(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060757
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】使用リソース設定方法および使用リソース設定装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240425BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240425BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240425BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168238
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堂安 豪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 紀輔
(72)【発明者】
【氏名】服部 孝一
【テーマコード(参考)】
3C100
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA43
3C100BB13
3C100BB14
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】作業時間の更新精度と生産KPIのばらつきを含む予測値を同時に考慮した使用リソースの設定を行う。
【解決手段】使用リソース設定装置が実行する使用リソース設定方法であって、使用リソース設定装置は、制御部と、記憶部と、を有し、記憶部は、リソース種類情報と、作業時間情報と、生産計画情報と、を保持し、使用リソース設定方法は、制御部が、リソース種類情報と、作業時間情報と、生産計画情報と、に基づいて、製品を生産する各工程の作業に1以上のリソースを割り付ける使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測する第1手順と、制御部が、使用リソース案と、作業時間情報と、生産計画情報と、に基づいて、使用リソース案を採用した場合の製品の生産の評価指標を予測する第2手順と、を含み、第2手順は、制御部が、使用リソース案における作業の所要時間の算出精度に基づいて、評価指標のばらつきを予測する手順を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用リソース設定装置が実行する使用リソース設定方法であって、
前記使用リソース設定装置は、制御部と、記憶部と、を有し、
前記記憶部は、リソース種類情報と、作業時間情報と、生産計画情報と、を保持し、
前記リソース種類情報は、それぞれが製品を生産する工程の作業に使用できる各リソースの種類を特定する情報を含み、
前記作業時間情報は、前記各リソースを使用して過去に実行された作業の所要時間を示す情報を含み、
前記生産計画情報は、生産が計画されている前記製品の数を示す情報を含み、
前記使用リソース設定方法は、
前記制御部が、前記リソース種類情報と、前記作業時間情報と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記製品を生産する各工程の作業に1以上の前記リソースを割り付ける使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測する第1手順と、
前記制御部が、前記使用リソース案と、前記作業時間情報と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記使用リソース案を採用した場合の前記製品の生産の評価指標を予測する第2手順と、を含み、
前記第2手順は、前記制御部が、前記使用リソース案における作業の所要時間の算出精度に基づいて、前記評価指標のばらつきを予測する手順を含むことを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の使用リソース設定方法であって、
前記記憶部は、使用リソース情報をさらに保持し、
前記使用リソース情報は、前記製品を生産する工程ごとに、工程の作業に使用できる1以上の前記リソースを特定する情報を含み、
前記使用リソース設定方法は、前記制御部が、前記使用リソース情報に基づいて、複数の前記使用リソース案を生成する第3手順をさらに含み、
前記第1手順及び前記第2手順は、前記第3手順において生成された前記複数の使用リソース案の各々について実行されることを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の使用リソース設定方法であって、
前記制御部が、前記評価指標のばらつきを予測した結果を画面上に表示するための情報を出力する第4手順をさらに含むことを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の使用リソース設定方法であって、
前記第1手順において、前記制御部は、
前記リソース種類情報と、前記作業時間情報と、に基づいて、前記リソースの種類ごとに、前記作業の実績数と前記作業の所要時間の算出精度との関係を学習し、
前記使用リソース案と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記各工程に割り付けられた前記リソースにおいて将来行われる作業の実績数を予測し、
前記使用リソース案と、前記リソース種類情報と、に基づいて、前記各工程に割り付けられた前記リソースの種類を判定し、
学習した前記リソースの種類ごとの前記作業の実績数と前記作業の所要時間の算出精度との関係に、前記作業の実績数の予測結果および前記リソースの種類の判定結果を適用することによって、前記使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測することを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の使用リソース設定方法であって、
前記リソースの種類は、少なくとも、人手を介さずに作業を行う自動設備と、それ以外と、を含むことを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の使用リソース設定方法であって、
前記第1手順及び前記第2手順は、複数の前記使用リソース案の各々について実行され、
前記使用リソース設定方法は、前記制御部が、前記評価指標に基づく所定の選択基準に従って、前記複数の使用リソース案の一つを選択する第5手順をさらに含むことを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の使用リソース設定方法であって、
前記第5手順において、前記制御部は、複数の選択基準のうちいずれかを指定する情報が入力された場合、前記指定された選択基準に従って、前記複数の使用リソース案の一つを選択することを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の使用リソース設定方法であって、
前記複数の選択基準は、前記使用リソース案における作業の所要時間の算出精度に基づくばらつきを含まない前記評価指標が最も高くなること、前記評価指標のばらつきの範囲の上限値が最も高くなること、及び、前記評価指標のばらつきの範囲の下限値が最も高くなること、のいずれかであることを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項9】
請求項1に記載の使用リソース設定方法であって、
前記第1手順において、前記制御部は、いずれかのリソースを指定する情報が入力された場合、前記指定されたリソースの前記作業への割り付けを含む前記使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測することを特徴とする使用リソース設定方法。
【請求項10】
使用リソース設定装置であって、
制御部と、記憶部と、を有し、
前記記憶部は、リソース種類情報と、作業時間情報と、生産計画情報と、を保持し、
前記リソース種類情報は、それぞれが製品を生産する工程の作業に使用できる各リソースの種類を特定する情報を含み、
前記作業時間情報は、前記各リソースを使用して過去に実行された作業の所要時間を示す情報を含み、
前記生産計画情報は、生産が計画されている前記製品の数を示す情報を含み、
前記制御部は、
前記リソース種類情報と、前記作業時間情報と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記製品を生産する各工程の作業に1以上の前記リソースを割り付ける使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測し、
前記使用リソース案と、前記作業時間情報と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記使用リソース案を採用した場合の前記製品の生産の評価指標を予測し、
前記使用リソース案における作業の所要時間の算出精度に基づいて、前記評価指標のばらつきを予測することを特徴とする使用リソース設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産実績を活用して作業時間を自動更新する際の更新精度と生産効率を両立する、生産工程における使用リソースの設定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生産実績を活用した作業時間のモデリングにおいては、使用可能な製造リソースの候補数が多い場合は1リソースあたりの実績数が少なくなり作業時間の精度が低下する。その結果、生産効率に関わる様々な指標(生産KPI)が計画時より低下する。一方で、リソース数が少ない場合は生産KPIが良い計画を立てることができない。特開2010-238085号公報(特許文献1)には、「データ収集系と画面表示系とをネットワークで接続し、キーパフォーマンスインジケータ(KPI)など生産システムにおける生産性・信頼性の評価指標となる情報を管理する生産情報管理システム」すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産実績を活用した作業時間のモデリングにおいては、新製品の設計時にあらかじめ使用リソースを設定しておき、量産開始以降に各工程で使用可能なリソースごとに作業実績を収集/解析することで、作業時間を自動更新する方法が有効である。使用リソースの設定では、設定したリソースの数が多いほど作業時間の更新精度が低下する一方で計画時のKPIは向上する。逆に、リソースの数が少ないほど作業時間の更新精度は向上する一方、計画時のKPIは低下する。さらに、作業時間の更新精度が低いほど、生産KPIは計画時のKPIと乖離し低下する可能性が高くなる。このため、新製品の設計時において、作業時間の更新精度と生産KPIのばらつきを含む予測値を同時に考慮した使用リソースの設定が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題の少なくとも一つを解決するため、本発明は、使用リソース設定装置が実行する使用リソース設定方法であって、前記使用リソース設定装置は、制御部と、記憶部と、を有し、前記記憶部は、リソース種類情報と、作業時間情報と、生産計画情報と、を保持し、前記リソース種類情報は、それぞれが製品を生産する工程の作業に使用できる各リソースの種類を特定する情報を含み、前記作業時間情報は、前記各リソースを使用して過去に実行された作業の所要時間を示す情報を含み、前記生産計画情報は、生産が計画されている前記製品の数を示す情報を含み、前記使用リソース設定方法は、前記制御部が、前記リソース種類情報と、前記作業時間情報と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記製品を生産する各工程の作業に1以上の前記リソースを割り付ける使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測する第1手順と、前記制御部が、前記使用リソース案と、前記作業時間情報と、前記生産計画情報と、に基づいて、前記使用リソース案を採用した場合の前記製品の生産の評価指標を予測する第2手順と、を含み、前記第2手順は、前記制御部が、前記使用リソース案における作業の所要時間の算出精度に基づいて、前記評価指標のばらつきを予測する手順を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、新製品の設計時において、作業時間の更新精度と生産KPIのばらつきを含む予測値を同時に考慮した使用リソースの設定が可能になる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施例1のシステムを実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施例1のシステムを実現する情報端末の実際の使用形態の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施例1の使用リソース設定装置の情報記憶部に保持される新製品の使用リソース情報記憶部の一例を示す説明図である。
【
図5】実施例1の使用リソース設定装置の情報記憶部に保持されるリソース種類情報記憶部の一例を示す説明図である。
【
図6】実施例1の使用リソース設定装置の情報記憶部に保持される過去製品の作業実績情報記憶部の一例を示す説明図である。
【
図7】実施例1の使用リソース設定装置の情報記憶部に保持される過去製品の作業時間情報記憶部の一例を示す説明図である。
【
図8】実施例1の使用リソース設定装置の情報記憶部に保持される新製品の販売計画情報記憶部の一例を示す説明図である。
【
図9】実施例1の利用リソース設定装置の制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10A】実施例1の利用リソース設定装置の作業時間更新精度予測機能が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10B】実施例1の利用リソース設定装置のKPI予測機能が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施例1の使用リソース設定装置の結果表示部が表示する使用リソース案表示画面の一例を示す説明図である。
【
図12】実施例2における使用リソース設定装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図13】実施例2の利用リソース設定装置の使用リソース案探索機能が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施例1の使用リソース設定装置の結果表示部が表示する評価指標の選択画面の一例を示す説明図である。
【
図15】実施例2の使用リソース設定装置の結果表示部が表示する使用リソース案探索結果表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例0009】
実施例1では、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIの確率付き予測値を可視化し、その結果を人が確認して適切な使用リソースを選択する場合を例にとって説明する。
【0010】
図1は、実施例1のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
実施例1の使用リソース設定装置101は、情報記憶部102と、制御部103と、結果表示部104とを備える。
【0012】
情報記憶部102は、新製品の使用リソース情報記憶部400と、リソース種類情報記憶部500とを備える。
【0013】
また、情報記憶部102は、過去製品の作業実績情報記憶部600と、過去製品の作業時間情報記憶部700と、新製品の販売計画情報記憶部800とを備える。過去製品の作業実績情報記憶部600は、生産管理装置105に含まれる過去製品の作業実績情報106を読み込んで記憶する。過去製品の作業時間情報記憶部700は、生産管理装置105に含まれる過去製品の作業時間情報107を読み込んで記憶する。新製品の販売計画情報記憶部800は、販売計画立案装置108に含まれる新製品の販売計画情報109を読み込んで記憶する。
【0014】
なお、生産管理装置105は、工場等における製品の生産を管理する装置である。販売計画立案装置108は、生産した製品の販売計画の立案を行う装置である。これらの装置は従来使用されているものであってよいため、詳細な説明を省略する。
【0015】
制御部103は、使用リソース案生成機能111と、作業時間更新精度予測機能112と、KPI予測機能113と、予測結果可視化機能114と、を備える。使用リソース案生成機能111は、生産実施時に使用可能な設備および作業者の組合せから考えられる全ての使用リソースの案を生成する。作業時間更新精度予測機能112は、使用リソース案と作業時間更新精度との関係を予測する。KPI予測機能113は、使用リソース案とKPIの確率付き予測値との関係を予測する。予測結果可視化機能114は、リソース案と作業時間更新精度との関係および使用リソース案とKPIの確率付き予測値との関係を可視化する。使用リソース設定装置101は、上記の機能によって、作業時間の更新精度と生産KPIの確率付き予測値を同時に考慮した使用リソースの設定を行うことができる。
【0016】
図2は、実施例1のシステムを実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
使用リソース設定装置101は、
図2に示す情報端末201によって実現されてもよい。情報端末201は、キーボードおよびマウス等の入力装置202と、ディスプレイ等の出力装置203と、補助記憶装置204と、各種機能を実施する演算装置205とを有する。演算装置205は、中央演算処理装置(以下、CPU)206と、主記憶装置207と、インターフェース208とを備える。この演算装置205は、入力装置202、出力装置203および補助記憶装置204と、インターフェース208を介して接続されている。本実施例では、使用リソース設定装置101が有する各機能(例えば制御部103の使用リソース案生成機能111、作業時間更新精度予測機能112、KPI予測機能113および予測結果可視化機能114)の実行結果は、主記憶装置207に確保された記憶領域に記憶される。これらの各機能は、補助記憶装置204に予め記憶され、実行時に主記憶装置207に読み込まれ、CPU206によって実行される。
【0018】
なお、本実施例では、情報端末201が汎用情報処理装置とソフトウェアによって実現される場合を例にとって説明するが、例えば、ハードワイヤードロジックを含むハードウェア、または、ハードウェアと、予めプログラムされた汎用情報処理装置とによって実現してもよい。
【0019】
図3は、実施例1のシステムを実現する情報端末201の実際の使用形態の一例を示すブロック図である。
【0020】
情報端末201は、
図3に示すように、担当者301による操作が可能であり、例えば使用リソース設定装置101を実現する情報端末201に対して、担当者301が任意のタイミングで情報の入力処理302を行うことができる。情報端末201が実現する制御部103は、リソース案と作業時間更新精度との関係、および、使用リソース案とKPIの確率付き予測値との関係を計算し、その計算結果を可視化した情報の出力処理303を行う。担当者301は、可視化したリソース案と作業時間更新精度との関係、および、使用リソース案とKPIの確率付き予測値との関係を確認することができる。
【0021】
以降では使用リソース設定装置101の各構成部の詳細を述べる。
【0022】
図4は、実施例1の使用リソース設定装置101の情報記憶部102に保持される新製品の使用リソース情報記憶部400の一例を示す説明図である。
【0023】
新製品の使用リソース情報記憶部400は、新製品を生産する際に必要な工程と、当該工程に活用可能なリソースの情報を記憶する。例えば、本実施例においては、新製品の使用リソース情報記憶部400は、
図4に示すようなテーブルを記憶する。
【0024】
図4に示す使用リソース情報記憶部400は、列401~列404を有する。列401は、新製品の使用リソース情報記憶部400の各レコード(すなわち
図4の使用リソース情報記憶部400の各行)を一意に識別するための使用リソースID情報を格納する。列402は、新製品の名前情報を格納する。列403は、当該製品の生産に必要な工程の工程名情報を格納する。列404は、当該製品の生産に必要な当該工程に対して使用できるリソースの名前情報を格納する。
【0025】
図4の例において、第1および第2のレコードは、製品Aを生産するための切削工程に使用できるリソース(例えば切削加工を行う工作機械)が少なくとも二つあり、それぞれ「切削1」および「切削2」というリソース名によって識別されることを示している。
【0026】
図1の情報記憶部102は、
図3の担当者301による新製品の使用リソース情報に関する入力処理302を受け付け、入力された情報を新製品の使用リソース情報記憶部400に記憶する。
【0027】
図5は、実施例1の使用リソース設定装置101の情報記憶部102に保持されるリソース種類情報記憶部500の一例を示す説明図である。
【0028】
リソース種類情報記憶部500は、各リソースに対して当該リソースの種類を識別するための情報を記憶する。例えば、本実施例においては、リソース種類情報記憶部500は、
図5に示すようなテーブルを記憶する。
【0029】
図5に示すリソース種類情報記憶部500は、列501~列503を有する。列501は、リソース種類情報記憶部500の各レコードを一意に識別するためのリソース種類ID情報を格納する。列502は、リソースの名前情報を格納する。列503は、列502に格納した名前によって識別されるリソースに対応するリソースの種類情報を格納する。
【0030】
ここで、リソースの種類とは、「人」、「設備+人」および「自動設備」のいずれかである。種類が「人」であるリソースは、例えば工場の作業者等の人である。すなわち、そのリソースを使用する工程は、作業者等が人手で(例えば工具等を使用して)行う。種類が「設備+人」であるリソースは、例えば人手による操作を必要とする設備である。すなわち、そのリソースを使用する工程は、例えば作業者等が機械等の設備を操作することによって行う。種類が「自動設備」であるリソースは、人手による操作を必要とせずに自動で動作する設備である。すなわち、そのリソースを使用する工程は、機械等の設備が自動で行う。
【0031】
ただし、上記のようなリソースの種類は一例であり、リソースを上記以外の種類に分類してもよい。例えば、設備の種類、性能、人の熟練度等に応じてリソースを分類してもよい。
【0032】
図5の例は、リソース名が「切削1」および「切削2」であるリソースが、人手による操作を必要とする設備(例えば切削加工を行う工作機械等)であり、リソース名が「塗装1」であるリソースが、人手による操作を必要としない自動設備であることを示している。
【0033】
図1の情報記憶部102は、
図3の担当者301によるリソースの種類情報に関する入力処理302を受け付け、入力された情報をリソース種類情報記憶部500に記憶する。
【0034】
図6は、実施例1の使用リソース設定装置101の情報記憶部102に保持される過去製品の作業実績情報記憶部600の一例を示す説明図である。
【0035】
過去製品の作業実績情報記憶部600は、既に量産化されている製品を過去に生産した実績情報から、生産作業を実施したリソースごとに、作業を開始した時刻情報および作業を終了した時刻情報を記憶する。例えば、本実施例においては、過去製品の作業実績情報記憶部600は、
図6に示すようなテーブルを記憶する。
【0036】
図6に示す過去製品の作業実績情報記憶部600は、列601~列604を有する。列601は、過去製品の作業実績情報記憶部600の各レコードを一意に識別するための作業実績ID情報を格納する。列602は、当該作業を実施したリソースの名前情報を格納する。列603は、当該作業を開始した時刻情報を格納する。列604は、当該作業を終了した時刻情報を格納する。
【0037】
図1の情報記憶部102は、
図1の生産管理装置105に格納されている過去製品の作業実績情報106から上記の各項目に相当する情報を読み込み、過去製品の作業実績情報記憶部600に記憶する。
【0038】
図7は、実施例1の使用リソース設定装置101の情報記憶部102に保持される過去製品の作業時間情報記憶部700の一例を示す説明図である。
【0039】
過去製品の作業時間情報記憶部700は、既に量産化されている製品に対して設定されている標準の作業時間情報を、リソースごとに記憶する。例えば、本実施例においては、過去製品の作業時間情報記憶部700は、
図7に示すようなテーブルを記憶する。
【0040】
図7に示す過去製品の作業時間情報記憶部700は、列701~列703を有する。列701は、過去製品の作業時間情報記憶部700の各レコードを一意に識別するための作業時間ID情報を格納する。列702は、当該作業を実施したリソースの名前情報を格納する。列703は、当該作業の標準の作業時間情報を格納する。ここで、標準の作業時間とは、例えば、過去製品の作業実績情報記憶部600の作業開始時刻及び作業終了時刻から算出した、リソース毎の作業時間の統計値であってもよい。
【0041】
図1の情報記憶部102は、
図1の生産管理装置105に格納されている過去製品の作業時間情報107から上記の各項目に相当する情報を読み込み、過去製品の作業時間情報記憶部700に記憶する。
【0042】
図8は、実施例1の使用リソース設定装置101の情報記憶部102に保持される新製品の販売計画情報記憶部800の一例を示す説明図である。
【0043】
新製品の販売計画情報記憶部800は、今後量産化を予定している新製品を、どれだけの数量生産する予定かを判断するための、販売台数の計画情報を記憶する。例えば、本実施例においては、新製品の販売計画情報記憶部800は、
図8に示すようなテーブルを記憶する。
【0044】
図8に示す新製品の販売計画情報記憶部800は、列801~列803を有する。列801は、新製品を一意に識別するための製品ID情報を格納する。列802は、当該製品の名前情報を格納する。列803は、当該製品の販売台数の計画情報を格納する。
【0045】
図1の情報記憶部102は、
図1の販売計画立案装置108に格納されている新製品の販売計画情報109から上記の各項目に相当する情報を読み込み、新製品の販売計画情報記憶部800に記憶する。
【0046】
次に、
図1の制御部103が実行する処理の全体について、
図9を参照して説明する。
【0047】
図9は、実施例1の利用リソース設定装置の制御部103が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0048】
最初に、制御部103の使用リソース案生成機能111が、使用リソース案を生成する(ステップS901)。
【0049】
次に、制御部103の作業時間更新精度予測機能112が、作業時間の更新精度の予測値を算出する(ステップS902)。この処理の詳細については、
図10Aを参照して後述する。
【0050】
次に、制御部103のKPI予測機能113が、KPIの確率付き予測値を算出する(ステップS903)。この処理の詳細については、
図10Bを参照して後述する。
【0051】
次に、予測結果可視化機能114が、予測結果を可視化する(ステップS904)。具体的には、予測結果を表示するための情報を出力する。この処理の詳細については、
図11を参照して後述する。
【0052】
次に、
図1の制御部103が、リソース案と作業時間更新精度との関係および使用リソース案とKPIの確率付き予測値との関係を可視化する際に実行する処理を、
図10Aおよび
図10Bを参照して説明する。
【0053】
図10Aは、実施例1の利用リソース設定装置の作業時間更新精度予測機能112が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0054】
制御部103の作業時間更新精度予測機能112は、情報記憶部102が有する新製品の使用リソース情報記憶部の各情報項目(列401~列404)、リソース種類情報記憶部の各情報項目(列501~列503)、過去製品の作業実績情報記憶部の各情報項目(列601~列604)、過去製品の作業時間情報記憶部の各情報項目(列701~列703)、および、新製品の販売計画情報記憶部の各情報項目(列801~列803)を読み込む(ステップS101)。
【0055】
なお、ここで読み込まれる新製品の販売計画の情報は、新製品の生産数(より詳細には、将来取得される生産のための作業の実績数)を予測するために使用される。すなわち、ここで取得された新製品の販売台数が、新製品の生産計画台数として扱われる。販売計画以外の情報から生産計画を取得できる場合には、その情報を取得してもよい。
【0056】
次に、作業時間更新精度予測機能112は、読み込んだリソース種類ごとに、実績数と作業時間の更新精度との関係を学習する(ステップS102)。実績数と作業時間の更新精度の関係を学習する手段としては、任意の手段を用いることができるが、例えば、機械学習を用いてもよい。
【0057】
具体的には、作業時間更新精度予測機能112は、読み込んだ過去製品の作業実績情報記憶部600の各情報項目(列601~列604)に対して、読み込んだリソース種類情報記憶部500の各情報項目(列501~列503)を引き当てることで、読み込んだ過去製品の作業実績情報記憶部600のレコードをリソース種類ごとに分類し、当該リソース種類の実績数を算出する。また、作業時間更新精度予測機能112は、読み込んだ過去製品の作業時間情報記憶部700の各情報項目(列701~列703)に対して、読み込んだリソース種類情報記憶部500の各情報(列501~列503)を引き当てることで、リソース種類ごとの標準の作業時間情報を抽出する。
【0058】
そして、作業時間更新精度予測機能112は、分類したリソース種類ごとの作業実績情報と、抽出したリソース種類ごとの標準の作業時間情報から、作業実績情報を用いて作業時間情報を更新する際の更新精度を算出する。過去の情報から算出したリソース種類ごとの実績数と、過去の情報から算出したリソース種類ごとの更新精度の関係を訓練データとして機械学習することで、リソース種類ごとの実績数と作業時間の更新精度との関係を学習することができる。
【0059】
一般には、実績数が大きいほど、作業時間の更新精度が高くなる傾向がある。また、リソース種類が、人手を介さずに作業を行う自動設備(
図5の例における「自動設備」)である場合には、それ以外(
図5の例における「設備+人」または「人」)の場合と比較して、作業時間のばらつきが小さい傾向がある。このため、実績数が同じであっても、リソース種類が自動設備である場合の作業時間の更新精度は、それ以外の場合の作業時間の更新精度より高くなる傾向がある。例えば、リソース種類ごとの実績数と作業時間の更新精度との関係として、上記のような傾向が学習されてもよい。
【0060】
次に、作業時間更新精度予測機能112は、使用リソース案生成機能111によって生成された、生産実施時に使用可能な設備および作業者の組合せから考えられる全ての使用リソースの案に対して、以降のステップS104~S108の処理を実施する(ステップS103)。使用リソース案生成機能111は、例えば次のような方法で全ての使用リソース案を生成してもよい。すなわち、使用リソース案生成機能111は、読み込んだ新製品の使用リソース情報記憶部400の各情報項目(列401~列404)に対して、製品名情報402をキーとして製品ごとに集計を行い、各製品を製造する際に実施される各工程に対して使用できるリソースの組み合わせパターンを全て列挙することで、全ての使用リソース案を生成することができる。
【0061】
次に、作業時間更新精度予測機能112は、一つの使用リソース案に含まれる全てのリソースに対して、以降のステップS105~S107の処理を実施する(ステップS104)。
【0062】
作業時間更新精度予測機能112は、読み込んだ新製品の販売計画情報を用い、当該リソースにて将来取得可能な実績数を予測する(S105)。或るリソースにて将来取得可能な実績数を予測する手段としては、読み込んだ新製品の販売計画情報記憶部の各情報(列801~列803)に、当該製品の或る使用リソース案を引き当てることで、例えば、選択可能な複数のリソースに対して均等に作業が割り付けられるといった仮定を置くことで、或るリソースにて将来取得可能な実績数を予測することができる。
【0063】
例えば、新製品が製品Aである場合、販売計画に基づく製品Aの販売台数は1000台である。ここで、或る使用リソース案において、製品Aの切削工程に「切削1」および「切削2」の二つのリソースが使用される場合、それぞれのリソースにて将来取得可能な実績数は、1000台を二つのリソースに均等に割り付けた「500」としてもよい。ただし、それぞれのリソースの状態等に応じて、均等に割り付ける以外の方法で将来取得可能な実績数を算出してもよい。
【0064】
次に、作業時間更新精度予測機能112は、読み込んだリソース種類情報記憶部の各情報項目(列501~列503)を用い、当該リソースのリソース種類を判定する(ステップS106)。
【0065】
そして、作業時間更新精度予測機能112は、当該リソースにおける作業時間の更新精度を予測する(ステップS107)。例えば、作業時間更新精度予測機能112は、ステップS102で学習した、リソース種類ごとの実績数と作業時間の更新精度との関係と、ステップS106で判定したリソース種類情報とから、当該リソース種類の実績数と作業時間の更新精度との関係を抽出し、抽出した当該リソース種類の実績数と作業時間の更新精度の関係に、ステップS105で予測した将来取得可能な実績数を引き当てることで、作業時間の更新精度を予測することができる。
【0066】
作業時間更新精度予測機能112は、ステップS105以降の処理を一つの使用リソース案に含まれる全てのリソースに対して実施したのち、当該使用リソース案の作業時間更新精度を集計する(ステップS108)。例えば、作業時間更新精度予測機能112は、当該使用リソース案の各工程のリソースの作業時間の更新精度に所定の重み係数を適用した加重和によって、当該使用リソース案の作業時間更新精度を求めてもよい。
【0067】
作業時間更新精度予測機能112は、ステップS104~S108の処理を全ての使用リソース案に対して実施することで、各使用リソース案に対する作業時間更新精度を得る。
【0068】
なお、作業時間更新精度は、作業時間の情報を更新するための新たな作業時間の算出精度と言い換えてもよい。
【0069】
図10Bは、実施例1の利用リソース設定装置のKPI予測機能113が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0070】
作業時間更新精度予測機能112が
図10Aに示す処理によって各リソース案に対する作業時間更新精度を算出すると、次に、制御部103のKPI予測機能113は、
図10Bに示す処理を実行する。最初に、KPI予測機能113は、情報記憶部102が有する情報に加えて、作業時間更新精度予測機能112が算出した各リソース案の作業時間更新精度情報を読み込む(ステップS201)。
【0071】
KPI予測機能113は、使用リソース案生成機能111が生成した、生産実施時に使用可能な設備および作業者の組合せから考えられる全ての使用リソースの案に対して、以降の処理を実施する(ステップS202)。
【0072】
KPI予測機能113は、一つの使用リソース案に対する計画上のKPIを算出する(ステップS203)。例えば、KPI予測機能113は、新製品を、当該新製品の販売台数803の数だけ生産する際に、選択可能な複数のリソースに対して均等に作業が割り付けられるといった仮定を置いて、各作業を各リソースに割り当てた上で、イベントドリブンシミュレーションを用いて、各作業の開始時刻から終了時刻までの時間を算出し、新製品の生産計画を立案してもよい。
【0073】
なお、この各作業の開始時刻から終了時刻までの時間の算出に用いる各作業の作業時間は、例えば、読み込んだ過去製品の作業時間情報記憶部700に含まれる各リソースの作業時間703を転用してもよいし、或いは、担当者301が入力処理302において入力した新製品の作業時間の見込み値を使用してもよい。立案した生産計画に対して、単位時間あたりの生産台数および各リソースの稼働率などを算出することで、一つの使用リソース案に対する計画上のKPIを算出することができる。
【0074】
次に、KPI予測機能113は、計画上のKPIと実際に生産を行った際のKPIとの乖離を表す、KPIの確率付き予測値を算出する(ステップS204)。例えば、KPI予測機能113は、読み込んだ作業時間更新精度情報を用い、リソース種類ごとの作業時間更新精度の値の大小に基づいて、各使用リソースの作業時間に標準の作業時間を中心としたレンジを与える。そして、KPI予測機能113は、イベントドリブンシミュレーションを行う際に用いる作業時間を、上記の作業時間のレンジ内で変化させながら、複数パターンの生産計画を立案する。各生産計画に対して、単位時間あたりの生産台数および各リソースの稼働率などのKPIを算出して集計することで、一つの使用リソース案に対するKPIの確率付き予測値を算出することができる。
【0075】
ここで、KPIの確率付き予測値は、作業時間更新精度に基づいて予測されたKPIのばらつきの大きさを示す値であってもよい。例えば、KPI予測機能113は、KPIの確率付予測値の算出(ステップS204)において、上記のように一つの使用リソース案について立案した複数パターンの生産計画のKPIを計算し、各リソースにおける作業時間更新精度に基づいて、KPIがばらつく範囲の最大値および最小値をKPIの確率付き予測値として取得してもよい。KPIがばらつく範囲の最大値および最小値を、それぞれ、当該使用リソース案における実KPI上限および実KPI下限とも記載する。一般に、使用リソース案に含まれるリソースの作業時間更新精度が低いほど、KPIがばらつく範囲は大きくなる。
【0076】
KPI予測機能113は、ステップS203~S204の処理を全ての使用リソース案に対して実施することで、各リソース案に対するKPIの確率付き予測値を算出する。
【0077】
次に、制御部103の予測結果可視化機能114は、算出した各リソース案に対する作業時間更新精度およびKPIの確率付き予測値を、例えば
図11のようなフォーマットで、使用リソース設定装置101の結果表示部104に表示する。
【0078】
図11は、実施例1の使用リソース設定装置101の結果表示部104が表示する使用リソース案表示画面の一例を示す説明図である。
【0079】
図11に示す実施例1の出力画面例の使用リソース案表示画面1101は、使用リソース案表示部1102と、作業時間更新精度とKPIの関係表示部1103と、KPIの詳細表示部1104と、作業時間更新精度の詳細表示部1105と、を有する。
【0080】
使用リソース案表示画面1101の使用リソース案表示部1102は、担当者301による任意のリソースを選択する入力処理302を受け付けることができる。結果表示部104は、担当者301が選択したリソースに基づくリソース案について算出された作業時間更新精度とKPIの確率付き予測値情報を可視化するよう、使用リソース案表示部1102、作業時間更新精度とKPIの関係表示部1103およびKPIの詳細表示部1104の表示内容を更新する。
【0081】
ここで、
図11の出力画面の具体例を説明する。使用リソース案表示部1102には、新製品(例えば製品A)を生産するために必要な工程ごとに、工程の作業を割り付けることができるリソースと、使用リソース案において作業が割り付けられたリソースと、を表示している。
図11には、使用リソース案において作業が割り付けられているリソース(すなわち適用リソース)を黒塗りの四角形で示し、作業を割り付けることができるが使用リソース案において作業が割り付けられていないリソース(すなわち適用外リソース)を点線かつ白抜きの四角形で示している。
【0082】
図11の例では、新製品の生産のための工程1から工程4までの4工程の作業の割り付けの例を示している。この例において、工程1、2、3、4の作業を、それぞれ、二つ、三つ、二つ、二つのリソースに割り付けることができる。そして、表示されている使用リソース案では、工程1、2、3、4の作業が、それぞれ、二つ、二つ、一つ、二つのリソースに割り付けられている。
【0083】
KPIの詳細表示部1104には、使用リソース案表示部1102に表示された使用リソース案について予測されたKPIの値が表示される。ここで表示されるKPIは、ステップS203で算出された計画上のKPIであってもよい。KPIとして種々の指標を使用することができる。
図11の例では、製品を生産ラインに投入してから完成するまでに経由するリソースの経路数、単位時間当たりの生産量、および生産コスト等が算出され、表示されている。
【0084】
作業時間更新精度の詳細表示部1105には、使用リソース案表示部1102に表示された使用リソース案について予測された作業時間更新精度に関する情報が表示される。具体的には、作業時間更新精度の詳細表示部1105には、表示された使用リソース案における各適用リソースの名称、各適用リソースについてステップS105で予測された実績数、各適用リソースについてステップS106で判定されたリソース種類、および、各適用リソースについてステップS107で予測された作業時間更新精度が表示されてもよい。
【0085】
作業時間更新精度とKPIの関係表示部1103には、使用リソース案表示部1102に表示された使用リソース案だけでなく、使用リソース案生成機能111が生成した全ての利用リソース案について算出された作業時間更新精度とKPIとの関係が表示される。
図11には、横軸を作業時間更新精度、縦軸をKPIとするグラフが表示される。グラフにプロットされた黒丸が各使用リソース案について算出された計画上のKPIであり、エラーバーが実KPIの上限値から下限値までの範囲を示している。
【0086】
一般に、適用リソースの数が少ないほど、単位時間当たりの生産量といったKPIは低くなる。しかし、適用リソースの数が少ないほど、各リソースで行われる作業の実績数は多くなるため、作業時間の更新精度は高くなる。このため、作業時間更新精度が高い使用リソース案であるほど、計画上のKPIの値が小さくなる傾向がある。実KPIの上限値も同様の傾向を持つ。一方、作業時間の更新精度が低くなるほど、KPIのばらつきは大きくなる傾向があるため、作業時間更新精度が高くなるにつれて、実KPIの下限値も高くなる場合がある。
【0087】
図11の例では、計画上のKPIおよび実KPIの上限値が作業時間更新精度の増加に対して単調に減少していくのに対して、実KPIの下限値はピークを持っている。このため、担当者301が例えばばらつきを考慮しないKPIの値を重視する場合には、計画上のKPIが最大となり、作業時間更新精度が最小となる使用リソース案を採用するのが妥当であるが、最悪の場合でも比較的良好なKPIが得られることを重視するのであれば、実KPIの下限値が最大となる使用リソース案を採用するのが妥当であると言える。
【0088】
なお、担当者が使用リソース案表示部1102に表示された各リソースの四角形をクリックまたはタップすることによって、各リソースを適用するか、または適用外とするかを指定してもよい。これによって使用リソース案が変更されると、それに合わせてKPIの詳細表示部1104および作業時間更新精度の詳細表示部1105の表示も変更される。また、作業時間更新精度とKPIの関係表示部1103に表示されているKPIのうち、使用リソース案表示部1102に表示されている利用リソース案に対応するものを、それ以外のものと区別して(例えばそれ以外の者とは異なる色彩又は異なる図形等によって)表示してもよい。
【0089】
以上により、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIの確率付き予測値(例えばKPIがばらつく範囲の予測値)を可視化し、トレードオフを人に判断させて適切な使用リソースを選択できるため、作業時間の更新精度と生産KPIの確率付き予測値を同時に考慮した使用リソースの設定が可能になる。
実施例2では、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIの確率付き予測値の算出結果に基づき、予め設定した評価指標に対して、当該評価指標を最大化する使用リソース案を探索する場合について説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2のシステムの各部は、実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
すなわち、使用リソース設定装置1201は、情報記憶部1202と、制御部1203と、結果表示部1204と、を備える。情報記憶部1202は、新製品の使用リソース情報記憶部400と、リソース種類情報記憶部500と、過去製品の作業実績情報記憶部600と、過去製品の作業時間情報記憶部700と、新製品の販売計画情報記憶部800とを備える。これらは、実施例1の使用リソース設定装置101の情報記憶部102が備えるものと同様であるため、説明を省略する。
(1)計画上のKPIが最大、を評価指標として選択した場合には、計画上のKPIと実際に生産を行った際のKPIとの乖離を考えず、計画上のKPIを最大化する使用リソース案を探索する。
(2)実際のKPIの上限が最大、を評価指標として選択した場合には、実施例1に記載した手段によって算出した生産KPIの確率付き予測値の最大値を最大化する使用リソース案、言い換えると、実際の生産が最も合理的に行われた場合にKPIが最大となる使用リソース案を探索する。
(3)実際のKPIの下限が最大、を評価指標として選択した場合には、実施例1に記載した手段によって算出した生産KPIの確率付き予測値の最小値を最大化する使用リソース案、言い換えると、実際の生産が最も非合理的に行われた場合にもKPIを最大化できる使用リソース案を探索する。
次に、使用リソース設定装置1201の使用リソース案探索機能1215は、実施例1に記載した手段によって算出した、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIの確率付き予測値を読み込む(ステップS1302)。
そして、使用リソース設定装置1201の使用リソース案探索機能1215は、選択された評価指標を最大化する使用リソース案を探索する(ステップS1303)。例えば、前記選択された評価指標が(3)実際のKPIの下限が最大、であった場合には、実施例1に記載した手段にて生成した全ての使用リソース案に対して全探索を行い、生産KPIの確率付き予測値の最小値が最も大きくなる使用リソース案を探索する。この探索の結果として得られた使用リソース案(上記の例では実際のKPIの下限が最大となる使用リソース案)を、以下の説明において、探索した使用リソース案と記載する。
使用リソース案の探索結果表示画面1501の、探索した使用リソース案の表示部1502は、探索した使用リソース案において適用されたリソース、および、適用されなかったリソースを表示する。探索した使用リソース案の表示部1502の表示方法は、実施例1の使用リソース案表示部1102におけるものと同様であってもよい。
使用リソース案の探索結果表示画面1501の、作業時間更新精度とKPIの関係表示部1503は、作業時間更新精度とKPIの関係における、探索した使用リソース案のポジションを表示する。作業時間更新精度とKPIの関係表示部1503の表示方法は、基本的には、実施例1の作業時間更新精度とKPIの関係表示部1103におけるものと同様であってもよい。ただし、作業時間更新精度とKPIの関係表示部1503では、探索した使用リソース案に対応するKPIが強調表示等によって明示されてもよい。
使用リソース案の探索結果表示画面1501の、KPIの詳細表示部1504は、探索した使用リソース案を適用した場合のKPIの詳細情報を表示する。KPIの詳細表示部1504の表示方法は、実施例1のKPIの詳細表示部1104におけるものと同様であってもよい。
使用リソース案の探索結果表示画面1501の、作業時間更新精度の詳細表示部1505は、探索した使用リソース案を適用した場合の作業時間更新精度の詳細情報を表示する。作業時間更新精度の詳細表示部1505の表示方法は、実施例1の作業時間更新精度の詳細表示部1105におけるものと同様であってもよい。
以上により、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIの確率付き予測値の算出結果に基づいた、評価指標を最大化する使用リソース案の探索、および、探索した使用リソース案の出力が可能になる。
これによって、使用リソース案に対する作業時間更新精度と評価指標(KPI)のばらつきを含む予測値を算出し、これらを考慮して使用リソースを設定することが可能になる。
(2)上記(1)において、記憶部は、使用リソース情報(例えば新製品の使用リソース情報記憶部400に含まれる情報)をさらに保持し、使用リソース情報は、製品を生産する工程ごとに、工程の作業に使用できる1以上のリソースを特定する情報を含み、使用リソース設定方法は、制御部が、使用リソース情報に基づいて、複数の使用リソース案を生成する第3手順(例えばステップS901)をさらに含み、第1手順及び第2手順は、第3手順において生成された複数の使用リソース案の各々について実行される。
(3)上記(1)において、制御部が、評価指標のばらつきを予測した結果を画面上に表示するための情報を出力する第4手順(例えばステップS904)をさらに含む。
これによって、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIがばらつく範囲の予測値を可視化し、トレードオフを人に判断させて適切な使用リソースを選択することが可能になる。
(4)上記(1)の第1手順において、制御部は、リソース種類情報と、作業時間情報と、に基づいて、リソースの種類ごとに、作業の実績数と作業の所要時間の算出精度との関係を学習し(例えばステップS102)、使用リソース案と、生産計画情報と、に基づいて、各工程に割り付けられたリソースにおいて将来行われる作業の実績数を予測し(例えばステップS105)、使用リソース案と、リソース種類情報と、に基づいて、各工程に割り付けられたリソースの種類を判定し(例えばステップS106)、学習したリソースの種類ごとの作業の実績数と作業の所要時間の算出精度との関係に、作業の実績数の予測結果およびリソースの種類の判定結果を適用することによって、使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測する(例えばステップS107)。
(5)上記(4)において、リソースの種類は、少なくとも、人手を介さずに作業を行う自動設備(例えばリソース種類503の値「自動設備」)と、それ以外(例えばリソース種類503の値「設備+人」または「人」)と、を含む。
(6)上記(1)において、第1手順及び第2手順は、複数の使用リソース案の各々について実行され、使用リソース設定方法は、制御部が、評価指標に基づく所定の選択基準に従って、複数の使用リソース案の一つを選択する第5手順(例えばステップS904における使用リソース案探索機能1215の処理)をさらに含む。
これによって、使用リソース案に対する作業時間更新精度とKPIがばらつく範囲の予測値に基づいた、評価指標を最大化する使用リソース案の探索および探索した使用リソース案の出力が可能になる。
(8)上記(1)において、複数の選択基準は、使用リソース案における作業の所要時間の算出精度に基づくばらつきを含まない評価指標(例えばステップS203で算出される計画上のKPI)が最も高くなること、評価指標のばらつきの範囲の上限値(例えばステップS204で算出される実KPIの上限値)が最も高くなること、及び、評価指標のばらつきの範囲の下限値(例えばステップS204で算出される実KPIの下限値)が最も高くなること、のいずれかである。
(9)上記(1)の第1手順において、制御部は、いずれかのリソースを指定する情報が入力された場合、指定されたリソースの作業への割り付けを含む使用リソース案における作業の所要時間の算出精度を予測する。
なお、上記した実施例は本発明を限定するものではなく、本発明には様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、例えば、必ずしも記載した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記録媒体に置くことができる。
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。