(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060763
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20240425BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20240425BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240425BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20240425BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/16 312E
G06F1/16 312J
G06F1/20 B
G09F9/00 304B
H01L23/46 B
H05K7/20 F
H05K7/20 R
H05K7/20 Q
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168252
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 敦史
(72)【発明者】
【氏名】尾上 祐介
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5G435
【Fターム(参考)】
5E322AA06
5E322AA11
5E322DB08
5E322DB12
5E322FA04
5F136BC07
5F136CC11
5G435AA12
5G435BB05
5G435EE12
5G435GG44
5G435HH20
5G435LL07
(57)【要約】
【課題】放熱体の放熱能力を一層向上させることのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は、第1筐体12内に設けられた発熱するCPU20aと、第1筐体12A内に設けられてCPU20aに熱接続されて放熱する板状のベーパーチャンバ56と、互いに離間した位置でベーパーチャンバ56から突出して延在する2本のヒートパイプ60,62と、を有する。2本のヒートパイプ60,62にはベーパーチャンバ56より薄いグラファイトシート58が熱接続されている。第1筐体12A内には3つのセルセル26a,26b,26cを有するバッテリ装置26が設けられており、ヒートパイプ62はセル26a,26bとセル26cの間に形成された溝部26eに延在している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体内に設けられた発熱する電気部品と、
前記筐体内に設けられて前記電気部品に熱接続されて放熱する板状の放熱体と、
互いに離間した位置で前記放熱体から突出して延在する複数のヒートパイプと、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプのうち少なくとも1つには前記放熱体より薄い熱伝導シートが熱接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体の縁部は熱伝導材料で構成され、
前記放熱体には、複数の前記ヒートパイプのうち1つは前記縁部に沿って設けられており、該縁部に熱接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体内には複数のセルからなるバッテリが設けられており、
複数の前記ヒートパイプのうち1つは複数の前記セルの間に形成された溝部に延在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプは前記放熱体より薄い熱伝導シートが熱接続されており、
前記熱伝導シートと前記放熱体とは、前記バッテリの電極部を露呈させるように隙間が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプは前記放熱体より薄い熱伝導シートが熱接続されており、
前記熱伝導シートと前記放熱体との間には、ステーを露呈させるように隙間が設けられており、
前記ステーには前記筐体を覆うカバー部材が固定される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプは、平面視で前記電気部品と重ならないように配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項2または5に記載の電子機器において、
前記熱伝導シートは、グラファイトシート又は金属シートである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
電子機器であって、
筐体内に設けられた発熱する電気部品と、
前記筐体内に設けられて前記電気部品に熱接続されて放熱する板状の放熱体と、
を有し、
前記筐体の縁部は熱伝導材料で構成され、
前記放熱体の縁は前記縁部に熱接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器において、
前記放熱体には、前記縁部に沿ってヒートパイプが設けられており、該ヒートパイプが前記縁部に熱接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に発熱する電気部品を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器はCPUなどの発熱体を備えており、その発熱の程度によっては放熱手段を設ける必要がある。放熱手段としてはファンが挙げられるが、ノート型PCなどの薄型情報機器ではファンの厚みにも制限があって十分な放熱作用が得られないため、ベーパーチャンバのような放熱板が用いられる。ベーパーチャンバは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないPCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、非使用時には小型化できることが望まれている。そこで、例えば有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体間を折り畳み可能に構成した電子機器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-078601号公報
【特許文献2】特開2021-015522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の電子機器では、基本的に一方の筐体にマザーボードが設けられ他方の筐体にメインバッテリが設けられている。ベーパーチャンバはマザーボードを有する筐体内に設けられてCPUの熱を放熱させる。ベーパーチャンバの面積はできるだけ広いことが望ましいが、マザーボード以外の要素、例えばサブバッテリなどのレイアウトの関係上制限を受けることがある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ベーパーチャンバなどの放熱体の放熱能力を一層向上させることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電子機器は、筐体内に設けられた発熱する電気部品と、前記筐体内に設けられて前記電気部品に熱接続されて放熱する板状の放熱体と、互いに離間した位置で前記放熱体から突出して延在する複数のヒートパイプと、を有する。
【0008】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体内に設けられた発熱する電気部品と、前記筐体内に設けられて前記電気部品に熱接続されて放熱する板状の放熱体と、を有し、前記筐体の縁部は熱伝導材料で構成され、前記放熱体の縁は前記縁部に熱接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、放熱体の放熱能力を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、第1筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、180度姿勢時のヒンジ装置およびその周辺の断面側面図である。
【
図7】
図7は、0度姿勢時のヒンジ装置およびその周辺の断面側面図である。
【
図8】
図8は、サーマルモジュールの背面を示す平面図である。
【
図9】
図9は、サーマルモジュールの表面を示す平面図である。
【
図10】
図10は、フレーム部材とサーマルモジュールとが熱接続されている部分の模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
図3では、カバー部材18A、18Bおよびサーマルモジュール30を取り外した状態としている。
図4は、電子機器10の分解斜視図である。
図5は、第1筐体12Aの内部構造を模式的に示す平面図である。
図5では、カバー部材18Aは取り外し、サーマルモジュール30は取り付けた状態としている。
図6は、180度姿勢時のヒンジ装置14およびその周辺の断面側面図である。
図7は、0度姿勢時のヒンジ装置14およびその周辺の断面側面図である。
【0013】
図1~
図4に示すように、電子機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。本実施形態では、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCとして用いられる電子機器10を例示する。電子機器10は、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0014】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。第1筐体12Aは、フレーム部材17Aと、カバー部材18Aとを備える。フレーム部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する第1端部12Aa以外の3辺に立壁を形成した矩形の枠状部材である。カバー部材18Aは、フレーム部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(
図6も参照)。同様に、第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する第2端部12Ba以外の3辺に立壁を形成したフレーム部材17Bと、フレーム部材17Bの裏面開口を閉じるカバー部材18Bとを備える。フレーム部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0015】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。つまり、部材17A,17B,18A,18Bは熱伝導材料であり適度な伝熱性を有する。
【0016】
ヒンジ装置14は、筐体12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す背表紙としても機能する。
【0017】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する端部12Aa,12Baに沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。Y方向については一方(
図3の下側)をY1側とし、その反対側をY2側とする。Z方向に関しては、ディスプレイ16が設けられる側を表面とし、カバー部材18A,18Bが設けられる側を背面とする。また、第1筐体12Aとその構成要素に限りX方向について端部12Aaの方向をX1側とし、その反対側をX2側とする。
【0018】
さらに、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(
図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(
図2、
図3参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0019】
図3に示すように、第1筐体12Aは、マザーボード20、通信モジュール22、SSD(Solid State Drive)24、バッテリ装置26を搭載している。Y方向に関して
図3における中央よりややY2側にはX方向に延在するステー28が設けられている。ステー28は第1筐体12Aの一部であり、または該第1筐体12Aに固定された部品である。また、第1筐体12Aにはサーマルモジュール30(
図4参照)が設けられている。サーマルモジュール30については後述する。
【0020】
ステー28はカバー部材18Aの固定に用いられる。マザーボード20、通信モジュール22、SSD24はステー28よりY1側に搭載されている。マザーボード20の一部およびSSD24はステー28に隣接している。通信モジュール22はマザーボード20よりY1側に搭載されている。バッテリ装置26はステー28よりY2側に搭載されている。バッテリ装置26はステー28に隣接している。
【0021】
マザーボード20は、例えばCPU(Central Processing Unit)20a等の電子部品が実装されている。CPU20aは、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。CPU20aは、電子機器10に搭載された電子部品の中で最大級の発熱体である。通信モジュール22は、例えば第2筐体12Bに搭載されたアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行う。通信モジュール22は、例えばワイヤレスWANや第5世代移動通信システムに対応する。SSD24は、半導体メモリを用いた記憶装置である。第1筐体12Aは、マザーボード20以外にも各種電子部品が搭載される。通信モジュール22及びSSD24は、CPU20aに次ぐ発熱量の発熱体である。
【0022】
バッテリ装置26は電子機器10のサブ電源となる二次電池である。バッテリ装置26は3つのセル26a,26b,26cと、制御部26dとを有している。セル26a,26bはX2側に設けられ、セル26cおよび制御部26dはX1側に設けられている。セル26aおよび制御部26dはステー28に隣接している。セル26aとセル26bとはY方向に並列している。セル26cと制御部26dとはY方向に並列している。セル26a,26bとセル26cおよび制御部26dとの間には溝部26eが形成されている。セル26a,26b,26cは第1筐体12A内でZ方向に十分厚く形成されており大容量化が図られているが、カバー部材18Aとの隙間は狭くなっている。ただし、溝部26eについてはカバー部材18Aとの間に適度な間隔がある。制御部26dには電力の入出力を行う電極部26daが設けられている。
【0023】
第2筐体12Bは、バッテリ装置32、ディスプレイボード34、及びサブカード36を搭載している。バッテリ装置32は、電子機器10のメイン電源となる二次電池であり、上記のバッテリ装置26より大型となっており第2筐体12B内の大部分を占める。ディスプレイボード34は、ディスプレイ16の制御基板である。サブカード36は、例えば電源ボタンやUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。第2筐体12Bは、バッテリ装置32等以外にも各種電子部品が搭載される。
【0024】
バッテリ装置32、ディスプレイボード34、及びサブカード36は、それぞれ端部12Aa,12Baを跨ぐフレキシブル基板38,40、42を用いてマザーボード20と接続されている。以下、フレキシブル基板38,40、42については特に区別する必要がない場合には、代表的にフレキシブル基板38とも呼ぶ。
【0025】
バッテリ装置32、ディスプレイボード34、及びサブカード36の発熱量は、CPU20a等に比べて小さい。このため、電子機器10は、第1筐体12A内での発熱量が第2筐体12B内の発熱量に比べて大きい。そこで、電子機器10は、左右の筐体12A,12B間での熱移動を促進し、各筐体12A,12Bの熱を均等化するための構成として、熱伝導部材78A,78B(
図4参照)、およびグラファイトシート86,88,90(
図4参照)を備えている。グラファイトシート86,88,90は、順にフレキシブル基板38,40、42の一部に積層され貼り合わされている。これらの熱伝導部材78A,78Bおよびグラファイトシート86,88,90については後述する。
【0026】
図1及び
図7に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、有機ELで形成されたペーパー状のフレキシブルディスプレイである。0度姿勢時、ディスプレイ16は、
図2に示す第1筐体12A側の領域R1と第2筐体12B側の領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図2及び
図6に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0027】
ディスプレイ16は、領域R1が第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域R2が第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、
図6に示すように、領域R1の裏面16aが第1プレート44Aを介して第1筐体12Aと固定され、領域R2の裏面16aが第2プレート44Bを介して第2筐体12Bと固定される。
【0028】
図6に示すように、プレート44A,44Bは、ヒンジ装置14を間に挟むように左右に配置され、それぞれの表面44Aa,44Baでディスプレイ16を支持する。ディスプレイ16の裏面16aは、領域R1が第1プレート44Aの表面44Aaに粘着固定され、領域R2が第2プレート44Bの表面44Baに粘着固定される。プレート44A,44Bは、例えば炭素繊維にエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂板と、この炭素繊維強化樹脂板の裏面の外周を囲むマグネシウム合金製の金属フレームとを有する構成である。
【0029】
ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体12A,12Bに対して相対移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R3の裏面16aは、ヒンジ装置14で支持される(
図6参照)。0度姿勢時、折曲領域R3は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がヒンジ装置14で支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する(
図7参照)。
【0030】
図6、
図7に示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジ本体46と、第1サポートプレート48Aと、第2サポートプレート48Bとを有する。
【0031】
ヒンジ本体46は、筐体12A,12Bの端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ、端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジ本体46は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジ本体46には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸が支持されている。
【0032】
図1及び
図6に示すように、ヒンジ本体46の外面には、背表紙部品49が取り付けられている。背表紙部品49は、ヒンジ本体46の外面形状に合わせた略U字状のプレートである。背表紙部品49は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の熱伝導材料で形成されている。背表紙部品49は、外面品質を高めるための化粧カバーである。フレキシブル基板38,40,42は、端部12Aa,12Baを跨ぐ位置では、ヒンジ本体46と背表紙部品49との間を通過している。
【0033】
図6に示す180度姿勢時、ヒンジ本体46は、筐体12A,12B内に収納され、互いに近接した端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐ。
図7に示す0度姿勢時、ヒンジ本体46は、大きく離間した端部12Aa,12Ba間に形成される隙間を塞ぐように配置される。この際、背表紙部品49が最外面に配置されることで、折り畳まれた電子機器10の外観意匠の低下を防止している(
図1参照)。
【0034】
すなわち背表紙部品49は、180度以外(例えば0度姿勢又は90度姿勢)の角度姿勢において、筐体12A,12B間に形成される隙間を覆う(
図1及び
図7参照)。これにより背表紙部品49は、この隙間から筐体12A,12Bの内部部品が外観に露呈することを防止する。背表紙部品49は、180度姿勢時には互いに近接した端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐように配置され、筐体12A,12B内に収納される(
図6参照)。
【0035】
例えば、ヒンジ本体46が
図3に示すようにY方向に延在した構成ではなく、1又は複数の小型のピース部品等で構成されている場合、背表紙部品49は、ヒンジ装置14とは別に各筐体12A,12Bに支持されてもよい。つまり背表紙部品49は、必ずしもヒンジ装置14の構成要素でなくてもよく、要は180度以外の角度姿勢で端部12Aa,12Ba間の隙間を覆うことができれば、その構成や取付態様は限定されない。但し、本実施形態では、背表紙部品49がヒンジ装置14の構成部品であることで、背表紙部品49を筐体12A,12Bに取り付けるための個別の構成や機構が不要であり、構成の簡素化が図られている。
【0036】
次に、サポートプレート48A,48Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート48A,48Bは、筐体12A,12Bの表側に設けられ、端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。
【0037】
第1サポートプレート48Aは、第1プレート44Aとヒンジ本体46との間に配置される。第1サポートプレート48Aは、第1プレート44A側の縁部が所定のブラケットに対して回転軸を介して相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート48Aは、ヒンジ本体46側の縁部がヒンジ本体46に対して相対移動可能である。第2サポートプレート48Bの構成及び取付構造等は、第1サポートプレート48Aと左右対称であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
サポートプレート48A,48Bは、筐体12A,12Bの回動動作に応じて揺動する。180度姿勢時、サポートプレート48A,48Bは、その表面でディスプレイ16の折曲領域R3の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート48A,48Bは、ディスプレイ16との間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力でディスプレイ16に接触する(
図7参照)。サポートプレート48A,48Bは、180度以外の角度姿勢でもディスプレイ16の折曲領域R3を支持し、その形状を矯正する構成としてもよい。このように、サポートプレート48A,48Bは、180度姿勢時にはディスプレイ16の折曲領域R3を平面で安定して支持する一方、折曲領域R3の折曲動作を阻害することはない。
【0039】
フレーム部材17Aにおける端部12Aaに沿う連結縁部(第1縁部)50Aについて説明する。連結縁部50Aは、180度姿勢(
図6参照)において、フレーム部材17Bにおける端部12Baに沿う連結縁部50BとX方向についてほぼ対称で隣接する。また、連結縁部50Aと連結縁部50Bとは、0度姿勢(
図7参照)においてZ方向についてほぼ対称で対向する。連結縁部50Aと連結縁部50Bとは略対称形状であることから、連結縁部50Aのみ説明する。
【0040】
連結縁部50Aはフレーム部材17Aの一部であり、上記の通り適度な伝熱性を有している。連結縁部50Aは、背面形成部50Aa、中段部50Ab、低段部50Acを有する。背面形成部50Aaは、カバー部材18Aの端部と第1筐体12Aの端部12Aaまでの領域において該第1筐体12Aの背面を形成する部分である。背面形成部50AaにおけるX1側の内面には低い段差部50Adが形成されている。
【0041】
中段部50Abは背面形成部50AaからX2側に延在している部分である。中段部50Abにはカバー部材18Aが粘着テープ52によって固定される。背面形成部50Aaと中段部50Abとの間には段差があり、背面形成部50Aaとカバー部材18Aとはほぼ同一面を形成するようになっている。
【0042】
低段部50Acは中段部50Abから表面側にややシフトしてさらにX2側に延在している部分である。低段部50Acには後述するようにサーマルモジュール30の一部が固定される。
図6における中段部50Abの表面側、かつ低段部50AcのX1側には空間54が形成される。空間54にはフレキシブル基板38の一部が逆S字を描くように収納されている。また、第2筐体12Bにおける対称位置にも同様の空間があり、フレキシブル基板38の一部がS字を描くように収納されている。これにより電子機器10が0度姿勢から180度姿勢まで変形するのに対応してフレキシブル基板38が無理なく追従するようになっている。
【0043】
次に、サーマルモジュール30について説明する。
図8は、サーマルモジュール30の背面を示す平面図である。
図9は、サーマルモジュール30の表面を示す平面図である。
【0044】
図8、
図9に示すように、サーマルモジュール30は、ベーパーチャンバ(放熱体)56、グラファイトシート(熱伝導シート)58および2本のヒートパイプ60,62を有する。サーマルモジュール30は、発熱する電気部品であるCPU20a、通信モジュール22、SSD24から受熱して広い範囲に拡散して放熱する放熱体である。
【0045】
ベーパーチャンバ56は、板状の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ56は、2枚の薄い金属プレートの間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。金属プレートは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間は、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウィックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。ベーパーチャンバ56は薄型であるが、グラファイトシート58よりは厚い。
【0046】
ベーパーチャンバ56は、第1筐体12A内でマザーボード20、通信モジュール22、SSD24を含むステー28よりY1側の領域の大部分を覆っている(
図5参照)。ベーパーチャンバ56は略矩形であるが、X1側でかつY2側の端には切欠部56aが形成され、Y2側の略中央には切欠部56bが形成され、X1側でかつY1側の端には切欠部56cが形成され、さらにレイアウト上でいくつかの突起部が形成されている。切欠部56aはX方向にやや幅広の台形である。切欠部56bはX方向の幅の狭い矩形である。切欠部56a,56bはベーパーチャンバ56とグラファイトシート58との間の隙間64に開口している。ベーパーチャンバ56の表面(
図9参照)には、3点で固定されて僅かに変位可能な弾性プレート56dおよび3つの受熱板56e,56f,56gが設けられている。
【0047】
受熱板56eは弾性プレート56dに固定されており、該弾性プレート56dの作用によりCPU20aに対して弾性的に押し付けられて確実に当接する。受熱板56eはベーパーチャンバ56の略中央にある。受熱板56fはベーパーチャンバ56におけるY1側の端部近傍に固定されており、通信モジュール22に当接する。受熱板56gはベーパーチャンバ56におけるY2側でかつX2側の端部近傍に固定されており、SSD24に当接する。受熱板56e~56gには伝熱グリスを塗ってもよい。受熱板56e~56gは省略してもよい。
【0048】
図9における符号56hは補助的に貼られたグラファイトシートである。このグラファイトシート56hはグラファイトシート58と同材質である。ベーパーチャンバ56の背面(
図8参照)には複数の薄いスポンジ56iが分散して設けられている。ベーパーチャンバ56におけるX2側でかつY2側の端部近傍にはネジ固定部66が設けられている。サーマルモジュール30はこれ以外にも複数のネジ固定部66を備えており、該ネジ固定部66を用いて第1筐体12Aにネジ固定される。サーマルモジュール30は第1筐体12Aに対して着脱可能となっている。
【0049】
グラファイトシート58は、炭素の同素体であるグラファイト(黒鉛)をシート状に加工したものであり、高い熱伝導率を有する。グラファイトシート58は、例えば10μm~1mm程度の厚みを有し、薄く柔軟なシートである。グラファイトシート58は、例えばアルミニウム箔や銅箔等の金属シートで置き換えてもよい。後述するグラファイトシート80A,80B,86,88,90についても同様である。
【0050】
グラファイトシート58は、第1筐体12A内のステー28よりY2側の領域でバッテリ装置26の大部分を覆っている(
図5参照)。グラファイトシート58は隙間64を介してベーパーチャンバ56とY方向に並列配置されている。グラファイトシート58とベーパーチャンバ56はX方向の幅がほぼ等しい。グラファイトシート58の面積はベーパーチャンバ56の略半分程度となっている。グラファイトシート58は略矩形であるが、X1側でかつY2側の端には切欠部58aが形成され、X2側でかつY1側の端には突起部58bが形成されている。突起部58bはベーパーチャンバ56と固定されている。
【0051】
ヒートパイプ60は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ60は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成したものであり、金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体が封入されている。金属パイプは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間は、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウィックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。ヒートパイプ62は、長さや経路が異なる以外、基本的な構成は上記したヒートパイプ60と同一である。
【0052】
ヒートパイプ60は、サーマルモジュール30におけるX1側端部で隙間64を介してベーパーチャンバ56およびグラファイトシート58の全長に亘りY方向に沿って設けられている。ヒートパイプ60は長く、第1筐体12AのY方向寸法よりやや短い程度である。ヒートパイプ60はベーパーチャンバ56の表面に対して溶接などにより固定され、グラファイトシート58の表面に対して伝熱性の粘着テープなどにより固定されており、それぞれ熱接続されている。
【0053】
ヒートパイプ60は、Y1側でベーパーチャンバ56から切欠部56cに突出し、その先端にはネジ固定部66が設けられている。ヒートパイプ60は、Y2側でグラファイトシート58から切欠部58aに突出し、その先端にはネジ固定部66が設けられている。ヒートパイプ60における隙間64の部分で背面側(
図8参照)には薄いスペーサ68が設けられている。
【0054】
ヒートパイプ62は、サーマルモジュール30におけるX方向の略中央で隙間64を介してベーパーチャンバ56およびグラファイトシート58に亘りY方向に沿って設けられている。つまり、ヒートパイプ60とヒートパイプ62とは平行でかつ適度に離間している。ヒートパイプ62は、ヒートパイプ60の半分程度の長さである。ヒートパイプ62はベーパーチャンバ56の表面に対して溶接などにより固定され、グラファイトシート58の表面に対して伝熱性の粘着テープなどにより固定されており、それぞれ熱接続されている。
【0055】
ヒートパイプ62は、Y1側でベーパーチャンバ56の切欠部56bに嵌り込んでおり、さらにその先端側の比較的短い部分がベーパーチャンバ56と固定されている。ヒートパイプ62とベーパーチャンバ56とは切欠部56bを横断する金具70により補助的に固定されている。ヒートパイプ62のY1方向の延長上には弾性プレート56dおよび受熱板56eがあるが、これらと重なる位置までは延在していない。つまり、ヒートパイプ62は平面視でCPU20aと重ならないように配置されており、該CPU20aの箇所で第1筐体12AのZ方向の厚みを薄くすることができる。ヒートパイプ62はY2側でグラファイトシート58から突出し、その先端にはネジ固定部66が設けられている。
【0056】
サーマルモジュール30では、ベーパーチャンバ56から突出して延在する2本のヒートパイプ60,62を有することから、それぞれ独立的にベーパーチャンバ56から熱輸送をすることができ、少なくともベーパーチャンバ56から突出する部分だけは面積が増加して放熱能力を一層向上させることができる。また、ヒートパイプ60,62は互いに離間した位置に設けられていることからベーパーチャンバ56における熱の偏りを一層抑制し、該ベーパーチャンバ56の放熱性能を向上させることができる。
【0057】
さらに、ベーパーチャンバ56の縁は低段部50Acに熱接続されていることから、連結縁部50Aも放熱作用を奏することになり放熱能力を一層向上させることができる。特に、ベーパーチャンバ56の縁ではヒートパイプ56を介して低段部50Acに熱接続されることから、Y方向に関して熱の偏りがなく、一層効果的に熱伝達がなされる。
【0058】
なお、本実施の形態のサーマルモジュール30では2本のヒートパイプ60,62を有しているが、設計条件によっては互いに離間させた3本以上を設けてもよい。設計条件によりヒートパイプ60とイートパイプ62とは非平行であってもよい。
【0059】
また、2本のヒートパイプ60,62にはベーパーチャンバ56よりグラファイトシート58が熱接続されていることから、ベーパーチャンバ56からグラファイトシート58に効果的に熱輸送をすることができ放熱効果が高まる。グラファイトシート58はベーパーチャンバ56より薄いことからバッテリ装置26とカバー部材18Aとの狭い空間に配置可能である。2本のヒートパイプ60,62はグラファイトシート58に対してY方向の全長に亘って固定されていることから、グラファイトシート58は少なくともこの範囲で弛み、折れ、皺などが生じることなく第1筐体12Aに組み付けやすい。また、グラファイトシート58は突起部56bでベーパーチャンバ56に固定されていることから、X2側端部についても弛み、折れ、皺などが生じにくい。グラファイトシート58には2本のヒートパイプ60,62が接続されていると好適であるが、複数のうち少なくとも1本が接続されていれば相応の熱輸送効果が得られる。
【0060】
ベーパーチャンバ56とグラファイトシート58との隙間64にはステー28が露呈され粘着テープなどによってカバー部材18Aと固定される。隙間64におけるベーパーチャンバ56の切欠部56aの部分は、バッテリ装置26の電極部26daが露呈される。したがって、リペアやメンテナンス時において第1筐体12Aからサーマルモジュール30を取り外す際、取り外しに先だって電極部26daを操作してバッテリ装置26とその他の構成要素との間を電気的に遮断し、工具などによる短絡を防止することができる。
【0061】
ヒートパイプ62は、セル26a,26bとセル26cおよび制御部26dとの間の溝部26eに延在するように設けられている。溝部26eはカバー部材18Aとの間に適度な間隔があるためヒートパイプ62はカバー部材18Aと干渉することがない。また、セル26a~26cの箇所についてはカバー部材18Aとの隙間がグラファイトシート58の厚みより大きければ足り、充電容量の向上が図られる。ヒートパイプ62は溝部26eに嵌められることにより正確に位置決めされ、サーマルモジュール30の組み付けが容易となる。
【0062】
図10は、フレーム部材17Aとサーマルモジュール30とが熱接続されている部分の模式断面側面図である。
図5、
図10に示すように、ヒートパイプ60は、連結縁部50Aに沿って設けられており、該連結縁部50Aの低段部50Acに熱接続されている。具体的には、ヒートパイプ60は全長に亘って表面が伝熱性ラバー72およびグラファイトシート73(
図4参照)を介して低段部50Acの背面に当接している。グラファイトシート73はヒートパイプ60に対応した細長い形状である。ヒートパイプ60、伝熱性ラバー72およびグラファイトシート73の各間は伝熱性テープなどによって固定してもよい。条件により伝熱性ラバー72およびグラファイトシート73は省略してもよい。
【0063】
ヒートパイプ60は両端がネジ固定部66で固定されるとともに、略中央部にはスペーサ68が設けられていることから低段部50Acに対して浮くことなく確実に当接する。一般的なヒートパイプは一端から他端へと熱輸送するのに用いられるが、ヒートパイプ60は全長に亘ってベーパーチャンバ56およびグラファイトシート58からフレーム部材17Aに熱伝達する。なお、本実施例ではヒートパイプ60が第1筐体12Aにおけるフレーム部材18Aの4つの縁のうち連結縁部50Aにのみ当接しているが、ヒートパイプ60をL字状またはコ字状として2つまたは3つの縁に当接させてもよい。
【0064】
また、基本的にサーマルモジュール30とカバー部材18Aとの間は、上記のスポンジ56iなどによって隙間74が形成されており、両者間の熱伝達はない。仮にカバー部材18Aはサーマルモジュール30と熱接続されるとその部分がホットスポットとなりユーザに違和感を与えてしまうためである。
【0065】
図4、
図6に示すように、電子機器10は、第1筐体12A内に設けられた第1熱伝導部材78Aと、第2筐体12B内に設けられた第2熱伝導部材78Bとを有する。第1熱伝導部材78Aは、第1グラファイトシート80Aと、第1クッション部材82Aとを有する。第2熱伝導部材78Bは、第2グラファイトシート80Bと、第2クッション部材82Bとを有する。熱伝導部材78A,78Bは、略左右対称に配置されている。グラファイトシート80A,80Bは、銅シート又はアルミニウムシート等の熱伝導材料で形成されたシート状部材で置き換えてもよい。
【0066】
図4に示すように、グラファイトシート80A,80Bは、Y方向に延在する第1シート80Aa,80Baと、該第1シート80Aa,80Baと直交するようにX方向に突出する3つの第2シート80Ab,80Bbとを有する。第1シート80Aaは端部12Aaに沿い、第1シート80Baは端部12Baに沿っている。第2シート80Abと第2シート80Bbとは反対方向に突出している。
【0067】
クッション部材82A,82Bは、ゴムやスポンジ等のように、柔軟性及びある程度の反発力を有する材料で形成される。本実施形態のクッション部材82A,82Bは、スポンジである。クッション部材82A,82Bは、グラファイトシート80A,80BよりもZ方向の厚みが大きく、例えば1~2mm程度である。クッション部材82A、82Bは、第1シート80Aa,80Baと第2シート80Ab、80Bbの3つの交差点にそれぞれ配置されている。これにより熱伝導部材78A、78Bは、クッション部材82A、82Bが配置された各位置にグラファイトシート80A,80Bが盛り上がった土手状の膨出部84が形成されている。
【0068】
第1グラファイトシート80Aは連結縁部50Aの背面形成部50Aaおよび中段部50Abの表面側に貼り付けられている。第1クッション部材82Aおよびこれに対応した膨出部84は段差部50Adに配置されている。第2グラファイトシート80Bおよび第2クッション部材82Bは連結縁部50Bにおいて、第1グラファイトシート80Aおよび第1クッション部材82Aと略対称となる位置に設けられている。
【0069】
図6に示すように、クッション部材82A,82Bは、180姿勢度時にグラファイトシート80A、80Bを背表紙部品49に対して押し付ける。従って、膨出部84がある部分では、熱伝導部材78A,78Bが背表紙部品49に接触する。これにより、第1フレーム部材17Aは第1グラファイトシート80A,背表紙部品49および第2グラファイトシート80Bを介して第2フレーム部材17Bと熱接続されることになり、第1筐体12Aと第2筐体12Bとの間で熱輸送がなされる。膨出部84は背表紙部品49の肩部に当接し、電子機器10が0度から180度に亘って変形する際に背表紙部品49に対する摺動距離は短く、該背表紙部品49の表面を変質させることがない。
図7に示すように、グラファイトシート80A,80Bは、0度姿勢時には背表紙部品49から離間しユーザから視認されないようになっている。
【0070】
次に、グラファイトシート(熱伝導シート)86,88,90について説明する。上記のようにグラファイトシート86,88,90は、順にフレキシブル基板38,40,42における少なくとも第1筐体12Aから第2筐体12Bに亘る箇所において積層され、伝熱性の粘着テープなどによって貼り付けられている。以下、代表的に互いに貼り付けられたグラファイトシート86とフレキシブル基板38とについて説明する。グラファイトシート86は例えば上記のグラファイトシート58と同素材である。グラファイトシート86は帯状であって、フレキシブル基板38とX方向の幅が等しい。
【0071】
図6に示すように、グラファイトシート86とフレキシブル基板38と第1筐体12Aから第2筐体12Bに亘る箇所において積層されていることから同じ配策経路となっている。したがって、第1筐体12Aの空間54および第2筐体12Bにおける対応する空間でS字および逆S字を描くように収納されている。また、グラファイトシート86とフレキシブル基板38とは、背表紙部品49とヒンジ装置14との間の経路に配置されていることから、背面側は背表紙部品49で覆われて視認されない。また、表面側はディスプレイ16で覆われる。
【0072】
グラファイトシート86およびフレキシブル基板38は、第1筐体12A内の空間54から連結縁部50Aの低段部50Acとディスプレイ16との隙間をX2方向へ延在する。この隙間を抜けたフレキシブル基板38はマザーボード20に接続される。一方、グラファイトシート86は、U字状の折返し部86aを形成し、一端部86bが低段部50Acの背面に至りヒートパイプ60によって伝熱性ラバー72を介して低段部50Acとの間で積層・挟持されて熱接続される。つまり、グラファイトシート86の一端部86bは、サーマルモジュール30および連結縁部50Aに対して熱接続されている。なお、この実施例ではグラファイトシート86の一端部86bは、ヒートパイプ60と低段部50Acとにより挟持されることにより熱接続されているが、熱接続の状態が保たれればこの三者の積層順は問われず、例えばグラファイトシート86の経路を変更するなどして積層順を変えてもよい。
【0073】
また、グラファイトシート86はフレキシブル基板38とともに第2筐体12B内において、第1筐体12A内と略対称に配置されており、グラファイトシート86の他端部86cはフレーム部材17Bやその一部である連結縁部50Bなどに対して熱接続されている。したがって、CPU20aなどの発熱体の熱はサーマルモジュール30からその端部であるヒートパイプ60に伝わり、さらに該ヒートパイプ60と低段部50Acとによって積層・挟持された一端部86bに伝えられてグラファイトシート86により第1筐体12Aから第2筐体12Bへと熱輸送がなされる。
【0074】
また、上記のとおり、ヒートパイプ60の熱は低段部50Acから連結縁部50A、第1熱伝導部材78A、背表紙部品49、第2熱伝導部材78B、および連結縁部50Bへと熱輸送される。これらの作用により、電子機器10では第1筐体12Aと第2筐体12Bとの間の温度バランスを調整することができる。第1筐体12Aでは温度上昇が適度に抑制されるためファンなどの他の冷却手段を省略することができる。ファンなどの機械的動作要素を省略することでコスト低減、騒音低減および薄型化を図ることができる。
【0075】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
17A,17B フレーム部材
18A,18B カバー部材
20 マザーボード
20a CPU(電気部品)
26,32 バッテリ装置
26a,26b,26c セル
26da 電極部
26e 溝部
28 ステー
30 サーマルモジュール
38,40,42 フレキシブル基板
49 背表紙部品
50A 連結縁部(縁部)
50Aa 背面形成部
50Ab 中段部
50Ac 低段部
56 ベーパーチャンバ(放熱体)
58 グラファイトシート(熱伝導シート)
60,62 ヒートパイプ
64 隙間
86,88,90 グラファイトシート
86a 折返し部
86b 一端部
【手続補正書】
【提出日】2024-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体内に設けられた発熱する電気部品と、
前記筐体内に設けられて前記電気部品の平面視全面に熱接続され、平面視で前記電気部品より面積が大きい板状の放熱体と、
互いに離間した位置で前記放熱体から突出して延在する複数のヒートパイプと、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプのうち少なくとも2つは前記放熱体から同方向に突出して、前記放熱体より薄い共通の熱伝導シートにそれぞれ接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体の縁部は熱伝導材料で構成され、
複数の前記ヒートパイプのうち1つは前記筐体の前記縁部および前記放熱体の縁に沿って設けられており、両者を熱接続している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
前記筐体内には複数のセルからなるバッテリが設けられており、
複数の前記ヒートパイプのうち1つは複数の前記セルの間に形成された溝部に延在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプは前記放熱体より薄い熱伝導シートが熱接続されており、
前記熱伝導シートと前記放熱体とは、前記バッテリの電極部を露呈させるように隙間が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプは前記放熱体より薄い熱伝導シートが熱接続されており、
前記熱伝導シートと前記放熱体との間には、ステーを露呈させるように隙間が設けられており、
前記ステーには前記筐体を覆うカバー部材が固定される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器において、
複数の前記ヒートパイプは、平面視で前記電気部品と重ならないように配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項2または5に記載の電子機器において、
前記熱伝導シートは、グラファイトシート又は金属シートである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
電子機器であって、
筐体内に設けられた発熱する電気部品と、
前記筐体内に設けられて前記電気部品の平面視全面に熱接続され、平面視で前記電気部品より面積が大きい板状の放熱体と、
前記放熱体の縁に沿って設けられた直線状のヒートパイプと、
を有し、
前記筐体の縁部は熱伝導材料で構成され、
前記ヒートパイプは前記筐体の前記縁部と前記放熱体の縁と熱接続している
ことを特徴とする電子機器。