刷データ300を取得することが可能であってもよい。
【0114】
上述の実施形態においては、媒体の例として、カード4に印刷を行う例について記載した。
しかしながら、カード4以外の、例えば、駐車券、入場券、列車や飛行機等の切符、その他のチケット、ラベルプリンタで印刷されたラベル、レシート、RFID(Radio Frequency IDentifier)等の導電性インクの印刷装置、その他の印刷が必要な媒体について、同様の構成で媒体発行をすることが可能である。
このように構成することで、様々な媒体に対応可能となる。
【0115】
また、上述の実施形態においては、主にカード発行装置1のカード4の発行に関する構成について記載した。
しかしながら、カード発行装置1は、カード4に格納された情報を読み取るヘッド等を備えたカードリーダの機能を含んでいてもよい。このヘッド等は、例えば、磁気ヘッド、暗号化磁気ヘッド、IC接点、電磁誘導アンテナ等を含む。磁気ヘッドの場合、カード4が接触され摺動されることで、カード4上に設けられた磁気ストライプに記録された磁気情報を読み出し、書き込むことが可能である。IC接点、電磁誘導アンテナ等では、カード4の接点と接触、又は電磁誘導等で、カード4に内蔵されたICに格納された情報を読み出し、書き込むことが可能である。
【0116】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0117】
1 カード発行装置
2 上位装置
3 インクリボン
4 カード
10、20 制御部
11、21 記憶部
12 共通基板
13 印刷ヘッド
14 媒体搬送部
15、15-1~15-4 ホッパユニット
16 センサ
17 ヘッド駆動部
18 リボン送出部
22 送受信部
200 印刷データ生成部
210 モード設定部
300 印刷データ
301 属性設定
C 搬送路
X カード発行システム
図1
図2
図3
図4