(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060766
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168257
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 宏之
(72)【発明者】
【氏名】畠中 光幸
(57)【要約】
【課題】電動モータ、油圧ポンプ、および作動油タンクを冷却する場合の冷却効率も考慮しつつ、コンパクトなレイアウトで、かつ、バッテリユニットの大容量化も容易となる電動式作業機械を提供する。
【解決手段】電動式作業機械としての油圧ショベルは、電動モータと、電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、作動油を収容する作動油タンクと、電動モータによって駆動され、作動油タンクと接続される油圧ポンプと、を備える。電動モータ、油圧ポンプ、および作動油タンクは、機体フレーム上でバッテリユニットの下方に配置されるとともに、機体フレームの横方向に並べて配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、
作動油を収容する作動油タンクと、
前記電動モータによって駆動され、前記作動油タンクと接続される油圧ポンプと、を備え、
前記電動モータ、前記油圧ポンプ、および前記作動油タンクは、機体フレーム上で前記バッテリユニットの下方に配置されるとともに、前記機体フレームの横方向に並べて配置される、電動式作業機械。
【請求項2】
前記電動モータおよび前記作動油タンクは、前記機体フレーム上で、前記横方向の一方側および他方側にそれぞれ配置される、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
前記油圧ポンプは、前記電動モータと前記作動油タンクとの間に配置される、請求項2に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
前記バッテリユニットを収容する機関室と、
前記機関室内に風の流れを作るファンと、をさらに備え、
前記ファンは、前記バッテリユニットと前記機関室の後壁との間に配置される、請求項2に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
前記ファンは、前記機関室内で、前記横方向の前記他方側に配置される、請求項4に記載の電動式作業機械。
【請求項6】
前記機関室の前記後壁において、前記ファンと向かい合う位置に第1開口部が設けられ、
前記機関室の前記後壁と連結され、前記後壁に対して前記横方向の一方側に位置する側壁に、第2開口部が設けられる、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項7】
前記ファンは、前記機関室内で、上下方向に並べて配置される第1ファンおよび第2ファンを含む、請求項6に記載の電動式作業機械。
【請求項8】
前記ファンと前記第1開口部との間に、前記作動油を冷却するオイルクーラが配置される、請求項7に記載の電動式作業機械。
【請求項9】
前記オイルクーラは、最も上部に位置する前記第1ファンと、前記第1開口部との間に配置される、請求項8に記載の電動式作業機械。
【請求項10】
前記ファンの側方に電装機器が配置される、請求項5から9のいずれかに記載の電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータおよび油圧ポンプを備えた電動式作業機械が提案されている。例えば特許文献1では、電動モータに電力を供給するバッテリユニットの下方に、電動モータおよび油圧ポンプを配置した電動式作業機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ポンプは電動モータによって駆動され、油圧アクチュエータに作動油を圧送する。上記作動油は、作動油タンクに収容される。特許文献1の構成では、作動油タンクがバッテリユニットの側方に配置されている。このため、小型の電動式作業機械に好適なレイアウト、つまり、作動油タンクおよびバッテリユニットも含めてコンパクトなレイアウトを実現する点で改善の余地がある。特に、小型の電動式作業機械でバッテリユニットの大容量化を図るべく、バッテリユニットを大型化する場合でも、特許文献1の構成では、バッテリユニットとは別に作動油タンクの配置スペースを確保しなければならない。このため、上記コンパクトなレイアウトを実現することが益々困難となり、バッテリユニットの大容量化が困難になるおそれがある。
【0005】
また、電動モータおよび油圧ポンプは駆動されると発熱し、油圧アクチュエータを介して流れる作動油も高温になることから、作動油を収容する作動油タンクも高温となる。電動モータ、油圧ポンプ、および作動油タンクの冷却性能を確保する上では、これらの部品を冷却する場合の冷却効率も考慮に入れたレイアウトを実現することが望ましい。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電動モータ、油圧ポンプ、および作動油タンクを冷却する場合の冷却効率も考慮しつつ、コンパクトなレイアウトで、かつ、バッテリユニットの大容量化も容易となる電動式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電動式作業機械は、電動モータと、前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、作動油を収容する作動油タンクと、前記電動モータによって駆動され、前記作動油タンクと接続される油圧ポンプと、を備え、前記電動モータ、前記油圧ポンプ、および前記作動油タンクは、機体フレーム上で前記バッテリユニットの下方に配置されるとともに、前記機体フレームの横方向に並べて配置される。
【発明の効果】
【0008】
電動モータ、油圧ポンプ、および作動油タンクを冷却する場合の冷却効率も考慮しつつ、コンパクトなレイアウトで、かつ、バッテリユニットの大容量化も容易となる電動式作業機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
【
図3】上記油圧ショベルの電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】上記油圧ショベルの機関室の内部構成を示す平面図である。
【
図5】上記機関室の内部を後ろ斜め上方から見たときの斜視図である。
【
図6】上記機関室の内部を後ろ斜め下方から見たときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0011】
〔1.電動式作業機械〕
図1は、本実施形態の電動式作業機械の一例である油圧ショベル(電動ショベル)1の概略の構成を示す側面図である。
図2は、油圧ショベル1の背面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0012】
ここで、本実施形態では、方向を以下のように定義する。上部旋回体4の運転座席41aに着座したオペレータ(操縦者、運転手)が正面を向く方向を前方とし、その逆方向を後方とする。したがって、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0°)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2が前後進する方向と一致する。また、運転座席41aに着座したオペレータから見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で油圧ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0013】
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0014】
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0015】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31に支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダにより構成される。
【0016】
上部旋回体4は、下部走行体2の上方に位置し、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に設けられる。上部旋回体4には、操縦部41、旋回フレーム42、旋回モータ43、および機関室44が配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。油圧ショベル1は、旋回フレーム42を機体フレームとして備える。
【0017】
上部旋回体4には、油圧ポンプ71(
図3参照)が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、油圧ポンプ71を備える。油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ61(
図3等参照)によって駆動される。油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作動油(圧油)を供給する。油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(
図3参照)と呼ぶ。
【0018】
操縦部41は、旋回フレーム42に設置される。操縦部41には、運転座席41aが配置される。運転座席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが運転座席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0019】
上部旋回体4には、バッテリユニット53が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、バッテリユニット53を備える。バッテリユニット53は、例えばリチウムイオンバッテリユニットで構成され、電動モータ61を駆動するための電力を蓄える。バッテリユニット53は、複数のバッテリをユニット化して構成されてもよいし、単一のバッテリセルで構成されてもよい。本実施形態では、バッテリユニット53は、3つのバッテリをユニット化して構成されているが(
図5参照)、ユニット化するバッテリの数は、上記の3つには限定されない。
【0020】
また、上部旋回体4には、不図示の給電口が設けられる。上記の給電口と外部電源(商用電源)とは、給電ケーブルを介して接続される。これにより、バッテリユニット53を充電することができる。
【0021】
上部旋回体4には、鉛バッテリ54がさらに設けられる。鉛バッテリ54は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。鉛バッテリ54からの出力は、制御電圧として例えばシステムコントローラ67(
図3参照)、ファン81(
図5参照)の駆動部などに供給される。
【0022】
油圧ショベル1は、油圧アクチュエータ73などの油圧機器と、電力で駆動されるアクチュエータとを併用した構成であってもよい。電力で駆動されるアクチュエータとしては、例えば、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータがある。
【0023】
〔2.電気系および油圧系の構成〕
図3は、油圧ショベル1の電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。油圧ショベル1は、電動モータ61と、充電器62と、インバータ63と、PDU(Power Drive Unit)64と、ジャンクションボックス65と、DC-DCコンバータ66と、システムコントローラ67と、を備える。システムコントローラ67は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる電子制御ユニットで構成され、油圧ショベル1の各部の電気的な制御を行う。充電器62、インバータ63、ジャンクションボックス65、DC-DCコンバータ66、および上記の鉛バッテリ54のことを、まとめて電装機器EQとも称する。
【0024】
電動モータ61は、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65およびインバータ63を介して供給される電力により駆動される。電動モータ61は、永久磁石モータまたは誘導モータで構成される。電動モータ61は、旋回フレーム42(
図1参照)上に配置(防振支持)される。
【0025】
充電器62は、外部電源から給電ケーブルを介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ63は、バッテリユニット53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ61に供給する。これにより、電動モータ61が回転する。インバータ63から電動モータ61への交流電圧(電流)の供給は、システムコントローラ67から出力される回転指令に基づいて行われる。
【0026】
PDU64は、内部のバッテリリレーを制御してバッテリユニット53の入出力を制御するバッテリ制御ユニットであり、PMU(Power Management Unit )とも呼ばれる。ジャンクションボックス65は、充電器リレー、インバータリレー、ヒューズ等を含んで構成される。上記した充電器62から出力される電圧は、ジャンクションボックス65およびPDU64を介してバッテリユニット53に供給される。また、バッテリユニット53から出力される電圧は、PDU64およびジャンクションボックス65を介してインバータ63に供給される。
【0027】
DC-DCコンバータ66は、バッテリユニット53からジャンクションボックス65を介して供給される高電圧(例えば300V)の直流電圧を、低電圧(例えば12V)に降圧する。DC-DCコンバータ66から出力される電圧は、鉛バッテリ54からの出力と同様に、システムコントローラ67、ファン81の駆動部、等に供給される。本実施形態では、DC-DCコンバータ66は複数設けられるが(
図5参照)、単数であってもよい。
【0028】
電動モータ61の回転軸(出力軸)には、油圧ポンプ71が接続される。油圧ポンプ71は、作動油を収容(貯留)する作動油タンク74と、油圧ホース75(
図5、
図6参照)を介して接続されている。すなわち、油圧ショベル1は、作動油を収容する作動油タンクを備える。油圧ポンプ71により、作動油タンク74内の作動油が、コントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧アクチュエータ73に供給される作動油の流れ方向および流量を制御する方向切替弁である。
【0029】
〔3.機関室の内部構成について〕
図4は、機関室44の内部構成を示す平面図である。
図5は、機関室44の内部を後ろ斜め上方から見たときの斜視図である。
図6は、機関室44の内部を後ろ斜め下方から見たときの斜視図である。以下、上記した各部品の機関室44内での配置について説明する。なお、機関室44内において、各部品は、ステー等の支持部材を介して旋回フレーム22上に支持されるが、図面では、各部品の配置位置を明確にする目的で、支持部材の図示を省略する。
【0030】
図4~
図6に示すように、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74は、旋回フレーム42上でバッテリユニット53の下方に配置される。また、バッテリユニット53の下方において、旋回フレーム42の右側から左側に向かって、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74がこの順で配置される。つまり、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74は、旋回フレーム42の横方向(左右方向)に並べて配置される。このとき、電動モータ61は、横方向の右側(一方側)に配置され、作動油タンク74は、横方向の左側(他方側)に配置される。
【0031】
充電器62は、旋回フレーム42の上方で、かつ、バッテリユニット53の後方に配置される。鉛バッテリ54は、旋回フレーム42の上方で、かつ、油圧ポンプ71の後方に配置される。つまり、鉛バッテリ54は、充電器62よりも下方に配置される。バッテリユニット53の後方で、かつ、充電器62と鉛バッテリ54との間には、インバータ63が配置される。
【0032】
インバータ63よりも下方で、電動モータ61よりも後方には、ジャンクションボックス65が配置される。ジャンクションボックス65の後方には、DC-DCコンバータ66が配置される。また、バッテリユニット53の右側には、PDU64が配置される(
図6参照)。
【0033】
バッテリユニット53を収容する機関室44には、ファン81が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、機関室44と、ファン81と、を備える。ファン81は、電動ファンであり、機関室44内に風の流れを作る。本実施形態では、ファン81は、第1ファン81aと、第2ファン81bと、を含む。第1ファン81aは、バッテリユニット53の後方に配置される。第2ファン81bは、バッテリユニット53の後方で、かつ、第1ファン81aの下方に配置される。
【0034】
ファン81(第1ファン81a、第2ファン81b)が駆動されると、機関室44の右側の側壁となる右ボンネット44Rに設けられた2つの通風口44R1および44R2(ともに第2開口部;
図1参照)から機関室44の内部に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、機関室44内を右側から左側に向かって流れ、機関室44の後壁となる後部ボンネット44Bに設けられた2つの排気口44B1および44B2(ともに第1開口部;
図2参照)を介して外部に排出される。なお、2つの通風口44R1および44R2は、右ボンネット44Rにおいて上下に並べて配置される。また、2つの排気口44B1および44B2は、後部ボンネット44Bにおいて上下に並べて配置されるとともに、第1ファン81aおよび第2ファン81bと向かい合ってそれぞれ配置される。なお、右ボンネット44Rは、後部ボンネット44Bの右端と着脱可能に連結される。
【0035】
このような機関室44内での空気の流れにより、機関室44内に配置された各部品(電動モータ61、バッテリユニット53等を含む)を冷却(空冷)することができる。
【0036】
本実施形態では、上述のように、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74が、旋回フレーム42上でバッテリユニット53の下方に配置されるとともに、旋回フレーム42の横方向に並べて配置される。これにより、旋回フレーム42上でバッテリユニット53の下方の空間を、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74の配置スペースとして有効利用することができる。したがって、小型の油圧ショベル1において、例えば作動油タンク74をバッテリユニット53の側方に配置する構成に比べて、作動油タンク74およびバッテリユニット53を含めてコンパクトなレイアウトを実現することができる。
【0037】
また、本実施形態では、小型の油圧ショベル1において、バッテリユニット53を大容量化(大型化)する場合でも、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74をバッテリユニット53の下方に配置したまま、バッテリユニット53だけを大型化することができる。これにより、上記のようにレイアウトをコンパクトに保ちつつ、バッテリユニット53を大型化する、つまり、大容量化することも容易となる。
【0038】
さらに、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74が旋回フレーム42の横方向に並べて配置されることにより、ファン81を駆動させて、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74を冷却(空冷)することを考えた場合でも、バッテリユニット53の下方において、旋回フレーム42の横方向の送風によって、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74をまとめて効率よく冷却することができる。
【0039】
つまり、本実施形態の電動モータ61等の配置によれば、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74の冷却効率も考慮しつつ、コンパクトなレイアウトで、かつ、バッテリユニット53の大容量化も容易となる小型の油圧ショベル1を実現することができる。
【0040】
電動モータ61および作動油タンク74をバランスよく冷却する観点では、ファン81による送風により、比較的低温の電動モータ61を先に冷却した後、比較的高温の作動油タンク74を冷却することが望ましい。そのためには、電動モータ61と作動油タンク74とは、旋回フレーム42上で横方向の互いに反対側に配置されることが望ましい。つまり、
図4等で示すように、電動モータ61および作動油タンク74は、旋回フレーム42上で、横方向の一方側(例えば右側)および他方側(例えば左側)にそれぞれ配置されることが望ましい。
【0041】
また、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74の3者をバランスよく冷却する観点では、ファン81による送風により、比較的低温の電動モータ61を先に冷却した後、次に、温度の高い油圧ポンプ71を冷却し、最後に、最も温度の高い作動油タンク74を冷却することが望ましい。そのためには、
図4等で示すように、油圧ポンプ71は、電動モータ61と作動油タンク74との間に配置されることが望ましい。
【0042】
ファン81の設置による機関室44の横方向の寸法の増大を回避する観点では、ファン81は、バッテリユニット53の後方に配置されることが望ましい。つまり、ファン81は、バッテリユニット53と機関室44の後壁となる後部ボンネット44Bとの間に配置されることが望ましい。
【0043】
また、ファン81の駆動により、高温になりやすい作動油タンク74に効率よく風を当てて、作動油タンクを効率よく冷却する観点では、ファン81は、機関室44内で作動油タンク74の近傍に配置されることが望ましい。この点では、ファン81は、機関室44内で、横方向における作動油タンク74側に配置されることが望ましい。つまり、ファン81は、機関室44内で、横方向の他方側に配置されることが望ましい。
【0044】
機関室44内で、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74をこの順でバランスよく冷却する観点では、機関室44内で、電動モータ61側から作動油タンク74側に向かう風の流れを作ることが望ましい。このためには、ファン81を駆動したときに、電動モータ61に近い通風口44R1および44R2(第2開口部)から機関室44内に空気を吸い込み、作動油タンク74に近い排気口44B1および44B2から機関室44の外部に空気を排出することが望ましい。この観点では、機関室44の後壁となる後部ボンネット44Bにおいて、ファン81と向かい合う位置に第1開口部としての排気口44B1および44B2が設けられることが望ましい。また、機関室44の後部ボンネット44Bと連結され、後部ボンネット44Bに対して横方向の一方側(例えば右側)に位置する側壁としての右ボンネット44Rに、第2開口部としての通風口44R1および44R2が設けられることが望ましい。
【0045】
バッテリユニット53と、バッテリユニット53の下方に配置される電動モータ61等を同時にかつ効率よく冷却する観点では、バッテリユニット53と電動モータ61等とを、別々のファン81の駆動によって発生する風により冷却することが望ましい。つまり、バッテリユニット53を、第1ファン81aの駆動によって発生する風により冷却することが望ましい。また、バッテリユニット53の下方に配置される電動モータ61等を、第1ファン81aの下方に配置される第2ファン81bの駆動によって発生する風により冷却することが望ましい。したがって、ファン81は、機関室44内で、上下方向に並べて配置される第1ファン81aおよび第2ファン81bを含むことが望ましい。
【0046】
本実施形態では、
図5および
図6に示すように、油圧ショベル1は、オイルクーラ82をさらに備える。オイルクーラ82は、熱交換により作動油を冷却する熱交換器であり、機関室44内に配置される。また、オイルクーラ82は作動油タンク74と接続され、冷却した作動油を作動油タンク74に供給する。ファン81の駆動により機関室44内で発生した風をオイルクーラ82に当てて、オイルクーラ82の冷却に有効利用する観点、およびオイルクーラ82に当てた後の風を排気口44B1および44B2(第1開口部)を介して効率よく外部に排出する観点では、ファン81と第1開口部との間にオイルクーラ82が配置されることが望ましい。
【0047】
ここで、例えば、バッテリユニット53の下方に配置される作動油タンク74の冷却に用いた風は、高温の作動油タンク74によって昇温する。このため、下方に配置される第2ファン81bの駆動によって発生する風をオイルクーラ82に当てると、作動油タンク74に当てた後の昇温した風がオイルクーラ82に当たり、オイルクーラ82の冷却効率が低下することが懸念される。
【0048】
そこで、オイルクーラ82を効率よく冷却する観点では、作動油タンク74の上方に位置するバッテリユニット53の冷却に用いた(比較的低温の)風をオイルクーラ82に当てることが望ましい。この点では、オイルクーラ82は、最も上部に位置する第1ファン81aと、第1開口部(特に排気口44B1)との間に配置されることが望ましい。
【0049】
ファン81の駆動によって発生し、機関室44内のバッテリユニット53等の冷却に用いた風を、電装機器EQ(充電器62、インバータ63、ジャンクションボックス65、DC-DCコンバータ66、鉛バッテリ54)の冷却に有効利用することができれば、電装機器EQの冷却専用のファンが不要となり、構成を簡素化できる点で望ましい。この点では、電装機器EQは、ファン81の側方(例えば右側)に配置されることが望ましい。この場合、ファン81の駆動によって発生した風は、機関室44内で電装機器EQをなめて(電装機器EQに当たって、または電装機器EQの表面に沿って)流れるため、電装機器EQが冷却(空冷)される。
【0050】
〔4.補足〕
本実施形態では、機関室44内で、電動モータ61、油圧ポンプ71、および作動油タンク74を横方向の右側から左側に向かってこの順で配置した例について説明したが、横方向の左側から右側に向かってこの順で配置してもよい。つまり、横方向の一方側は左側であってもよく、横方向の他方側は右側であってもよい。この場合、旋回フレーム42の横方向において、各部品の配置を本実施形態と逆にすればよい。
【0051】
本実施形態では、電動式作業機械として、建設機械である油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、電動式作業機械は油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダなどの他の建設機械であってもよい。また、電動式作業機械は、コンバイン、トラクタ等の農業機械であってもよい。
【0052】
〔5.付記〕
本実施形態で説明した油圧ショベル1は、以下の付記に示す電動式作業機械と表現することもできる。
【0053】
付記(1)の電動式作業機械は、
電動モータと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、
作動油を収容する作動油タンクと、
前記電動モータによって駆動され、前記作動油タンクと接続される油圧ポンプと、を備え、
前記電動モータ、前記油圧ポンプ、および前記作動油タンクは、機体フレーム上で前記バッテリユニットの下方に配置されるとともに、前記機体フレームの横方向に並べて配置される。
【0054】
付記(2)の電動式作業機械は、付記(1)の電動式作業機械において、
前記電動モータおよび前記作動油タンクは、前記機体フレーム上で、前記横方向の一方側および他方側にそれぞれ配置される。
【0055】
付記(3)の電動式作業機械は、付記(2)の電動式作業機械において、
前記油圧ポンプは、前記電動モータと前記作動油タンクとの間に配置される。
【0056】
付記(4)の電動式作業機械は、付記(2)または(3)の電動式作業機械において、
前記バッテリユニットを収容する(とともに、前記電動モータおよび前記油圧ポンプを収容する)機関室と、
前記機関室内に風の流れを作るファンと、をさらに備え、
前記ファンは、前記バッテリユニットと前記機関室の後壁との間に配置される。
【0057】
付記(5)の電動式作業機械は、付記(4)の電動式作業機械において、
前記ファンは、前記機関室内で、前記横方向の前記他方側に配置される。
【0058】
付記(6)の電動式作業機械は、付記(5)の電動式作業機械において、
前記機関室の前記後壁において、前記ファンと向かい合う位置に第1開口部が設けられ、
前記機関室の前記後壁と連結され、前記後壁に対して前記横方向の一方側に位置する側壁に、第2開口部が設けられる。
【0059】
付記(7)の電動式作業機械は、付記(6)の電動式作業機械において、
前記ファンは、前記機関室内で、上下方向に並べて配置される第1ファンおよび第2ファンを含む。
【0060】
付記(8)の電動式作業機械は、付記(7)の電動式作業機械において、
前記ファンと前記第1開口部との間に、前記作動油を冷却するオイルクーラが配置される。
【0061】
付記(9)の電動式作業機械は、付記(8)の電動式作業機械において、
前記オイルクーラは、最も上部に位置する前記第1ファンと、前記第1開口部との間に配置される。
【0062】
付記(10)の電動式作業機械は、付記(5)から(9)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記ファンの(横方向の)側方に電装機器が配置される。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば建設機械、農業機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 油圧ショベル(電動式作業機械)
42 旋回フレーム(機体フレーム)
44 機関室
44B 後部ボンネット(後壁)
44B1 排気口(第2開口部)
44B2 排気口(第2開口部)
44R 右ボンネット(側壁)
44R1 通風口(第1開口部)
44R2 通風口(第1開口部)
53 バッテリユニット
54 鉛バッテリ(電装機器)
61 電動モータ
62 充電器(電装機器)
63 インバータ(電装機器)
65 ジャンクションボックス(電装機器)
66 DC-DCコンバータ(電装機器)
71 油圧ポンプ
74 作動油タンク
81 ファン
81a 第1ファン
81b 第2ファン
82 オイルクーラ
EQ 電装機器